結論
一正蒲鉾は、新潟を本拠にするかまぼこ・練り製品の大手で、きのこ(しめじ・まいたけなど)の栽培も手がける。売上の約9割が水産練製品と惣菜、約1割がきのこだ。
筆者の結論は「割高」だ。理由は、資産の割に稼ぐ力が細いことにある。自己資本は150億円あるが、営業利益は2026年6月期で6億円、ROE は2%ほど。資本コストに届かない会社の価値は、帳簿の自己資本より小さい。
事業の見通しも明るくはない。かまぼこは国内の消費が縮み続ける商品で、すり身の原料は海外の漁獲と相場に左右される。きのこは赤字が続いている。2027年6月期は経常利益が8億円へ回復する計画だが、10年で見ても利益率は4%台止まりと筆者は見る。
小さな会社の食品に共通する悩みは、規模の経済が効きにくいことだ。一正蒲鉾も、原料と賃金の上昇を価格に載せきれない場面が多い。
時価総額は約138億円と小さく、買い手にとっては手が届く規模だが、利益の薄い水産加工という事業の性格は変わらない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、一正蒲鉾は「資産は厚いが、稼ぐ力が薄い会社」だ。帳簿の自己資本は150億円と時価総額に近いが、ROE は2%前後で資本コストに届かない。ためた利益が額面どおりの価値を持たない典型だ。
オーナー利益(成長の投資を引いた株主のもの)は、工場の更新に毎年お金が要るため、純利益よりやや小さい。経営は堅実で、無理な借金も買収もない。ただ、資本効率を高める方針が見えない点が惜しい。
安全域は、悲観の筋書きでも自己資本の2割台が残る点にある。しかし、今の値段はその資産の厚みを高く見積もりすぎていると筆者は見る。
筆者は、安く買って長く持つ価値があるのは、資産が厚い会社でなく、資産を使って資本コストを超える稼ぎを出す会社だと考える。その点で、今は書類上の厚みほどの魅力はない。
加えて、オーナー経営の色合いが薄く、資本の配分に株主からの規律が働きにくい点も気になる。
何で稼ぐ会社か
主力は「サラダフィッシュ」「オホーツク」などの水産練製品と惣菜で、売上は約313億円。スケトウダラなどのすり身を原料に、かまぼこ、かに風味かまぼこ、揚げ物、おせち商品を作り、スーパーや生協、コンビニに納める。スーパーのPB(自社ブランド)向けの受託も一部あるとみられる。
きのこ事業は売上約38億円で、新潟の笹神栽培センターなどで栽培する。ピークの2019年6月期は約51億円だったが、価格競争で縮み、営業赤字が続く。運送・倉庫は子会社が自社物流を担い、外部の売上は小さい。
収益の構造は、原料価格(すり身)と値上げのずれで決まる。2023年6月期は原料高で営業赤字になり、のれんの減損も2026年6月期に出た。従業員の賃金上昇も工場の負担になる。
おせち商品は年末に売上が集中し、季節の波が大きい。工場は新潟と関東にあり、稼働率が利益を左右する。
取引先は全国のスーパーや生協が中心で、量販店の棚の確保が売上を左右する。商品は冷蔵・常温・冷凍に分かれ、物流の温度管理が品質の要になる。研究開発では、すり身の食感を活かした新しい惣菜の開発に力を入れている。
優良さと弱いところ
堀は広くない。かまぼこは国内の需要が成熟し、ブランドで値段を決められる商品は一部に限られる。強みは、サラダフィッシュのような手軽な商品と、全国のスーパーに納める物流網、おせちの商品力だ。ただし、値段はスーパーなど大手の小売との交渉で決まりやすい。
弱みは3つある。ひとつは原料で、すり身の相場に利益が振れる。ふたつめは、きのこの赤字が続く点だ。みっつめは、成長の道筋が見えない点で、売上は10年間、320〜360億円の中で動いている。
財務は悪くない。自己資本比率は48%、営業利益は支払利息の5倍ある。経営は堅実で、配当と優待を続けている。ただし資本の使い方は保守的で、資本効率を高める動きは見えにくい。
経営陣は、堅実に商品を磨く姿勢で知られる。他方、資本効率を示す指標(ROEなど)の目標を掲げて動く姿勢は、他社に比べ弱い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
かまぼこ・練り製品の国内市場は約3,000億円規模とされ、世帯あたりの消費は長く減っている。若い世代はかまぼこを食べず、おせちの需要も縮む。国内の数量は10年で2割前後縮むのが自然だ。それでも、サラダフィッシュのような手軽でたんぱく質を取れる商品や、かに風味かまぼこの海外輸出は伸びる。
原料のすり身は、アラスカのスケトウダラの漁獲枠と、米国・ロシアの供給に左右される。円安と漁獲枠の削減で、原料コストは上がりやすい。
競合は紀文食品、スギヨ、小田原の鈴廣などで、全国規模は紀文食品が最大手だ。スーパーは値上げに慎重で、PB を使った価格競争が続く。
きのこは、ホクトやマイスターなど大手との競争で、価格が安く、利益が出にくい。
