結論
セイヒョーは、新潟でアイスクリームと笹だんごを作る、創業100年を超える会社だ。新潟の名物の「もも太郎」で知られるが、売上の柱は森永乳業などの大手から受ける製造の請負だ。筆者の結論は、今の値段は高いというものだ。売上は伸びるが、利益率が2%台にとどまり、株主に残る利益が細いからだ。
2025年10月、森永北陸乳業から富山工場を買い取った。新潟の工場は手いっぱいで、自前で建てるより安く速く増産できる。会社は2027年2月期の売上を25%増の60億円と見込む。
ただ、営業利益率は過去12年で2.1%が最高だった。請負の値段は発注する大手が決め、原料の乳製品や砂糖、電気の値上がりは遅れてしか移せない。売上の4分の1は森永乳業1社に頼る。
工場の取得で短期の借入は8億円増え、自己資本比率は3割を切った。金利が上がれば利払いが重くなる。今の時価総額は、10年後の利益を高く見積もった値段で、安全域は見当たらない。
優待と増収の話題は魅力的に見えるが、それは事業の価値とは別の話だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、真面目な会社だが、値段が事業の実力を大きく上回っている。
大手が工場を譲るほど信頼される請負の会社は、簡単には消えない。地元で愛される「もも太郎」もある。富山工場を建てずに買った判断は、資本を大切に使う姿勢の表れで、筆者は評価する。
しかし、株主のものになる利益は小さい。売上が60億円に増えても、営業利益は1億円台だ。そこから工場の更新と借入の利払いを引けば、手元に残る額は年1億円前後にとどまる。値段を決めるのは大手で、請負の利益率が大きく上がる理由は見えない。
今の時価総額は、その利益の20倍を超える。株主優待を含めても、資本コストを上回る利回りは望めない。人気の優待と増収の話題が値段を押し上げているように見える。安全域が無い値段で、この事業を持つ理由は見当たらない。
何で稼ぐ会社か
1916年に新潟で創業した、氷とアイスの会社だ。社名は製氷に由来する。今は新潟市の本社工場と、2025年に取得した富山工場でアイスクリームを作る。単一のセグメントだが、中身は2つに分かれる。
売上の4分の3はアイスクリームだ。自社の商品には、新潟の子どもなら誰もが知る桃味の氷菓「もも太郎」がある。だが量の多くは請負で、新潟工場の製品の約半分は他社の名前で売られる。最大の客は森永乳業で、売上の24.5%を占める。イオンのプライベートブランドのトップバリュや、問屋の日本アクセスも大口だ。上位3社で売上の半分に届く。
残りの4分の1は、笹だんごなどの和菓子と、食品の卸だ。笹だんごは新潟の土産物として根強い人気がある。
アイスの稼ぎは夏に集まる。暑い夏は売れ、冷夏は売れない。冬は和菓子が支えるが、通年では春から夏の受注で1年の利益が決まる。工場は大量の電気で冷やすので、電気代の上がり下がりが原価に響く。
売上は2026年2月期に48億円で、今期は60億円を見込む。従業員は200人ほどで、繁忙期にはパートや派遣で人を足す。工場の能力が売上の天井を決める事業だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、大手が任せる品質と、柔らかい生産の仕組みにある。だが、その堀は浅い。
大手の乳業は、自社の工場で作り切れない品や、少量の多品種を外に出す。請け負う会社は、衛生の基準を守り、急な注文に応え、味をそろえる力が要る。セイヒョーは森永乳業と長く取引し、富山工場を譲り受けるほどの信頼を得た。これは数字に表れない資産だ。
しかし値段を決めるのは発注する側だ。原料や電気が上がっても、値上げは交渉のうえ遅れて通る。営業利益率は過去12年で2.1%が最高で、赤字の年も多かった。プライベートブランドの請負も、値段で比べられる仕事だ。
自社の商品の「もも太郎」は地元で強いが、全国の棚を取る力は無い。財務は弱い。純負債は利払い前の利益の数倍あり、富山工場の取得でさらに借入が増えた。
経営は誠実で、資本の使い方も慎重だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のアイスクリームの市場は、金額で約6,000億円と、食品の中では珍しく伸びてきた。
伸びの理由は、夏の暑さと、大人が通年でアイスを食べる習慣だ。猛暑の年は数量が大きく伸びる。値上げも通りやすく、ここ数年は各社が価格を上げても数量が落ちなかった。人口は減るが、1人あたりの量が支え、数量はほぼ横ばいが続くとみる。
作る側では、大手の乳業が工場の再編を進める。森永乳業や明治、ロッテなどは主力の品に工場を絞り、少量の品や繁忙期の分を外に出す。受託の会社にとっては、仕事が増える流れだ。富山工場が売りに出たのも、その流れの一つだ。
