結論
石井食品は「イシイのミートボール」で知られる千葉の食品会社だ。チルドと常温のミートボール・ハンバーグが稼ぎの柱で、おせちと地域の旬の素材を使った商品がそれに続く。筆者の結論は割高だ。看板商品の知名度に比べて、利益があまりに薄いからである。
売上は110億円前後で、10年ほとんど伸びていない。営業利益率は良い年でも4%前後で、2026年3月期はほぼゼロに沈んだ。原料肉や包装材が上がるたびに値上げが遅れ、その差を会社がかぶる。量販店の棚はPB(小売の自社ブランド)と冷凍食品の大手に押され、弁当の主役である子どもの数も減っていく。
10年の中立でも、利益は過去の最良期に戻る程度とみる。資本コストを下回る利益率の会社に、今の自己資本の1.5倍を超す値段は付けにくい。常温品やネット販売が大きく育てば話は変わるが、それは確率の低い上振れにとどめた。借金が無く倒れる心配は小さいが、倒れないことと、払う値段に見合う価値があることは別の話だ。知名度の高さが、そのまま稼ぐ力の高さを意味しない典型の会社だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、名の知れた商品と、株主に残るお金の多さは別物だ。石井食品はその差がはっきり出る会社である。
オーナー利益、つまり設備の更新を済ませたあとに株主に残る利益は、年に数億円がやっとだ。営業で生む現金は年7億円前後あるが、工場の修繕と更新に毎年3億円以上が出ていく。物価が上がれば、更新の費用も膨らむ。
堀、つまり他社がまねできない強みは狭い。ブランドは家庭に浸透しているが、値上げを先に通す力にはなっていない。資本コストを下回る利益率が続くなら、利益をためるほど価値は目減りする。
今の値段は、利益が過去の最良期を超えて伸び続ける前提に近い。安全域、つまり払う値段と本質価値のあいだのゆとりは見えない。持ち続けたい事業というより、棚で戦い続ける苦しい事業だ。ブランドが値決め力に変わる日が来れば評価は変わるが、その日を待つ値段としては高い。看板の強さは、値上げが先に通る記録で確かめたい。
何で稼ぐ会社か
売るものは三つに分かれる。いちばん大きいのは調理済みの食肉加工品で、売上の6〜7割を占めるとみられる。ミートボールとハンバーグを、量販店の冷蔵の棚と、常温で長く保つパウチの形で売る。子どもの弁当の定番という位置を半世紀かけて築き、ミートボール総選挙のような販促で棚を守ってきた。
二つ目は正月のおせちだ。年末の数週間に売上が集まり、ネットとカタログ、生協の予約販売が中心になる。三つ目は「地域と旬」と呼ぶ商品群で、産地を決めた野菜や果物を使ったカレーや惣菜を売る。天候で原料の取れ高が揺れ、2026年3月期は不作で数を落とした。
売上の大半は量販店経由で、残りを生協・宅配・自社のネット通販が占める。売り物は無添加調理、つまり食品添加物を使わない製法だ。値段より安心で選ぶ家庭を狙い、その約束を長く守ってきた。工場は千葉県の本拠のほか地方にも持ち、営業で生む現金の多くはその修繕と更新に回る。
稼ぎの形は単純だ。肉と野菜を仕入れて調理し、包んで冷やして運ぶ。原価の大半は原料と包装と人件費で、どれも物価とともに上がる。売値が先に上がるか、原価が先に上がるか。その時間差が、そのまま利益の差になる。
優良さと弱いところ
ブランドはあるが、値決め力は弱い。これが筆者の見立てだ。ミートボールの「イシイ」は知名度で抜けている。それでも営業利益率は10年以上0〜4%の間を行き来し、自己資本の稼ぎが資本コストを超えたのは2年しかない。
理由は棚の力関係にある。量販店は冷凍食品の大手やPBと並べて値段を比べる。原料の豚肉や鶏肉、包装材が上がっても、値上げは交渉を経て遅れて通る。2025年3月の値上げが通ったあとも、修繕費や販促費で利益は消えた。
強みもある。無添加という製法の約束は長く守られ、生協や宅配の顧客は離れにくい。借金はほとんどなく、営業で生む現金は年7億円前後ある。ただ、その現金の多くが工場の更新に消え、株主の手元に残る額は小さい。
経営は近年、常温品と地域の素材という二つの新しい柱を育てている。方向は正しいが、どちらもまだ利益を押し上げる規模にない。新しい柱の広告費が、主力の稼ぎを食う局面が続いている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
前提は、人口とともに細る国内の成熟市場だ。食肉加工品の総量は人口減で年0〜1%ほど縮み、値段は物価並みに上がる。原料肉は輸入の豚肉や鶏肉に頼り、相場と為替で原価が揺れる。日本ハムや伊藤ハム米久ホールディングス、プリマハムのような大手でさえ価格決定力は弱く、値上げは原料高を後から追う形になる。
