結論
AFC-HDアムスライフサイエンスは、健康食品の受託製造を柱に、漢方薬、横須賀の百貨店さいか屋、外食、不動産、観光まで抱える静岡の複合企業だ。筆者の結論は「やや割安」である。稼ぎのほぼすべてを生む受託製造が堅く、そこに付ける値段だけで今の時価総額にほぼ届くからだ。
受託製造は、他社のブランドのサプリや化粧品を代わりに作る仕事だ。紅麹の事件のあと、品質管理の厳しい工場に注文が集まりやすくなった。会社はハラル認証の商品で海外も開いている。
弱みは二つある。一つは百貨店や観光など、稼がない事業が多いこと。もう一つは 127 億円の純負債で、金利が上がるほど利払いが重くなる。10 年の中立では受託製造が 3 割近く伸び、純利益は 20 億円強になるとみる。ただ多角化の赤字が続けば、その差は縮む。
今の値段には、受託製造以外の事業にほとんど値段がついていない。そこに安全域の源がある。借金を返す方へ経営が向くかどうかを、筆者はいちばん注意して見ている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「よい事業と、そうでない事業の詰め合わせ」だ。受託製造は、品質の信用で顧客をつなぎとめる地味だが長持ちする事業で、オーナーとして持つ価値がある。
問題は、その稼ぎが本業と関係の薄い事業に流れていることだ。百貨店、観光、外食は、どれも資本コストを稼げていない。稼ぐ事業の利益で稼がない事業を養う形は、長い目で株主の価値を削る。借金を使って広げてきた点も、安全域を薄くする。
それでも今の値段は、受託製造の稼ぎにほぼ見合う水準にとどまる。筆者は、ほかの事業に値段がついていない分だけ安全域があるとみる。経営が赤字の事業を整理し、借金を減らす方へ向けば、その安全域はさらに広がる。
もう一つの見どころは借金だ。受託製造の稼ぎで借金を返す方へ舵を切るなら、株主の取り分は自然に増える。逆に、借金で事業を買い続けるなら、筆者は安全域を厚めに見たい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱はヘルスケア事業だ。売上 189 億円で営業利益 25 億円と、全社の利益のほぼすべてを生む。中身は健康食品・サプリメント・化粧品の受託製造(OEM)が中心で、自社ブランドの通販と店舗、海外向けの販売も持つ。顧客は通販会社やドラッグストアのブランドで、錠剤、カプセル、粉末、ドリンクまで一通り作れるのが売りだ。
二つ目は医薬品で、子会社の本草製薬が漢方薬、後発薬、市販薬を作る。売上 25 億円で利益は 2 億円ほどだ。三つ目は百貨店で、2021 年に子会社にしたさいか屋の横須賀店と藤沢店、時計や宝飾の卸を持つ。売上 46 億円に対して利益はほぼゼロだ。2026 年には横須賀店にラウンドワン、藤沢店にマツモトキヨシを入れ、売場を貸す形に変えつつある。
残りは静岡の飲食店と仕出し、中古住宅の売買と土地活用、観光・ホテル・貸切バスの事業で、合わせて売上 67 億円、損益は赤字だ。創業家の浅山家が株の 2 割強を持ち、地元の事業を次々に取り込んできた。純負債の多くは、こうした買収と不動産の取得から生まれている。
受託製造の工場は静岡に集まり、2026 年 8 月には包装の自動機を入れて人手を減らした。
優良さと弱いところ
受託製造には中くらいの堀がある。顧客は処方と品質の保証を工場に預けるので、問題が起きない限り委託先を替えない。紅麹の事件のあとは、行政の監視と顧客の監査が厳しくなり、設備と品質の仕組みを持つ工場が有利になった。会社は受託製造の上場専業として、その信用を武器にできる。
ただし値決めの力は強くない。ブランドを持つのは顧客で、受託側は見積もりで比べられる。競合には東洋新薬、三生医薬、アリメント工業などの大手非上場の専業がいる。2026 年 8 月期は売上が伸びたのに受託製造の利益が減り、原料と人件費の上昇を値段に移しきれていない。
資本の使い方は、筆者がもっとも気にする点だ。稼いだ利益と借金で、百貨店、観光、外食といった本業と関係の薄い事業を買ってきた。その多くが赤字かほぼゼロの利益で、全社の自己資本利益率を 9% 台に抑えている。
経営が赤字の事業を整理する方へ向けば、全社の稼ぐ力は受託製造の水準に近づく。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
健康食品の受託製造は、名目で年 2% ほど伸びる成熟市場だ。矢野経済研究所によると市場は 2024 年度で 1,761 億円。伸びの多くは海外向けと値上げによるもので、国内の消費の量は 2023 年度から減っている。数量で見れば横ばいの市場と言ってよい。
2024 年の紅麹の事件は業界の形を変えた。機能性表示食品の届け出と製造の管理が厳しくなり、小さな工場には負担が重い。品質の仕組みに投資できる大手に注文が集まる流れは、10 年続くとみる。高齢化で健康への関心は強いが、国内の人口が減るので、量の伸びは海外とシェアの取り合いから生まれる。
