結論
マルサンアイは国内豆乳市場で2位の地位を持ち、大豆の飲料と発酵食品を主力とする食品メーカーである。長く持つ株主の目では、今の時価総額約78億円は本質価値をやや下回ると判断する。健康志向という追い風と確かなブランドはあるが、利益率が薄く、増産のための借入金が重くなっているため、手放しの割安株とは呼べない。
2025年9月期は豆乳だけで約247億円を売り、国内ではキッコーマンに次ぐ存在感を持つ。2025年の国内豆乳生産量は44万キロリットルを超え、2026年上期も数量が増えた。会社は2026年秋に豆乳の希望小売価格を引き上げ、植物性たんぱく質や無調整豆乳の需要を利益に結び付けようとしている。ただし公表された値上げ率は小売価格の改定幅であり、卸への手取りが同じ比率で増える保証ではない。
最大の疑問は、需要が伸びても株主の利益がどれだけ残るかである。営業利益率は2025年に2.6%にとどまり、2023年には営業赤字だった。生産能力の増強は将来の売上を支える一方、2025年の設備投資は営業キャッシュフローを大きく上回り、2026年には有利子負債も増えた。みその縮小は事業の整理として合理的だが、売上減少に耐える費用構造を作れるかはこれから試される。
10年後の中立では、豆乳の物量がゆるやかに増え、名目価格が物価程度に上がるものの、再投資で自己資本が積み上がり、ROEは資本コストをやや下回ると見る。上振れは海外事業の立ち上がりと豆乳グルトの拡大で生まれ、下振れは大手との価格競争と固定費負担の組み合わせで起きる。株価ではなく商品の数量と利益の質から評価すると、上昇余地はあるが、安全域は厚くない。
バリュー投資の観点から
長く保有する株主がまず買うのは、株券ではなく将来の豆乳工場から流れ込む現金である。飲む習慣が定着した豆乳は、一度の流行で消える商品ではない。ブランドと長年の製造経験には価値があり、国内2位の地位にも再現しにくい蓄積がある。一方、消費者は数ある飲料から選べるし、小売りは棚を入れ替えられる。この競争条件を考えると、独占企業と同じ値決め力や永続的な高成長を認めるのは難しい。
本当に評価したいのは、工場を増やした後にどれだけ多くのオーナー利益が残るかだ。2025年の会計上の純利益は7億円を超えたが、設備投資は営業キャッシュフローを大きく上回った。翌年には借入金が積み上がり、金利の上昇が利益に届きやすくなった。減価償却は過去の取得額で計上されるため、新しい設備を買い直す負担は損益計算書だけでは見えにくい。追加投資の税後利益が資本コストを上回るまで、再投資を無条件の価値創造とは扱わない。
経営は売上規模を守るために不採算品を作り続けるより、みそ工場を整理して豆乳と発酵食品へ資源を寄せ始めた。これは評価できるが、カナダの製造拠点や新設備が実際に投下資本を回収した証拠はこれからだ。買収を積み上げて見栄えの売上を増やすより、工場別の収益を示し、利益が余れば増配や自社株買いで返してほしい。
現在の値段にはやや余裕がある。ただし、値上げの定着と需要維持をある程度織り込んだ結果であり、財務面の厚い安全域ではない。配当だけで報われる企業でも、解散して資産を売れば十分回収できる企業でもない。10年間の事業の強さを見守るなら、豆乳の数量、実現した卸価格、資本効率の3つを見て判断する必要がある。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は豆乳だ。無調整豆乳、調製豆乳、フレーバー豆乳に加え、国産大豆を使った「ひとつ上の豆乳」などの高付加価値品を扱う。2025年9月期の豆乳売上高は約247億円で、グループ売上の4分の3を占める。同じ豆乳飲料事業にはアーモンド飲料、オーツミルク、飲料の受託製造と水があり、豆乳以外の売上は約35億円だった。無菌充填設備、商品開発、量販店への出荷の仕組みを共用できることが、この事業の経済的な利点である。
みそは創業以来の事業だが、現在は豆乳よりはるかに小さい。2025年3月に本社工場での製造を終え、玉井味噌などの子会社へ集約した。製品数を減らし、国産素材と発酵技術を強調した商品に絞ったことで、2025年の売上高は約20億円に縮小した。2026年の第3四半期累計でもみその販売は大きく減っており、売上高の増加より、残した工場で採算を守れるかが課題になっている。
その他食品には「豆乳グルト」、鍋スープ、大豆を使うチルド食品、豆乳シュレッドなどがある。「豆乳グルト」は植物由来乳酸菌による発酵が特色で、2025年の販売数量は約878万個だった。同区分の総売上約27億円のうち、どれだけが豆乳グルトなのか会社は金額を分けていない。この分析では豆乳グルトと残りの加工食品を別の販売数量で見積もったが、両者の売上内訳は開示実績ではなく推計である。
売上の多くは日本国内で生まれるが、オーストラリア向けが約34億円あり、海外需要の足掛かりになっている。販路では伊藤忠商事向けが売上の約41%を占める。全国の棚に届く利点がある半面、小売店の販売価格を自社だけで決められるわけではない。カナダの子会社Alinova Canadaも将来の供給拠点だが、2025年9月期には製造販売実績がなく、海外投資の収益化はまだ実証されていない。
優良さと弱いところ
堀、つまり競合に簡単には奪われない強みは、長く磨いた豆乳ブランドと製法にある。国内の豆乳2位という知名度は売場に残り続ける理由となり、中京地域では歴史的に強い。プレミアム大豆「るりさやか」を用いた商品や、植物性乳酸菌で発酵させる豆乳グルトにも独自性がある。設備、品質管理、乳原料を使わない発酵のノウハウを再現するには時間がかかるため、単なる匿名の飲料受託製造とは違う。
しかし価格支配力を強いとまでは評価しない。キッコーマンが国内豆乳の首位であり、スジャータめいらくや小売りの自主企画商品も競う。2026年9月から豆乳の希望小売価格を約11~27%、10月から豆乳グルトを約8~9%改定したことは、価格転嫁に踏み切れる証拠ではある。実際の卸値、販売本数、値上げ後の店頭採用率が開示されなければ、利益率が上がった証拠にはならない。最大の取引先が売上の4割を扱う販路構造も、交渉力を分け合う理由である。
