結論
和弘食品は、ラーメン店向けの業務用スープを作る北海道発のメーカーである。筆者の結論は「割安。ただし顧客の偏りという危うさを織り込んだ上で、である」だ。
稼ぎの中心は北米にある。2015年に稼働したカリフォルニアの工場が、売上の4分の1で営業利益の約7割を生む。ラーメンが米国の外食で根づくほど、この工場の数量は伸びる。
国内は利益率が4%台と薄いが、外食向けが好調で、直近は営業利益が5割増えた。国内の薄利と米国の高利益、この二つの組み合わせが全社の利益率9%を作っている。
心配は二つある。米国の主要な販売先に頼る構造と、ラーメンの流行が一巡する可能性だ。ここが崩れると、利益の大半が消える。
自己資本利益率は10%台で、資本コストを上回る。この水準の会社が、利益の10倍に満たない値段で買える。筆者は、危うさを差し引いても、10年後の価値は今の値段を大きく上回ると見る。
判断の分かれ目は、米国の販売先がどれだけ分散するかにある。そこが進めば、割安の度合いはさらに増す。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「地味だが伸びる事業を、安く売っている」案件に近い。ラーメンの世界的な広がりは、10年後も続く可能性が高い。そこに現地工場を持つ強みがある。
一方で、堀は深くない。主要な販売先への依存が高く、ここを失えば利益は大きく崩れる。だから筆者は、確率の2割以上を悲観に割いた。
経営は資本を慎重に使い、利益の大半を工場に再投資している。利益率の高い米国に資金を振り向けるのは、理にかなった配分である。自己資本利益率が資本コストを上回るうちは、再投資を続けることが株主のためになる。
ただし、配当の低さと流動性の低さは割引の理由になる。安全域は、事業の価値が大きく崩れない限り、今の値段が与えてくれると見る。
買い手として確認したいのは、米国の販売先の分散と、工場投資の回収である。この二つが進むなら、持ち続ける価値は十分にある。
何で稼ぐ会社か
事業の核は、ラーメンのスープとたれである。外食チェーンやラーメン店向けの業務用が中心で、味の設計から製造までを請け負う。完成品を店に届ける、いわば「スープの裏方」だ。
報告セグメントは日本と米国の二つ。日本は売上が130億円で、外食向けの販売が伸びた。営業利益は5.6億円と薄く、売上に対する利益率は4%台にとどまる。
米国は売上が45億円ほどだが、営業利益は10億円を超える。利益率は2割を超え、全社の利益の大部分を稼ぐ。現地の工場で作るため、輸入品より納期と鮮度で勝てる。
直近の設備投資は13億円と大きい。米国の増強と国内の工場への投資が中心で、建設仮勘定も増えた。タイにも2024年に現地法人を作り、アジアへの販路を探り始めている。
新しい中期経営計画「The Glocal Engine」では、2028年度に売上207億円、営業利益18.5億円を掲げる。前の3か年計画は、売上160億円と営業利益13億円の目標を、ともに上回って終えた。
本社は北海道で、国内の主力工場もそこにある。原料の調達から製造、物流までを自前で持つため、スープの品質を管理しやすい。ただし、北海道から本州への輸送費は利益を圧迫しやすく、西日本の販売強化も輸送の負担と背中合わせになる。
優良さと弱いところ
筆者は、この会社の強みを「味の設計力と現地生産」と見る。ラーメン店は味の再現性に厳しく、一度採用したスープを変えにくい。切り替えには店の味そのものを変えるリスクが伴うため、顧客を離さない力がある。
ただし堀は深くない。大手食品会社も業務用スープを手がけており、顧客が内製や他社に動く可能性は残る。米国は主要な販売先が売上の大きな部分を占め、その在庫調整だけで受注が鈍った。
資本効率は悪くない。自己資本利益率は直近で11〜14%、営業利益率は9%台だ。過去10年の中央値は低いが、それは2017〜2021年の低迷が混ざるためで、現在の姿ではない。
配当は純利益の2割程度と低い。成長投資を優先する経営で、これは理にかなう。ただし、投資の成果が出るまでは、株主への分配は控えめなままだ。
この会社の優良さは、堀というより「現場で積んだ実績」に近い。実績は崩れにくいが、堀のように外敵を防ぎはしない。筆者はこの違いを割引の理由として織り込んだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国のラーメンは、この10年で「流行」から「定番」に近づいた。外食店の数が増え、冷凍・中食にも広がっている。ただし直近は、物価高で外食が中食へ移り、既存店の伸びが鈍っている。
国内の外食は、訪日客と値上げに支えられて売上が戻っている。ラーメン店は原材料と人件費の上昇で値上げを重ねており、スープの取引価格にも転嫁が進む。国内の数量は人口減で伸びにくいが、外食向けの比率が高いため、売上は景気と客数に左右される。
原料は豚骨、鶏がら、野菜、調味料。エネルギー価格の上昇が製造コストを押し上げている。米国では人件費が高く、生産体制の強化に伴う人件費が利益を削った。