医薬品の漢方と後発薬は、薬価の引き下げで値段が物価に届かない。百貨店は郊外の地方店で、売上は人口とともに細る。テナントに貸す形に変えれば利益は安定するが、売上の規模は縮む。観光と外食は景気と人手に左右され、人件費の上昇がそのまま利益を削る。
金利の上昇も効く。純負債 127 億円の多くは数年で借り換わり、10 年で利払いは年 3 億円ほど増える。
受託製造の世界では、大手の非上場の専業が規模で先行する。上場の強みは信用と資金調達で、品質の投資を続けられるかが分かれ目になる。
資本政策と M&A
還元は配当だけで、2026 年 8 月期の予想で年 5 億円強、配当性向は 3 割台半ばだ。自社株買いはほとんどない。2025 年 8 月期末にあった 30 万株の自己株は、その後に処分している。
資本の多くは買収と不動産に向かってきた。2021 年のさいか屋の取り込みで純負債が増え、その後も観光やバスの事業を足した。創業家の浅山家が 2 割強を持ち、地元の事業を広げる意思が強い。少数株主から見ると、この拡大が稼ぎに結び付いているかは疑わしい。
買われる側になる可能性は低くない。受託製造は同業や商社、医薬の会社が欲しがる事業だ。ただ創業家が多角化に愛着を持つ限り、切り売りや身売りは起きにくい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
受託製造はこれから強くなる。紅麹の事件で、品質の管理が甘い工場は顧客を失った。上場している受託の専業として、監査に耐える設備と記録を持つこの会社には、通販やドラッグストアのブランドから注文が移ってくる。ハラル認証の商品で東南アジアや中東も開いており、海外の伸びは国内の減りを上回る。
多角化も悪いことばかりではない。百貨店はラウンドワンやマツモトキヨシのような集客力のあるテナントに貸す形に変わり、赤字の心配が減る。観光とバスは立ち上げの赤字で、軌道に乗れば黒字に転じる。
10 年で受託製造の量が 3 割増え、利益率が 13% 台を保てば、純利益は 30 億円を超える。自己資本利益率は 10% を超え、借金も利益で減っていく。
今の値段は、受託製造以外の事業にほとんど値段をつけていない。百貨店の建物や不動産の事業は、整理すれば借金の返済に回せる。売る決断が一つ出るだけで、見え方は大きく変わる。
慎重な見方
受託製造の値決めの力は弱い。2026 年 8 月期は売上が伸びたのに、受託製造の利益は 1 割以上減った。原料と人件費の上昇を顧客に移しきれていない証拠だ。競合の東洋新薬や三生医薬は規模が大きく、海外の受託大手も日本に来る。国内の健康食品の量はすでに減り始めている。
多角化は重荷だ。百貨店は横須賀と藤沢の郊外店で、人口が減るほど売上は細る。観光、外食、不動産はどれもほぼ赤字で、本業の稼ぎを食っている。経営は地元の事業を買い続け、整理する気配がない。
そして借金がある。純負債 127 億円は数年で高い金利に借り換わり、利払いは年 3 億円ほど増える。受託製造が一度つまずけば、借金の重さが一気に表に出る。
創業家が 2 割強を持ち、地元の事業を広げる意思が強い。少数株主が資本の使い方を変えさせる手立ては乏しく、受託製造の稼ぎが今後も多角化に回り続ける恐れがある。
強気の見方が言う品質の流れは、大手の専業にも同じように追い風になる。この会社だけが得をする理由は弱い。
どちらに重みを置いたか
受託製造が品質の流れに乗って伸びるという主張には、市場の変化の裏付けがある。一方で利益率の低下と多角化の赤字という指摘も事実だ。確率は中立を厚くし、受託の強さを見てやや楽観をやや悲観より少し厚くした。借金の重さは悲観の深さで表した。受託製造の強さそのものは疑いにくいが、その稼ぎが株主に届くかは経営の資本の使い方しだいで、そこに不確かさが残る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/08 期)
確率で加重した株価時価総額 2,074 円302 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 423 円62 億円)。 今の値に割り戻すと 1,223 円178 億円、今との差 +42.7%、 期待の年率 +11.3%(資本コスト 8.3%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 3,341 円486 億円 | 554 円81 億円 | +354.5% | +16.3% | 467 円68 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,879 円419 億円 | 501 円73 億円 | +294.4% | +14.7% | 744 円108 億円 |
| 中立 | 36% | 2,276 円331 億円 | 441 円64 億円 | +217.0% | +12.2% | 978 円142 億円 |
