結論
オカムラ食品工業は、サーモントラウト(海面で育てるニジマスの仲間)を育て、さばき、売るところまで一社で手がける水産会社だ。青森とデンマークに養殖場を持ち、筋子・いくら・数の子の加工と、アジアの日系小売への卸売も柱になっている。
筆者の結論は、今の値段は先の成長を織り込みすぎている、というものだ。10 年後の中立の時価総額は今の 3 分の 2 ほどにとどまり、確率を加えた総合でも大きく割高に出る。楽観の筋書きでも、資本コストで割り戻すと今の値段に届かない。
一番の理由は、利益の質だ。直近の営業利益 39 億円は、国内加工がいくら・筋子の相場高で倍以上に膨らんだ分を含む。ならすと 28 億円ほどで、ここから会社の言う営業利益 72 億円(2030 年目標)へ届くかは、国内の養殖量が 3 倍に増えるかにかかる。
その国内養殖は、2026 年の水揚げが計画 4,300 トンに対して 3,383 トンと、前年を下回った。増産の詰まりは中間養殖場、つまり稚魚を海に出せる大きさまで育てる施設で、会社も投資を急いでいる。ただ、稼ぐ前に借金が先に増える。純有利子負債はすでに 240 億円で、営業利益の 6 年分にあたる。
サーモンは世界で供給が増えすぎると値が崩れる商品でもある。この事業は価格を決める側ではなく、受ける側だ。社長一族が 6 割超を持つ安定は強みだが、少数株主の取り分を厚くする力は働きにくい。
よい事業を持つ会社だとは思う。しかし、払う値段に安全域がない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社を評価するときの核心は、10 年後にもこの事業が今より強いかどうかだ。サーモンの需要は世界で長く伸びており、事業は続く。ただ、強くなるかは別の問題だ。
株主に残る利益、つまり成長に必要な投資を引いたあとの利益は、今のところ小さい。毎年の営業利益 30 億円台に対し、設備投資は 30 億円を超えた。利益のほとんどが、次の養殖場に消えている。この投資が実を結ぶなら、10 年後の利益は今の 2 倍に近づく。結ばなければ、借金だけが残る。
堀の幅は狭い。免許と技術は本物だが、魚の値段を決める力がない。値段を決められない事業は、見通しが立てにくく、確信を下げる必要がある。
経営の資本配分は、現時点では評価を保留したい。養殖への集中投資は筋が通る。しかし、国内の水揚げが計画の 8 割にとどまった事実は、予定の読みが甘いことを示す。
安全域は薄い。楽観の筋書きでも、資本コストで割り戻すと今の値段に届かない。事業はよくても、払う値段が高すぎる。バリュー投資の観点では、この会社は様子を見る側に置く。
何で稼ぐ会社か
事業は 4 つ。養殖、国内加工、海外加工、海外卸売だ。サーモンを軸に、川上から川下まで自社で持つ。
養殖は 2 か所で行う。デンマークの Musholm は 2005 年に買収した会社で、年 3,500〜4,000 トンのサーモントラウトを育てる。青森・深浦町の日本サーモンファームは 2017 年の設立で、Musholm の技術を移した。2026 年の水揚げは 3,383 トンだった。売上は約 110 億円(グループ内の取引を含む)、利益は 7.7 億円にとどまる。
国内加工は青森市の工場で、数の子・たらこ・いくら・筋子を作る。相場に左右されるが、2026 年 6 月期は利益 26 億円と、全社でいちばん稼いだ。ただし前の期は 12 億円で、倍以上に跳ねた分は続くと見ない。
海外加工はミャンマーの自社工場とベトナムの委託先で、サーモンのハラス(腹身)などを作る。売上は 155 億円と大きいが、利益率は 5% に届かない。
海外卸売は、シンガポール・マレーシア・台湾・タイ・香港・オランダなどの日系小売と飲食店に日本食材を売る。売上は 153 億円、利益は 10 億円。会社は 2030 年に売上 250 億円を目指している。
4 事業はサーモンでつながる。自社で育てた魚を自社で加工し、自社の販路で売れれば、利益は川下に厚く残る。まだその姿には遠い。国内養殖の量が小さく、加工も卸売も、仕入れの多くを外部の相場に頼っている。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、2 つある。1 つは、新しい養殖免許が取りにくいデンマークで、すでに免許を持つことだ。もう 1 つは、日本の海でサーモントラウトを大規模に育てる技術を、20 年近い経験から積んでいることだ。どちらも数年では作れない。