資本効率には厳しい目が要る。2025年9月期の営業利益は約9億円に対し、減価償却は約12億円、設備増加額は約23億円だった。営業キャッシュフローは約8億円しかなく、更新や増産に多額の現金を使う。2021年と2022年の投資キャッシュフローも、それぞれ約24億円と23億円の支出だった。ROEが2桁に戻った年度があっても、2023年の赤字と2026年の借入増加を合わせると、増分投資が安定して資本コストを超えるとの実績はまだ足りない。
耐久性はあるが、堀は広がると決め付けられない。植物性の食事が一般化すれば市場は広がる一方、アーモンド、オーツ、乳製品という代替品も増える。AIエージェント代替の規定は、人月や席で売るサービスには重要だが、同社の食品製造そのものには当てはまらない。企画業務への生成AIの導入は販管費を節約する手段であり、豆乳の販売数量が自動的に増える理由にはしない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内豆乳は成熟市場の中では珍しく、いったん落ち込んだ数量が再び伸びている。日本豆乳協会による2025年の国内生産量は44万4,552キロリットルで、前年比8.2%増だった。2026年上期も23万175キロリットルと前年同期を10.9%上回った。伸びの中心は無調整豆乳で、植物性たんぱく質、ソイラテ、乳を避けたい人の需要が市場を支える。ただし2020年の記録後に数年間の停滞があったため、足元の伸び率をそのまま10年間延ばすのは危険である。
競争の軸は、購入を習慣化させる商品力と量販店の棚である。キッコーマンの数量シェアは2023年資料で約46%、マルサンアイの金額シェアは2021年の会社資料で約23%だった。両者は年度も単位も異なるため、2025年の同社数量シェアを断定する資料にはならない。本分析では国内生産量を土台に豆乳の販売数量を約10万キロリットル相当と推計した。10年後の中立では市場が50万キロリットル前後になり、海外分を含む同社数量がやや伸びるが、国内首位を逆転する想定はしない。
みそは豆乳と異なる。全国味噌工業協同組合連合会の2025年の年間生産量は約36万トンで、国内の長期需要は人口と家庭の調理習慣に縛られる。マルサンアイの2025年の売上を出荷数量約9千トン相当とみれば、数量シェアは約2.5%という推計になる。首位級のマルコメに加え、ひかり味噌、ハナマルキ、各地の醸造企業との競争があり、同社の製造拠点集約で起きた売上減を業界全体の縮小と混同してはいけない。海外でのみそ需要は伸びているが、会社自身がその恩恵を取るとは限らない。
豆乳以外の植物性飲料では、江崎グリコなどのアーモンド飲料や各種オーツ飲料が競う。ヨーグルト市場全体は乳製品込みで約4,800億円規模だが、乳不使用の発酵食品だけを切り出した統一統計は乏しく、豆乳グルトの厳密なカテゴリーシェアは確認できない。この分野の上振れは大きいものの、成熟した乳製ヨーグルトの市場規模をそのまま獲得可能市場と見るべきではない。鍋スープや加工食品も競合が多く、共通した全国出荷数量の公開値はない。原料大豆、包材、電力の上昇を値上げで吸収できるかが、全品目に共通する利益の分かれ目になる。
資本政策と M&A
資本配分の評価は慎重だ。2025年9月期末の自己資本は約70億円、現金預金は約31億円だったが、借入金は約73億円あり、純現金の企業ではない。2026年第3四半期には有利子負債がさらに増え、借入と現預金との差は概算で約62億円になった。借り換え金利が上がる世界では、新しい工場が生む営業利益が利払いを十分上回ることが必要になる。
2025年の有形・無形固定資産の増加額は約23億円で、同年の営業キャッシュフロー約8億円より大きい。既存設備の償却費約12億円は昔の取得価格を土台にするが、更新する設備と建設費はインフレ後の価格になる。したがって名目利益が増えても、株主が自由に引き出せる現金は同じ勢いでは増えない。カナダのAlinova Canadaへの投資とみそ製造の子会社集約は、再投資の成否を見分ける具体的な対象になる。
2025年の配当総額は約1.12億円で、2026年の会社予想は約0.67億円へ戻る。約4万株、約1.47億円の自己株式取得もあり、この取得済み株式は現在の株数に反映済みである。株主優待は年2回の自社製品贈呈であり、株主への経済的還元として、製品の原価と発送費を合算した年間約0.1~0.2億円という推計も10年還元に含めた。
長期GoPW経営計画と第四次中期事業計画は、ROIC重視、商品力の向上、デジタル化を掲げる。業務の処理時間20%短縮などのDX指標はあるが、確認した公開資料には売上高、営業利益、ROE、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額に関する具体的な中期の数字の約束なし。毎年の増配や大型買収を当然とみなさず、利益に見合った還元だけを見込む。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
豆乳は既に日本の食生活の一部になり、健康志向というだけでなく、乳を避ける食事、ソイラテ、料理用途へと使われ方を増やしている。2025年の業界生産量は過去最高を更新し、2026年上期の無調整豆乳も力強く伸びた。日本豆乳協会が掲げる年間50万キロリットルの目標は、かつての記録と比べて途方もない数字ではない。国内2位のマルサンアイは、量販店の棚とブランドをすでに持ち、ゼロから全国販路を築く企業より需要の増加を利益に変えやすい。