海外では日本食ブームで、かに風味かまぼこ(すり身の加工品)の輸出が伸びている。ただし、輸出先の現地メーカーが育てば、価格競争が強まる。国内では人手不足で、惣菜工場の賃金が上がり続けている。
水産練製品の業界は、紀文食品、スギヨ、鈴廣かまぼこ、ヤマサ蒲鉾など、全国と地域のメーカーが併存する。大手が全国の量販店を押さえる一方、地域のメーカーは地元の需要を守る。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、2027年6月期も同じ水準を予想する。配当性向は今期の利益では高く、利益が細ると配当は重くなる。株主優待は100株以上で自社製品の詰め合わせ(保有株数に応じて額が増え、寄付の選択も可)。優待の費用は開示がなく、年1億円に届かないとみて、10年の還元に小さく足した。
資本政策で目立つ動きは少ない。自社株買いは大きくない。保有する土地や有価証券の含み益は、開示から確かめられなかった。
TOBや提携の可能性は否定できない(試算で10年以内に21%)が、小さな会社で、水産加工という利益の薄い事業に大きなプレミアムは付きにくい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
一正蒲鉾は、かまぼこという日本の食文化の一角を押さえており、スーパーの棚を確保している。サラダフィッシュなどの手軽な商品は若い世代にも受け入れられ、輸出も伸びる。値上げの余地も残っている。
2026年6月期の減益は、のれんの減損とすり身高が重なった一時の要因が大きい。2027年6月期は経常利益が51%増の8億円へ戻る計画で、この回復は構造的に続く。きのこも赤字が縮み、物流子会社の効率化が進めば、営業利益率は過去の山の5%台に戻る。
財務も強い。自己資本比率は48%、配当と優待で株主に報いている。
配当は今の水準を保てる範囲に収まり、優待も続く。小さな会社が、すり身の調達と工場の運営で培った技術は、新しい惣菜やたんぱく質食品への展開で活きる。
棚を確保する営業力に加え、冷蔵物流を自社で持つため、量販店から信頼される存在になっている。
10年の長さで見れば、人口が減る日本でも、たんぱく質を手軽に取りたい需要は増える。高たんぱく・低脂質のすり身製品は、健康志向の追い風を受ける。工場の自動化で人件費の上昇も抑えられる。
慎重な見方
売上は10年間320〜360億円で動かず、数量は構造的に縮む。値上げで売上を保っても、原料のすり身と賃金の上昇に追いつかず、営業利益率は2%台に落ちる年が多い。2023年6月期は営業赤字だった。
きのこは赤字が続き、ホクトなど大手との価格競争に勝てない。資本効率は低く、自己資本150億円に対して純利益が数億円では、ROE は資本コストに届かない。
成長の道筋も見えない。M&A の実績は小さく、新しい事業を育てる動きも限られる。配当は純利益の大半を占め、設備更新の余裕を削る。かまぼこ離れが進めば、価値は資産の切り売りに近づく。
さらに、おせちやかまぼこの需要は人口構成の影響を直接受ける。若い世代が食べない商品は、時間が経つほど売上が縮む。
値上げが利益に結びつきにくい点も弱みだ。原料と賃金の上昇は、すぐに費用へ出るのに、値上げは小売の交渉で数か月遅れて通る。その遅れが、毎年の利益を削る。
きのこと運送の両事業が全体の利益を押し下げており、経営が事業の整理に踏み込めていない点は、資本の使い方の弱さを示す。
どちらに重みを置いたか
食文化としての強みは強気の見方が正しいが、資本効率の低さと数量の縮みは慎重な見方が勝る。そこで確率は中立38%、やや悲観26%と悲観14%を厚くし、楽観側は2割強とした。割高の根拠は、帳簿の資産でなく稼ぐ力で価値が決まるという点だ。
一方で、悲観が来ても資産が下支えするので、価値がゼロに近づく筋書きは小さいと見ている。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 414 円76 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 144 円26 億円)。 今の値に割り戻すと 274 円50 億円、今との差 −63.6%、 期待の年率 −2.9%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 911 円167 億円 | 186 円34 億円 | +45.6% | +3.8% | 66 円12 億円 |
| やや楽観 | 16% | 649 円119 億円 | 175 円32 億円 | +9.3% | +0.9% | 132 円24 億円 |
| 中立 | 38% | 455 円83 億円 | 164 円30 億円 | −17.8% | −1.9% | 235 円43 億円 |
| やや悲観 | 26% | 229 円42 億円 | 131 円24 億円 | −52.2% | −7.1% | 94 円17 億円 |
