結論
ブルボンは、新潟・柏崎に本社を置く中堅の菓子メーカーだ。ルマンド、アルフォート、ブランチュールなど、世代をまたいで売れる定番を持つ。
筆者の結論は「今の値段は割高」だ。一番の理由は、利益の薄さにある。直近の営業利益率は 6% 台で過去最高だが、それでも売上 100 に対して残る営業利益は 6 ほどだ。今期は原材料高で 4% 台へ戻る見通しになっている。
事業の質は悪くない。定番商品は値上げを受け入れられ、借金はなく、手元には純現金が 180 億円ある。ただ、国内の食べる量は人口とともに細る。ベトナム工場と那須工場を作って伸ばそうとしているが、規模のある競合に比べると、攻めの足場はまだ小さい。
もう一つ気になるのは資本の使い方だ。還元性向は 2 割弱で、儲けた分は自己資本に積み上がる。そのため 10 年たつと自己資本が膨らみ、稼ぐ力が同じでも ROE は 6% 前後にとどまる。資本コストを下回る会社の価値は、帳簿の純資産より低い。
強気に見ても、10 年後の時価総額は今の 1.7 倍ほどだ。資本コストで割り引くと今の値段に届かない。弱気の見方では、原料高と価格競争で利益が薄れ、今の値段の 2 割台まで下がりうる。ブランドは本物だが、ブランドの強さと株の値打ちは別の話だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、「いい商品を持つが、いい商売とまでは言えない会社」と見る。10 年先もルマンドは売れているだろう。その確かさは評価する。
問題は、稼いだお金の行き先だ。オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、営業利益の 6 割ほどにとどまる。そこから工場への投資が続く。残った分は還元されず、純資産に積み上がる。積み上がる自己資本の稼ぐ力が資本コストを下回れば、株主にとっては価値を薄める使い道になる。
本質価値は、事業の利益に妥当な倍率を掛け、余った現金を足して測る。ここでは中立の利益に PER 11.5 倍を掛けた。今の値段は、利益が 6% 台の最高水準で続くことを前提にしている。
安全域は薄い。悲観の筋書きでも純現金 180 億円は残るので大きく壊れはしないが、楽観でも今の値段を割り引いた価値に届かない。払う値段が高すぎる、というのが筆者の見立てだ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、スーパー・コンビニ・ドラッグストアに卸す袋菓子と箱菓子だ。主力はビスケット、チョコレート、ウエハース、米菓、ケーキで、飲料は小さい。
売上のほとんどは国内だ。1 個あたりの単価は低く、数を売って利益を残す薄利の商売になる。工場の稼働率と、原料の買い方が、利益率を決める。
海外は育成の段階だ。2025 年にベトナムで子会社を作り、国内では同じ年に那須工場(栃木)を動かし始めた。生産の拠点を増やして、供給力と輸出の足場を作る狙いだ。
ここでは菓子事業を 1 つにまとめ、「販売数量(億個換算)×1 個あたりの単価」で見る。個数は開示されていないので、売上を店頭に並ぶ菓子の平均的な価格帯で割った推定値だ。市場の大きさは、国内の菓子の小売りが約 4 兆円という業界の前提を使う。ブルボンの出荷額はその 2〜3% に当たる計算になる。
顧客は小売りの本部で、商談は年に何度もある。値上げの交渉が通るかどうかは、定番商品の売れ行きと、棚を空けたくない小売りの事情で決まる。大きな取引先に売上が偏る会社ではないが、上位の卸と量販店の力は強い。
優良さと弱いところ
ブランドの質は高いが、利益の質は並みだ。ルマンドやホワイトロリータは、味が変わらないことで売れ続けている。広告に大金を使わず、販管費率は 2 割弱にとどまる。この身軽さは強みだ。
一方で、値決めの力は強くない。2023 年 3 月期は、小麦や油脂の高騰を値上げと規格変更で吸収しきれず、営業利益が前の期の 6 割も減った。その後の値上げの浸透で利益率は 1.7% から 6% 台に戻った。つまり価格を転嫁できるが、遅れる。
規模は、カルビーや森永製菓に劣る。原料を買う力も、棚を押さえる営業力も、大手には及ばない。筆者は、この差が利益率の天井を決めると見る。
経営の面では、財務に慎重だ。自己資本比率は 66% で借金がなく、赤字の期は過去 20 年ない。ただ、安全な財務は株主にとって、働いていないお金でもある。堀と呼べるのは定番商品の記憶だけで、切り替えの費用や規制に守られているわけではない。強い堀とは言いにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の菓子市場は、金額では伸びている。2025 年の小売りは約 4.1 兆円で、前の年より 5% 増えた。ただしその中身は、原料高を反映した値上げだ。食べる量が増えたわけではない。
