結論
meito(旧名糖産業)は、アルファベットチョコレートや粉末飲料で知られる名古屋の中堅菓子メーカーだ。この会社の値打ちを決めるのは菓子そのものではない。取引先などの株式を中心にした投資有価証券で、時価はおよそ460億円ある。時価総額の大半をこの持ち株が占める。筆者の結論は、今の値段は割高というものだ。本業の稼ぎがまだ薄いからである。
本業は食品が売上の9割弱で、営業利益率は6%台にとどまる。化成品(チーズ用の酵素など)は利益率が高いが、売上は35億円しかない。営業利益は直近で12億円、今期の会社予想でも18億円だ。純利益の半分近くは受取配当と株の売却益で、本業の力ではない。
会社は変わり始めている。配当を約5割増やし、自社株買いを進め、持ち株の売却も加速する。一方で新ゼリー工場などに大きく投じ、借入は1年で倍近くになった。値打ちが上がるかどうかは、持ち株を株主に返すか、利回りの低い工場や不動産に回すかで決まる。
10年後の中心は、営業利益が20億円台前半、持ち株が値上がりを含めて600億円弱の姿だ。それでも資本コストで割り引くと今の値段に届かない。割安が出るのは、持ち株を大きく返し、新工場が利益率を押し上げた時だけだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「中堅の菓子メーカーに、大きな株式のポートフォリオがくっついた会社」だ。
まず、株主のものになる利益、つまりオーナー利益を考える。本業から出るのは、営業利益から税を引いて10億円前後だ。これに持ち株の配当が10億円強乗る。配当は、株を持ち続ける限り入る収入で、悪くはない。ただ、事業を営んで得た利益ではない。
次に、資本の使い方を見る。優れた経営者は、稼いだお金を、資本コストを上回る場所に使う。この会社は長い間、株を寝かせたまま、ROEを2%台に沈めてきた。直近で株を売り、配当を増やし、自社株買いに動いたのは前進だ。しかし、売ったお金の一部を、利回りが資本コストに届かない工場や賃貸に回している。これは価値を削る使い方になりうる。
安全域は、悪くない。持ち株の時価が借入を大きく上回り、事業が傾いても資産が支える。ただし、割り引く時間を考えると、今の値段にはまだ余裕がない。
筆者は、持ち株が株主に返るまでは、この会社を安く買えたとは言えないと考える。割安になるのは、売却益が自社株買いと配当に回り、工場の投資が結果を出した時だ。
何で稼ぐ会社か
事業は三つある。食品、化成品、不動産で、売上の9割弱を食品が占める。
食品は、1970年発売のアルファベットチョコレートを看板に、スティックタイプの粉末飲料、アイスクリーム、ゼリー、キャンディなどを作る。売上は約250億円で、内訳は菓子が約190億円、粉末飲料が約30億円、冷菓が約20億円だ。他社ブランドの受託生産も混じる。子会社には、さつまいも菓子の通販を営むおいもやと、ゼリーを作るエースベーカリーがある。
化成品は、チーズ作りに使う凝乳酵素(レンネット)、脂肪を分解する酵素(リパーゼ)、血漿代用剤の原料になるデキストラン系の薬品を作る。売上は約35億円と小さいが、利益率は2割を超える。事業ごとの利益では、全体の3割近くを稼ぐ。売上の1割を超える取引先はない。
不動産は、ゴルフ場と賃貸で、売上は4億円足らずだ。利益率は5割あるが、規模は小さい。
全社でみると、事業ごとの利益を足しても、本社の費用が15億円ほどかかり、営業利益は12億円まで縮む。ここに取引先などの株式から入る受取配当(年に十数億円)が乗って、経常利益は29億円になる。会社の最終利益の半分近くは、持ち株の配当で支えられている。本業だけを見ると、大きな会社ではない。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、あるにはあるが浅い。
食品の強みは、半世紀以上続く定番ブランドと、コンビニやスーパーの棚を長く押さえてきた営業力だ。ただ、チョコレートも飴も粉末飲料も、大手が厚い。明治、ロッテ、森永製菓が先頭で、meito の菓子売上は国内の菓子市場の1%に届かないと筆者は推計する。値段を自分で決める力は弱い。営業利益率は2020年代前半に1〜3%まで沈み、2024年からの内容量変更と値上げで、ようやく6%台に戻った。
光るのは化成品だ。レンネットやリパーゼは世界のニッチ市場で、利益率は2割を超える。ただ、会社自身が海外の酵素メーカーとの競争が強まっていると述べている。規模も小さく、食品の薄さを補うには足りない。
