結論
伊藤園は「お~いお茶」で知られる、日本茶専業に近い飲料会社である。緑茶飲料では販売金額で約4割を握るとされ、茶葉の仕入れから農家の育成まで自前で抱える。
筆者の結論は、今の値段はやや割高というものだ。直近の純利益は自販機の減損で35億円まで沈んだが、減損は一度きりの損で、営業利益217億円という本業の稼ぎは崩れていない。それでも回復を織り込んだうえで、払う値段に安全域は薄い。
この会社の弱みは利益率の低さにある。売上5,000億円に対し営業利益は4%台で、茶葉の高騰と自販機の不振がその薄さをさらに削った。強みは、他社がまねしにくい原料の調達網と、世界に広がる緑茶ブランドである。
筆者は、減損で重い設備を落としたことが来期以降の減価償却費を軽くし、利益率を戻す足場になると見る。成長の主役は北米を中心とした海外だ。米国の売上は直近で3割伸び、売上の1割強から1割半ばへ上がってきた。
10年後の利益率は6%近くまでしか戻さない。会社計画の8%は、茶葉の値上がりと国内のPB(小売りの自社ブランド)を考えると届かないと見るからだ。中立の10年後の時価総額は今の約1.4倍だが、資本コスト7.0%で割り引き、悲観の厚みも含めると、総合の価値は今の値段を約1割下回る。
買収の話は常に背景にある。親会社を持たない独立系で、ブランドと原料網の価値を考えると、他社の買収対象になる可能性は無視できない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、この会社の本質は「緑茶という日本の食文化を、原料から売り場まで押さえている」ことにある。こうした会社は10年後も存在している可能性が高い。茶を飲む習慣は、人口が減っても急にはなくならない。
問題は、堀の強さが利益に出ていないことだ。茶葉の原価、小売りの値引き、自販機の重荷が、稼ぎを薄くしている。筆者が見たいのは、ブランドの力がいつ営業利益率の上昇に変わるかだ。今の4%台が6%に届けば、本質価値は大きく変わる。
株主のものになる利益、つまり事業を維持するために必要な投資を引いた後の利益は、営業利益の半分から6割程度だろう。自販機のように重い設備を持つ事業は、その分だけ手元に残る利益を減らす。減損で設備を落としたことは、今後のオーナー利益を増やす方向に働く。
資本の使い方には、評価できる点と課題がある。還元は安定しているが、自販機への投資は失敗に終わった。海外への投資も、北米は伸びているものの、まだ利益になっているかは見えにくい。
安全域の面では、今の値段は減損で沈んだ利益を前提にしている。利益率が戻るという前提を置いても、価値は今の値段を1割ほど下回る。しかも戻る保証はなく、確信度は高くない。買収や資本政策の改善という上振れの芽はあるが、それを払う値段に含めるのは危うい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は国内のリーフ・ドリンク事業で、売上のおよそ9割を占める。リーフは茶葉そのもの、ドリンクはペットボトル、缶、紙パックの飲料である。飲料の販売数量のうち、日本茶が63%を占める。
茶葉の調達が、この会社のいちばんの特徴だ。契約栽培では農家から茶葉を全量買い取り、荒れた農地には自社で大規模な茶園をつくる。国内の荒茶生産量の約4分の1を扱うとされ、茶葉の価格が上がる局面では、この量が交渉力になる。
売り先は多様である。小売店、自動販売機、オフィス向けの茶葉、ホテルや飲食店向けがある。自販機は子会社のネオスが運営するが、ここが今は重荷になっている。飲料の販売数量は前の期に14%減り、135億円の減損を計上した。
第2の柱は飲食事業で、タリーズコーヒーを運営する。直営は452店で、売上は約465億円まで育った。利益率は7%台と、本体の飲料より高い。ただし店の家賃が年に58億円ほどかかり、これは景気が悪くても払う固定の約束だ。
第3の柱が海外である。米国では100%子会社が「お~いお茶」を売り、コーヒー豆の栽培から売る会社も傘下にある。米国の売上は前の期に643億円と、前の年から約3割伸びた。海外全体は売上の約14%で、会社は年8%以上の成長を目標にしている。
優良さと弱いところ
強みは緑茶ブランドと原料の調達網だ。「お~いお茶」は、サントリーの「伊右衛門」、コカ・コーラの「綾鷹」、キリンの「生茶」を相手に、約4割の販売金額シェアを守ってきた。2019年には緑茶飲料の販売実績で世界一としてギネス記録にも認められた。
