結論
福留ハムは、広島を地盤にハム・ソーセージや惣菜を作り、牛や豚の肉を卸す会社だ。筆者の結論は、今の値段は割高だというものだ。売上は238億円あるが、営業損益は8期続けて赤字で、直近は8億円の赤字だった。
2026年3月期は3億円の純利益を出した。だが中身は、土地と有価証券の売却益、役員の退職慰労金の免除益で、本業の稼ぎではない。会社自身が、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象があると有報に書いている。ただし、重要な不確実性は無いとしている。
借入は59億円あり、純有利子負債は自己資本の1.5倍だ。金利が上がれば、薄い利益を利払いが食う。筆者は、10年後の中立でも営業利益率は1%に届かず、利払いを引くと利益はほとんど残らないと見る。
今の値段は、黒字化と資産の売却への期待を映している。だが、資本コストに遠く届かない稼ぎと重い借入を考えると、少数株主に残る価値は小さい。再編の期待は本質価値の外の話だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「わかりやすいが、稼げない」事業だ。ハムやソーセージは10年後も食べられているだろう。だが、地方の中堅が全国のブランドと量販店のプライベートブランドに挟まれ、値段を決められない構図は変わらない。
経営は経営陣を刷新し、資産を売り、立て直しを急いでいる。その姿勢は評価したい。だが、8期続いた営業赤字を、資産の売却益で埋めてきた事実は重い。売った資産は戻らず、借入はまだ自己資本の1.5倍ある。
筆者がいちばん気にしているのは、借入の重さだ。金利が上がる世界では、借入の多い会社ほど利払いで苦しむ。営業黒字に戻っても、その多くが銀行への利払いに消える。株主に残る利益は、ほとんどない。
安全域の目で見ると、自己資本25億円は床にならない。資本コストに遠く届かない稼ぎでは、帳簿の値打ちは大きく割り引くしかない。オーナーとして長く持ちたい事業とは、とても言えない。
何で稼ぐ会社か
事業は2つに分かれる。加工食品が103億円で、ハム、プレスハム、ソーセージ、惣菜を作って量販店や業務用の卸に売る。食肉が134億円で、牛・豚の肉を仕入れて切り分けて卸す。食肉のほうが売上は大きいが、相場で値が決まり、利益は薄い。
地盤は広島を中心とする中国・四国・九州だ。大株主に四国と広島のスーパーのフジや、広島銀行、伊予銀行が並ぶことからも、地元の量販店と金融機関に支えられた会社だとわかる。子会社には、九州で牛の枝肉を集めて出荷する佐賀県枝肉出荷がある。
利益の構造は単純だ。原料の豚肉・牛肉の多くは輸入で、相場と為替で値が動く。値上げが通るまでの数か月から1年、利益は削られる。量が減れば、工場の固定費が重くなる。この2つが、8期続く赤字の正体である。
直近の期は、加工食品の売上がわずかに増え、食肉が7%減った。会社は経営体制を刷新し、2026年から3年で立て直すとしている。旧小倉工場の土地と建物の売却も決めた。譲渡益は約0.65億円の見込みだ。工場を集め、使わない資産を現金に換えて借入を返すのが、立て直しの中身である。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、ほとんど無いと筆者は見る。地元の量販店との長い取引と、地域での名前は確かにある。だが、量販店の棚では、日本ハムや伊藤ハム米久のような全国のブランドと、量販店自身のプライベートブランドに挟まれる。値段を決めるのは買い手の側だ。
規模の不利も大きい。大手の加工食品の事業は売上が数千億円あり、原料の調達でも物流でも単価が下がる。福留ハムは原料を相場で買い、電気代や人件費の上昇もそのまま受ける。
資本の効率は極めて低い。過去10年の自己資本利益率の中央値はマイナス5%台だ。赤字が続いて自己資本は60億円から25億円まで減り、借入が自己資本を大きく上回る形になった。
良い点を挙げるなら、経営が手を打ち始めたことだ。経営陣を刷新し、土地と有価証券を売り、役員は退職慰労金を返上した。だが、それは傷を小さくする手であって、稼ぐ力を高める手ではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ハム・ソーセージの国内の市場は、人口減で量が緩やかに縮んでいる。上位の日本ハム、伊藤ハム米久、プリマハム、丸大食品の4社が棚の大半を押さえ、残りを地方の中堅とプライベートブランドが分け合う。量販店はプライベートブランドを増やし、中堅の取り分は細る一方だ。
原料の調達も重い。豚肉・牛肉の多くは米国やカナダ、欧州から輸入し、相場と為替、関税で値が動く。豚熱や鳥インフルエンザのような疫病が起きれば、供給が止まり値が跳ねる。2026年は値上げが広く通った一方、値上げの回数が増えるほど、客は安いプライベートブランドに流れる。
追い風もある。単身世帯と共働きの増加で、惣菜や簡便な食品の需要は伸びる。物価が年3%上がる世界では、量販店も毎年の値上げを受け入れやすい。ただ、大手も同じ追い風を受け、規模の差は縮まらない。
