結論
日本食品化工は、輸入とうもろこしからでんぷんと水あめを作る三菱商事の子会社だ。国内のコーンスターチ首位格で、売上の6割強は水あめなどの糖化品が占める。
筆者の結論は「割高」だ。事業は安定しているが、儲けが薄い。営業利益率は過去12年で0〜5%台を行き来し、ROEは平均で5%台にとどまる。資本コストを下回る会社の純資産は、帳簿の額面ほどには評価できない。今の時価総額は純資産の約8割。割安に見えるが、筆者はこの値段を妥当とは見ない。
足元は上向きだ。2027年3月期の4〜6月は、経常利益が前年同期比で19%増えた。会社は通期で経常利益20億円を見込む。ただ、2023年3月期の営業利益35億円は、とうもろこし高の転嫁が進んだ一時の山にすぎなかった。
筆者が見るのは三つある。値上げが原料高に追いつくか。異性化糖の調整金という制度に、利益が左右されること。そして、議決権の約6割を握る三菱商事が、少数株主をどう扱うかだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「堅いが、儲からない装置産業」だ。
オーナー利益、つまり再投資を引いて株主に残る利益は少ない。減価償却が年31億円、設備投資が27億円。営業利益12億円のほとんどは、工場を維持するために使われる。持分法と受取配当を足してようやく純利益が12億円前後になる。
堀は、立地と装置による参入障壁、それに三菱商事の調達網だ。ただ、値段を自分で決められない。原料が上がるたび、利益が削られる。10年後も事業は残るが、今より強いとは言いにくい。
資本の使い方は、まだ控えめだ。純資産は302億円まで積み上がり、ROEは4%前後。資本コストを下回る会社が溜め込むのは、株主にとって割に合わない。中計が配当率(DOE)や自社株買いを打ち出したのは前進だが、ROE目標が5〜6%では資本コストに届かない。
安全域は、今の値段で足りない。PBRは約0.8倍に見えるが、ROEが資本コストを下回る会社の純資産は額面どおりには評価できない。割り引いた価値は、今の時価総額を4割近く下回る。筆者が見たいのは、値上げが原料高に先行して利益率が持続的に上がること、もしくは親会社が少数株主に報いる動きだ。
何で稼ぐ会社か
売上は630億円(2026年3月期)。部門別では、糖化品が396億円、でんぷんが143億円、副産物が68億円、ファインケミカルが23億円。会社は事業を一つのセグメントとして開示する。
原料は米国産のとうもろこしで、全量を輸入に頼る。これをすりつぶして、でんぷん、油、飼料のかすに分ける。でんぷんを酵素で分解すると、水あめ、ぶどう糖、異性化糖の原料などの糖化品になる。清涼飲料、菓子、パン、冷凍食品など、食品メーカーが顧客だ。加工でんぷんは、製紙や繊維の工業用にも使われる。
副産物はコーンサラダ油(コーン油)と飼料用のグルテンフィードで、とうもろこしと穀物の相場に連動する。ファインケミカルは、酵素技術を生かした機能性素材や医薬・化粧品向けの素材で、売上は小さいが利益率は高い。
工場は静岡の富士と岡山の水島の2か所。国内2工場で全国に供給する体制を進めている。富士工場には、ガスタービンによる熱電併給の設備を入れ、CO2の排出を減らしている。
海外は、三菱商事との合弁会社AMSCO(タイ)を通じて展開する。持分法の利益は年3〜4億円で、営業利益12億円に対して無視できない。従業員は約450人。主要な販売先は三菱商事だ。
優良さと弱いところ
堀は、広くないが、手堅い。
強みは三つある。一つは、国内の限られた工場で、安定して原料を調達し、顧客に切らさず納める力だ。とうもろこしは船で運び、でんぷんと糖化品を大量に作る装置産業で、新規参入は難しい。二つ目は、三菱商事の調達網と販路。三つ目は、酵素技術。糖化品の品ぞろえ(オリゴ糖、食物繊維など)を、他社より細かく作り分けられる。
弱いのは値決め力だ。糖化品は、砂糖や異性化糖と競合する汎用品に近い。原料のとうもろこしは国際相場で動き、売値は交渉で後から追いつく。2023年3月期は値上げが進み営業利益が35億円に跳ねたが、2025年3月期と2026年3月期は12億円前後に戻った。
利益の質も弱い。営業利益12億円に対して、減価償却が31億円、設備投資が27億円。稼いだお金の多くが、工場の維持に消える。残りの利益のうち、持分法と受取配当が3割近くを占める。
財務は堅い。自己資本比率は約6割、純有利子負債は自己資本の約25%。経営は、荒川健社長が2021年から率いる。中計ではROE5〜6%を掲げ、資本コストを意識して目標を明示した点は評価できる。ただ、目標そのものが低い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の市場は、成熟して、ほとんど伸びない。
