結論
ハウス食品はカレールウの首位メーカーだ。バーモントカレーとジャワカレーを軸に、スパイス、シチュー、レトルトを国内で売る。子会社の壱番屋(CoCo壱番屋)と、米国の豆腐を持つ。筆者の結論は割高である。ブランドは強いが、10 年先の利益は今より大きく伸びない。そこに今の値段は先回りしている。
理由は三つある。第一に、国内のカレーは人口と単身化で数量が細る市場だ。値上げで売上を保っても、利益率は 10% 前後で頭打ちになる。第二に、海外は成長の柱のはずが、米国のキーストーン社で減損が 2 期続いた。大豆系の事業は 2028 年 3 月期の黒字化が撤退の条件に置かれている。第三に、今期の純利益 170 億円の約 4 割は上場株の売却益だ。本業の稼ぎはその半分ほどである。
救いは資本だ。純現金が 800 億円を超え、自社株買いと累進配当が動き出した。壱番屋の売却が決まれば、さらに資金が戻る。それでも、資本の効率は資本コストに届かない姿が続く。この還元を織り込んでも、10 年後の本質価値は今の時価総額を 5 割近く下回る。割高と見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「ずっと持ちたい事業か」を問う。カレーのブランドは、答えが「はい」に近い。家庭の味は、技術の変化に強い。だが、強いブランドが高い利益を生むとは限らない。ハウスの利益率が低いのは、値上げが通りにくく、固定費が重いからだ。持ちたいのはブランドで、事業全体ではない。
次に、利益がどれだけ株主に残るかを見る。国内の食品は設備投資が軽く、現金を生む。しかし利益の伸びは物価並みで、数量は縮む。成長のための再投資で利益が増える形ではない。
資本の使い方は、いま変わりかけている。自社株買いと累進配当は、正しい方向だ。ただ、10 年の中央値で ROE が 4% にとどまった事実は重い。壱番屋の買収と大豆系の海外展開は、資本を遊ばせた以上に、価値を落としたかもしれない。
安全域は薄い。今の時価総額は、本業の利益の 25 倍ほどを払う形だ。純現金を差し引いても高い。ブランドを愛していても、この値段で買う理由は見つけにくい。
何で稼ぐ会社か
ハウス食品の稼ぎ頭は、国内の香辛・調味加工食品だ。売上の約 4 割、営業利益の約 6 割を占める。カレールウでは国内首位で、バーモントカレーは 1963 年から続く。家庭の定番になったブランドが強みだ。スパイス、シチュー、パスタソース、スナックも手がける。
壱番屋は外食の柱だ。ハウスが 51% を持ち、国内に約 1,285 店、海外に約 218 店のカレー店を構える。売上は 650 億円規模だが、営業利益は 34 億円と薄い。2026 年 8 月の報道で、ハウスは壱番屋の売却を含め、非公開化の選択肢を検討していることを認めた。
海外食品は売上 629 億円。米国の豆腐、業務用食品のキーストーン社、中国・東南アジアのカレーが柱だ。営業利益は 34 億円にとどまり、利益率は 5% ほどと低い。
そのほかに、機能性飲料「C1000」のハウスウェルネスがある。コンビニ向けの惣菜を作るデリカシェフは譲渡が決まった。会社は事業を「スパイス系」「機能性素材系」「大豆系」の三つの柱に分けて見直している。柱のうち、利益で重いのはスパイス系だけだ。
優良さと弱いところ
強みは、国内のカレールウの首位にある。子ども向けのマイルドな味から大人の辛口まで、ブランドの階段を持つ。スーパーの棚でハウスが外されにくいことは、値上げの通りやすさにつながる。カレーはどの家庭にも根づいた味で、ブランドの寿命は長い。
弱みは、その強みが利益にあまり出ていないことだ。営業利益率は 10 年を通して 4〜8% で、2022 年の 7.6% が最高だ。食品の中では低い。ROE も 10 年の中央値で 4% ほどにとどまる。厚い自己資本を生かせていない証拠だ。2026 年 3 月期は、5 月の値上げで家庭用が大きく減益になった。値上げの力が、思ったほど強くないことが見えた。
海外の質も高くない。米国のキーストーン社は、のれんの減損が 2 期続いた。大豆系は、2028 年 3 月期に黒字にならなければ撤退という条件が付いた。第八次中計は営業利益 270 億円の目標を置いたが、最終年度の予想は 185 億円だ。
財務は堅い。自己資本比率は 67%、純現金は 800 億円を超える。ただし、この厚さは安全域であって、稼ぐ力ではない。堀は「普通」と見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のカレールウ市場は、人口の減少と家族の小型化で数量が細る。夕食を作る家庭が減り、冷凍・中食に流れる。一方で、単身・共働きの便利さを狙った小容量品や、スパイスを使った手作り志向は伸びる。差し引きで、数量は 10 年で 1 割弱減ると見る。
競合は S&B(ゴールデンカレー)、明治(ザ・カリー)などだ。レトルトカレーや外食のカレーも、家庭用ルウの代わりになる。価格では、スーパーの PB がじわり棚を取る。物価が年 3% 続く世界では、値上げは繰り返さざるをえない。だが、2025 年 5 月の値上げでハウスの家庭用は大きく減益になった。値上げの頻度が高いほど、消費者は PB へ逃げる。
