結論
日和産業は、神戸に本社を置く独立系の配合飼料の会社だ。輸入のとうもろこしや大豆かすを混ぜ、西日本と東北の畜産農家に売る。筆者の結論は「やや割高」である。自己資本は 190 億円と時価総額の 3 倍あるが、そこから年に数億円しか稼げていないからだ。
飼料は 1 トンあたり数千円の利ざやで稼ぐ商売だ。原料の値段は 3 か月ごとの改定で売値に移せるが、移すまでの時間差で利益が振れる。2026 年 3 月期の営業利益率 3.2% は過去最高で、10 年の中央値の 2 倍に近い。
国内の畜産農家は減り、飼料の量も細っていく。50 億円の純現金は事業に要る分を除いても厚いが、取引先が上位株主に並び、還元は配当だけにとどまる。現金にも工場にも、帳簿どおりの値段はつけにくい。
10 年の中立では、量が 1 割弱減り、利ざやは過去の平均に戻るとみる。純利益は 7 億円前後で、自己資本利益率は 3% 前後にとどまる。業界の再編で資産の価値が表に出る道はあるが、その時期と条件は読めない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、わかりやすいが魅力に乏しい事業だ。家畜は 10 年後も餌を食べ、この会社の工場はその餌を作り続けるだろう。ただ量は減り、値段は原料と競争で決まり、利ざやは薄い。
オーナーの目で見ると、資本の大半が稼いでいない。190 億円の自己資本に対し、利益は年数億円だ。現金は 50 億円あるが、持ち合いの株主構成の下では少数株主に戻る見込みが小さい。
筆者は、帳簿の純資産の安さに引かれて買う会社ではないと見る。値段が安く見えるのは、稼ぐ力が弱いことの裏返しだ。再編で資産の価値が表に出る時を待つ投資になり、その時期は読めない。
もし経営が現金を株主に戻す方へ向けば、話は変わる。余った現金を自社株買いに使うだけで、少数株主の取り分ははっきり増える。筆者はその兆しが出るまで、厚い資産を値段の支えとは見ない。
何で稼ぐ会社か
事業はほぼ配合飼料ひとつだ。2026 年 3 月期の売上 456 億円のうち、飼料が 437 億円を占める。鶏、豚、牛の種類と成長の段階に合わせて原料を配合し、畜産農家や系列の養鶏・養豚会社に売る。工場は神戸、広島の三原、香川の坂出、鹿児島、青森の八戸にある。八戸では関連会社のみちのく飼料に牛の飼料の製造を委ねる。
売上は数量と原料の値段で決まる。原料のとうもろこしや大豆かすはほぼ輸入で、その値段は 3 か月ごとの改定で売値に移す。原料が急に上がった時は、配合飼料価格安定基金が農家の負担を和らげる。会社の稼ぎは原料の値段そのものでなく、1 トンあたりの加工と配送の利ざやだ。
子会社の東和畜産は鹿児島で畜産物を作って売る。売上 19 億円で、利益はほぼゼロだ。大株主には、鶏肉の十文字チキンカンパニー、豊田通商、東北グレーンターミナル、カーギルジャパンが並ぶ。顧客や原料の仕入れ先が株を持ち合う形で、特定の親会社はない。
利益の源は工場の稼働率だ。飼料の工場は機械が多く、量が減ると固定費が利ざやを食う。だから量を保つことが、この会社の経営のいちばんの課題になる。中期の計画は作らず、原料と為替が読めないとして単年度の計画だけを立てている。
優良さと弱いところ
堀は浅い。配合飼料は全国で年 2,400 万トンほどの市場で、全農系と大手の飼料会社が大半を握る。日和産業の量は 50 万トン弱とみられ、シェアは 2% 前後だ。中部飼料やフィード・ワンと比べて規模で劣り、原料の調達でも配送の密度でも不利になる。
強みは地域の顧客との長い付き合いだ。鹿児島や東北の養鶏・養豚の大手と、配合の設計と配送で結び付いている。十文字チキンカンパニーのような顧客が株主に入っていることも、取引の安定を示す。
資本の効率は低い。過去 10 年の自己資本利益率の中央値は 1.8% で、資本コストの 4 分の 1 にも届かない。厚い自己資本の多くは現金と工場で、稼ぎを生んでいない。筆者は、利ざやの薄い商売に厚い資本を載せている形そのものが、この会社のいちばんの弱さだと見る。
経営は堅実で、借金に頼らない。ただ堅実さが、資本を眠らせる方向に働いている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の配合飼料の量は、畜産の頭数とともに緩やかに減る。農家の高齢化と廃業が続き、規模の大きい農家に集約されている。鶏卵と鶏肉は比較的堅いが、豚と乳牛は減る方向だ。10 年の中立では、量は 1 割弱減るとみる。
値段は原料しだいだ。とうもろこしと大豆かすは世界の相場と為替で決まり、それを 3 か月ごとに売値に移す。利ざやは原料の値段と別に動くので、物価が上がれば加工と配送の費用も上がり、その分は値上げとして通る。ただ規模の大きい農家ほど値引きを求めるので、利ざやは広がりにくい。