競争は分散的だ。国内は味の素やキッコーマンなど大手の業務用部門や地方の専門メーカーが競い、米国には現地の調味料会社と日本の大手の進出がある。決め手は、味の再現性と納期、そして顧客との距離だ。
筆者は、米国のラーメン需要は10年で実質的に倍近くに増えると見る。ただし競争が強まるため、全部を取れるわけではない。
国内の外食は、人手不足で調理の省力化が進む。店でスープを一から作るより、完成されたスープを仕入れる流れは強まる。これは、同社のような業務用メーカーには追い風だ。
資本政策と M&A
配当は純利益の2割ほどで、今期は引き上げる計画である。自社株買いはなく、少額の自己株の処分があるだけだ。
現金は30億円あるが、借入金とリース債務が合わせて32億円あり、純現金は9億円ほどにとどまる。そのため、現金を理由にした安全域は小さい。
投資有価証券は15億円で、含み益が10億円ある。配当収入は小さく、事業とは別の資産と見てよい。
東証と札証に上場し、TOBや再編の話は出ていない。M&Aは小粒で、買収よりも自社工場の増強で成長する姿勢だ。米国の子会社から親会社への配当金は4.4億円で、グループの資金はよく回っている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ラーメンは世界の食になった。米国ではすでに店が増え続け、冷凍や小売にも広がっている。この工場は現地で作るため、輸入品よりも鮮度と納期で勝てる。直近の営業利益率は米国で24%と高く、増産すれば固定費が薄まり、さらに上がる。工場の稼働率が上がるほど、固定費の重さは薄れていく。
新しい中期計画は、2028年度に営業利益18.5億円を掲げる。前の計画は目標を超えて終えており、実行力は証明済みだ。米国の売上が、会社が見込むペースで伸びるだけでも、10年後の利益は今の1.5倍を超える。米国の売上が2倍になれば、全社の営業利益は30億円に届く。
タイと英国で販路を広げれば、米国以外の柱も育つ。国内も外食の好調が続けば、利益率が5%台に乗る。
自己資本比率は6割を超え、借入も軽い。成長投資を自前の資金で賄え、利益は積み上がる。為替が円安に動けば、米国の利益は円換算でさらに膨らむ。時価総額は利益の9倍に届かず、事業の質に比べて明らかに安い。
北米のラーメン市場は、競合が育つ前の初期段階にある。先に工場を持つ者が、顧客との関係を握る。
慎重な見方
利益の7割を米国に頼る構造は、危うい。主要な販売先の在庫調整だけで、米国の営業利益は16%減った。一社を失えば、全社の利益が数割消える。しかも、顧客の購買は店の出店計画に左右され、会社側から制御しにくい。
米国の外食は、物価高で中食に流れている。ラーメン店の既存店の伸びは鈍っており、ブームが一巡すれば数量は頭打ちになる。加えて米国では人件費が高く、生産体制の強化に伴うコストが利益を削った。
国内は利益率が4%台と薄く、外食の景気で簡単に赤字に戻る。2021年3月期は赤字だった。
配当は純利益の2割と低く、少数株主に戻る額は限られる。成長投資が空振りに終われば、積み上げた利益は工場の簿価に化けて残るだけだ。現金は借入とリースを引くとほぼ残らない。値段が安く見えるのは、この危うさが織り込まれているからだ。
さらに、新しい中期計画の達成には、営業利益を3年で3割近く伸ばす必要がある。直近の営業利益は減益で、勢いは落ちている。
どちらに重みを置いたか
米国の成長は強気の言い分に説得力があり、顧客の偏りは弱気の言い分が正しい。筆者は、数量の伸びを認めつつ、利益率は今より下がると置いた。そして悲観側に3割台後半の確率を割いた。それでも中立の値段が今を大きく上回るため、割安と判断した。確率を寄せたのは、主要な販売先の在庫調整という実例があるからだ。
強気の言い分が正しければ、価値は今の値段の数倍になる。弱気の言い分が正しくても、売れる資産が一定の下支えになる。この非対称が、割安の判断の根拠である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 9,954 円248 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,775 円44 億円)。 今の値に割り戻すと 5,819 円145 億円、今との差 +48.6%、 期待の年率 +11.6%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 19,648 円491 億円 | 2,804 円70 億円 | +473.5% | +19.1% | 1,347 円34 億円 |
| やや楽観 | 20% | 15,594 円389 億円 | 2,403 円60 億円 | +359.7% | +16.5% | 3,600 円90 億円 |
| 中立 | 36% | 12,321 円308 億円 | 2,003 円50 億円 | +265.9% | +13.9% | 5,157 円129 億円 |