外食では、カレー店は人件費と家賃が重い。壱番屋は海外の出店で補うが、国内は人口減で頭打ちだ。
海外では、米国の豆腐が植物性たんぱくの追い風を受ける。ただし競争は厳しく、業務用は収益が安定しない。ハウスの海外食品の利益率は 5% ほどで、味の素やキッコーマンの海外とは水準が違う。国内中心の会社が海外で儲けを出す難しさがここにある。
業界の成長は、ハウスにとっては追い風にならない。数量の減りを価格で埋める戦いが続く。
資本政策と M&A
資本政策は、2026 年に大きく変わった。5 月に自社株買いを最大 260 億円(発行済株式の 13% 超)と決め、取得後は全株を消却する。保有していた自己株 640 万株も消却した。配当は、2027 年 3 月期から DOE(自己資本配当率)3% 以上の累進配当に改める。政策保有株の売却も進め、今期は上場株 3 銘柄の売却益で約 72 億円を見込む。デリカシェフは譲渡する。
これらはすべて、第八次中計の目標を外した後の「構造改革」の一部だ。純現金 800 億円超を抱え、ROE が 4% 前後にとどまる状態は、もう許されないという判断だろう。
壱番屋は 2015 年に約 300 億円で子会社にした。2026 年 8 月、売却と非公開化の検討が報じられ、会社も「あらゆる選択肢を検討している」と認めた。複数のファンドが関心を持つという報道もあるが、開示では確認できない。決まれば、持分 51% の売却代金が入る。TOB(株式の公開買い付け)で買われる側になる確率は、kabufu の推計で 16% ほどだ。
株主優待は、100株で年2千円、200株で年4千円、1,000株以上で年6千円の自社グループ製品(年2回)。年2.5億円と見込む(2026年3月末の有報(個人その他の株主 73,987 人・約27.4万単元)から受け取る約6.5万人の額面合計を約1.8億円とみて、商品の原価0.4と送料等1,000円を足し係数1.8(有報の優待引当金3.2億円は子会社の壱番屋の優待券の分で、ハウス自身の分ではないため使わない))。優待は株主が受け取る現物の還元なので、10年の還元に年額×10年を、中立・やや楽観・楽観1.0、やや悲観0.75、悲観0.5の係数で足した(費用は販管費として利益から引き済みで、自己資本の流れには入れない)。年額は推定で、株主数の開示と優待条件から出した(2倍程度のずれはありうる)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ハウスは、国内のカレーという揺るがない柱を持つ。首位のブランドと販売網は、10 年では崩れない。値上げは一度つまずいたが、物価が年 3% 続く世界では、他社も値上げせざるをえない。ブランドの弱い競合ほど苦しいので、ハウスの首位は強まる。
資本の面では、変化がはっきりしている。純現金 800 億円に、260 億円の自社株買い、DOE 3% の累進配当が加わる。これは、資本効率を上げる経営への転換だ。上場株の売却益は 72 億円、デリカシェフの譲渡益も出る。持ち合いを減らすことで、資本の使い道が整理される。
壱番屋の売却は、見逃せない材料だ。51% の持分に、ファンドが競って値段をつける。外食の薄い利益を、まとまった現金に換えられる。換えた現金を戻せば、ROE は上がる。
海外では、米国の豆腐が植物性たんぱくの波に乗る。大豆系は撤退基準を置いた。基準が規律を生み、黒字化できれば海外の利益率は 8% 台に乗る。利益が 300 億円に届けば、今の値段にも筋が通る。
慎重な見方
ハウスの利益は、10 年伸びていない。営業利益は 2020 年に 190 億円、今期予想は 185 億円だ。その間に物価は上がったのに、利益は同じ場所にいる。中計の目標 270 億円は大きく外れた。目標を外した会社が、次の目標を達成できる根拠は薄い。
今期の純利益 170 億円の約 4 割は、上場株の売却益だ。本業だけなら 100 億円前後にすぎない。売却益は一度きりで、来期は消える。そこに高い倍率をかけるのは危うい。
海外は柱になっていない。キーストーン社の減損は 2 期連続で、大豆系は撤退基準を置かれた。事業の見直しは、事業が思うように育っていないことの裏返しだ。
