結論
滝沢ハムは、栃木県栃木市に本社を置く1918年創業のハム・ソーセージの会社だ。筆者の結論は、今の値段は割高だということだ。売上は266億円あるのに、ここ12年で営業利益率が1.5%を超えた年は一度もない。
直近の2期は営業赤字だった。販売数量が減り、原料肉・電気代・人件費の上昇を値上げで取り返せなかった。会社は今期の黒字回復と、総額0.4億円の復配を掲げる。だが黒字に戻っても、純利益は1億円前後にとどまる。
稼ぎの源は、ハム・ソーセージ、惣菜・レトルト、食肉の卸の3つだ。どれも大手と同じ量販店の棚で戦い、値段を自分で決める力は弱い。売上は10年で年1%強ずつ縮んできた。
筆者は、10年後の中立でも営業利益率は1%弱と見る。自己資本は33億円あるが、資本コストを大きく下回る稼ぎでは、その帳簿の値打ちも割り引いて見るしかない。大株主に伊藤忠商事がおり、買収の思惑は残る。ただ、それは本質価値の外の話だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、持ち続けたい会社とは言いにくい。オーナーとして見ると、266億円の売上から株主に残る利益が年に1億円前後しかない。設備の更新に毎年3〜4億円が要り、その分を引くと手元に残るお金はさらに細る。
堀が無いことが、いちばんの問題だ。原料が上がれば利益が消え、量が減れば固定費が重くなる。値段を決める力のない会社は、物価が年3%上がる世界で、毎年の値上げ交渉に負け続けるおそれがある。
安全域は、帳簿の自己資本33億円に見えるかもしれない。だが、資本コストに届かない会社の帳簿は床にならない。ためた利益は、その額に満たない値打ちしか生まないからだ。
筆者が見るのは、利益率が2%に届く道筋があるかどうかだ。届くなら話は変わるが、過去の記録はそれを支えていない。今の値段は、この会社の稼ぐ力に比べて高い。
何で稼ぐ会社か
事業は4つの部門に分かれる。食肉加工品、つまりハム・ソーセージ・ベーコンが102億円。惣菜・レトルトなどのその他加工品が52億円。豚・牛・鶏の肉を仕入れて切り分けて卸す食肉が111億円。残りがわずかな飲食店だ。開示上のセグメントは1つで、部門ごとの利益は出ていない。
売り先は量販店・生協・業務用の卸で、1社で売上の1割を超える相手はいない。工場は栃木の泉川と西方にあり、自社の工場で作って関東を中心に流す地場の中堅メーカーである。仙南工場(宮城)とデリカの工場も持ち、惣菜は別の工場で作る。従業員は300人ほどだ。
加工品は、日本ハムや伊藤ハム米久のような全国ブランドの隣に並ぶ。棚の取り合いでは、特売の値段と量販店のプライベートブランドの受託が効く。惣菜は前期も売上を保った唯一の部門で、簡便な食事の需要に乗っている。食肉の卸は量が大きいが、相場で値が決まり、利益は薄い。
利益の構造は単純だ。原料肉の値段が上がると、値上げが通るまで数か月から1年、利益が削られる。量が減ると工場の固定費が重くなる。この2つが、直近の赤字の正体である。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、ほとんど無いと筆者は見る。地場の老舗としての信用と取引の長さはある。だが、量販店の棚では全国ブランドとプライベートブランドに挟まれ、値段を決めるのは買い手の側だ。
規模の不利がはっきりしている。日本ハムの加工事業は売上5,000億円を超え、原料の調達でも物流でも単価が下がる。滝沢ハムは原料肉を相場で買い、電気代や人件費の上昇もそのまま受ける。
資本効率は低い。過去10年の自己資本利益率の中央値は2%で、資本コストの9.5%に遠い。会社は営業利益率2%・ROE10%を目標に掲げるが、過去に一度も届いていない水準である。
よい点もある。惣菜部門は売上を保ち、設備の入れ替えも続けている。財務は純有利子負債26億円と重めだが、取引銀行と大株主の伊藤忠商事がおり、資金繰りがすぐ詰まる形ではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の加工肉は、人口とともにゆっくり縮む市場だ。上位は日本ハム、伊藤ハム米久、プリマハム、丸大食品の4社で、寡占に近い。上位の値上げが市場の値段を引き上げるので、中堅はその後ろについていくしかない。
原料の豚肉・牛肉は輸入が多く、関税と相場で値が動く。値上げは数か月から1年遅れで追いつくのが普通で、その間の利益は削られる。大手は量と調達の力でこの遅れを薄められるが、中堅は利益がまるごと振れる。
追い風もある。単身世帯と共働きの増加で、惣菜・レトルトのような簡便な食品は量を保ちやすい。外食の人手不足は、工場で下ごしらえした食品の需要を押し上げる。滝沢ハムの惣菜部門が前期も売上を保ったのは、この流れに乗っているからだ。
10年先の分かれ目は、中堅メーカーの居場所が残るかだ。量販店のプライベートブランドの受託や、地域の業務用で固定の取引を持てれば、数量の減りは緩む。持てなければ、工場の稼働が落ちて利益が消える。業界の再編で、大手や商社の傘下に入る道もありうる。中堅の加工肉メーカーは、規模の不利を自力で埋めるのが難しいからだ。
資本政策と M&A
還元は、利益が出た年に配当を払う形だ。直近2期は無配で、会社は今期の黒字を前提に、総額0.4億円の期末配当を予定する。自社株買いの実績はほとんど無い。
大株主は創業家の資産管理会社の滝沢興産と、伊藤忠商事である。伊藤忠は2014年に滝沢興産から株を買い、15%ほどを持つ主要株主になった。2026年1月には個人の投資家が7%強の保有を届け出た。