業界は再編が進む。2014 年に協同飼料と日本配合飼料が統合してフィード・ワンが生まれた。量が減る中で工場の数を減らす流れは続き、規模の小さい独立系は、統合の相手を探すか、地域の特定の顧客に絞るかを迫られる。家畜の伝染病も大きな危険で、鳥インフルエンザや豚熱が出れば、その地域の飼料の量が一気に減る。
物価と金利の上がる世界では、工場の更新の費用も上がる。古い工場の償却は取得した時の値段のままなので、会計の利益は見かけ上ふくらむが、建て替えには今の値段の現金が要る。量が減る中での更新の投資は、利ざやの薄い会社ほど重い。
資本政策と M&A
還元は配当だけで、2026 年 3 月期の配当総額は約 1 億円、性向は 3 割弱だ。自己株は発行済みの 13% あるが、ここ数年の取得はない。
現金は厚い。純現金は 50 億円で、原料の支払いの山に備える分を除いても 30 億円は余る。ほかに豊田通商の株を約 10 億円持つ。この現金を使う予定は見えず、新しい工場や買収の計画も開示されていない。
大株主に顧客と取引先が並ぶので、会社が買われる時は業界の再編の形になる。大手の飼料会社か商社が、工場と顧客を目当てに取り込む筋だ。ただ持ち合いの株主が多い限り、外から強い要求が来ることはない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
業界の再編はこの会社の追い風になる。小さな飼料の工場は人手と設備の更新に耐えられず、次々に閉じる。地域の顧客をしっかり握る日和産業には、閉じた工場の量が流れてくる。西日本と東北に工場が散らばっていることは、配送の距離が勝負の飼料では強みだ。
利ざやも改善している。2026 年 3 月期の営業利益率は 3.2% と過去最高で、値上げと配合の工夫が効き始めた。物価が上がる世界では、加工と配送の費用の上昇を毎回の改定で売値に載せられる。
そして資産が厚い。純現金 50 億円と豊田通商の株で、時価総額をほぼ賄える。大手や商社が再編で取り込みに来れば、その価値は表に出る。
経営は堅実で、借金もない。原料の急騰の局面でも、基金の仕組みと現金の厚さで耐えられる。悪い年を越えられる会社は、同業が減るほど残りの量を取れる。工場の更新を済ませれば、人手の少ない効率のよい工場で 10 年戦える。豊田通商やカーギルとの関係も原料の調達で効く。
慎重な見方
2026 年 3 月期の利益率は一時の山だ。原料の値段が下がる局面では、改定までの時間差で利ざやが膨らむ。逆の局面では縮む。過去 10 年の営業利益率の中央値は 1.5% 前後で、2023 年 3 月期は赤字だった。会社自身も、来期は利益が減ると見ている。
量は減る。畜産農家の廃業は止まらず、豚と乳牛は減り続ける。規模の大きい農家ほど値引きを強く求め、全農系や大手との競争で利ざやは広がらない。シェア 2% 前後の会社に値段を決める力はない。
厚い現金も株主には届かない。取引先が上位株主に並び、還元は配当だけ。自己資本利益率が 2% 台のまま資本が積み上がれば、その資本は帳簿の額の何分の一の価値しか持たない。
工場の更新の費用も重い。物価と建築費が上がる中で古い工場を建て替えれば、償却を超える現金が出ていく。量が減る市場で、その投資が報われる保証はない。規模で勝てない会社が設備で勝負するのは分が悪い。
どちらに重みを置いたか
利益率の山が一時のものだという指摘は、過去の利益の振れから見て強い。再編の追い風は事実だが、規模の小さい会社が得をするとは限らない。確率は中立を厚くし、やや悲観を楽観側より厚く置いた。現金の価値は、戻り方を低く見ることで表した。資産の厚さは事実だが、稼ぐ力に結び付かない資産は株主の価値を大きく押し上げない。筆者は慎重な見方の方が強いと判断した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 501 円91 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 86 円15 億円)。 今の値に割り戻すと 284 円51 億円、今との差 −13.9%、 期待の年率 +5.9%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 814 円148 億円 | 120 円22 億円 | +183.3% | +11.0% | 75 円14 億円 |
| やや楽観 | 20% | 681 円123 億円 | 104 円19 億円 | +137.7% | +9.0% | 157 円28 億円 |
| 中立 | 38% | 571 円104 億円 | 90 円16 億円 | +100.4% | +7.2% | 251 円46 億円 |