とうもろこしは国内で作られず、全量が輸入だ。コーンスターチの主な競合は、日本コーンスターチ、王子コーンスターチなど。業界団体の日本スターチ・糖化工業会は11社で構成される。工場は沿岸に置き、船で原料を受けるため、立地が限られる。
需要の中心は糖化品だ。異性化糖(ブドウ糖を果糖に変えた甘味料。飲料に多く使われる)の国内消費は、年約78万トンで、ほぼ横ばい。人口が減り、砂糖離れも進むが、飲料や冷凍食品など加工食品の需要が支える。筆者は、10年の数量を3%ほどの減少とみる。
価格は、砂糖類の制度に左右される。異性化糖は、砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律に基づき、農畜産業振興機構が調整金を徴収する仕組みの対象だ。調整金の水準が変わると、メーカーの利益が動く。会社の中計は「異性化糖調整金の増加への対応」を課題に挙げた。
原料のとうもろこしは、米国の作柄、エタノール向け需要、為替で動く。2022年から値上がりし、業界は値上げを進めた。値上げが通るほど客も節約するため、数量は微減する。
成長の余地は、機能性素材(食物繊維、オリゴ糖)と、でんぷんを原料とするプラスチック、タイなど海外にある。ただし、いずれも小さい。中計は、成長投資35億円のうち25億円を新規事業に充てるが、10年で利益を大きく変えるほどではないと筆者は見る。
資本政策と M&A
還元は、中計で明確になった。配当は純資産に対する配当率(DOE)2.5%以上を目標とする。利益が落ちても減らしにくい作りだ。3年間(2025〜27年度)で株主還元30億円を掲げ、配当と自社株買いに充てる。2025年10月には最大32万株・9億円の自社株買いと消却を決めた。
成長投資は3年で35億円。新規事業に25億円、研究開発と人材、DXに10億円を充てる。財務は、純有利子負債が自己資本の1倍を超えない範囲に抑える。
最大の論点は、三菱商事の存在だ。議決権の約6割を持つ親会社で、主要な販売先でもある。自社株買いと消却が続けば、持株比率はさらに上がる。上場子会社には、東証が親子上場の見直しを求めている。完全子会社化の観測はない。仮にTOBがあれば、少数株主は純資産に近い値段を受け取る可能性がある。ただし、10年のうちにそうなる確率は高く見ていない。
M&Aは、大きな買収の歴史がない。持分法のAMSCOは、三菱商事との合弁だ。
株主優待は確認できなかった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
利益の底は、すでに過ぎた。2023年3月期に営業利益35億円を稼いだ実績があり、価格転嫁の力は証明されている。2025年と2026年の12億円は、とうもろこしの下落局面と値上げの時間差で一時的に落ちた姿だ。2027年3月期の4〜6月は、経常利益が前年同期比で19%増え、通期の経常利益20億円は射程に入る。
中計の長期目標も上を向く。2028〜30年度の経常利益27億円は、今の2倍に近い。ファインケミカルは利益率が高く、年5%を超えて伸びている。酵素技術の機能性素材は、食物繊維や医薬の原料として需要が広がる。
財務は余裕がある。自己資本比率は約6割で、DOE2.5%以上の配当と自社株買いを両立できる。ROEは目標の5〜6%から、あるべき姿の8%以上へ上がる余地がある。
最後に、親会社の三菱商事が議決権の6割を持つ。東証が親子上場の解消を促す中、完全子会社化の可能性は消えない。その場合、PBR1倍に近い値段が示され、今の値段を上回る。
慎重な見方
この会社の本業は、ほとんど儲かっていない。営業利益率は過去12年で0%から5%台の間を動き、2019年と2020年の3月期は、営業利益がほぼゼロだった。原料が上がる局面では、値上げが遅れる。直近の営業利益12億円は、売上の2%にすぎない。
利益を支えるのは、本業でない部分だ。持分法の利益が3〜4億円、受取配当も含めると、営業外の収益が営業利益の3割近くを占める。これらはAMSCOの業績と保有株に依存し、会社が自由に増やせない。
国内の需要は人口とともに細る。砂糖離れが進むと、異性化糖の消費も減る。調整金の制度が変わった場合、利益が一気に動く。業界の競合も、同じ需要を奪い合う。
資本政策は、まだ緩い。ROEは4%前後で資本コストに届かず、純資産302億円を積み上げている。目標のROE5〜6%も、資本コストを下回る。親会社の三菱商事が議決権の6割を握っているため、少数株主が他の道を取ることは難しい。完全子会社化があっても、価格が高くなる保証はない。
どちらに重みを置いたか
