結論
理研ビタミンは、わかめ・ドレッシングの家庭用食品と、食品に混ぜる乳化剤などの改良剤を二本柱とする中堅食品メーカーだ。筆者の結論は、強い事業を持つが成長の筋が細く、今の値段はおおむね妥当というものだ。
稼ぎの中心は国内食品で、売上の約 7 割を占める。乾燥カットわかめ、ノンオイルドレッシング、わかめスープでは首位を握る。ただ市場そのものは人口減で縮む。値上げで売上を保っても数量は細る。これが最初の懸念だ。
成長の期待は海外にかかる。会社は 2034 年度に海外売上を今の約 2 倍にする計画だ。だが 2026 年 3 月期の海外は赤字に落ちた。特需が去ったあとの数量減を、まだ取り戻せていない。現実的な到達点は、計画の 9 割弱だろう。
財務は厚い。純現金があり、自己資本比率は 7 割を超える。会社は設備投資と株主還元、M&A に現金と借入を使う方針へ転じた。資本を寝かせないのは良い。ただ、買う側としての実績はこれからだ。
10 年後の中立は、利益が今より 3 割ほど増え、ROE は 7〜8% 台にとどまる。資本コストとほぼ同じで、倍率は 13 倍台にしかならない。成長が実質で細る会社に、高い倍率をつける理由は乏しい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は腰を据えて持ち続けたいほどの事業とは言いにくい。ただ、悪い会社でもない。
事業の本質は食品の裏方の仕事だ。乳化剤で食感を整える。ビタミンを医薬品・健康食品に納める。派手さはないが、顧客の工程に根を張る安定した商売だ。家庭用のわかめとドレッシングは、小さな市場の首位を守る商売で、収益は安定するが伸びない。
株主の手元に残る利益は、営業利益より薄い。設備投資は 3 年で 250 億円と、減価償却を大きく上回る。工場の老朽化対策と海外の増設に、稼いだ利益の相当部分が戻る。
資本配分は評価の分かれ目だ。自己資本比率を下げ、現金を使い、M&A も視野に入れる。ROE が資本コストを下回る会社が資本を寝かせるより、はるかに良い。だが買収で価値を壊す危険は常にある。計画に M&A を織り込んでいない点は健全だ。
安全域は純現金と政策保有株にある。時価総額の 1 割強の純現金があり、保有株の売却でさらに現金が増える。筆者はこの 2 つを下値の支えとして見る。上値は、海外が黒字に定着するかに懸かる。今の値段にその成否は織り込み済みで、大きな安全域は見えない。
何で稼ぐ会社か
事業は 3 つの報告セグメントに分かれる。国内食品、国内化成品その他、海外だ。
国内食品は売上の約 7 割で、中身は 3 本ある。1 つ目は家庭用食品で、「ふえるわかめちゃん」などの乾燥わかめ、「リケンのノンオイル」ドレッシング、わかめスープが主力だ。2 つ目は外食・給食向けの業務用食品。3 つ目が加工食品用原料等で、食品メーカーに納める乳化剤などの改良剤と、医薬品・健康食品向けのビタミンなどだ。この 3 つ目が国内食品の約 4 割を占める最大の柱になっている。
改良剤とは、パンや菓子、惣菜の食感・保存性・加工しやすさを整える添加素材だ。理研は食品用乳化剤で国内トップとされる。ビタミン E は国内シェアが 4 割を超える。顧客は食品メーカーで、一度配合に採用されると簡単には替えられない。
国内化成品その他は小さく、プラスチックフィルムの防曇剤・帯電防止剤などを手がける。食品用改良剤を化成品に応用して始まった事業で、農業用フィルムや食品ラップ向けに強い。
海外はマレーシア、中国、タイなどで改良剤とエキス・調味料を作って売る。売上の約 2 割強で、マレーシアが改良剤の基幹工場だ。米国では改良剤とエキスを半々で売る。2022 年度は地政学的な混乱で特需が出たが、その後は数量が減り、2026 年 3 月期は赤字に沈んだ。
優良さと弱いところ
この会社の堀は、広くはないが深い。家庭用では小さな市場の首位、業務用と改良剤では顧客に寄り添う提案営業が、堀の中身だ。
家庭用のわかめは、乾燥カットわかめで国内首位を保つ。ただ市場自体が小さく、値上げのたびに数量が落ちた。ドレッシングはキユーピーやミツカンなど大手が棚を押さえる市場で、理研はノンオイルという隙間で戦う。2022 年以降は「ザクザクわかめ」や変わり種のドレッシングで新しい需要を作ったが、家庭用の売上目標には届かなかった。会社も営業力の不足を認めている。
改良剤は強い。食品の製造現場の課題を、乳化剤の配合で解決する。顧客の工程に入り込む商売なので、価格だけでは替えられにくい。一方で顧客は値下げとコストダウンを求め、商談が価格交渉に偏った時期もあった。