| やや悲観 | 24% | 295 円53 億円 | 68 円12 億円 | +10.2% | +1.0% | 87 円16 億円 |
| 悲観 | 10% | 114 円21 億円 | 45 円8 億円 | −51.8% | −7.0% | 16 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 501 円91 億円 | 86 円15 億円 | +77.6% | +5.9% | 586 円106 億円 |
今の株価時価総額 330 円60 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 再編で量を取り、利ざやも保つ 利益 11 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 814 円148 億円
人手と設備の更新に耐えられない小さな飼料の工場が閉じ、その顧客が日和産業に移る。国内の量は減るが、会社の販売量は 10 年で横ばいを保つ。
加工と配送の費用の上昇は、3 か月ごとの改定で売値に載る。配合の工夫で単価も少し上がり、営業利益率は 2.8% と 2026 年 3 月期に近い水準で続く。
純利益は 10 億円台に乗る。それでも自己資本は 240 億円に積み上がり、自己資本利益率は 4% 台にとどまる。現金は使い道がなく積み上がる。
それでも、量を取った分だけ工場の稼働が上がり、利益は今の 3 倍近くになる。再編の相手として見られる立場も強まる。
- 飼料(配合飼料):数量 48.0(配合飼料の販売量(万トン・推定))× 価格 12(1万トンあたりの売上(億円)。原料の相場と物価で動く)→ 売上 594 億円・営業利益 17 億円。数量1.00倍・価格1.36倍
- 畜産(東和畜産):数量 105(出荷量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.26(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。数量1.05倍・価格1.34倍
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.9% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 148 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:小さな工場の閉鎖で量が流れ込み、2026年3月期の利益率に近い水準を保つ筋。利益率の山が続く例は過去になく、確率は低い。
やや楽観 20% 量の減りを利ざやの改善で補う 利益 9 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 681 円123 億円
畜産農家の減少で国内の量は細るが、鹿児島と東北の大手の顧客をつなぎとめ、販売量は 10 年で 3% 減にとどまる。
値段は原料と物価に沿って改定でき、利ざやは 2.4% と過去の平均を上回る。神戸と三原の工場の効率化で、人手の不足もしのぐ。
純利益は 9 億円弱になる。配当は性向 3 割で続き、自社株買いはない。自己資本利益率は 4% 弱で、資本の重さは変わらない。
現金は使い道がないまま積み上がり、持ち合いの株主構成も変わらない。会社は堅実だが、株主に戻る額は少ない。工場の更新は自己資金で賄い、借金は増やさない。
- 飼料(配合飼料):数量 46.5(配合飼料の販売量(万トン・推定))× 価格 12(1万トンあたりの売上(億円)。原料の相場と物価で動く)→ 売上 567 億円・営業利益 14 億円。数量0.97倍・価格1.34倍
- 畜産(東和畜産):数量 100(出荷量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.25(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 25 億円・営業利益 0 億円。数量1.00倍・価格1.32倍
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.1% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 123 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:量は少し減るが、値上げと配合の工夫で利益率が過去の平均より高く保たれる筋。2024〜2026年の改善が半分ほど残るとみて、中立に次ぐ厚さ。