人口は 10 年で数%減り、食べる量も緩やかに細る。一方で、小分け、高たんぱく、低糖質といった新しい需要はある。中立では、国内の量は 10 年でほぼ横ばいから微減とみる。
競合は厚い。チョコレートは明治・ロッテ・森永製菓、スナックはカルビー、ビスケットは江崎グリコや森永製菓が相手になる。棚の取り合いで、中堅は値引きの圧力を受けやすい。
原料のカカオ、小麦、砂糖、油脂は、世界の相場で動く。ここが利益率の最大の変動要因だ。値上げが毎年続くと、消費者は安い商品や小容量へ移る。値上げが通る間は強いが、通りにくくなった時の落ち込みが大きい業界だ。
海外では、アジアで日本の菓子の需要が伸びている。ただし、現地の菓子メーカーとの競争があり、先に出た大手が棚を押さえている。
価格の面では、3% の物価上昇が続く世界で、定番の菓子は毎年の値上げが普通のことになる。だが人件費と物流費も同じ速さで上がる。値上げが通っても、利益率が自動で守られるわけではない。
資本政策と M&A
資本政策は慎重で、還元は控えめだ。年間配当は 5 年で 7 割以上増えたが、配当性向は 2 割弱にとどまる。自己株式は発行済みの 1 割強を持つ。
大株主には、公益財団法人ブルボン吉田記念財団、吉田興産、ブルボン柏湧共栄会が並び、合わせて 3 割近い。安定株主が厚く、敵対的な買収は起きにくい。同時に、株主の声で資本政策が急に変わる可能性も低い。
2026 年 4 月の中期計画(2029 年 3 月期まで)は、最終年に売上 1,370 億円を掲げる。柱は事業の成長、生産体制の立て直し、人財だ。投資は工場に向かう。営業利益の目標は、筆者が確かめた範囲では見つからなかった。
大型の買収は見当たらない。自前の工場と商品で伸ばす会社で、M&A で価値を壊す心配は小さい。筆者は、手元の純現金を今後の工場投資と増配のどちらに回すかを見ておきたい。
株主優待は、100株以上で約1.2千円相当、200株以上で約3千円相当の自社商品(3年以上は増額)。会社は優待の費用を開示していないため、株主 約7千人(自社商品の原価と送料)から年1億円と推定した。優待は株主が受け取る現物の還元なので、10年の還元に年額×10年を、中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5の係数で足した(費用は販管費として利益から引き済みで、自己資本の流れには入れない)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ブルボンは、ようやく利益の出る形に変わった。営業利益率は 1.7% から 6% 台まで戻り、過去最高の利益を出した。値上げが定着し、消費者は定番商品に別の選択肢を求めなくなっている。
生産の拠点も増える。那須工場とベトナム子会社が動き出し、国内の供給力と輸出の足場が整う。人口が減る国内でも、小分けや高たんぱくといった新しい需要が量を支える。
中期計画は最終年に売上 1,370 億円を掲げる。物価の分だけで 3 年で 9% 増える計算だから、これは達成できる水準だ。アジアでの日本の菓子人気が続けば、数量も 1 割は伸びる。
さらに、手元の純現金 180 億円は、増配や自社株買いの余地を示す。自己株式を持つ会社だから、還元を強める判断も早い。利益率が 6% 台で定着し、還元が強まれば、再評価が進む。
粗利益率も 22.6% から 25.2% へ上がった。生産の効率化と値上げの浸透が効いた証拠で、新工場が軌道に乗れば、固定費の重さも薄まる。10 年の長い目で見れば、利益の水準は今より上に定着しうる。
慎重な見方
今の利益は最高水準で、そこから先は下りだ。会社自身が、今期の経常利益を 25% 減の 60 億円と見ている。原材料高が止まらず、値上げが追いつかなかった 2023 年 3 月期の再来を警戒すべきだ。
規模で劣る中堅は、原料の買い値でも棚の取り合いでも不利だ。値上げが重なれば、消費者は安い商品に移る。その時、定番の売れ行きだけで利益率を守れるかは疑わしい。
資本の使い方にも不安が残る。配当性向は 2 割弱で、儲けは自己資本に積み上がる。10 年たつと自己資本は 1,000 億円を超え、ROE は 6% 前後で資本コストに届かない。ためた利益が額面未満の価値になる状態だ。
