結論
ヒガシマルは、クルマエビやタイの養殖に使う配合飼料と、乾麺や皿うどんを作る鹿児島の会社だ。筆者の結論は「割高」で、飼料という堅い稼ぎ頭を持ちながら、麺の不振と重い借入が利益の大半を食っている。
前期は飼料が 9 億円の利益を出した一方、麺は赤字で、工場の減損 19 億円を出して最終赤字になった。借入は 59 億円あり、手元の現金 13 億円を大きく上回る。会社は今期の営業利益が半分に減ると見込む。
過去 12 年の営業利益率は最良でも 5% ほどで、直近 5 年は 0% 前後の年が多い。ROE は 10 年の中央値で 1% に届かない。減損で麺の償却は軽くなり、利益は少し戻るだろう。だが、資本コストの 10% を上回る稼ぎは、どの筋書きでも見込みにくい。
今の値段は自己資本をやや下回るが、その自己資本は利息を払って細く稼ぐ資産だ。少数株主にとっての価値は、帳簿の額よりずっと低いと筆者は考える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、良い事業を 1 つ持つが、会社全体としては持ち続けたい会社ではない。クルマエビの餌は、顧客が簡単に替えない堅い商売だ。もしこの事業だけの会社なら、筆者の評価はずっと高かっただろう。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、純利益から設備の更新を引いた分だ。減損で麺の償却は軽くなったが、工場を回し続けるには更新が要り、物価と工事費の上昇で高くつく。利払いを払った後に残る現金は細い。
安全域は見当たらない。借入が重く、事業が資本コストを大きく下回る会社では、帳簿の自己資本が株主の価値の床にならない。麺の事業を切り離し、借入を減らして飼料に集中する決断が出れば、評価は変わりうる。
筆者が見たいのは、飼料の稼ぎが借入の返済に回り、純負債が目に見えて減っていく数年だ。それが見えるまで、今の値段に安全域は無い。
何で稼ぐ会社か
売上 133 億円のうち、水産事業が 77 億円、食品事業が 56 億円だ。水産事業の柱は、養殖の魚やエビに与える配合飼料である。鹿児島工場でクルマエビ用の餌を作り、タイ、ブリ、ヒラメなどの餌も手がける。子会社のマリンテックは稚魚と栄養剤を作り、奄美の子会社はクルマエビを自ら養殖する。
クルマエビの餌は、水の中で崩れにくく、エビが食べ残しにくい配合が問われる。会社はこの分野で長い実績を持ち、大手の生産者でシェアを広げている。前期の水産事業の利益は 9 億円で、会社全体の稼ぎ頭だ。完全養殖のクロマグロの子会社は、天然のマグロの資源が戻って採算が合わなくなり、2025 年に売った。
食品事業は、そうめんなどの乾麺、即席めん、皿うどんを作る。長崎の島原の素麺の会社を合併した歴史を持ち、動物性の原料を使わない「侍ラーメン」で海外にも売る。ただ、乾麺の国内の需要は細り、原料の小麦も高い。前期は 1 億円の赤字で、工場の設備を 19 億円減損した。従業員は 358 人で、本社の費用も年 4 億円近くかかる。
優良さと弱いところ
優良さは低いと筆者は見る。飼料にはクルマエビの餌の配合という小さな堀、つまり他社がまねしにくい強みがある。養殖の業者は餌を変えて失敗すると 1 年分の稼ぎを失うので、実績のある餌を使い続けやすい。
しかし会社全体では、その強みが利益に残らない。食品は値決め力が弱く、乾麺は大手や地方の老舗との値段の競争になる。原料の魚粉と小麦の値段は海外の相場で決まり、転嫁は遅れがちだ。過去 12 年の営業利益率の最良は 5% ほどで、直近 5 年は 0% 前後が多い。
財務も弱い。借入は 59 億円で、手元の現金を差し引いても 46 億円の純負債がある。自己資本比率は 4 割に届かず、利払いは金利の上昇でこれから増える。資本の配分にも課題がある。完全養殖のクロマグロのように、手がけた新事業が採算に乗らず撤退した例もある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の養殖の数量は、長い目で見て横ばいから少し減る方向だと筆者は見る。漁業の担い手は高齢になり、餌代の上昇に耐えられない小さな業者は辞めていく。一方で、天然の魚が減る中で養殖の役割は大きくなり、高く売れるクルマエビやタイの養殖は残る。
養魚の餌の国内の市場は、日清丸紅飼料などの大手の配合飼料の会社と、魚種に特化した中堅が分け合う。値段を左右するのは、主な原料の魚粉の相場だ。ペルーのアンチョビーの漁獲で魚粉の値段は大きく動き、餌の会社は時間差で転嫁する。海外では、東南アジアのエビとタイの養殖が伸び、輸出の余地はある。
乾麺は、人口減と食の好みの変化で国内の需要が細っている。そうめんは夏の天気にも左右される。即席めんは大手の寡占で、中堅が値段で勝つのは難しい。海外では日本の麺の人気が高いが、規模を出すには時間がかかる。10 年の中立では、餌は数量横ばい・値段は物価並み、麺は数量が少し減る姿を置く。