一方で、費用の重さは増している。乳製品、砂糖、カカオの値段は世界の市況で上がり、電気代も高い。人手も足りない。受託の会社は、こうした値上がりを大手との交渉で移すしかない。
筆者の見立てでは、セイヒョーの受託の量は富山工場の稼働で10年で3割強増え、その後は市場並みの横ばいになる。値段は物価にやや届かない。
競争相手は、同じ受託の中堅の会社と、大手の乳業の自社の工場だ。受託の値段は、この比べ合いで決まる。
資本政策と M&A
還元は配当と株主優待だ。配当は年0.25億円ほどで据え置かれ、利益が細った2026年2月期の配当性向は2倍を超えた。株主優待は自社製品の詰め合わせで、原価で年0.04億円ほどとみる。10年で0.4億円を還元に足した。
2024年2月には、大株主のジャルコが持っていた株を自社株買いで引き取った。これで特定の大株主の影響は薄れた。2026年7月には自己株式を少し処分している。
投資は増産に向かう。新工場の用地を2023年に新潟で買ったが、建設費の高騰で計画を凍結し、富山の既存の工場を買う形に切り替えた。この判断は、少ないお金で能力を増やす点で筋がよい。ただ借入は増え、当面は返済と工場の手直しが優先される。中計はROE7.5%を掲げるが、実績はまだ遠い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
富山工場の取得は、会社を一段上に引き上げる。新潟の工場は能力が手いっぱいで、断っていた注文もあった。建てれば何十億円もかかる工場を、既存の設備ごと安く手に入れた。会社は今期の売上を25%増の60億円と見込み、上期の営業利益は前年の2割増を計画する。
受託の流れは追い風だ。大手の乳業は工場を主力の品に絞り、少量の品や繁忙期の分を外に出す。森永乳業が工場を譲ったこと自体、セイヒョーへの信頼の証拠だ。受注は増え、工場の稼働が上がれば利益率も上がる。
アイスの市場は伸びている。猛暑の夏が続き、大人が通年で食べる習慣も広がった。値上げも通りやすい。
「もも太郎」は新潟で圧倒的な知名度を持つ。富山や北陸に広げれば、自社の商品の利益も厚くなる。中計はROE7.5%を掲げ、2025年2月期には8.9%を出した実績もある。規模が増えた今、それを上回る道は開けている。
優待を目当てに株を持つ個人も多く、株主の顔ぶれは安定している。
慎重な見方
利益率が低すぎる。営業利益率は過去12年で2.1%が最高で、赤字の年も多い。売上が60億円になっても、営業利益は1億円台だ。請負の値段は発注する大手が決め、原料と電気の値上がりは遅れてしか移せない。
客の集中も危うい。売上の4分の1は森永乳業で、上位3社で半分に届く。森永が自社の工場に戻したり、別の会社に移したりすれば、富山工場はたちまち空く。工場を買ったことで、固定費は増えた。
借入も増えた。富山工場の取得で短期の借入は8億円増え、自己資本比率は3割を切った。金利が上がれば、薄い利益を利払いが食う。今期の第1四半期は、工場の設備の手直しで赤字だった。
天候にも振られる。冷夏の年はアイスが売れず、工場の稼働が落ちる。暑すぎても、電気代と人手で費用が膨らむ。
今の時価総額は、会社の予想する利益の30倍近い。成長の話と株主優待で買われた値段で、事業の稼ぐ力に比べて高すぎる。
工場を買ったことは、成長の始まりではなく固定費の重さの始まりかもしれない。
どちらに重みを置いたか
事業の評価では両者が拮抗するが、値段の評価では慎重な見方に分がある。富山工場で売上が伸びるのは確かだが、利益率の天井は過去12年で動いていない。確率は中立を厚くし、悲観側を楽観側よりやや厚く置いた。工場が埋まり利益率が3%を超える年が続けば、楽観に寄せる。逆に、森永乳業向けの売上が減り始めたら、悲観を厚くする。
10 年後の 5 つの筋書き(2037/02 期)
確率で加重した株価時価総額 755 円11 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 193 円3 億円)。 今の値に割り戻すと 436 円6 億円、今との差 −77.3%、 期待の年率 −6.8%(資本コスト 9.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 1,771 円25 億円 | 320 円5 億円 | +9.1% | +0.9% | 209 円3 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,152 円16 億円 | 249 円4 億円 | −26.9% | −3.1% | 280 円4 億円 |