| やや悲観 | 26% | 4,102 円102 億円 | 1,282 円32 億円 | +37.5% | +3.2% | 1,400 円35 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,282 円32 億円 | 601 円15 億円 | −51.9% | −7.1% | 226 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 9,954 円248 億円 | 1,775 円44 億円 | +199.6% | +11.6% | 11,729 円293 億円 |
今の株価時価総額 3,915 円98 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 楽観:米国が2.3倍に育ち、全社の利益が4倍に迫る 利益 31 億円 · PER 15.6 倍 · 株価時価総額 19,648 円491 億円
米国の数量が2.3倍まで伸びる。ラーメン店の増加に加え、冷凍・小売への広がりも取り込み、現地工場は増設を重ねる。
営業利益率は22%を保ち、米国だけで営業利益は31億円に達する。国内も西日本の販売強化が効き、数量が5%増え、利益率は6.5%に上がる。
タイと英国の販路が育ち、販売先の偏りも和らぐ。事業の寿命への不安が薄れ、利益の質が高まる。
全社の営業利益は40億円を超え、自己資本利益率は13%近くに上がる。配当は利益の3割に増える。
この筋書きでは、現地工場を複数に増やし、米国の西海岸以外にも供給網を広げる。主要販売先の比率は下がり、利益の偏りも解消に向かう。
- 日本(外食向けスープ・たれ・調味料):数量 3.4(出荷量(万トン、推定))× 価格 560(1kgあたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 190 億円・営業利益 12 億円。営業利益率6.5%
- 米国(WAKOU USA):数量 1.4(出荷量(万トン、推定))× 価格 980(1kgあたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 141 億円・営業利益 31 億円。営業利益率22.0%
倍率:事業の純利益 31 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 15.6 倍、時価総額 490 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:米国の需要が想定以上に伸び、主要販売先も増える筋書き。中計の2028年度目標を超える成長が10年続く必要があり、確率は低く置いた。
やや楽観 20% やや楽観:米国が倍に増え、国内も利益率が6%に 利益 26 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 15,594 円389 億円
米国の数量が倍に増える。主要販売先の在庫調整は一巡し、新規の顧客も加わる。利益率は21%に少し下がるが、売上の伸びがそれを上回る。
国内は数量が2%増え、値上げを物価並みに通す。外食の客数が戻り、利益率は6%に上がる。
全社の営業利益は35億円前後で、自己資本利益率は11%。配当は純利益の3割に近づく。為替が円安に振れれば、円換算の利益はさらに上振れする。
この筋書きでは、タイや英国の販路が小さな柱になる。ただし、それで利益が大きく変わるほどではない。
国内の外食は人手不足で完成品のスープを仕入れる流れが強まり、国内の数量も小さく押し上げられる。
- 日本(外食向けスープ・たれ・調味料):数量 3.3(出荷量(万トン、推定))× 価格 548(1kgあたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 181 億円・営業利益 11 億円。営業利益率6.0%
- 米国(WAKOU USA):数量 1.3(出荷量(万トン、推定))× 価格 959(1kgあたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 120 億円・営業利益 25 億円。営業利益率21.0%
倍率:事業の純利益 26 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.8% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 14.88 倍、時価総額 389 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の中計(2028年度に営業利益18.5億円)を大きく上回る成長を10年続ける形。前の計画を超えた実績があり、2割を置いた。
中立 36% 中立:米国が1.8倍に伸び、国内は横ばいで利益率が5%台 利益 22 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 12,321 円308 億円