製品の強みは価格にも現れ始めた。2026年の豆乳と豆乳グルトの値上げは、メーカーが原価の上昇を一方的に受け入れる時期を終わらせる転機になり得る。無調整豆乳と国産プレミアム大豆を使った商品が伸びれば、安い量販向け商品だけに頼る必要はない。豆乳グルトの販売は既に約878万個あり、乳を使わない発酵食品という小さな市場で認知を先行させている。豆乳シュレッドやオーツ飲料を重ねれば、既存設備と開発力を生かした新しい収入源を育てられる。
海外にも余地がある。オーストラリア向け売上が既に30億円を超え、カナダの拠点が商業生産に進めば、日本の人口減だけで数量の上限を決めなくて済む。みその品目削減も売上を捨てて利益率を守る選択であり、同社がROICに意識を向け始めた証拠だ。既存製品の供給能力と本社の固定費をうまく使えれば、販売数量の伸び以上に営業利益が増える。この場合、現在の時価総額は将来の収益に比べて小さい。
慎重な見方
伸びる市場で2位にいることは、必ずしも利益の強い企業であることを意味しない。2025年の売上高は300億円を超えたが、営業利益率はわずか2.6%だった。2023年には営業赤字を出しており、大豆、包材、燃料、人件費のわずかな食い違いが利益を消してしまう。2026年の希望小売価格の改定も、量販店の値引きや競合の販売促進、消費者の買い控えがあれば、表面の改定幅ほど卸値に残らない。
キッコーマンは豆乳の首位企業として圧倒的に大きく、全国で価格と棚の競争を続けられる。マルサンアイは伊藤忠商事向け売上の比重が高く、販売数量を維持するために取引条件を譲る危険がある。PB商品、オーツ・アーモンド飲料、乳製品も消費者の飲み物への支出を奪い合う。豆乳グルトの独自性は有望だが、乳製ヨーグルトの巨大市場がそのまま売上に変わるわけではなく、大手が類似品を投入する可能性もある。
最も痛いのは再投資と借金の組み合わせである。2025年には設備増加額が営業キャッシュフローの数倍に達し、2026年にも借入金が増えた。固定設備を抱える食品会社は、値上げが失敗しても減価償却と運転資金を必要とする。金利が3%台後半からさらに上がり、海外工場が思うように稼働しなければ、利益は出てもオーナーの現金は増えない。工場を売ろうとしても、その土地と専用設備が帳簿価格どおり売れる保証はない。
みその整理は利益優先の選択だが、実際の売上は急減しており、将来の営業基盤が安定したと判断するには早い。2023年の赤字をもう一度、今度は借入が重い状態で経験すれば、銀行との交渉が優先され、配当は最後に回る。自己資本の額面をそのまま株主が受け取れるという期待も危うい。収益が資本コストを下回るなら、帳簿が増えても本質価値はそれほど増えない。
どちらに重みを置いたか
需要の伸びとブランドの耐久力は認めるが、薄い利益率と資本効率を踏まえ慎重な見方にやや寄せる。値決め力を独占的とは認めず、売上が現金として残るかを厳しく見る。上側2つの確率を27%、下側2つを35%としたのは、2023年の赤字、薄い利益率、2026年の借入増加が、好調な豆乳市場と同時に存在するためである。中立を38%とし、値上げが実際の卸価格に反映されるまで、急速な利益率改善を既定にしない。5つを合わせた価値は現時点の時価総額をやや上回るが、これは海外展開と植物性食品の成功余地を織り込むためで、確信度の高い大幅な割安ではない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 9,154 円205 億円(+ 還元の換算額還元の合計 610 円14 億円)。 今の値に割り戻すと 4,655 円104 億円、今との差 +33.4%、 期待の年率 +11.3%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 31,034 円696 億円 | 1,606 円36 億円 | +835.2% | +26.4% | 2,611 円59 億円 |
| やや楽観 | 19% | 17,344 円389 億円 | 1,071 円24 億円 | +427.6% | +19.0% | 3,499 円78 億円 |
| 中立 | 38% | 7,338 円164 億円 | 491 円11 億円 | +124.3% | +8.8% | 2,975 円67 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,986 円45 億円 | 312 円7 億円 | −34.2% | −4.4% | 575 円13 億円 |
| 悲観 | 10% | 910 円20 億円 | 134 円3 億円 | −70.1% | −11.9% | 104 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 9,154 円205 億円 | 610 円14 億円 | +179.8% | +11.3% | 9,764 円219 億円 |
今の株価時価総額 3,490 円78 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 豆乳の需要定着と海外量産、単価改善が重なる 利益 43 億円 · PER 14.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 31,034 円696 億円
国内で豆乳を選ぶ人が増え続け、無調整品に加えて料理、外食のソイラテ、乳不使用の食生活が需要を支える。2035年の国内市場は60万キロリットルに近づき、マルサンアイは中京だけでなく全国で販売店の棚を広げる。カナダのAlinova Canadaが量産と顧客開拓に成功し、オーストラリア向けの既存販路に加えて輸出が拡大する。豆乳の国内外合算の数量は14万キロリットル相当まで増える。