金利の上昇も業界には逆風だ。設備と在庫を借入で抱える中堅の食品・飼料の会社は、利払いの増加で利益が削られる。再編の受け皿になるのは、財務の厚い大手だろう。
資本政策と M&A
配当は 1 株あたりの額を据え置き、年 0.5 億円ほどだ。前期は最終赤字でも配当を続けた。自社株買いはしていない。自己株を発行済の 2 割弱も持つが、消してはいない。
資本の使い方は守りに追われていると筆者は見る。借入 59 億円の返済と利払いが先に立ち、還元を厚くする余力は乏しい。子会社のクロマグロの養殖を売り、種苗の子会社の株も一部売ったのは、採算の悪い事業を整理する正しい動きだ。ただ、その売却益は前期の減損の穴を埋めるには足りなかった。大株主による買収の話は聞かない。
筆者は、還元より先に借入を減らすことが株主の利益になると考える。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
稼ぎ頭の飼料は本物だ。前期の水産事業は 9 億円の利益を出し、クルマエビの大手の生産者でシェアを広げている。エビの餌は、水の中で崩れにくい配合が問われる専門の品で、大手の配合飼料の会社が簡単に入れる市場ではない。東南アジアのエビとタイの養殖は伸びており、輸出の余地も大きい。
麺の重荷は軽くなった。前期に工場の設備を 19 億円減損したので、これからの償却費は大きく減る。値上げも少しずつ通っており、食品は小さな黒字に戻れる。採算の悪いクロマグロの養殖も売り、事業の整理は進んでいる。
今の値段は自己資本を下回り、飼料の事業の価値だけで今の時価総額を超えうる。会社が麺を手放して飼料に集中すれば、利益率は一気に上がる。福証だけの上場で注目が薄く、見落とされた価値が残っている。
金利の上昇は逆風だが、飼料の稼ぎで借入を返していけば、利払いの重さは年々軽くなる。自己株を消すなどの手を打てば、株主の取り分も増える。
慎重な見方
飼料の稼ぎは、麺と本社の費用と利払いにほとんど食われている。前期の営業利益は 4 億円で、会社は今期それが半分になると見込む。過去 5 年の大半は営業利益がほぼ 0 だった。前期は減損で 7 億円の最終赤字を出した。
借入は 59 億円で、手元の現金の 4 倍を超える。金利が上がれば利払いは確実に増え、営業利益の多くが銀行に渡る。自己資本比率は 4 割に届かず、再び大きな減損や不作の年が来れば、配当どころか財務の立て直しに追われる。
飼料も盤石ではない。原料の魚粉は海外の相場で決まり、転嫁は遅れる。国内の養殖業者は減り、海外の大手の餌も入ってくる。飼料の利益率 12% は良い年の数字で、続く保証はない。資本コストを大きく下回る事業に、自己資本並みの値を付ける理由はない。
福証だけの上場で、株の売り買いも細い。値段の割安さが埋まる仕組みもない。麺を切り離す決断も、今のところ見えない。株主が待つ間に、利払いだけが積み上がる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方の方が筆者には説得力がある。飼料が良い事業なのは確かだが、それは会社の一部にすぎず、借入と麺と本社の費用が稼ぎを食う構造は簡単には変わらない。麺の切り離しや借入の削減といった大きな決断の兆しはまだ無い。確率は中立を中心に、やや悲観にも中立の半分の重みを置いた。飼料の事業の価値は認めるが、それを株主の手に届ける道筋が見えるまで、強気の側へは寄せない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 790 円31 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 147 円6 億円)。 今の値に割り戻すと 412 円16 億円、今との差 −59.2%、 期待の年率 −0.7%(資本コスト 9.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 1,975 円78 億円 | 283 円11 億円 | +123.7% | +8.4% | 226 円9 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,303 円52 億円 | 207 円8 億円 | +49.7% | +4.1% | 302 円12 億円 |
| 中立 | 40% | 721 円29 億円 | 141 円6 億円 | −14.5% | −1.6% | 345 円14 億円 |
| やや悲観 | 20% | 170 円7 億円 | 78 円3 億円 | −75.4% | −13.1% | 50 円2 億円 |