| やや悲観 | 20% | 1,008 円147 億円 | 327 円48 億円 | +55.7% | +4.5% | 267 円39 億円 |
| 悲観 | 10% | 187 円27 億円 | 220 円32 億円 | −52.6% | −7.2% | 41 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,074 円302 億円 | 423 円62 億円 | +191.3% | +11.3% | 2,497 円364 億円 |
今の株価時価総額 857 円125 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 12% 品質の信用で受託が3割増、海外も伸びる 利益 32 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 3,341 円486 億円
紅麹の事件のあと、ブランドを持つ通販会社とドラッグストアは、品質の管理に投資できる受託先へ注文を寄せる。上場の受託専業として、この会社のシェアはじわじわ上がる。ハラル認証の商品は東南アジアと中東で定着し、受託と販売の実質量は 10 年で 3 割増える。
値上げは物価より少し強く通り、自動包装機などの省力化で利益率は 13% 台半ばに戻る。百貨店はテナント化で黒字が定着し、観光とバスも小さな黒字に転じる。
純利益は 30 億円を超え、借金は利益で少しずつ減る。自己資本利益率は 10% 台に乗る。
買収はするが、受託製造の周りの原料や包装に絞る。
- ヘルスケア(健康食品・化粧品の受託製造と自社販売):数量 245(受託・販売の実質量(億円・今の値段)=健康食品OEM市場(実質)×シェアの推定)× 価格 1.36(値段の指数(2025/08期=1.00、物価と値上げで動く))→ 売上 333 億円・営業利益 45 億円。数量1.30倍・価格1.36倍
- 医薬品(本草製薬):数量 105(出荷量の指数(2025/08期=100、推定))× 価格 0.32(指数1あたりの売上(億円)。薬価の改定で物価より上がりにくい)→ 売上 34 億円・営業利益 3 億円。数量1.05倍・価格1.30倍
- 百貨店(さいか屋ほか):数量 85.0(売場の売上量の指数(2025/08期=100、推定))× 価格 0.63(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 53 億円・営業利益 2 億円。数量0.85倍・価格1.36倍
- 外食・不動産・観光ほか:数量 110(事業量の指数(2025/08期=100、推定))× 価格 0.89(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 98 億円・営業利益 2 億円。数量1.10倍・価格1.34倍
倍率:事業の純利益 32 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.1% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍。全体の PER 14.26 倍、時価総額 452 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:紅麹後の品質重視で注文が集まり、ハラル商品の海外販売も伸びる筋。流れは確かだが、利益率の回復と多角化の黒字化の両方が要るので低めに置く。
やや楽観 22% 受託が着実に伸び、多角化は収支均衡 利益 27 億円 · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 2,879 円419 億円
受託と販売の実質量は 10 年で 2 割強増える。国内の量は細るが、品質の流れでシェアを取り、海外の販売が上乗せになる。値上げは物価並みに通り、利益率は 13% を保つ。
本草製薬の漢方は薬価の改定で値段が伸びにくいが、市販薬の受託で量を保つ。百貨店はテナント化で小さな黒字、観光と外食は収支均衡に近づく。
純利益は 27 億円台になり、配当は性向 3 割台半ばを続ける。借金は横ばいで、利払いの増加は利益の伸びで吸収する。
大きな買収は控え、利益の一部で借金を返す。受託製造の工場は省力化の投資を続け、人手の不足を機械で補う。
- ヘルスケア(健康食品・化粧品の受託製造と自社販売):数量 230(受託・販売の実質量(億円・今の値段)=健康食品OEM市場(実質)×シェアの推定)× 価格 1.34(値段の指数(2025/08期=1.00、物価と値上げで動く))→ 売上 308 億円・営業利益 40 億円。数量1.22倍・価格1.34倍