壱番屋の売却は、利益を減らす。外食の営業利益 34 億円が消え、手取りも市場が思うほど大きくはない。資本の戻しも、10 年で見れば限られる。純利益の合計と同じ規模を戻して、ようやく ROE が 6% 前後だ。資本コストに届かない会社に、今の値段は高すぎる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。利益が 10 年伸びていない事実と、目標未達、減損の連続という実績は重い。強気の見方の最も強い点は、資本政策の変化と壱番屋の売却だ。ただ、その価値は 10 年の還元に織り込んだうえでも、今の時価総額を大きく下回る。そこで確率は、楽観・やや楽観に 25%、やや悲観・悲観に 37%、中立に 38% と、慎重側へやや寄せた。壱番屋の売却と還元の確かさを考え、悲観は 12% にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,386 円2,110 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,736 円1,535 億円)。 今の値に割り戻すと 2,450 円2,167 億円、今との差 −44.5%、 期待の年率 −0.7%(資本コスト 7.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 4,502 円3,981 億円 | 2,584 円2,285 億円 | +60.5% | +4.8% | 496 円439 億円 |
| やや楽観 | 18% | 3,468 円3,066 億円 | 2,087 円1,845 億円 | +25.8% | +2.3% | 1,000 円884 億円 |
| 中立 | 38% | 2,768 円2,448 億円 | 1,951 円1,725 億円 | +6.9% | +0.7% | 1,793 円1,586 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,291 円1,142 億円 | 1,311 円1,159 億円 | −41.1% | −5.2% | 650 円575 億円 |
| 悲観 | 12% | 601 円532 億円 | 919 円813 億円 | −65.6% | −10.1% | 182 円161 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,386 円2,110 億円 | 1,736 円1,535 億円 | −6.7% | −0.7% | 4,122 円3,645 億円 |
今の株価時価総額 4,416 円3,905 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 7% カレーが付加価値化し、海外の大豆も黒字に乗る 利益 228 億円 · PER 16.6 倍 · 株価時価総額 4,502 円3,981 億円
カレールウの値上げが定着し、国内の利益率が 12% を超える。単身世帯向けの小容量品や機能性スパイスが育ち、数量の減りは 2% で済む。海外は米国の豆腐が植物性たんぱくの波に乗り、キーストーン社の業務用も立て直る。大豆系は 2028 年 3 月期の黒字化目標を守り、海外の利益率は 8% 台に乗る。
壱番屋は、ファンドの競り合いで高い値段がつき、手取りで 560 億円ほどが入る。ハウスはこの資金を自社株買いと配当に回し、累進配当と合わせて 10 年の還元は 2,200 億円を超える。外食の利益は失うが、資本の効率が上がり、ROE は 9% 近くまで戻る。
それでも国内は人口が減る市場だ。この筋書きは、会社が自ら描く「構造改革の成功」に近い。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年2.5億円×10年×1=25億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 香辛・調味加工食品:数量 17.8(販売数量(万トン、国内の食品全体の推定合計))× 価格 966(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 1,715 億円・営業利益 214 億円。営業利益率 12.5%
- 外食(壱番屋):数量 0.0(来店客数の換算(百万人、推定))× 価格 1,340(1 人あたりの売上(円、推定。名目。店舗への食材販売やロイヤルティを含む))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。売却済み(連結から外れる)
- 海外食品:数量 18.2(販売数量(万トン、海外の食品全体の推定合計))× 価格 680(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 1,240 億円・営業利益 105 億円。営業利益率 8.5%
- その他食品関連・その他:数量 5.6(取扱量の換算(万トン、推定))× 価格 1,340(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 744 億円・営業利益 37 億円。営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 224 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)255 億円。全体の PER 16.6 倍、時価総額 3,980 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:壱番屋の高値売却、国内の利益率回復、海外大豆の黒字化の三つが全部そろう形。中計の目標を外した直後で、そろう確率は高くない。7% にとどめた。