資本効率は並だ。ROE は 2024 年 3 月期に 11% 台まで上がったが、10 年の中央値は 8% 台にとどまる。自己資本比率が 7 割を超え、資本を持て余してきたことが ROE の低さの一因だ。
経営は変わりつつある。2025 年 6 月に海外畑の望月敦氏が社長に就いた。バランスシートを使う姿勢に転じた点は評価できる。だが海外の収益化は未達で、筆者は成果を見極めたい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の食品市場は人口減で量が細る。ただし理研が属する市場は一枚岩ではない。
家庭用は縮む。乾燥わかめの家庭消費は微減が続き、値上げで量がさらに落ちた。ドレッシングは大手が棚を押さえ、小売の自社ブランドも強い。筆者は家庭用の数量が 10 年で 1 割ほど減ると見る。値上げの力はあるが、それは量の減りを補うだけだ。
外食・給食も、人手不足とセントラルキッチン化で大手に集約される。中食や冷凍弁当は伸びるので、取りこぼさない提案が要る。
改良剤は事情が違う。使う先の加工食品の生産量は人口減で減るが、金額ベースの市場は緩やかに広がると会社は見る。省力化、フードロス対策、原料高への対応で、乳化剤の役割は増える。競合は太陽化学、阪本薬品工業、三菱ケミカルフーズなどだ。大手食品メーカーの値下げ圧力と、競合の価格攻勢は続く。
海外はアジアと北米が舞台だ。中国は景気が低迷し、天津ではコモディティ品の生産をやめて高付加価値品に軸足を移した。短期の減収を受け入れる判断だ。米国は関税の影響が読めない。マレーシアから米国へ輸出する改良剤は、現地の競合との競争で数量が減る恐れがある。エキスは原料を現地で調達しており、影響は小さい。
化成品は国内市場が縮み、環境規制で既存製品も圧迫される。会社は得意分野への絞り込みで耐える構えだ。
総じて、国内は量が減って価格が支え、海外が成長を担う構図だ。だが海外はまだ収益の柱になっていない。
資本政策と M&A
資本政策は大きく変わった。守りから、資本を回す方向だ。
中期経営計画 2027 では、3 年で設備投資 250 億円を計画する。前の計画の約 2.5 倍だ。海外が 120 億円、国内が 130 億円で、主な投入先はマレーシアの改良剤工場になる。配当性向は 30% から 40% 以上へ上げた。自社株買いも機動的に行う。2026 年は 20 億円の枠を使い切り、約 63 万株を買った。
自己資本比率は 7 割から 6〜6.5 割へ下げる意向だ。現金と借入を使って M&A や提携にも動く。ただし今の事業から大きく離れた分野には出ない。計画の数字に M&A は入っていない。
政策保有株は縮減を続ける。2024 年度末に純資産の 19% だった比率を 10% 未満にする目標で、売却で約 90 億円を作る。
大株主の筆頭は取引先持株会で、持株比率は約 11% だ。アクティビストの動きは確認できなかった。10 年以内に買収される確率は、kabufu のモデルで約 2 割と出る。
筆者の見方では、やり方は正しいが実績はこれからだ。買う側としての経験が浅く、借入を使う M&A は高値づかみの危険と隣り合わせになる。
株主優待は、100株以上で1,000〜2千円相当(年2回)、3,000株以上で最大5千円相当の自社商品。会社は優待の費用を開示していないため、株主 約1万人(自社商品の原価と送料)から年2.5億円と推定した。優待は株主が受け取る現物の還元なので、10年の還元に年額×10年を、中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5の係数で足した(費用は販管費として利益から引き済みで、自己資本の流れには入れない)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国内は縮む市場の首位でも、利益は守れる。理研の家庭用は首位のカテゴリーで値上げが通り、改良剤は顧客の工程に入り込んで価格だけでは替えられない。2022 年以降の新商品は評価が高く、営業体制の見直しで家庭用の数量が戻れば、利益率は 10% を超えて定着する。
本命は海外だ。会社は 2034 年度に海外売上を 480 億円へ倍増させる計画を持つ。海外は特需の反動で数量が落ちたが、この間にマレーシアで新工場が動き、天津ではコモディティ品を切って高付加価値品へ軸足を移した。数量が戻れば工場の稼働が上がり、固定費の負担が薄まって利益率も上がる。足元の赤字は、投資の先行と整理の費用にすぎない。
資本配分も変わった。配当性向 40%、自社株買い、政策保有株の売却、設備投資の拡大が同時に動く。純現金が時価総額の 1 割強あり、この余力を成長に回せば、ROE は会社目標の 10% に届く。2034 年度の営業利益 135 億円は今の約 2 倍だ。M&A で改良剤の周辺分野を取り込めれば、さらに上振れる。