ただし、堀は養殖の入り口だけにある。育てた魚の値段は、ノルウェーやチリを含む世界の相場で決まる。国内でも、ニッスイが 2030 年に年 1 万トンを目指し、三井物産系は陸上養殖を計画していた。供給が増えれば、先に値が下がる。
加工と卸売には、ブランドも規模の優位も薄い。国内加工の利益は相場しだいで 12 億円にも 26 億円にもなる。海外加工と卸売の利益率は、5〜7% の薄い水準だ。
資本効率は、見た目ほど高くない。直近の ROE は 14% だが、上場前の自己資本が小さかったためで、公募で積んだ分を含めた今の資本で、これを 10 年保てるとは見ない。経営は未上場の頃から社長の岡村恒一氏が率いる。社長と親族が 6 割超を持ち、判断は速い。一方で、少数株主の声が経営を変える場面は考えにくい。配当は株主資本配当率 2% を目途とし、利益の 1 割台しか出していない。成長に回す姿勢は明確だが、成長の投資が稼ぎに変わる確証は、まだ出ていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
サーモンの値段は、世界の供給で決まる。2026 年の初めは世界の供給が 14% 増え、価格が下がった。その後は供給の伸びが 0〜1% 程度に落ち着くという見方が多い。ノルウェー産の予想価格は 1 キロ 83〜89 ノルウェークローネだ。要するに、高値は続かず、安値も長くは続かない循環の商品だ。
日本のサーモンは、消費の大半が輸入のノルウェー産・チリ産だ。国産の海面養殖は、夏の海水温が高く、年間を通じて育てにくい。春に水揚げし、夏までに売り切る。そのため量を増やすには、稚魚を大きく育てて早く海に出す中間養殖場が欠かせない。会社はここに投資を集中している。
競合は増えている。ニッスイは 2026 年 4 月に国産養殖サーモンをブランド化し、水揚げは今約 4,000 トンで、2030 年に 1 万トンを狙う。大手が参入すれば、国産の枠は広がる一方、稚魚・餌・好適地の取り合いも激しくなる。
国内加工の筋子・いくら・数の子は、不漁と豊漁の波が大きい。2023 年には豊漁で在庫が積み上がり、利益が 4 割減った。その後の相場高で今は絶好調だが、価格が戻れば利益も戻る。
海外卸売は、アジアの日本食の広がりが追い風だ。ただ、現地の人口と所得の伸びに頼る分、為替と景気の影響を受ける。海外加工は、主原料のハラスの世界的な供給減で売上が落ちた時期があり、原料の確保が利益を決める。
資本政策と M&A
資本政策の中心は、成長への投資だ。2023 年 9 月に上場し、公募で約 16 億円を調達した。使い道は養殖場の建設資金である。2026 年 6 月期の設備投資は 34 億円(うち養殖 24 億円)で、秋田県八峰町の中間養殖場(約 11 億円)が続く。北海道の八雲町・岩内町でも新会社や協定が動いている。
投資は借金でまかなわれ、純有利子負債は 1 年で 116 億円から 240 億円へ増えた。借入の金利は上がる局面で、利払いは 10 年で数億円重くなる。
還元は控えめだ。配当は株主資本配当率 2% を目途に、年間で 4 億円ほどだ。社長と親族の持ち株が 61.6% を占め、自社株買いの方針は示されていない。
M&A は、2005 年の Musholm 買収が大きい。この買収は、以降の戦略の軸になった。今後も大きな買収より、新しい拠点・免許・中間養殖場への投資が中心になる。
TOB(株式の公開買付け)の可能性は、社長一族が支配しているため、外部が仕掛けにくい。一方、親族による非公開化の線は、残る。
株主優待は、100株以上で3千円相当、300株以上で5.5千円相当の自社の養殖食品。会社は優待の費用を開示していないため、株主 約1万人(自社商品の原価と送料)から年2億円と推定した。優待は株主が受け取る現物の還元なので、10年の還元に年額×10年を、中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5の係数で足した(費用は販管費として利益から引き済みで、自己資本の流れには入れない)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国産サーモンは、これから伸びる市場だ。輸入に頼ってきた日本で、国内産の新鮮な魚への需要は強い。大手のニッスイも 2030 年に 1 万トンを目指しており、市場そのものが広がる。
その中で、オカムラは先行している。青森サーモンというブランドをすでに持ち、Musholm の技術を移した実績もある。中間養殖場が八峰町・八雲町・岩内町で順に立ち上がれば、詰まりが解け、2030 年に 12,000 トンという目標へ近づく。