やや楽観 18% 国内は踏みとどまり、壱番屋を手放して資本を戻す 利益 193 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 3,468 円3,066 億円
国内の利益率が 11% 台に戻る。値上げ後の数量離れは落ち着き、ブランドの強さでPB(スーパーの自社商品)に押されきらない。海外は数量が 3 割強伸び、米国の豆腐が黒字を稼ぎ、キーストーン社は損失を止める。
壱番屋は中位の値段で売れ、手取りで 420 億円ほどが入る。累進配当と自社株買いで資本の戻しは続き、10 年の還元は 1,800 億円ほどになる。
ただし、国内のカレールウ市場が膨らむわけではない。伸びるのは海外と、手元資本の使い方の改善だ。ROE は 7% で、資本コストにわずかに届かない。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年2.5億円×10年×1=25億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 香辛・調味加工食品:数量 17.4(販売数量(万トン、国内の食品全体の推定合計))× 価格 952(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 1,656 億円・営業利益 190 億円。営業利益率 11.5%
- 外食(壱番屋):数量 0.0(来店客数の換算(百万人、推定))× 価格 1,340(1 人あたりの売上(円、推定。名目。店舗への食材販売やロイヤルティを含む))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。売却済み(連結から外れる)
- 海外食品:数量 17.0(販売数量(万トン、海外の食品全体の推定合計))× 価格 675(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 1,146 億円・営業利益 86 億円。営業利益率 7.5%
- その他食品関連・その他:数量 5.4(取扱量の換算(万トン、推定))× 価格 1,340(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 728 億円・営業利益 33 億円。営業利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 189 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.6% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)255 億円。全体の PER 14.84 倍、時価総額 3,066 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の計画がおおむね実を結ぶ形。目標未達の実績と、売却と還元という確かな材料の両方を見て 18%。
中立 38% 国内は細り、壱番屋は売られ、手元の資本が戻る 利益 157 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 2,768 円2,448 億円
国内のカレールウと調味料は、人口減と単身化で数量が 6% ほど減る。値上げは物価並みに通るが、利益率は 10% 台前半にとどまる。海外食品は数量が 25% 伸びるが、豆腐は競争が厳しく、利益率は 6% ほどに上がるのがやっとだ。
壱番屋は売却され、手取りで 340 億円ほどが入る。ハウスは資金を自社株買いと配当に回す。外食の利益 13 億円ほど(持分相当)は消える。全社の営業利益は 210 億円ほどで、名目では今より少し増えるが、数量でみれば縮んだ会社になる。
資本は厚いまま戻りが進み、ROE は 6% 前後。資本コストには届かない。「安定してはいるが、成長せず、資本の使い道も限られる」会社になる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年2.5億円×10年×1=25億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 香辛・調味加工食品:数量 17.0(販売数量(万トン、国内の食品全体の推定合計))× 価格 938(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 1,597 億円・営業利益 168 億円。営業利益率 10.5%
- 外食(壱番屋):数量 0.0(来店客数の換算(百万人、推定))× 価格 1,340(1 人あたりの売上(円、推定。名目。店舗への食材販売やロイヤルティを含む))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。売却済み(連結から外れる)