安定株主が 3 割近くおり、外から還元を迫る力も働きにくい。工場への投資も続き、稼ぐ力が十分に戻る保証はない。海外は競争が厳しく、成果が出るまでに時間がかかる。
粗利益率は上がったが、在庫回転率は下がった。在庫を積んで売上を伸ばした面があり、売れ残れば値引きの原因になる。最高益は、原料の相場と値上げのタイミングがたまたま噛み合った結果かもしれない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。理由は 3 つだ。今の利益が最高水準にあること、規模で劣り利益率の天井が低いこと、儲けが還元されず ROE が資本コストを下回ることだ。
強気の主張にも真実はある。ブランドは本物で、純現金もある。だから悲観の確率を 11% にとどめ、楽観と合わせて 26% を残した。確率は中立に 38%、慎重な側に 36% を置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,357 円811 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 639 円154 億円)。 今の値に割り戻すと 2,022 円489 億円、今との差 −32.9%、 期待の年率 +2.9%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 5,676 円1,372 億円 | 927 円224 億円 | +119.0% | +8.2% | 396 円96 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,528 円1,094 億円 | 770 円186 億円 | +75.7% | +5.8% | 1,059 円256 億円 |
| 中立 | 38% | 3,866 円934 億円 | 699 円169 億円 | +51.4% | +4.2% | 1,735 円419 億円 |
| やや悲観 | 25% | 2,238 円541 億円 | 499 円121 億円 | −9.2% | −1.0% | 684 円165 億円 |
| 悲観 | 11% | 745 円180 億円 | 352 円85 億円 | −63.6% | −9.6% | 121 円29 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,357 円811 億円 | 639 円154 億円 | +32.5% | +2.9% | 3,995 円966 億円 |
今の株価時価総額 3,015 円729 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 定番が海外でも売れ、利益率 6% 台が定着する 10 年 利益 93 億円 · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 5,676 円1,372 億円
那須工場とベトナム子会社が動き、輸出が育つ。国内は人口減を小分け・高たんぱくの商品で補い、数量は 10 年で 1 割ほど増える。値上げは物価並みか少し上回る形で通り続け、営業利益率は 6.5% で定着する。
中期計画の売上目標を超え、会社は還元も強める。それでも自己資本は積み上がり、ROE は 8% 近くにとどまる。ブランドの強さは本物でも、規模の大きい競合を追い越すところまでは行かない。
10 年後の売上は 1,800 億円台まで増えるが、中身の大半は物価分だ。実質の成長は小さく、筆者はこれを「よく頑張った、しかし株主の取り分はあまり増えない」筋書きと見る。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年1億円×10年×1.0=10億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 菓子事業(ビスケット・チョコ・米菓・ケーキなど):数量 11.2(販売数量(億個換算・推定))× 価格 165(1 個あたり出荷単価(円・名目・推定))→ 売上 1,848 億円・営業利益 120 億円。海外・新工場の稼働で数量増、値上げ定着
倍率:事業の純利益 92 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 7.80% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)75 億円。全体の PER 13.93 倍、時価総額 1,351 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げの定着、新工場の稼働、ベトナム・輸出の拡大、原料の落ち着きが、10 年のうちに全部そろう必要がある。起きれば強いが、連続して成功する確度は高くない。