ミートボールとハンバーグに絞ると、主な需要は家庭の弁当と夕食のおかずだ。弁当の主役である子どもの数は、出生数の減少で10年後には今より1割以上少なくなる。共働きの増加で調理済みの食品の出番は増えるが、その受け皿は冷凍食品の大手やコンビニの総菜で、競争は厳しい。
追い風は常温の保存食だ。災害への備えやひとり暮らしの増加で、常温で長く保つおかずの需要は伸びている。石井食品も常温品を伸ばしているが、レトルト食品の大手と同じ棚で戦うことになる。値段で選ばれる棚では、量の小さい会社ほど不利だ。
人手の面でも逆風がある。食品工場の人件費は最低賃金の引き上げで物価より速く上がり、自動化の投資ができる大手ほど有利になる。業界の再編は大手どうしより、大手が中小の工場とブランドを取り込む形で進むとみる。
資本政策と M&A
配当は少額の安定配当で、年の総額は0.7億円ほどにとどまる。利益の薄い年も配当を据え置いてきたので、配当性向は年によって大きく振れる。自社株買いの実績は乏しく、発行済み株式の1割弱を自己株として持ったままだ。株主優待は1,000株以上の株主だけが対象で、費用は小さく、還元の額をほとんど動かさない。
買収の当事者になった歴史はない。時価総額が60億円規模と小さく、大手の食品会社が棚の確保や工場を目当てに買う筋はありうる。ただ、利益の薄さを考えると高い値段は付きにくい。現金は運転資金と工場の更新でほぼ使い切る水準で、事業に要らない現金として分ける額はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
看板の力はまだ使い切れていない。ミートボールで「イシイ」を知らない家庭は少なく、この知名度を常温品とネット販売に広げれば、量販店の棚に頼らない売り方ができる。常温のミートボールやチキンハンバーグはすでに伸びており、災害の備えやひとり暮らしの食事という新しい需要をつかみ始めている。
値上げも通るようになった。2025年3月の価格改定のあとも、ミートボールの売上は前年を上回った。物価が毎年上がる世界では、定番品の小刻みな値上げは受け入れられやすい。原料高の後追いが続いた過去と違い、値上げの間隔が短くなれば利益率は戻る。
2026年3月期の赤字は、資産除去債務の見積り直しや工場の修繕といった一過性の費用が重なった結果だ。営業で生む現金は落ちておらず、借金もない。費用の山を越えれば営業利益率4〜5%は手の届く水準で、そうなれば今の値段は高くない。借金が無いので、立て直しに時間をかける余裕もある。地域の素材を使った商品も、産地との結びつきが他社にはまねしにくい売り物になる。
慎重な見方
問題は商品でなく、売る場所の力関係だ。量販店は冷凍食品の大手やPBと並べて値段を比べ、石井食品の値上げは常に後から、しかも割り引かれて通る。10年以上、営業利益率が4%を超えたことがないのはその証拠である。
需要の芯も細る。弁当の主役である子どもの数は、出生数の減少で確実に減る。共働きの家庭が増えても、その受け皿は冷凍食品の大手やコンビニの総菜で、チルドのミートボールではない。常温品もレトルト食品の大手と同じ棚に並ぶので、値段で選ばれれば小さい会社が不利だ。
費用も重くなる。工場の修繕費は物価と人件費で毎年膨らみ、古い設備ほど更新の時期が近い。2026年3月期の修繕費や見積り直しは一過性と言われるが、古い工場を抱える会社では同じことが繰り返される。修繕を先送りすれば、その分だけ後で大きな費用が出る。利益が資本コストに届かない会社に、自己資本の1.5倍を超す値段を払う理由は乏しい。常温品や地域の商品は伸びても規模が小さく、主力の縮みを埋めるには10年では足りない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。ブランドの知名度は本物だが、それが値決め力に変わった形跡は、10年分の利益率に見当たらない。常温品の伸びは確かな前進で、上振れの筋書きとして重みを残した。ただ、中心は利益が過去の最良期に戻る程度の筋書きで、全体はやや悲観の側に寄る。値上げの通り方の変化は、次の数年で見極めたい。借金が無く倒れる心配は小さいので、悲観の重みは1割にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 256 円43 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 53 円9 億円)。 今の値に割り戻すと 146 円24 億円、今との差 −59.9%、 期待の年率 −1.6%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 648 円108 億円 | 90 円15 億円 | +103.4% | +7.4% | 59 円10 億円 |