農家との契約栽培は、ほかの飲料会社がまねしにくい。茶葉は飲料の味を決める材料で、安定して確保できることが、値上げのたびに離れない客をつくる。筆者は、この調達網が国内の堀、つまり他社が崩しにくい強みの中心だと見る。
一方で、利益を残す力は強くない。営業利益率は過去10年で2.6%から5.5%の間にとどまる。売上のわりに稼ぎが薄いのは、茶葉と包装の原価が高く、小売りの値引き圧力を受け、自販機という重い装置を抱えているからだ。
資本効率も平凡だ。過去10年のROEの中央値は約8%で、資本コストをわずかに上回る程度である。純現金は90億円とほぼ均衡で、財務は堅いが、現金をため込む会社ではない。
経営には前向きな点がある。自販機の不振を認めて早めに減損し、事業を統合して立て直しにかかっている。第1四半期の営業利益は前年から22%増え、価格改定の浸透と減価償却費の軽減が効いている。ただし抹茶原料の高騰は続いており、原価を値上げで吸収できるかは、まだ証明されていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の清涼飲料市場は、人口減の逆風を、健康志向のカテゴリーが和らげる構図にある。無糖の茶と水は伸び、砂糖入りの炭酸は横ばいから微減だ。この会社にとっては、無糖茶という主戦場が伸びる側にあることが救いになっている。
競争は大手5社の寡占に近い。コカ・コーラ、サントリー、アサヒ飲料、キリンビバレッジ、そして伊藤園が市場の大半を分け合う。緑茶だけで見れば、4社が同じブランド力で殴り合う市場だ。そこへコンビニやスーパーのPBが安さで割り込み、値上げのたびに客の一部が離れる。
最大の変数は茶葉の値段である。抹茶ブームで海外の需要が急増し、国内の抹茶の原料が高騰した。気候不順で茶葉の収量が揺れることもある。茶葉を自前で調達するこの会社は、値上がりを受けにくい面もあるが、安く買える保証はない。
自販機の縮小も構造的な流れだ。人口減と、コンビニ・スーパーでの買い方の変化で、自販機の台数と1台あたりの売上は細っている。ペットボトルのリサイクル義務や軽量化のコストも業界共通の負担である。
海外では、緑茶と日本食の人気が追い風だ。米国では健康志向の消費者が、砂糖の入らない茶を選ぶ。ただし現地の大手飲料会社と、関税や為替の影響を受ける点は、国内にない不確実性になる。国内は物価並みの値上げで数量減を補う成熟市場で、成長は海外とタリーズが担う。
資本政策と M&A
会社は2024年に5年の中期計画を出した。2029年4月期に、営業利益率8%以上、ROE10%以上、総還元性向40%以上を目指す。前の計画の2年間の実績は、ROEが8.9%、総還元性向が52.7%だった。
5年間の資金の使い方は、営業キャッシュフロー1,600億円以上に対し、設備投資550億円、事業投資300億円、株主還元450億円以上である。成長投資は海外に200億円、国内に100億円を振り向ける。
筆者が評価するのは、還元の姿勢が実績で裏づけられている点だ。総還元性向は40%を下回らず、前の計画では5割を超えた。一方で気になるのは、自販機への投資が結果として135億円の損になったことだ。資本を投じた事業の不振を認めたことは前向きに見るが、投資の目利きとしては反省点が残る。
政策保有株は上場49銘柄で約53億円と小さく、持ち合いで資本を縛る度合いは低い。親会社はなく、支配株主を持つ会社ではない。買収の話では、kabufuの試算で10年以内に買われる確率は16%ある。独立系で、ブランドと原料網に価値があるためだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
緑茶は日本の食文化と健康志向の両方に乗れる、数少ない飲料である。「お~いお茶」はすでに約4割のシェアを握り、世界でも売れる。海外の販売国は50を超え、会社は100まで増やす構えだ。米国の売上は1年で3割伸び、海外全体の売上は年8%以上の成長が続く。
利益率が低いのは、先行して自販機や設備に投じた分の費用が重かったからだ。135億円の減損で設備を落とし、減価償却費が軽くなった今、利益率は反転する。第1四半期の営業利益は22%増で、その兆しはすでに見える。価格改定も浸透しはじめた。
茶葉の調達網は、抹茶ブームの今こそ強みだ。農家から全量を買い取る契約栽培は、需給が逼迫する局面で安定供給を生む。値上げが通りやすい環境で、原料を押さえた会社が有利になる。
