結論
井村屋グループは、三重県津市に本社を置く食品メーカーだ。「あずきバー」で知られ、肉まん・あんまん、ようかん、ゆであずきも手がける。2026年3月期は、売上537億円、営業利益32億円と、ともに過去最高だった。
筆者の結論は、今の値段はやや割高、というものだ。事業の質は悪くない。あずきバーは年3億本を超え、他社がまねしにくい商品になった。だが利益率が6.0%と過去最高に達した今、さらに上を見込むのは難しい。2021年3月期までは2%を割る年もあった。
中立は、10年後の売上765億円、営業利益率5.9%。物価の分と、冷菓の1割強の数量増を積んだ。純利益は今より3割強増えるが、物価の上昇とほぼ同じ伸びだ。自己資本の積み上がりも重く、ROEは7%台にとどまる。
強みと弱みは表裏一体だ。強みは、冷菓を軸にした独自商品と、新工場による4億本体制だ。弱みは、売上の3分の1を占める冷菓が、夏の気温に左右されること。冬の肉まんも、暖冬で伸び悩んだ。全社費用が20億円ほどあり、セグメント利益の4割近くを食う点も軽くない。
見るべきは、新工場の償却を値上げと数量で吸収できるか、そして利益率が6%を保てるか、の二点だ。2027年3月期の第1四半期は、営業利益が25%減った。
バリュー投資の観点から
この会社を10年持ち続けたいか、と問えば、答えは「事業は好きだが、値段が足りない」になる。
あずきバーは、他社にまねされにくい商品だ。50年続き、年3億本を超える。ブランドの力で、原価の上昇を価格で吸収してきた。この点は、価値のある資産だと思う。
ただし、利益率は過去最高の6%に達した。2021年3月期までは2%を割る年もあった。今の水準を、当然のものと見るのは危うい。10年後の利益を、物価の分より多く見込むには、新工場による数量の増加と、海外の成長が欠かせない。
経営の資本配分は、堅実だが控えめだ。配当性向は2割で、自己資本は毎年積み上がる。ROEは7%台に落ち着く姿になる。余った資本を、成長投資か還元に回す余地は大きい。ここが改善すれば、評価は変わる。
安全域は、薄い。今の値段は、中立の姿とほぼ釣り合うか、少し上にある。悲観の筋書きでは、半分以下になる。
結論として、堀は一点に偏るが本物で、経営は堅実。ただ値段に余裕がない。「良い会社を適正な値段で買う」型の投資だと、筆者は見ている。利益率が3%台に戻った年に、待つ価値がある。
何で稼ぐ会社か
事業は、冷菓、点心・菓子・食品、調味料の三つに分けて見ると分かりやすい。2026年3月期の売上537億円のうち、冷菓が179億円と3分の1を占める。あずきバーシリーズは年3.35億本と、過去最高を更新した。
点心・デリは92億円で、肉まん・あんまんなどの中華まんと、冷凍・チルドのパックまんが中心だ。菓子は97億円で、ようかんが柱になる。片手で食べられる小型のようかんが、最近よく売れた。食品は91億円で、ゆであずきや煮豆などの加工食品を扱う。
調味料事業は46億円で、利益率は14%と高い。業務用のOEM素材や、中国の粉末調味料が伸びた。海外は、米国でMOCHIアイスを作って売り、マレーシア、中国にも拠点を持つ。海外売上比率は、2026年度に8.8%を目標にする。
持株会社制で、連結子会社は11社。区分別の利益を足すと51億円だが、営業利益は32億円になる。差の約20億円は、全社費用などだ。本社の人件費やITの費用が、利益の4割近くを占める点は、他の食品会社と比べても重い。
季節の波は、はっきりある。冷菓は夏、中華まんは冬に売れる。夏が涼しいか、冬が暖かいかで、その年の数字は変わる。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、あずきバーという一つの商品に集中している。
あずきバーは、硬さと小豆の風味が独特で、ほかのアイスバーに置き換わらない。発売50周年を迎え、リブランディングを行った。年3億本を超える販売は、アイスの売上ランキングでトップ10に入る。価格を上げても需要が崩れにくく、2026年3月期は価格改定と生産性の向上で、原価率の上昇を吸収した。
ただし、強みは一点に偏る。冷菓の売上の大半はあずきバーで、全社の3分の1を占める。夏の気温や、競合の新商品、小豆などの原料の相場で、全体が揺れる。肉まんは、コンビニとの競争がある。