垂直統合の強みは、量が増えるほど出る。自社の魚が増えれば、青森の加工場の稼働が上がり、いくら・筋子の相場に頼らない安定した加工品の利益が積み上がる。海外卸売は、日本食のブームに乗り、2030 年に 250 億円、さらにその先も伸びる。
社長が 6 割超を持つ会社は、長い目で投資できる。四半期の数字に追われず、免許と設備という重い資産を積み上げる強みは、短期の投資家には見えにくい。
この筋書きが実現すれば、10 年後の営業利益は今の 2〜3 倍に達する。ROE も 13% に届き、倍率も上がる。
慎重な見方
養殖は、思ったほど簡単に増えない。2026 年の水揚げは 3,383 トンで、計画の 4,300 トンを 2 割下回り、前年よりも減った。日本の海は夏に水温が上がり、育てられる期間が短い。魚が死ぬ年や、成長が遅れる年は、これからも起きる。
サーモンの値段は世界の供給で決まる。2026 年の初めは供給が 14% 増えて値が崩れた。国内でもニッスイが同じ道を行く。自社の増産が進むころには、競合の増産も重なり、値段は上がらない。
利益の中身も気になる。直近は国内加工が 26 億円と、セグメント利益の半分以上を稼いだが、これはいくら・筋子の相場高のおかげで、前の期は 12 億円だった。相場が戻れば、利益も前の期の水準へ戻る。
財務の負担は重い。純有利子負債は 240 億円で、営業利益の 6 年分にあたる。投資が続けば、さらに増える。借り換えの金利が上がる世界では、利益を削る。
社長一族が 6 割超を持つため、少数株主を厚くする圧力も働かない。配当は利益の 1 割台で、10 年たっても少数株主の取り分は小さいままだろう。
どちらに重みを置いたか
強気の見方には、免許と技術という実体がある。慎重な見方には、実績がある。2026 年の水揚げ未達、相場に左右される国内加工、増え続ける借金という 3 点は、数字で確かめられた事実だ。
このため、確率は慎重な見方へ寄せた。10 年後の筋書きでは、悲観を 15%、やや悲観を 25%、中立を 33% とし、楽観側は合わせて 27% にとどめた。ただ、強気の筋書きが実現した場合でも、割り戻すと今の値段に届かない。よい事業でも、今の値段には届かない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 975 円490 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 205 円103 億円)。 今の値に割り戻すと 545 円274 億円、今との差 −54.7%、 期待の年率 −0.2%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,093 円1,053 億円 | 326 円164 億円 | +100.9% | +7.2% | 169 円85 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,559 円784 億円 | 270 円136 億円 | +52.0% | +4.3% | 366 円184 億円 |
| 中立 | 33% | 1,175 円591 億円 | 229 円115 億円 | +16.6% | +1.5% | 463 円233 億円 |
| やや悲観 | 25% | 372 円187 億円 | 177 円89 億円 | −54.4% | −7.6% | 137 円69 億円 |
| 悲観 | 15% | 239 円120 億円 | 60 円30 億円 | −75.2% | −13.0% | 45 円23 億円 |
| 加重平均 | 100% | 975 円490 億円 | 205 円103 億円 | −2.0% | −0.2% | 1,180 円594 億円 |
今の株価時価総額 1,204 円606 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 国内養殖が目標に近づき、垂直統合が実を結ぶ 10 年 利益 74 億円 · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 2,093 円1,053 億円
国内の養殖量が会社の目標どおり 12,000 トン近くまで伸び、中間養殖場が詰まりを解く。サーモンの世界的な供給は落ち着き、価格は物価を少し上回って上がる。国産ブランドは定着し、青森の加工場は自社の魚で稼働が上がる。