- 海外食品:数量 15.7(販売数量(万トン、海外の食品全体の推定合計))× 価格 670(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 1,053 億円・営業利益 63 億円。営業利益率 6.0%
- その他食品関連・その他:数量 5.2(取扱量の換算(万トン、推定))× 価格 1,340(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 702 億円・営業利益 28 億円。営業利益率 4.0%
倍率:事業の純利益 153 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.3% が k 7.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)255 億円。全体の PER 14.29 倍、時価総額 2,448 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気の材料(還元・売却)と慎重な材料(目標未達・海外の赤字)が拮抗し、最も厚くした。慎重な側の根拠のほうがやや強いので、楽観への寄せは弱い。
やや悲観 25% 売却は流れ、国内は値上げ疲れ、海外は赤字すれすれ 利益 105 億円 · PER 9.3 倍 · 株価時価総額 1,291 円1,142 億円
壱番屋の売却は条件が合わず流れる。外食は国内の人件費と家賃に押され、利益率は 4% を割る。国内の食品は PB との競争と値上げ疲れで数量が 1 割減り、利益率は 8% 台に下がる。
海外では大豆系の撤退基準に近づく。米国の豆腐は価格競争が続き、キーストーン社の損失も止まらない。海外の利益率は 3% で、全社の利益はほとんど増えない。
配当は DOE 3% の下限で出し続けるが、自社株買いは続かない。純利益は 100 億円ほどで、自己資本は増えず、ROE は 4% を割る。それでも壱番屋の売却が流れた以上、資本の戻しは配当が中心で、手元の現金は少しずつ細る。国内の食品が再び営業利益率 10% に戻る道筋は、この筋書きでは見えない。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年2.5億円×10年×0.75=18.8億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 香辛・調味加工食品:数量 16.3(販売数量(万トン、国内の食品全体の推定合計))× 価格 910(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 1,483 億円・営業利益 126 億円。営業利益率 8.5%
- 外食(壱番屋):数量 62.1(来店客数の換算(百万人、推定))× 価格 1,300(1 人あたりの売上(円、推定。名目。店舗への食材販売やロイヤルティを含む))→ 売上 808 億円・営業利益 31 億円。営業利益率 3.8%
- 海外食品:数量 13.8(販売数量(万トン、海外の食品全体の推定合計))× 価格 650(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 900 億円・営業利益 27 億円。営業利益率 3.0%
- その他食品関連・その他:数量 4.9(取扱量の換算(万トン、推定))× 価格 1,300(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 642 億円・営業利益 16 億円。営業利益率 2.5%
倍率:ROE 3.6% は k 7% 以下で、PER の上限は 13.3 倍。やや悲観は構造的に稼ぐ力が弱い姿なので、上限の約 7 割(9.3 倍)に置いた。余った現金は、自社株買い 260 億円を使った後の 255 億円の 0.75 倍(190 億円)で、PER とは別に足している。
確率:目標下方修正、キーストーンの 2 期連続の減損、家庭用の値上げ失敗と、すでに悪い材料が出そろっている。慎重な見方のほうが強く、25% と厚く置いた。
悲観 12% 構造的に負け、家庭用ブランドも棚を失う 利益 45 億円 · PER 9.3 倍 · 株価時価総額 601 円532 億円
国内の家庭用カレーは、単身化とルウ離れで数量が 2 割減る。値上げはその後ろ盾を失い、物価に追いつけない。利益率は 6% 台に落ちる。壱番屋は買い手がつかず、外食は家賃と人件費の固定費が重く、ほとんど利益が出ない。
海外は、大豆系が撤退基準の 2028 年 3 月期に黒字化できず、事業を縮小する。減損は続き、海外の利益はほぼゼロになる。