| 悲観 | 10% | 91 円4 億円 | 50 円2 億円 | −86.0% | −17.8% | 14 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 790 円31 億円 | 147 円6 億円 | −7.2% | −0.7% | 937 円37 億円 |
今の株価時価総額 1,009 円40 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 10% エビの餌が海外で伸び、麺も立ち直る 利益 7 億円 · PER 10.6 倍 · 株価時価総額 1,975 円78 億円
クルマエビやタイの養殖で長年磨いた餌の配合が、東南アジアの高級魚とエビの養殖に受け入れられ、飼料の数量は 10 年で 3 割増える。国内でもクルマエビの大手の生産者でシェアを広げ、値上げは原料の魚粉の上昇を転嫁して物価並みに通る。
食品は減損で償却が軽くなり、乾麺と皿うどんの値上げが定着する。海外向けの侍ラーメンも少しずつ育ち、食品は利益率 4% の黒字に戻る。借入は利益で返していき、利払いの重さも和らぐ。それでも ROE は資本コストに届かず、株主にとっては悪くない事業がようやく資本コストに近づく、という程度の姿だ。
- 水産事業(養魚用配合飼料・種苗・クルマエビ養殖):数量 39,000(飼料の出荷量(トン・推定))× 価格 0.00(1 トンあたりの売上(億円・名目、種苗・養殖を含む))→ 売上 135 億円・営業利益 15 億円。39000 トン × 1 トン 34.7 万円、営業利益率 11.0%
- 食品事業(乾麺・即席めん・皿うどん):数量 11,500(麺の出荷量(トン・推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 78 億円・営業利益 3 億円。11500 トン × 1 トン 68.0 万円、営業利益率 4.0%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 10.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.6 倍。全体の PER 10.59 倍、時価総額 74 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外の養殖への飼料の輸出と、減損後の麺の立て直しが同時に実る重なりが要る。確度は高くないので 1 割。
やや楽観 20% 飼料が稼ぎ、麺は赤字を脱する 利益 5 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 1,303 円52 億円
養魚の餌は国内の養殖の数量が横ばいでも、クルマエビの大手でシェアを取り、輸出も少し伸びて数量は 1 割強増える。原料の魚粉が高い年もあるが、配合の工夫と値上げでしのぎ、利益率は 10% 前後を保つ。
食品は減損で償却が軽くなり、値上げも進んで小さな黒字に戻る。本社の費用は物価並みに増え、全社の利益率は 3% 台にとどまる。借入の利払いは金利の上昇で増えるが、利益で少しずつ返していく。配当は今と同じ控えめな水準で、自己資本は利益の分だけ積み上がる。株主から見れば、餌の稼ぎが借入の返済に回り、少しずつ身軽になる 10 年だ。
- 水産事業(養魚用配合飼料・種苗・クルマエビ養殖):数量 34,000(飼料の出荷量(トン・推定))× 価格 0.00(1 トンあたりの売上(億円・名目、種苗・養殖を含む))→ 売上 117 億円・営業利益 12 億円。34000 トン × 1 トン 34.4 万円、営業利益率 10.0%
- 食品事業(乾麺・即席めん・皿うどん):数量 11,000(麺の出荷量(トン・推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 74 億円・営業利益 2 億円。11000 トン × 1 トン 67.5 万円、営業利益率 2.5%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 48 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:飼料の利益は足元で伸びており、麺の減損で償却が軽くなる効果も確かだ。中立よりよい筋書きにも 2 割の重みを置く。
中立 40% 飼料の稼ぎを麺と利払いが削る 利益 3 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 721 円29 億円
国内の養殖の数量は横ばいで、餌の数量も今とほぼ同じだ。値段は魚粉の上昇を転嫁して物価並みに上がり、利益率は 9% と今の 12% から少し下がる。魚粉の高い年と安い年の真ん中をとった水準だ。