この事業構成なら、PER 15 倍台は十分に正当化できる。
慎重な見方
国内の事業は、数量が細る中で値上げに頼っている。家庭用のわかめは、値上げのたびに数量が落ちた。ドレッシングは大手と小売の自社ブランドに挟まれ、ノンオイルの隙間も他社が埋めれば首位は守れない。外食・給食は大手への集約が進み、業務用の相手が減る。
改良剤も安泰ではない。顧客の食品メーカーは値下げを求め、競合の太陽化学、阪本薬品工業、三菱ケミカルフーズも同じ顧客を狙う。人口減で加工食品の生産量が減れば、乳化剤の数量も細る。
海外は計画倒れの歴史を持つ。2022 年度の特需は一過性で、その後は数量が減り、2026 年 3 月期は赤字だった。480 億円という計画は、今の延長では届かない。米国は関税、中国は景気で、どちらも読めない。
会社の計画値は、これまでも届かなかった。家庭用の売上目標は未達で、2027 年 3 月期の営業利益の会社予想は 71 億円と、中計の 100 億円を大きく下回る。
資本を使う方向への転換は両刃だ。借入を使った M&A が高値づかみで終われば、厚い財務が裏目に出る。ROE が資本コストに届く保証もない会社に、高い倍率はつかない。
どちらに重みを置いたか
海外の回復を言う側には、まだ証拠がない。国内の縮みを言う側は、数字で確かめられている。筆者は後者を重く見て、中立に 38% を置き、やや悲観を 25%、悲観を 10% とした。ただ、改良剤の堅さと現金の厚みは本物なので、楽観側にも合わせて 27% を残した。中立でも ROE は 7〜8% で資本コストとほぼ等しい。倍率は 13 倍台にとどまる。成長が実質で細る会社に、高い倍率をつける根拠は見当たらない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,340 円1,244 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,682 円482 億円)。 今の値に割り戻すと 3,277 円940 億円、今との差 +1.3%、 期待の年率 +6.4%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 8,011 円2,297 億円 | 2,378 円682 億円 | +221.1% | +12.4% | 727 円209 億円 |
| やや楽観 | 20% | 6,128 円1,757 億円 | 2,054 円589 億円 | +152.9% | +9.7% | 1,636 円469 億円 |
| 中立 | 38% | 4,633 円1,329 億円 | 1,785 円512 億円 | +98.4% | +7.1% | 2,439 円699 億円 |
| やや悲観 | 25% | 2,809 円805 億円 | 1,380 円396 億円 | +29.5% | +2.6% | 1,047 円300 億円 |
| 悲観 | 10% | 907 円260 億円 | 811 円233 億円 | −46.9% | −6.1% | 172 円49 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,340 円1,244 億円 | 1,682 円482 億円 | +86.1% | +6.4% | 6,022 円1,727 億円 |
今の株価時価総額 3,235 円928 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 楽観:海外が計画を超え、素材会社として見直される 利益 134 億円 · PER 16.6 倍 · 株価時価総額 8,011 円2,297 億円
海外が計画どおりに伸び、国内も数量を保つ。マレーシアの新工場が稼働を上げ、天津で切り替えた高付加価値品が中国と北米で売れる。海外の数量は 10 年で 1.9 倍になり、売上は 580 億円台と、計画の 480 億円を超える。営業利益率も 11% まで上がる。
国内は家庭用の新商品が数量を支え、改良剤は食品メーカーの新商品開発の波に乗る。国内食品の売上は 930 億円まで増え、利益率は 12.5% に達する。化成品も得意分野への絞り込みで数量を保つ。