資本効率は、ようやく8〜9%台に上がった。ROEの過去10年の中央値は8.2%で、資本コストの7.5%を少し上回る水準だ。自己資本比率は58%と厚いが、新工場の投資と配当性向の低さ(2割)で、資本が積み上がりやすい。
経営は堅実だ。「価値創造」を掲げた中期経営計画で、2026年度の営業利益33億円を目標にし、実績は32億円と、ほぼ達成した。計画を守る姿勢は評価できる。新しい目標は、これから出る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の冷菓市場は、量が増えない。人口減と少子化は、アイスの消費者を減らす。一方で、猛暑の年は伸びる。近年の暑い夏と、ご褒美需要が、数量を押し上げてきた。物価の上昇と原料高で、ほとんどのアイスは値上げされた。
あずきバーの競争相手は、ガリガリ君を持つ赤城乳業、大手の乳業・菓子メーカー、コンビニのプライベートブランドだ。固いアイスバーという独自性が、価格競争から距離を置く盾になる。
中華まんは、冬の気温に売れ行きが左右される。コンビニのホットスナックと競い、2026年3月期は暖冬のため、売上が前年並みにとどまった。
ようかんは、羊羹の消費が減る市場の中で、片手で食べられる小型の商品が伸びた。和菓子は縮む市場だが、小型・個包装という形で、残る需要を取りに行く。
海外は、日本のアイスや和菓子への関心が高い。米国でMOCHIアイスが定着し、東アジアでは日本の菓子が人気だ。だが、井村屋の海外比率は1割に届かず、本格化はこれからだ。包装フィルムの供給が中東情勢で厳しくなっている点も、足元の不安材料になる。
資本政策と M&A
資本政策は、堅実で、還元は控えめだ。
配当は年1回、3月末のみ。配当性向は2割ほどで、食品会社の中では低い。自社株買いは、2025年3月期に7億円あったが、2026年3月期はほぼない。会社が公表している配当方針の数字は、確かめられなかった。
一方で、株主優待は年2回あり、2026年5月に拡充された。100株以上は五百円相当から七百五十円相当へ、500株以上は千五百円相当から二千円相当へ上がる。株主は1.5万人と多い。年1.1億円と推定し(100株以上を1.1万人、自社商品の原価ベースで1人あたり約千円、上位株主の分を加えた。推定で2倍程度のずれはありうる)、10年で11億円を還元に足した。優待は費用として利益から引き済みで、自己資本の流れには入れていない。
設備投資は、新工場「アイスFACTORY」に約40億円。2026年6月に稼働し、あずきバーの生産能力を1.3倍にした。純有利子負債は14億円で、財務は軽い。
株主には、地元の三十三銀行、百五銀行、三菱UFJ銀行が並ぶ。信託口が9%を占める。kabufuの試算では、10年以内の買収やTOBの確率は23%。時価総額が小さいことが理由だろう。M&Aは目立たず、自力の成長を続ける構えだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
あずきバーは、世界へ広がる。新工場で生産能力は1.3倍になり、4億本体制が整う。国内の売上は伸び、北米、東アジア、ASEANへの輸出も増える。MOCHIアイスは米国で定着し、日本の小豆菓子は海外で珍しい存在として売れる。冷菓の数量は10年で35%増える。
ようかんや、たい焼き、大豆ッ子のような新商品も育つ。片手で食べられる小型のようかんは、高齢者にも若者にも受けた。和菓子の縮む市場で、小型・個包装の形が成功している。
利益率は、まだ上がる余地がある。2026年3月期の6.0%は、原価率の上昇を価格と生産性で吸収した結果だ。DXとコストイノベーションが進めば、さらに上積みできる。新工場の償却は、数量の増加で吸収される。冷菓の利益率は14%、全社の営業利益率は8%近くに届く。
海外売上比率が目標の8.8%を超え、調味料事業も高収益で伸びる。国内の成熟を、海外が補う姿だ。
資本政策も好転する。自己資本が厚く、配当性向が2割と低い分、還元の余地は大きい。引き上げれば、ROEは上がる。優待も拡充された。
慎重な見方
利益率は、すでに過去最高にある。6.0%は、2021年3月期の1.8%、2020年3月期の0.9%と比べて、異常に高い。価格改定と生産性向上で稼いだ分は、一度きりの面が強い。これ以上は上がりにくく、物価の上昇ペースに負けて利益率が下がる可能性が高い。
