結論
ファーマフーズは、育毛剤「ニューモ」を柱に、医薬品・医薬部外品、化粧品、サプリメントを通販で売る会社である。売上の88%が通販(BtoC)で、機能性素材のGABAを食品・飲料メーカーに売るBtoB事業を併せ持つ。2026年7月期の売上は632億円、売上総利益率は80%、営業利益は26億円だ。
筆者の結論は、今の値段はやや割高、というものだ。稼ぎのほとんどは広告費と顧客の維持で決まる。2026年7月期の上期は広告費を増やして営業損失24億円。下期に絞って黒字に戻した。第4四半期の営業利益率は27.7%と高いが、通期では4%台。会社の予想も、2027年7月期の営業利益は30億円にとどまる。
財務は重くなった。子会社の明治薬品が、投資額120〜130億円とされる新工場を建て、有利子負債は172億円に増えた。自己資本132億円に対するD/Eは1.3倍。営業キャッシュフローは2期続けてマイナスだ。
10年後の中立は、営業利益41億円、純利益23億円ほど。ROEは9〜10%で、資本コストをわずかに上回るだけ。利益が増えても、借入の利払いで目減りする。
見るべきは三つだ。ニューモの顧客数と獲得効率、新工場の稼働と借入、利益重視の運営がどこまで続くか。いずれも売上高では測れない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、ファーマフーズは、粗利は高いが、安定して稼ぐ会社とは言いにくい。問いは三つある。10年後も事業は残り強いか。稼いだお金のうち、株主が自由に使えるのはいくらか。経営者は資本を賢く使うか。
事業は残る。育毛や整腸の悩みは続く。ただ、主力の一つの製品群に頼り、広告をかけ続けないと顧客が減る構造は、堀があるとは言えない。
株主が自由に使えるお金は、ほとんどない。営業キャッシュフローは2期続けてマイナスで、2026年7月期は11.7億円の流出。新工場の投資は借入で賄い、有利子負債は172億円に増えた。減価償却は取得時の値段のままだが、更新と新規の投資は物価で高くなる。
資本配分は、不安が評価を上回る。売上1,000億円を追って広告費を増やし、利益を落とした経緯がある。2026年に方針を変えたのは評価できるが、新工場とM&Aの投資は、回収の根拠がまだ示されていない。
安全域を測る。時価総額201億円は、自己資本132億円の1.5倍。純負債は約95億円で、安全域は薄い。利益が出ている間は倍率が低く見えるが、広告をかけ直せば利益は消える。
何で稼ぐ会社か
ファーマフーズは1997年に京都で創業した、機能性食品素材の開発会社だ。今は通販が売上の大半を占める。2026年7月期の売上632億円のうち、BtoC(通販)が554億円、BtoB(素材・自社製品・受託製造・ドラッグストア販売)が75億円、バイオメディカルが3.5億円。
BtoCの内訳は、医薬品・医薬部外品が78%(432億円)、サプリメントが11%、化粧品が10%。主力は育毛剤「ニューモ」のシリーズで、シャンプーは累計156万本。ほかに整腸の「ラクトロン錠」、耳鳴りの「てんらい清流錠」、夜間尿の「黄望皇」を売る。定期顧客は2026年1月末で75.9万件。
BtoBは、GABA(ストレスや睡眠の機能性素材)などを食品・飲料メーカーに売る素材事業が35%、自社製品が12%、明治薬品の医薬品受託製造(CMO)が36%、ドラッグストア向けの販売(CHC)が17%。北米やタイで採用が増えている。
バイオメディカルは、抗体医薬やペプチドの研究開発だ。抗体「MT-3534」は田辺ファーマに導出済みで、第1相a試験を終えた。難病の治療薬候補は2030年の承認申請を目指す。
成長の仕込みは、育毛剤のコストコ・ロフトなど小売への展開、GABAの米国GRAS申請、卵殻膜の電池材料、農業向けのバイオスティミュラントだ。
優良さと弱いところ
優良さは、粗利の高さと、顧客に直接売れる仕組みにある。ただし、利益は広告の効率に左右され、安定しない。
強みは三つある。第一に、売上総利益率が80%と高く、付加価値の高い製品を自社で持つこと。第二に、定期購入の顧客基盤が75万件ほどあること。第三に、素材を食品・飲料メーカーに売る自社の技術と特許を持つことだ。
弱みも三つある。第一に、売上の大半が育毛剤などの一つの製品群に偏り、広告を止めると顧客が減ること。上期の広告費は売上の74%に達した。第二に、利益の変動が大きいこと。営業利益は2021年7月期に57億円、2022年7月期に11億円、2024年7月期に51億円、2025年7月期に24億円と大きく揺れた。第三に、新工場に120〜130億円とされる投資をして借入が重いことだ。
資本効率は、過去10年のROEの中央値が9.8%。ただし最近は3.2%(2025年7月期)、2026年7月期の純利益で約15%と振れる。