本業の安定と財務の堅さは、強気の言うとおりだ。しかし、本業が資本コストを稼げないという指摘に、反論は難しい。中立の利益率は3.1%、10年後のROEは5%台で、資本コストの8%強を下回る。この条件では、式から出る倍率は上限が約12倍になる。確率は中立を最大にしつつ、やや悲観と悲観に合わせて37%を置き、悲観側に寄せた。完全子会社化の可能性は、楽観側の確率に反映した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,648 円220 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,971 円93 億円)。 今の値に割り戻すと 3,430 円162 億円、今との差 −30.4%、 期待の年率 +3.0%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 8,682 円411 億円 | 2,430 円115 億円 | +125.4% | +8.5% | 778 円37 億円 |
| やや楽観 | 20% | 6,941 円329 億円 | 2,219 円105 億円 | +85.8% | +6.4% | 1,832 円87 億円 |
| 中立 | 36% | 5,251 円249 億円 | 2,071 円98 億円 | +48.5% | +4.0% | 2,636 円125 億円 |
| やや悲観 | 27% | 2,345 円111 億円 | 1,796 円85 億円 | −16.0% | −1.7% | 1,118 円53 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,285 円61 億円 | 1,268 円60 億円 | −48.2% | −6.4% | 255 円12 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,648 円220 億円 | 1,971 円93 億円 | +34.3% | +3.0% | 6,619 円313 億円 |
今の株価時価総額 4,930 円233 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 値上げが先行し、親会社が少数株主に報いる 利益 34 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 8,682 円411 億円
原料高の局面でも値上げが先行し、営業利益率は糖化品で3.5%、でんぷんで4.5%まで戻る。ファインケミカルは酵素技術の機能性素材が育ち、数量が10年で9割増える。国内の糖化品は数量が微増を保つ。
中計の長期目標だった経常利益27億円を超え、全体の営業利益は約42億円になる。ROEは8%近くまで上がる。親会社の三菱商事は上場子会社の整理を進め、完全子会社化に動く。少数株主には、純資産に近い値段が示される。
ただし、その値段でも、式から出る価値の上限(約12倍)を大きくは超えない。筆者は、この筋書きでも今の値段を大きく上回る収益力は見ていない。
- 糖化品(水あめ・ぶどう糖・異性化糖など):数量 367(販売量(千トン換算・推定))× 価格 1.54(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.11 千円相当))→ 売上 566 億円・営業利益 20 億円。数量 1.02 倍・価格 1.40 倍・営業利益率 3.5%
- でんぷん:数量 150(販売量(千トン換算・推定))× 価格 1.33(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.095 千円相当))→ 売上 200 億円・営業利益 9 億円。数量 1.00 倍・価格 1.40 倍・営業利益率 4.5%
- 副産物(コーン油・グルテンフィードなど):数量 113(販売量(千トン換算・推定))× 価格 0.84(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.06 千円相当))→ 売上 95 億円・営業利益 4 億円。数量 1.00 倍・価格 1.40 倍・営業利益率 4.5%
- ファインケミカル:数量 4.4(販売量(千トン換算・推定))× 価格 14(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.99 千円相当))→ 売上 60 億円・営業利益 10 億円。数量 1.90 倍・価格 1.40 倍・営業利益率 17.0%
倍率:事業の純利益 34 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 411 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げの先行、新素材の育成、親会社の動きが同時にそろう必要がある。実績では2023年3月期の一度だけなので、7%にとどめた。