実際に、2027年3月期の第1四半期は、営業利益が25%減った。原材料、資材、減価償却の増加が理由だ。新工場の償却は、これから重くなる。会社予想の営業利益33億円は、前期から1億円しか増えない。
あずきバーへの依存は大きい。冷菓の売上の大半はあずきバーで、全社の3分の1を占める。冷夏や、競合の新商品、小豆の相場高で、一年で大きく振れる。海外展開はまだ小さく、国内は人口減で縮む。
全社費用が約20億円あることも気になる。セグメント利益の4割近くを食う重さで、売上が落ちても減りにくい固定費の性格を持つ。売上が下がると、営業利益は急に細る。
中東情勢による包装フィルムの供給難は、通期予想に織り込まれていない。ここが悪化すれば、予想は下振れする。
配当性向が2割と低く、自己資本は積み上がる。余った資本が稼ぎを生まなければ、ROEは7%を割る。
どちらに重みを置いたか
争点は、利益率が6%近い高さを保てるか、そして冷菓の数量が新工場で伸びるか、の二点に絞られる。
冷菓の数量増は、新工場という実態がある。この点は強気の見方を取り入れ、冷菓は10年で12%増やした。一方、利益率は過去最高の高みにある。ここは慎重な見方を取り入れ、5.9%と、今の6.0%から少し下に置いた。物価の分は売上に入るが、全社費用も同じだけ増える。
確率は、中立に最も厚く置いた。悲観側は合計34%で、同じ領域の会社と同程度。あずきバーへの依存と天候の振れを考えたが、堀が本物である点も踏まえて、悲観を10%にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,075 円393 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 721 円92 億円)。 今の値に割り戻すと 1,994 円255 億円、今との差 −12.6%、 期待の年率 +5.2%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 6,005 円768 億円 | 977 円125 億円 | +205.8% | +11.8% | 559 円71 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,462 円571 億円 | 883 円113 億円 | +134.1% | +8.9% | 1,176 円150 億円 |
| 中立 | 36% | 3,323 円425 億円 | 781 円100 億円 | +79.8% | +6.0% | 1,477 円189 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,443 円185 億円 | 555 円71 億円 | −12.5% | −1.3% | 479 円61 億円 |
| 悲観 | 10% | 703 円90 億円 | 344 円44 億円 | −54.1% | −7.5% | 105 円13 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,075 円393 億円 | 721 円92 億円 | +66.3% | +5.2% | 3,796 円486 億円 |
今の株価時価総額 2,283 円292 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 新工場と輸出が当たり、利益率が8%近くに 利益 49 億円 · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 6,005 円768 億円
10年後、新工場で4億本体制が整い、冷菓の数量は35%増える。米国のMOCHIアイスが定着し、東アジアやASEANへの輸出も伸びる。海外売上比率は目標の8.8%を超える。調味料事業も、OEMの機能性素材が伸びて、高収益を保つ。売上は890億円。
営業利益率は8%近い。冷菓の利益率は14%に上がり、ようかんや点心も採算がよい。DXとコストイノベーションが進み、全社費用の増加を抑える。営業利益は70億円、純利益は49億円。
還元は10年で125億円。優待の拡充も続く。自己資本は積み上がるが、ROEは10%台に乗る。