| 悲観 | 14% | 164 円30 億円 | 65 円12 億円 | −69.6% | −11.2% | 32 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 414 円76 億円 | 144 円26 億円 | −25.8% | −2.9% | 558 円102 億円 |
今の株価時価総額 753 円138 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 楽観:惣菜と高付加価値品が伸び、きのこも黒字に戻る 利益 15 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 911 円167 億円
かまぼこの国内需要は減るが、サラダフィッシュなど、手軽でたんぱく質を取れる商品が伸び、惣菜とあわせた売上は物価を上回って増える。値上げが通りやすい商品が増え、水産練製品・惣菜の営業利益率は5%台に乗る。
きのこは新潟の自社栽培で品質を高め、黒字に戻る。物流子会社の効率化も進む。利益率は過去の最高に近づくが、原料のすり身は海外相場に左右され、利益の振れは残る。配当は今の水準を維持し、優待も続く。
自己資本は増えるが、利益の増加で資本効率が改善し、ROEは6%近くまで上がる。
物流子会社は外部の荷主も増やし、運送・倉庫の収益が少しずつ伸びる。
- 水産練製品・惣菜:数量 47,840(年間の販売数量(トン。売上と平均単価からの推定))× 価格 0.01(1トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 403 億円・営業利益 22 億円。水産練製品・惣菜 47,840 トン × 1 トン 84 万円(値上げが物価を上回る)、営業利益率 5.5%
- きのこ:数量 14,960(年間の販売数量(トン。推定))× 価格 0.00(1トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 56 億円・営業利益 2 億円。きのこ 14,960 トン × 1 トン 38 万円、営業利益率 4%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 167 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:練り製品が惣菜や高たんぱく食品として再評価され、値上げも通る筋書き。ただし国内の数量は人口減で縮む構造で、確率は1割に届かない。
やや楽観 16% やや楽観:値上げが定着し、利益率が4%台後半に戻る 利益 10 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 649 円119 億円
2027年6月期は、減損が一巡して経常利益が8億円に回復する見通しだ。この筋書きでは、その回復が10年続く。すり身の相場が落ち着き、値上げがスーパーに受け入れられる。
水産練製品・惣菜の数量は人口減で13%縮むが、価格の上昇がそれを上回る。きのこは営業赤字が縮み、黒字が定着する。配当は小幅に増える。
この筋書きでも資本効率は資本コストに届かず、PERは上限に届かない。
輸出向けのかに風味かまぼこや、新しい惣菜の売上が小さく積み上がる。
工場の自動化投資で人手の不足を補い、賃金の上昇を相殺する。その分、設備投資の償却は増えるが、既存の設備は取得時の値段のまま償却が続くため、利益率への影響は小さい。
- 水産練製品・惣菜:数量 45,240(年間の販売数量(トン。売上と平均単価からの推定))× 価格 0.01(1トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 373 億円・営業利益 18 億円。水産練製品・惣菜 45,240 トン × 1 トン 82 万円、営業利益率 4.7%
- きのこ:数量 13,600(年間の販売数量(トン。推定))× 価格 0.00(1トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 50 億円・営業利益 1 億円。きのこ 13,600 トン × 1 トン 37 万円、営業利益率 2.5%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.4% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 119 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:原料高を値上げで吸収し、利益率が過去の山(5%台)に近づく筋書き。2027年6月期の回復計画が支えになる。
中立 38% 中立:数量は縮み、利益率は4%で落ち着く 利益 7 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 455 円83 億円