食品は減損で償却が軽くなるが、乾麺とそうめんの国内の需要は細り、利益はほぼ出ない。本社の費用は物価並みに増える。借入 59 億円の利払いは金利の上昇で増え、営業利益の半分ほどしか純利益に残らない。ROE は 4% ほどで、資本コストの 10% に遠く及ばない。配当は控えめなまま続き、株主に戻る額は小さい。飼料という良い事業を持ちながら、会社としては細く稼ぎ続ける 10 年になる。
- 水産事業(養魚用配合飼料・種苗・クルマエビ養殖):数量 30,000(飼料の出荷量(トン・推定))× 価格 0.00(1 トンあたりの売上(億円・名目、種苗・養殖を含む))→ 売上 102 億円・営業利益 9 億円。30000 トン × 1 トン 34.1 万円、営業利益率 9.0%
- 食品事業(乾麺・即席めん・皿うどん):数量 10,450(麺の出荷量(トン・推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 70 億円・営業利益 1 億円。10450 トン × 1 トン 67.1 万円、営業利益率 1.0%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.2% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 26 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去 12 年の利益率の上の方に戻る筋書きで、会社の翌期の予想より明るい。それでも中心に置くのは、減損で食品の償却が軽くなるため。
やや悲観 20% 魚粉高と麺の赤字が続く 利益 1 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 170 円7 億円
原料の魚粉が高止まりし、国内の養殖業者も餌代の上昇に耐えられず数を減らす。餌の数量は 1 割減り、利益率は 7% 台に下がる。食品は乾麺の需要の縮みと原料の小麦高で赤字が続く。
全社の営業利益は 1 億円ほどで、2021〜2025 年 3 月期と同じくほぼ 0 の水準だ。利払いを引けば純利益はわずかしか残らない。借入の返済も進まず、配当を続けるのがやっとになる。株主に残る価値は、その細い稼ぎを資本コストで割った額にとどまる。金利の上昇で利払いはさらに増え、借入を減らせないまま 10 年が過ぎる。
- 水産事業(養魚用配合飼料・種苗・クルマエビ養殖):数量 27,000(飼料の出荷量(トン・推定))× 価格 0.00(1 トンあたりの売上(億円・名目、種苗・養殖を含む))→ 売上 89 億円・営業利益 7 億円。27000 トン × 1 トン 33.0 万円、営業利益率 7.5%
- 食品事業(乾麺・即席めん・皿うどん):数量 9,500(麺の出荷量(トン・推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 63 億円・営業利益 −1 億円。9500 トン × 1 トン 66.0 万円、営業利益率 -1.0%
倍率:純利益 0.5 億円は利払いの後のわずかな稼ぎで、価値はその稼ぐ力(純利益÷k)で決まる。PER 10.53 倍で、PBR は 0.1 倍を割る。借入が 59 億円あり、純現金や売れる資産の床は無い。EV(時価総額+純負債)でも営業利益の 40 倍近くになり、借入の返済が先に立つので株主の取り分は細い。
確率:過去 5 年の大半は営業利益がほぼ 0 だった。その姿に戻る筋書きは中立と並ぶほどありうるが、減損の効果を見て 2 割。
悲観 10% 借入を抱えたまま赤字が続く 利益 −3 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 91 円4 億円
海外の大手の飼料会社が国内のエビとタイの餌にも入り込み、餌の数量は 2 割以上減る。食品は乾麺の工場の稼働が落ち、赤字が広がる。全社で営業赤字が続き、借入 59 億円の利払いが重くのしかかる。
初めの数年の配当は子会社株の売却で賄うが、やがて止まる。工場の土地や設備は借入の返済と担保に回り、少数株主に残る分はわずかだ。再建のために増資や事業の売却を迫られる場面もありうる。飼料の配合の腕を持つ人材も流出し、立て直しの芽はさらに細る。株主は、事業の縮みと借入の重さを同時に背負うことになる。配当も長く止まる。
- 水産事業(養魚用配合飼料・種苗・クルマエビ養殖):数量 23,000(飼料の出荷量(トン・推定))× 価格 0.00(1 トンあたりの売上(億円・名目、種苗・養殖を含む))→ 売上 74 億円・営業利益 4 億円。23000 トン × 1 トン 32.0 万円、営業利益率 5.0%
- 食品事業(乾麺・即席めん・皿うどん):数量 8,000(麺の出荷量(トン・推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 52 億円・営業利益 −2 億円。8000 トン × 1 トン 65.0 万円、営業利益率 -4.0%