- 冷菓(あずきバー等):数量 4.8(出荷本数(億本。あずきバー以外の冷菓も本数に換算した推定))× 価格 67(1 本あたりの平均卸値(円、推定。名目))→ 売上 324 億円・営業利益 45 億円。営業利益率14%。数量1.35倍
- 点心・菓子・食品:数量 3.1(出荷個数(億個相当、推定))× 価格 134(1 個あたりの平均卸値(円、推定。名目))→ 売上 413 億円・営業利益 36 億円。営業利益率8.8%。数量1.1倍
- デイリー・調味料・海外ほか:数量 1.5(出荷個数(億個相当、推定))× 価格 107(1 個あたりの平均卸値(円、推定。名目))→ 売上 158 億円・営業利益 14 億円。営業利益率9%。数量1.5倍
倍率:事業の純利益 49 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.2% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.6 倍。全体の PER 15.65 倍、時価総額 768 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新工場で4億本体制が整い、海外が育つ筋書き。利益率が過去最高を超える高みを保つので、確率は低く置いた。
やや楽観 22% 冷菓が育ち、利益率が7%近くを保つ 利益 40 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 4,462 円571 億円
10年後、冷菓の数量は2割増え、点心・菓子は5%増える。新工場は稼働率を上げ、償却を吸収する。海外は少しずつ育ち、調味料事業は高い利益率を保つ。売上は820億円。
営業利益率は6.8%。今の6.0%を上回る。価格改定の効果が定着し、生産性の改善も積み上がった結果だ。営業利益は56億円、純利益は40億円。
還元は10年で113億円。ROEは8%台後半に上がり、資本コストを超える。M&Aは行わず、自力で伸ばす。
この筋書きでは、2027年3月期の第1四半期に出た営業減益が、新工場の立ち上がり費用による一時的なものだったと確認される。夏の暑さにも恵まれ、あずきバーの出荷は4億本に近づく。ようかんの小型品は定着し、点心・菓子も微増に転じる。会社の中期計画の延長線上にある、無理のない上振れだ。
- 冷菓(あずきバー等):数量 4.4(出荷本数(億本。あずきバー以外の冷菓も本数に換算した推定))× 価格 67(1 本あたりの平均卸値(円、推定。名目))→ 売上 293 億円・営業利益 38 億円。営業利益率13%。数量1.22倍
- 点心・菓子・食品:数量 2.9(出荷個数(億個相当、推定))× 価格 134(1 個あたりの平均卸値(円、推定。名目))→ 売上 394 億円・営業利益 32 億円。営業利益率8.2%。数量1.05倍
- デイリー・調味料・海外ほか:数量 1.3(出荷個数(億個相当、推定))× 価格 107(1 個あたりの平均卸値(円、推定。名目))→ 売上 136 億円・営業利益 12 億円。営業利益率8.5%。数量1.3倍
倍率:事業の純利益 40 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.4 倍。全体の PER 14.42 倍、時価総額 571 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:価格改定と数量増がかみ合い、利益率が6%台後半を保つ筋書き。直近3年は上向きの流れが続いたため、中立より薄く置いた。
中立 36% 冷菓が1割強伸び、利益率は5.9%で落ち着く 利益 32 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 3,323 円425 億円
10年後、売上は765億円。伸びの大半は物価の分で、冷菓の数量は12%増える。点心・菓子・食品は人口減と小型化の反動で横ばい、海外とデイリーは15%増える。
営業利益率は5.9%。今の6.0%より低く、新工場の償却と全社費用の増加を、値上げと生産性で吸収する姿だ。営業利益は45億円、純利益は32億円。
