結論
林兼産業は、山口県下関に本社を置く飼料と食品の会社だ。ブリやウナギの養殖用の餌、豚や牛の配合飼料、霧島黒豚の豚肉、魚肉ソーセージ、エラスチンなどの機能性素材を手がける。筆者の結論は「適正とやや割安の境目」である。帳簿の純資産の半値ほどで買えるが、それは稼ぐ力が資本コストに届かないことの裏返しだ。
2026年3月期は営業利益13億円と過去最高に近い年だった。それでも売上高に対する営業利益率は3%に届かない。原料の穀物や魚粉、豚の相場に左右され、値段を決める力は弱い。次の期の会社の見通しは減益で、第1四半期は営業赤字だった。
強みは、養殖の餌で西日本の大口の養殖業者を押さえている点と、自社の農場から加工までを持つ黒豚の事業だ。新しい中期経営計画は配当性向30%以上と、政策保有株の縮減を掲げた。筆者は、株主への姿勢がようやく動き出したと見る。
10年後の中立でも、利益は今と同じくらいにとどまる。資本は積み上がるが、それを生かす事業の伸びが乏しい。持ち合い株を売って株主に戻す分を足しても、本質価値は今の時価総額を1割ほど上回るにとどまる。帳簿の安さほどの割安さは無い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、帳簿の半値という安さに飛びつくべきではない会社だ。純資産の多くは、利益をあまり生まない工場と農場、そして持ち合いの株でできている。
筆者が見るのは、ならした年の稼ぐ力だ。営業利益は年10億円前後、純利益は持ち合い株の配当と持分法の利益を足して10億円前後が実力だろう。自己資本136億円に対して、ROEは資本コストの8.5%に届かない。ためた利益はその額ほどの価値を生まない。
救いは、経営が株主に現金を戻す方向へ舵を切ったことだ。持ち合い株を売り、配当を厚くすれば、資本が効率よく回る。ただし、その変化はまだ計画の段階にある。
オーナーとして持ち続けたい事業かと問われれば、筆者は迷う。養殖の餌には地味だが確かな強みがある。けれど、資本の多くは低い利回りに眠っている。今の値段は、その眠りが少し覚めることまで映している。今の値段との差は1割ほどで、安全域と呼ぶには薄い。
何で稼ぐ会社か
事業は飼料と食品の2本柱で、売上はほぼ半分ずつだ。利益の多くは飼料が稼ぐ。
飼料では、ブリやタイ、ウナギの養殖業者に餌を売る。魚の種類と成長の段階に合わせて魚粉や穀物を配合し、成績の良い餌を設計する。豚や牛、鶏の配合飼料も作る。原料は輸入のとうもろこしや大豆かす、魚粉で、相場が動けば数か月遅れで売値を改める。九州の大手のブリ養殖業者である兵殖が売上の1割を占める。自社でもウナギを育てて売っている。
食品では、鹿児島の自社農場で霧島黒豚を育て、処理と加工までを一貫で行う。魚肉ソーセージやかまぼこなどの練り製品、レトルト食品、介護食も作る。量は小さいが利益率の高いのが機能性素材で、魚のエラスチンなどを健康食品の会社に売る。米国の食品安全の認定(GRAS)も取った。
Umios(旧マルハニチロ)とは長い縁がある。売上の12%は同社向けで、互いに株を持ち合う。林兼産業が持つUmiosの株は24億円に上る。
売上の構成は年によって大きく動く。前の期には中国の貿易会社向けの取引が消え、飼料の売上が1割以上減った。利益で見ると、飼料が全社の6割、食品が4割ほどを稼ぎ、そこから本社の費用10億円余りを引くと、営業利益が残る。
優良さと弱いところ
優良さで言えば、この会社は薄い利ざやの商売をしている。飼料は原料の相場を売値に載せる仕組みで、1トンあたりの利ざやは小さい。食品の豚肉や練り製品も、量販店や大手の食品会社に値段を握られる。営業利益率は過去20年で3%を超えたことがほぼ無い。
それでも長く続いてきた理由はある。養殖の餌は、魚が育つ速さと死ぬ割合で成績が決まる。成績の良い餌を出す会社から、養殖業者は簡単に乗り換えない。西日本の養殖の現場に密着した支援も、大手の飼料会社との差になる。黒豚は自社の農場から持つことで、品質と供給を自分で守れる。
資本の使い方は改善の途上だ。借金を減らし、配当を増やし、持ち合い株も減らし始めた。新しい中期経営計画は投下資本の利益率5%以上を掲げる。裏返せば、今はそこに届いていない。経営は創業の縁を持つ中部の名を継ぎ、財団が筆頭株主だ。株主の声で急に変わる会社ではない。
筆者は、養殖の餌の強みは本物だが、全社の利益を押し上げるほど大きくはないと見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の配合飼料の需要は、畜産の頭数とともに緩やかに細る。農家の高齢化と廃業が続き、豚や牛を飼う戸数は減り続けている。1戸あたりの規模は大きくなるが、全体の量は増えない。
養殖の餌は事情が少し違う。天然の魚が取れなくなるほど、育てる魚の役割は大きくなる。ブリは海外への輸出が伸び、ウナギも高い値段が続く。一方で、主原料の魚粉は世界的に高く、魚粉を減らした餌の開発が勝負になる。夏の高水温や赤潮は、養殖業者の経営と餌の需要を一気に揺らす。