やや楽観 20% 利益率がゆっくり戻り、新素材が育つ 利益 27 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 6,941 円329 億円
値上げは定着し、原料高の局面でも利益率の落ち込みが浅くなる。糖化品の利益率は3.0%、でんぷんは3.8%。ファインケミカルは数量が6割増える。
営業利益は約34億円、純利益は約27億円で、ROEは6〜7%。中計の目標(ROE5〜6%)を上回る。工場の稼働率が上がり、副産物の収益も安定する。タイのAMSCOの持分法利益が増え、国内の薄さを補う。
ただし、堀が強くなったわけではない。原料が上がる局面に入れば、利益はまた縮む構造は変わらない。ROEが資本コストにわずかに届かない水準に収まる10年になる。
- 糖化品(水あめ・ぶどう糖・異性化糖など):数量 360(販売量(千トン換算・推定))× 価格 1.51(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.11 千円相当))→ 売上 543 億円・営業利益 16 億円。数量 1.00 倍・価格 1.37 倍・営業利益率 3.0%
- でんぷん:数量 147(販売量(千トン換算・推定))× 価格 1.30(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.095 千円相当))→ 売上 191 億円・営業利益 7 億円。数量 0.98 倍・価格 1.36 倍・営業利益率 3.8%
- 副産物(コーン油・グルテンフィードなど):数量 113(販売量(千トン換算・推定))× 価格 0.81(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.06 千円相当))→ 売上 92 億円・営業利益 4 億円。数量 1.00 倍・価格 1.35 倍・営業利益率 4.0%
- ファインケミカル:数量 3.7(販売量(千トン換算・推定))× 価格 13(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.99 千円相当))→ 売上 49 億円・営業利益 8 億円。数量 1.60 倍・価格 1.36 倍・営業利益率 15.5%
倍率:事業の純利益 27 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 328 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027年3月期の回復と中計の長期目標(経常利益27億円)に近い筋書き。ただ堀の強さが足りず、20%を置いた。
中立 36% 数量は微減、価格は物価並み。薄利のまま続く 利益 21 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 5,251 円249 億円
数量は人口減で10年に3%ほど減り、価格は物価並みに上がる。原料高の転嫁は時間差で追いつく。糖化品の営業利益率は2.4%、でんぷんは3.2%。副産物は3.5%、ファインケミカルは14%と、安定した水準を保つ。
営業利益は約26億円。持分法利益と受取配当が営業外で乗り、純利益は約21億円になる。配当率(DOE)2.5%の方針に沿って、配当と自社株買いが続く。
売上は830億円前後で、物価の分だけ増える。ROEは5%台で、中計の5〜6%に収まるが、資本コストには届かない。国内2工場体制の効率化は進むが、事業の質が上がるほどではない。「普通に堅い装置産業」として、10年が過ぎる。
- 糖化品(水あめ・ぶどう糖・異性化糖など):数量 349(販売量(千トン換算・推定))× 価格 1.47(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.11 千円相当))→ 売上 515 億円・営業利益 12 億円。数量 0.97 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 2.4%
- でんぷん:数量 146(販売量(千トン換算・推定))× 価格 1.28(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.095 千円相当))→ 売上 186 億円・営業利益 6 億円。数量 0.97 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 3.2%
- 副産物(コーン油・グルテンフィードなど):数量 113(販売量(千トン換算・推定))× 価格 0.81(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.06 千円相当))→ 売上 91 億円・営業利益 3 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 3.5%