還元は10年で100億円(優待11億円を含む)。配当性向は3割ほどに上がる。自己資本は積み上がり、ROEは7%台。
あずきバーは4億本に届かないが、3.5〜4億本台で安定する。夏が涼しい年と暑い年が交互に来て、数字は年ごとに揺れる。肉まんは暖冬で伸びない年も、寒波で伸びる年もある。新工場の償却は、値上げと生産性の向上でほぼ吸収される。
筆者は、この筋書きが最も現実に近いと見る。
- 冷菓(あずきバー等):数量 4.0(出荷本数(億本。あずきバー以外の冷菓も本数に換算した推定))× 価格 67(1 本あたりの平均卸値(円、推定。名目))→ 売上 269 億円・営業利益 32 億円。営業利益率12%。数量1.12倍、価格は物価並みの1.34倍
- 点心・菓子・食品:数量 2.8(出荷個数(億個相当、推定))× 価格 134(1 個あたりの平均卸値(円、推定。名目))→ 売上 375 億円・営業利益 29 億円。営業利益率7.8%。数量横ばい
- デイリー・調味料・海外ほか:数量 1.1(出荷個数(億個相当、推定))× 価格 107(1 個あたりの平均卸値(円、推定。名目))→ 売上 121 億円・営業利益 9 億円。営業利益率7.8%。数量1.15倍
倍率:事業の純利益 32 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 425 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:冷菓が1割強伸び、利益率は今の6.0%より少し低い5.9%で落ち着く筋書き。直近の実績と、新工場の償却を差し引いた。
やや悲観 24% 冷夏と償却の重さで利益率が3%台に 利益 17 億円 · PER 10.7 倍 · 株価時価総額 1,443 円185 億円
10年後、冷夏や猛暑の反動が重なり、冷菓の数量は横ばいにとどまる。新商品の競合も出て、点心・菓子は1割減る。売上は680億円。
営業利益率は3.5%。新工場の償却が重く、全社費用の約26億円は固定費として残る。値上げが原料高を追いきれない年が増える。2022年3月期の4.0%に近い水準だ。営業利益は24億円、純利益は17億円。
還元は10年で71億円。ROEは4%台に沈む。海外は小さな黒字にとどまる。
会社は、新工場の稼働を前提に4億本の目標を掲げたが、冷夏の年が続いて出荷は3.5億本を超えられない。点心・菓子は人口減で数量が落ち、小型ようかんの伸びでは補えない。売上が伸びないのに、物価で全社費用だけが増える。原料や資材の値上げも、価格に乗せきれない年が増える。
- 冷菓(あずきバー等):数量 3.6(出荷本数(億本。あずきバー以外の冷菓も本数に換算した推定))× 価格 67(1 本あたりの平均卸値(円、推定。名目))→ 売上 240 億円・営業利益 24 億円。営業利益率10%。数量横ばい
- 点心・菓子・食品:数量 2.5(出荷個数(億個相当、推定))× 価格 134(1 個あたりの平均卸値(円、推定。名目))→ 売上 338 億円・営業利益 20 億円。営業利益率5.8%。数量0.9倍
- デイリー・調味料・海外ほか:数量 1.0(出荷個数(億個相当、推定))× 価格 107(1 個あたりの平均卸値(円、推定。名目))→ 売上 105 億円・営業利益 6 億円。営業利益率6%。数量横ばい
倍率:ROE 4.3% が k 7.5% 以下なので上限は 1÷k = 13.3 倍。稼ぐ力(純利益 17 億円)に対して、上限の約 8 割の 10.7 倍を採用した。
確率:冷夏や競合の新商品が続き、償却の重さが利益を削る筋書き。2022年3月期は4.0%、2021年3月期は1.8%だった。単品依存と天候の振れを考えた。
悲観 10% あずきバーが失速し、全社費用が重く残る 利益 5 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 703 円90 億円
10年後、あずきバーが失速し、冷菓の数量は15%減る。冷夏と競合の新商品が続き、ブランドの勢いも落ちる。点心・菓子は2割減る。価格は物価の1.34倍に届かず、1.30倍にとどまる。売上は575億円。
営業利益は7億円。区分の利益は、合計で34億円ほどに縮むが、全社費用の約26億円は残る。新工場の償却が重く、稼働率も低い。純利益は5億円。