上場株を中心に政策保有株を15億円ほど持つ。時価総額の4分の1にあたるが、売る方針の開示は無い。配当は利益に入っているので、価値に別には足していない。
買収の可能性は小さくない。時価総額は60億円弱と小さく、商社や大手が工場と販路を取りにくる道はある。ただ、それは本質価値の外の話として、筋書きの確率には入れていない。
株主優待は最小の単元で自社製品の詰め合わせを贈る。費用の開示は無く、年0.04億円ほどと推定する。中立は年額の10年分0.4億円を還元に足した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
赤字は一時のものだ。原料肉の値上がりと電気代の上昇に、値上げが追いつかなかっただけである。今期の第1四半期は経常利益が0.95億円の黒字に戻った。値上げが浸透すれば、利益率は1%台に戻る。
惣菜部門は伸びている。簡便な食事の需要は、単身世帯と共働きの増加で10年続く。工場の更新と商品の絞り込みが進めば、会社の目標の営業利益率2%は手の届く距離だ。
それに、伊藤忠商事が主要株主にいる。原料の調達や販路で力を借りられる。いずれ大手や商社が工場と販路を取りにくる可能性もある。
値上げの環境も、以前とは違う。物価が年3%上がる世界では、量販店も毎年の値上げを受け入れやすい。原料高の転嫁の遅れは、値上げの回数が増えるほど短くなる。
地場の中堅には、地場なりの強みもある。関東の量販店や業務用の卸と長く取引し、小回りの利く商品を短い期間で作れる。大手が手を出しにくい小さなロットのプライベートブランドは、中堅の居場所になる。政策保有株や土地を売れば、借入を減らす余地もある。
慎重な見方
利益率が2%に届いた年は、過去12年で一度もない。最良でも1.5%で、多くの年は0%台だ。目標は、記録の裏づけのない数字である。
売上は10年で年1%強ずつ縮んだ。物価が上がった分を差し引けば、数量の減りはもっと大きい。人口が減る国内で、全国ブランドとプライベートブランドに挟まれた中堅の量は戻らない。
純有利子負債は26億円と、自己資本の8割近い。金利が上がれば利払いが増え、薄い利益をさらに削る。赤字が続けば、工場の減損と資本の目減りが待っている。
資本の使い方にも不安が残る。政策保有株を15億円も持ちながら、本業の資本効率は2%前後だ。株主に戻すより、薄い本業に資本を置き続けてきた会社である。
株主に戻る道も細い。創業家と伊藤忠商事が持株の多くを握り、少数の株主には経営を動かす力が無い。赤字が続いても、会社は自分のペースで構造改革を進めるだけだ。資本コストに届かない稼ぎが、10年そのまま続くことになりかねない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方の方が強い。利益率の天井が低いことは、12年の記録がはっきり示している。強気の見方で確かなのは、今期の黒字回復と惣菜部門の底堅さだけだ。値上げが通りやすい環境は追い風だが、大手も同じ追い風を受け、規模の差は縮まらない。政策保有株の売却や大手との提携は上振れの種だが、会社はまだ何も示していない。中立は利益率1%弱の小さな黒字に置き、確率は悲観の側に厚く寄せた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 739 円15 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 208 円4 億円)。 今の値に割り戻すと 415 円9 億円、今との差 −84.7%、 期待の年率 −10.0%(資本コスト 10.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 2,386 円49 億円 | 604 円12 億円 | +10.1% | +1.0% | 149 円3 億円 |
| やや楽観 | 15% | 1,510 円31 億円 | 409 円8 億円 | −29.3% | −3.4% | 288 円6 億円 |
| 中立 | 35% | 779 円16 億円 | 273 円6 億円 | −61.3% | −9.0% | 368 円8 億円 |
| やや悲観 | 27% | 341 円7 億円 | 73 円2 億円 | −84.8% | −17.1% | 112 円2 億円 |
| 悲観 | 18% | 161 円3 億円 | 10 円0 億円 | −93.7% | −24.2% | 31 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 739 円15 億円 | 208 円4 億円 | −65.1% | −10.0% | 948 円19 億円 |
今の株価時価総額 2,715 円56 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 10.0% を下回るほど割高。
楽観 5% 惣菜が育ち、目標の利益率2%に届く 利益 5 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 2,386 円49 億円
10年後、滝沢ハムは惣菜と業務用の簡便食品で居場所を作っている。惣菜の量は1割強伸び、利益率は3%台に乗る。ハム・ソーセージは量が1割近く減るが、商品を絞り込み、値上げが遅れずに通るようになる。全社の営業利益率は会社の目標の2%近くに届く。