営業利益は 190 億円近くになり、会社が掲げる 135 億円を大きく上回る。M&A は改良剤の周辺分野で成功し、利益を押し上げる。配当性向 40% 超と自社株買いで自己資本は膨らまず、ROE は 11% 近くになる。理研ビタミンが堅い裏方から、成長する素材会社として見直される 10 年だ。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年2.5億円×10年×1.0=25億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 国内食品:数量 9.5(販売数量(万トン相当、推定))× 価格 980(1kg あたり平均単価(円、推定・名目))→ 売上 929 億円・営業利益 116 億円。国内食品の営業利益率 12.5%
- 国内化成品その他:数量 2.0(販売数量(万トン相当、推定))× 価格 536(1kg あたり平均単価(円、推定・名目))→ 売上 107 億円・営業利益 11 億円。化成品の営業利益率 10%
- 海外:数量 7.2(販売数量(万トン相当、推定))× 価格 804(1kg あたり平均単価(円、推定・名目))→ 売上 583 億円・営業利益 64 億円。海外の営業利益率 11%
倍率:事業の純利益 133 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)93 億円。全体の PER 16.61 倍、時価総額 2,297 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外の倍増計画を超える伸びと、国内の数量維持が同時に要る。2022 年度の特需後に数量が減り、直近は赤字と、計画どおりに進んでこなかった実績があるため、楽観は 7% に抑えた。
やや楽観 20% やや楽観:海外が計画の 8 割強まで戻る 利益 110 億円 · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 6,128 円1,757 億円
海外が計画の 8 割強まで戻り、国内の改良剤が堅調に推移する。海外は数量が 1.65 倍に増えて売上は 500 億円ほどになり、営業利益率は 9% まで上がる。マレーシアの投資が実り、天津の高付加価値品への切り替えも一巡する。米国の関税は一部の数量に響くが、致命傷にはならない。
国内食品は、家庭用の数量減を新商品と値上げが補い、改良剤が全体を支える。売上は 890 億円、利益率は 11.5% だ。
営業利益は 155 億円で、会社目標の 135 億円を上回る。自己資本は 1,200 億円ほどで、ROE は 9% 台に乗る。M&A は小さな案件が成果を出す。会社の計画がほぼ達成され、物価を上回る成長が続く 10 年になる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年2.5億円×10年×1.0=25億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 国内食品:数量 9.3(販売数量(万トン相当、推定))× 価格 959(1kg あたり平均単価(円、推定・名目))→ 売上 891 億円・営業利益 103 億円。国内食品の営業利益率 11.5%
- 国内化成品その他:数量 1.9(販売数量(万トン相当、推定))× 価格 536(1kg あたり平均単価(円、推定・名目))→ 売上 104 億円・営業利益 10 億円。化成品の営業利益率 9.5%
- 海外:数量 6.3(販売数量(万トン相当、推定))× 価格 804(1kg あたり平均単価(円、推定・名目))→ 売上 506 億円・営業利益 46 億円。海外の営業利益率 9%
倍率:事業の純利益 109 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)93 億円。全体の PER 15.31 倍、時価総額 1,757 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:改良剤の堅さと現金の厚みは確かで、海外が計画の 8 割強まで戻る筋は十分ありうる。ただ海外の黒字定着はまだ見えず、国内の縮みも続くので 20% にとどめた。
中立 38% 中立:国内は物価で支え、海外は計画の 9 割弱 利益 90 億円 · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 4,633 円1,329 億円
国内は縮む量を値上げで支え、海外は計画の 9 割弱まで戻る。家庭用の数量は 10 年で 1 割ほど減るが、価格は物価並みに上がり、国内食品の売上は 850 億円弱になる。改良剤が支えて、利益率は 10.5% に届く。