資本の使い方は、長く弱かった。純資産の7割ほどが株式で眠り、ROEは過去10年の中央値で2%に届かない。PBRは長く1倍を割っていた。変化は直近2年で、株を売り、配当を増やし、自社株買いを始めた。この方向は評価できる。ただ、同時に借入を倍にして工場へ投じており、本当に株主を向いているかは、数年の実績を見ないとわからない。
筆者は、事業の質を並みから、やや下と見る。強い堀とは呼ばない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
菓子市場は、数字の上では好調だ。2025年の小売額は4兆円を超え、前年より5%ほど伸びた。ただ、伸びの中身は値上げだ。原材料と包装資材が上がり、メーカーは値上げと内容量の削減を重ねてきた。
数量は、人口とともに細ると筆者は見る。年に0.5〜1%の減少が続く。それを小分け菓子、ゼリー、冷菓、高たんぱく系のような新しい需要が部分的に補う。10年で見れば、市場全体の数量はほぼ横ばいか、わずかに減る程度だ。
競争の形は、大手が棚を押さえる寡占に近い。チョコレートは明治、ロッテ、森永製菓、グリコ。スナックはカルビー。meito はこの外側にいて、定番ブランドと受託で食い込む。近い会社は同じ領域の森永製菓、江崎グリコ、ブルボンだが、規模もブランド力もmeito は一回り小さい。
原料では、カカオ相場が下落に転じている。ただ会社の説明では、高い値段で仕入れた在庫が原価に出尽くすまで時間がかかる。2026年3月期は、棚卸資産の評価損で営業利益が5億円ほど削られた。相場が下がれば原価は楽になるが、同時に値上げの理由も弱まる。値段を維持できるかが、利益率の分かれ目になる。
化成品は別の市場だ。チーズの世界消費が増えるにつれ、凝乳酵素の需要も伸びる。一方で、海外の大手酵素メーカーが価格と品質で攻めてくる。meito は用途を広げて高付加価値品を売る戦略だが、世界の中では小さな会社である。
資本政策と M&A
この会社の資本政策は、持ち株をどうするかに尽きる。
投資有価証券は、2025年3月末で約430億円あった。その後の株高で86億円増えたあと、2026年3月期だけで59億円を売った。前の期には33億円の売却益も出している。次の中期計画(2028年3月期から)では、保有株の売却による資金づくりを最初の施策に挙げた。
使い道は二つに分かれる。一つは株主還元だ。2025年10月に自社株買い20億円と全株の消却を決め、配当も増やした。2026年5月には取得枠を改めて決議し、7〜9月だけで約7.5億円(22万株余り)を買った。今期の配当性向は6割を超える見込みで、2027年1月には株式を2分割する。
もう一つは設備だ。2026年3月期の投資は118億円で、新ゼリー工場、枇杷島工場、賃貸不動産が中心になる。借入は177億円と、1年で約2倍になった。次の計画では、200億円を超える成長投資を掲げる。
M&Aは2024年1月に、おいもやと平松商店を取得した小型案件にとどまる。
大株主には、興和、高砂香料、東邦瓦斯、不二製油が並ぶ。投資事業組合の名義も3本、合計で5%を超える。持ち合いと取引先色が濃く、再編やTOBの余地は残る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
持ち株の価値は、本物だ。時価460億円の株式は、借入177億円を差し引いても、時価総額のほぼ半分に当たる資産になる。会社は、この株を売って成長と還元に使うと明言した。すでに2年続けて売却益を出し、今期は配当性向が6割を超える。自社株買いも、20億円を終えたあと追加する余地がある。
本業にも伸びしろがある。カカオ相場が下がり、値上げが定着すれば、食品の利益率は7%台に乗る。2027年1月に稼働する春日井のゼリー工場は、ゼリーを大きく増産できる。受託生産の需要も、ブランドを持たない中堅にとっては追い風だ。
化成品は、規模は小さいが稼ぐ。リパーゼの海外売上が伸び、第二工場も建てる。利益率2割超の事業が、いまの倍の規模になれば、全体の営業利益は一段上がる。
資本市場の目も変わった。ROEとPBR1倍を掲げ、投資事業組合が5%超を握り、株式の分割と優待の拡充で個人にも訴える。この圧力が続けば、持ち株の返還はさらに加速する。うまく進めば、純資産に近い値段が妥当になる。
慎重な見方
利益の質が悪い。営業利益は12億円しかなく、純利益の半分近くは配当と株の売却益だ。売却益は、株を売り切れば終わる。配当は、投資先の業績次第だ。本業が稼ぐ力は、会社の見かけよりずっと弱い。
