結論
昭和産業は、輸入小麦・大豆・菜種・トウモロコシを加工する穀物の総合メーカーだ。製粉と製油はともに国内3位で、天ぷら粉は首位とされる。売上の8割は食品事業、残る2割弱が配合飼料である。
筆者の結論は、今の値段はやや割高というものだ。いちばんの理由は、稼ぐ力が資本コストに届いていないことにある。営業利益率は3%台で、飼料はほぼ収支とんとんだ。国内の小麦粉も食用油も、人口減で数量は細る。物価の分は値上げで取り返せるが、それで利益率が上がるわけではない。
会社は中期経営計画で、2029年度に営業利益140億円、ROE 8%を掲げる。こめ油や機能性糖質など付加価値品への移行は筋がよい。だが10年で見ると、利益の伸びより自己資本の積み上がりが速く、資本効率は上がりにくい。
強みは財務の安定だ。自己資本比率は5割を超え、政策保有株や遊休不動産という売れる資産も持つ。弱みは規模で、首位の日清製粉グループ本社は売上が2倍以上ある。業界再編では、買う側より買われる側に回る場面も想像できる。
10年後の中立は、営業利益が150億円前後の成熟した原料加工業だ。そこから出した本質価値は、今の時価総額を2割強下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、持ち続けたいと思う会社ではない。理由は、10年経っても主人が受け取れる利益が増えにくい構造にあるからだ。
稼いだ利益のうち、工場の更新や付加価値品への投資に回る分が多い。残りの配当と自社株買いは、純利益の半分ほどだ。利益がほぼ横ばいなら、自己資本ばかりが増え、自己資本に対する稼ぎは薄まっていく。
堀はあるが狭い。製粉・製油・糖質・飼料が1つの流れでつながる設備は、同業も持っている。他社に勝つ理由にはならず、守る堀にとどまる。
経営は誠実だと見る。M&Aは小さく、のれんを積み上げていない。配当の方針も、DOEという下限を置いて筋が通っている。ただ、中期経営計画のROE 8%は、資本コストに届くかどうかの水準で、物足りない。
安全域は、今の値段にはない。10年後の中立でも、受け取れる総額は資本コストで割り戻すと今の値段に届かない。安全域が生まれるのは、時価総額が今の2割安になった時だろう。
何で稼ぐ会社か
昭和産業は穀物を加工して売る会社で、事業は食品と飼料に分かれる。2025年3月期の売上は3,344億円、うち食品が2,735億円で営業利益は約110億円。飼料は売上561億円で、利益は4億円にとどまる。
食品は3つのカテゴリーからなる。製粉(売上1,063億円)は小麦粉とプレミックス、天ぷら粉、パスタを手がける。製油(938億円)は大豆油・菜種油などの汎用油に加え、子会社のボーソー油脂がこめ油を担う。糖質(658億円)はトウモロコシからコーンスターチ、水あめ、ぶどう糖、異性化糖を作る。この3つは原料も工場も重なり、副産物のコーン油や飼料原料を融通し合う。
飼料は配合飼料と鶏卵・肥料の流通だ。売上は厚いが利益は薄く、鶏卵相場や鳥インフルエンザに左右される。2025年1月には子会社の昭産商事が兵庫飼料を買収し、副産物の流通を固めた。
この会社の特徴は、小麦粉・油・糖・飼料を1つの穀物の流れでつなぐ点にある。1つの原料から複数の製品を取り、副産物まで売り切る。大手の中では総合穀物加工という色が最も濃い。
他社との関係では、2023年に製油の辻製油と資本業務提携を結び、株式の2割を持つ。製油と糖質で協業する足場である。
優良さと弱いところ
優良さは、中の上というところだ。稼ぐ力が強いのではなく、崩れにくいことが長所である。
値段を自分で決める力は弱い。製粉は政府の売渡価格に沿って各社が同じ時期に値上げを発表し、製油と飼料は市況で価格が動く。営業利益率は過去10年で1%台から4%弱の間にあり、2023年3月期には1%台前半まで落ちた。利益率の底が浅い年が続けば、数字は簡単に崩れる。
良い点は財務と資産だ。純有利子負債は時価総額の3割強、自己資本比率は5割を超え、赤字の期は過去10年で1度もない。政策保有株や遊休不動産の売却で、借金を減らす余地もある。
資本効率は物足りない。ROEは過去10年の中央値で8%強だが、直近は7%にとどまり、2027年3月期は6%台の見込みだ。中期経営計画の2029年度目標もROE 8%と、高いとは言えない。
堀は、設備と販売網の厚みにある。製粉・製油・糖質・飼料がつながる工場群と、業務用の顧客との結びつきだ。ただ他社も同じ規模の設備を持つため、他社より儲かる理由にはなりにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の小麦粉の消費は、1994年の500万トンから2023年度には444万トンまで減った。人口減と食の多様化が続くので、数量は10年で1割ほど細ると見るのが自然だ。食用油も、国内の消費は横ばいから微減である。砂糖・異性化糖など糖質は輸入原料への依存が大きい。