海外は数量が 1.4 倍になり、売上は 430 億円ほどだ。会社の計画の 480 億円には届かない。マレーシアの新工場で稼働が上がり、営業利益率は 7% まで改善する。米国の関税や中国の景気で、毎年は順調に進まない。
営業利益は 125 億円前後で、会社が掲げる 2034 年度の 135 億円を一段下回る。M&A は小粒な案件が中心で、全体の姿を変えない。自己資本は配当性向 40% 超と自社株買いで 1,200 億円弱にとどまり、ROE は 7〜8% だ。成熟した中堅で、成長はほぼ物価並みという 10 年になる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年2.5億円×10年×1.0=25億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 国内食品:数量 9.0(販売数量(万トン相当、推定))× 価格 938(1kg あたり平均単価(円、推定・名目))→ 売上 845 億円・営業利益 89 億円。国内食品の営業利益率 10.5%
- 国内化成品その他:数量 1.9(販売数量(万トン相当、推定))× 価格 536(1kg あたり平均単価(円、推定・名目))→ 売上 102 億円・営業利益 9 億円。化成品の営業利益率 9%
- 海外:数量 5.3(販売数量(万トン相当、推定))× 価格 804(1kg あたり平均単価(円、推定・名目))→ 売上 429 億円・営業利益 30 億円。海外の営業利益率 7%
倍率:事業の純利益 89 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)93 億円。全体の PER 13.93 倍、時価総額 1,329 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内は縮み、海外は計画の 9 割弱という、最も無理のない筋書き。強気と慎重の主張がほぼ釣り合うので、最大の 38% を置いた。
やや悲観 25% やや悲観:国内が早く縮み、海外は伸びない 利益 59 億円 · PER 11.5 倍 · 株価時価総額 2,809 円805 億円
国内の縮みが想定より早く、値上げも通りにくくなる。家庭用の数量は 10 年で 2 割近く減り、小売の自社ブランドが棚を取る。業務用は外食の集約で相手が減り、改良剤は顧客の値下げ要求で価格が物価に追いつかない。国内食品の売上は 760 億円どまりで、利益率は 9% に下がる。
海外は米国の関税と中国の低迷が響き、数量は 1.1 倍にとどまる。売上は 315 億円、営業利益率は 3% で、投資に見合う利益は出ない。マレーシアの増設が重荷になる。
営業利益は 80 億円強で、今とほぼ同じ水準だ。物価で上がるはずの利益が、10 年かけて実質では目減りする。自己資本は 1,140 億円、ROE は 5% で資本コストを下回る。M&A に動くが成果は薄い。配当は維持するが、増やす余地はない。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年2.5億円×10年×0.8=18.8億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 国内食品:数量 8.3(販売数量(万トン相当、推定))× 価格 910(1kg あたり平均単価(円、推定・名目))→ 売上 759 億円・営業利益 68 億円。国内食品の営業利益率 9%
- 国内化成品その他:数量 1.7(販売数量(万トン相当、推定))× 価格 500(1kg あたり平均単価(円、推定・名目))→ 売上 85 億円・営業利益 6 億円。化成品の営業利益率 7%
- 海外:数量 4.2(販売数量(万トン相当、推定))× 価格 750(1kg あたり平均単価(円、推定・名目))→ 売上 315 億円・営業利益 9 億円。海外の営業利益率 3%
倍率:ROE 5.2% が k 7.5% 以下なので PER の上限は 1÷k の 13.3 倍(ためた利益は額面未満)。その 86% の 11.5 倍を採用。稼ぐ力は純利益 60 億円弱で、国内の縮みが続く姿。余った現金は 0.75 倍で足した。
確率:会社の計画が過去に届かなかったこと、国内の数量が細ること、米国の関税と中国の低迷を踏まえ、下振れ側の確率を上より厚い 25% にした。
悲観 10% 悲観:国内が崩れ、買収も外れて優良さを失う 利益 22 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 907 円260 億円
