結論
ヱスビー食品は、香辛料の国内首位とカレー(ゴールデンカレー、ディナーカレー)を二本柱とする食品会社だ。筆者の結論は、会社は堅実だが今の株価は先を織り込みすぎており、割高というものだ。
香辛料の市場シェアは 5 割を超え、ねりスパイスでは 5 割台後半を持つ。この首位は動かないが、市場そのものが小さく、人口減の国内では量が伸びない。値上げが通る間は増収増益が続くが、利益率は 8% 台で、ハウス食品とカレーで張り合う限り上限が見えている。
伸びしろは海外にある。会社は海外売上を今の 136 億円から 3 年で 210 億円に増やす計画だが、全体に占める割合はまだ 1 割だ。北米のカレーが育つかどうかが、10 年の成長を決める。
中立では、10 年後の売上は 1,850 億円前後、営業利益率は 8% 強にとどまる。自己資本に積み上がる利益に対して稼ぐ力が資本コストをわずかに上回る程度で、倍率は高く置けない。一方で借金はなく、悲観の筋書きでも事業は残る。守りは固いが、払ってよい値段には上限がある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「悪くない事業を、ほどほどに持ち続ける会社」だ。
まず、10 年後も事業が残るかを問う。香辛料とカレーは、食卓の定番として残る。この点は強い。次に、残った利益のうち再投資に回る分を引いた、株主のものになる利益を見る。設備投資は軽く、借金もない。そこは良い。
ただし堀の深さは中程度だ。香辛料は首位でも市場が小さく、カレーは二番手だ。値段を物価以上に上げる力は弱い。結果として、利益率は 8% 前後、ROE は資本コストをわずかに上回る程度に落ち着く。「利益が出る」ことと、「積んだ資本に見合う稼ぎがある」ことは別だ。
経営の資本配分は、これから判断する段階にある。新しい経営陣が、積み上がる自己資本をどう使うかで評価が変わる。
安全域の目で見ると、10 年の中立の姿に資本コストを課すと、今の時価総額には届かない。楽観の筋書きでも今の値段は超えにくい。ただし、悲観でも事業が残るので、大きく壊れる会社ではない。筆者は、良い会社だが、払う値段に余裕がないと見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は二つある。国内の香辛料とカレーだ。
香辛料は、こしょう・ガーリックなどのスパイス&ハーブ、わさびや からしのねりスパイス、業務用の香辛調味料からなる。2026 年 3 月期のスパイス&ハーブの売上は 373 億円で、こしょうや洋風調味料が伸びた。市場シェアは 5 割を超え、スーパーの香辛料棚はほぼこの会社の商品で埋まる。
カレーは即席ルウとレトルトだ。即席カレーの売上は 350 億円、レトルトは 172 億円で、廉価帯の「味わい」が前年から 5 割近く伸びた。ただしルウの首位はハウス食品で、国内のシェアはハウスが 6 割、エスビーが 3 割ほどとみられる。ここは二番手の戦いだ。
海外は売上の約 1 割、136 億円。北米では即席カレー、わさび、うま味ラー油を、配荷の少ない業務用や通販へ広げている。会社は 2029 年 3 月期に 210 億円を目指す。
全社の売上は 1,290 億円、営業利益は 103 億円、純利益は 84 億円だ。公表の区分は商品群別なので、筆者はこれをカレー、スパイス・香辛調味料、海外の 3 つに組み替えて数量と単価で見ている。いずれも推定の区分で、会社の開示そのものではない。
優良さと弱いところ
この会社の堀は、香辛料の棚の支配にある。堀とは、他社が簡単にはまねできない強みのことだ。
香辛料は 1 つひとつの値段が小さく、消費者は銘柄を替える手間をかけない。だから首位の商品が惰性で買われ続ける。ねりスパイスも同じで、シェアは 5 割台後半に達する。ただし堀の深さは「買われ続ける」までで、値段を大きく上げる力まではない。市場が小さいので、首位でも利益の絶対額は限られる。
カレーは堀が薄い。ルウの首位はハウス食品で、エスビーは追う側だ。値上げもハウスの出方に合わせる場面が多い。
資本効率は並みだ。ROE は 9% 前後で、過去 10 年の中央値は 9.5%。営業利益率も 3% から 8% の間を動いてきた。会社の第 4 次中計は 2029 年 3 月期の営業利益率 8.5%、ROE 8% 超を掲げており、目標自体が控えめだ。
経営は 2026 年 2 月に新体制が発表された。大久陽子氏が社長 CEO、山﨑崇弘氏が CFO を務め、代表取締役が 2 人になる。筆者は、この体制が資本の使い方をどう変えるかを、いちばん気にしている。
弱みは、原料の輸入スパイスだ。為替と産地の相場に値段が左右される。一方、借金はなく、財務の傷みは小さい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の香辛料とカレーの市場は小さく、静かに伸びている。量は伸びない。人口が減るからだ。
家庭用の即席ルウ市場は 2023 年度で約 719 億円。値上げで金額は伸びたが、数量は横ばいかやや減る。ここで勝つのは、棚を持つ首位のハウス食品と、価格帯を広げて追うエスビーだ。2025 年 7 月に両社は再び値上げに動いた。物価 3% が続く世界では、値上げは毎年の作法になる。ただし、値上げの回数が増えるほど、消費者は安い品や プライベートブランド(小売店の自社商品)へ動く。