中立 38% 量は1割弱減り、利ざやは平均に戻る 利益 7 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 571 円104 億円
国内の畜産農家の減少で、配合飼料の量は 10 年で 1 割弱減る。豚と乳牛の減りを、鶏の堅さが一部補う。日和産業のシェアは変わらない。
値段は原料の相場と物価に沿って改定され、利ざやは 2% と 2026 年 3 月期の山から平均へ戻る。利益の振れは原料の改定の時間差で毎年起きるが、10 年をならせばこの水準だ。
純利益は 7 億円前後。配当は性向 3 割で、現金は使われずに積み上がる。自己資本利益率は 3% 前後で、資本コストを大きく下回ったままだ。
工場の更新は、古い設備の償却が取得した時の値段のまま残る中で、新しい値段の投資になる。利益は物価で見かけ上ふくらむが、現金はその分細る。
- 飼料(配合飼料):数量 44.6(配合飼料の販売量(万トン・推定))× 価格 12(1万トンあたりの売上(億円)。原料の相場と物価で動く)→ 売上 544 億円・営業利益 11 億円。数量0.93倍・価格1.34倍
- 畜産(東和畜産):数量 100(出荷量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.25(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 25 億円・営業利益 0 億円。数量1.00倍・価格1.30倍
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.4% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 104 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去10年の利益率の平均と、国内の畜産の頭数の減少をそのまま延ばした筋。業種のノートの見方に沿い、最も厚く置く。
やや悲観 24% 畜産の縮小と値引きで利ざやが細る 利益 5 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 295 円53 億円
豚熱や鳥インフルエンザが繰り返し、西日本の畜産農家の廃業が早まる。日和産業の販売量は 10 年で 15% 減る。
規模の大きい農家と系列の会社は値引きを強く求め、全農系と大手との競争で利ざやは 1.4% に縮む。工場の稼働が落ちて固定費が重くなり、どこかの工場を閉じる判断を迫られる。
純利益は 4〜5 億円にとどまる。現金は残るが、工場の閉鎖と更新に一部を使う。
赤字の年が 2〜3 度あり、そのたびに配当の額が減る。自己資本利益率は 2% 前後に沈む。再編の話が来ても、条件は今より厳しくなっている。
- 飼料(配合飼料):数量 41.0(配合飼料の販売量(万トン・推定))× 価格 12(1万トンあたりの売上(億円)。原料の相場と物価で動く)→ 売上 485 億円・営業利益 7 億円。数量0.85倍・価格1.30倍
- 畜産(東和畜産):数量 95.0(出荷量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.24(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 23 億円・営業利益 0 億円。数量0.95倍・価格1.28倍
倍率:ROE 2.0%。稼ぐ力(純利益÷k)で測り、工場の閉鎖の負担と利益の先細りを見て1÷kの6割強の7.5倍。余った現金は谷で工場の更新に食われるとみて0.75倍。
確率:量の減少が早く、大手との競争で利ざやが過去の平均を下回る筋。2023年3月期の赤字のような谷が10年のうちに何度か来るとみて、楽観側より厚くした。
悲観 10% 量が4分の1減り、利益がほぼ消える 利益 2 億円 · PER 6.5 倍 · 株価時価総額 114 円21 億円
家畜の伝染病が西日本で広がり、主な顧客の農場が減産や廃業に追い込まれる。販売量は 10 年で 4 分の 1 減る。
大手と全農系が値段を下げて量を取りに来るため、利ざやは 0.6% まで縮む。工場の閉鎖と人の整理で、利益はほぼ残らない。
東和畜産も赤字になる。会社は現金で耐えるが、再編の相手からは安く見られ、少数株主が受け取る価値は帳簿よりずっと小さい。
工場をいくつか閉じても固定費は残り、自己資本利益率は 1% を割る。現金は存続の支えにはなるが、株主の価値を増やす力にはならない。再編の相手も、量の減った工場には値段をつけない。
- 飼料(配合飼料):数量 36.0(配合飼料の販売量(万トン・推定))× 価格 11(1万トンあたりの売上(億円)。原料の相場と物価で動く)→ 売上 409 億円・営業利益 2 億円。数量0.75倍・価格1.25倍