「ひとつ上の豆乳」が安売り品との差を広げ、2026年以降の値上げも定着する。豆乳グルトは乳原料を使わない発酵食品としてブランドを維持し、販売は1,500万個に増える。みそは製品整理後の小さな利益事業として残り、鍋スープなども一定の数量を得る。競争相手のキッコーマンが依然首位でも、同社には十分な増収余地がある。
生産量の増加が工場の固定費を吸収し、設備更新費と高い借入金利を払いながらも、営業利益が大幅に増える。経営は大規模買収に走らず、出た利益の一部を設備と負債返済に回し、配当と自社株買いも徐々に増やす。継続的な値決め力が認められ、ROEは2桁を維持する。
- 豆乳(無調整・調製・フレーバー、海外向けを含む):数量 140(豆乳の年間販売数量に相当する千キロリットル(国内市場シェアからの推計、輸出込み換算))× 価格 3.60(千キロリットル当たり売上高(億円、名目、国内品・輸出品の複合単価))→ 売上 504 億円・営業利益 103 億円。世界と国内の実質需要を取り込み14万kL相当、複合単価は現在の1.46倍、セグメント営業利益率20.4%。
- 植物性飲料・受託飲料・水(豆乳以外):数量 28.0(年間出荷数量(千キロリットル、アーモンド飲料・水・受託製品を含む推計))× 価格 2.53(千キロリットル当たりの複合売上高(億円、名目))→ 売上 71 億円・営業利益 14 億円。飲料28千kL、複合単価1.46倍、利益率19.4%。
- みそ(玉井味噌など子会社に製造集約):数量 7.5(年間みそ出荷数量(千トン、国内統計と推定シェアから推計))× 価格 3.25(千トン当たり売上高(億円、名目))→ 売上 24 億円・営業利益 2 億円。みそ7.5千トン、単価1.44倍、利益率8%。
- 豆乳グルト(その他食品のモデル内訳):数量 15.0(年間販売数量(百万個、豆乳グルト400gなどの個数))× 価格 2.34(1百万個当たり売上高(億円、名目))→ 売上 35 億円・営業利益 7 億円。豆乳グルト1,500万個、単価1.42倍、利益率20%。
- 鍋スープ・チルド食品・豆乳加工品(その他食品の残余):数量 7.5(鍋スープ・大豆加工品の年間販売個数(百万袋・パック換算、推計))× 価格 3.08(1百万袋・パック換算当たり売上高(億円、名目))→ 売上 23 億円・営業利益 4 億円。その他加工食品750万パック換算、単価1.40倍、利益率16.5%。
倍率:資本コストk8.0%、2035年事業ROE=43.2÷285.7=15.1%、堀が普通なので超過収益の残存割合1/2からRONIC約11.6%。2035年以降の名目g2.5%により正当化PER=(1-g÷RONIC)÷(k-g)≒14.25倍。市場PERを参照せず上限そのものを採用した。2025年純利益7.1億円から10年で約251.5億円の累計利益、還元36億円として2035年自己資本285.7億円。新工場の償却増と借換金利約3.5~4%は営業利益率と純利益に反映した。
確率:国内豆乳の数量成長が10年間続き、海外工場・植物性食品の両方が収益化し、大手との競争でも値上げを維持する必要があるため8%の低確率。
やや楽観 19% 国内の棚を守り、海外と発酵食品が補強 利益 25 億円 · PER 13.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 17,344 円389 億円
国内の豆乳生産量は健康志向に支えられて緩やかに増え、マルサンアイは業界2位の位置を守る。キッコーマンに首位を譲る構図は続くものの、無調整豆乳と高付加価値品の構成が改善し、豆乳の数量は国内外で12万キロリットル相当に届く。オーストラリアの取引先との関係は維持され、カナダの供給拠点も一定の稼働率を確保する。
豆乳グルトは1,200万個まで伸びる。乳を使わない発酵食品の需要は広がるが、乳業大手も植物性の商品を増やすため、売価を一方的に決められるほどにはならない。みそは玉井味噌などへの集約で数量を減らす一方、原料や製品構成の選別で採算を保つ。飲料受託や鍋スープは豆乳ほど伸びず、販路維持に役立つ補完事業にとどまる。
生産効率と商品企画の改善で本社費の伸びを抑え、設備更新の負担を消化する。借り換えコストは増すが、営業利益の成長がそれを上回り、ROEは資本コストを超える。還元は増益に合わせて増えるが、工場増強を優先するため利益の大半を現金で配るわけではない。
- 豆乳(無調整・調製・フレーバー、海外向けを含む):数量 120(豆乳の年間販売数量に相当する千キロリットル(国内市場シェアからの推計、輸出込み換算))× 価格 3.48(千キロリットル当たり売上高(億円、名目、国内品・輸出品の複合単価))→ 売上 418 億円・営業利益 83 億円。海外増と国内シェア維持で12万kL、単価1.41倍、利益率19.8%。
- 植物性飲料・受託飲料・水(豆乳以外):数量 24.0(年間出荷数量(千キロリットル、アーモンド飲料・水・受託製品を含む推計))× 価格 2.39(千キロリットル当たりの複合売上高(億円、名目))→ 売上 57 億円・営業利益 11 億円。飲料24千kL、単価1.38倍、利益率18.4%。
- みそ(玉井味噌など子会社に製造集約):数量 6.7(年間みそ出荷数量(千トン、国内統計と推定シェアから推計))× 価格 3.09(千トン当たり売上高(億円、名目))→ 売上 21 億円・営業利益 2 億円。みそ6.7千トン、単価1.37倍、利益率7.5%。
- 豆乳グルト(その他食品のモデル内訳):数量 12.0(年間販売数量(百万個、豆乳グルト400gなどの個数))× 価格 2.28(1百万個当たり売上高(億円、名目))→ 売上 27 億円・営業利益 5 億円。豆乳グルト1,200万個、単価1.38倍、利益率18%。
- 鍋スープ・チルド食品・豆乳加工品(その他食品の残余):数量 6.5(鍋スープ・大豆加工品の年間販売個数(百万袋・パック換算、推計))× 価格 3.04(1百万袋・パック換算当たり売上高(億円、名目))→ 売上 20 億円・営業利益 3 億円。その他650万パック換算、単価1.38倍、利益率15.5%。