- ファインケミカル:数量 3.0(販売量(千トン換算・推定))× 価格 13(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.99 千円相当))→ 売上 40 億円・営業利益 6 億円。数量 1.30 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 14.0%
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.6% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 248 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率が中計の水準(営業利益率3%前後)で続く筋書き。過去の実績の範囲に収まるので最大の36%を置いた。
やや悲観 27% 原料高に転嫁が遅れ、利益率が今の水準に張り付く 利益 12 億円 · PER 9.1 倍 · 株価時価総額 2,345 円111 億円
原料高に転嫁が追いつかない年が繰り返される。糖化品の営業利益率は1.4%、でんぷんは2.2%と、今の水準に張り付く。副産物は穀物相場の振れで1%台に落ちる。数量は人口減と砂糖離れで8%ほど減る。
工場の稼働率が下がり、固定費の負担が重くなる。国内2工場体制の効率化も、需要減に追いつかない。ファインケミカルの成長は続くが、全体を支えるほどではない。
営業利益は約14億円、純利益は約12億円で、ROEは3%台。配当は純資産に対する率(DOE)の目標に沿って続けるが、自社株買いの余裕は小さい。親会社の三菱商事は、少数株主への対応を急がず、現状維持が続く。
- 糖化品(水あめ・ぶどう糖・異性化糖など):数量 331(販売量(千トン換算・推定))× 価格 1.43(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.11 千円相当))→ 売上 474 億円・営業利益 7 億円。数量 0.92 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 1.4%
- でんぷん:数量 138(販売量(千トン換算・推定))× 価格 1.24(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.095 千円相当))→ 売上 171 億円・営業利益 4 億円。数量 0.92 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 2.2%
- 副産物(コーン油・グルテンフィードなど):数量 107(販売量(千トン換算・推定))× 価格 0.75(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.06 千円相当))→ 売上 81 億円・営業利益 1 億円。数量 0.95 倍・価格 1.25 倍・営業利益率 1.5%
- ファインケミカル:数量 2.6(販売量(千トン換算・推定))× 価格 13(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.99 千円相当))→ 売上 34 億円・営業利益 4 億円。数量 1.15 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 11.0%
倍率:ROE 3.6%(事業の純利益÷自己資本)が k 8.25% 以下なので、伸びても価値は増えず(ためた利益は額面未満)、正当化 PER の上限は 1÷k=12.1 倍。伸びと堀の持ちを低く見て、上限の 7.5 割の 9.1 倍に置いた。
確率:原料高の転嫁の遅れは過去に何度も起きた(2019〜20年、2025〜26年)。繰り返す確率は高く、27%を置いた。
悲観 10% 調整金の変更と原料高が重なり、利益が細る 利益 8 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,285 円61 億円
異性化糖の調整金が増えて収益を圧迫し、国内の需要は砂糖離れで8割に細る。競合が価格で攻め、とうもろこし高の転嫁もできない。糖化品とでんぷんは赤字すれすれの利益率に落ちる。
工場の稼働率が低下し、固定費の負担が重くなる。富士か水島のどちらかの縮小や減損が出る。副産物の収益も、穀物相場の低迷で伸びない。