- 畜産(東和畜産):数量 85.0(出荷量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.24(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 20 億円・営業利益 0 億円。数量0.85倍・価格1.25倍
倍率:ROE 0.8%。稼ぐ力(純利益÷k≒19億円)が上限で、利益がさらに縮む恐れを見て1÷kの55%の6.5倍。余った現金は半分の15億円、戻り方0.75で足した。純現金を下回るのは、清算されない限り現金の使い道を少数株主が決められないため。
確率:家畜の伝染病と農家の廃業が重なり、大手の再編からも外れる構造的な負け筋。純現金があり存続は保てるので1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
飼料(配合飼料)
輸入穀物を配合した鶏・豚・牛の飼料を畜産農家に売る。
| 数量配合飼料の販売量(万トン・推定) | 価格1万トンあたりの売上(億円)。原料の相場と物価で動く | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 48.0 | 9.10 | 437 | 15 |
| 10 年後 中立 | 44.6 | 12 | 544 | 11 |
取り方:数量の開示がないため、飼料の売上436.69億円を配合飼料の平均の売値約9.1万円/トン(推定)で割り、年約48万トンとした。国内の配合飼料約2,400万トンの2%前後。
畜産(東和畜産)
鹿児島で畜産物を生産・販売する子会社。
| 数量出荷量の指数(2026/03期=100、推定) | 価格指数1あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.19 | 19 | 0 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.25 | 25 | 0 |
取り方:売上19.10億円を100とした出荷量の指数(推定)。頭数の開示がないため。
リスクと懸念
原料相場と改定の時間差
とうもろこし・大豆かすの相場と為替が動くと、3か月ごとの改定までの間に利ざやが振れる。急騰の局面では赤字になる年もある。
畜産の縮小
農家の高齢化と廃業で、豚と乳牛を中心に国内の頭数が減る。量が減ると工場の稼働が下がり、固定費が利ざやを削る。
家畜の伝染病
鳥インフルエンザや豚熱が顧客の地域で出ると、その地域の飼料の量が一気に減る。顧客の農場の経営悪化で売掛金の回収も危うくなる。
規模の不利
シェアは2%前後で、全農系や大手の飼料会社に比べ原料の調達と配送の密度で不利。値下げ競争になれば先に利ざやを失う。
資本の効率の低さ
自己資本利益率は2〜3%と資本コストを大きく下回る。現金と持ち合いの株が積み上がっても、少数株主に戻る道筋が見えない。
今後の分かれ目
- 営業利益率が2%台を2年以上保つ
- 2026年3月期の改善が一時でなかった証拠で、やや楽観の筋に近づく。
- 自社株買いや配当性向の引き上げを打ち出す
- 余った現金の戻り方が上がり、価値は今の試算より上に出る。
- 大手の飼料会社や商社と資本提携・統合する
- 工場と顧客の価値が表に出る。持ち合いの株主の意向で条件が決まる。
- 顧客の地域で家畜の伝染病が広がる
- 量が急に減り、やや悲観の筋に寄る。
- 工場の閉鎖・集約を発表する
- 短期は費用が出るが、稼働の改善で利ざやが上がる余地がある。
見ておくもの
- 飼料事業の営業利益率
- 配合飼料の工場渡し価格と改定の幅
- 西日本の家畜の伝染病の発生
- 配当と自社株買いの方針
- 業界の工場の閉鎖・統合
倍率と資本コストの決め方
数量は配合飼料の販売量(売上と平均の売値からの推定、約48万トン)に国内の畜産の頭数の減少を当て、価格は原料と物価で10年1.34倍とした。ROEは全筋書きで資本コスト8.25%を大きく下回るので、PERは1÷kを上限に利益の質で割り引いた。PBR 0.3倍という今の値付けや過去のPBRは使っていない。純現金50億円のうち30億円を余った現金とした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→12.12 倍・やや楽観 PER 9.5→12.12 倍・中立 PER 8.5→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality+1.0%で8.5%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.25%。