海外卸売はアジアの日本食の広がりに乗り、売上は 3 倍近くまで伸びる。国内加工の利益は、いくら・筋子の相場に頼らない形で安定する。デンマークの Musholm も年 4,000 トン近くに増える。
借金は増えるが、利益の伸びがそれを上回り、ROE は 13% に届く。社長一族は長期の視点で投資を続け、配当も少しずつ増やす。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年2億円×10年×1.0=20億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 養殖(青森・デンマーク):数量 15.5(出荷量(千トン))× 価格 0.22(1 kg あたり単価(万円))→ 売上 335 億円・営業利益 50 億円。推定
- 国内加工:数量 10.0(出荷量(千トン))× 価格 0.26(1 kg あたり単価(万円))→ 売上 263 億円・営業利益 37 億円。推定
- 海外加工:数量 17.0(出荷量(千トン))× 価格 0.15(1 kg あたり単価(万円))→ 売上 251 億円・営業利益 15 億円。推定
- 海外卸売:数量 30.0(出荷量(千トン))× 価格 0.12(1 kg あたり単価(万円))→ 売上 374 億円・営業利益 32 億円。推定
倍率:事業の純利益 74 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.5% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.5 倍。全体の PER 13.47 倍、時価総額 997 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内養殖の増産・中間養殖場の稼働・相場の安定・卸売の拡大がすべてそろう必要があり、連続して成功する確度は高くない。
やや楽観 20% 目標を数年遅れで追い、卸売と養殖が伸びる 10 年 利益 57 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,559 円784 億円
国内の水揚げは 9,500 トン前後まで増え、会社目標の 2030 年 12,000 トンには届かないが、2030 年代前半に近づく。ニッスイなど大手との競争で、価格は物価並みに上がる。
海外卸売は目標の 250 億円を超えて伸び続ける。国内加工の利益率は、相場の波をならして 13% 程度に落ち着く。海外加工は薄利のままだ。
中間養殖場の投資は計画から 1〜2 年遅れで稼働し、借金は積み上がるが、営業利益は 80 億円前後まで増える。会社が掲げる 2030 年の営業利益 72 億円を、6 年ほど遅れて超えるイメージだ。デンマークの Musholm は免許の枠の中で、年 4,000 トン近くまで効率を高める。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年2億円×10年×1.0=20億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 養殖(青森・デンマーク):数量 13.5(出荷量(千トン))× 価格 0.21(1 kg あたり単価(万円))→ 売上 285 億円・営業利益 37 億円。推定
- 国内加工:数量 9.0(出荷量(千トン))× 価格 0.26(1 kg あたり単価(万円))→ 売上 233 億円・営業利益 30 億円。推定
- 海外加工:数量 16.0(出荷量(千トン))× 価格 0.15(1 kg あたり単価(万円))→ 売上 237 億円・営業利益 13 億円。推定
- 海外卸売:数量 26.0(出荷量(千トン))× 価格 0.12(1 kg あたり単価(万円))→ 売上 319 億円・営業利益 26 億円。推定
倍率:事業の純利益 57 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.4% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.85 倍、時価総額 730 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社目標を数年遅れで追う、実績に近い上位の見通し。2026 年の未達を見ると、目標どおりより遅れが普通と考える。
中立 33% 増産は進むが相場と借金が重く、資本効率が上がらない 10 年 利益 44 億円 · PER 12.2 倍 · 株価時価総額 1,175 円591 億円