| やや楽観 | 20% | 414 円69 億円 | 72 円12 億円 | +33.9% | +3.0% | 97 円16 億円 |
| 中立 | 40% | 236 円39 億円 | 54 円9 億円 | −20.2% | −2.2% | 116 円19 億円 |
| やや悲観 | 22% | 98 円16 億円 | 36 円6 億円 | −63.1% | −9.5% | 29 円5 億円 |
| 悲観 | 10% | 58 円10 億円 | 18 円3 億円 | −79.1% | −14.5% | 8 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 256 円43 億円 | 53 円9 億円 | −14.8% | −1.6% | 309 円51 億円 |
今の株価時価総額 363 円60 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 常温品とネット販売が第二の柱に 利益 8 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 648 円108 億円
常温のミートボールとハンバーグが、災害の備えとひとり暮らしの食卓で定番になる。量販店のチルドの棚に加え、ドラッグストアやネット通販でも売れるようになり、数量は今を少し上回る。
値上げは物価に遅れずに通り、無添加の約束が値段の差を支える。おせちと地域の旬の商品は産地との結びつきを生かして単価を上げ、通販の比率が上がる。工場の更新を済ませたあとは修繕費の山も落ち着き、営業利益率は5%台後半と、過去にない水準に届く。常温品は海外の日本食の棚にも並び始める。資本コストを上回る利益が出て、ためた利益が価値を生む会社に変わる。大手の食品会社が提携を求めてくる場面もあり、ブランドの値打ちが初めて利益の形で表に出る10年になる。
- 調理済み食肉加工品(ミートボール・ハンバーグ):数量 57.8(販売パック数(百万パック・年、推定))× 価格 182(1 パックあたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 105 億円・営業利益 11 億円。数量 1.05 倍(常温品・ネットで増)× 単価 1.40 倍、利益率 10%
- 正月料理(おせち):数量 125(販売個数(千個・年、推定))× 価格 2.10(1 個あたりの出荷単価(万円・名目))→ 売上 26 億円・営業利益 2 億円。12.5 万個 × 1.40 倍、利益率 6%
- 地域と旬・その他:数量 14.0(販売個数(百万個・年、推定))× 価格 281(1 個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 39 億円・営業利益 2 億円。1,400 万個 × 1.40 倍、利益率 4%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.9% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.28 倍、時価総額 104 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:常温品の伸びは確かだが、棚の力関係を覆して利益率を過去の倍近くに上げた実績は無い。小さい会社が二つの販路を同時に育てる難しさを見て、低い確率にとどめた。
やや楽観 20% 値上げが定着し利益率が最良期を少し超える 利益 6 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 414 円69 億円
物価が毎年上がる世界で、定番品の小刻みな値上げが受け入れられる。ミートボールの数量は子どもの数の減少を常温品とネット販売で埋めて横ばいを保ち、単価は物価を少し上回って上がる。
おせちは予約販売の単価が上がり、地域と旬の商品も通販で数を伸ばす。修繕費と販促費は物価並みに増えるが、値上げの遅れが縮まる分だけ利益率は改善し、営業利益率は4%台半ばに届く。利益は資本コストをわずかに上回り、配当を少しずつ増やせる会社になる。ただ、工場の更新の費用も物価で膨らむので、手元に残る現金は利益ほどには増えない。ブランドの値打ちが、ようやく利益に表れ始める姿だ。