| 中立 | 38% | 847 円12 億円 | 213 円3 億円 | −44.7% | −5.8% | 403 円6 億円 |
| やや悲観 | 20% | 107 円2 億円 | 128 円2 億円 | −87.8% | −18.9% | 47 円1 億円 |
| 悲観 | 12% | 36 円1 億円 | 36 円1 億円 | −96.3% | −28.1% | 9 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 755 円11 億円 | 193 円3 億円 | −50.6% | −6.8% | 948 円13 億円 |
今の株価時価総額 1,917 円27 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.3% を下回るほど割高。
楽観 10% 大手の受託を集め、利益率4%に乗る 利益 2 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 1,771 円25 億円
大手の乳業の工場の再編が進み、受託の注文がセイヒョーに集まる。富山工場はすぐに埋まり、新潟の用地にも小さなラインを足す。アイスの数量は10年で6割増える。値上げは物価並みに通り、工場の稼働が上がって利益率は4%に乗る。
「もも太郎」は北陸と首都圏に広がり、自社の商品の比率も上がる。和菓子も土産と通販で伸びる。
営業利益は3億円台、純利益は2億円強になる。借入は返済が進み、利払いの増加を吸収する。配当と優待は増え、10年の還元は4.5億円だ。ROEは資本コストをわずかに上回る。
地方の小さなアイスの会社が、北陸の受託の拠点に育つ姿だ。
- アイスクリーム(自社品・受託):数量 94.4(アイスの出荷個数(百万個))× 価格 81(1個あたりの平均の売上(円))→ 売上 76 億円・営業利益 3 億円。個数1.6倍・単価1.34倍・利益率4%
- 和菓子・食品の卸:数量 20.0(和菓子と卸の出荷個数(百万個))× 価格 83(1個あたりの平均の売上(円))→ 売上 17 億円・営業利益 0 億円。個数横ばい・単価1.34倍・利益率2%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.7% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 25 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:富山工場が埋まり、さらに別の大手からも受託を集め、利益率を2005年の水準まで戻す必要がある。過去12年の天井の倍に近い利益率で、確度は低い。
やや楽観 20% 富山工場が埋まり、利益率3%を保つ 利益 2 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 1,152 円16 億円
富山工場の稼働が上がり、アイスの数量は10年で45%増える。値上げは物価にやや届かないが、工場の固定費が薄まり、利益率は3%になる。
和菓子は土産の需要が細り、数量は1割減る。卸の利益で小さな黒字を保つ。
営業利益は2億円強、純利益は1.5億円になる。借入はゆっくり減り、利払いの増加はほどほどにとどまる。配当と優待は少しずつ増え、10年の還元は3.5億円。ROEは6%台で、資本コストにはまだ届かない。工場を建てずに買った判断が、ここで実を結ぶ。
森永乳業との取引も続き、客の集中の危うさは少しずつ和らぐ。
- アイスクリーム(自社品・受託):数量 85.6(アイスの出荷個数(百万個))× 価格 79(1個あたりの平均の売上(円))→ 売上 68 億円・営業利益 2 億円。個数1.45倍・単価1.32倍・利益率3%
- 和菓子・食品の卸:数量 18.0(和菓子と卸の出荷個数(百万個))× 価格 82(1個あたりの平均の売上(円))→ 売上 15 億円・営業利益 0 億円。個数0.9倍・単価1.32倍・利益率1.5%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 16 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社は今期の増収を見込み、2025年2月期にはROE8.9%を出した。富山工場の稼働が上がり、中計の利益率2.7%を少し上回る姿で、中立より一段上。
中立 38% 売上は増えるが、利益率は過去の天井どまり 利益 1 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 847 円12 億円