タリーズは売上が5年で5割伸び、利益率も3%から7%台に上がった。出店を続ければ、飲料に次ぐ第2の柱になる。ROE10%、営業利益率8%という会社計画が実現すれば、資本コストを大きく上回る稼ぎが10年続き、評価は一段上がる。さらに独立系の優良ブランドとして、買収の対象にもなりうる。
慎重な見方
営業利益率は過去10年で5.5%を超えたことがなく、会社計画の8%は、これまで一度も届いていない水準だ。茶葉の高騰は構造的で、抹茶の需要は世界で増え続けており、原料の調達力があっても値段は下がらない。値上げは小売りのPBへの流出を呼び、数量が逃げる。
自販機の135億円の減損は、事業の不振が一時的でなく構造的だと認めたものだ。人口減とコンビニ・スーパーの台頭で、自販機の台数も1台あたりの売上も細る。減価償却費が軽くなっても、売上が減れば固定費の重さは戻ってくる。
海外の成長は、米国に偏っている。関税、為替、現地大手との競争は、国内にない不確実性である。売上の14%に上がった海外が、まだ十分な利益を出しているとは言い難い。
タリーズの店舗は家賃が年58億円と固定費の塊で、景気が悪くなると利益率が落ちる。新しいリース会計の基準が入ると、見かけの借金も増える。資本効率はROE8%前後と資本コストをわずかに上回る程度で、これが急に10%へ上がると考える根拠は乏しい。買収の話は、確率としては小さく、支えにはならない。
どちらに重みを置いたか
強気の主張には、海外の成長と第1四半期の増益という具体的な裏づけがある。慎重な主張には、過去10年の利益率の上限という、動かしにくい実績がある。筆者は、利益率が会社計画の8%まで戻る可能性は低いと見て、中立の営業利益率を6%近くにとどめた。
一方で、減損後の足場は軽くなっており、海外の売上が伸びていることも事実である。この2つを合わせて、中立に最も重みを置いた。茶葉高騰と自販機の構造的な縮小という悲観の根拠を認めて、悲観側と楽観側をほぼ同じ厚さ(それぞれ3割強)に置いた。総合では、今の値段を1割ほど下回る価値が出て、やや割高となった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/04 期)
確率で加重した株価時価総額 4,664 円3,933 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,123 円947 億円)。 今の値に割り戻すと 3,171 円2,674 億円、今との差 −3.3%、 期待の年率 +5.8%(資本コスト 7.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 8,414 円7,096 億円 | 1,453 円1,225 億円 | +200.8% | +11.6% | 987 円832 億円 |
| やや楽観 | 22% | 6,689 円5,641 億円 | 1,314 円1,108 億円 | +144.0% | +9.3% | 1,761 円1,485 億円 |
| 中立 | 36% | 5,060 円4,268 億円 | 1,204 円1,015 億円 | +91.0% | +6.7% | 2,255 円1,902 億円 |
| やや悲観 | 20% | 2,289 円1,930 億円 | 946 円798 億円 | −1.4% | −0.1% | 647 円546 億円 |
| 悲観 | 12% | 593 円500 億円 | 548 円462 億円 | −65.2% | −10.0% | 137 円115 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,664 円3,933 億円 | 1,123 円947 億円 | +76.4% | +5.8% | 5,786 円4,880 億円 |
今の株価時価総額 3,280 円2,766 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 緑茶ブランドが世界に広がり、利益率が会社計画に近づく10年 利益 376 億円 · PER 18.6 倍 · 株価時価総額 8,414 円7,096 億円