米国の数量が10年で1.8倍に伸びる。ラーメン店の増加を背景に、現地工場の増強が続く。ただし競争が強まり、人件費も上がるため、営業利益率は今の24%から20%に下がる。
国内は数量が横ばいで、値上げは物価並みに通る。外食向けの値上げ効果で、利益率は5%台に上がる。
全社の営業利益は30億円弱で、利益率は10%台。米国の比率が25%から38%に上がるため、全社の利益率が上がる。償却は米国の新工場の分だけ増え、10年で年8億円ほどになる。
配当は純利益の3割に引き上げ、残りは再投資に回る。自己資本利益率は10%近くを保つ。
- 日本(外食向けスープ・たれ・調味料):数量 3.2(出荷量(万トン、推定))× 価格 536(1kgあたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 174 億円・営業利益 9 億円。営業利益率5.2%
- 米国(WAKOU USA):数量 1.1(出荷量(万トン、推定))× 価格 938(1kgあたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 106 億円・営業利益 21 億円。営業利益率20.0%
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 14.05 倍、時価総額 308 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界の見通し(米国のラーメン需要の拡大、国内は横ばい、価格は物価並み)に沿った中心。会社の中計の延長線上で、米国の利益率は今の24%から20%に下げた。
やや悲観 26% やや悲観:米国が1.4倍にとどまり、利益率が15%に下がる 利益 12 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 4,102 円102 億円
米国の数量が1.4倍にとどまる。主要販売先の取引が縮み、新規顧客の開拓が追いつかない。人件費と原料の上昇で、営業利益率は15%に下がる。
国内は外食の客数が減り、数量が7%減る。値上げも物価に届かず、利益率は3.5%に落ちる。人手不足で賃金を引き上げざるを得ず、値上げが追いつかない。
営業利益は17億円前後で、今とほぼ同じ。米国の工場投資の償却が重く、投資の成果が出ない形だ。
新しい中期計画の目標は未達に終わり、経営は計画の修正を迫られる。
自己資本利益率は6%台に落ち、資本コストを下回る。配当は純利益の3割を保つが、金額は伸びない。余った資産は、谷で食う分を引いた額に減る。
- 日本(外食向けスープ・たれ・調味料):数量 3.0(出荷量(万トン、推定))× 価格 520(1kgあたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 156 億円・営業利益 5 億円。営業利益率3.5%
- 米国(WAKOU USA):数量 0.9(出荷量(万トン、推定))× 価格 910(1kgあたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 80 億円・営業利益 12 億円。営業利益率15.0%
倍率:自己資本利益率は約6.6%で資本コスト8%に届かず、新しく投じるお金の稼ぎは7.4%。g4%で正当化PERは10.8倍、構造的に伸びが鈍る筋書きなのでその75%ほどの8.0倍。余った資産は谷で食う分を引いた7.5億円に戻り方0.75。
確率:主要販売先の在庫調整という実例があり、米国の伸びが鈍る筋書きは現実味がある。国内の利益率が4%を割る可能性もあわせ、2割台半ばを置いた。
悲観 12% 悲観:米国のブームが一巡し、主要顧客を失って本業が薄利に沈む 利益 3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,282 円32 億円
米国で主要な販売先が取引を打ち切り、数量が10年で1割減る。ラーメンの需要は頭打ちとなり、現地工場の稼働が下がって固定費が重くなる。営業利益率は6%まで落ちる。
国内も価格競争が激化し、外食の客数が戻らず、利益率は1.5%に下がる。原料と人件費の上昇を転嫁できない状態が続く。
営業利益は4億円、純利益は3億円にとどまる。米国の工場投資は減損となり、自己資本は133億円まで減る。
新しい顧客を開拓する力も弱く、米国の工場は他社の受託でしか稼働を保てない。
時価総額は、稼ぐ力ではなく、投資有価証券と運転資本を中心にした売れる資産で測る。
- 日本(外食向けスープ・たれ・調味料):数量 2.6(出荷量(万トン、推定))× 価格 480(1kgあたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 125 億円・営業利益 2 億円。営業利益率1.5%