資本の使い方にも不安が残る。借入は1年で倍になり、純負債は営業利益の10倍を超える。新工場や賃貸不動産に200億円近くを投じるが、その利回りは資本コストを下回りやすい。株を売って返すのでなく、薄利の設備に変えていくなら、価値は減る。
食品の利益率は、一時的に上がっただけの可能性が高い。2020年代前半は1〜3%だった。値上げは原材料高の後追いで、カカオが下がれば値下げ圧力が出る。大手が棚を押さえ、受託生産は価格で選ばれる。
化成品は、海外の大手に追われている。会社も競争が一段と厳しくなると述べている。
さらに、持ち合いが厚く、外部の圧力で動く会社でもある。株を売るのは、市場が好調な間だけだ。相場が崩れれば、時価は縮み、配当も減る。割り引いて見れば、今の値段は、持ち株への期待を先に払いすぎている。
どちらに重みを置いたか
強いのは慎重な見方だ。持ち株の価値は確かだが、その多くはすでに値段に入っている。上乗せの根拠になる本業は薄く、資金は低利回りの設備へ向かっている。
確率は、中立に35%、やや悲観に25%を置き、楽観側は合わせて3割とした。強気が当たるには、持ち株の大きな返還と工場の成功が両方要る。悲観は、構造的な負けとして1割に抑えた。持ち株が下支えになり、本業が完全に崩れても、会社が傾くことはないからだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,107 円500 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,063 円171 億円)。 今の値に割り戻すと 2,130 円343 億円、今との差 −38.3%、 期待の年率 +1.9%(資本コスト 8.2%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,537 円730 億円 | 1,818 円293 億円 | +84.2% | +6.3% | 508 円82 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,128 円664 億円 | 1,197 円193 億円 | +54.3% | +4.4% | 1,171 円188 億円 |
| 中立 | 35% | 3,725 円599 億円 | 1,072 円173 億円 | +39.1% | +3.4% | 1,679 円270 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,528 円246 億円 | 886 円143 億円 | −30.0% | −3.5% | 603 円97 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,500 円241 億円 | 575 円93 億円 | −39.9% | −5.0% | 207 円33 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,107 円500 億円 | 1,063 円171 億円 | +20.9% | +1.9% | 4,170 円671 億円 |
今の株価時価総額 3,450 円555 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 持ち株を大きく返し、新工場が利益率を押し上げる10年 利益 38 億円 · PER 12.2 倍 · 株価時価総額 4,537 円730 億円
10年後、持ち株の売却が進み、売って得た資金の相当部分が自社株買いと配当で株主に戻っている。保有株は残りが値上がりして500億円台になり、借入は大きく減る。
本業では、春日井のゼリー工場がフル稼働に近づく。受託生産も増え、食品は数量が小さく伸びる。カカオ相場の下落で原価が軽くなる一方、値上げの水準は保たれ、営業利益率は8%に届く。
化成品は、リパーゼの海外売上と新用途で、今の倍近い売上になる。利益率は2割台半ばを保つ。賃貸不動産は早く埋まる。
全体の営業利益は40億円近くになり、株主へ返した額は10年で300億円に達する。それでもROEは4%台にとどまる。資本が厚いままだからだ。この筋書きでも、持ち株の返還が完了した後の姿に、特別な割増は付かない。
- 食品事業:数量 1.5(販売数量(億個換算))× 価格 280(1個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 416 億円・営業利益 33 億円。値上げと数量の両方が伸びる