国内は人口減の中でも、無糖茶の伸びと「お~いお茶」の指名買いで数量をほぼ保つ。値上げは物価を上回って通り、自販機は統合で効率が上がる。海外は米国の勢いが続き、販売国が100に近づく。海外の売上は10年で3倍近くになり、利益率も現地生産と規模で上がる。タリーズは出店を続けて店数が1.5倍となり、飲料に次ぐ柱になる。営業利益率は7%台半ばまで戻り、会社計画の8%に近づく。減損で軽くなった設備の負担が、この利益率の足場になる。ROEは12%台に乗り、資本コストを明確に超える稼ぎが続く。茶葉の調達網が抹茶ブームの中で強みに変わり、原料高を値上げに乗せられる。買収の話が出ても、会社の独立性は保たれる。
- 国内リーフ・ドリンク(その他を含む):数量 216(飲料・茶葉の飲料換算の出荷量(万kl))× 価格 24(1klあたりの名目の単価(万円))→ 売上 5,215 億円・営業利益 365 億円。指名買いで値上げが通る
- 飲食(タリーズ):数量 1,200(店舗数(直営+FC、推定))× 価格 0.78(1店あたりの年間売上(億円))→ 売上 935 億円・営業利益 84 億円。出店が続き利益率も上がる
- 海外(北米中心):数量 36.0(飲料・コーヒー豆の飲料換算の出荷量(万kl))× 価格 54(1klあたりの名目の単価(万円))→ 売上 1,927 億円・営業利益 154 億円。米国が3倍近くに
倍率:事業の純利益 376 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.1% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.6 倍。全体の PER 18.62 倍、時価総額 7,001 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外の連続成功、国内の値上げの定着、茶葉の価格の落ち着きが同時にそろう必要がある。起きれば強いが、重なる確度は高くない。
やや楽観 22% 海外とタリーズが伸び、利益率が6%台後半に戻る10年 利益 312 億円 · PER 17.8 倍 · 株価時価総額 6,689 円5,641 億円
国内は数量が緩やかに減るが、無糖茶の需要と物価並みの値上げで、売上は伸びる。自販機の統合と減損後の減価償却費の軽さで、国内の利益率は6%台前半まで戻る。海外は米国を軸に10年で1.85倍の数量となり、利益率も7%近くに上がる。タリーズは店数が1.4倍となり、利益率は8%台半ばを保つ。会社全体の営業利益率は6%台後半で、中期計画の8%には届かないが、過去の最高を超える水準になる。親会社を持たない独立系のまま、還元は5割程度を続ける。茶葉の値上がりは続くが、値上げの浸透で吸収できる範囲にとどまる。米国の関税の影響も限定的に収まる。
- 国内リーフ・ドリンク(その他を含む):数量 213(飲料・茶葉の飲料換算の出荷量(万kl))× 価格 23(1klあたりの名目の単価(万円))→ 売上 4,922 億円・営業利益 315 億円。自販機の統合と減価償却費の軽さ
- 飲食(タリーズ):数量 1,120(店舗数(直営+FC、推定))× 価格 0.78(1店あたりの年間売上(億円))→ 売上 872 億円・営業利益 74 億円。店数が1.4倍に
- 海外(北米中心):数量 33.0(飲料・コーヒー豆の飲料換算の出荷量(万kl))× 価格 54(1klあたりの名目の単価(万円))→ 売上 1,766 億円・営業利益 120 億円。米国を軸に成長
倍率:事業の純利益 312 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.6% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.8 倍。全体の PER 17.82 倍、時価総額 5,560 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の計画に近い成長が、海外とタリーズで続く姿。国内の値上げが通る範囲で、第1四半期の増益が示す回復の延長にあたる。
中立 36% 国内は横ばい、海外とタリーズが穴を埋める成熟した10年 利益 255 億円 · PER 16.7 倍 · 株価時価総額 5,060 円4,268 億円