構造的に負ける。家庭用は大手と自社ブランドに押されて、首位のカテゴリーでも数量が 25% 減り、価格も物価に追いつかない。業務用は大手集約で顧客を失い、改良剤は値下げ要求と競合の攻勢で利益率が 6% に落ちる。国内食品の売上は 570 億円、営業利益は 34 億円になる。化成品は国内市場の縮小と環境規制で、利益がほぼ消える。
海外は米国の関税と中国の低迷で数量が戻らず、赤字が続く。さらに、借入を使って買った事業が不振で、約 100 億円を減損する。
営業利益は 28 億円、純利益は 20 億円強。配当は減らし、10 年の還元は 220 億円にとどまる。事業はもう優良とは言えない。稼ぐ力の 10 倍ほどの値段がつくのがやっとで、厚かった純現金と政策保有株が値段を支える最後の砦になる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年2.5億円×10年×0.5=12.5億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 国内食品:数量 7.1(販売数量(万トン相当、推定))× 価格 805(1kg あたり平均単価(円、推定・名目))→ 売上 572 億円・営業利益 34 億円。国内食品の営業利益率 6%
- 国内化成品その他:数量 1.4(販売数量(万トン相当、推定))× 価格 440(1kg あたり平均単価(円、推定・名目))→ 売上 62 億円・営業利益 1 億円。化成品の営業利益率 2%
- 海外:数量 3.4(販売数量(万トン相当、推定))× 価格 660(1kg あたり平均単価(円、推定・名目))→ 売上 227 億円・営業利益 −5 億円。海外の営業利益率 -2%
倍率:ROE 2.4% が k 7.5% 以下なので PER の上限は 1÷k の 13.3 倍(ためた利益は額面未満)。その 75% の 10.0 倍を採用。純利益 20 億円強で、稼ぐ力を超える倍率はつけない。余った現金は 0.5 倍で足し、床の資産と大きく変わらない。
確率:家庭用の縮小、改良剤の値下げ、海外の赤字継続と借入を使った M&A の失敗が重なる筋書き。財務が厚く、全部が同時に崩れる可能性は高くないが、構造的な縮みの方向なので 10% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内食品
家庭用(ドレッシング・わかめ・スープ)、業務用食品、加工食品用原料(乳化剤などの改良剤・ビタミン)の 3 本。売上の約 7 割。
| 数量販売数量(万トン相当、推定) | 価格1kg あたり平均単価(円、推定・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 9.5 | 700 | 664 | 64 |
| 10 年後 中立 | 9.0 | 938 | 845 | 89 |
取り方:国内食品の売上 663.6 億円を、1kg あたり七百円前後 の品が年 9.5 万トン売れていると置いた推定。わかめ・ドレッシングは高め、改良剤は低めの混ぜ合わせ。数量は家庭用の縮みと改良剤の堅さが相殺して中立 10 年で 0.95 倍。価格は物価並みの 1.34 倍。市場の大きさは、食品用乳化剤(国内で太陽化学・阪本薬品などと競う)と家庭用のノンオイルドレッシング・乾燥わかめの小さなカテゴリーの集まりで、理研のシェアはカテゴリーごとに違う(推定)。
国内化成品その他
プラスチック用の防曇剤・帯電防止剤・滑剤などの改良剤と飼料などのその他。小規模。
| 数量販売数量(万トン相当、推定) | 価格1kg あたり平均単価(円、推定・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.0 | 400 | 80 | 8 |
| 10 年後 中立 | 1.9 | 536 | 102 | 9 |
取り方:売上 80 億円(2025 年 3 月期 79 億円から横ばいと置く。セグメント間の取引を含み、全社の売上とは合計が合わない)を、1kg あたり四百円前後 の品が年 2 万トンと置いた推定。国内の化成品市場は縮小傾向で、数量は中立 10 年で 0.95 倍。価格は物価並み。
海外
マレーシア・中国・タイなどで食品用・化成品用の改良剤とエキス・調味料を作り売る。売上の約 2 割強。
| 数量販売数量(万トン相当、推定) | 価格1kg あたり平均単価(円、推定・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.8 | 600 | 229 | −4 |
