結論
亀田製菓は、柿の種とハッピーターンで知られる米菓の最大手だ。国内の米菓市場で約3割を握り、2025年に北米のグルテンフリー・クラッカー会社を完全子会社にして、海外が売上の3分の1を占める会社に変わった。
筆者の結論は、今の値段は事業の稼ぐ力にほぼ見合っているというものだ。直近の純利益246億円の大半は買収に伴う会計上の差益で、本業の稼ぎは営業利益で見て75億円にとどまる。
国内は強い。重点6ブランドに絞り、値上げを通しながら数量も戻した。一方、北米の買収は借入を伴い、のれんの償却が毎年重くのしかかる。うまくいけば利益は今の倍近くになるが、外れれば減損で自己資本が削られる。
10年後の中心は、国内を守り北米で伸ばす姿だ。そのとき利益率は6%ほど、ROEは6%台前半にとどまり、資本コストを少し下回る会社になる。ここから先に大きな割安も割高も出にくい。割安が出るのは北米が計画どおりに育った時だけで、その確率を筆者は3割ほどとみる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「国内の米菓という安定した事業に、北米という賭けを足した会社」だ。国内の稼ぎは読みやすい。柿の種はなくならず、値上げも通る。ただ、利益率は7%前後で、株主に残る利益は多くない。
北米は、買った値段が適正かが焦点になる。段階取得の差益206億円は、買う前から持っていた持分の評価益で、現金は入っていない。のれんと無形資産が自己資本の相当部分を占め、期待どおりの利益が出なければ減損が避けられない。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、国内の数十億円と海外の十数億円ほどだ。10年かけて海外が育てば倍近くに増える。だが国内が人口減で伸びない以上、全体の伸びは物価に少し足した程度にとどまる。
安全域は、今の値段に見て厚くない。楽観の筋書きなら大きく上回るが、慎重な筋書きでは大きく下回る。判断の鍵は、北米の利益率が本当に上がるかで、そこはあと数年の実績を見ないと確信できない。筆者は、この会社を確信を持って持ち続けるには、まだ材料が足りないと考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は3つある。国内米菓、海外、食品だ。売上の5割強が国内米菓で、残りの大半が海外になった。
国内米菓は、亀田の柿の種、ハッピーターン、つまみ種、こつぶっこなど重点6ブランドが中心だ。スーパー、コンビニ、量販店に卸し、新潟を軸とした自社工場とアジカル、とよすなどのグループ会社でつくる。2026年3月期の売上は723億円、営業利益は51億円で、利益率は7%ほどだ。
海外は、2025年6月に完全子会社にした米国のTH FOODSが中心になった。主力のCRUNCHMASTERは米やグルテンを使わない健康志向のクラッカーで、スーパーの健康食品棚に並ぶ。タイ、カンボジア、ベトナム、中国の工場は、日本向けや欧州・豪州向けの輸出基地と現地ブランドの両方の役割を持つ。会社はアジアで仕上げた商品を北米で売る「リフト&シフト」を進めている。
食品は、米粉パン、長期保存食、植物由来の食品などだ。売上は160億円前後で、伸びは遅い。
三つの柱の中で、いま利益を生んでいるのは国内米菓だ。海外はのれんの償却が重く、会計上の利益は薄い。ここが育つかどうかが10年の分かれ目になる。
優良さと弱いところ
国内米菓の堀、つまり他社がまねしにくい強みは、ブランドと棚の確保力だ。柿の種は1966年から続く定番で、国内の米菓の売上で首位を保つ。シェアは約3割で、三幸製菓や岩塚製菓との差は大きい。
ただし、堀は深くない。米菓は人口が減る国で食べられるスナックで、数量は伸びない。値上げが通るのは強みだが、原料の米が上がる局面では転嫁が遅れ、利益が先に削られる。売上高営業利益率が7%前後という水準は、堀があっても薄利の仕事であることを示す。
北米は、まだ強いとは言い切れない。CRUNCHMASTERは自社ブランドの比率が5割を超えたが、小売店の自主企画商品との競争が厳しい。のれんの償却は年に24億円ほどで、営業利益の3割にあたる。
経営は、不採算のナッツ事業と赤字のMary's Gone Crackersを手放し、選択と集中に動いた。判断は早い。反面、借入260億円を使った大型の買収は、一度外せば取り返しが難しい。
筆者は、国内の守りの強さと北米の不確かさを分けて見ている。事業全体の質は並みで、強い堀とは呼ばない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の米菓市場は2024年に約2,500億円と、前年より4%伸びた。ただし伸びの多くは値上げによる。人口は減るので、数量は横ばいから微減が自然だ。亀田製菓は約3割、三幸製菓と岩塚製菓が続く。
追い風は2つある。ひとつは、高たんぱくや低糖質といった健康志向のスナックへの関心だ。もうひとつは、訪日客の土産需要で、アジカルやとよすのような土産菓子が好調だ。