- 調理済み食肉加工品(ミートボール・ハンバーグ):数量 55.0(販売パック数(百万パック・年、推定))× 価格 178(1 パックあたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 98 億円・営業利益 9 億円。数量横ばい × 単価 1.37 倍、利益率 9%
- 正月料理(おせち):数量 115(販売個数(千個・年、推定))× 価格 2.05(1 個あたりの出荷単価(万円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 1 億円。11.5 万個 × 1.37 倍、利益率 5%
- 地域と旬・その他:数量 12.5(販売個数(百万個・年、推定))× 価格 275(1 個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 34 億円・営業利益 1 億円。1,250 万個 × 1.37 倍、利益率 2%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.0% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.07 倍、時価総額 66 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2025 年 3 月の値上げのあともミートボールの売上が前年を上回った事実は、値上げの通り方が変わり始めた兆しとして重みを置いた。ただ最良期を超える利益率の実績は無い。
中立 40% 過去の最良期に戻る程度 利益 3 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 236 円39 億円
ミートボールの数量は、子どもの数の減少で10年で1割ほど細る。常温品とネット販売がその一部を埋めるが、全部は埋まらない。単価は物価並みに上がり、売上は名目で140億円弱になる。
おせちは予約の数がやや減るかわりに単価が上がり、地域と旬の商品は天候で年ごとに揺れながら物価並みに伸びる。値上げは原料高を半年ほど遅れて追い続け、工場の修繕と更新の費用も物価とともに膨らむ。営業利益率は3%前後と、2024年3月期の最良期に近い所に戻るが、そこを超えない。利益は資本コストに届かず、配当を保つのが精いっぱいの会社のままだ。ブランドは家庭に残るが、株主の価値はほとんど増えない。
- 調理済み食肉加工品(ミートボール・ハンバーグ):数量 49.5(販売パック数(百万パック・年、推定))× 価格 174(1 パックあたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 86 億円・営業利益 7 億円。数量 0.9 倍(子どもの数の減少)× 単価 1.34 倍、利益率 8%
- 正月料理(おせち):数量 110(販売個数(千個・年、推定))× 価格 2.01(1 個あたりの出荷単価(万円・名目))→ 売上 22 億円・営業利益 1 億円。11 万個 × 1.34 倍、利益率 4.5%
- 地域と旬・その他:数量 11.0(販売個数(百万個・年、推定))× 価格 268(1 個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 30 億円・営業利益 0 億円。1,100 万個 × 1.34 倍、損益ゼロ
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 38 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:一過性の費用が抜け、値上げの効果で利益が 2024 年 3 月期並みに戻るのが最もありそうな道筋とみた。人口とともに数量が細る業界の前提とも合う。
やや悲観 22% PBと冷凍食品に棚を削られる 利益 1 億円 · PER 10.3 倍 · 株価時価総額 98 円16 億円
量販店がPBのミートボールやハンバーグを広げ、冷凍食品の大手も弁当向けの品ぞろえを厚くする。石井食品のチルドの棚は削られ、数量は10年で2割減る。値上げは通るが、物価より少し低い所で止まる。