筆者は、粗利の高い事業は本物だが、広告を止めれば売上が縮むという構造は変わらないと見る。創業者の金武祚氏は、2025年7月時点で7.7%を持つと記載されている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
通販の健康食品・化粧品・医薬品は、顧客を広告で獲得し、定期購入で継続させる商売だ。獲得に費用がかかり、継続すれば利益が出る。ファーマフーズも、新規顧客の獲得費用を先に払い、継続率と1件あたりの売上で回収する。
競争は激しい。ドラッグストア、ネット通販、医薬品メーカーが同じ悩み(育毛、整腸、耳鳴り)に商品を出す。コストコやロフトのような小売に商品を置く動きは、通販だけでは顧客を増やしにくくなったことの裏返しでもある。
規制の目も厳しい。定期購入や広告表示は、消費者庁と自治体の監督対象になっている。会社が措置命令を受けた事実は確認できなかった。市場規模や育毛剤の市場シェアは、公的な統計が見つからず、推定の域を出ない。
価格は、物価で上がる。ただし通販は広告費の単価も同時に上がり、値上げの分が利益に残りにくい。
10年の見立ては、国内の健康・美容の需要は底堅いが、獲得の効率は上がらない。素材は海外で伸び、中立は素材の数量が緩やかに増える。ただし通販の顧客数は、広告を絞る運営の下で緩やかに減る見込みだ。
資本政策と M&A
配当は2024年7月期から年額を変えていない。2026年7月期の配当性向は約36%で、安定配当を基本方針にしている。2022年7月期に純損失を出した年は配当を減らした。株主優待は確認できなかった。
投資は大きい。子会社の明治薬品が新工場を建設中で、竣工は2028年7月の予定。投資額は社長が120〜130億円と述べた。建設仮勘定は36.7億円で、財源は借入だ。2026年7月末の有利子負債は172億円で、前期より45億円増えた。
M&Aは4件が条件交渉中と、社長が述べた。投資の回収は、資料では示されていない。
会社は、売上1,000億円という目標を「到達目標のひとつ」に据え直し、資本効率と増益を優先する方針に切り替えた。次の中期経営計画に具体的な経営指標を盛り込むとしている。
経営の過去を見ると、株式の希薄化が2006年7月期と2014年7月期にあった。創業者の持株は2025年7月で7.7%。
TOB(株式公開買い付け)の確率は、kabufuの推計で10年以内に25.4%。価値には織り込まない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ファーマフーズは、利益重視へ舵を切って、稼ぐ力が戻った。2026年7月期の営業利益は26億円と11%増え、純利益は5.4倍の20億円になった。第4四半期の営業利益率は27.7%に達した。広告費を27.7億円絞っても、売上は3%の減にとどまった。
顧客の質が上がっている。定期顧客は減ったが、1件あたりの売上は16%増え、継続率とLTV(顧客が生涯に払う金額)が改善した。ニューモはカテゴリートップで、コストコやロフトの小売にも広がる。
BtoBでは、GABAが北米とタイで採用され、米国のGRAS取得が目前だ。取得すれば、飲料・食品への需要が急拡大する。抗体医薬は田辺ファーマに導出済みで、マイルストン収入の可能性もある。
新工場は自社製品の製造を内製化し、粗利を押し上げる。会社の2027年7月期の予想は、営業利益30億円と純利益22億円。
粗利80%の事業が、利益重視の運営で定着すれば、利益率は大きく上がる。強気の見方は、第4四半期の水準の一部でも通期に残れば、価値は今の値段を大きく上回ると考える。
慎重な見方
利益が出たのは、広告を絞った結果にすぎない。広告費を増やした上期に、定期顧客は4.8%減った。獲得の効率が悪く、広告をかけても顧客が増えない。広告を止めれば、顧客はさらに減る。
利益の変動が大きい会社だ。営業利益は2021年7月期の57億円から2022年7月期の11億円へ崩れた。広告費で売上を追って利益を落とした経緯は、2026年にも上期の損失で繰り返された。
資金の面でも重い。営業キャッシュフローは2期続けてマイナスで、新工場の投資120〜130億円を借入で賄い、有利子負債は172億円、D/Eは1.3倍。金利が3.5%に上がれば、利払いが利益を食う。
経営はM&Aを4件交渉中と述べ、バイオメディカルは赤字が年8億円を超える。資本を広げる方向は、会社が掲げた資本効率の改善と逆行する。
主力は一つの製品群に偏る。他社の類似品に押されれば、利益は一気に落ちる、と弱気の見方は考える。