食肉と加工品は人口減で量が縮む。値上げは通りやすくなったが、量販店のプライベートブランドに押され、利ざやは広がりにくい。豚熱などの病気が出れば、自社の農場ごと処分を迫られる危うさもある。
筆者は、10年の数量は飼料も食品も今より少し減ると見る。値段は原料と物価の転嫁で物価並みに上がるが、それ以上は難しい。
競争相手は、飼料ではフィード・ワン、中部飼料、日清丸紅飼料といった大手で、規模は林兼産業の10倍以上ある。大手は工場の大きさで原料を安く仕入れる。林兼産業は養殖の現場への密着と、魚種ごとの細かい設計で勝負している。食品では、日本ハムなど大手の食肉会社が同じ量販店の棚を争う。
資本政策と M&A
株主への姿勢は、ここ数年で変わった。配当の総額は2025年3月期の2億円から、2026年3月期は3.5億円に増えた。次の期もさらに増える見通しだ。新しい中期経営計画は配当性向30%以上を掲げ、自己株も買ってきた。
いちばん大きいのは政策保有株の縮減だ。今は約42億円を持ち、純資産の3割にあたる。計画はこれを2割以下に減らすとし、クレハと福留ハムの株はすでに売った。最大の保有先は取引先のUmiosで、こちらを売るかが分かれ目になる。
大きな買収は無い。時価総額は70億円ほどと小さく、財団や取引先が株を持つので、外から買われる道は細い。PBRを1倍に近づける目標を、経営が本気で追うかを見たい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
養殖の餌は、これから伸びる数少ない国内の食の市場だ。天然の魚が減り、ブリは海外の日本食ブームで輸出が伸びる。ウナギも完全養殖の技術が進めば、餌の需要は大きく増える。林兼産業は西日本の養殖の現場に深く入り込み、兵殖のような大口の顧客を持つ。魚粉を減らした餌の開発でも先を行く。
食品にも光がある。霧島黒豚はブランドとして定着し、値上げが通る。エラスチンなどの機能性素材は、米国の認定を得て海外の健康食品の会社へ広がる余地がある。利益率の高い素材が育てば、食品の利益率は5%に近づく。
資本の効率も上がる。持ち合い株を純資産の2割以下に減らせば、十数億円の現金が生まれる。配当性向30%以上と自社株買いを続ければ、PBRは1倍に向かう。経営がPBR1倍を目標に掲げたこと自体が変化の証だ。利益が20億円を超える年が続けば、今の時価総額は大きく割安になる。
しかも経営は、この利益を株主に戻すと約束し始めた。利益が伸び、資本が絞られれば、ROEは資本コストを超える。
慎重な見方
利益の源は、相場の波に乗った薄い利ざやだ。2026年3月期の好調は、原料の相場と転嫁のずれがたまたま有利に働いた面が大きい。会社自身が次の期の営業利益を2割以上減ると見込み、第1四半期は早くも赤字になった。
国内の畜産は縮み続ける。豚と牛を飼う農家が減れば、配合飼料の量は戻らない。養殖も夏の高水温や赤潮で一気に揺らぐ。大口の顧客の兵殖とUmiosで売上の2割を占め、片方を失えば痛手は大きい。前の期には中国向けの取引が消え、売上が1割以上減った。
食品は、量販店の安い商品と人口減に挟まれる。自社の農場で豚熱が出れば、全頭を処分する損が出る。
資本の使い方も遅い。持ち合い株を減らすと言っても、最大の保有先は大事な取引先のUmiosで、簡単には売れない。借金も80億円近くあり、金利が上がれば利払いが利益を削る。ROEが資本コストを下回る会社に、帳簿の値段は付かない。
配当を増やしても、利益の水準が変わらなければ、価値はほとんど増えない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。養殖の餌と黒豚には確かな強みがあるが、全社の利益率は長く3%に届かず、次の期も減益の見通しだ。株主への還元が厚くなる変化は本物だが、利益の水準を変えるほどではない。確率は中立を中心に、やや悲観をやや楽観より厚くした。同じ配合飼料の中部飼料・フィード・ワンと同じ形にそろえた。ただし帳簿の割安さは根拠にしない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,721 円141 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 468 円38 億円)。 今の値に割り戻すと 1,116 円91 億円、今との差 +28.5%、 期待の年率 +9.7%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,995 円326 億円 | 735 円60 億円 | +444.9% | +18.5% | 331 円27 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,566 円210 億円 | 591 円48 億円 | +263.7% | +13.8% | 631 円52 億円 |
| 中立 | 38% | 1,801 円147 億円 | 486 円40 億円 | +163.5% | +10.2% | 869 円71 億円 |