向かい風は原料の米だ。米価は高止まりが続き、値上げの理由にはなるが、消費者の財布は限られる。供給でも、年末の需要に応え切れず、柿の種の一部を休止した。国内の需要は強いが、工場の能力が先に尽きた形だ。
北米は、グルテンフリーのクラッカー市場が健康志向を背景に広がっている。THFは自社ブランドを増やし、2027年3月期の調整後営業利益は3,200万ドルを見込む。ただ、競争相手は大手の食品会社や小売の自主企画商品で、価格で押される場面は多い。
業種ノートの見立てどおり、10年は国内の数量が緩やかに横ばい、価格は物価並みに上がる。亀田製菓は国内の守りを固め、成長は北米に託している。
資本政策と M&A
株主への還元は配当が中心だ。2027年3月期の配当は性向35%の計画で、自社株買いは大きくない。2026年3月末の自己株は発行済株式の5%台にある。
資本の使い方で目立つのは、北米への大型投資だ。借入260億円でTHFを完全子会社にし、純負債は今期末に286億円まで増えた。自己資本の0.28倍で、利払いは営業利益の12分の1だ。当面の財務に不安はないが、のれんの償却と借り換えの金利上昇で、純利益は営業利益の半分ほどに薄まる。
大株主は、エイケイ、日本マスタートラスト信託銀行、KAMEDA共栄会、第四北越銀行が並ぶ。支配株主はいない。筆頭のエイケイでも9%台で、政策保有株が重いとは言えない。
10年内に買収される確率は、kabufuの推定で約3割と出ている。支配株主がなく時価総額が830億円ほどと小さいので、食品の大手や商社が動く余地はある。筆者は、買われる場合の価格は事業の稼ぐ力から大きく離れないとみて、筋書きには入れていない。
点検済み:中立の営業利益率が過去の山(5.7%)と会社の予想(5.8〜6.0%)を超える7.7%に置かれていたため、国内は今の水準、海外はのれん償却後で3%から5%への改善に置き直した(全社6.0%、会社の再来期予想と同じ)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
亀田製菓は国内の米菓で約3割のシェアを持ち、柿の種とハッピーターンという世代を超えて売れる商品を持つ。重点6ブランドへの集中で数量が戻り、値上げも消費者に受け入れられている。国内の営業利益は前期に15%増え、利益率は7%を超えた。
北米のTHFは、自社ブランドが売上の5割を超え、2027年3月期には調整後営業利益が3,200万ドルと過去最高に迫る。アジアで仕上げた商品を米国で売るリフト&シフトが動き出せば、米国のグルテンフリー市場の成長を取り込める。のれんの償却を除いた調整後営業利益は、2030年度に145億円という目標だ。
借入は多いが、営業キャッシュフローは年119億円あり、返済に無理はない。海外が売上の4割を占めれば、人口減の国内に頼らない会社になる。当面の純利益は薄く見えるが、償却が進み金利が落ち着けば、利益は営業利益に近づく。評価は北米の利益が見えてから跳ね上がる可能性がある。
国内の米菓は売上の5割強を占める屋台骨で、土産需要やプレミアム商品でも手応えが出ている。ここに米国の健康志向の波が重なれば、10年後の利益は物価の伸びを大きく上回る。経営は不採算を早く切り、資金を重点分野に寄せている。この判断の速さは、失敗した買収の後始末を長引かせない強みでもある。
慎重な見方
国内の米菓市場は数量が伸びない。値上げは通っているが、米価の上昇が続けば転嫁は追いつかず、前期も柿の種の休止という供給の失敗があった。国内の利益率は7%台で、大きな改善余地はない。
北米は、買った値段が高かった可能性が拭えない。段階取得の差益206億円は会計上の評価益で、現金ではない。のれんと無形資産の償却は毎年24億円ほど利益を削り、2027年3月期の純利益は43億円と、営業利益の半分ほどしか残らない。ROEは5%前後で、資本コストに届かない。
THFの主な競争相手は大手食品会社と小売の自主企画商品で、価格で押される。ナッツ事業の撤退や赤字会社の売却が続いたことは、買収後の整理に時間がかかっていることを示す。アジアの輸出事業も、タイとカンボジアは苦戦した。
会社が掲げる調整後営業利益は、償却を除いた数字で、株主の取り分ではない。今の値段は、北米がうまくいく前提を先に織り込んでいる。
国内には構造的な不安もある。米菓は嗜好品で、人口が減れば食べる人が減り、数量の下支えは重点ブランドの入れ替えに頼る形になる。新しい商品が育たなければ、いまの好調は値上げの一巡で終わりうる。北米で想定どおりの利益が出ない場合の下振れも、国内の薄い利益では吸収しきれない。
どちらに重みを置いたか
強い方は慎重な見方だ。ただし、国内の守りの強さと財務の余裕を考えると、悲観に大きく寄せる理由もない。