製粉は日清製粉グループ本社が約4割、ニップンと昭和産業が続き、日東富士製粉を含む大手4社で8割を占める寡占だ。原料の輸入小麦は国が買い付け、年2回の売渡価格の改定を各社が数か月遅れで転嫁する。この仕組みは急な利益悪化を和らげるが、利益率の上限も押さえる。
製油は日清オイリオグループ、J-オイルミルズ、昭和産業などが競う。原料の大豆・菜種は国際相場に連動し、卸価格の交渉は四半期ごとに行われる。こめ油は健康志向で需要が伸び、各社が増産に動いている。
糖質では、コーンスターチや異性化糖を飲料・食品メーカーに納める。顧客の工場の近さが競争力で、代替しにくい一方、数量は飲料の需要に連動する。
飼料は農協系や商社系との競争が激しく、利益率は1%前後と薄い。再編と工場統合が進む業界で、昭和産業は規模で首位に届かず、付加価値品と副産物の活用で差をつける立場にある。
資本政策と M&A
資本政策は、守りから少しずつ攻めへ向かっている。2026年2月の方針で、配当は性向40%とDOE(自己資本に対する配当の割合)3.0%の高い方を基準とすることにした。2025年3月期の配当は年40億円強で、性向は3割台前半だった。
M&Aは小粒で堅実だ。2020年にボーソー油脂をTOBで完全子会社にし、こめ油を手に入れた。同年にサンエイ糖化も完全子会社にした。2023年には辻製油と資本業務提携を結び、2025年には兵庫飼料を買収した。いずれも本業の延長で、のれんが重い買収はない。
政策保有株と遊休不動産の売却を進め、資産を軽くする方針も示している。売却で得た資金は、設備投資や借入の返済に回る。船橋工場のこめ油設備に約53億円、鹿島工場にバイオマスボイラーで約40億円と、設備投資は続く。
買われる側の可能性も無視できない。kabufuのモデルでは、10年以内に買収される確率は約25%だ。ただし筆者は、この確率を価値に足していない。
株主優待は、100株以上で1千円相当、1,000株以上で5千円相当の自社商品。会社は優待の費用を開示していないため、株主 約2万人(自社商品の原価と送料)から年3億円と推定した。優待は株主が受け取る現物の還元なので、10年の還元に年額×10年を、中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5の係数で足した(費用は販管費として利益から引き済みで、自己資本の流れには入れない)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
昭和産業は、小麦粉・食用油・糖・飼料の4つを穀物の流れでつなぐ、数少ない総合メーカーだ。1つの原料から複数の製品と副産物を取り、無駄なく売り切る。この仕組みで、需要が細る中でも工場の稼働を保てる。
付加価値品への移行は進んでいる。ボーソー油脂のこめ油は、健康志向で需要が伸びる成長分野だ。船橋工場には約53億円を投じ、精製能力を引き上げる。コーン油は糖質事業と連携し、副産物を高く売る。中期経営計画は、付加価値品の売上を5年で2割増やすと掲げる。
資本政策も変わった。政策保有株や遊休不動産を売り、資産を軽くする。配当はDOE 3%を下限とし、株主への配分は厚くなる。ROE 8%、営業利益140億円という2029年度の目標が通れば、会社の姿は今より明らかに強い。
再編の主役になる可能性もある。製粉は大手4社の寡占で、工場の統合余地が残る。資本業務提携を結んだ辻製油をはじめ、提携の幅も広がる。10年のうちに利益率が4%台へ乗れば、営業利益は200億円に近づき、時価総額は今より大きく伸びる。
慎重な見方
昭和産業の利益率は、過去10年で一度も4%を超えていない。製粉・製油・糖質・飼料のどれも、値段を自分で決める力が弱く、原料相場と顧客の値下げ要求に挟まれる。営業利益率が3%台という構造は、会社が変わらない限り変わらない。
国内の数量は細る。小麦粉の消費は30年で1割以上減り、人口はこれからも減る。物価の分を値上げで取り返せても、数量の減りは利益を削る。飼料は鳥インフルエンザで数量が落ち、利益は4億円という薄さだ。
中期経営計画のROE 8%は、資本コストに届くかどうかの水準にすぎない。高付加価値品の売上が5年で2割増えても、全体の利益率が1%動くかどうかだ。政策保有株の売却は一度きりで、続く稼ぐ力にはならない。
首位の日清製粉グループ本社は海外の製粉を持ち、規模で2倍以上ある。昭和産業は国内に偏り、為替や需要の逆風を受けやすい。輸入小麦の売渡制度が変われば、前提が崩れる。
10年で見ても、利益は増えず、ためた自己資本が薄く使われるだけだ。今の値段は、この現実に対して高い。
どちらに重みを置いたか
強い論拠は慎重な見方にある。利益率の底の浅さと数量の細りは、10年で確実に効く構造だ。中期経営計画の目標は方向として妥当だが、達成しても資本コストに並ぶ程度で、価値を大きく押し上げない。