全社の営業利益は 60 億円ほどまで細り、純利益は 50 億円を割る。優良な食品会社の面影は薄れ、資本の余裕だけが価値の中心になる。配当は DOE 3% の約束を守るため、利益を超える分は手元の現金と資産の売却で払う。そのぶん純現金は目減りする。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年2.5億円×10年×0.5=12.5億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 香辛・調味加工食品:数量 14.5(販売数量(万トン、国内の食品全体の推定合計))× 価格 854(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 1,237 億円・営業利益 80 億円。営業利益率 6.5%
- 外食(壱番屋):数量 55.6(来店客数の換算(百万人、推定))× 価格 1,250(1 人あたりの売上(円、推定。名目。店舗への食材販売やロイヤルティを含む))→ 売上 695 億円・営業利益 10 億円。営業利益率 1.5%
- 海外食品:数量 12.6(販売数量(万トン、海外の食品全体の推定合計))× 価格 600(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 755 億円・営業利益 4 億円。営業利益率 0.5%
- その他食品関連・その他:数量 4.3(取扱量の換算(万トン、推定))× 価格 1,220(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 527 億円・営業利益 8 億円。営業利益率 1.5%
倍率:ROE 1.7% は k 7% 以下で、PER の上限は 13.3 倍。悲観は稼ぐ力が細り、上限の約 7 割(9.3 倍)に置いた。純利益 45 億円は稼ぐ力が約 600 億円にとどまる姿で、余った現金 130 億円(自社株買い後の 255 億円の 0.5 倍)を別に足した。
確率:10 年の悲観は、国内の家庭用が PB と値上げ疲れで縮み、海外でも大豆事業の撤退と減損が続く構造的な負け。2 期連続の減損という実績と、目標未達の重さを見て 12% とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
香辛・調味加工食品
カレールウ・シチュー・スパイス・レトルト・スナックなど、国内の家庭用と業務用の食品。バーモントカレー、ジャワカレーが看板。
| 数量販売数量(万トン、国内の食品全体の推定合計) | 価格1kg あたりの平均単価(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 18.1 | 700 | 1,268 | 128 |
| 10 年後 中立 | 17.0 | 938 | 1,597 | 168 |
取り方:売上 1,268 億円を、1kg あたり七百円前後の品が年 18 万トン売れていると置いて分けた(推定。ルウは単価が高く、スナックやレトルトは混ざる)。国内の家庭用ルウは単身化と人口減で数量が細り、中立で 10 年 0.94 倍。価格は物価並み(10 年 1.34 倍)。市場の大きさ:国内のカレールウはハウスが首位で、S&B、明治などが続く(シェアは推定で、開示はない)。営業利益 128 億円は 2026/03 期の開示値(5 月の値上げで家庭用が落ちた期)。
外食(壱番屋)
カレーハウス CoCo壱番屋を国内外で運営する壱番屋(ハウスの持分 51%)。店舗は国内約 1,285、海外約 218。
| 数量来店客数の換算(百万人、推定) | 価格1 人あたりの売上(円、推定。名目。店舗への食材販売やロイヤルティを含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 65.4 | 1,000 | 654 | 34 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 1,340 | 0 | 0 |
取り方:外食の売上 654 億円を、1 人あたり千円前後で年 6,500 万人の来店に換算して置いた(推定。実際は食材の卸やロイヤルティの売上も混ざる)。国内は人口減で細り、海外の出店で補う。10 年 1.05 倍(国内 0.93 倍・海外 2 倍超の合成)。価格は物価並み。営業利益 34 億円は開示値。
海外食品
米国の豆腐(ハウスフーズアメリカ)、業務用食品(キーストーン社)、中国・東南アジアのカレーなど。
| 数量販売数量(万トン、海外の食品全体の推定合計) | 価格1kg あたりの平均単価(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.6 | 500 | 629 | 34 |
| 10 年後 中立 | 15.7 | 670 | 1,053 | 63 |
取り方:売上 629 億円を、1kg あたり五百円前後の品が年 12.6 万トン売れていると置いて分けた(推定。豆腐は安く、カレーとスパイスは高い)。市場の大きさ:米国の豆腐市場はハウスフーズアメリカが大手の一角で、植物性たんぱくへの関心が追い風。ただし業務用のキーストーン社はのれんの減損が 2 期続いた。営業利益 34 億円は開示値。