- 医薬品(本草製薬):数量 100(出荷量の指数(2025/08期=100、推定))× 価格 0.32(指数1あたりの売上(億円)。薬価の改定で物価より上がりにくい)→ 売上 32 億円・営業利益 3 億円。数量1.00倍・価格1.30倍
- 百貨店(さいか屋ほか):数量 85.0(売場の売上量の指数(2025/08期=100、推定))× 価格 0.61(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 52 億円・営業利益 1 億円。数量0.85倍・価格1.32倍
- 外食・不動産・観光ほか:数量 100(事業量の指数(2025/08期=100、推定))× 価格 0.89(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 89 億円・営業利益 1 億円。数量1.00倍・価格1.34倍
倍率:事業の純利益 27 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.2% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.9 倍。全体の PER 13.87 倍、時価総額 379 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受託製造が海外と品質の流れで伸び、他の事業はほぼ収支均衡になる筋。過去10年の売上の伸びと利益率から無理がなく、中立に次いで厚く置く。
中立 36% 受託は伸びるが、多角化の重さは残る 利益 22 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 2,276 円331 億円
健康食品の市場は量で横ばいだ。その中で品質の管理に強い受託先へ注文が寄り、受託と販売の実質量は 10 年で 15% 増える。値上げは物価にやや届かず、利益率は 12% に落ち着く。原料と人件費の上昇を顧客に移すのに時間がかかるためだ。
本草製薬は薬価の改定で値段の伸びが弱い。百貨店はテナント化で売上は細るが、わずかな黒字を保つ。外食、不動産、観光は合わせて収支ゼロにとどまる。
純負債は横ばいで、利払いは高い金利に借り換わって年 2 億円ほど重くなる。純利益は 22 億円前後で、自己資本利益率は 8% 台と資本コストにほぼ並ぶ。
- ヘルスケア(健康食品・化粧品の受託製造と自社販売):数量 217(受託・販売の実質量(億円・今の値段)=健康食品OEM市場(実質)×シェアの推定)× 価格 1.30(値段の指数(2025/08期=1.00、物価と値上げで動く))→ 売上 282 億円・営業利益 34 億円。数量1.15倍・価格1.30倍
- 医薬品(本草製薬):数量 100(出荷量の指数(2025/08期=100、推定))× 価格 0.31(指数1あたりの売上(億円)。薬価の改定で物価より上がりにくい)→ 売上 31 億円・営業利益 3 億円。数量1.00倍・価格1.25倍
- 百貨店(さいか屋ほか):数量 85.0(売場の売上量の指数(2025/08期=100、推定))× 価格 0.60(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 51 億円・営業利益 1 億円。数量0.85倍・価格1.30倍
- 外食・不動産・観光ほか:数量 100(事業量の指数(2025/08期=100、推定))× 価格 0.89(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 89 億円・営業利益 0 億円。数量1.00倍・価格1.34倍
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.8% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍。全体の PER 13.08 倍、時価総額 292 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受託製造は品質の流れで少しシェアを取るが、利益率は今より少し低く、多角化は利益を生まない筋。2026年8月期の受託の利益率低下を踏まえ、最も厚く置く。
やや悲観 20% 値下げ競争で受託の利益率が10%に 利益 13 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,008 円147 億円
国内の健康食品の量は減り続け、大手の受託専業との見積もり競争が激しくなる。シェアは保つが、受託と販売の実質量の伸びは 10 年で 3 割に届かず、値上げは物価の 9 割ほどしか通らない。利益率は 10% に下がる。
百貨店は人口の減少で売上が縮み、利益はゼロになる。観光と外食は人件費の上昇で赤字が続く。借金の利払いは高い金利で増え、純利益は 13 億円前後と今より少ない。