一方、財務の安定と売れる資産の厚み、再編の可能性は、悲観の深さを限る。そこで確率は中立に最も厚く置いたうえで、悲観側へやや寄せた。
総合では、今の値段をやや下回る本質価値になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,844 円1,574 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,708 円555 億円)。 今の値に割り戻すと 3,406 円1,107 億円、今との差 −13.8%、 期待の年率 +5.2%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 7,897 円2,566 億円 | 2,093 円680 億円 | +152.9% | +9.7% | 699 円227 億円 |
| やや楽観 | 20% | 6,450 円2,096 億円 | 1,939 円630 億円 | +112.4% | +7.8% | 1,678 円545 億円 |
| 中立 | 38% | 5,335 円1,734 億円 | 1,816 円590 億円 | +81.0% | +6.1% | 2,717 円883 億円 |
| やや悲観 | 25% | 3,146 円1,022 億円 | 1,546 円503 億円 | +18.8% | +1.7% | 1,173 円381 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,872 円608 億円 | 969 円315 億円 | −28.1% | −3.2% | 284 円92 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,844 円1,574 億円 | 1,708 円555 億円 | +65.9% | +5.2% | 6,551 円2,129 億円 |
今の株価時価総額 3,950 円1,284 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 付加価値品の比率が上がり、利益率が4%台に乗る10年 利益 186 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 7,897 円2,566 億円
付加価値品の比率が計画を上回って高まり、10年後の営業利益は200億円を超える。こめ油は船橋工場の増強とシェア拡大で、製油全体の利益率を押し上げる。コーン油と糖質の連携で副産物の価値が上がり、結晶ぶどう糖などの機能性糖質も伸びる。製粉は天ぷら粉・プレミックスの付加価値化と工場統合で、利益率が4%台後半になる。ニュートリションやオレオケミカルの新領域も立ち上がり、全社の営業利益率は4.5%近くに達する。政策保有株と遊休不動産の売却で資産が軽くなり、配当はDOE下限を上回って、自己株買いも加わる。ROEは8%台まで上がる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年3億円×10年×1.0=30億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 製粉:数量 72.0(製粉量(万トン))× 価格 21(1トンあたり卸単価(万円))→ 売上 1,476 億円・営業利益 68 億円。付加価値品の定着
- 製油:数量 27.0(製油量(万トン))× 価格 49(1トンあたり卸単価(万円))→ 売上 1,316 億円・営業利益 47 億円。こめ油とコーン油が牽引
- 糖質:数量 74.2(糖化品の出荷量(万トン))× 価格 13(1トンあたり単価(万円))→ 売上 987 億円・営業利益 55 億円。機能性糖質が伸びる
- 飼料:数量 80.0(飼料の販売量(万トン))× 価格 9.55(1トンあたり単価(万円))→ 売上 764 億円・営業利益 12 億円。利益率はわずかに改善
- その他食品・倉庫・不動産:数量 6.4(取扱量(万トン))× 価格 38(1トンあたり単価(万円))→ 売上 244 億円・営業利益 34 億円。新領域と輸出が立ち上がる
倍率:事業の純利益 183 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)147 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 2,590 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 12.84 倍・時価総額 2,388 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:こめ油・機能性糖質・新領域がそろって計画を上回る必要があり、連続成功の確度は高くない。実現すれば営業利益が200億円を超える。