その他食品関連・その他
機能性飲料・サプリのハウスウェルネス、譲渡が決まったデリカシェフ、物流など。
| 数量取扱量の換算(万トン、推定) | 価格1kg あたりの平均単価(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6.2 | 1,000 | 617 | 24 |
| 10 年後 中立 | 5.2 | 1,340 | 702 | 28 |
取り方:その他食品関連 454 億円とその他 163 億円を合わせた 617 億円を、1kg あたり千円の換算で置いた(寄せ集めの区分なので推定)。デリカシェフ(コンビニ向けの惣菜製造)の譲渡で売上は縮む。営業利益は 9.1 億円と 15.3 億円の合計。
リスクと懸念
値上げが通らない
2025 年 5 月の値上げで家庭用は大きく減益になった。物価が年 3% 続く世界では値上げを繰り返すしかないが、頻度が上がるほど消費者は PB へ逃げる。数量の減りが年 1% 深まるだけで、10 年で売上の 1 割が消える。
海外事業の赤字と減損
米国のキーストーン社はのれんの減損が 2 期続いた。大豆系は 2028 年 3 月期の黒字化が撤退の条件だ。黒字化できなければ、事業の縮小と追加の減損が続き、海外の利益は薄いままになる。
売却益に頼った利益
2027 年 3 月期の純利益 170 億円のうち、上場株の売却益が約 72 億円を占める。来期以降はこの上乗せがない。本業の稼ぐ力を見誤ると、割安に見える数字に引っ張られる。
壱番屋の売却が条件に合わない
売却の報道は複数のファンドの関心を伝えるが、開示では確認できない。価格が合わなければ流れ、外食は人件費と家賃に押されて利益が細る。流れた後の経営の説明が問われる。
中計未達の繰り返し
第八次中計は営業利益 270 億円の目標に対し、最終年度の予想は 185 億円だ。目標を外した会社が次の計画でも未達を繰り返すと、構造改革の信頼が揺らぐ。
国内人口の減少
カレールウは単身化と人口減で数量が細る。小容量品や機能性スパイスで補う努力は続くが、市場そのものは膨らまない。数量は 10 年で 1 割弱減ると見ている。
今後の分かれ目
- 壱番屋の売却が高い値段で決まり、資金が自社株買いと配当に回る
- 手取りが 500 億円を超えれば、楽観寄りに確率を移してよい。ただし、国内食品の利益率が 10% を超えなければ、倍率は上がらない。
- 2028 年 3 月期に大豆系が黒字になる
- 海外の利益率が 6% を超える筋書きが現実味を帯びる。中立から楽観側へ確率を動かす。
- 大豆系が黒字化できず、撤退や追加の減損が出る
- 海外の利益は薄いまま残り、やや悲観の筋書きが近づく。悲観の確率を上げて見る。
- 国内の営業利益率が 12% に戻り、値上げ後の数量離れが止まる
- 国内食品の力が回復した証拠になる。楽観の筋書きに近づく。
- 壱番屋の売却が流れ、非公開化の話が消える
- 外食は残るが、人件費と家賃で利益率が下がる。やや悲観の筋書きに寄る。
- 他社から買収提案が出る
- TOB の価格が本質価値を上回る場合に限り、価格が分析に反映される。事業の見立ては変わらない。
見ておくもの
- 家庭用カレールウの数量と値上げ後の戻り
- 海外食品の営業利益と大豆系の黒字化の時期
- 壱番屋の売却の有無と手取り
- 自社株買いの進み方と DOE 3% の運用
- 政策保有株の売却と純現金の使い道
倍率と資本コストの決め方
数量と価格をセグメントごとに積んでから利益を出し、倍率は ROE と資本コストの式から置いた。今の株価や同業の倍率は見ていない。ROE が資本コストに届かない中立では、PER の上限は 1÷k の 13.3 倍で、その約 85% に置いた。純現金は 400 億円を事業に要らない分として分けた(運転資金・壱番屋と海外の現金・リースの約束・退職給付を除いた額の目安)。壱番屋は店舗賃借の固定費が重いので、悲観では家賃が残る前提で利益率を置いた。新リース会計基準(2028 年 3 月期から)で営業利益と純負債の形が変わるが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 保有株の含み益(評価差額金 231 億円・税後)は、事業の利益に入らないので、戻り方 0.5 を掛けた 116 億円を余った現金に足した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.9→16.6 倍・やや楽観 PER 12→14.84 倍・中立 PER 11.3→14.29 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本の 7.5% に quality を足して決める。事業が傾いているわけではないので上乗せは置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 7.00%。