配当は性向を保つが額は増えない。自己資本利益率は 5% 台に下がり、資本コストを大きく下回る。
創業家は地元の事業を手放さず、借金も減らない。受託製造の稼ぎが多角化の赤字を埋める形が続く。
- ヘルスケア(健康食品・化粧品の受託製造と自社販売):数量 195(受託・販売の実質量(億円・今の値段)=健康食品OEM市場(実質)×シェアの推定)× 価格 1.25(値段の指数(2025/08期=1.00、物価と値上げで動く))→ 売上 244 億円・営業利益 24 億円。数量1.03倍・価格1.25倍
- 医薬品(本草製薬):数量 95.0(出荷量の指数(2025/08期=100、推定))× 価格 0.30(指数1あたりの売上(億円)。薬価の改定で物価より上がりにくい)→ 売上 28 億円・営業利益 2 億円。数量0.95倍・価格1.20倍
- 百貨店(さいか屋ほか):数量 75.0(売場の売上量の指数(2025/08期=100、推定))× 価格 0.59(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 44 億円・営業利益 0 億円。数量0.75倍・価格1.28倍
- 外食・不動産・観光ほか:数量 95.0(事業量の指数(2025/08期=100、推定))× 価格 0.87(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 82 億円・営業利益 −2 億円。数量0.95倍・価格1.30倍
倍率:ROE 5.3%で資本コストを下回る。稼ぐ力(純利益÷k)で測り、借金の重さと利益の先細りを見て1÷kの7割台の9倍。
確率:受託製造の値決めの弱さが続き、国内の量の減少が海外の伸びを上回る筋。2026年8月期に利益が減った事実があり、楽観側の筋と同じくらいの重みを置く。
悲観 10% 品質事故と多角化の赤字が重なる 利益 4 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 187 円27 億円
健康食品の業界で再び健康被害の問題が起き、機能性表示食品の需要そのものが冷え込む。大口の顧客が内製や海外の受託先に移り、受託と販売の実質量は今より 1 割減る。値段は物価の半分ほどしか上がらず、利益率は 7% まで落ちる。
百貨店と観光、外食は赤字が広がり、整理の費用もかかる。純負債は減らず、利払いは借り換えで重くなる。純利益は 4 億円ほどに縮む。
会社は赤字事業の売却か、受託製造ごと同業に売るかを迫られる。どちらにしても、少数株主の手元に残る価値は今より小さい。
借金の返済のために、百貨店の建物や不動産を安値で手放す場面もありうる。
- ヘルスケア(健康食品・化粧品の受託製造と自社販売):数量 170(受託・販売の実質量(億円・今の値段)=健康食品OEM市場(実質)×シェアの推定)× 価格 1.18(値段の指数(2025/08期=1.00、物価と値上げで動く))→ 売上 201 億円・営業利益 14 億円。数量0.90倍・価格1.18倍
- 医薬品(本草製薬):数量 85.0(出荷量の指数(2025/08期=100、推定))× 価格 0.28(指数1あたりの売上(億円)。薬価の改定で物価より上がりにくい)→ 売上 24 億円・営業利益 1 億円。数量0.85倍・価格1.15倍
- 百貨店(さいか屋ほか):数量 65.0(売場の売上量の指数(2025/08期=100、推定))× 価格 0.58(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 37 億円・営業利益 −1 億円。数量0.65倍・価格1.25倍
- 外食・不動産・観光ほか:数量 90.0(事業量の指数(2025/08期=100、推定))× 価格 0.85(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 77 億円・営業利益 −2 億円。数量0.90倍・価格1.28倍
倍率:ROE 1.8%。稼ぐ力(純利益÷k≒47億円)が上限で、純負債が残り赤字事業の整理費もかかるので1÷kの6割弱の7倍。純現金はなく、帳簿の自己資本は床にしない。百貨店の建物などの売れる資産は時価の開示がなく、純負債を返すと床として数えられない。
確率:受託製造で品質の問題や大口顧客の離脱が起き、多角化の赤字と借金の重さが表に出る構造的な負け筋。受託は一度信用を失うと戻りにくいので1割を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ヘルスケア(健康食品・化粧品の受託製造と自社販売)
健康食品・サプリ・化粧品を他社ブランドで作り、自社通販・店舗・海外でも売る。
| 数量受託・販売の実質量(億円・今の値段)=健康食品OEM市場(実質)×シェアの推定 | 価格値段の指数(2025/08期=1.00、物価と値上げで動く) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 189 | 1.00 | 189 | 25 |