国内は人口減で数量が5%ほど減るが、無糖茶の需要が下支えする。価格は物価並みに上がり、国内の売上は4,800億円台に伸びる。茶葉の高値は続き、利益率は5%台半ばにとどまる。自販機は縮むが、統合した効率が出る。海外は米国が中心で、数量は10年で1.7倍、売上は1,600億円台になる。タリーズは店数が1.3倍となり、利益率は8%前後を保つ。会社全体の営業利益率は6%近くで、直近の4%台より戻るが、過去の最高水準を超えない。ROEは10%近くになり、会社計画の10%をほぼ満たす。茶葉の高値と小売りの値引き圧力が、利益率の戻りを5%台半ばで止める。親会社を持たない独立系のまま、還元は5割台を続ける。
- 国内リーフ・ドリンク(その他を含む):数量 209(飲料・茶葉の飲料換算の出荷量(万kl))× 価格 23(1klあたりの名目の単価(万円))→ 売上 4,830 億円・営業利益 266 億円。数量減を値上げで補う
- 飲食(タリーズ):数量 1,040(店舗数(直営+FC、推定))× 価格 0.78(1店あたりの年間売上(億円))→ 売上 810 億円・営業利益 65 億円。店数1.3倍
- 海外(北米中心):数量 31.0(飲料・コーヒー豆の飲料換算の出荷量(万kl))× 価格 54(1klあたりの名目の単価(万円))→ 売上 1,659 億円・営業利益 91 億円。米国中心に1.7倍
倍率:事業の純利益 255 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.9% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.7 倍。全体の PER 16.71 倍、時価総額 4,261 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の数量減を物価並みの値上げが補い、海外とタリーズの成長が全体を押し上げる、最も穏やかな姿。会社計画の利益率8%は置かない。
やや悲観 20% PBの圧力と茶葉高が続き、利益率が4%前後にとどまる10年 利益 152 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,289 円1,930 億円
国内は値上げのたびに客の一部がPBや安い茶へ移り、数量が1割余り減る。物価並みには値段を上げられず、価格は10年で3割増にとどまる。茶葉の高騰は続き、国内の利益率は4%を割り込む水準で動かない。自販機は縮小が止まらず、統合の効果は小さい。米国は現地の大手との競争と関税で成長が鈍り、利益率は4%どまり。タリーズは出店が遅れ、家賃の固定費が利益を削る。営業利益率は4%前後に戻り、今の水準を超えられない。ROEは資本コストを下回る6%台に終わる。配当は維持するが増配は難しく、資本効率の改善は進まない。ブランドと調達網は残るが、利益には結びつかない。
- 国内リーフ・ドリンク(その他を含む):数量 194(飲料・茶葉の飲料換算の出荷量(万kl))× 価格 22(1klあたりの名目の単価(万円))→ 売上 4,349 億円・営業利益 165 億円。PBへの流出が続く
- 飲食(タリーズ):数量 920(店舗数(直営+FC、推定))× 価格 0.76(1店あたりの年間売上(億円))→ 売上 695 億円・営業利益 42 億円。出店が遅れ家賃が重い
- 海外(北米中心):数量 25.0(飲料・コーヒー豆の飲料換算の出荷量(万kl))× 価格 52(1klあたりの名目の単価(万円))→ 売上 1,298 億円・営業利益 52 億円。競争と関税で鈍る
倍率:ROE約6.6%はk7.0%以下なので、PERの上限は1÷k=14.3倍(ためた利益は額面未満)。そのおよそ87%(12.5倍)を、稼ぐ力に見合う値として置いた。
確率:茶葉の高騰を値上げで吸収しきれず、国内のPBへの流出が続く。海外の成長は鈍るが、事業の中身は残る。
悲観 12% 茶葉と自販機の構造的な不振で、優良さを失う10年 利益 40 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 593 円500 億円