倍率:k8.0%、2035年ROE=24.8÷205.7=12.1%。moat普通の残存割合1/2からRONIC約10.0%、g2.5%で正当化PER=(1-g÷RONIC)÷(k-g)≒13.65倍。利益累計約159.5億円、配当・優待・自社株買いの還元累計24億円より、2035年自己資本は70.2+159.5-24=205.7億円となる。設備の新規償却と借換金利増を営業利益・純利益に織り込み、市場の過去倍率で割引かない。
確率:豆乳の需要回復は実証されているが、カナダの収益化と卸値引き上げの継続は未確認であるため、楽観より大きい19%を割り当てる。
中立 38% 数量は緩やかに増え、値上げの大半は費用を吸収 利益 11 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 7,338 円164 億円
豆乳は日常の飲み物として残り、2035年の国内市場は50万キロリットル前後になる。日本の人口は減っても健康志向と外食用途が補い、マルサンアイは大きくシェアを失わない。国内外を合わせた豆乳数量は10万6千キロリットル相当と、2025年からの増加は小幅にとどまる。値上げは続くが原料大豆と資材、物流、人件費も上がり、企業努力で維持できるのは小さな利益率の改善だけである。
みその製品整理は長引き、数量が減る。豆乳グルトは約1,080万個と着実に増えるが、乳製品や大手の新規参入に押され、単独で会社の利益構造を変えるほどの事業にはならない。カナダの拠点は限定的な販売に進む程度で、全社の売上を倍増させる成長エンジンとはならない。伊藤忠商事への販売集中は続き、卸値の交渉余地は限られる。
工場の更新に資金を使い、借入金の借換金利も高くなるため、最終利益の成長は売上ほど大きくない。利益を一部留保する結果、自己資本は積み上がるが、ROEは資本コストに届かない。配当と株主優待は続ける一方、自社株買いを毎年行うことまでは期待しない。
- 豆乳(無調整・調製・フレーバー、海外向けを含む):数量 106(豆乳の年間販売数量に相当する千キロリットル(国内市場シェアからの推計、輸出込み換算))× 価格 3.31(千キロリットル当たり売上高(億円、名目、国内品・輸出品の複合単価))→ 売上 351 億円・営業利益 65 億円。国内市場を約50万kL、海外含む自社を106千kL相当、単価1.34倍、利益率18.6%。
- 植物性飲料・受託飲料・水(豆乳以外):数量 21.0(年間出荷数量(千キロリットル、アーモンド飲料・水・受託製品を含む推計))× 価格 2.32(千キロリットル当たりの複合売上高(億円、名目))→ 売上 49 億円・営業利益 9 億円。飲料21千kL、単価1.34倍、利益率18%。
- みそ(玉井味噌など子会社に製造集約):数量 5.5(年間みそ出荷数量(千トン、国内統計と推定シェアから推計))× 価格 2.98(千トン当たり売上高(億円、名目))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。みそ5.5千トン、単価1.32倍、利益率7%。
- 豆乳グルト(その他食品のモデル内訳):数量 10.8(年間販売数量(百万個、豆乳グルト400gなどの個数))× 価格 2.21(1百万個当たり売上高(億円、名目))→ 売上 24 億円・営業利益 4 億円。豆乳グルト1,080万個、単価1.34倍、利益率16%。
- 鍋スープ・チルド食品・豆乳加工品(その他食品の残余):数量 5.8(鍋スープ・大豆加工品の年間販売個数(百万袋・パック換算、推計))× 価格 2.93(1百万袋・パック換算当たり売上高(億円、名目))→ 売上 17 億円・営業利益 2 億円。その他580万パック換算、単価1.33倍、利益率14%。
倍率:k8.0%、中立ROE=10.8÷148.7=7.3%で資本コスト未満。収益を超える成長投資が価値を生むと仮定せず、正当化PERは利益の稼ぐ力の上限1÷k=12.5倍。2035年以降の業界gは2.5%だが、低いROEからプレミアムは生じない。10年間の累計利益を約89.5億円、配当・優待等の累計還元を11億円とし、自己資本70.2+89.5-11=148.7億円。増産と設備更新で償却費は2025年約11.8億円から2035年約19億円程度を想定し、借換利払い増も純利益へ反映した。
確率:国内数量を業界目標に近い緩やかな増加、価格を物価並みとし、みその縮小と設備更新費を織り込む最も無理の少ない筋書きとして38%とした。
やや悲観 25% 棚と価格の競争が強まり、売上が伸びても稼ぎは細る 利益 3 億円 · PER 11.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,986 円45 億円
キッコーマンの販促と小売りの自主企画商品が強まり、マルサンアイは国内豆乳の棚を守るため、値上げ幅の一部を販売条件で譲る。無調整豆乳の需要自体は残るが、会社の数量は国内外で9万6千キロリットル相当に減る。オーツやアーモンド飲料、乳製品との競争も続き、これまでのブランド力を価格の上乗せに十分転換できない。
みその工場集約後も出荷数量が減り続ける。豆乳グルトの販路は維持するが、大手の植物性発酵商品の参入で数量が伸び悩む。カナダの設備は受注不足から償却負担が先行し、海外向けの販売数量の下支えにはほとんどならない。国内の市場全体が微増でも、会社の利益に結び付くとは限らないことがはっきりする。
本社の販売管理費と設備の維持費は大きく下がらない。金融機関からの借入条件も以前より厳しくなり、営業利益率は低下する。経営は資金確保を優先して配当の増額を見送り、自社株買いもほぼ止める。会社そのものは存続するが、株主に帰属する稼ぐ力は弱い食品メーカーになる。