伊藤忠商事との取引で原料の調達が安定し、工場の稼働も上がる。自己資本利益率は資本コストにほぼ並ぶ。配当は利益の4割を払い続ける。ただ、値段を決める力が大きく変わるわけではなく、大手並みの会社になるわけでもない。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年0.04億円×10年×1.0)も足した。優待の費用は利益から引き済みだ。
- 食肉加工品(ハム・ソーセージ):数量 9,393(推定出荷量(トン))× 価格 138(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 130 億円・営業利益 3 億円。商品の絞り込み
- 惣菜・その他加工品:数量 7,213(推定出荷量(トン))× 価格 110(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 80 億円・営業利益 3 億円。簡便食品が伸びる
- 食肉(卸)・その他:数量 12,412(推定取扱量(トン))× 価格 117(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 146 億円・営業利益 1 億円。業務用で量を保つ
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.6% が k 10.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.0 倍。全体の PER 10 倍、時価総額 49 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:12年で一度も届いていない利益率2%に届く筋書きで、確率は小さい。
やや楽観 15% 黒字が定着し、利益率1%台半ば 利益 3 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 1,510 円31 億円
10年後、赤字の2期は一時のつまずきだったことになる。値上げが原料の上昇に遅れずに通るようになり、全社の営業利益率は1%台半ばで落ち着く。過去12年の最良の水準を、毎年続けられる形だ。
ハム・ソーセージの量は人口減で1割強減るが、惣菜は少し伸びる。食肉の卸は業務用の取引で量の減りを抑える。配当は利益の4割を払い、自己資本はゆっくり増える。それでも自己資本利益率は資本コストに届かず、ためた利益の値打ちは帳簿を下回る。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年0.04億円×10年×1.0)も足した。優待の費用は利益から引き済みだ。
- 食肉加工品(ハム・ソーセージ):数量 8,985(推定出荷量(トン))× 価格 136(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 122 億円・営業利益 2 億円。値上げが定着
- 惣菜・その他加工品:数量 6,762(推定出荷量(トン))× 価格 109(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 74 億円・営業利益 2 億円。少し伸びる
- 食肉(卸)・その他:数量 11,758(推定取扱量(トン))× 価格 116(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 136 億円・営業利益 1 億円。業務用で下支え
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 10.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.0 倍。全体の PER 10 倍、時価総額 31 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:今期の黒字回復が続き、値上げが定着する道。過去の最良に近い利益率で、確率は低め。
中立 35% 小さな黒字で縮みながら続く地場メーカー 利益 2 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 779 円16 億円
10年後、滝沢ハムは小さな黒字を続ける地場のメーカーのままだ。ハム・ソーセージと食肉の量は人口減とともに15%減り、惣菜は横ばいで踏みとどまる。値段は物価並みに上がり、売上は310億円ほどになる。
営業利益率は1%弱で、過去12年の実績の中ほどだ。原料の上昇と値上げの追いかけっこは続き、良い年と悪い年が交互に来る。借入の金利が上がり、利払いは増える。配当は利益の4割を払い続ける。自己資本利益率は4%前後で、資本コストの半分に届かない。工場と販路を求める大手や商社の傘下に入る道は残るが、この筋書きには含めない。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年0.04億円×10年×1.0)も足した。優待の費用は利益から引き済みだ。
- 食肉加工品(ハム・ソーセージ):数量 8,678(推定出荷量(トン))× 価格 134(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 116 億円・営業利益 1 億円。人口減で量が減る