香辛料は、健康志向と簡便志向が追い風だ。ブラックペッパー、ガーリック、シナモンが売れ、インバウンドで業務用も動いた。もっとも、この追い風は量の伸びでなく、単価と高付加価値品の伸びにつながる。
海外は別の話だ。北米では日本食と並んで即席カレーが広がりつつあり、キッコーマンや味の素のような先行者が、現地の食卓に入る道筋を示している。ただしエスビーの海外は売上の 1 割で、競合はハウス食品のほか、現地のカレー・スパイス大手だ。
業界全体の見通しは、国内の量が緩やかに減り、値段が物価並みに上がり、海外が成長を補うというものだ。エスビーはこの構図の中で、国内を守りきり、海外で足りない分を稼げるかが問われる。
資本政策と M&A
資本政策は、守りの色が濃い。
創業家の山崎兄弟会が株主の上位に残り、自己株式も発行済み株式の約 1 割ある。農林中央金庫や三菱 UFJ 銀行も上位だ。支配の構図が安定している分、敵対的な買収は起きにくい。kabufu の試算でも、10 年以内の買収や TOB の確率は 2 割に届かない。
還元は配当が中心で、株主優待もある。2026 年 3 月期から、優待は半年以上の継続保有が条件になった。長期の株主を増やす狙いだ。
M&A は目立たない。大きな買収で成長を買う会社ではなく、北米の配荷を自力で広げる方針だ。これは減損の怖さが小さいという利点があるが、国内の伸びの乏しさを補う速度も出にくい。
筆者が見ているのは、純現金と自己資本の厚みだ。自己資本比率は 6 割、純現金は 47 億円。余った現金とまでは言えず、新リース会計の影響も大きくない。この水準を、成長投資に回すのか、還元に回すのか。第 4 次中計の ROE 8% 超という目標は、資本を厚く積み上げたままでも達成できる低さだ。ここに改善の余地がある。
株主優待は、100株以上で1千円相当から、3年以上で最大4千円相当の自社製品。会社は優待の費用を開示していないため、100株以上の約8千人(自社商品の原価と送料)から年1.3億円と推定した。優待は株主が受け取る現物の還元なので、10年の還元に年額×10年を、中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5の係数で足した(費用は販管費として利益から引き済みで、自己資本の流れには入れない)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
香辛料の首位は、市場が育つほど効く。健康志向でスパイス&ハーブの単価が上がり、料理に使う香辛料の種類も増える。ブラックペッパー、ガーリックの伸びが示すとおり、棚の支配者がいちばん恩恵を受ける。ねりスパイスも、わさびの海外需要と合わせて伸びる。
カレーでは、廉価帯の「味わい」が前年から 5 割近く伸びた。ルウの価格を守りながら、レトルトで新しい客を取る流れが定着すれば、国内の量の減りを値段と構成の改善で補える。
海外は、いちばん大きな上振れ要因だ。北米の即席カレーは、まだ配荷の少ない業務用と通販に広がる余地が大きい。会社は 3 年で海外を 210 億円にする計画で、10 年で 2 倍台に乗せれば、全社の営業利益率は 9% を超える。
さらに、新しい経営陣が資本を積極的に使う展開もある。自己株式の消却や増配が進めば、ROE は 10% に近づく。株主優待の改定で長期の株主も増える。守りの強い会社が、攻めの経営に転じる 10 年だ。
慎重な見方
国内の香辛料とカレーは、量が減る市場だ。人口が減り、値上げのたびに消費者は安い品へ動く。首位のシェアが 5 割あっても、市場そのものが縮めば、利益の絶対額は減る。
カレーはハウス食品が 6 割を握る。値上げはハウスの動きに合わせることになり、エスビーが値段を主導する場面は少ない。2025 年 7 月の値上げも、原料高を追いかける形だった。
原料は輸入スパイスで、為替と産地の相場に左右される。ドル円を固定しても、産地の不作で相場が跳ねれば、値上げが追いつくまで利益が削られる。会社も 2027 年 3 月期は減益と見ている。
海外は売上の 1 割にすぎず、北米の配荷拡大には広告費と物流費が先に出る。計画の 210 億円が遅れれば、利益率の改善も遅れる。しかも国内の利益は海外の赤字を埋める側に回る。
資本の使い方も不安が残る。ROE は 9% 前後と、第 4 次中計でも 8% 超と控えめだ。積み上がる自己資本を吐き出さない限り、利益が伸びても ROE は下がっていく。世代交代の最中に方向が定まらなければ、利益率は 6% 台まで落ち込む。
どちらに重みを置いたか
国内の堀は本物だが、争点は伸びと資本効率に集まる。強気の見方の論拠は、海外と健康・高付加価値品の上振れで、これは実現すれば大きいが、まだ売上の 1 割の話だ。慎重な見方の論拠は、国内の量の減りと原料の相場、ハウスとの値上げの足並みで、こちらは毎年の決算に表れている。