やや楽観 20% 値上げが通り、海外が少しずつ育つ 10 年 利益 76 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 4,528 円1,094 億円
国内の数量は横ばいから微減にとどまり、海外が小さく足し算になる。値上げは物価並みに通り、営業利益率は 5.7% 前後で落ち着く。2026 年 3 月期の最高益の水準を、10 年かけて守る形だ。
還元は少しずつ厚くなるが、自己資本は積み上がり、ROE は 7% 前後にとどまる。
会社は中期計画の売上目標を達成し、その先も毎年の値上げを通し続ける。ただし利益率が 6% を超える期はなく、定番を守る会社として落ち着く。株主の取り分は、物価に沿ってゆっくり増える。
10 年後の売上は 1,700 億円台で、物価の分を除けばほぼ横ばいだ。堅実だが、割安に見える水準は来ない。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年1億円×10年×1.0=10億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 菓子事業(ビスケット・チョコ・米菓・ケーキなど):数量 10.6(販売数量(億個換算・推定))× 価格 162(1 個あたり出荷単価(円・名目・推定))→ 売上 1,717 億円・営業利益 98 億円。値上げ定着、海外が少し寄与
倍率:事業の純利益 75 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 7.80% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)75 億円。全体の PER 13.09 倍、時価総額 1,052 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の中期計画に近く、原料が落ち着く期が混ざれば届く水準。ただし規模で劣るため、利益率は 6% までは届かない。
中立 38% 人口減を新工場と値上げで相殺し、利益率は 5% 前後で落ち着く 10 年 利益 65 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 3,866 円934 億円
国内の数量は人口減で 1 割弱減るが、新工場とベトナム・輸出の足し算で、全体はわずかに増える。値上げは物価並みに通り、営業利益率は今期の底(4% 台)と最高値の間の 5% で落ち着く。
還元は少し厚くなるが、利益の 3 割ほどにとどまる。自己資本は 10 年で 1,000 億円近くまで積み上がり、ROE は 6% 台前半。資本コストには届かない。定番の強さで食べていける会社のまま、成長の会社にはならない。
新工場は稼働率が上がり、ベトナムは小さな黒字に届く。ただし両方とも、利益を大きく押し上げる規模にはならない。中期計画の売上目標は物価分でほぼ届くが、利益の目標は難しい。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年1億円×10年×1.0=10億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 菓子事業(ビスケット・チョコ・米菓・ケーキなど):数量 10.3(販売数量(億個換算・推定))× 価格 161(1 個あたり出荷単価(円・名目・推定))→ 売上 1,656 億円・営業利益 83 億円。人口減を新工場・値上げで相殺
倍率:事業の純利益 64 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 7.80% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)75 億円。全体の PER 12.82 倍、時価総額 890 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の量は細り、値上げで金額が伸びる業界の中心の見通しに、過去 10 年の営業利益率の中央値(3% 台)と最高値(6% 台)の間を置いた。