- 豆乳(無調整・調製・フレーバー、海外向けを含む):数量 96.0(豆乳の年間販売数量に相当する千キロリットル(国内市場シェアからの推計、輸出込み換算))× 価格 3.18(千キロリットル当たり売上高(億円、名目、国内品・輸出品の複合単価))→ 売上 306 億円・営業利益 57 億円。数量96千kL、単価1.29倍、利益率18.5%。値上げの一部が卸で実現しない。
- 植物性飲料・受託飲料・水(豆乳以外):数量 19.0(年間出荷数量(千キロリットル、アーモンド飲料・水・受託製品を含む推計))× 価格 2.23(千キロリットル当たりの複合売上高(億円、名目))→ 売上 42 億円・営業利益 7 億円。飲料19千kL、単価1.29倍、利益率17.2%。
- みそ(玉井味噌など子会社に製造集約):数量 5.0(年間みそ出荷数量(千トン、国内統計と推定シェアから推計))× 価格 2.93(千トン当たり売上高(億円、名目))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。みそ5千トン、単価1.30倍、利益率6%。
- 豆乳グルト(その他食品のモデル内訳):数量 9.2(年間販売数量(百万個、豆乳グルト400gなどの個数))× 価格 2.13(1百万個当たり売上高(億円、名目))→ 売上 20 億円・営業利益 3 億円。豆乳グルト920万個、単価1.29倍、利益率15%。
- 鍋スープ・チルド食品・豆乳加工品(その他食品の残余):数量 5.3(鍋スープ・大豆加工品の年間販売個数(百万袋・パック換算、推計))× 価格 2.84(1百万袋・パック換算当たり売上高(億円、名目))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。その他530万パック換算、単価1.29倍、利益率14%。
倍率:ROE=2.8÷112.7=2.5%はk8%を大きく下回る。稼ぐ力の上限は1÷k=12.5倍であり、競争劣位が持続する低い増分ROICを踏まえ11.5倍とした。2035年自己資本112.7億円は期首70.2+累計純利益約49.5-累計還元7億円に対応する。PBRを使わず、利益2.8億円にPERを掛けて価値32.2億円とし、帳簿の増加を株主価値に額面加算しない。
確率:薄い営業利益率、卸先への依存、2026年の借入増加により値上げの取りこぼしが利益を削る可能性は相応に高く、25%とした。
悲観 10% 主力豆乳のシェア喪失と設備負担で恒常赤字へ 利益 −14 億円 · PBR 0.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 910 円20 億円
キッコーマンや小売りの低価格品への顧客流出が続き、値上げで販路を失う。豆乳の国内市場が大きく崩れなくても、マルサンアイの取扱数量は8万キロリットル相当に縮む。伊藤忠商事など主要販路との取引条件も悪化し、希望小売価格の改定は実現した卸値として残らない。独自のプレミアム大豆商品だけでは大きな工場を稼働させる数量を確保できない。
みそは事業縮小が続き、発酵食品にも大手が参入する。豆乳グルトの数量は700万個まで減り、鍋スープなどの商品も売場を失う。カナダの設備投資は期待した数量を生まず、既存の製造設備にも減損が生じる。新規の大型M&Aで傷を隠す余地は乏しく、採算の悪い設備を整理せざるを得なくなる。
本社費と工場の固定費は売上ほど速く減らず、赤字が数年間続く。借り換えと資産処分によって倒産を回避しても、自己資本は大きく毀損する。配当は早い時期に縮小または停止され、10年後の企業価値は増配を続ける企業の価値でなく、残る資産と事業再建の可能性に依存する。
- 豆乳(無調整・調製・フレーバー、海外向けを含む):数量 80.0(豆乳の年間販売数量に相当する千キロリットル(国内市場シェアからの推計、輸出込み換算))× 価格 3.06(千キロリットル当たり売上高(億円、名目、国内品・輸出品の複合単価))→ 売上 245 億円・営業利益 42 億円。国内外合計80千kL、単価1.24倍、利益率17%。量販店の棚を失う。
- 植物性飲料・受託飲料・水(豆乳以外):数量 16.0(年間出荷数量(千キロリットル、アーモンド飲料・水・受託製品を含む推計))× 価格 2.14(千キロリットル当たりの複合売上高(億円、名目))→ 売上 34 億円・営業利益 5 億円。飲料16千kL、単価1.24倍、利益率16%。
- みそ(玉井味噌など子会社に製造集約):数量 3.5(年間みそ出荷数量(千トン、国内統計と推定シェアから推計))× 価格 2.75(千トン当たり売上高(億円、名目))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。みそ3.5千トン、単価1.22倍、利益率1%。
- 豆乳グルト(その他食品のモデル内訳):数量 7.0(年間販売数量(百万個、豆乳グルト400gなどの個数))× 価格 2.01(1百万個当たり売上高(億円、名目))→ 売上 14 億円・営業利益 2 億円。豆乳グルト700万個、単価1.22倍、利益率12.5%。
- 鍋スープ・チルド食品・豆乳加工品(その他食品の残余):数量 4.5(鍋スープ・大豆加工品の年間販売個数(百万袋・パック換算、推計))× 価格 2.68(1百万袋・パック換算当たり売上高(億円、名目))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。その他450万パック換算、単価1.22倍、利益率9%。