10年の中立では、加工肉の業界の量は1割強減り、値段は物価並みに上がると置く。地方の中堅にとっては、工場を集めて固定費を下げられるかと、大手や商社の傘下に入るかが分かれ目になる。同じ地方の中堅の滝沢ハムも、2期の赤字に苦しんでいる。
資本政策と M&A
配当は2025年3月期から出しておらず、2027年3月期も無配の予想だ。自社株買いもしていない。赤字の続く会社として当然の判断で、今は借入の返済と立て直しが先になる。
資本の政策は、資産を売って借入を減らす形だ。2026年3月期に固定資産と投資有価証券を売って9億円強の売却益を出し、2026年9月には旧小倉工場の土地と建物の売却も決めた。売れる資産には限りがあり、いつまでも続けられる手ではない。
筆頭株主は創業家の福留興産で22.5%を持ち、取引先の持株会の福栄会が10%弱で続く。大手のハム会社や商社が工場と販路を取りにくる再編の道は残るが、会社は何も示していない。赤字が続けば、増資で今の株主の取り分が薄まる恐れもある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
最悪期は過ぎた。会社は2027年3月期の営業黒字を見込み、経営陣を刷新して3年での立て直しを掲げる。役員が退職慰労金を返上し、使わない土地や有価証券を売るなど、痛みを伴う手を打っている。本気の立て直しだ。
赤字の主因は、原料高と電気代の上昇に値上げが追いつかなかったことだ。物価が年3%上がる世界では、量販店も毎年の値上げを受け入れやすい。値上げの遅れが縮まれば、利益率は1%台に戻る。
地元の量販店や金融機関との結びつきは強い。大株主にフジや地方銀行が並び、資金繰りがすぐに詰まる形ではない。惣菜や簡便な食品の需要は伸び、工場の稼働を上げる余地もある。
売上238億円の会社が、時価総額17億円で売られている。大手のハム会社や商社が、工場と販路を取りにくる再編の可能性もある。その時には、今の値段は安く見えるはずだ。
土地の含み益も見逃せない。古い工場の土地は帳簿より高く売れることが多く、旧小倉工場の売却もその一例だ。
慎重な見方
営業赤字は8期続き、営業キャッシュフローも4期続けてマイナスだ。会社自身が、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象があると書いている。過去12年で営業利益率が2%を超えた年はなく、黒字の年もほとんど1%前後だった。
黒字に見えた2026年3月期も、中身は資産の売却益と退職慰労金の免除益だ。本業は8億円の赤字だった。売れる資産には限りがあり、同じ手は何度も使えない。
借入は59億円あり、自己資本25億円の倍を超える。金利が上がれば利払いは年1億円以上増え、営業黒字に戻っても利益はほとんど残らない。赤字が続けば、増資で今の株主の取り分が薄まる。
人口が減る国内で、全国のブランドとプライベートブランドに挟まれた地方の中堅の量は戻らない。再編の可能性は本質価値の外の話で、それを当てにして値段を払うべきではない。
経営の刷新も、まだ数字に表れていない。今期の第1四半期の結果が出るまで、立て直しは計画の上の話にとどまる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方の方が強い。8期続く赤字と重い借入は、記録がはっきり示している。強気の見方で確かなのは、経営の刷新と資産の売却という手を打ったことだけで、稼ぐ力が戻った証拠はまだない。金利の上昇は、借入の多いこの会社に特に重い。中立は営業黒字に戻るが利払いでほとんど残らない形に置き、確率は悲観の側に大きく寄せた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 148 円5 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 4 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 57 円2 億円、今との差 −88.6%、 期待の年率 −11.2%(資本コスト 10.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 4% | 924 円31 億円 | 60 円2 億円 | +96.3% | +7.0% | 39 円1 億円 |
| やや楽観 | 13% | 399 円13 億円 | 15 円1 億円 | −17.4% | −1.9% | 54 円2 億円 |
| 中立 | 33% | 114 円4 億円 | 0 円0 億円 | −77.3% | −13.8% | 38 円1 億円 |
| やや悲観 | 28% | 60 円2 億円 | 0 円0 億円 | −88.0% | −19.1% | 17 円1 億円 |