| 10 年後 中立 | 5.3 | 804 | 429 | 30 |
取り方:海外売上 228.9 億円を、1kg あたり六百円前後 の品が年 3.8 万トン売れていると置いた推定。2022 年度の特需のあと数量が減り、2026 年 3 月期は赤字だった。会社は 2034 年度に海外売上を約 2 倍の 480 億円にする計画だが、中立は計画の 9 割弱の 430 億円(数量 1.4 倍・価格 1.34 倍)。
リスクと懸念
国内の数量減が値上げでは追いつかない
家庭用のわかめは値上げのたびに数量が落ち、ドレッシングは大手と小売の自社ブランドに挟まれる。外食・給食も大手集約で相手が減る。数量の縮みが想定を超えれば、国内食品の利益が物価に負ける。
海外の収益化が遅れる
海外は 2022 年度の特需のあと数量が減り、2026 年 3 月期は赤字だった。会社は 2034 年度に海外売上を約 2 倍にする計画だが、黒字の定着すら確かめられていない。計画倒れが続けば、成長の柱が失われる。
米国の関税と中国の景気
米国向けの改良剤はマレーシアから輸出しており、関税で現地の競合に対して不利になる恐れがある。会社の計画には関税の影響が織り込まれていない。中国は景気の低迷が続き、天津の高付加価値品への切り替えも時間がかかる。
借入を使う M&A の失敗
会社は自己資本比率を 6〜6.5 割へ下げ、現金と借入で M&A や提携に動く方針だ。買う側の実績は浅い。高値で買って減損となれば、純現金という強みが一転して重荷になる。
改良剤の値下げ圧力と競合
改良剤は顧客の食品メーカーからコストダウンを求められ、商談が価格交渉に偏った時期があった。太陽化学や阪本薬品工業、三菱ケミカルフーズも同じ顧客を狙う。堀が思ったほど深くなければ、利益率が下がる。
工場の老朽化と人手不足
会社自身が工場の老朽化と、工場の人員確保の難しさを課題に挙げている。省人化の設備投資は計画に入っているが、投資が償却の増加として利益を圧迫し、効果の出る前に費用だけが先行する危険がある。
今後の分かれ目
- 海外の営業利益が 2 年続けて黒字になり、数量も増える
- マレーシアの新工場の稼働が上がり、固定費が薄まる。楽観側の筋書きに近づき、本質価値は今の値段を上回る方向へ動く。
- 家庭用の売上が会社目標(2027 年度 147 億円)に届かない
- 国内の縮みが値上げで補えていないことになる。やや悲観の筋書きの確率を上げ、国内食品の利益率の前提を下げる。
- 借入を使った 100 億円規模以上の M&A を発表する
- 改良剤の周辺で相乗効果が見込める案件なら歓迎できる。事業から離れた案件や高値の買収なら、悲観の確率を引き上げる。
- 米国の関税でマレーシアからの改良剤の輸出が大きく減る
- 海外の数量の前提を下げ、会社計画の 480 億円は遠のく。北米の拠点を現地生産に切り替える手が打たれるかを見る。
- 政策保有株の売却が進み、自社株買いが追加される
- 資本の使い方が改善し、ROE が資本コストを上回る時期が早まる。純現金は時価総額の下値を支える。
見ておくもの
- 海外事業の営業損益(半期ごと)と数量
- 家庭用食品の売上と会社目標(2027 年度 147 億円)の差
- 改良剤・加工食品用原料等の売上の伸び(2027 年度目標 321 億円)
- 設備投資の進み方と減価償却費の増え方
- 政策保有株の純資産比(目標 10% 未満)と自社株買いの追加
- M&A の発表と借入の水準(自己資本比率 60〜65% の目安)
倍率と資本コストの決め方
セグメントごとに数量と価格を積み、10 年後の純利益に正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) を掛けて時価総額を出した。k は基本 7.5% に quality 0 を足した 7.5%。今の株価は倍率の根拠に使わず、最後の比較にだけ使った。ROE が資本コストとほぼ等しいため、中立の倍率は式の上限ぎりぎりの 13 倍台に収まり、今の値段に寄せていない。純現金は 60 億円を余った現金として分けて足した。 政策保有株の含み益(評価差額金 66 億円・税後)は、戻り方 0.5 を掛けた 33 億円を余った現金に足した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.5→16.61 倍・やや楽観 PER 14.2→15.31 倍・中立 PER 13.4→13.93 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality 0 を足した。事業が傾いているわけではないので上乗せはない。