- 化成品事業:数量 1,065(出荷量(トン換算・推定))× 価格 700(1トンあたりの平均単価(万円・名目))→ 売上 75 億円・営業利益 18 億円。化成品も伸びる
- 不動産事業:数量 135(稼働資産の簿価(億円・推定))× 価格 0.07(稼働資産の簿価あたりの年間収入(収益率・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 5 億円。賃貸が早く稼働
倍率:事業の純利益 38 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.9% が k 8.20% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.2 倍。全体の PER 12.2 倍、時価総額 466 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気が当たるには、持ち株の返還と、工場・賃貸の成功が同時に要る。会社の方針(売却・自社株買い・ROE目標)は追い風だが、過去の実績が薄いので8%にとどめた。
やや楽観 22% 値上げが定着し、持ち株の返還が少しずつ進む10年 利益 33 億円 · PER 12.2 倍 · 株価時価総額 4,128 円664 億円
10年後、食品は値上げが原価高を吸収し、数量も微増する。新ゼリー工場の稼働で、冷菓とゼリーの比重が上がる。営業利益率は7%台に乗る。
化成品は、酵素の海外売上が伸び、薬品も堅調で、売上は65億円ほどになる。利益率は2割強を保つ。
持ち株は80億円ほど売って、工場の借入返済と自社株買いに充てる。残りは値上がりして、600億円近くになる。配当は毎年少しずつ増える。
営業利益は30億円近くまで上がる。会社の目標の水準には届くが、資本が厚いため、ROEは4%台前半にとどまる。本業の稼ぎが増えても、資本の使い方が変わらなければ、株主に残る価値の伸びは限られる。
- 食品事業:数量 1.4(販売数量(億個換算))× 価格 274(1個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 379 億円・営業利益 27 億円。値上げが定着し数量も微増
- 化成品事業:数量 958(出荷量(トン換算・推定))× 価格 680(1トンあたりの平均単価(万円・名目))→ 売上 65 億円・営業利益 14 億円。酵素の海外売上が伸びる
- 不動産事業:数量 130(稼働資産の簿価(億円・推定))× 価格 0.07(稼働資産の簿価あたりの年間収入(収益率・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 4 億円。賃貸が計画どおり稼働
倍率:事業の純利益 33 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.2% が k 8.20% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.2 倍。全体の PER 12.2 倍、時価総額 400 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社は方針を出し、配当・自社株買いを実際に動かしている。楽観の一歩手前の筋書きに2割強を置いた。
中立 35% 数量は小さく増え、持ち株は値上がりして残る10年 利益 28 億円 · PER 12.2 倍 · 株価時価総額 3,725 円599 億円
10年後、国内の菓子は人口減で数量が細るが、ゼリー・冷菓・受託の増産が補う。食品の数量は今の1.05倍ほどで、値上げは物価並みだ。営業利益率は6%で、今より少し下がる。人件費や減価償却が重くなるためだ。
化成品は、酵素の増産で緩やかに増収する。海外との競争で利益率は2割そこそこにとどまる。賃貸不動産は新しい物件が加わり、利益が少し増える。
営業利益は20億円台前半だ。本社の費用は物価並みに増え、事業の利益を食う。
持ち株は、60億円ほど売って借入を返し、残りは名目で年4%ほど値上がりして、600億円近くになる。配当は増えるが、売却益も入るので、純利益はほぼ28億円になる。自己資本は評価差額で増えるが、純利益に対するROEは4%に届かない。この会社が資本コストを超える稼ぎを出すには、10年では足りないと筆者は見る。