おせちは百貨店や通販の大手との競争で数を落とし、地域と旬の商品は天候不順が続いて赤字が残る。工場の修繕費は物価で膨らむ一方、売上は名目でほぼ横ばいだ。営業利益率は1%台半ばにとどまり、配当は減らさざるをえない。ブランドは残るが、稼ぐ力は資本コストを大きく下回る。工場の更新は先送りが増え、その分だけ将来の修繕の山が高くなる。大手からの買収の声も、利益の薄さを見て遠のく。
- 調理済み食肉加工品(ミートボール・ハンバーグ):数量 44.0(販売パック数(百万パック・年、推定))× 価格 168(1 パックあたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 74 億円・営業利益 5 億円。数量 0.8 倍 × 単価 1.29 倍、利益率 7%
- 正月料理(おせち):数量 90.0(販売個数(千個・年、推定))× 価格 1.95(1 個あたりの出荷単価(万円・名目))→ 売上 18 億円・営業利益 0 億円。9 万個 × 1.30 倍、利益率 2%
- 地域と旬・その他:数量 9.0(販売個数(百万個・年、推定))× 価格 260(1 個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 23 億円・営業利益 −1 億円。900 万個 × 1.30 倍、赤字
倍率:ROE 3.2% が k 8.75% 以下なので、ためた利益は額面未満の価値しか生まず、PER の上限は 1÷k=12.9 倍。10.31 倍(上限の 90%)に置いた。やや悲観は稼ぐ力(純利益÷k)の 9 割。
確率:量販店の PB と冷凍食品の大手が棚を広げる流れはすでに起きている。利益率が 10 年以上低いままという実績が、この筋書きに厚めの確率を置く理由だ。
悲観 10% 棚を失い赤字が定着する 利益 −2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 58 円10 億円
弁当の需要が子どもの数の減少で細り、量販店はチルドのミートボールの棚を大きく減らす。石井食品の数量は10年で3割強減り、値上げは原料高に追いつかない。
おせちと地域の商品も伸びず、古い工場の修繕と更新の費用が重くのしかかる。営業損益は赤字が定着し、配当はほぼ止まる。価値は事業の稼ぎでなく、今の自己資本のうち工場や土地、手元の現金をどこまで売って回収できるかで決まる。ブランドは他社に売れる可能性があるが、高い値段は付かない。借金が無いので倒れはしないが、少数株主は現金の使い道を決められず、清算の値段より低い所で値が付き続ける。看板の商品も、棚から外れれば思い出されにくい。
- 調理済み食肉加工品(ミートボール・ハンバーグ):数量 36.0(販売パック数(百万パック・年、推定))× 価格 160(1 パックあたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 58 億円・営業利益 2 億円。数量 0.65 倍 × 単価 1.23 倍、利益率 3%
- 正月料理(おせち):数量 75.0(販売個数(千個・年、推定))× 価格 1.90(1 個あたりの出荷単価(万円・名目))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。7.5 万個 × 1.27 倍、赤字
- 地域と旬・その他:数量 7.0(販売個数(百万個・年、推定))× 価格 250(1 個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 18 億円・営業利益 −1 億円。700 万個 × 1.25 倍、赤字
倍率:赤字なので PER は当てない。床は今の自己資本 38 億円に PBR 0.25 倍。中身は手元の現金と、工場の土地・建物を売った時の税後の回収(簿価の一部)で、のれんのような売れない資産は数えない。
確率:主力のチルドの棚を大きく失う筋書きは、子どもの数の減少と PB の伸びが重なれば起こりうる。借金が無く工場という売れる資産もあるので、確率は 1 割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
調理済み食肉加工品(ミートボール・ハンバーグ)
チルドと常温のミートボール・ハンバーグ。量販店・生協・ネットで売る主力。
| 数量販売パック数(百万パック・年、推定) | 価格1 パックあたりの出荷単価(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 55.0 | 130 | 72 | 4 |
| 10 年後 中立 | 49.5 | 174 | 86 | 7 |