還元は10年で44億円。ただし、自己資本の厚さと、工場・設備の資産が、これ以上の下落を止める。
会社は、新工場への投資が裏目に出る。4億本という目標は遠のき、償却が利益を食い続ける。点心・菓子は人口減で縮み、デイリーも伸びない。構造改革として本社費用の圧縮に動くが、効果が出るまでに数年かかる。経営の信頼も傷つく。
- 冷菓(あずきバー等):数量 3.0(出荷本数(億本。あずきバー以外の冷菓も本数に換算した推定))× 価格 65(1 本あたりの平均卸値(円、推定。名目))→ 売上 198 億円・営業利益 17 億円。営業利益率8.5%。数量0.85倍、価格は1.30倍
- 点心・菓子・食品:数量 2.2(出荷個数(億個相当、推定))× 価格 130(1 個あたりの平均卸値(円、推定。名目))→ 売上 291 億円・営業利益 13 億円。営業利益率4.5%。数量0.8倍
- デイリー・調味料・海外ほか:数量 0.8(出荷個数(億個相当、推定))× 価格 104(1 個あたりの平均卸値(円、推定。名目))→ 売上 86 億円・営業利益 4 億円。営業利益率4%。数量0.85倍
倍率:稼ぐ力(純利益 5 億円)では値が付かないので、売れる資産の床で置く。今の自己資本 250 億円の 0.36 倍(約 90 億円)。構造的な負けの筋書きで、簿価の全額は回収できないとみた。
確率:あずきバーが失速し、全社費用が固定費として残る筋書き。2020年3月期の利益率は0.9%だった。10%は単品依存の大きさを考えたが、ブランドが本物である点も踏まえた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
冷菓(あずきバー等)
あずきバーシリーズを中心とするアイスバーなどの冷菓。全社売上の3分の1。
| 数量出荷本数(億本。あずきバー以外の冷菓も本数に換算した推定) | 価格1 本あたりの平均卸値(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.6 | 50 | 179 | 22 |
| 10 年後 中立 | 4.0 | 67 | 269 | 32 |
取り方:冷菓の外部売上 179 億円を、1 本あたり卸値五十円前後で年 3.58 億本と置いて分けた(あずきバーシリーズの出荷 3.35 億本は過去最高。残りは他の冷菓を換算した推定)。区分別の利益は開示が限られ、流通事業の利益率 9.0% より高い 12% と推定した。数量は新工場(2026 年 6 月稼働、生産能力 1.3 倍)で、中立では 10 年 1.12 倍。価格は物価並みの 1.34 倍。市場の大きさ:アイスの売上ランキングでトップ 10 に入る商品で、国内の冷菓は人口減で量が増えにくい。
点心・菓子・食品
肉まん・あんまん・パックまんの点心・デリ、ようかんなどの菓子、ゆであずき・煮豆などの食品。
| 数量出荷個数(億個相当、推定) | 価格1 個あたりの平均卸値(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.8 | 100 | 280 | 22 |
| 10 年後 中立 | 2.8 | 134 | 375 | 29 |
取り方:点心・デリ 91.6 億円、菓子 97.2 億円、食品 90.8 億円(合計 280 億円)を、平均百円前後で年 2.8 億個相当と置いた(推定)。区分別の利益は非開示のため、セグメント利益の合計 51.5 億円から冷菓とその他の推定を引いて 8% とした。数量は国内の人口減を、小型ようかんとパックまんの増加が補い、中立では 10 年横ばい。価格は物価並みの 1.34 倍。
デイリー・調味料・海外ほか
デイリーチルド、スイーツ、調味料事業(OEM素材・粉末調味料)、海外の販売、消去前の調整を含む。
| 数量出荷個数(億個相当、推定) | 価格1 個あたりの平均卸値(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 80 | 78 | 8 |
| 10 年後 中立 | 1.1 | 107 | 121 | 9 |