国内の水揚げは 8,000 トンまで増える。2030 年の 12,000 トンという目標は遠く、中間養殖場の立ち上がりと、夏の海水温による制約が続く。Musholm は免許の制約で年 3,700 トン前後にとどまる。
サーモンの価格は物価並みに上がり、国内でもニッスイの増産で供給が増える。国内加工の利益は相場の山を消した水準に戻り、売上のわりに利益率は 12% 台になる。海外卸売は目標に数年遅れで届く。
営業利益は 60 億円強、純利益は 40 億円台。借金と還元の少なさが ROE を 9% 台にとどめ、成長はするが資本効率は上がらない 10 年になる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年2億円×10年×1.0=20億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 養殖(青森・デンマーク):数量 11.7(出荷量(千トン))× 価格 0.21(1 kg あたり単価(万円))→ 売上 242 億円・営業利益 27 億円。推定
- 国内加工:数量 8.0(出荷量(千トン))× 価格 0.26(1 kg あたり単価(万円))→ 売上 204 億円・営業利益 26 億円。推定
- 海外加工:数量 15.4(出荷量(千トン))× 価格 0.15(1 kg あたり単価(万円))→ 売上 228 億円・営業利益 11 億円。推定
- 海外卸売:数量 23.8(出荷量(千トン))× 価格 0.12(1 kg あたり単価(万円))→ 売上 288 億円・営業利益 22 億円。推定
倍率:事業の純利益 44 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.4% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.2 倍。全体の PER 12.17 倍、時価総額 537 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の目標より数年遅れ、利益率はやや低い水準に落ち着く、中心の見通し。2026 年の水揚げ未達と相場頼みの国内加工という実績に合う。
やや悲観 25% 増産がずれ込み、相場と利払いで利益が伸びない 10 年 利益 20 億円 · PER 7.6 倍 · 株価時価総額 372 円187 億円
国内の水揚げは 5,000 トン程度で止まる。海水温の上昇や魚の死亡、中間養殖場の稼働の遅れが重なり、増産計画が数年にわたってずれ込む。サーモンの世界供給が増えて価格が伸びず、国産も大手の増産で値が弱い。
国内加工は、いくら・筋子の相場が戻り、利益は前の期の水準を下回る。海外加工は原料のハラスの確保が難しく、利益率は 3% 台に落ちる。
投資の回収が遅れる中、借金の利払いが重く、営業利益は 30 億円前後で、今とほぼ同じ水準で止まる。配当は小さいまま、ROE は 5% 台にとどまる。成長を止めるわけではないが、投資した分が利益にならず、資本の効率だけが落ちる。デンマークの Musholm は横ばいで、国内の足踏みを補えない。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年2億円×10年×0.8=15億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 養殖(青森・デンマーク):数量 9.0(出荷量(千トン))× 価格 0.20(1 kg あたり単価(万円))→ 売上 178 億円・営業利益 14 億円。推定
- 国内加工:数量 7.0(出荷量(千トン))× 価格 0.25(1 kg あたり単価(万円))→ 売上 174 億円・営業利益 16 億円。推定
- 海外加工:数量 14.0(出荷量(千トン))× 価格 0.14(1 kg あたり単価(万円))→ 売上 201 億円・営業利益 7 億円。推定
- 海外卸売:数量 19.0(出荷量(千トン))× 価格 0.12(1 kg あたり単価(万円))→ 売上 223 億円・営業利益 12 億円。推定
倍率:ROE 5.5% が k 9.0% 以下なので PER の上限は 1÷k = 11.1 倍より下(式では 9.0 倍)。その 85% の 7.6 倍を採用。ためた利益は額面未満の価値。
確率:2026 年の未達と相場頼みの加工、借金の増加という実績の延長線にある。中心に近い確率で起こりうると見る。