倍率:赤字なので PBR で置いた。借入 59 億円が現金 13 億円を大きく上回り、純現金の床は無い。土地と設備は返済と担保に回るとみて、今の自己資本に 0.08 倍を掛けた。
確率:2020 年 3 月期や 2026 年 3 月期のように赤字の年は珍しくない。構造的に負ける筋書きに 1 割を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
水産事業(養魚用配合飼料・種苗・クルマエビ養殖)
クルマエビ・タイ・ブリなどの養殖用の配合飼料を作り、稚魚と栄養剤、クルマエビの養殖も手がける。
| 数量飼料の出荷量(トン・推定) | 価格1 トンあたりの売上(億円・名目、種苗・養殖を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 30,000 | 0.00 | 77 | 9 |
| 10 年後 中立 | 30,000 | 0.00 | 102 | 9 |
取り方:数量は開示が無いので推定。エビ用の高い餌とタイ・ブリ用の餌を混ぜた単価を 1 トン 26 万円ほどとみて、水産事業の売上 77.4 億円から年 3 万トンと置いた。種苗と養殖の売上も 1 トンあたりに含めた。利益はセグメント利益 9.18 億円。
食品事業(乾麺・即席めん・皿うどん)
そうめんなどの乾麺、即席めん、皿うどん、海外向けの侍ラーメンを作って売る。
| 数量麺の出荷量(トン・推定) | 価格1 トンあたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11,000 | 0.01 | 56 | −1 |
| 10 年後 中立 | 10,450 | 0.01 | 70 | 1 |
取り方:数量は開示が無いので推定。乾麺と即席めんの出荷の単価を 1 トン 51 万円ほどとみて、食品事業の売上 55.9 億円から年 1.1 万トンと置いた。利益はセグメント損失 1.08 億円(減損の前)。
リスクと懸念
重い借入と金利の上昇
有利子負債は 59 億円で、手元の現金の 4 倍を超える。借り換えのたびに金利が上がり、利払いが営業利益の多くを食う。業績の悪い年には返済と配当の両立が難しくなる。
魚粉と小麦の相場
餌の主な原料の魚粉はペルーの漁獲で値段が大きく動き、麺の原料の小麦も海外の相場で決まる。転嫁は時間差になり、急な値上がりの年は利益が消える。
麺の事業の縮み
乾麺の国内の需要は細り、そうめんは夏の天気にも左右される。前期に 19 億円の減損を出したが、稼働がさらに落ちれば追加の損失もありうる。
国内の養殖業者の減少
養殖の業者は高齢化と餌代の上昇で数を減らしている。クルマエビの病気や赤潮で養殖が止まれば、餌の注文もまとめて減る。
新事業の失敗
完全養殖のクロマグロは天然の資源の回復で採算が合わなくなり、子会社を売った。新しい事業への投資が再び空振りすれば、細い利益がさらに削られる。
今後の分かれ目
- 麺の事業を売るか、他社と統合する
- 飼料に集中した会社になり、利益率と ROE は大きく上がる。やや楽観より上の筋書きに近づく。
- 借入を 30 億円台まで減らす
- 利払いの重さが和らぎ、純利益が 1 億円ほど増える。中立の価値は 1〜2 割上がる。
- 魚粉が高止まりし転嫁が遅れる
- 飼料の利益率が 7% 台に落ち、やや悲観に寄る。
- エビとタイの餌の輸出が育つ
- 国内の縮みを補い、飼料の数量が 1 割以上増える。
- 麺で再び減損や赤字が続く
- 自己資本が細り、増資や事業の売却を迫られる悲観の筋書きに近づく。
見ておくもの
- 水産事業の利益と魚粉の相場
- 食品事業の黒字化の時期
- 有利子負債の残高と利払い
- 飼料の輸出の売上
- 麺の事業の整理や再編の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は ROE と k の関係だけで置いた。中立の事業の ROE は 4% ほどで k 9.5% を大きく下回るので、PER は 1÷k を上限に 7.5 割とした。悲観は赤字なので今の自己資本に掛け、借入が重いので純現金の床は置かなかった。今の PBR や同業の値付けは見ていない。今の株価が倍でも半分でも、価値の計算は変わらない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9→10.59 倍・やや楽観 PER 8.5→10.53 倍・中立 PER 7.5→10.53 倍・やや悲観 PER 10→10.53 倍)。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。