2021年7月期にブームで売上が3倍になっても、翌年には利益が崩れた。同じ構造が、今も残っているというのが弱気の見方の根拠だ。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、粗利の高さと利益重視への転換について正しい。だが、広告を止めれば顧客が減る構造は変わらず、新工場の借入、2期続けて流出する営業キャッシュフロー、一つの製品群への偏りが、弱気の指摘として重い。事業の質では勝ち、利益の持続性と財務では負ける、という整理になる。確率は、中立を最大の4割弱に置き、やや悲観を28%と、やや楽観の17%より厚くした。10年の中立でもROEは9〜10%で、資本コストをわずかに上回るだけ。借入の利払いを織り込んで価値を出した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/07 期)
確率で加重した株価時価総額 1,218 円354 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 293 円85 億円)。 今の値に割り戻すと 719 円209 億円、今との差 +6.0%、 期待の年率 +8.3%(資本コスト 8.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 4,576 円1,329 億円 | 802 円233 億円 | +693.2% | +23.0% | 323 円94 億円 |
| やや楽観 | 17% | 2,513 円730 億円 | 503 円146 億円 | +344.8% | +16.1% | 513 円149 億円 |
| 中立 | 37% | 1,214 円353 億円 | 303 円88 億円 | +123.7% | +8.4% | 561 円163 億円 |
| やや悲観 | 28% | 208 円61 億円 | 151 円44 億円 | −46.9% | −6.1% | 101 円29 億円 |
| 悲観 | 12% | 76 円22 億円 | 38 円11 億円 | −83.2% | −16.4% | 14 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,218 円354 億円 | 293 円85 億円 | +122.8% | +8.3% | 1,511 円439 億円 |
今の株価時価総額 678 円197 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 広告を絞っても顧客が増え、素材と新工場も当たる 利益 73 億円 · PER 17.1 倍 · 株価時価総額 4,576 円1,329 億円
主力の育毛剤「ニューモ」が、コストコやドラッグストアなどの小売にも広がり、通販だけでは届かなかった顧客を取り込む。ニューモに続く整腸・耳鳴り・尿ケアの医薬品も育ち、定期顧客は84万件に増える。
広告費は売上の5割台まで下がり、1件あたりの売上は物価を上回って伸びる。BtoCの営業利益率は13%に上がる。
BtoBでは、GABAなど機能性素材が米国のGRAS(食品として安全と認める米国の制度)を取り、北米・タイの食品・飲料に採用が広がる。2028年7月に竣工する明治薬品の新工場が、自社製品の製造と受託で稼働する。
バイオメディカルは抗体医薬の導出で、一時金とマイルストン収入が入る。営業利益は110億円ほど、純利益は70億円を超える。借入は返済が進み、ROEは20%に届く。
- BtoC(通販:育毛剤・医薬品・化粧品・サプリメント):数量 84.0(定期顧客数(万件、期中平均))× 価格 10(定期顧客1件あたりの年間売上(万円、名目))→ 売上 845 億円・営業利益 110 億円。育毛剤の次の柱が育ち、顧客が増える
- BtoB(機能性素材・自社製品・受託製造・ドラッグストア販売):数量 2,300(出荷量(トン換算、推定))× 価格 667(1トンあたりの売上単価(万円、名目))→ 売上 154 億円・営業利益 28 億円。米国GRASで素材が急拡大、新工場が稼働
倍率:事業の純利益 73 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 33.9% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 21.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.1 倍。全体の PER 17.1 倍、時価総額 1,250 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社自身が掲げた営業利益100億円の目標に10年かけて届く姿。顧客の獲得に苦戦し、定期顧客が前年比で減っている足元から見ると遠く、1割を切る確率にした。