| やや悲観 | 25% | 844 円69 億円 | 380 円31 億円 | +41.0% | +3.5% | 306 円25 億円 |
| 悲観 | 10% | 332 円27 億円 | 184 円15 億円 | −40.6% | −5.1% | 52 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,721 円141 億円 | 468 円38 億円 | +152.2% | +9.7% | 2,189 円179 億円 |
今の株価時価総額 868 円71 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 養殖の餌が伸び、持ち合いを解いて資本が回る 利益 22 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 3,995 円326 億円
ブリの輸出とウナギの養殖が伸び、養魚用の餌の量は10年で1割増える。魚粉を減らした餌で成績を出し、九州と四国の大手の養殖業者を押さえる。畜産用は減るが、養魚用の伸びが上回る。
食品では、霧島黒豚のブランドが定着して値上げが通り、エラスチンなどの機能性素材が米国とアジアに広がる。食品の営業利益率は4.5%に上がる。
持ち合い株は計画どおり純資産の2割以下に減り、売った現金は配当と自社株買いに回る。ROEは資本コストをわずかに上回り、PBRは1倍に近づく。
借金も減り、金利の上昇は利益をほとんど削らない。純利益は20億円を超え、配当と自社株買いの額も今の数倍になる。
- 飼料:数量 198(飼料の販売量(千トン、推定))× 価格 18(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 352 億円・営業利益 23 億円。養魚用の伸びで量 1.1 倍・単価は物価をやや上回る
- 食品:数量 36.8(食品の販売量(千トン、推定))× 価格 88(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 325 億円・営業利益 15 億円。黒豚と機能性素材で利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 14.04 倍、時価総額 309 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:養殖の餌の伸びと機能性素材の育成が重なり、持ち合い株の売却も進む筋書き。全部がそろう確度は低い。
やや楽観 20% 利ざやが直近並みに残る 利益 15 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,566 円210 億円
飼料の量は横ばいを保つ。畜産用は農家の減少で細るが、養魚用の伸びで埋める。原料の相場は落ち着き、3か月ごとの改定で利ざやは直近並みに残る。
食品は黒豚と機能性素材の値上げが通り、練り製品の採算も改善する。食品の営業利益率は4%近くまで上がる。
本社の費用は物価並みに増えるが、全社の営業利益は今より少し多い水準に乗る。持ち合い株の縮減と配当性向30%以上は守られる。ROEは資本コストに少し届かないまま、利益はゆっくり積み上がる。
借金の利払いは金利の上昇で少し増えるが、持ち合い株の配当と持分法の利益がそれを補う。純利益は15億円ほどに乗る。
- 飼料:数量 180(飼料の販売量(千トン、推定))× 価格 18(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 315 億円・営業利益 19 億円。量は横ばい・利益率 6%
- 食品:数量 35.0(食品の販売量(千トン、推定))× 価格 87(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 305 億円・営業利益 12 億円。量は横ばい・利益率 3.8%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.8% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 192 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:飼料の利ざやが直近並みに残り、黒豚の値上げも通る筋書き。直近2年の利益の水準が続く形で、2割は置ける。
中立 38% 量は少し減り、利ざやは中央値へ 利益 10 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,801 円147 億円
飼料の量は10年で5%ほど減る。畜産の農家が減り、養殖の伸びはそれを打ち消すほどではない。売値は原料と物価の転嫁で物価並みに上がり、利ざやは過去の中央値に戻る。飼料の営業利益率は5%台半ばに落ち着く。
食品も量は少し減る。黒豚と機能性素材が支えるが、加工品は量販店の安い商品に押される。食品の営業利益率は3%前後で、本社の費用は物価並みに増える。