| 悲観 | 22% | 24 円1 億円 | 0 円0 億円 | −95.2% | −26.2% | 5 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 148 円5 億円 | 4 円0 億円 | −69.5% | −11.2% | 153 円5 億円 |
今の株価時価総額 501 円17 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 10.5% を下回るほど割高。
楽観 4% 立て直しが実り、利益率2%台を取り戻す 利益 3 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 924 円31 億円
10年後、福留ハムは立て直しを終えている。経営陣の刷新と工場の集約が実り、ハム・ソーセージと惣菜の量は今の水準を保つ。地元の量販店との長い取引を足場に、惣菜やプライベートブランドの受託で工場の稼働を上げる。
値上げは物価より少し強く通り、加工食品の営業利益率は2%台半ばに乗る。食肉の卸も、扱う品を絞って利益の出る取引だけを残す。全社の営業利益は5億円を超える。
土地や有価証券を売って借入を半分ほどに減らし、利払いの重さも和らぐ。配当は数年後に再開する。それでも、自己資本利益率は資本コストに届かない。薄利の食肉加工で、資本を大きく上回って稼ぐのは難しい。
- 加工食品(ハム・ソーセージ・惣菜):数量 11,473(推定出荷量(トン))× 価格 124(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 142 億円・営業利益 4 億円。量を保ち値上げが通る
- 食肉:数量 15,949(推定取扱量(トン))× 価格 110(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 176 億円・営業利益 2 億円。利益の出る取引に絞る
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 10.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 9.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 9.5 倍。全体の PER 9.52 倍、時価総額 30 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:8期続く営業赤字の会社が、過去の最良を上回る利益率に届く筋書き。経営の刷新だけが根拠で、確率は5%未満の4%にした。
やや楽観 13% 営業黒字が定着し、小さな利益を積む 利益 1 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 399 円13 億円
10年後、福留ハムは小さいながら黒字の会社に戻っている。赤字の8期は、原料高と古い工場の重さが重なった一時のつまずきだったことになる。ハム・ソーセージの量は人口減で5%減るが、惣菜が少し伸びて埋める。
値上げは物価並みに通り、営業利益率は1%強になる。過去12年の最良の水準を、毎年続けられる形だ。旧小倉工場のような使わない土地を売り、借入を少しずつ減らす。
利払いは金利の上昇で重くなるが、借入の減りで相殺する。自己資本はようやく増え始める。それでも自己資本利益率は5%前後で、資本コストの半分ほどにとどまる。配当の再開は、筋書きの終わり近くになる。
- 加工食品(ハム・ソーセージ・惣菜):数量 10,899(推定出荷量(トン))× 価格 122(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 133 億円・営業利益 2 億円。惣菜で量を埋める
- 食肉:数量 15,109(推定取扱量(トン))× 価格 109(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 164 億円・営業利益 1 億円。相場で薄い
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.3% が k 10.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 9.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 9.5 倍。全体の PER 9.52 倍、時価総額 13 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社予想の2027/03期の営業黒字(1億円)が続き、過去12年の最良に近い利益率に届く道。8期の赤字の後なので確率は低め。
中立 33% 赤字は止まるが、借入の利払いが利益を食う 利益 0 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 114 円4 億円