富山工場が動き、アイスの数量は10年で35%増える。その後は市場並みの横ばいだ。請負の値段は大手が決め、単価は物価にやや届かない1.30倍にとどまる。利益率は2.4%で、過去の天井に近い。
和菓子は土産の需要が細り、数量は15%減る。利益はほぼ出ない。
営業利益は1.6億円、純利益は1.1億円になる。富山工場の償却は買った値段で軽いが、古い設備の手直しには建築費の上がった値段で投資が要る。借入は少しずつ返すが、金利が上がり利払いは増える。配当と優待で10年の還元は3億円。ROEは5%台にとどまる。堅実だが、株主にとって報いの小さい姿だ。
- アイスクリーム(自社品・受託):数量 79.7(アイスの出荷個数(百万個))× 価格 78(1個あたりの平均の売上(円))→ 売上 62 億円・営業利益 2 億円。個数1.35倍・単価1.30倍・利益率2.4%
- 和菓子・食品の卸:数量 17.0(和菓子と卸の出荷個数(百万個))× 価格 81(1個あたりの平均の売上(円))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。個数0.85倍・単価1.30倍・利益率1%
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.2% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 12 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:富山工場の増産は会社の予想に表れ、利益率の天井2.1%は過去12年で動いていない。増収の効果は確かめつつ、利益率は天井に張りつく、実績に沿った姿を中心に置いた。
やや悲観 20% 受託の値段が上がらず、工場が重荷になる 利益 0 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 107 円2 億円
大手の乳業は値上げを渋り、受託の値段は物価に届かない。富山工場は思ったほど埋まらず、アイスの数量は1割しか増えない。原料と電気の値上がりが利益を削り、利益率は1%に落ちる。
和菓子は土産の需要が細り、数量は3割減って赤字になる。
営業利益は0.4億円しか残らず、借入の利払いでほぼ消える。配当は減り、優待も縮む。10年の還元は1.8億円にとどまる。稼ぐ力で測る価値はほとんど無く、残るのは新潟の使っていない工場の用地などの土地だ。
工場を買った判断は、結果として固定費の重さだけを残す。借入の返済も遅れ、資本の余裕は無くなる。
- アイスクリーム(自社品・受託):数量 64.9(アイスの出荷個数(百万個))× 価格 73(1個あたりの平均の売上(円))→ 売上 48 億円・営業利益 0 億円。個数1.1倍・単価1.22倍・利益率1%
- 和菓子・食品の卸:数量 14.0(和菓子と卸の出荷個数(百万個))× 価格 75(1個あたりの平均の売上(円))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。個数0.7倍・単価1.2倍・赤字
倍率:ROEはほぼ0%で、稼ぐ力(0.05億円÷k)は約0.6億円。新潟の使っていない工場の用地など土地の税後に戻り方0.5を掛けた床(約1.5億円)で、今の自己資本15.0億円の0.10倍に置いた。EV(時価総額+純負債)÷営業利益は20倍を超えるが、利益が利払いでほぼ消える筋書きなので、株主の取り分は土地の床で測った。
確率:原料と電気の値上がりを移し切れない年は過去に何度もあり、今期の第1四半期も赤字だった。工場を買って固定費が増えた分、受託の値段で負ければ利益はすぐに消える。
悲観 12% 最大の客を失い、赤字が続く 利益 −2 億円 · PBR 0.0 倍 · 株価時価総額 36 円1 億円
森永乳業が工場の再編を終え、受託の多くを自社に戻す。富山工場は空き、アイスの数量は4分の3に減る。固定費は残り、アイスの部門は赤字に沈む。
和菓子も土産の需要の細りで数量が半分近くになる。全社の営業損益は赤字が続く。
借入の返済に追われ、配当と優待は止まる。10年の還元は0.5億円にとどまる。赤字で自己資本は大きく減り、資本を補う増資を迫られる道もある。株主に残るのは、土地のわずかな値打ちだ。
100年続いた会社は、地元の自社の商品だけで小さく残る。もも太郎の名は残っても、株主に報いる力は失われる。
- アイスクリーム(自社品・受託):数量 44.3(アイスの出荷個数(百万個))× 価格 69(1個あたりの平均の売上(円))→ 売上 31 億円・営業利益 −1 億円。個数0.75倍・単価1.15倍・赤字