どちらが強いかといえば、慎重な見方が少し強い。会社自身の目標も、2029 年 3 月期の営業利益率 8.5%、ROE 8% 超と控えめで、強気の筋書きを支える材料が少ない。そのため確率は中立を最も厚くし、やや悲観を楽観側より厚い 4 分の 1 に寄せた。ただし、借金がなく事業が壊れる理由も乏しいので、悲観は 1 割強にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,872 円1,420 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,880 円455 億円)。 今の値に割り戻すと 4,078 円986 億円、今との差 −32.3%、 期待の年率 +2.6%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 9,531 円2,305 億円 | 2,374 円574 億円 | +97.8% | +7.1% | 833 円202 億円 |
| やや楽観 | 20% | 8,063 円1,950 億円 | 2,159 円522 億円 | +69.8% | +5.4% | 2,044 円494 億円 |
| 中立 | 38% | 6,856 円1,658 億円 | 1,977 円478 億円 | +46.7% | +3.9% | 3,356 円812 億円 |
| やや悲観 | 24% | 3,634 円879 億円 | 1,674 円405 億円 | −11.8% | −1.3% | 1,274 円308 億円 |
| 悲観 | 11% | 1,046 円253 億円 | 1,172 円284 億円 | −63.1% | −9.5% | 244 円59 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,872 円1,420 億円 | 1,880 円455 億円 | +28.8% | +2.6% | 7,752 円1,875 億円 |
今の株価時価総額 6,020 円1,456 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 海外が育ち、国内の守りも固い 利益 158 億円 · PER 14.5 倍 · 株価時価総額 9,531 円2,305 億円
10 年の間に、北米の即席カレーが業務用と通販へ広がり、海外売上は今の 3 倍を超える。国内は健康志向でスパイスの単価が上がり、ねりスパイスも海外のわさび需要に乗る。カレーはレトルトの廉価帯が伸び、ルウの量の減りを補う。売上は 2,100 億円規模、営業利益率は 9.5% に上がる。新しい経営陣は自己株式の消却や増配に動き、ROE は 10% に近づく。香辛料の首位という守りの会社が、海外と資本政策の両方で攻める、いちばん良い 10 年になる。競合のハウス食品との差は広がらず、カレーの棚は守れる。M&A は大型を避け、買収される側になる可能性も小さいまま、創業家の安定した支配の下で資本の使い方だけが変わる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年1.3億円×10年×1.0=13億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- カレー(即席ルウ・レトルト):数量 5.4(販売数量(万トン、推定))× 価格 1,360(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 734 億円・営業利益 73 億円。営業利益率10.0%
- スパイス・香辛調味料(国内):数量 3.4(販売数量(万トン、推定))× 価格 2,720(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 919 億円・営業利益 106 億円。営業利益率11.5%
- 海外(北米・アジア):数量 3.3(販売数量(万トン、推定))× 価格 1,360(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 444 億円・営業利益 40 億円。営業利益率9.0%
倍率:事業の純利益 158 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.5 倍。全体の PER 14.52 倍、時価総額 2,294 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外の大きな上振れとルウの値段維持が重なる、最良のケース。長い連続成功が要るので確率は小さくした。
やや楽観 20% 海外と高付加価値品がじわりと効く 利益 137 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 8,063 円1,950 億円
海外は会社計画に近いペースで伸び、10 年で 2.8 倍になる。国内は香辛料の高付加価値品が値上げを支え、カレーの数量の減りも小幅にとどまる。売上は 1,970 億円規模、営業利益率は 9% 弱。原料高は値上げで吸収でき、ハウスとの差も開かない。新経営陣は資本配分を少しずつ見直すが、自己資本はなお積み上がり、ROE は 9% 前後にとどまる。堅実な増益が続くが、株主の取り分が急に増えることはない。香辛料では首位の座が揺がず、新しい経営陣のもとで中計の目標をほぼ達成する。M&A や TOB の動きは出ない。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年1.3億円×10年×1.0=13億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- カレー(即席ルウ・レトルト):数量 5.2(販売数量(万トン、推定))× 価格 1,350(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 707 億円・営業利益 67 億円。営業利益率9.5%