やや悲観 25% 原料高と値引き競争で、利益率が 3% 台にとどまる 10 年 利益 40 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 2,238 円541 億円
国内の数量は 1 割近く減る。新工場の固定費を吸収する量が戻らず、稼働率が上がらない。値上げは通るが、消費者は小容量や安い商品に動き、実質の値上げは物価に届かない。営業利益率は 3.4% にとどまる。
還元は利益に合わせて小幅になり、ROE は 4% 前後まで下がる。
定番の売れ行きは残るが、利益を稼ぐ力は削られる。ベトナムの事業は赤字が長引き、新工場の償却が重くなる。それでも借金はなく、事業は続く。価値は、帳簿の純資産より低い水準に落ち着く。
10 年後の売上は 1,400 億円台にとどまり、物価の分を除くと縮んでいる。利益率の低さが、数量の減少をさらに重くする。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年1億円×10年×0.8=7.5億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 菓子事業(ビスケット・チョコ・米菓・ケーキなど):数量 9.3(販売数量(億個換算・推定))× 価格 154(1 個あたり出荷単価(円・名目・推定))→ 売上 1,432 億円・営業利益 49 億円。数量減、転嫁の遅れ
倍率:ROE4.1%が k7.8% 以下なので、PER の上限は 1÷k=13.7 倍。その約 77% を採用。原料高と値引き競争で利益の質が落ちる筋書きとして、上限の 8 割に置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 10.5 倍・時価総額 476 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:2023 年 3 月期のように転嫁が遅れる期が何度か起き、規模の大きい競合の販促に押される筋書き。過去 10 年の営業利益率の中央値に近い。
悲観 11% 規模の大きい競合に棚を奪われ、利益がほぼ消える 10 年 利益 13 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 745 円180 億円
国内の数量は 2 割以上減る。原料高が繰り返され、値上げも通らなくなって、営業利益率は 1% 台に落ちる。新工場とベトナムの投資は回収できず、固定費だけが残る。
配当は大きく減らし、自社株買いは止まる。それでも純現金が 180 億円あるので、倒れはしない。ブランドの名前は残り、事業の価値だけが縮む。
工場の一部は閉鎖か売却に追い込まれ、人員の整理も進む。会社は創業の地、新潟で守る事業へ戻るが、その規模は今より小さい。株主に残るのは、手元の現金を中心とした価値だ。
その現金も、配当の維持と工場の整理に使われ、10 年の終わりには今ほど厚くはない。会社は生き残るが、株主は報われにくい。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年1億円×10年×0.5=5億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 菓子事業(ビスケット・チョコ・米菓・ケーキなど):数量 7.8(販売数量(億個換算・推定))× 価格 140(1 個あたり出荷単価(円・名目・推定))→ 売上 1,092 億円・営業利益 13 億円。数量減・値引きで利益ほぼ消失
倍率:純利益はほぼ消え(稼ぐ力は 13 億円ほど)、利益から値を付けられない。原料高と価格競争で優良さを失う筋書きの床は、純現金 180 億円で、今の自己資本 672 億円に 0.27 倍を掛けた。
確率:会社自身が今期の経常利益 25% 減を見込む通り、原料高に弱い体質は残る。国内の数量減と値引き競争が重なると、薄利の会社は損益が一気に傾く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
菓子事業(ビスケット・チョコ・米菓・ケーキなど)
ルマンド・アルフォート・ブランチュール・ホワイトロリータなどのロングセラーを、スーパー・コンビニ・ドラッグストアへ卸す。国内が大半で、ベトナムなど海外は育成中。
| 数量販売数量(億個換算・推定) | 価格1 個あたり出荷単価(円・名目・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.0 | 120 | 1,203 | 75 |