- 食品事業:数量 1.3(販売数量(億個換算))× 価格 268(1個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 354 億円・営業利益 21 億円。数量は小さく増え値上げは物価並み
- 化成品事業:数量 888(出荷量(トン換算・推定))× 価格 670(1トンあたりの平均単価(万円・名目))→ 売上 60 億円・営業利益 13 億円。酵素の増産で緩やかに増収
- 不動産事業:数量 140(稼働資産の簿価(億円・推定))× 価格 0.06(稼働資産の簿価あたりの年間収入(収益率・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 4 億円。賃貸が加わる
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.5% が k 8.20% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.2 倍。全体の PER 12.2 倍、時価総額 336 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の方針と、薄利の実績の中間に置いた中心の筋書き。持ち株の値上がりを名目4%、売却は60億円ほどとした。
やや悲観 25% 値上げが一部戻り、薄利と新設備の重さが残る10年 利益 13 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,528 円246 億円
10年後、カカオなど原料が下がり、大手が値下げや増量で攻めてきて、meito の値上げの一部が戻る。食品の数量は人口減で細り、営業利益率は4%台に落ちる。
新ゼリー工場は、稼働率が思うように上がらない。減価償却だけが先に重く出る。賃貸不動産も、空室が出て利回りが下がる。
化成品は、海外の大手との価格競争で利益率が1割台に下がる。
営業利益は12億円前後にとどまり、借入の利払いが増えて、純利益は13億円ほどになる。持ち株の売却は、赤字の穴埋めと借入返済に使われ、還元はほとんど増えない。保有株は市場の下げもあり、350億円ほどまで縮む。ROEは2%前後で、資本コストをはるかに下回る。
- 食品事業:数量 1.2(販売数量(億個換算))× 価格 260(1個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 318 億円・営業利益 14 億円。値上げが一部戻り数量は細る
- 化成品事業:数量 781(出荷量(トン換算・推定))× 価格 640(1トンあたりの平均単価(万円・名目))→ 売上 50 億円・営業利益 10 億円。価格競争で利益率が低下
- 不動産事業:数量 120(稼働資産の簿価(億円・推定))× 価格 0.06(稼働資産の簿価あたりの年間収入(収益率・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 3 億円。空室が出る
倍率:稼ぐ力だけなら事業の純利益12.8億円×PER9.5倍で約122億円にとどまり、悲観の床(約260億円)を下回る。床は「稼ぐ力」と「売れる資産の税後」の大きい方なので、この筋書きでも売れる資産を拠り所に、今の自己資本614.5億円(買い戻し後)に0.40倍を掛けた約246億円に置いた。保有株の含み益は余り資産として足すのではなく、床として使う。借入が重く、今の純負債141億円を足したEV÷営業利益は高いため、倍率だけで割安とは見ない。
確率:食品の利益率はもともと1〜3%の実績が長く、カカオ安や競争で値上げが戻る可能性は小さくない。やや悲観に25%を置いた。
悲観 10% 棚を失い、新設備が重荷になって本業が縮む10年 利益 −4 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,500 円241 億円
10年後、食品は大手に棚を奪われ、数量は15%減り、値上げも通らなくなる。営業利益率は1〜2%に沈む。定番ブランドの力は残るが、利益を生まない。
春日井のゼリー工場、枇杷島工場、賃貸不動産と、200億円近くを投じた設備は、稼働率と利回りが計画に届かず、減損も出る。借入の利払いは3.5%に上がり、利益を食う。
化成品は、海外の酵素大手に価格で押され、売上は縮み、利益率は1割台に下がる。
営業利益は赤字に落ち、純利益も小さな赤字になる。持ち株は、穴埋めのための売却が続き、残りも相場の下落で230億円ほどに縮む。売却代金は損失の穴埋めと借入の返済に消え、還元は小さい。会社は存続するが、優良な事業ではなくなる。