水産練製品・惣菜の数量は、人口減とかまぼこ離れで10年に18%ほど縮む。それでも物価並みの値上げ(1.34倍)が通り、売上は微増になる。営業利益率は過去の中央値に近い4%で、すり身の相場が荒れた年は2%台まで落ちる。
きのこは稼ぐ力が弱く、営業利益率は0.5%どまり。きのこ事業を縮小・撤退する選択肢もあるが、ここでは続けると置く。本社費は物価で増える。
配当は今の水準を保つが、利益が細いため総還元は純利益の4割ほどだ。優待は年1億円に届かず、還元に小さく足した。
自己資本は170億円台に増えるが、ROEは4%どまりで、資本コストに届かない。
- 水産練製品・惣菜:数量 42,640(年間の販売数量(トン。売上と平均単価からの推定))× 価格 0.01(1トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 344 億円・営業利益 14 億円。水産練製品・惣菜 42,640 トン × 1 トン 81 万円(物価 1.34 倍)、営業利益率 4%
- きのこ:数量 12,920(年間の販売数量(トン。推定))× 価格 0.00(1トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 47 億円・営業利益 0 億円。きのこ 12,920 トン × 1 トン 36 万円、営業利益率 0.5%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.1% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 83 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去10年の営業利益率の中央値(3〜4%)に戻る普通の筋書き。国内の食べる量は減るが、値上げと惣菜で支える。
やや悲観 26% やや悲観:すり身高と人手不足で利益率が3%に届かない 利益 4 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 229 円42 億円
すり身の主原料のスケトウダラは漁獲枠が減り、輸入のすり身も円安と相場高で調達コストが上がる。値上げは通るが、物価並みには届かない。数量は25%縮み、売上は横ばいに近い。
人手不足による工場の賃金上昇も重い。きのこは赤字が続く。営業利益は5億円台にとどまり、配当は維持するが自己資本の増加は小さい。
余力は小さいが、財務が堅いため、増資や身売りを迫られる状況にはならない。
工場の再編やきのこ事業の縮小で費用を減らすが、削減の効果は物価上昇に消えやすい。
設備の更新は建築費の上昇で膨らみ、償却を超える投資が現金を細らせる。借入が増えれば利払いが3.5%で積み上がる。
- 水産練製品・惣菜:数量 39,000(年間の販売数量(トン。売上と平均単価からの推定))× 価格 0.01(1トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 301 億円・営業利益 11 億円。水産練製品・惣菜 39,000 トン × 1 トン 77 万円、営業利益率 3.5%
- きのこ:数量 11,560(年間の販売数量(トン。推定))× 価格 0.00(1トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 40 億円・営業利益 0 億円。きのこ 11,560 トン × 1 トン 35 万円、営業利益率 -0.5%
倍率:ROE 約2〜3%で k 8.75%を大きく下回る。上限 1÷k=12.1 倍より低く、中立(9 倍)より下げて 8 倍に置いた。
確率:すり身の調達が難しくなり、値上げが追いつかず、国内の数量も25%縮む筋書き。
悲観 14% 悲観:かまぼこ離れとすり身高で赤字に近づく 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 164 円30 億円
かまぼこを食べる世帯が減り、おせち需要も縮む。スーパーのプライベートブランドが棚を取り、値上げが通らない。数量は38%縮む。すり身の原価が上がり、営業利益はほぼゼロ、きのこは赤字だ。
工場の稼働率が下がり、設備の減損が出る。配当は無配に近づき、優待は廃止される。価値は稼ぐ力でなく、土地・設備・在庫と純現金の売却に頼る。
自己資本は減損で減る。売れる資産の価値が価値の下限になるが、清算されない限り株主は現金の使い方を決められない。
工場の統廃合と人員整理で固定費を減らそうとするが、売上の縮みに追いつかない。