| 10 年後 中立 | 217 | 1.30 | 282 | 34 |
取り方:セグメントの売上189.03億円を、健康食品OEM市場1,761億円(矢野経済研究所、2024年度)に対する実質の取り分とみて数量に置いた(シェア相当で約1割、自社販売を含む推定)。値段は指数1.00から物価と値上げで動かす。
医薬品(本草製薬)
漢方薬・後発薬・市販薬の製造販売と市販薬の受託。
| 数量出荷量の指数(2025/08期=100、推定) | 価格指数1あたりの売上(億円)。薬価の改定で物価より上がりにくい | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 100 | 0.25 | 25 | 2 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.31 | 31 | 3 |
取り方:売上24.71億円を100とした出荷量の指数(推定)。品目別の数量の開示がないため。
百貨店(さいか屋ほか)
横須賀・藤沢の百貨店の自営売場とテナント賃貸、時計・宝飾の卸。
| 数量売場の売上量の指数(2025/08期=100、推定) | 価格指数1あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 100 | 0.46 | 46 | 1 |
| 10 年後 中立 | 85.0 | 0.60 | 51 | 1 |
取り方:売上46.14億円を100とした指数(推定)。売場面積と客数の開示が乏しいため。テナント化で自営の売上は縮む。
外食・不動産・観光ほか
静岡の飲食・仕出し、中古住宅の売買と土地活用、観光・ホテル・貸切バス。
| 数量事業量の指数(2025/08期=100、推定) | 価格指数1あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 100 | 0.67 | 67 | −3 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.89 | 89 | 0 |
取り方:外食23.64・不動産26.62・その他16.38億円の合計66.64億円を100とした指数(推定)。営業損益は−0.74+0.16−2.11億円。
リスクと懸念
健康食品の品質事故
紅麹の事件のような健康被害が受託先の工場で起きれば、顧客の離脱と回収の費用で受託製造の利益が一気に失われる。業界全体の需要が冷える恐れもある。
原価の上昇を移せない
2026年8月期は売上が伸びたのに受託製造の利益が減った。原料・人件費・物流費の上昇を見積もりに乗せられなければ、利益率は10%を割る。
多角化の赤字
百貨店・観光・外食・不動産は合わせて赤字かほぼゼロの利益だ。創業家が地元の事業を広げる限り、受託製造の稼ぎが吸い取られる。
借金と金利
純負債127億円は時価総額にほぼ並ぶ。借り換えで金利が上がると利払いは年3億円ほど増え、利益の1割強が削られる。
地方百貨店の縮小
さいか屋は横須賀・藤沢の郊外店で、人口の減少と通販への流出で売上が細る。テナント化が進まなければ、建物の維持費が重荷になる。
今後の分かれ目
- 受託製造の営業利益率が13%台に戻る
- 値上げが通り始めた合図で、やや楽観の筋に近づく。
- 観光・外食・不動産のいずれかを売却・撤退する
- 赤字が消えて借金も減り、資本の使い方が変わったと見てよい。価値は中立より上に寄る。
- 業界で再び健康被害の問題が起きる
- 需要が冷え込み、受託の量と値段の両方が下がる。悲観の筋に寄る。
- 純負債が100億円を下回る
- 金利上昇の痛みが和らぎ、悲観の深さが浅くなる。
- 同業や医薬の会社から買収の提案がある
- 受託製造の価値が表に出る。ただ創業家の意思しだいで実現は不透明。
見ておくもの
- ヘルスケア事業の営業利益率
- ハラル商品など海外の売上
- 百貨店のテナント化の進み具合
- 純負債の増減
- 観光・外食の損益
倍率と資本コストの決め方
数量は健康食品OEM市場(実質で横ばい)とシェアの推定、他の事業は売上からの指数で置き、価格は物価から薬価・値下げ要請を差し引いた。倍率は各筋書きのROEと資本コスト8.25%から式で決め、ROEがk以下の筋書きは1÷kを上限にした。今のPERや過去のPBRは使っていない。株数は台帳が古く、短信の14,559,605株に直した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→14.26 倍・やや楽観 PER 11.5→13.87 倍・中立 PER 10.5→13.08 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality+0.75%で8.25%。