営業利益は約7億円、純利益も8億円前後で、持分法と受取配当がやっと利益を支える。ROEは2%台。配当は半分近くに減り、自社株買いは止まる。それでも財務は堅く、倒産には遠い。親会社は少数株主への配慮に動かず、会社は低収益のまま長く残る。
- 糖化品(水あめ・ぶどう糖・異性化糖など):数量 295(販売量(千トン換算・推定))× 価格 1.34(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.11 千円相当))→ 売上 396 億円・営業利益 3 億円。数量 0.82 倍・価格 1.22 倍・営業利益率 0.8%
- でんぷん:数量 128(販売量(千トン換算・推定))× 価格 1.16(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.095 千円相当))→ 売上 148 億円・営業利益 2 億円。数量 0.85 倍・価格 1.22 倍・営業利益率 1.5%
- 副産物(コーン油・グルテンフィードなど):数量 99.4(販売量(千トン換算・推定))× 価格 0.69(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.06 千円相当))→ 売上 69 億円・営業利益 0 億円。数量 0.88 倍・価格 1.15 倍・営業利益率 0.0%
- ファインケミカル:数量 2.3(販売量(千トン換算・推定))× 価格 12(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.99 千円相当))→ 売上 27 億円・営業利益 2 億円。数量 1.00 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 8.0%
倍率:ROE 2.2%(事業の純利益÷自己資本)が k 8.25% 以下なので、伸びても価値は増えず(ためた利益は額面未満)、正当化 PER の上限は 1÷k=12.1 倍。稼ぐ力が細り、優位が崩れた筋書きで、自己資本の0.2倍と低いが、純有利子負債77億円を足した EV(企業価値)÷営業利益は約21倍で極端には安くないので、上限の 6.6 割の 8.0 倍に置いた。
確率:調整金の制度変更、国内需要の減少、競合の価格攻勢が重なる筋書き。営業利益がほぼゼロの年が過去にあり、10%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
糖化品(水あめ・ぶどう糖・異性化糖など)
でんぷんを酵素で分解した甘味素材。飲料・菓子・冷凍食品メーカー向け。
| 数量販売量(千トン換算・推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.11 千円相当) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 360 | 1.10 | 396 | 6 |
| 10 年後 中立 | 349 | 1.47 | 515 | 12 |
取り方:2026年3月期の糖化品の売上396億円を、水あめ・ぶどう糖・異性化糖の平均売価(1kg あたり約 0.11 千円と推定)で割り、約36万トンとした。会社はセグメントを分けず、部門別の営業利益は非開示のため、営業利益の配分は推定(全体12.5億円を、糖化品5.5、でんぷん2.5、副産物1.5、ファインケミカル3.0)。数量は実質、物価3%は価格に入れた。
でんぷん
コーンスターチと加工でんぷん。食品用と製紙・繊維などの工業用。
| 数量販売量(千トン換算・推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.095 千円相当) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 150 | 0.95 | 143 | 3 |
| 10 年後 中立 | 146 | 1.28 | 186 | 6 |
取り方:でんぷんの売上143億円を、コーンスターチと加工でんぷんの平均売価(1kg あたり約 0.095 千円と推定)で割り、約15万トンとした。営業利益は推定。数量は実質、物価は価格に入れた。
副産物(コーン油・グルテンフィードなど)
とうもろこしを分離した際に出る油と飼料。穀物と油の相場に連動。
| 数量販売量(千トン換算・推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.06 千円相当) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 113 | 0.60 | 68 | 2 |
| 10 年後 中立 | 113 | 0.81 | 91 | 3 |