- 惣菜・その他加工品:数量 6,440(推定出荷量(トン))× 価格 107(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 69 億円・営業利益 1 億円。横ばい
- 食肉(卸)・その他:数量 11,105(推定取扱量(トン))× 価格 114(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 127 億円・営業利益 1 億円。相場で薄い
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.9% が k 10.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.0 倍。全体の PER 10 倍、時価総額 16 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:今期の黒字回復と、過去12年の利益率の実績(0〜1.5%)の中ほどに置いた中心の見通し。
やや悲観 27% 値上げが追いつかず、利益がほぼ消える 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 341 円7 億円
10年後、滝沢ハムは利益がほとんど出ない会社になっている。ハム・ソーセージと食肉の量は2割強減り、工場の稼働が下がって固定費が重くなる。値上げは原料と人件費の上昇に半分ほどしか追いつかない。
営業利益は1億円に届かず、利払いを引くと純利益はほぼゼロだ。配当は数年で再び止まる。自己資本は横ばいのまま、資本コストを大きく下回る稼ぎしか生まない。設備の更新を絞ると、工場の老朽化が次の重しになる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年0.04億円×10年×0.75)も足した。優待の費用は利益から引き済みだ。
- 食肉加工品(ハム・ソーセージ):数量 7,964(推定出荷量(トン))× 価格 130(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 104 億円・営業利益 0 億円。量が2割減る
- 惣菜・その他加工品:数量 5,925(推定出荷量(トン))× 価格 104(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 62 億円・営業利益 1 億円。伸び悩む
- 食肉(卸)・その他:数量 10,191(推定取扱量(トン))× 価格 111(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 113 億円・営業利益 0 億円。収支とんとん
倍率:純利益がほぼゼロで、PERでは測れない。今の自己資本33億円に0.2倍。稼ぐ力(純利益÷k)はほぼゼロで、工場・土地を売れば残る分の一部だけを価値とした。EVでも見た:純有利子負債26億円を足すと営業利益の40倍を超え、利益では価値が立たない。
確率:直近2期の赤字と、売上が10年縮んできた記録から可能性は高い。
悲観 18% 赤字が続き、事業の整理に追い込まれる 利益 −2 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 161 円3 億円
10年後、滝沢ハムは構造的に負けている。量販店の棚をプライベートブランドと大手に奪われ、ハム・ソーセージと食肉の量は3割強減る。値上げは通らず、赤字が続く。
工場の減損で自己資本は削られ、借入の金利上昇が追い打ちをかける。配当は止まり、会社は工場の統合や事業の売却で生き残りを図る。資産を売っても、借入を返した残りは少ない。少数の株主には現金の使い道を決める力がなく、帳簿の自己資本は床にならない。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年0.04億円×10年×0.5)も足した。優待の費用は利益から引き済みだ。
- 食肉加工品(ハム・ソーセージ):数量 6,943(推定出荷量(トン))× 価格 126(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 88 億円・営業利益 −1 億円。棚を失う
- 惣菜・その他加工品:数量 5,281(推定出荷量(トン))× 価格 101(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 53 億円・営業利益 0 億円。量が減る
- 食肉(卸)・その他:数量 8,884(推定取扱量(トン))× 価格 107(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 95 億円・営業利益 −1 億円。赤字
倍率:赤字でPERでは測れない。今の自己資本33億円に0.1倍。借入を返した後に残る資産の一部だけで、少数株主には清算を決められない分を割り引いた。
確率:2期続く赤字・純負債が自己資本の8割・売上の縮小と、弱い材料が重なるので厚めにした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
食肉加工品(ハム・ソーセージ)
ハム・ソーセージ・ベーコンを栃木の工場で作り、量販店・生協に卸す。全国ブランドとPBに挟まれる。