10年後、福留ハムは営業の黒字をかろうじて保っている。ハム・ソーセージの量は人口減で1割強減り、食肉の卸も扱いを絞って15%減る。値段は物価並みに上がり、売上は275億円ほどになる。
営業利益率は0.7%で、過去12年の実績の上の方だ。古い設備の償却は物価で増えず、その分だけ利益率は少し上向く。だが、60億円近い借入の金利が上がり、利払いが営業利益の大半を食う。純利益はわずかしか残らない。
配当は出せないままだ。自己資本は少し減ったところで止まる。地元の量販店との取引は続くが、値段を決めるのは買い手の側である。大手や商社の傘下に入る道は残るが、この筋書きには含めない。
- 加工食品(ハム・ソーセージ・惣菜):数量 10,096(推定出荷量(トン))× 価格 121(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 122 億円・営業利益 1 億円。人口減で量が減る
- 食肉:数量 14,270(推定取扱量(トン))× 価格 107(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 153 億円・営業利益 1 億円。扱いを絞る
倍率:事業の純利益 0 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 1.8% が k 10.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 9.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 9.5 倍。全体の PER 9.52 倍、時価総額 4 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:8期の赤字と、会社の今期の黒字化の計画の中ほど。営業黒字には戻るが、利払いでほとんど残らない。
やや悲観 28% 赤字が続き、資産を売って食いつなぐ 利益 −3 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 60 円2 億円
10年後、福留ハムは赤字から抜け出せていない。ハム・ソーセージの量は4分の1減り、食肉の卸も3割減る。値上げは原料と人件費の上昇に追いつかない。
営業赤字は年2億円前後で続き、利払いが赤字を深くする。会社は土地や有価証券を売って特別利益を出し、自己資本の目減りを遅らせる。工場の設備の更新は先送りされ、古い機械の手間と電気代が赤字をさらに重くする。だが、売れる資産には限りがある。
自己資本はほとんど消え、取引銀行の支えが頼りになる。少数の株主に残るのは、借入を返したあとの土地のわずかな残りだけだ。立て直しの計画は、3年ごとに書き直されることになる。
- 加工食品(ハム・ソーセージ・惣菜):数量 8,605(推定出荷量(トン))× 価格 115(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 99 億円・営業利益 −1 億円。量が4分の1減る
- 食肉:数量 11,752(推定取扱量(トン))× 価格 102(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 120 億円・営業利益 −1 億円。赤字が続く
倍率:赤字でPERは使えない。今の自己資本25億円に0.08倍。床の資産2.0億円(floor_assets)に合わせた。
確率:8期続く営業赤字と4期続く営業キャッシュフローのマイナスの延長。可能性は高い。
悲観 22% 資金が尽き、増資や事業の売却で再建する 利益 −6 億円 · PBR 0.0 倍 · 株価時価総額 24 円1 億円
10年後、福留ハムは構造的に負けている。量販店の棚を大手とプライベートブランドに奪われ、量は4割以上減る。値上げは通らず、営業赤字は年4億円に膨らむ。
赤字が自己資本を食い尽くし、会社は取引先や金融機関からの増資と、工場や事業の売却で生き残りを図る。増資は今の株主の取り分を大きく薄める。工場は1つに絞られ、食肉の卸は他社に譲るか畳むことになる。
少数の株主には、資産の使い道を決める力がない。価値は、再建の後に残るわずかな取り分だけになる。地元の量販店との取引も、新しい親会社の判断で整理されうる。
- 加工食品(ハム・ソーセージ・惣菜):数量 6,884(推定出荷量(トン))× 価格 108(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 74 億円・営業利益 −2 億円。棚を失う
- 食肉:数量 9,233(推定取扱量(トン))× 価格 96(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 89 億円・営業利益 −2 億円。赤字が膨らむ