取り方:副産物の売上68億円を、油と飼料の平均売価(1kg あたり約 0.06 千円と推定)で割り、約11万トンとした。営業利益は推定。数量は実質、物価は価格に入れた。
ファインケミカル
酵素技術を生かした機能性素材。食品、医薬、化粧品向け。
| 数量販売量(千トン換算・推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.99 千円相当) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.3 | 9.87 | 23 | 3 |
| 10 年後 中立 | 3.0 | 13 | 40 | 6 |
取り方:ファインケミカルの売上22.7億円を、高付加価値素材の平均売価(1kg あたり約 1 千円と推定)で割り、約2千トンとした。営業利益は推定(利益率13%)。数量は実質、物価は価格に入れた。
リスクと懸念
原料高の転嫁の遅れ
とうもろこしは国際相場で動き、売値は交渉で後から追いつく。転嫁が遅れる年は営業利益率が1%台に落ちる。2019年と2020年の3月期は、営業利益がほぼゼロだった。
異性化糖の調整金と制度
異性化糖は、砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律にもとづく調整金の対象だ。水準や制度が変わると、メーカーの利益が動く。会社の中計も、調整金の増加への対応を課題に挙げている。
国内需要の縮小
人口減と砂糖離れで、糖化品やでんぷんの数量は10年で3%ほど減るとみる。調整金の絡む異性化糖は、飲料業界の動向にも左右される。
親会社との関係
三菱商事が議決権の約6割を持ち、主要な販売先でもある。親会社の意向が、少数株主の利益とずれる可能性がある。完全子会社化の価格が高いとは限らない。
営業外の収益への依存
持分法の利益と受取配当が、営業利益の3割近くを占める。AMSCOの業績や保有株の配当が落ちれば、純利益が営業利益を大きく下回る年が出る。
工場の維持と減損
減価償却が年31億円、設備投資が27億円と、利益に対して重い。国内2工場体制のどちらかで稼働率が落ちれば、減損と固定費の負担が出る。
今後の分かれ目
- 2027年3月期の通期で経常利益が20億円に届き、2028年3月期も増益なら
- やや楽観以上の確率を上げてよい。値上げの定着と稼働率の改善が確認できた合図になる。
- とうもろこし相場が再び急騰し、値上げが遅れて営業利益率が1%台に落ちたら
- やや悲観の確率を上げる。転嫁の力が弱いという見立てが裏づけられる。
- 異性化糖の調整金の制度が見直され、水準が変わったら
- 利益への影響を測り直す。メーカーに有利なら楽観寄り、不利なら悲観寄りに動かす。
- 三菱商事が完全子会社化を発表したら
- 提示される値段を純資産と式の上限に照らして確認する。式の価値を大きく上回るなら、楽観の確率を上げる。
- ファインケミカルの売上が年2桁で伸び、利益率が15%を超えて定着したら
- 新規事業の育成が進んだと見て、楽観寄りの数量に修正する。
- 自社株買いが追加され、ROEが7%に向かって上がったら
- 資本効率の改善が本物か、一過性の効果かを見分ける。
見ておくもの
- 四半期ごとの経常利益と、部門別(糖化品・でんぷん・副産物・ファインケミカル)の売上
- とうもろこしの国際相場(シカゴ)と円の水準、売値の改定の発表
- 異性化糖の調整金の水準と、制度の見直し
- AMSCO(タイ)の持分法利益と、新規事業への成長投資の進み
- 三菱商事の議決権比率と、親子上場の方針
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。資本コストは基本7.5%に品質の合計+0.75%を足した8.25%で、10年後の中立のROEが5%台とkを下回るため、PERの上限は1÷k(12.1倍)の約8.5割に置いた。今の時価総額はPBR約0.8倍で見かけは割安だが、ROEが資本コストを下回る会社の純資産は額面どおりに評価しない。今の株価や同業の倍率には寄せていない。営業利益率は過去12年の最高(約7.6%、近年は2023年3月期の5.5%)を超えない3.1%に置き、中計の水準と合わせた。純利益÷営業利益は、持分法と受取配当が乗る分を含めて0.8前後に置いた。2025年10月決議の自社株買いは、株数に反映済みの分が小さいため、自己資本の起点は直近の決算の値のまま使った。工場や事務所の賃借の約束は小さく、新リース会計基準の影響は限定的とみる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→12.12 倍・やや楽観 PER 10.9→12.12 倍・中立 PER 10.3→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。