- スパイス・香辛調味料(国内):数量 3.3(販売数量(万トン、推定))× 価格 2,700(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 879 億円・営業利益 94 億円。営業利益率10.7%
- 海外(北米・アジア):数量 2.9(販売数量(万トン、推定))× 価格 1,350(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 386 億円・営業利益 32 億円。営業利益率8.2%
倍率:事業の純利益 137 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.1% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍。全体の PER 13.98 倍、時価総額 1,915 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外が計画並みに育ち、国内が守れる姿。会社の中計の目標に近い。
中立 38% 国内を守り、海外が少しずつ育つ 利益 119 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 6,856 円1,658 億円
国内の香辛料は首位を保ち、量は微増、値段は物価並みに上がる。カレーは人口減で量が減り、値上げで金額を保つ。海外は計画ほど速くないが、北米の配荷が広がって数量は 10 年で 1.8 倍になる。売上は 1,850 億円規模で、営業利益率は 8% 強と、第 4 次中計の 8.5% の少し下で落ち着く。原料の相場と為替の波はあるが、値上げで均せる。純利益は 120 億円前後、ROE は 8% 弱。資本効率は並みで、良い会社だが特別に高く評価される姿ではない。競合はハウス食品で、カレーの値上げ競争は続くが、香辛料の棚の優位が全体を支える。創業家が上位株主に残り、買収の動きも出ない。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年1.3億円×10年×1.0=13億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- カレー(即席ルウ・レトルト):数量 5.1(販売数量(万トン、推定))× 価格 1,340(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 687 億円・営業利益 62 億円。営業利益率9.0%
- スパイス・香辛調味料(国内):数量 3.1(販売数量(万トン、推定))× 価格 2,680(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 839 億円・営業利益 84 億円。営業利益率10.0%
- 海外(北米・アジア):数量 2.4(販売数量(万トン、推定))× 価格 1,340(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 328 億円・営業利益 25 億円。営業利益率7.5%
倍率:事業の純利益 119 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.4% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍。全体の PER 13.43 倍、時価総額 1,598 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の守りと海外の緩やかな成長を組み合わせた中心の姿。強気・慎重の両方の論拠が拮抗し、厚く置いた。
やや悲観 24% 値上げ疲れと原料高で利益率が痩せる 利益 75 億円 · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 3,634 円879 億円
原料の高騰が続き、値上げが追いつかない年が重なる。カレーは値上げ疲れで安い品へ客が動き、ハウスとの値上げ競争で棚の位置も守りきれない。香辛料も量が減り、価格は物価に届かない。海外は配荷拡大に費用がかさみ、利益が出ないまま数量は 10 年で 1.4 倍にとどまる。売上は 1,640 億円規模、営業利益率は 6% に落ちる。会社は事業を整理するが、資本効率は ROE 6% 弱へ低下し、資本コストを下回る。それでも黒字は続き、事業は壊れない。創業家の安定した支配は続くが、資本効率への圧力は弱く、積み上がった自己資本が活かされないまま時間が過ぎる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年1.3億円×10年×0.8=9.8億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- カレー(即席ルウ・レトルト):数量 4.9(販売数量(万トン、推定))× 価格 1,280(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 622 億円・営業利益 44 億円。営業利益率7.0%