やや楽観 20% 中期経営計画の方向どおりに進む10年 利益 153 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 6,450 円2,096 億円
中期経営計画の2029年度目標(営業利益140億円)が達成され、その後も付加価値品が増えて、営業利益は180億円まで伸びる。製粉は価格転嫁が順調で、利益率は4%強に乗る。こめ油と機能性糖質が製油・糖質の利益率を押し上げ、コーン油は糖質との連携で副産物の価値が上がる。飼料は鶏卵相場に支えられ、利益率は1%強に上がる。ニュートリションなど新領域は、少しずつ売上を作り始める。政策保有株は計画どおり売却され、配当は性向40%以上を保つ。全社の営業利益率は4%に届き、ROEは7%台になる。会社の努力が実り、中期計画の延長線で10年を終える姿だ。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年3億円×10年×1.0=30億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 製粉:数量 69.8(製粉量(万トン))× 価格 20(1トンあたり卸単価(万円))→ 売上 1,411 億円・営業利益 59 億円。中計の方向で推移
- 製油:数量 26.5(製油量(万トン))× 価格 48(1トンあたり卸単価(万円))→ 売上 1,262 億円・営業利益 40 億円。高付加価値品の比率が上がる
- 糖質:数量 72.1(糖化品の出荷量(万トン))× 価格 13(1トンあたり単価(万円))→ 売上 932 億円・営業利益 47 億円。結晶ぶどう糖など機能性糖質
- 飼料:数量 77.6(飼料の販売量(万トン))× 価格 9.55(1トンあたり単価(万円))→ 売上 741 億円・営業利益 10 億円。鶏卵相場に支えられる
- その他食品・倉庫・不動産:数量 5.2(取扱量(万トン))× 価格 37(1トンあたり単価(万円))→ 売上 194 億円・営業利益 24 億円。新領域が少し育つ
倍率:事業の純利益 150 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.8% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)147 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 2,025 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期経営計画の2029年度目標(営業利益140億円)が達成され、その後も付加価値品の比率が上がる姿。会社の努力の延長で、実現性はある。
中立 38% 需要減を値上げで相殺しながら、薄利のまま成熟する10年 利益 124 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 5,335 円1,734 億円
10年後の営業利益は150億円前後になる。国内の小麦粉と食用油の数量は人口減でやや細るが、物価並みの値上げで売上は伸びる。利益率は付加価値品の拡販と工場の効率化で少し良くなり、製粉3.7%、製油2.8%、糖質4.5%と、いまより小幅に上がる。飼料は1%前後の薄利のままで、全社の利益を支えるのは糖質と、倉庫・不動産などの安定した収入だ。政策保有株は売却が進むが、配当と設備投資に使われ、自己資本は積み上がる。全社の営業利益率は3.4%、ROEは6%台で、成熟した原料加工業として落ち着く。派手さはないが、崩れもしない10年である。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年3億円×10年×1.0=30億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 製粉:数量 67.0(製粉量(万トン))× 価格 20(1トンあたり卸単価(万円))→ 売上 1,333 億円・営業利益 49 億円。需要減を価格と効率で相殺
- 製油:数量 25.7(製油量(万トン))× 価格 47(1トンあたり卸単価(万円))→ 売上 1,196 億円・営業利益 33 億円。こめ油の拡販が下支え
- 糖質:数量 70.0(糖化品の出荷量(万トン))× 価格 13(1トンあたり単価(万円))→ 売上 891 億円・営業利益 40 億円。横ばいの数量と物価並みの値上げ
- 飼料:数量 76.0(飼料の販売量(万トン))× 価格 9.55(1トンあたり単価(万円))→ 売上 726 億円・営業利益 7 億円。薄利が続く