- 食品事業:数量 1.1(販売数量(億個換算))× 価格 250(1個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 268 億円・営業利益 4 億円。棚を失い数量も価格も縮む
- 化成品事業:数量 639(出荷量(トン換算・推定))× 価格 560(1トンあたりの平均単価(万円・名目))→ 売上 36 億円・営業利益 5 億円。海外に押されて縮小
- 不動産事業:数量 100(稼働資産の簿価(億円・推定))× 価格 0.06(稼働資産の簿価あたりの年間収入(収益率・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 2 億円。賃貸の利回りが落ちる
倍率:赤字の筋書きなのでPBRで置いた。今の自己資本614.5億円(買い戻し後)に0.40倍を掛けた値で、床は保有株の時価460億円の7割(含み益への税と売り急ぎの値引き)から純負債を引き、工場・土地の売却額を足した額に近い。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.388 倍・時価総額 241 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:構造的な負け筋は、棚の喪失と過大な投資の失敗が重なる姿。持ち株が下支えするので、会社が傾く確率は低く、1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
食品事業
チョコレート、粉末飲料、アイスクリーム、ゼリー、キャンディなどの製造販売。子会社のおいもや、エースベーカリーを含む。売上構成比は9割弱。
| 数量販売数量(億個換算) | 価格1個あたりの出荷単価(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.3 | 200 | 252 | 17 |
| 10 年後 中立 | 1.3 | 268 | 354 | 21 |
取り方:開示の売上251.7億円を、菓子・粉末飲料・冷菓の1個あたりの出荷単価を200とみて割り、数量を推定した(単価は円)。国内の菓子の小売4.1兆円に対し、卸値で190億円の菓子売上は小売換算で0.7%ほどだ。営業利益は開示のセグメント利益17.4億円(全社費の前)。価格は名目で物価並み(10年1.34倍)に上げる。数量は実質で、人口減を受託・ゼリー・冷菓で補い、中立は10年で1.05倍。
化成品事業
チーズ用凝乳酵素(レンネット)、リパーゼ、デキストラン系の薬品などの製造販売。売上構成比は1割強で、利益率は2割を超える。
| 数量出荷量(トン換算・推定) | 価格1トンあたりの平均単価(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 710 | 500 | 36 | 8 |
| 10 年後 中立 | 888 | 670 | 60 | 13 |
取り方:開示の売上35.5億円(酵素20.6、薬品12.8、その他2.1)を、平均単価を1トンあたり500万円と仮定して割り、出荷量を710トンと推定した。開示に数量はない。営業利益は開示のセグメント利益8.1億円。価格は名目で物価並みに上がる。数量は海外のリパーゼ・用途拡大で、中立は10年で1.25倍。
不動産事業
ゴルフ場の運営と不動産の賃貸。売上は4億円足らずで、利益率は5割。
| 数量稼働資産の簿価(億円・推定) | 価格稼働資産の簿価あたりの年間収入(収益率・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 78.0 | 0.05 | 4 | 2 |
| 10 年後 中立 | 140 | 0.06 | 8 | 4 |
取り方:開示の売上3.9億円を、収益率5%と仮定して割り、稼働資産を78億円相当と推定した。営業利益は開示のセグメント利益2.0億円。賃貸不動産に62億円の投資を計画しており、10年後は稼働資産が増える。既存分の収入は物価で上がり、新規分は取得原価に対し4〜5%で回る。
リスクと懸念
利益の質(配当と売却益への依存)
純利益の半分近くは、持ち株の配当と売却益だ。売却益は株を売り切れば終わり、配当は投資先の業績で動く。本業の営業利益が12億円と薄いため、持ち株の収入が減ると、利益は目に見えて縮む。会社の予想する純利益は、売却益を含まない形でも、前期の7割にとどまる。