全社の営業利益は今と同じ10億円台にとどまる。配当性向30%台の還元を続けても、利益の残りが資本に積み上がり、ROEは5%前後に下がる。持ち合い株の一部は売れるが、Umiosの株は残る。
- 飼料:数量 171(飼料の販売量(千トン、推定))× 価格 17(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 295 億円・営業利益 16 億円。量 0.95 倍・単価は物価並み・利益率 5.5%
- 食品:数量 33.3(食品の販売量(千トン、推定))× 価格 86(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 285 億円・営業利益 9 億円。量 0.95 倍・利益率 3.2%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.5% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 131 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量は飼料も食品も少し減り、利益率は過去の中央値に近い水準。過去20年の記録と会社の中計の数字に合う。
やや悲観 25% 畜産の縮小と養殖の不調で利ざやが細る 利益 5 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 844 円69 億円
国内の畜産が想定より早く縮み、畜産用の餌の量は1割以上減る。養殖も夏の高水温と赤潮で数年おきに不調が続き、大口の養殖業者が仕入れ先を分ける。飼料の利ざやは細り、営業利益率は5%を割る。
食品は練り製品と加工品の量が減り、黒豚も飼料と人件費の上昇を売値に載せきれない。食品の利益率は2%台にとどまる。本社の費用を削っても、全社の営業利益は今の半分以下になる。
配当は性向30%を守るが額は細り、借金の利払いが重くなる。資本は積み上がるが、それを生かす事業が無い。
持ち合い株の売却は計画より遅れ、Umiosの株も残る。経営は事業の立て直しを優先し、PBR1倍の目標は遠のく。
- 飼料:数量 153(飼料の販売量(千トン、推定))× 価格 16(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 252 億円・営業利益 12 億円。量 0.85 倍・単価は物価に届かず・利益率 4.8%
- 食品:数量 30.8(食品の販売量(千トン、推定))× 価格 82(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 253 億円・営業利益 6 億円。量 0.88 倍・利益率 2.3%
倍率:ROE 2.6% は k を大きく下回る。価値はこの筋書きの稼ぐ力(純利益 5.0 億÷k≒58 億)まで。上限 1÷k の 7.7 割の 9.0 倍とし、稼ぐ力の内側に置いた。余った現金は谷で食う分を見て 0.75 倍。
確率:畜産の縮小と養殖の不調が重なり、利ざやが細る筋書き。過去にも何度も起きた形なので、やや楽観より厚くした。
悲観 10% 大口の離反と豚熱で赤字に沈む 利益 −6 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 332 円27 億円
大口の顧客の兵殖が仕入れ先を大手の飼料会社に替え、Umios向けの取引も細る。鹿児島の農場で豚熱が出て、黒豚の飼育を一から立て直すことになる。原料の魚粉と穀物が急騰し、売値の改定が追いつかない年が続く。
飼料の利益率は3%に落ち、食品は損益ゼロに沈む。本社の費用が残り、全社は営業赤字になる。配当は大きく減り、借金の返済に現金が回る。
会社は清算されず、工場と農場と持ち合い株を抱えたまま続く。価値は、持ち合い株を税引き後で売れる分を中心にした、今の純資産の2割ほどにとどまる。
借金の利払いも重くのしかかり、持ち合い株の一部を売って返済に回す。
- 飼料:数量 135(飼料の販売量(千トン、推定))× 価格 15(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 208 億円・営業利益 6 億円。量 0.75 倍・利益率 3%
- 食品:数量 28.0(食品の販売量(千トン、推定))× 価格 77(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 215 億円・営業利益 0 億円。量 0.8 倍・損益ゼロ
倍率:赤字なので PBR で測る。今の自己資本 135.7 億に 0.20 倍を掛けた 27 億。稼ぐ力は無く、床は売れる資産(floor_assets_oku の内訳)から置いた。純有利子負債 43 億があるので、EV(時価総額+純負債)で見ても 70 億ほどで、工場・農場の価値を大きく上回らない。