- その他食品・倉庫・不動産:数量 4.4(取扱量(万トン))× 価格 37(1トンあたり単価(万円))→ 売上 161 億円・営業利益 17 億円。倉庫・不動産が下支え
倍率:事業の純利益 121 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.6% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)147 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 1,663 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業種ノートの見通し(数量は人口減で微減、価格は物価並み)に沿った中心の筋書き。付加価値化が利益率を少し押し上げる。
やや悲観 25% 転嫁の遅れと数量減で利益率が3%を割る10年 利益 87 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 3,146 円1,022 億円
原料高の局面で、売渡価格の改定や卸価格への転嫁が遅れる年が重なる。国内の小麦粉・食用油の数量は人口減で1割強縮み、汎用油の競争で製油の利益率は2%台前半に下がる。糖質も数量が減り、値上げが鈍る。飼料は鳥インフルエンザと鶏卵相場の変動で、ほぼ収支とんとんになる。新領域は育たず、付加価値品の売上は計画に届かない。政策保有株の売却益も一巡し、営業利益は100億円強にとどまる。全社の営業利益率は3%を割り、ROEは4%台。資本コストにほど遠い水準で10年を終える。財務は崩れないが、稼ぐ力が細り続ける姿だ。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年3億円×10年×0.8=22.5億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 製粉:数量 63.4(製粉量(万トン))× 価格 19(1トンあたり卸単価(万円))→ 売上 1,224 億円・営業利益 37 億円。転嫁が遅れ需要も細る
- 製油:数量 24.3(製油量(万トン))× 価格 45(1トンあたり卸単価(万円))→ 売上 1,100 億円・営業利益 24 億円。汎用油の競争で利益率が低下
- 糖質:数量 66.5(糖化品の出荷量(万トン))× 価格 12(1トンあたり単価(万円))→ 売上 821 億円・営業利益 30 億円。数量が減り値上げも鈍る
- 飼料:数量 72.0(飼料の販売量(万トン))× 価格 9.26(1トンあたり単価(万円))→ 売上 667 億円・営業利益 4 億円。ほぼ収支とんとん
- その他食品・倉庫・不動産:数量 4.0(取扱量(万トン))× 価格 35(1トンあたり単価(万円))→ 売上 142 億円・営業利益 11 億円。新領域は育たない
倍率:ROE4.5%がk8%を大きく下回り、ためた利益は額面未満の価値。稼ぐ力(純利益÷k)の約70%(9.0倍)。転嫁の遅れと数量減が重なる筋書き。
確率:転嫁の遅れ・数量減・再編の遅れが重なる姿。製粉・製油・飼料のいずれも利益率が薄く、市況が悪い年が続くと十分にありうるため、中立に近い厚みを置いた。
悲観 10% 薄利の穀物加工から抜けられず、競争に押される10年 利益 41 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,872 円608 億円
輸入小麦粉や輸入パスタなど加工品の輸入が増え、売渡制度の見直しも重なって、製粉の利益率は2%を割る。製油は汎用油とこめ油の値下げ競争に巻き込まれ、利益が出にくくなる。糖質は顧客の内製化と輸入品に押され、数量が1割強減る。飼料は赤字の年が出る。設備の更新投資は続くため、利益より先に資産の質が落ち、工場の統合や減損も出る。全社の営業利益は50億円台、営業利益率は1%台半ばに下がる。配当は下限を守れず、自己株買いも止まる。ROEは2%台に落ち、優良な食品メーカーとは言えなくなる。業界再編でも主導権を握れず、規模の小さい側として条件の悪い統合を迫られる場面も出る。10年を経ても、薄利という構造だけが残る。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年3億円×10年×0.5=15億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 製粉:数量 59.0(製粉量(万トン))× 価格 19(1トンあたり卸単価(万円))→ 売上 1,097 億円・営業利益 20 億円。輸入品と価格競争に押される