- 和菓子・食品の卸:数量 11.0(和菓子と卸の出荷個数(百万個))× 価格 72(1個あたりの平均の売上(円))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。個数0.55倍・単価1.15倍・赤字
倍率:赤字で稼ぐ力の床は無い。土地の税後は借入の返済でほとんど消え、戻り方0.5を掛けた床(約0.5億円)で、今の自己資本15.0億円の0.033倍に置いた。
確率:売上の4分の1を森永乳業1社に頼る構造的な危うさ。大手が工場の再編を終えて受託を自社に戻せば、富山工場はたちまち空く。地元の自社品が残るので、会社が消える筋書きではない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
アイスクリーム(自社品・受託)
もも太郎などの自社のアイスと、森永乳業やトップバリュ向けの受託のアイス・氷菓を新潟と富山の工場で作る。
| 数量アイスの出荷個数(百万個) | 価格1個あたりの平均の売上(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 59.0 | 60 | 36 | 0 |
| 10 年後 中立 | 79.7 | 78 | 62 | 2 |
取り方:2026年2月期の売上47.96億円のうちアイスクリーム部門が約74%(会社の説明)で約35.5億円。個数の開示は無く、受託の卸値をならした1個約60(円)と置いて約5,900万個とした推定。単一セグメントで利益は未開示のため、全社の営業利益0.35億円の大半をアイスとみて0.45億円と推定。
和菓子・食品の卸
笹だんごなどの和菓子の製造と、食品の卸。
| 数量和菓子と卸の出荷個数(百万個) | 価格1個あたりの平均の売上(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 20.0 | 62 | 12 | 0 |
| 10 年後 中立 | 17.0 | 81 | 14 | 0 |
取り方:全社売上からアイスの推定を引いた約12.4億円。個数の開示は無く、1個約62(円)と置いて約2,000万個とした推定。利益は未開示で、小さな赤字と推定。
リスクと懸念
森永乳業への依存
売上の24.5%は森永乳業で、上位3社で半分に届く。大手が工場の再編を終えて受託を自社に戻せば、富山工場はたちまち空き、固定費だけが残る。
受託の値段と原料・電気
請負の値段は発注する大手が決める。乳製品、砂糖、カカオ、電気の値上がりは遅れてしか移せず、営業利益率は過去12年で2.1%を超えたことがない。
借入と金利
富山工場の取得で短期の借入は8億円増え、自己資本比率は3割を切った。金利が上がれば、薄い利益を利払いが食う。
天候
アイスは夏の暑さで売れ行きが大きく変わる。冷夏の年は工場の稼働が落ち、暑すぎる年は電気代と人手で費用が膨らむ。
工場の取得の成否
富山工場は中古の設備で、手直しの投資と除却の損が出ている。思ったほど受託が集まらなければ、増えた固定費と借入が重荷になる。
今後の分かれ目
- 富山工場が通年で動き、営業利益率が2期続けて3%を超えたら
- やや楽観の確率を厚くし、アイスの利益率を上げる。
- 森永乳業以外の大手からの受託が数字で開示されたら
- 客の集中の危うさを下げ、楽観側を厚くする。
- 森永乳業向けの売上が2期続けて1割超減ったら
- 悲観の確率を厚くし、アイスの数量を下げる。
- 純負債が営業利益の5倍を切るまで減ったら
- 借金の上乗せを外し、資本コストを下げる。
- 原料と電気の値上がりで営業赤字の年が出たら
- やや悲観の確率を厚くし、受託の値段の見通しを下げる。
見ておくもの
- 富山工場の稼働と受託の量
- 森永乳業向けの売上
- 営業利益率
- 短期借入と純負債
- 原料と電気の値段
- 夏の気温
倍率と資本コストの決め方
今の株価やPERは見ずに、アイスと和菓子の個数と単価から10年後の利益を積み、借入の金利の上昇を純利益に入れた。楽観を除きROEは資本コスト9.25%を下回るので、PERは1÷k(約11.8倍)を上限に利益の質で72〜88%に置いた。悲観側は稼ぐ力がほぼ無いので、土地の税後に戻り方0.5を掛けた床で置いた。株主優待は原価で年0.04億円とみて還元に足した。今のPER30倍近い値段は根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→10.81 倍・やや楽観 PER 9.5→10.81 倍・中立 PER 8.5→10.81 倍)。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。