持ち株の値下がりと資本の使い道
持ち株は時価で純資産の7割前後を占め、相場が崩れれば純資産と配当が同時に減る。売却益を出しても、使い道が利回りの低い工場や賃貸なら、価値は増えない。株主への返還が方針どおり進むかが、いちばんの分かれ目だ。
借入の急増と設備投資の回収
借入は1年で2倍近い177億円になった。ゼリー工場、枇杷島工場、賃貸不動産に、次の計画でも200億円を超える投資を掲げる。借り換えの金利は3.5%前後に上がる。稼働率や利回りが計画に届かなければ、減価償却と利払いが営業利益を食う。
食品の値決め力の弱さ
営業利益率は2020年代前半に1〜3%まで落ちた。今の6%台は、内容量の変更と値上げで戻した水準だ。カカオ相場が下がれば、値下げ圧力と棚の競争が強まる。大手が値段を決める市場で、meito は受け手にまわりやすい。
原料と包装資材の変動
カカオ、砂糖、油脂、包装資材の相場が利益率を左右する。2026年3月期は、棚卸資産の評価損が営業利益を5億円ほど削った。高い値段で仕入れた在庫が原価に出るまでの時間差も、利益のぶれを大きくする。
化成品の競争
化成品は利益率が高く、会社の稼ぎの3割近くを占めるが、売上は35億円しかない。会社自身が、酵素部門で海外企業との競争が一段と激しくなると述べている。価格で押されれば、全体の利益の下支えが弱くなる。
人口減による国内数量の細り
国内の菓子の数量は、年に0.5〜1%のペースで細る見通しだ。ゼリー・冷菓・受託で補う計画だが、受託は価格で選ばれ、利益率が低い。新工場が稼働しても、数量を伸ばし続けられるとは限らない。
今後の分かれ目
- 保有株の売却益が、自社株買いや特別配当として大きく株主に戻り始めたら
- 持ち株の価値が、そのまま株主に届く。10年の価値は筆者の中立より大きく上がり、割高の判定が適正に近づく。
- 春日井のゼリー工場が、稼働後2年で計画の稼働率に届かなかったら
- 減価償却だけが先に出て、営業利益が圧迫される。投資の回収が遅れ、やや悲観の筋書きに寄る。
- カカオ相場が下がっても、値上げした価格が保たれ、営業利益率が7%台に乗ったら
- 食品の稼ぐ力が上がる。楽観の一歩手前の筋書きが現実になり、割高の幅は縮む。
- 化成品の酵素で、海外の大手が価格を大きく下げてきたら
- 高利益の事業が痩せ、全体の営業利益が3割近く減る。筋書きは悲観側へ傾く。
- 株式市場が大きく下落し、持ち株の時価が2割以上減ったら
- 純資産と配当収入が同時に縮む。本業が薄いため、下支えが弱まり、価値は下に動く。
- 大株主や投資事業組合が、持ち株の売却や再編を強く求めてきたら
- TOBや大規模な還元の可能性が出る。持ち株の返還が加速し、価値は上に動く余地がある。
見ておくもの
- 保有株の売却額と、その使い道(自社株買い・特別配当か、設備投資か)
- 食品の営業利益率(6%台を保てるか)と、カカオ相場
- 春日井ゼリー工場の稼働率と、次期中計(2029)の数値目標
- 借入の残高と、借り換えの金利
- 化成品の売上と利益率(酵素の海外売上)
倍率と資本コストの決め方
食品・化成品・不動産を数量×価格で積み、全社費を引いて営業利益を出した。次に、持ち株の配当と借入の利払いを足して純利益とした。持ち株は余り資産として足していない(配当と売却益が純利益に入っているため)。倍率は、事業のROEとk8.2%から出した正当化PERの8〜9割に置き、今の株価やPERには合わせていない。持ち株の時価は足さず、配当は純利益に残した。悲観の床にだけ使う。株価が倍でも半分でも、数字は動かない作りだ。リースは、工場を自前で持つため影響が小さい。新リース会計後も、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置いた。 持ち株の含み益は悲観の床にだけ使う(2026-10-19 見直し。売却時の税を数える)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→12.2 倍・やや楽観 PER 11.5→12.2 倍・中立 PER 11.5→12.2 倍・悲観 PBR 0.4→0.388 倍)。
資本コスト 8.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality を足して決めた。事業は傾いていないので上乗せは置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 8.20%。