- 製油:数量 23.0(製油量(万トン))× 価格 42(1トンあたり卸単価(万円))→ 売上 975 億円・営業利益 13 億円。汎用油と米油の値下げ競争
- 糖質:数量 61.6(糖化品の出荷量(万トン))× 価格 12(1トンあたり単価(万円))→ 売上 714 億円・営業利益 16 億円。顧客の内製・輸入品に押される
- 飼料:数量 65.6(飼料の販売量(万トン))× 価格 8.69(1トンあたり単価(万円))→ 売上 570 億円・営業利益 0 億円。赤字に沈む年が出る
- その他食品・倉庫・不動産:数量 3.6(取扱量(万トン))× 価格 33(1トンあたり単価(万円))→ 売上 120 億円・営業利益 6 億円。利益は不動産に偏る
倍率:ROE2.2%でk8%を大きく下回り、ためた利益は額面未満の価値。稼ぐ力(純利益÷k=12.9倍)の約70%(9.0倍)で、やや悲観と同じ割合に揃えた。構造的な負けで、利益は不動産などに偏る。
確率:輸入品との競争や売渡制度の見直しなど、構造の変化が複数重なる姿。起こる頻度は低いが、利益率の薄い会社は崩れると戻りにくい。悲観は他社と同じ10%に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
製粉
小麦粉・プレミックス・天ぷら粉・パスタなど。国内製粉は日清製粉グループ本社、ニップンに次ぐ3位。
| 数量製粉量(万トン) | 価格1トンあたり卸単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 72.0 | 15 | 1,070 | 42 |
| 10 年後 中立 | 67.0 | 20 | 1,333 | 49 |
取り方:製粉の売上は2025年3月期で1,063億円。国内の小麦粉の消費は2023年度で444万トン、うち日清製粉が約39%、ニップンが約2割、昭和産業は16%前後と推定し、72万トンを置いた。単価は売上÷数量で名目。営業利益は事業別の開示がないため、食品の利益から売上比と利益率の見当で配分した推定(3.9%)。10年の価格は物価並みの1.34倍が中立。数量は人口減で中立0.93倍(天ぷら粉・プレミックスの付加価値化で国内全体の0.9倍よりやや良い)。
製油
大豆油・菜種油などの汎用油と、ボーソー油脂のこめ油、コーン油。国内3位。
| 数量製油量(万トン) | 価格1トンあたり卸単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 27.0 | 35 | 940 | 26 |
| 10 年後 中立 | 25.7 | 47 | 1,196 | 33 |
取り方:製油の売上は938億円。国内の食用油市場は230万トン前後、昭和産業のシェアを12%弱と推定し27万トンを置いた(開示なし)。単価は売上÷数量。営業利益は配分した推定(2.8%)。価格は原料相場に連動するが、10年では物価並みの1.34倍を中立とする。数量は国内の微減で中立0.95倍。こめ油の増産(船橋工場約53億円)が下支え。
糖質
コーンスターチ、水あめ、結晶ぶどう糖、異性化糖。飲料・食品メーカーに納める。
| 数量糖化品の出荷量(万トン) | 価格1トンあたり単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 70.0 | 9.50 | 665 | 31 |
| 10 年後 中立 | 70.0 | 13 | 891 | 40 |
取り方:糖質の売上は658億円。コーンスターチ・水あめ・異性化糖・結晶ぶどう糖の出荷量を70万トン前後と推定した(開示なし、売上と価格帯からの逆算)。営業利益は配分した推定(4.7%)。価格は物価並み1.34倍が中立。数量は飲料・食品の国内需要と高付加価値の機能性糖質が相殺して中立1.0倍。
飼料
配合飼料と鶏卵・肥料などの流通。農協系や商社系と競う薄利の事業。
| 数量飼料の販売量(万トン) | 価格1トンあたり単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 80.0 | 7.13 | 570 | 6 |
| 10 年後 中立 | 76.0 | 9.55 | 726 | 7 |
取り方:飼料の売上は561億円、営業利益は約4億円(2025年3月期)。配合飼料と鶏卵・肥料の流通を合わせた販売量を80万トン前後と推定した。単価は売上÷数量。国内の畜産は戸数が減るため数量は中立0.95倍。価格は飼料原料に連動し、10年で1.34倍を置いた。営業利益率は1%前後でほぼ収支とんとん。
その他食品・倉庫・不動産
パスタ・冷凍食品など上の3つに入らない食品と、倉庫・不動産賃貸。
| 数量取扱量(万トン) | 価格1トンあたり単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.0 | 27 | 109 | 14 |