| 数量推定出荷量(トン) | 価格1トンあたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10,210 | 100 | 102 | −1 |
| 10 年後 中立 | 8,678 | 134 | 116 | 1 |
取り方:部門別の売上102.1億円(有報)だけが開示。数量は開示が無く、平均の卸値を1トン100万円と置いて約1万トンと推定した。利益は単一セグメントで開示が無く、全社の営業損失3.8億円を売上と利益率の実感で割り振った推定(本社費も各部門に配って含める)。中立の数量は人口減と過去の売上の縮みから10年0.85倍、価格は物価並み1.34倍。
惣菜・その他加工品
惣菜・レトルト・ハンバーグなどの簡便食品。前期も売上を保った部門。
| 数量推定出荷量(トン) | 価格1トンあたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6,440 | 80 | 52 | 0 |
| 10 年後 中立 | 6,440 | 107 | 69 | 1 |
取り方:部門別の売上51.5億円(有報)。平均単価を1トン80万円と置いて約6,400トンと推定。利益は推定の割り振り(本社費込み)。中立の数量は簡便化の追い風で横ばい(10年1.00倍)、価格は物価並み。
食肉(卸)・その他
豚・牛・鶏の肉を仕入れて切り分け、量販店・業務用に卸す。わずかな飲食店を含む。
| 数量推定取扱量(トン) | 価格1トンあたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 13,065 | 85 | 112 | −2 |
| 10 年後 中立 | 11,105 | 114 | 127 | 1 |
取り方:食肉111.05億円と飲食0.98億円(有報)を合わせた。平均の卸値を1トン85万円と置いて約1.3万トンと推定。利益は推定の割り振り(本社費込み)。中立の数量は10年0.85倍、価格は物価並み。
リスクと懸念
原料肉の値上がりに値上げが追いつかない
原料の豚肉・牛肉は輸入が多く、相場と関税で値が動く。値上げは数か月から1年遅れで追いつくのが普通で、その間の利益は削られる。利益率が1%前後の会社では、この遅れだけで赤字に落ちる。
数量が縮み、工場の固定費が重くなる
売上は10年で年1%強ずつ縮んだ。物価の分を除けば、量の減りはもっと大きい。量が減っても工場の人件費と電気代は減らず、利益率を押し下げる。
借入と金利の上昇
純有利子負債は26億円で、自己資本の8割近い。借り換えのたびに金利が上がれば、利払いは年1億円近く増えうる。薄い利益の多くを利払いが食う形になる。
工場の老朽化と減損
設備投資は年3〜4億円で、減価償却の5.5億円を下回っている。赤字が続けば更新を絞らざるをえず、老朽化が品質と効率を落とす。収益が戻らなければ、工場の減損で自己資本が削られる。
食の安全と疫病
豚熱や鳥インフルエンザで原料の供給が止まれば、調達の費用が跳ね上がる。品質の問題が一度起きれば、量販店との取引そのものを失いかねない。小さな会社ほど、1件の事故の重みが大きい。
今後の分かれ目
- 今期の黒字と総額0.4億円の復配が予定どおり実現したら
- 中立の筋書きの出発点が確かめられる。ただ、利益率が1%を超えない限り、価値の見方は大きく変わらない。
- 営業利益率が2年続けて1.5%を超えたら
- 値上げの定着を認め、やや楽観の側へ確率を移す。
- 再び営業赤字に戻ったら
- 数量の縮みが固定費を上回っていると見て、やや悲観・悲観の確率を厚くする。
- 伊藤忠商事や大手が資本と業務の提携を深めたら
- 調達と販路の改善で利益率の天井が上がりうる。中身を見て楽観側の確率を見直す。
- 工場の統合や不採算の部門の整理を打ち出したら
- 固定費が下がれば中立の利益率を引き上げられる。減損の大きさと、残る事業の量を見て判断する。
見ておくもの
- 部門別の売上(特に惣菜・その他加工品の伸び)
- 営業利益率が1%を超えるか
- 配当の継続(総額0.4億円)
- 純有利子負債と利払いの増減
- 伊藤忠商事・滝沢興産の持株の変化と大量保有の届出
倍率と資本コストの決め方
3部門に分け、数量は推定(実質で人口減と過去の縮みから0.85〜1.0倍)、価格は物価並み1.34倍で積んだ。中立の利益率0.9%は過去12年の最良1.5%以下。償却は年5.5億円(10年で約50億円)を取得した時の値段のまま置き、更新の投資は物価込みで膨らむので、名目の売上の伸びで利益率が上がる分は見込んでいない。倍率はROEがk10%を下回るため上限1÷kの8〜85%、悲観側は利益がほぼ無いので清算の目安に戻り方0.5を掛けた床以下。今のPBR1.7倍や時価総額から逆算していない。自己資本の流れは今期の黒字予想(純利益約1億円)から10年の利益を積んでおり、直近の赤字を起点にする検査の目安より高めになる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9→10 倍・やや楽観 PER 9→10 倍・中立 PER 8.5→10 倍)。
資本コスト 10.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality+2.0%。2期続けて営業赤字だが、今期は黒字の予想で財務の存続に疑いは無い(GC注記なし)ため、上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 10.00%。