倍率:10年後は営業損失14.44億円、純損失13.5億円のため利益倍率は使わない。2030年代の複数年赤字・設備減損で、2025年自己資本70.2億円から利益損失累計約43.2億円・早期の還元3億円を引き、2035年の毀損後自己資本を24.0億円と見積もる。この減損後の簿価にPBR0.85を掛け企業価値20.4億円とする。過去の相場PBRは用いず、専用設備換価損・借金を差し引く税後資産床18億円より高いことを確認した。現金だけを独立加算しない。
確率:国内2位のブランドが短期間で消えるとは考えにくいが、低い利益率と負債の厚さは複合ショックに弱い。長期の構造敗北として10%を割り当てる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
豆乳(無調整・調製・フレーバー、海外向けを含む)
国内の豆乳2位の看板事業。無調整、調製、国産大豆のプレミアム商品、豆乳飲料のほかオーストラリア向けなどを含む。
| 数量豆乳の年間販売数量に相当する千キロリットル(国内市場シェアからの推計、輸出込み換算) | 価格千キロリットル当たり売上高(億円、名目、国内品・輸出品の複合単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 100 | 2.47 | 247 | 45 |
| 10 年後 中立 | 106 | 3.31 | 351 | 65 |
取り方:2025年の豆乳246.77億円は有報の製品別売上から直接採用。日本豆乳協会の国内生産444,552kLと、2019年の会社資料の金額シェア20.2%、2022年の会社資料に記載された2021年の金額シェア22.9%を照合し、2025年の数量を国内市場×仮の数量シェア22.5%≒100,000kL相当と推定した。したがって246.77億÷100千kL=2.4677億円/千kLであり、卸実売単価の会社開示値ではない。輸出分を含むため国内生産シェアと厳密には一致しない。2026年豆乳希望小売価格11~27%改定は卸価格への実現率不明のため、10年後の単価に別加算せず名目の値上がりに含める。 過去の販売金額シェアの出典:https://www.marusanai.co.jp/ir/pdf/schedule/schedule20221107.pdf 。
植物性飲料・受託飲料・水(豆乳以外)
アーモンド・オーツ飲料のほか、飲料受託製造とミネラルウォーター。豆乳と充填設備や物流を一部共用する。
| 数量年間出荷数量(千キロリットル、アーモンド飲料・水・受託製品を含む推計) | 価格千キロリットル当たりの複合売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 20.0 | 1.73 | 35 | 6 |
| 10 年後 中立 | 21.0 | 2.32 | 49 | 9 |
取り方:有報の豆乳飲料事業281.36億円から豆乳246.77億円を引いた飲料売上34.59億円は会社開示値。アーモンド飲料、オーツ飲料、受託品、飲料水の販売数量は非開示であり、容器容量・低価格の受託品を含む平均の工場出荷単価を約173円/Lと仮定して数量20千kLを推計した。34.59÷20=1.7295億円/千kL。統一した商品分野別の市場数量と会社シェアも未開示で、数量・単価は試算であり確定事実ではない。
みそ(玉井味噌など子会社に製造集約)
生みそ、調理みそ、即席・液状みそ。2025年に本社工場での製造を終え、製品数を削減した。
| 数量年間みそ出荷数量(千トン、国内統計と推定シェアから推計) | 価格千トン当たり売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 9.0 | 2.26 | 20 | 1 |
| 10 年後 中立 | 5.5 | 2.98 | 16 | 1 |
取り方:2025年のみそ売上20.30億円は有報の実績。全国味噌工業協同組合連合会の2025年生産量約362,589トン(組合集計)を母数とし、マルサンアイグループの推定出荷シェア約2.5%から約9,000トンとした。20.30億÷9千トン=2.2556億円/千トン(約226円/kg)は売上を市場の数量で割った複合単価で、数量シェアは会社の公表値ではない。2026年3四半期のみそ売上が前年比約48.5%減ったため、2035年数量は品目削減後の小さな事業を前提とする。 業界母数の出典:https://www.zenmi.jp/miso_toukei.html 。
豆乳グルト(その他食品のモデル内訳)
植物性乳酸菌で発酵させた乳不使用の食品。会社開示の販売数量が確認できるため、その他食品から別建てにした。
| 数量年間販売数量(百万個、豆乳グルト400gなどの個数) | 価格1百万個当たり売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 8.8 | 1.65 | 14 | 2 |
| 10 年後 中立 | 10.8 | 2.21 | 24 | 4 |
取り方:2025年有報の製品別研究開発説明で豆乳グルトの販売数量約878万個を確認。その他食品27.05億円のうち豆乳グルト単独売上は非開示のため、メーカー受取単価1個165円を仮定し、878万個×165円=14.49億円と分離した。実売価格165円と売上14.49億円は開示値でなく、本業の価格形成を推定するための作業仮定。2026年10月の希望小売価格8~9%改定は実売値とは区別する。
鍋スープ・チルド食品・豆乳加工品(その他食品の残余)
鍋つゆ、食べる豆乳、豆乳シュレッド、水煮大豆など。商品が異なるため袋・パックの平均換算で数量を推計する。
| 数量鍋スープ・大豆加工品の年間販売個数(百万袋・パック換算、推計) | 価格1百万袋・パック換算当たり売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 5.7 | 2.20 | 13 | 2 |
| 10 年後 中立 | 5.8 | 2.93 | 17 | 2 |