国内が10年で横ばいなのは明らかで、成長の源は北米しかない。その北米は、実績が1年分しかなく、まだ判定できない。そこで、中立を最も厚く3分の1強に置き、楽観側は合計で3割、悲観側は合計で3割台前半とした。やや悲観の確率を、やや楽観より少し高く置いたのは、のれんの減損リスクと米価の転嫁遅れが同時に来る可能性を重く見たからだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,869 円1,182 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 437 円276 億円)。 今の値に割り戻すと 1,182 円748 億円、今との差 −13.0%、 期待の年率 +5.4%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,811 円2,411 億円 | 632 円400 億円 | +227.0% | +12.6% | 355 円225 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,816 円1,781 億円 | 545 円345 億円 | +147.4% | +9.5% | 740 円468 億円 |
| 中立 | 36% | 1,780 円1,126 億円 | 410 円259 億円 | +61.1% | +4.9% | 788 円499 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,127 円713 億円 | 395 円250 億円 | +12.0% | +1.1% | 365 円231 億円 |
| 悲観 | 10% | 332 円210 億円 | 237 円150 億円 | −58.1% | −8.3% | 57 円36 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,869 円1,182 億円 | 437 円276 億円 | +69.7% | +5.4% | 2,306 円1,458 億円 |
今の株価時価総額 1,359 円860 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 北米が計画以上に育ち、国内も堅調 利益 165 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 3,811 円2,411 億円
北米の自社ブランドが広がり、アジアで仕上げた商品がスーパーの健康食品棚に定着する。海外の売上は今の倍近くになり、利益率も10%台に乗る。のれんの償却は残るが、利益の伸びがそれを上回る。
国内は、ハッピーターンやこつぶっこが伸び、数量が小さく増える。値上げも通り、利益率は9%ほどに上がる。食品事業も米粉やプラントベースが定着し、黒字が安定する。
全体の営業利益は235億円ほどで、今の3倍近い。会社が掲げる調整後営業利益145億円(2030年度)を大きく超える姿だ。自己資本利益率は10%台に乗り、資本コストをはっきり超える会社になる。そのぶん還元も増える。
- 国内米菓事業:数量 4.4(出荷数量(億袋換算))× 価格 228(1袋あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 998 億円・営業利益 90 億円。柿の種とハッピーターンが伸びる
- 海外事業:数量 2.2(出荷数量(億パック換算))× 価格 536(1パックあたりの出荷単価(円・名目、1ドル150円))→ 売上 1,174 億円・営業利益 129 億円。リフト&シフトが当たる
- 食品事業:数量 1.7(出荷数量(億食換算))× 価格 134(1食あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 228 億円・営業利益 16 億円。米粉・長期保存食が定着
倍率:事業の純利益 165 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.1% が k 7.80% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍。全体の PER 14.57 倍、時価総額 2,404 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:リフト&シフトが当たり、北米が10年で売上の3割以上を稼ぐ姿を、上位の筋書きとして置いた。
やや楽観 22% 北米が順調に育ち、国内は横ばい 利益 132 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 2,816 円1,781 億円
北米の自社ブランドが広がり、海外の利益率が償却後で9〜10%に近づく。ナッツ事業の撤退と赤字会社の売却で、整理は終わっている。
国内は数量が横ばいで、値上げが原料高を吸収する。利益率は8%ほどまで緩やかに改善し、重点6ブランドへの集中が効く。食品事業は小さな黒字になる。
営業利益は190億円ほどで、会社の目標に近い水準だ。のれんの償却が進み、金利も落ち着くので、純利益は営業利益の7割に戻る。自己資本利益率は8%台半ばで、資本コストを少し上回る。