- 米国(WAKOU USA):数量 0.6(出荷量(万トン、推定))× 価格 840(1kgあたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 47 億円・営業利益 3 億円。営業利益率6.0%
倍率:純利益3億円では稼ぐ力は測れない。床は売れる資産の税後で測り、今の自己資本103億円に対するPBR0.31倍(時価総額32億円)に置いた。
確率:米国の主要販売先を失い、ラーメンの需要が頭打ちになる複合の筋書き。国内も価格競争で薄利に戻る。売れる資産と運転資本が下を支えるため、1割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
日本(外食向けスープ・たれ・調味料)
ラーメン店・外食チェーン向けの業務用スープとたれ、調味料。売上の約75%。
| 数量出荷量(万トン、推定) | 価格1kgあたり平均単価(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.2 | 400 | 130 | 6 |
| 10 年後 中立 | 3.2 | 536 | 174 | 9 |
取り方:日本セグメントの売上132億円から、内部取引を除いた約130億円を、1kgあたり四百円前後の品が年3.2万トン売れると置いた(推定)。数量は外食の好調と人口減が打ち消し合い、中立は10年で横ばい。価格は物価並み(10年1.34倍)。営業利益は開示の5.6億円。
米国(WAKOU USA)
カリフォルニアの工場で作る、北米のラーメン店向けスープ。売上の約25%、営業利益の約7割。
| 数量出荷量(万トン、推定) | 価格1kgあたり平均単価(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.6 | 700 | 44 | 11 |
| 10 年後 中立 | 1.1 | 938 | 106 | 21 |
取り方:米国セグメントの売上45億円から内部取引を除いた約44億円を、1kgあたり七百円前後の品が年6千トン強売れると置いた(推定。ドル円150円)。数量は北米のラーメン店の増加を取り込み、中立は10年で1.8倍。価格は物価並み。営業利益は開示の10.5億円。
リスクと懸念
米国の主要販売先への集中
米国の売上の大きな部分を少数の販売先が占める。在庫調整で受注が鈍っただけで、米国の営業利益は16%減った。取引の縮小や内製化が起きれば、全社の利益の数割が消える。
米国の外食の鈍化
物価高で外食から中食へ流れる動きが続くと、ラーメン店の客数が伸び悩む。スープの数量はその店数と客数に直結するため、ブームの一巡は成長の前提を崩す。
米国の人件費と生産体制のコスト
米国では賃金の上昇が速く、生産・営業体制の強化で人件費が増えた。数量が伸びなければ固定費として残り、利益率2割超の維持が難しくなる。
国内の薄い利益
国内は営業利益率が4%台で、原料とエネルギーの高騰を転嫁できなければ赤字に戻る。2021年3月期の赤字がその例で、外食の客数が落ちれば再び起こりうる。
為替と大型投資
米国の利益は円換算で動く。円高に振れれば連結の利益が減る。ドル円は150円で置いたが、現実は動く。また13億円規模の設備投資が回収できない可能性もある。
今後の分かれ目
- 米国の主要販売先が取引を大きく減らす
- 米国の営業利益が3割以上減り、全社の利益は2割を超えて落ちる。悲観の筋書きに確率が移る。
- 米国で新規顧客の開拓が進み、販売先が分散する
- 利益の偏りが和らぎ、事業の寿命の不安が減る。楽観に確率が寄る。
- 配当性向を3割以上に引き上げる方針が示される
- 少数株主に戻る額が増え、評価が見直される。
- タイや英国の販路が軌道に乗る
- 米国以外の柱ができ、中計の2028年度目標が現実味を増す。
- 原料価格が急騰し、国内で転嫁が遅れる
- 国内は赤字に戻りうる。米国の利益が支えても、全社の利益は1〜2割減る。
見ておくもの
- 米国の売上と営業利益の四半期の動き
- 主要販売先の在庫調整の有無
- 中計の2028年度目標(売上207億円・営業利益18.5億円)の進捗
- 国内の外食向け販売の数量と値上げの浸透
- 配当性向と自己株の扱い
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から出した。10年後の自己資本利益率は10%前後で資本コスト8%を上回る。堀は深くなく、顧客が偏るので、正当化PERの8割に置いた。今の株価や同業の倍率は使っていない。米国の利益率は今の24%から20%に下げ、国内の薄利も大きくは上げていない。新リース会計基準は早期適用済みで、使用権資産が計上されている。純現金の計算はリース債務を含めない形で、実質はもう少し小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.1→15.6 倍・やや楽観 PER 12.1→14.88 倍・中立 PER 12.1→14.05 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。