倍率:赤字でPERは使えない。今の自己資本25億円に0.032倍。増資と事業の売却の後に今の株主に残る取り分として、床の資産0.8億円(floor_assets)に合わせた。
確率:8期の赤字、純有利子負債が自己資本の1.5倍、継続企業の前提に関わる事象の記載と、弱い材料が重なる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
加工食品(ハム・ソーセージ・惣菜)
ハム・プレスハム・ソーセージ・惣菜を作り、量販店や業務用の卸に売る。
| 数量推定出荷量(トン) | 価格1トンあたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11,473 | 90 | 103 | −4 |
| 10 年後 中立 | 10,096 | 121 | 122 | 1 |
取り方:セグメントの売上103.26億円(有報)。数量は開示が無く、平均の卸値を1トン90万円と置いて約1.1万トンと推定した。利益は全社の営業損失7.94億円を、売上の割合と工場の重さで割り振った推定(本社費も含める)。中立の数量は人口減から10年0.88倍、価格は物価並み1.34倍。
食肉
牛・豚の肉を仕入れて切り分け、量販店や業務用に卸す。九州の枝肉の出荷を含む。
| 数量推定取扱量(トン) | 価格1トンあたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 16,788 | 80 | 134 | −4 |
| 10 年後 中立 | 14,270 | 107 | 153 | 1 |
取り方:セグメントの売上134.30億円(有報)。平均の卸値を1トン80万円と置いて約1.7万トンと推定。利益は全社の営業損失からの割り振りの推定。中立の数量は扱いを絞る方針と人口減から10年0.85倍、価格は物価並み。
リスクと懸念
赤字の継続と資金繰り
営業赤字は8期、営業キャッシュフローのマイナスは4期続く。会社は継続企業の前提に関わる事象があると開示している。資産の売却で食いつなぐ形が続けば、売るものが尽きた時に資金繰りが詰まる。
借入と金利の上昇
借入は59億円で、自己資本の2倍を超える。借り換えのたびに金利が上がれば、利払いは年1億円以上増えうる。営業黒字に戻っても、利益の多くが利払いに消える。
原料肉の値上がりと値上げの遅れ
原料の豚肉・牛肉の多くは輸入で、相場と為替、関税で値が動く。値上げは数か月から1年遅れで追いつくのが普通で、利益率が1%前後の会社では、この遅れだけで赤字になる。
増資による株主の取り分の薄まり
赤字が続いて自己資本が減れば、取引先や金融機関からの増資で穴を埋める道が現実になる。今の株価に近い値段での増資は、今の株主の取り分を大きく薄める。
食の安全と疫病
豚熱や鳥インフルエンザで原料の供給が止まれば、調達の費用が跳ね上がる。品質の問題が一度起きれば、量販店との取引そのものを失いかねない。小さな会社ほど、1件の事故の重みが大きい。
今後の分かれ目
- 2027年3月期に営業黒字(1億円)を計画どおり出したら
- 立て直しの出発点が確かめられる。ただ、利益率が1%を超え、利払いを賄える形になるまで、価値の見方は大きく変わらない。
- 営業キャッシュフローが2年続けてプラスになったら
- 資金繰りの不安が和らいだと見て、やや悲観・悲観の確率を少し減らす。
- 再び営業赤字に戻ったら
- 構造的に負ける筋書きに近づいたと見て、悲観の確率を厚くする。
- 増資や優先株の発行を決めたら
- 今の株主の取り分がどれだけ薄まるかを見て、筋書きの時価総額に反映する。
- 大手のハム会社や商社が資本と業務の提携を申し入れたら
- 調達と販路の改善で利益率の天井が上がりうる。中身を見て楽観側の確率を見直す。
見ておくもの
- 営業損益と営業キャッシュフローの黒字化
- 借入の残高と利払い
- 資産の売却の額と使い道
- 加工食品と食肉の売上の増減
- 増資・提携の有無と大株主の変化
倍率と資本コストの決め方
加工食品と食肉の2つに分け、数量は推定(人口減と扱いの絞り込みから10年0.85〜0.88倍)、価格は物価並みで積んだ。中立の営業利益率0.7%は過去12年の最良2.1%以下で、物価で増えない償却の分だけ上向く。倍率はROEがk10.5%を大きく下回るため1÷kの7割、悲観側は売れる資産の床で置き、今のPBR0.7倍や時価総額から逆算していない。直近の純利益は資産の売却益なので、ならした起点(−1億円)から流した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 7.6→9.52 倍・やや楽観 PER 7.1→9.52 倍・中立 PER 6.7→9.52 倍)。
資本コスト 10.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 0.5%。基本7.5%にquality+2.5%、事業が傾いている分の上乗せ0.5%。