北米の成長の一部はアジアで仕上げる商品に支えられ、タイやベトナムの工場の稼働も上がる。経営の整理が終わっているため、新たな買収に資金を回さず、借入の返済と還元を優先できる。
- 国内米菓事業:数量 4.3(出荷数量(億袋換算))× 価格 228(1袋あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 968 億円・営業利益 79 億円。数量は横ばい、利益率は緩やかに改善
- 海外事業:数量 2.0(出荷数量(億パック換算))× 価格 536(1パックあたりの出荷単価(円・名目、1ドル150円))→ 売上 1,059 億円・営業利益 101 億円。北米の自社ブランドが育つ
- 食品事業:数量 1.6(出荷数量(億食換算))× 価格 134(1食あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 217 億円・営業利益 12 億円。赤字を脱し小さな黒字
倍率:事業の純利益 132 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.5% が k 7.80% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍。全体の PER 13.44 倍、時価総額 1,774 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の中期計画がおおむね達成され、少し上振れる筋書きとして置いた。
中立 36% 国内は守り、北米で伸ばす10年 利益 87 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 1,780 円1,126 億円
10年後、国内米菓は数量が横ばいで、値上げが原料高を吸収する。利益率は7%ほどで今とほぼ同じ。米菓の首位は揺らがず、重点6ブランドが売上の大半を稼ぐ。
海外は、THFの通年化で数量が伸びたあと、北米の健康志向を背景に緩やかに増える。のれんの償却後で利益率は5%ほどまで上がる。ただ、小売の自主企画商品との競争で、期待ほどには伸びない。
食品事業は小さな黒字のままだ。全体の営業利益は130億円前後(利益率6%、会社の再来期予想と同じ水準)で、会社が掲げる2030年度の調整後営業利益145億円(のれんの償却前)の手前に収まる。
借入は返済が進み、利払いは軽くなる。自己資本利益率は6%台前半で、資本コストを少し下回る会社になる。
- 国内米菓事業:数量 4.3(出荷数量(億袋換算))× 価格 228(1袋あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 968 億円・営業利益 70 億円。数量横ばい・値上げで吸収(利益率は今と同じ7.2%)
- 海外事業:数量 1.8(出荷数量(億パック換算))× 価格 536(1パックあたりの出荷単価(円・名目、1ドル150円))→ 売上 941 億円・営業利益 47 億円。償却後の利益率は今の3%から5%に上がる
- 食品事業:数量 1.6(出荷数量(億食換算))× 価格 134(1食あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 217 億円・営業利益 11 億円。小さな黒字にとどまる
倍率:ROE6.1%はk7.8%を下回るので、ためた利益は額面未満で、PERは1÷k=12.82倍まで。この上限に置いた(ROEとkが近く、海外の利益率の改善を一部だけ織り込むため)。
確率:国内の守りと北米の緩やかな成長を組み合わせた中心の筋書き。業種ノートの国内数量の横ばいと、北米の利益率改善を半分ほど織り込んだ。
やや悲観 24% 米価と北米の競争で、利益が伸びない 利益 64 億円 · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 1,127 円713 億円
米価の高止まりで、国内の値上げは転嫁が遅れがちになる。数量は人口減で1割弱減り、国内米菓の利益率は6%に落ちる。
北米は、小売の自主企画商品との価格競争で、自社ブランドの比率が上がっても値引きが続く。海外の営業利益率は5%にとどまり、のれんの償却が重い。食品事業は規模が育たず、利益はほぼ出ない。
全体の営業利益は100億円を割り込み、純利益は60億円台にとどまる。自己資本利益率は4%台で、資本コストを下回る。配当は性向を保つが、自社株買いは出ない。
国内も北米も、どちらかが大きく崩れるわけではない。ただ、どちらも伸びないまま、のれんの償却と借入の利払いだけが残るため、会社の資本効率は資本コストを下回り続ける。市場から見ても、優良な成長会社には見えなくなる。