確率:大口顧客の離反、豚熱、原料の急騰が重なり赤字に沈む筋書き。単独では起こりうるが、重なる確度は1割とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
飼料
ブリ・タイ・ウナギなど養殖魚の餌と、豚・牛・鶏の配合飼料。自社でウナギも育てて売る。兵殖など西日本の養殖業者が主な顧客。
| 数量飼料の販売量(千トン、推定) | 価格1 トンあたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 180 | 13 | 232 | 15 |
| 10 年後 中立 | 171 | 17 | 295 | 16 |
取り方:販売量の開示は無いので推定。飼料セグメント売上 231.6 億を、養魚用(1 トン 20 万円前後)と畜産用(9 万円前後)の混ざった平均単価 12.9 万円で割り、約 18 万トンとした。中部飼料(308 万トン)の 6% ほどの規模。物価 3% は単価に入れた。
食品
霧島黒豚の生産から加工、魚肉ソーセージ・練り製品、レトルト、介護食、エラスチンなどの機能性素材。Umios(旧マルハニチロ)や量販店に売る。
| 数量食品の販売量(千トン、推定) | 価格1 トンあたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 35.0 | 64 | 224 | 9 |
| 10 年後 中立 | 33.3 | 86 | 285 | 9 |
取り方:販売量の開示は無いので推定。食品セグメント売上 224.2 億を、豚肉・練り製品・機能性素材の混ざった平均単価 1 トン 64 万円で割り、約 3.5 万トンとした。物価 3% は単価に入れた。
リスクと懸念
原料相場と転嫁のずれ
飼料の原料のとうもろこし・大豆かす・魚粉は輸入で、相場と円安で値段が動く。売値の改定は数か月遅れるので、急騰の年は利ざやが消える。魚粉は世界的に高く、養魚用の餌の採算を圧迫する。
大口顧客への依存
Umios(旧マルハニチロ)が売上の12%、ブリ養殖の兵殖が10%を占める。前の期には中国の貿易会社向け(前々期は15.6%)が消え、飼料の売上が1割以上減った。1社の離反が利益を大きく動かす。
家畜と養殖魚の病気
鹿児島の自社農場で豚熱が出れば、全頭の処分と出荷の停止を迫られる。養殖も夏の高水温・赤潮・魚病で成績が落ちれば、餌の需要と代金の回収が揺らぐ。
国内の畜産の縮小
農家の高齢化と廃業で、豚と牛の飼育戸数は減り続ける。配合飼料の国内の量は戻らず、残った大規模の農家は大手の飼料会社と値段を競わせる。
金利の上昇
有利子負債は約80億円ある。借り換えのたびに金利が上がれば、年に1億円近い利払いの増加が利益を削る。薄い利ざやの会社には重い。
持ち合いの解消が進まない
政策保有株の最大は取引先のUmiosで、売れば取引に響きかねない。計画の2割以下への縮減が遅れれば、資本の効率は上がらない。
今後の分かれ目
- 2027年3月期の営業利益が会社の見通し(10億円)を上回る
- 第1四半期の赤字は季節と一時的な相場のずれと見て、やや楽観の確率を少し上げる。
- Umiosの株を売り、売却の現金を配当や自社株買いに回す
- 持ち合いの解消が本物と見て、余った現金の戻り方を 0.75 から 1.0 へ上げる。
- 兵殖など大口の養殖業者が仕入れ先を分ける
- やや悲観と悲観に寄せ、飼料の利益率を下げる。
- 機能性素材の売上が海外で伸びる
- 食品の利益率の見通しを上げる。小さな素材が全社の利益率を変えるかを見る。
- 豚熱が九州で広がる
- 黒豚の事業の損と立て直しの期間を織り込み、悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 飼料の利ざや(四半期の飼料セグメントの利益率)
- 兵殖・Umios向けの売上比率
- 政策保有株の残高と純資産に対する割合
- 配当性向と自社株買い
- 豚熱・赤潮・高水温の発生
倍率と資本コストの決め方
飼料は販売量(推定 18 万トン)× 1 トンの単価、食品は販売量(推定 3.5 万トン)× 単価で積み、物価 3% は単価に入れた。本社の費用も物価で増やした。k は基本 7.5% に quality +1.0% で 8.5%。中立の ROE 4.7% は k に届かないので PER の上限 1÷k(11.8 倍)の 8 割、強気は正当化 PER と下限の間、慎重側は稼ぐ力と売れる資産から置いた。持ち合い株は中計の縮減(純資産の 2 割以下)を超える分だけ余った現金として足した。今の PBR 0.5 倍・PER 5〜6 倍は使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.8→14.04 倍・やや楽観 PER 10→12.5 倍・中立 PER 9.4→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に品質の調整+1.0%を足した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。