- スパイス・香辛調味料(国内):数量 3.0(販売数量(万トン、推定))× 価格 2,600(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 774 億円・営業利益 62 億円。営業利益率8.0%
- 海外(北米・アジア):数量 1.9(販売数量(万トン、推定))× 価格 1,300(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 248 億円・営業利益 12 億円。営業利益率5.0%
倍率:ROE 5.6% が k 7.75% 以下なので上限は 1÷k = 13.8 倍(ためた利益は額面未満の価値)。稼ぐ力(純利益 75 億円)に対して上限の約 8 割の 11.0 倍を採用した。
確率:国内の量の減りと値上げ疲れ、原料高の足並みが、会社の目標より弱い形で続く。慎重な見方がやや強いと見て、やや楽観より厚く置いた。
悲観 11% ハウスに押され、海外も不発 利益 23 億円 · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 1,046 円253 億円
ハウス食品がルウの値段と棚を握り、エスビーは量も値段も取られる。人口減の中で香辛料も量が 1 割強減り、プライベートブランドに値段で押される。原料高の局面で値上げが通らず、利益率は 2% 台まで落ちる。海外は北米の配荷拡大に費用を使うばかりで、赤字が続いて撤退を検討する。事業が壊れるわけではないが、売上は 1,300 億円規模で足踏みし、純利益は 20 億円強に細る。香辛料の首位という看板だけが残り、稼ぐ力は大きく失われる。配当は利益の落ち込みに合わせて減らす。この規模の会社は大きな買収を仕掛ける力に乏しく、守りの縮小経営に入る。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年1.3億円×10年×0.5=6.5億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- カレー(即席ルウ・レトルト):数量 4.2(販売数量(万トン、推定))× 価格 1,200(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 505 億円・営業利益 23 億円。営業利益率4.5%
- スパイス・香辛調味料(国内):数量 2.7(販売数量(万トン、推定))× 価格 2,400(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 648 億円・営業利益 32 億円。営業利益率5.0%
- 海外(北米・アジア):数量 1.4(販売数量(万トン、推定))× 価格 1,150(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 156 億円・営業利益 0 億円。営業利益率0.0%
倍率:ROE 2.0% が k 以下なので上限は 1÷k = 13.8 倍。純利益 23 億円は稼ぐ力が約 317 億円の姿で、純現金は小さく床の資産は立てない。構造的な負けの筋書きとして上限の 8 割の 11.0 倍に置いた。
確率:ハウスとの競争劣勢と海外の不発が重なる構造的な負け。借金がなく事業が残るので 1 割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
カレー(即席ルウ・レトルト)
家庭用の即席カレールウとレトルトカレー。ルウはハウス食品に次ぐ 2 番手。
| 数量販売数量(万トン、推定) | 価格1kg あたりの平均単価(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.4 | 1,000 | 540 | 48 |
| 10 年後 中立 | 5.1 | 1,340 | 687 | 62 |
取り方:カレー(即席ルウ 350 億円・レトルト 172 億円ほか)を約 540 億円と置き、1kg あたり千円前後の品が年 5.4 万トン売れていると推定した。数量は国内の人口減で 10 年 0.95 倍、粉末ルウや廉価レトルトが下支え。価格は物価並み(10 年 1.34 倍)。市場の大きさ:家庭用即席ルウは 2023 年度で約 719 億円。ハウス食品が 6 割、エスビーが 3 割ほど(年次不明の参考値)。推定の区分で、会社の開示そのものではない。
スパイス・香辛調味料(国内)
スパイス&ハーブ、ねりスパイス、業務用の香辛調味料。国内の香辛料で 5 割超のシェア。
| 数量販売数量(万トン、推定) | 価格1kg あたりの平均単価(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.1 | 2,000 | 614 | 60 |
| 10 年後 中立 | 3.1 | 2,680 | 839 | 84 |