- 国内米菓事業:数量 3.9(出荷数量(億袋換算))× 価格 221(1袋あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 864 億円・営業利益 52 億円。数量減と米価の転嫁遅れ
- 海外事業:数量 1.5(出荷数量(億パック換算))× 価格 500(1パックあたりの出荷単価(円・名目、1ドル150円))→ 売上 732 億円・営業利益 37 億円。北米の値引き競争で利益率が伸びない
- 食品事業:数量 1.5(出荷数量(億食換算))× 価格 130(1食あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 190 億円・営業利益 6 億円。規模が育たない
倍率:ROE4.8%はkを下回る。RONICは6%強、成長3%で正当化PERは11.7倍。利益の質が落ちるため上限の9割台前半の11倍に置いた。
確率:原料米の高騰と北米の価格競争が同時に来る筋書き。のれんの償却は続くが、減損までは至らない。
悲観 10% 北米の買収が裏目に出て、国内も細る10年 利益 20 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 332 円210 億円
北米のブランドが小売の自主企画商品に負け、THFの売上は伸びない。のれんと無形資産の300億円ほどを減損し、自己資本が大きく削られる。海外は赤字になる。
国内は、米価の高騰が続き、値上げも消費者に拒まれる。数量は2割減り、利益率は3%台に落ちる。供給の失敗で棚を失った期も出る。
営業利益はほぼ消え、純利益は20億円ほどにとどまる。借入の返済のため、工場の土地建物を売る選択も出る。配当は大きく削られ、自社株買いはやめる。会社の評価は事業の稼ぐ力と、売れる資産の価値で決まる。
北米の失敗が国内への投資の余力も奪い、経営の優先順位が混乱する。結果として、10年後の亀田製菓は、国内の定番ブランドだけを持つ小さな食品会社に近づく。
- 国内米菓事業:数量 3.4(出荷数量(億袋換算))× 価格 204(1袋あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 694 億円・営業利益 24 億円。数量が2割減り、値上げも通らない
- 海外事業:数量 1.1(出荷数量(億パック換算))× 価格 460(1パックあたりの出荷単価(円・名目、1ドル150円))→ 売上 506 億円・営業利益 −10 億円。北米のブランドが負ける
- 食品事業:数量 1.3(出荷数量(億食換算))× 価格 120(1食あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 156 億円・営業利益 0 億円。撤退に近い
倍率:純利益は20億円と薄く、利益で値を付けられない。稼ぐ力(純利益20億円÷k)は274億円。先細る利益なのでその約8割の210億円(今の自己資本1,029億円の0.20倍)に置き、やや悲観のPERを超えない。EV ÷ 営業利益は55倍に跳ねるが、営業利益がほぼ消えた年の数字なので使わず、稼ぐ力で測った。減損後の自己資本は730億円。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.2041 倍・時価総額 210 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:北米の買収が裏目に出るのに、国内の供給や米価の問題が重なる構造的な負けの筋書き。のれんの減損が避けられず、優良な会社でなくなる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内米菓事業
亀田の柿の種・ハッピーターン・つまみ種などの米菓を、スーパー・コンビニ・量販店に卸す。アジカル、とよすなどのグループ会社を含む。売上構成比は5割強。
| 数量出荷数量(億袋換算) | 価格1袋あたりの出荷単価(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.3 | 170 | 723 | 51 |
| 10 年後 中立 | 4.3 | 228 | 968 | 70 |
取り方:開示の売上723.1億円を、出荷ベースの1袋の単価170(円)で割って数量を推定した。米菓市場2,485億円に対するシェアは約29%で、会社の言う約30%と合う。営業利益は開示の51.4億円。価格は名目で物価並み(10年1.34倍)に上がる。数量は実質で、人口減を重点6ブランドで補い、中立は10年で横ばい。
海外事業
北米のTH FOODS(CRUNCHMASTERなどのグルテンフリークラッカー)、タイ・カンボジア・ベトナム・中国の米菓工場。2025年6月にTHFを完全子会社化した。
| 数量出荷数量(億パック換算) | 価格1パックあたりの出荷単価(円・名目、1ドル150円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.2 | 400 | 495 | 15 |