やや楽観 17% 利益重視へ舵を切り、顧客は減っても利益率が上がる 利益 43 億円 · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 2,513 円730 億円
会社は、既存の商品だけで売上を伸ばすのは難しいと判断し、既存事業は利益の確保に回す方針に切り替えた。広告費を絞り、定期顧客は76万件ほどに減るが、継続率と1件あたりの売上が上がり、BtoCの営業利益率は11%に上がる。
BtoBでは、GABAの採用が北米とタイで増え、自社製品と受託製造の稼働が上がる。新工場は2028年7月に竣工し、借入の利払いを賄う。
バイオメディカルは赤字が続くが、会社は支出を絞る。全社費も物価で増えるが、売上の増加で吸収する。
営業利益は70億円ほど、純利益は43億円ほど。借入は100億円ほどに減り、ROEは15%弱。資本コストを上回る。
- BtoC(通販:育毛剤・医薬品・化粧品・サプリメント):数量 76.0(定期顧客数(万件、期中平均))× 価格 9.96(定期顧客1件あたりの年間売上(万円、名目))→ 売上 757 億円・営業利益 83 億円。収益重視で顧客は微減、利益率は上がる
- BtoB(機能性素材・自社製品・受託製造・ドラッグストア販売):数量 1,950(出荷量(トン換算、推定))× 価格 667(1トンあたりの売上単価(万円、名目))→ 売上 130 億円・営業利益 21 億円。素材と自社製品が伸びる
倍率:事業の純利益 43 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 22.4% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.6 倍。全体の PER 15.65 倍、時価総額 674 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社が2026年7月期の下期から取った利益重視の運営が定着する姿。第4四半期の営業利益率が27.7%に上がった実績があり、2割弱を置いた。
中立 37% 広告を絞って利益率は上がるが、顧客は緩やかに減る 利益 23 億円 · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 1,214 円353 億円
広告費を抑えるため、新規顧客の獲得は鈍る。定期顧客は68万件まで緩やかに減るが、1件あたりの売上は物価並みに伸びる。BtoCの営業利益率は9.5%(2026年7月期は8.1%)。
BtoBは、GABAなどの素材が海外で伸び、自社製品の製造で粗利が上がる。営業利益率は16%。
全社費とバイオメディカルの研究費は物価で増え、合わせて40億円ほどの重しが残る。営業利益は41億円ほど。
新工場(投資額120〜130億円とされる)の借入が残り、金利が3.5%まで上がると、利払いは年7億円ほどになる。純利益は23億円で、営業利益の6割にとどまる。配当は純利益の4〜5割。ROEは9〜10%で、資本コストをわずかに上回る。
- BtoC(通販:育毛剤・医薬品・化粧品・サプリメント):数量 68.0(定期顧客数(万件、期中平均))× 価格 9.76(定期顧客1件あたりの年間売上(万円、名目))→ 売上 664 億円・営業利益 63 億円。広告を絞り、顧客は緩やかに減るが利益率は改善
- BtoB(機能性素材・自社製品・受託製造・ドラッグストア販売):数量 1,700(出荷量(トン換算、推定))× 価格 667(1トンあたりの売上単価(万円、名目))→ 売上 113 億円・営業利益 18 億円。素材が海外で伸び、自社製造の比率が上がる
倍率:事業の純利益 23 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.5% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.5 倍。全体の PER 13.47 倍、時価総額 310 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元は広告費を減らして利益を出す局面で、顧客は減っている。この延長で、利益率は直近より少し上がり、顧客は緩やかに減る姿を最大の確率に置いた。FY2027の会社予想(営業利益30億円)は、10年後の姿の下限に近い。
やや悲観 28% 獲得効率が悪化し、利益率が今より下がる 利益 5 億円 · PER 7.6 倍 · 株価時価総額 208 円61 億円
広告をかけても新規の顧客が増えず、獲得単価が上がる。ニューモ以外の医薬品も、他社の類似品に押されて伸びない。定期顧客は58万件に減り、BtoCの営業利益率は6.5%に下がる。
BtoBは、GABAの採用が想定ほど広がらない。2028年7月に竣工する新工場の稼働が上がらず、償却と利払いが重くなる。