| 10 年後 中立 | 4.4 | 37 | 161 | 17 |
取り方:パスタ・冷凍食品など上の3つ以外の食品と、倉庫業・不動産賃貸の合計。売上は109億円と推定し(全社売上から他の4つを引いた差)、取扱量4万トン×単価で置いた。営業利益は14億円の推定(倉庫・不動産の利益率が高いため13%)。10年は新領域(ニュートリション・オレオケミカル)の立ち上がりで中立1.1倍、価格は物価並み1.34倍。
リスクと懸念
国内の数量が構造的に細る
国内の小麦粉の消費は1994年の500万トンから2023年度に444万トンまで減った。人口減が続くため、製粉・製油・糖質・飼料の数量はいずれも微減が続く。値上げで売上は保てるが、工場の稼働率が落ちると固定費が重くなる。
薄い利益率と市況への感応度
営業利益率は3%台で、1%動くだけで利益が3割変わる。2023年3月期には1%台前半まで落ちた。製油は大豆・菜種の相場、飼料は鶏卵相場と飼料原料に連動し、転嫁が遅れる年は利益が急に落ちる。
政府の小麦売渡制度の見直し
製粉は、国が買い付けた輸入小麦の売渡価格に沿って値段が決まる。この制度は急な原料高を和らげる一方、制度が変われば原料調達の前提も変わる。輸入小麦粉や加工品の輸入が増えれば、国内製粉の価格競争が強まる。
飼料事業の収益の脆さ
飼料は売上561億円に対し、営業利益が4億円にとどまる。鳥インフルエンザで販売数量が減り、鶏卵相場が崩れれば利益は消える。農協系や商社系との競争も激しく、再編の動きにも左右される。
付加価値化の実行リスク
中期経営計画は、付加価値品の売上を2029年度に2024年度比で2割増やすと掲げる。こめ油や機能性糖質は同業も狙う分野で、設備投資が先行する。船橋工場のこめ油設備に約53億円を投じるが、需要が伸びなければ減価償却だけが残る。
原料相場と為替
小麦・大豆・菜種・トウモロコシは国際相場とドル円に連動する。本分析はドル円を150円に固定して置くが、実際の円安・円高は原料コストと価格転嫁の速さに影響する。
資本効率が上がらないリスク
2029年度のROE 8%目標は、資本コストに届くかどうかの水準だ。政策保有株の売却益は一度きりで、続く稼ぐ力にはならない。売却資金を設備に回せば、自己資本だけが増え、ROEは上がりにくい。
今後の分かれ目
- ボーソー油脂のこめ油が計画を上回って拡販できたら
- 製油の利益率が上がる前提に改め、やや楽観・楽観側の確率を厚くする。
- 輸入小麦の政府売渡制度が大きく見直されたら
- 製粉の利益率の前提を下げ、やや悲観・悲観側に確率を移す。
- 飼料事業で再編や統合が進み、利益率が1%を超えたら
- 飼料の利益率の前提を上げ、中立の営業利益を押し上げる。
- 政策保有株の売却が計画を超えて進み、自己株買いが加わったら
- 株主への配分が増えるので、ROEの前提を上げて楽観側に確率を移す。
- 大手との合併・TOBの話が出たら
- 買われる側としての価値を別に評価する。今回は価値に足していない。
- 2029年度の営業利益140億円の目標が下方修正されたら
- 付加価値化が遅れているとみて、やや悲観側の確率を厚くする。
見ておくもの
- 製粉・製油・糖質・飼料のカテゴリー別の営業利益と利益率
- ボーソー油脂のこめ油の販売量と船橋工場の増強の進み方
- 政府の輸入小麦売渡価格の改定と業務用小麦粉への転嫁
- 飼料事業の営業利益と鶏卵相場・鳥インフルエンザの影響
- 政策保有株・遊休不動産の売却額と、その使い道(配当・自社株買い・借入返済)
- 中期経営計画26-29の進み方(営業利益140億円・ROE 8%)
倍率と資本コストの決め方
セグメントごとに数量(万トン、実質)と単価(名目、物価並みの1.34倍)を積み、その時点の利益に、正当化PERの9割前後を掛けて倍率を決め、最後に今の値段と比べた。ROEが資本コストに届かないので、倍率は1÷kを上限にとどめ、今の株価や同業の倍率からは置いていない。金利の上昇(10年で純利益に年7億円ほどの重し)は純利益の比率0.85に入れた。リースは主に倉庫・事務所で額が小さく、新リース会計基準の影響は10年後も今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。持ち合い株の含み益(評価差額金 196 億円・税後)は戻り方 0.5 で余り資産に足した。悲観の倍率はやや悲観と同じ稼ぐ力の 7 割にそろえた。賃貸等不動産の時価は検索で確認できず未反映。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.25% を足した。事業は傾いておらず、上乗せは置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 8.00%。