茶葉の高騰が構造的に続き、値上げで吸収できない。PBと安い茶への流出が加速し、国内の数量は2割以上減る。自販機は崩れて追加の損失を出し、国内の利益率は1%台まで落ちる。米国では関税と現地大手の攻勢で売上が伸びず、現地の事業は薄利にとどまる。タリーズは不採算店を閉じて店数を1割減らすが、家賃の固定費は残り、利益は薄い。ブランドは残るものの、原料の調達力が利益に結びつかず、売上5,000億円弱の薄利の会社になる。減損で自己資本も削られる。配当は純現金と利益の範囲で細々と続ける。買収の提案が出ても、評価は縮んだ事業を反映した水準にとどまる。
- 国内リーフ・ドリンク(その他を含む):数量 172(飲料・茶葉の飲料換算の出荷量(万kl))× 価格 20(1klあたりの名目の単価(万円))→ 売上 3,411 億円・営業利益 51 億円。PBと安い茶へ流出
- 飲食(タリーズ):数量 720(店舗数(直営+FC、推定))× 価格 0.70(1店あたりの年間売上(億円))→ 売上 502 億円・営業利益 15 億円。不採算店の閉鎖と家賃
- 海外(北米中心):数量 18.0(飲料・コーヒー豆の飲料換算の出荷量(万kl))× 価格 46(1klあたりの名目の単価(万円))→ 売上 827 億円・営業利益 8 億円。関税と競争で薄利
倍率:純利益はほぼ40億円まで落ち、稼ぐ力(40億円÷k7.0%)は約570億円。ROEはk7.0%を大きく下回るので、PERの上限は1÷k=14.3倍で、そのおよそ87%(12.5倍)を置いた。
確率:茶葉の高騰、PBへの流出、自販機の崩れ、海外の失速が重なり、ブランドの力が利益に結びつかなくなる。低頻度だが、原価と小売りの両方に挟まれる事業なので無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内リーフ・ドリンク(その他を含む)
「お~いお茶」を中心とするペットボトル・缶・紙パック飲料、茶葉(リーフ)、自販機(ネオス)の国内事業。飲料数量の63%が日本茶。
| 数量飲料・茶葉の飲料換算の出荷量(万kl) | 価格1klあたりの名目の単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 220 | 17 | 3,794 | 157 |
| 10 年後 中立 | 209 | 23 | 4,830 | 266 |
取り方:有報ベースのリーフ・ドリンク事業の売上4,434億円から、海外(米国643億円+その他76億円)を除き、その他事業79億円を足して国内を3,794億円とした。国内清涼飲料市場は約2,200万kl(業種ノート)で、茶飲料に強い同社の推定シェア約1割を数量の目安にした(開示は無く推定)。単価は売上÷数量で逆算。営業利益は事業全体175億円から海外分約25億円を引き、その他の7億円を足して約157億円。価格は名目で物価並み(10年1.34倍)、数量は人口減と無糖茶の伸びで中立10年0.95倍。
飲食(タリーズ)
タリーズコーヒーの直営(452店)とフランチャイズ。利益率は本体より高い。
| 数量店舗数(直営+FC、推定) | 価格1店あたりの年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 800 | 0.58 | 465 | 36 |
| 10 年後 中立 | 1,040 | 0.78 | 810 | 65 |
取り方:飲食関連事業の売上465億円、利益35.5億円(有報ベース)。直営452店は有報、FCを含む総数は概算の800店(確かめていない推定)で、1店あたり売上を逆算した。家賃は年58億円の固定費で、すでに利益から引かれている。価格は名目で物価並み、店舗数は中立10年1.3倍(直近5年で売上が5割増)。
海外(北米中心)
米国の100%子会社による「お~いお茶」の販売と、コーヒー豆の栽培・販売の子会社、ほかアジアなど。
| 数量飲料・コーヒー豆の飲料換算の出荷量(万kl) | 価格1klあたりの名目の単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 18.0 | 40 | 719 | 25 |
| 10 年後 中立 | 31.0 | 54 | 1,659 | 91 |
取り方:地域別売上は米国643億円とその他76億円で計719億円(有報ベース。前期の米国は495億円)。数量は推定で、単価は高い。海外の利益は開示が無く、リーフ・ドリンク事業の利益から営業利益率約3.5%と置いた推定。価格は名目で物価並み、数量は会社の目標(海外は年8%以上の成長)と米国の勢いから中立10年1.7倍。 数量は実物(飲料換算の出荷量)。会社目標(海外は売上が名目で年 8% 以上)を物価 3% で割ると数量は年 5% 弱で、米国の勢いを加えて年 5.5%(10 年 1.7 倍)とした。