悲観 15% 魚の大量死と世界の供給過剰、海外の政情が重なる 10 年 利益 −1 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 239 円120 億円
国内養殖で魚の大量死や病気が続き、中間養殖場の稼働も遅れて、水揚げは今より少ない水準に戻る。世界のサーモン価格が崩れ、競合の増産で国産の値も下がる。
ミャンマーの工場が政情不安で止まり、海外加工は赤字になる。いくら・筋子の相場は戻り、国内加工の利益は大きく減る。デンマークの Musholm も、天候や病気で水揚げが落ちる。
営業利益は赤字に近づき、借金の返済が重くのしかかる。設備の売却や増資も選択肢になり、成長の物語は終わる。社長一族の持ち株が厚いため、再建は一族の資金と判断に左右される。国産サーモンというブランドは残るが、利益を生む力は小さく、事業は縮んだ規模で評価される。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年2億円×10年×0.5=10億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 養殖(青森・デンマーク):数量 6.0(出荷量(千トン))× 価格 0.18(1 kg あたり単価(万円))→ 売上 106 億円・営業利益 2 億円。推定
- 国内加工:数量 5.5(出荷量(千トン))× 価格 0.23(1 kg あたり単価(万円))→ 売上 126 億円・営業利益 4 億円。推定
- 海外加工:数量 11.0(出荷量(千トン))× 価格 0.13(1 kg あたり単価(万円))→ 売上 146 億円・営業利益 0 億円。推定
- 海外卸売:数量 14.0(出荷量(千トン))× 価格 0.11(1 kg あたり単価(万円))→ 売上 152 億円・営業利益 5 億円。推定
倍率:事業の稼ぐ力はほぼ消え、赤字の年も出る筋書き。価値の床は、養殖免許・生簀と中間養殖場・加工設備・在庫の売却で借金を返したあとに残る分とした(今の自己資本 197 億円に対する比で置いた)。
確率:水揚げの未達、借金の増加、世界のサーモン供給過剰、海外の政情が重なる複合の負け筋。養殖は魚が死ぬ事業で、低頻度でも無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
養殖(青森・デンマーク)
青森の日本サーモンファームとデンマークの Musholm でサーモントラウトを育て、グループ内外に売る。
| 数量出荷量(千トン) | 価格1 kg あたり単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 7.1 | 0.15 | 110 | 8 |
| 10 年後 中立 | 11.7 | 0.21 | 242 | 27 |
取り方:数量は国内水揚げ 3,383 トンと Musholm の年 3,500〜4,000 トン(有報)から約 7,100 トンと置いた。価格は開示の売上 109.5 億円(グループ内取引を含む)を数量で割った平均。数量は実質、価格は名目で 10 年 1.34 倍が基本。利益は開示のセグメント利益 7.7 億円。 数量は実物(トン)。国内水揚げが 8,000 トンへ、Musholm は年 3,700 トン前後。
国内加工
青森市の工場で筋子・いくら・数の子・たらこ・サーモン製品を作る。相場の影響が大きい。
| 数量出荷量(千トン) | 価格1 kg あたり単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 6.7 | 0.19 | 128 | 26 |
| 10 年後 中立 | 8.0 | 0.26 | 204 | 26 |
取り方:開示は金額のみ。平均単価を 1 kg 0.19 万円前後と推定して数量を約 6,700 トンと置いた(推定)。利益 26.1 億円は相場高で前期 11.8 億円の 2.2 倍に跳ねた年で、先の利益率は 12〜13% 前後にならして置く。
海外加工
ミャンマーの自社工場とベトナムの委託先で、サーモンのハラスなどを作る。
| 数量出荷量(千トン) | 価格1 kg あたり単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 14.0 | 0.11 | 155 | 7 |
| 10 年後 中立 | 15.4 | 0.15 | 228 | 11 |