取り方:全社売上 537.2 億円から冷菓と点心・菓子・食品の合計 459 億円を引いた約 78 億円(デイリーチルド 24.4 億円、スイーツ・VISON 約 6 億円、調味料事業 46 億円、その他からセグメント間の消去を引いた額)を、平均八十円前後で年 0.98 億個相当と置いた(推定)。調味料事業の利益率 14% が高く、区分全体で約 10% と推定した。数量は海外(米国のMOCHIアイス、マレーシア、中国)と調味料の伸びで、中立では 10 年 1.15 倍。価格は物価並みの 1.34 倍。
リスクと懸念
あずきバーへの依存と天候
冷菓の売上の大半はあずきバーで、全社の3分の1を占める。冷夏や競合の新商品、小豆の相場で、一年で大きく振れる。冬の肉まんも暖冬で伸び悩む。天候の振れが、数字をそのまま動かす。
新工場の償却と稼働率
約40億円の新工場は2026年6月に稼働し、償却費が上乗せされる。2027年3月期の第1四半期は、営業利益が25%減った。4億本という目標が遠のけば、償却だけが重い固定費として残る。
利益率の反動
営業利益率は6.0%と過去最高で、2021年3月期までは2%を割る年もあった。価格改定と生産性の向上の効果が一巡すれば、物価の伸びに負けて利益率が下がる恐れがある。全社費用の約20億円も、売上が落ちると重くなる。
中東情勢と包装資材
中東情勢で、包装フィルムの供給が厳しくなっている。会社の通期予想には織り込まれていない。調達難や価格の高騰が続けば、冷菓や点心の出荷に響き、予想が下振れする。
和菓子と中華まんの縮小
ようかんなど和菓子の市場は縮む。中華まんはコンビニの競争が厳しく、2026年3月期は暖冬のため売上が1.5%減った。小型・個包装で需要を取りに行っているが、全体の縮小を食い止められるかは不透明だ。
海外展開の遅れ
海外売上比率は1割に届かない。米国のMOCHIアイスは定着したが、規模は小さい。国内の成熟を補えるほど育たなければ、成長の見通しは物価の分にとどまる。為替の振れも利益を動かす。
今後の分かれ目
- 2027年3月期の営業利益が会社予想の33億円を超える
- 新工場の償却を数量と価格で吸収できている証拠になる。やや楽観側に寄せてよい。
- 営業利益率が2期続けて5%を割る
- 価格改定の効果が剥がれ、コスト高が優勢になった合図。悲観側の確率を上げる。
- あずきバーの出荷本数が4億本の目標に近づく
- 新工場の増産が実現している。冷菓の数量の見通しを上げる。
- 夏が冷夏となり、冷菓の売上が2期続けて落ちる
- 天候による一時的な振れか、構造的な弱さかを見極める。後者なら冷菓の数量を下げる。
- 配当性向や自社株買いが大きく引き上げられる
- 自己資本の積み上がりが止まり、ROEが改善する。倍率の評価を上げる。
- TOB(株式公開買い付け)が発表される
- 時価総額が小さく、自己資本が厚いため、評価されうる。事業の稼ぐ力と比べて価格が見合うかを確かめる。
見ておくもの
- 営業利益率(四半期。新工場の償却の影響)
- あずきバーの出荷本数と夏の気温
- 点心・デリと菓子の売上
- 海外売上比率(目標 8.8%)
- 配当性向と自社株買い
- 包装フィルムなど資材の調達
倍率と資本コストの決め方
3 つの区分を、出荷本数・個数の換算(推定)× 単価で積み、価格は物価並みの 1.34 倍に置いた。営業利益率は、過去最高の 6.0% より低い 5.9% を中立とした。区分別の利益は開示が限られ推定で、全社費用の約 20 億円は物価で増える前提にした。倍率は、自己資本を「今+純利益−還元」で流して出した ROE(7.2%)と k 7.5% から式で決めた。ROE が k をわずかに下回るので上限の 1÷k = 13.3 倍の 9 割に置いた。今の PER や PBR は倍率の根拠にしていない。今の株価と比べたのは最後。新リース会計(2028 年 3 月期から)で数字の形が変わるが、10 年後は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.1→15.65 倍・やや楽観 PER 13.4→14.42 倍・中立 PER 12→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality 0% を足した。事業は傾いておらず上乗せ(extra)は置かない。