経営は研究費を絞るが、全社費は物価で増える。営業利益は16億円ほどにとどまる。
借入は200億円前後に増え、金利が3.5%まで上がると利払いが年7億円を超える。純利益は5億円ほど。ROEは2〜3%で、資本コストを大きく下回る。配当は維持するが、余裕はない。
- BtoC(通販:育毛剤・医薬品・化粧品・サプリメント):数量 58.0(定期顧客数(万件、期中平均))× 価格 9.37(定期顧客1件あたりの年間売上(万円、名目))→ 売上 544 億円・営業利益 35 億円。獲得効率が悪化し、顧客が減る
- BtoB(機能性素材・自社製品・受託製造・ドラッグストア販売):数量 1,450(出荷量(トン換算、推定))× 価格 647(1トンあたりの売上単価(万円、名目))→ 売上 94 億円・営業利益 11 億円。素材の伸びは鈍り、新工場の稼働が上がらない
倍率:ROE2.5%が資本コスト8.75%を大きく下回る。PERの上限は1÷k=10.8倍(ためた利益は額面未満の価値)で、その約7割(7.6倍)に置いた。利益が薄く、借入が重い点を織り込んだ。時価総額÷自己資本は0.19倍と低いが、利益が薄いためで、資産の床は悲観の筋書きで別に見た。
確率:足元では広告費を増やしても定期顧客が減っていた。獲得の効率が戻らなければ、利益は今より下がる。2021年のブームのあとに利益が崩れた経緯もあり、4分の1強を置いた。
悲観 12% 主力の育毛剤が競合に押され、新工場が重荷になる 利益 −16 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 76 円22 億円
ニューモの顧客が、他社の育毛剤や医療機関の処方、同じ成分の医薬品に流れる。獲得の単価が上がり、定期顧客は44万件に減る。広告をかけても売上が戻らない。
規制の面でも、通販の定期購入や広告表示への監督が強まり、新規の獲得が難しくなる。
新工場は稼働が上がらず、償却と利払いが重くのしかかる。借入は数百億円に膨らみ、金利3.5%で利払いは年10億円近い。営業利益は赤字になり、純損失が続く。
経営は広告を絞って延命するが、顧客の減少は止まらない。配当は削る。自己資本は目減りし、借入の条件を守れるかが問われる。
- BtoC(通販:育毛剤・医薬品・化粧品・サプリメント):数量 44.0(定期顧客数(万件、期中平均))× 価格 8.79(定期顧客1件あたりの年間売上(万円、名目))→ 売上 387 億円・営業利益 12 億円。主力の育毛剤が競合に押され、顧客が大きく減る
- BtoB(機能性素材・自社製品・受託製造・ドラッグストア販売):数量 1,200(出荷量(トン換算、推定))× 価格 614(1トンあたりの売上単価(万円、名目))→ 売上 74 億円・営業利益 6 億円。新工場が遊休化し、素材も伸びない
倍率:稼ぐ力が消え、新工場を含めた資産の売却価値が借入に届かなくなる。株主に残るのは顧客基盤と素材の事業の価値だけ。基準の自己資本116億円(2025年7月期の確定値)に0.19倍を掛けた約22億円。内訳は床の資産の欄に書いた。
確率:売上の大半を一つの製品群に頼り、借入で新工場を建てた会社が、主力の失速と金利上昇を同時に受ける複合の筋書き。2022年7月期に純損失を出した前例があり、1割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
BtoC(通販:育毛剤・医薬品・化粧品・サプリメント)
ニューモを主力に、整腸・耳鳴り・夜間尿などの医薬品、化粧品、サプリメントを通販で売る。広告で顧客を獲得し、定期購入で継続させる。
| 数量定期顧客数(万件、期中平均) | 価格定期顧客1件あたりの年間売上(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 76.0 | 7.29 | 554 | 45 |
| 10 年後 中立 | 68.0 | 9.76 | 664 | 63 |
取り方:2026年7月期のBtoC売上553.7億円、営業利益44.8億円(営業利益率8.1%)。定期顧客数は期初約79.7万件・上期末75.9万件(上期の前年同期比-4.8%)から、期中平均を約76万件と置いた。1件あたりの年間売上は553.7億円÷76万件=約7.3万円(上期は3.8万円)。10年後の価格=今×物価1.34倍×実質の係数(中立1.00。広告費の単価も上がるため)。数量は、広告を絞る運営で緩やかに減り、中立で68万件。
BtoB(機能性素材・自社製品・受託製造・ドラッグストア販売)
GABAなどの機能性素材を食品・飲料メーカーに売る事業、自社ブランドの製品、明治薬品の医薬品受託製造(CMO)とドラッグストア向け販売(CHC)。