| 10 年後 中立 | 1.8 | 536 | 941 | 47 |
取り方:開示の海外売上494.8億円を、北米のクラッカー(卸値1パック数百円)とアジアの米菓の加重で単価400(円)と置いて数量を推定した。今期はTHFを約10か月しか含まないため、来期の通年化とナッツ撤退を数量に入れる。営業利益は開示がなく、前期比の増益額16.6億円から推定して約15億円。のれんと無形資産の償却約24億円を引いた後の値。
食品事業
米粉パン・長期保存食・プラントベースフードなど、米菓以外の食品。連結の差額から売上を推定した。
| 数量出荷数量(億食換算) | 価格1食あたりの出荷単価(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.6 | 100 | 162 | 8 |
| 10 年後 中立 | 1.6 | 134 | 217 | 11 |
取り方:連結売上から国内米菓と海外を引いた約160億円を、1食の単価100(円)で割った推定。営業利益は開示がなく、全体の75.3億円から他を引いて約8億円。営業利益は長期保存食の反動減と米価高で前期より2億円減った。
リスクと懸念
北米買収ののれんの減損
THFの買収で、のれんと無形資産が自己資本の相当部分を占める。北米の利益が計画に届かなければ、減損で純利益が大きく落ち、自己資本も削られる。段階取得の差益は評価益で、現金の裏づけがない点にも注意が要る。
原料米の高騰と転嫁の遅れ
米菓の原料は米で、価格は国の政策と天候に左右される。値上げは通ってきたが、上がる速度が転嫁より速い局面では利益率が先に削られる。国内米菓は営業利益率が7%台と薄いため、1ポイントの悪化も影響が大きい。
供給体制の不足
年末の需要に応えられず、柿の種の一部を休止した。需要はあっても工場の能力が先に尽きると、売る機会を逃す。他社との協業を含む安定供給体制づくりが課題だ。
北米の価格競争
グルテンフリー市場は広がっているが、大手食品会社や小売の自主企画商品が追う。流通の交渉力が強く、値引き要請が増えれば、自社ブランドの比率が上がっても利益率は伸びない。
国内の人口減
米菓の数量は人口とともに緩やかに減る。重点ブランドの強化と土産需要で補っているが、長期では下支えの効果が弱まる可能性がある。
借入と金利上昇
北米の買収で長期借入260億円を調達した。借り換えのたびに金利が上がると、純利益は営業利益の半分ほどにとどまる。財務は今は堅いが、利益が伸びないと負担が表に出る。
今後の分かれ目
- THFの調整後営業利益が3,200万ドルを超えて伸びたら
- 北米の利益率が想定より早く上がるので、楽観・やや楽観の確率を厚くする。
- 米価が高止まりし、値上げが追いつかず国内米菓の営業利益率が6%を割ったら
- 国内の利益率の前提を下げ、やや悲観側に重みを移す。
- 北米の売上が2期続けて計画に届かなかったら
- のれんの減損リスクが高まるので、悲観の確率を上げる。
- 新工場の稼働や協業で供給が安定し、国内の数量が増え続けたら
- 国内の数量の前提を上げ、中立より強気の筋書きに寄せる。
- 大手食品会社や商社が株を取得しはじめたら
- 買収の可能性が高まるので、事業の稼ぐ力に近い価格で評価を見直す。
- のれん償却が進み、純利益が営業利益の7割まで戻ったら
- 利益の質が改善するので、中立のPERを少し高く置いてよい。
見ておくもの
- THFの調整後営業利益と自社ブランド比率の推移
- 国内米菓の営業利益率(7%台を保てるか)
- 原料米の仕入価格と値上げの浸透度
- のれん・無形資産の減損の有無
- 調整後営業利益145億円(2030年度)への進捗
倍率と資本コストの決め方
国内米菓は出荷数量と出荷単価、海外は出荷パック数と単価、食品は食数と単価で10年を積み、各筋書きの営業利益を出した。倍率は、k7.8%(基本7.5%にquality-0.2%)、成長4%(悲観側は3%)、残る割合1/2から、利益ベースの正当化PERを求め、その上限の9割前後で置いた(悲観は稼ぐ力の約8割)。今の株価や過去・同業の倍率は使っていない。海外はのれんの償却を営業利益に入れる形(会計上の営業利益)でそろえ、調整後営業利益は使っていない。2026年3月期の純利益246億円は段階取得差益206億円を含むため、流れの起点は約40億円とした。新リース会計基準は、店舗を持たない製造業のため影響は小さいと見る。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15→14.57 倍・やや楽観 PER 14.5→13.44 倍・中立 PER 13.7→12.82 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityを足して決める。事業は傾いていないので上乗せは置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.30% → 7.80%。