- 水産練製品・惣菜:数量 32,240(年間の販売数量(トン。売上と平均単価からの推定))× 価格 0.01(1トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 223 億円・営業利益 1 億円。水産練製品・惣菜 32,240 トン × 1 トン 69 万円、営業利益率 0.5%
- きのこ:数量 9,520(年間の販売数量(トン。推定))× 価格 0.00(1トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 29 億円・営業利益 −1 億円。きのこ 9,520 トン × 1 トン 31 万円、営業利益率 -4%
倍率:稼ぐ力がほぼ無いので、床は今の自己資本 150 億円に掛ける。工場・土地・在庫の簿価の約 3 割台(売って得られる額の見込み)として 0.2 倍。中立の PBR(約 0.4 倍)より低い。
確率:かまぼこの消費が構造的に縮み、すり身高で採算が崩れる筋書き。確率は1割強とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
水産練製品・惣菜
かまぼこ、かに風味かまぼこ、サラダフィッシュ、揚げ物、おせち商品などの製造販売。
| 数量年間の販売数量(トン。売上と平均単価からの推定) | 価格1トンあたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 52,000 | 0.01 | 313 | 9 |
| 10 年後 中立 | 42,640 | 0.01 | 344 | 14 |
取り方:水産練製品・惣菜の売上約313億円を、1トンあたり約60万円の平均売価で割って約5.2万トンと置いた推定。開示された数量ではない。営業利益8.5億円は全社の営業利益6億円から、きのこの赤字と本社費を逆算した。
きのこ
しめじ・まいたけ・えのきなどの栽培と販売(新潟の栽培センター)。
| 数量年間の販売数量(トン。推定) | 価格1トンあたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 13,600 | 0.00 | 38 | −2 |
| 10 年後 中立 | 12,920 | 0.00 | 47 | 0 |
取り方:きのこの売上約38億円を、1トンあたり約28万円の平均売価で割って約1.36万トンと置いた推定。営業損失は決算解説の約2億円。運送・倉庫の外部売上(約4億円)は本社費の調整に含めた。
リスクと懸念
すり身の原料高
原料のスケトウダラは漁獲枠の削減と円安で値上がりしやすい。値上げが追いつかないと営業利益が数億円規模で動く。
国内数量の構造的な縮み
かまぼこの消費は長く減り、おせち需要も縮む。若い世代の購入が少ない点は、10年で数量を2割前後削る。
きのこの赤字
きのこ事業は営業損失が続き、価格競争で大手に勝ちにくい。撤退や減損の判断が先送りされるリスクがある。
賃金と物流費
工場の人手不足による賃金上昇と、配送費の上昇が利益率を削る。大手小売との交渉で、価格転嫁が遅れやすい。
資本効率の低さ
自己資本150億円に対して純利益が数億円と、資本コストに届かない。資本の使い方が変わらなければ、価値は帳簿より小さいままだ。
今後の分かれ目
- 2027年6月期に営業利益が経常利益8億円の計画を達成し、きのこの赤字が縮んだら
- やや楽観の筋書きに確率を寄せてよい。ただし資本効率の低さは変わらない。
- すり身の相場が大きく上がり、値上げが通らなかったら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。営業利益率は2%台へ落ちる。
- きのこ事業の撤退や売却が発表されたら
- 赤字が消えて利益率が上がる。中立の利益率を上げてよい。
- 自社株買いの拡大や、遊休土地の売却による特別還元が発表されたら
- 資本効率が上がる。余った資産の戻り方を見直す材料になる。
- 大手食品会社によるTOBや資本提携が発表されたら
- プレミアムが付く可能性がある。ただし利益の薄い事業なので過大には見ない。
見ておくもの
- 営業利益率(4%への戻り)
- すり身の調達価格
- きのこ事業の営業損益
- 自己資本比率と配当性向
倍率と資本コストの決め方
倍率は ROE が k を下回るため、上限の 1÷k(約12.1倍)の範囲で、成熟した事業の稼ぎは k 並みとして9倍に置いた。今の株価(PER 約42倍・PBR 約0.9倍)や同業の倍率は根拠にしていない。営業利益率は過去10年の中央値(約3.7%)から4%に置き、2021年6月期の5.2%は特別な年として使っていない。新リース会計の影響は小さく、今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→11.43 倍・やや楽観 PER 10.5→11.43 倍・中立 PER 9→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。