取り方:有報のその他食品売上27.05億円から、豆乳グルトについて仮定した14.49億円を除いた12.56億円が残余。鍋スープ、チルド食品、豆乳加工品、他社商品の構成別数量は開示されていない。出荷売上単価を平均1袋・1パック220円の等価個数に換算すると年間約571万個、12.56÷5.71=2.20億円/百万個となる。市場の統一した数量・シェア統計も得られず、分母はあくまで等価個数であって実際の総出荷点数と同一視しない。
リスクと懸念
値上げの実現率と数量の反動
2026年に公表された豆乳の11~27%、豆乳グルトの8~9%という改定率は、いずれも希望小売価格についての数字である。卸値の実現率、店頭値引き、実際の販売本数が分からない状態で同じ比率を利益に足すと、大幅な過大評価になる。原料高の負担を減らせても消費量が落ちれば、固定費の重い工場では利益が減り得る。
借入増加と製造設備の更新費
2025年末の自己資本比率は26%にとどまり、借入から現預金を控除した純負債は約42億円あった。2026年夏にはこの差額がさらに拡大した。既存設備の会計上の償却は過去の値段で進むが、新工場や更新機械にはインフレ後の費用がかかる。高金利での借換と営業キャッシュフロー不足が重なると、株主還元だけでなく会社の投資余力も狭まる。
キッコーマンと小売りの価格競争
業界首位のキッコーマンに対して、マルサンアイは知名度が高くても供給規模では見劣りする。低価格の自主企画商品や他社の植物性ミルクが売場に増えれば、量販店は納入価格の引下げを求めやすい。無調整豆乳が伸びているからといって、ブランドごとの数量と利益率が等しく伸びるわけではない。
大口販路への販売集中
2025年の伊藤忠商事向け売上が全体の40.7%、オーストラリアのSPIRAL FOODS向けが10.2%だった。少数の取引先が広い販売網を支えることは長所でもあるが、取引条件の変更、販売計画の見直し、物流障害が業績に大きく影響し得る。直販主体の食品ブランドより、製造者が最終価格を制御しにくい点を慎重に見る必要がある。
みその再編と海外生産の実行
2025年の本社みそ工場から子会社への製造集約では、売上が急減した。これは採算改善のための意図的な縮小だが、固定費も同時に減ったかは追跡が必要だ。カナダのAlinova Canadaでは設備を完成させても受注が増えなければ、償却と金利だけが先に利益を押し下げる。再編や新事業を発表した段階では投資収益の実績と見なさない。
食品安全とブランドの信頼
豆乳も発酵食品も、異物混入、品質異常、アレルゲン表示の不備、製品回収が起きれば販売を長期間傷つける。加工食品の利益率が薄い会社にとって、回収費用だけでなく、売場を他社に取られる二次的な損失が重い。自社ブランドの信頼を長期に維持することが堀の条件であり、品質保証費を削って利益率を高める評価はしない。
今後の分かれ目
- 豆乳の希望小売価格改定から1年後も販売数量が増え、卸売総利益率が改善したら
- 値上げが実現した証拠として中立の豆乳単価と営業利益率を上方修正し、海外の成功だけに依存しない利益成長を認める。
- 国内豆乳の年間生産量が50万キロリットルを超え、同社の数量シェアも上向いたら
- 業界の実質数量の成長と会社の競争力を別々に確認し、やや楽観の確率を増やす。
- カナダ拠点の出荷実績と工場別営業利益が開示され、償却・金利を超える利益が出たら
- 増分ROICの改善が実証されたと見て、海外数量と純利益の上側を見直す。
- 純有利子負債が増え続け、営業キャッシュフローが更新設備投資を3期連続で下回ったら
- 株主還元の持続性を下方修正し、資金調達制約を含むやや悲観・悲観側の確率を増やす。
- みそ事業の売上減が止まり、子会社への製造集約後の利益率が改善したら
- 数量を過度に低く見ない形へ修正する。ただし一時的な在庫調整の反動は構造改善と区別する。
- キッコーマンの販促とPB拡大で豆乳の売上数量が2期連続で減ったら
- 会社のシェア損失が継続していると判断し、中立の数量と単価を引き下げる。売上減に対する本社固定費の重さも再点検する。
- 配当・自己株取得の合計が純利益の半分程度まで高まり、複数年継続したら
- 余剰現金の株主への戻り方を0.75から1.0へ改善させ、資本配分の価値を見直す。
見ておくもの
- 日本豆乳協会の四半期生産数量、特に無調整豆乳と調製豆乳の増減
- 自社の豆乳・飲料売上高の数量増と単価改定効果の分離
- 2026年秋の希望小売価格改定後の出荷数量、店頭採用率、粗利益率
- みそ事業の販売縮小が止まり、子会社への製造集約後に利益が残るか
- カナダAlinova Canadaの稼働・販売額と追加設備投資の回収率
- 営業キャッシュフロー、設備投資、償却費、純有利子負債の毎年の差
- 伊藤忠商事とオーストラリア向けの売上集中度、価格条件の変化
- 配当総額、自己株取得実績、ROIC開示と資本政策の変更
倍率と資本コストの決め方
現在の株価や同業のPERを倍率の根拠にせず、2025年の製品別売上と業界数量から販売物量を見積もり、物価上昇は単価だけに含めた。食品の一部数量・単価は開示不足のため仮定であり、実績と区別した。楽観から中立のPERはk8.0%、長期g2.5%、利益に対する事業ROEから正当化し、中立ROEがkに届かない場合の上限を守った。固定設備の償却は既存の取得額を据え置き、更新分だけインフレ後の取得額を反映した。新リース会計基準による2028年9月期以降のBS表示変更は経済価値の増減とは区別し、賃借費用を無視した純現金評価は行わない。 2026年10月時点で公表済みのTOB・MBO・上場廃止予定を認めず、2026年第3四半期決算の継続企業の前提の注記も該当なしと確認した。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。