| 数量出荷量(トン換算、推定) | 価格1トンあたりの売上単価(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 1,500 | 498 | 75 | 11 |
| 10 年後 中立 | 1,700 | 667 | 113 | 18 |
取り方:2026年7月期のBtoB売上74.7億円、営業利益11.1億円(営業利益率14.9%)。内訳は素材35%、自社製品12%、CMO36%、CHC17%。数量と単価は開示が無く、素材・製品・医薬品の出荷を重量に換算して年1,500トン、1トンあたり約498万円(1キロ約5.0千円)と推定した。10年後の価格=今×物価1.34倍×実質の係数(中立1.00)。数量は、素材の海外採用と自社製品の拡大で中立で1,700トン。
リスクと懸念
広告効率の悪化と顧客の減少
上期は広告費を売上の74%まで増やしても、定期顧客は前年同期比4.8%減った。獲得の単価が上がれば、利益は一気に落ちる。広告を絞れば顧客が減る。
主力製品への偏り
売上の大半を、育毛剤ニューモなどの一つの製品群が占める。競合の類似品や、同じ成分の医薬品、規制の強化が重なれば、収益の柱が崩れる。
新工場の借入と投資の回収
明治薬品の新工場は投資額120〜130億円とされ、2028年7月の竣工予定。有利子負債は172億円に増え、D/Eは1.3倍。金利が上がれば利払いが利益を削る。稼働が上がらなければ、償却が重荷になる。
営業キャッシュフローのマイナス
営業キャッシュフローは2025年7月期も2026年7月期も約11〜12億円の流出。利益が出ても現金が増えない。原因は資料から確認できなかった。
M&Aと研究開発の資本配分
社長はM&Aが4件、条件交渉中と述べた。バイオメディカルは2026年7月期に営業赤字8.4億円。回収が見えないまま資本を使えば、資本効率の改善と逆行する。
通販の規制と評判
定期購入や広告表示は、消費者庁と自治体の監督対象。育毛剤は効果の表示に敏感な分野で、措置命令や行政処分を受ければ、獲得の費用が上がる。
今後の分かれ目
- 定期顧客数が増加に転じ、広告費の売上比率が下がったら
- 獲得の効率が戻ったとして、やや楽観の確率を厚くする。
- 営業キャッシュフローが2期続けてプラスになったら
- 利益が現金に変わっているとして、財務の不安を下げ、悲観の確率を下げる。
- 新工場の稼働率が高く、BtoBの営業利益率が15%を超えたら
- 投資が回収できているとして、BtoBの利益の筋書きを上げる。
- GABAのGRAS承認が下りたら
- 素材の海外需要が広がるとして、BtoBの数量の筋書きを上げる。
- 有利子負債が200億円を超え、D/Eが1.5倍を超えたら
- 財務が悪化しているとして、やや悲観の確率を上げる。
- 措置命令や広告表示の規制を受けたら
- 獲得の費用が上がるとして、悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 定期顧客数と、1件あたりの売上、広告費の売上比率
- 営業利益率の四半期の推移(上期と下期の差)
- 営業キャッシュフローと有利子負債・D/Eレシオ
- 新工場の進捗と稼働(2028年7月)
- GABAの米国GRAS承認とBtoBの海外売上
- 次の中期経営計画の数値目標
倍率と資本コストの決め方
倍率は、10年後のROEと資本コスト8.75%から、利益ベースで置いた。中立のROEは9.6%で資本コストをわずかに上回るため、正当化PERの上限は11.0倍、下限は1÷k=10.8倍。その間の10.8倍に置いた。今の株価や自己資本に対する倍率には寄せていない。営業利益率は、過去12年の山(14.4%)以下で、中立は5%台。直近のBtoCの営業利益率8.1%に少し上乗せして9.5%と置いた。会社の予想(2027年7月期の営業利益30億円)の延長に、物価の分と利益重視の効果を足した。全社費とバイオメディカルの研究費も物価で増やし、合計で10年後40億円ほどの重しとした。減価償却は取得時の値段のままで、新工場の償却は各セグメントの利益率に含めた。リースは小さく、新リース会計基準の影響は小さい。新工場は借入で建てるため、リース負債ではなく借入として見ている。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.8→17.1 倍・やや楽観 PER 10.9→15.65 倍・中立 PER 10.8→13.47 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityを足して決めた。事業が傾いているわけではないので上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.25% → 8.75%。