取り方:開示は金額のみ。平均単価を 1 kg 0.11 万円前後と推定して数量を約 14,000 トンと置いた(推定)。利益率は 4.5% で、原料の供給と価格に左右される薄利の事業。
海外卸売
シンガポール・マレーシア・台湾・タイ・香港・オランダなどの日系小売・飲食店に日本食材を売る。
| 数量出荷量(千トン) | 価格1 kg あたり単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 17.0 | 0.09 | 153 | 10 |
| 10 年後 中立 | 23.8 | 0.12 | 288 | 22 |
取り方:開示は金額のみ。平均単価を 1 kg 0.09 万円前後と推定して数量を約 17,000 トンと置いた(推定)。会社目標は 2030 年に売上 250 億円。数量は実質、価格は名目。
リスクと懸念
国内養殖の増産の遅れ
2026 年の水揚げは 3,383 トンで、計画 4,300 トンを大きく下回り、前年も割った。増産の詰まりは中間養殖場で、八峰町・八雲町などの稼働が遅れると、2030 年 12,000 トンの目標が先送りになる。夏の海水温が高く、魚が死ぬ年もありうる。
サーモン価格の循環
魚の値段は世界の供給で決まる。2026 年の初めは供給が 14% 増えて値が崩れた。自社の増産が進むころに、ニッスイなど競合の増産も重なれば、値段が上がらないまま量だけ増える。
国内加工の利益が相場頼み
いくら・筋子・数の子は豊漁と不漁の波が大きい。2023 年には豊漁で在庫がだぶつき、利益が 4 割減った。今の国内加工の利益 26 億円は、前の期の 2 倍以上で、先は戻りを見込む。
借金の増加と金利
純有利子負債は 1 年で 116 億円から 240 億円へ増え、EBITDA の 4 倍を超えた。借り換えの金利が上がる世界では、利払いが利益を削る。投資の回収が遅れれば、増資や設備売却が選択肢になる。
ミャンマー・海外の政情
海外加工はミャンマーの自社工場に頼る。政情不安や制裁、停電などで止まれば、売上 155 億円の事業が揺らぐ。委託先のベトナムも原料の確保に左右される。
社長一族の支配と少数株主
社長と親族・資産管理会社で 61.6% を持つ。長期で動ける強みの反面、少数株主の声が資本政策を変える場面は考えにくく、配当も利益の 1 割台にとどまる。流通する株が少なく、値動きも荒くなりやすい。
今後の分かれ目
- 中間養殖場が計画どおり稼働し、国内の水揚げが 6,000 トンを超えたら
- 楽観・やや楽観の確率を引き上げ、国内養殖の数量の前提を上方修正する。
- 国内の水揚げが 4,000 トン前後で足踏みしたら
- やや悲観へ重みを移し、投資の回収を遅い側に見直す。
- サーモンの世界価格が大きく下がったら
- 養殖の利益率の前提を下げ、借金の重さを再点検する。
- 国内加工の利益率が 10% を割ったら
- 相場の山が終わったと見て、加工の利益の水準を引き下げる。
- ミャンマー工場が止まったら
- 海外加工の前提を悲観側に動かし、代替拠点の整備を見る。
- 自社株買い・配当の増額が出たら
- 資本効率の改善と見て、ROE の前提を上方修正する。
見ておくもの
- 国内養殖の水揚げ量(トン)と中間養殖場の稼働
- ノルウェー産サーモンの価格と世界の供給の伸び
- 国内加工のいくら・筋子の相場と利益率
- 純有利子負債と利払い
- ニッスイなど競合の国産サーモンの増産
- 海外卸売の売上(会社目標 2030 年 250 億円)
倍率と資本コストの決め方
養殖・国内加工・海外加工・海外卸売の 4 事業を、出荷量(実質)と名目の単価で積み、今の利益のうち国内加工の相場高の分をならして先の利益を置いた。k は基本 7.5% に quality +1.5% で 9.0%。倍率は正当化 PER の式と ROE から決め、今の株価・同業の倍率は見ていない。結果は大きな割高だが、今の株価に寄せて筋書きを動かしてはいない。店舗を借りて営む会社ではなく、リースの影響は小さい。新リース会計で純負債が増える形の変化は、10 年後の数字を今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→13.47 倍・やや楽観 PER 11.1→12.85 倍・中立 PER 11.1→12.17 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.5% を足して 9.0%。事業は傾いておらず、上乗せは置かない。