取り方:スパイス&ハーブ(373 億円)・ねりスパイス・業務用の香辛調味料などで約 614 億円と置き、1kg あたり二千円前後の品が年 3.07 万トンと推定した。数量は健康志向・インバウンド業務用で 10 年 1.02 倍。価格は物価並み。市場の大きさ:国内家庭用洋風スパイスは約 171 億円(桁は要確認の参考値)で、香辛料シェア 52.7%、ねりスパイス 56.9%。
海外(北米・アジア)
北米を中心とした即席カレー・わさび・うま味ラー油などの輸出と現地販売。
| 数量販売数量(万トン、推定) | 価格1kg あたりの平均単価(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.4 | 1,000 | 136 | 8 |
| 10 年後 中立 | 2.4 | 1,340 | 328 | 25 |
取り方:海外売上 136 億円(構成比 10.6%)を、1kg あたり千円前後の品が年 1.36 万トンと置いた(推定)。会社計画は 2029 年 3 月期に 210 億円。数量は北米の即席カレー・わさび・うま味ラー油の配荷拡大で、中立 10 年 1.8 倍。価格は物価並み。市場の大きさ:北米の日本食・カレー市場は先行者(キッコーマン、味の素)が開き、競合は現地のスパイス・カレー大手。
リスクと懸念
国内の量の減り
人口減で、家庭用のルウや香辛料の数量は緩やかに減る。値上げで金額を保てるが、値上げが続くほどプライベートブランドや安い品へ客が動く。香辛料は 1 つの商品が小さい分、1 つ客が抜けても影響は小さいが、積み重なると棚の位置を失う。
ハウス食品との値上げ競争
カレールウはハウス食品が 6 割、エスビーが 3 割ほどとみられる。値上げの主導権はハウスにあり、エスビーが先に上げて客を失えば、棚を取られる。2025 年 7 月の値上げも、原料高を追う形だった。ここで負けると、全社の営業利益率が 1 ポイント単位で動く。
輸入スパイスの原料相場と為替
こしょう・ガーリック・香辛料は多くを輸入に頼る。産地の不作や相場の高騰、円安で原価が上がると、値上げが追いつくまで利益が削られる。会社も 2027 年 3 月期の純利益は減益と見ている。
海外展開の遅れ
北米の即席カレーとわさびの配荷拡大は、広告費と物流費が先に出る。2029 年 3 月期に海外売上 210 億円という計画は、3 年で 5 割増の速度だ。遅れれば全社の成長がそのまま鈍る。現地のカレー・スパイス大手との競争もある。
経営交代と資本配分
2026 年 2 月に新社長と新 CFO の 2 人体制が発表された。自己資本は 6 割を占め、純現金もある。これを成長投資や還元に使えず積み上げ続ければ、ROE は低いままだ。第 4 次中計の ROE 目標 8% 超は、資本を厚く積んだままでも届く水準にある。
創業家支配と流動性
創業家の山崎兄弟会などが上位株主にいて、買収の脅威は小さい。この安定は経営の継続にはよいが、資本効率に厳しい圧力が働きにくい。
今後の分かれ目
- 海外売上が計画どおり 210 億円に届き、さらに伸びが続いたら
- 海外の筋書きを楽観側へ寄せ、全社の営業利益率を 9% 近くまで見直す。
- 原料高で値上げが追いつかず、営業利益率が 6% 台に落ちたら
- カレーとスパイスの利益率の前提を下げ、やや悲観の筋書きに重みを移す。
- ハウス食品との値上げ競争でカレーのシェアが 3 割を切ったら
- カレーの数量と利益率の前提を引き下げる。
- 新経営陣が自己株式の消却や増配、成長投資を打ち出し、ROE が 10% に近づいたら
- 資本効率の前提を引き上げ、倍率の上限を高く見直す。
- 国内の香辛料で健康関連の高付加価値品が売上の柱になったら
- スパイス・香辛調味料の価格と利益率を上方に直す。
- 創業家や金融機関の保有株が市場に出る、または買収提案が出たら
- 支配の構図が変わるので、資本政策の前提を見直す。
見ておくもの
- 海外売上(2029 年 3 月期に 210 億円)と北米の配荷拡大の進み方
- カレー(ルウ・レトルト)の売上とハウス食品との値上げ・シェアの動き
- 香辛料の原料相場と為替、営業利益率(目標 8.5%)の推移
- 新経営陣の資本配分(自己株式の扱い、配当、投資の方針)と ROE の動き
倍率と資本コストの決め方
3 つの区分(カレー・スパイス・海外)を 1kg あたりの単価と販売数量の推定で積み、価格は物価並みの 1.34 倍に置いた。数量は国内で人口減に沿って 0.95〜1.02 倍、海外だけ 1.8 倍。倍率は自己資本を「今+純利益−還元」で流して出した ROE と、k 7.75% から式で決めた。ROE が k をわずかに上回るので、下限 13.8 倍の近くに中立を置いた。今の PER や同業の倍率は見ていない。新リース会計(2028 年 3 月期から)で数字の形が変わるが、10 年後は今と同じ家賃を費用に入れた形でそろえた。今の株価と比べたのは最後。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15→14.52 倍・やや楽観 PER 14.5→13.98 倍・中立 PER 14→13.43 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality −0.25% を足した。事業は傾いていないので上乗せはない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.25% → 7.75%。