| 10 年後 中立 | 10.3 | 161 | 1,656 | 83 |
取り方:26/03 期の売上 1,203 億円を、店頭の菓子の平均的な価格帯から置いた出荷単価(1 個 120 と仮置き)で割り、数量を約 10 億個と推定した(個数は開示されていない)。営業利益は決算の 74.96 億円。国内の菓子の小売りは約 4.1 兆円で、ブルボンの出荷額は 2〜3% に当たる。価格は名目で物価並みに上がる(10 年 1.34 倍)。数量は実質で、人口減と新工場・海外の伸びを相殺して中立 10 年 1.03 倍。
リスクと懸念
原材料高の再来
カカオ・小麦・砂糖・油脂は世界相場で動く。2023 年 3 月期は転嫁が追いつかず営業利益が 6 割減った。今期も会社は経常利益 25% 減を見込む。値上げが毎年続くと、安い商品や小容量への移り変わりも進む。
国内の数量の減少
人口は減り、高齢化で 1 人あたりの量も細る。小分けや高たんぱくで補えるかが分かれ目だ。補えなければ、工場の稼働率が下がり、固定費の重さで利益が大きく削れる。
規模で劣る競争
明治・ロッテ・森永製菓・カルビー・江崎グリコと棚を争う。大手は原料の買い値と販促の体力で上回る。中堅が値引きを迫られると、粗利益率 25% 台が守れなくなる。
工場投資の回収
那須工場とベトナムの子会社は、稼働率が上がるまで固定費だけが先に出る。中期計画は生産体制の立て直しを柱とするが、投資の額と回収の見通しは確かめられていない。回収が遅れれば ROE は低いままだ。
還元の弱さと資本の積み上がり
還元性向は 2 割弱。自己株式は 1 割強あるが、買い増しの実績は確認できていない。大株主の財団・吉田興産・共栄会で 3 割近くを占め、外から還元を迫る力は弱い。純現金が眠るリスクがある。
海外展開の成果
ベトナムの子会社は 2025 年に作ったばかりで、現地の菓子メーカーや先に出た日本勢との競争がある。成果が出るまでに年単位の時間がかかり、赤字が続く期も考えられる。
今後の分かれ目
- カカオ・小麦が一段と上がり、値上げが 2 回続けて通らない
- 営業利益率は 3% 台へ落ちる。やや悲観の筋書きに近づく。
- ベトナム・輸出が現地で定着し、海外の売上が国内の減少を上回る
- 数量は 1 割前後伸びる。楽観に近づき、新工場の固定費も吸収される。
- 純現金を使った増配・自社株買いが、利益の 4 割を超える水準で続く
- 自己資本の積み上がりが止まり、ROE は 7% を超える。倍率の上限が上がる。
- 大手がブルボンの主力カテゴリーで販促を強め、値引き競争になる
- 粗利益率が 22% 台へ戻り、営業利益率は 2〜3% に沈む。
- 国内の数量の減少が年 1% を超える
- 工場の稼働率が下がり、固定費の重さで利益が大きく削れる。悲観に近づく。
- 中期計画で営業利益の目標が示され、達成が見える
- 利益率の天井が見えやすくなり、中立の置き方の見直しにつながる。
見ておくもの
- 四半期の粗利益率(原料高の転嫁の進み具合)
- 那須工場・ベトナム子会社の稼働と損益
- 中期計画の営業利益の目標と達成状況
- 配当性向と自己株式の買い増し
- カカオ・小麦・砂糖の国際相場
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から決めた:k 7.8%、ROE は自己資本の積み上がりを入れて 10 年後に 6% 前後(k 以下)なので、PER の上限は 1÷k の 13.7 倍。中立は利益の質(薄利・規模で劣る・転嫁の遅れ)を見て 11.5 倍に置いた。今の PER や過去の PBR は見ていない。余った現金 100 億円は事業に要らない分で、戻り方は還元性向が低く安定株主が厚いので 0.5 を置いた。今の株価は最後に比べた。新リース会計基準(2028 年 3 月期から)は、工場が自社所有中心と見られるので影響は小さく、10 年後の数字は今と同じ形の営業費用ベースでそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.5→13.93 倍・やや楽観 PER 12.5→13.09 倍・中立 PER 11.5→12.82 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本の 7.5% に quality −0.2% を足して 7.3%。事業が傾いているわけではないので上乗せは置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.30% → 7.80%。