取り方:品目別の売上は非開示。全社売上 109.8 億円のうち 6〜7 割をミートボール・ハンバーグとみて約 72 億円、出荷単価を店頭価格の約 6.5 割(1 パック 130)とし、年約 5,500 万パックと推定した。利益はセグメント開示が無いので本社費を除いた貢献利益の推定。
正月料理(おせち)
年末の予約販売のおせち。ネット・カタログ・生協が中心。
| 数量販売個数(千個・年、推定) | 価格1 個あたりの出荷単価(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 120 | 1.50 | 18 | 1 |
| 10 年後 中立 | 110 | 2.01 | 22 | 1 |
取り方:売上は非開示。全社の約 16% の 18 億円とみて、出荷単価 1.5 万円で年 12 万個と推定した。
地域と旬・その他
産地を決めた素材のカレー・スープ・惣菜、業務用、ネット通販の品。
| 数量販売個数(百万個・年、推定) | 価格1 個あたりの出荷単価(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.0 | 200 | 20 | −2 |
| 10 年後 中立 | 11.0 | 268 | 30 | 0 |
取り方:全社売上から上の 2 つを引いた約 20 億円を、出荷単価 200(1 個あたり)・年 1,000 万個と推定した。2026/03 期は不作で数を落とし赤字とみた。
リスクと懸念
値上げの遅れ
原料の豚肉・鶏肉や包装材、電気代が上がっても、量販店との交渉で値上げは半年から1年遅れて通る。物価が毎年3%上がる世界では、この遅れが毎年の利益を削り続ける。2026年3月期のように費用が重なれば、利益は簡単に消える。
子どもの数の減少
ミートボールの最大の用途は子どもの弁当だ。出生数は減り続けており、10年後に弁当を持つ子どもの数は今より1割以上少ない。常温品や大人向けの品で埋められなければ、数量は人口の減り方より速く縮む。
PBと冷凍食品の大手
量販店のPBは安さで、冷凍食品の大手は品数と販促の厚さで棚を取りにくる。チルドの棚が削られれば、知名度があっても手に取られる機会が減る。小さい会社は販促費で対抗するほど利益が薄くなる。
工場の更新と修繕
工場の修繕と更新には毎年3億円以上が要り、建築費と人件費の上昇でこの額は膨らむ。会計上の償却は取得時の値段のままなので、利益の見かけより現金の出ていき方が重い。
原料の天候と相場
地域と旬の商品は産地を決めているぶん、不作の年は数をそろえられない。輸入肉の相場や為替が急に動けば、主力品の原価も揺れる。小さい会社は調達の分散が効きにくい。
今後の分かれ目
- 値上げのあとも販売数量が前年を上回る状態が2年続いたら
- 値決め力が変わり始めた証拠として、やや楽観の確率を上げる。
- 常温品とネット販売の売上が全社の3割を超えたら
- 量販店の棚に頼らない売り方が育ったとみて、楽観の筋書きに重みを移す。
- 修繕費や見積り直しのような一過性の費用が毎年のように出たら
- 一過性でなく古い工場の構造的な重さとみて、やや悲観に寄せる。
- 量販店がチルドのミートボールのPBを広げたら
- 棚を削られる筋書きが近づいたとみて、やや悲観と悲観の確率を上げる。
- 大手の食品会社が資本提携や買収を持ちかけたら
- 工場とブランドの値段が付く場面になる。ただし利益が薄いので、高い買収価格は期待しにくい。
見ておくもの
- ミートボールの販売数量と値上げのあとの前年比
- 常温品とネット販売の売上の伸び
- 工場の修繕費と設備投資の額
- 営業利益率が4%を超えるか
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段から置かず、資本コスト8.75%と10年後の自己資本の稼ぎ(ROE)だけで決めた。中立のROEは6%台半ばで資本コストを下回るので、PERの上限は1÷kで、ROE÷kに合わせてその84%に置いた。楽観だけがkを超え、正当化PERの9割弱。悲観は赤字なので今の自己資本に床のPBRを掛けた。今のPBRが1.5倍台であることは、計算のあとに比べただけで、倍率の根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.61→13.28 倍・やや楽観 PER 12.9→12.07 倍・中立 PER 10.84→11.43 倍・やや悲観 PER 11.61→10.31 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。