リスクと懸念
茶葉・抹茶原料の高騰
抹茶ブームで世界の需要が増え、原料の値段が上がっている。気候不順で収量が揺れることもある。契約栽培で買い取る会社は安定して確保できるが、値段が安くなるわけではなく、値上げで吸収できなければ利益率がそのまま削られる。
自販機事業の構造的な縮小
自販機の飲料販売数量は前の期に14%減り、135億円の減損を計上した。人口減と買い方の変化で台数も1台あたりの売上も細っている。統合で効率は上がるが、売上が減れば固定費の重さは戻ってくる。
PB(小売りの自社ブランド)への流出
コンビニやスーパーのPBは安さで客を取る。値上げが続くほど、客が安い茶へ移る。「お~いお茶」の指名買いが強くても、緑茶全体の価格競争は避けにくい。
米国中心の海外成長への偏り
海外は売上の約14%で、そのほとんどが米国である。関税、為替、現地大手との競争が重なると成長が鈍る。海外の利益は開示が少なく、まだ十分に稼いでいるかは外から見えにくい。
タリーズの家賃という固定費
直営452店の家賃は年に58億円ほどで、景気が悪くても払う約束だ。売上が落ちても家賃は落ちないため、悲観の筋書きでは利益を圧迫する。新しいリース会計基準が入ると、BSの数字の形も変わる。
利益率が会社計画に届かない
会社は2029年4月期に営業利益率8%以上を掲げるが、過去10年の最高は5.5%である。届かない場合、ROE10%以上の計画も崩れ、資本効率の改善という評価の上振れが消える。
今後の分かれ目
- 営業利益率が2期続けて5.5%を超えたら
- 減損後の足場が利益率に出たと見て、中立の利益率を上げ、楽観側に確率を移す。
- 抹茶・茶葉の原価がさらに上がり、値上げが通らなくなったら
- 国内の利益率の前提を下げ、やや悲観側に確率を寄せる。
- 自販機事業の販売数量の減少が2桁で続いたら
- 統合の効果が出ていないと見て、国内の数量の前提を下げる。追加の減損にも備える。
- 米国の売上の伸びが1割を割り込んだら
- 海外の成長の柱が弱まったと見て、海外の数量の前提を下げる。
- 他社や投資家から買収の提案が出たら
- 本質価値の計算結果と提示価格を比べ、価格が価値を上回るかで評価する。
- 自社株買いや配当の引き上げなど、還元が増える方針転換があったら
- 資本効率の改善に本気だと見て、ROEの前提をやや上げる。
見ておくもの
- 営業利益率の推移(今期は4%台。5.5%超えが目安)
- 米国の売上の伸び率と、海外の利益の開示
- 自販機の販売数量と、統合後の効率
- 抹茶・茶葉の調達価格と値上げの浸透
- タリーズの店数・利益率
- 総還元性向(40%以上の計画)と自社株買いの有無
倍率と資本コストの決め方
国内・タリーズ・海外の3つに分け、数量と名目の価格を置き、利益率を掛けた。価格は物価並み(10年1.34倍)を基本とし、悲観ほど値上げが通らず1.15〜1.30倍とした。数量は国内が人口減で中立0.95倍、海外は会社の目標と米国の勢いから1.7倍、タリーズは店数1.3倍とした。利益率は過去10年の営業利益率(2.6〜5.5%)を実力の証拠に使うが、悲観は構造(原価・PB・自販機)から出し、過去の高さから置いていない。倍率は正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限の約85〜90%で、中立は1÷k(14.3倍)を下回らせていない。今の株価・PER・PBRから倍率を決めてはいない。ROEが10%近くまで上がる点は、減損後の減価償却の軽さと海外の成長で説明がつく範囲にとどめた。新リース会計は2028年4月期から数字の形が変わるが、10年後の数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16.5→18.62 倍・やや楽観 PER 15→17.82 倍・中立 PER 14.5→16.71 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityを足して決める。事業が傾いているわけではないので上乗せは置かない。同じ領域のサントリー食品と同じ−0.5%で、ボトラーのコカ・コーラ ボトラーズ(+1.0%)より低い。