結論
宝ホールディングスは、国内の焼酎・チューハイ・調味料、海外の高級ウイスキーと日本食材卸、遺伝子研究用の試薬を束ねる企業である。筆者の結論は「割高」だ。ブラントンの強いブランドを持つ半面、連結利益を大きく削るバイオの赤字と、日本食材卸の薄い利益率を考えると、現在の時価総額5,157億円を正当化するには再建の成功がかなり必要になる。
売上は2016年3月期から大きく増えたが、営業利益は2022年3月期の434億円を頂点に4期連続で減少し、2026年3月期は171億円となった。海外日本食材卸は売上約1,959億円でも営業利益は約34億円で、海外洋酒の稼ぐ力とは別物だ。2026年5月に公表した新中期計画で、会社自身が過去の投資の成果不足とROIC3.1%という資本効率の低さを認めたことは重い。
今後10年には好転の道筋もある。タカラバイオを完全子会社化し、赤字の受託・遺伝子医療を縮小するほか、物流子会社と遊休資産の売却を進めている。国内の焼酎ハイボールや海外の高級バーボンは値上げを通しやすい。しかし、海外卸で買収した物流網がようやく費用に見合う利益を生むかは、まだ実績で証明されていない。
2026年10月には米国バイオ子会社の会計調査が重要な訂正不要と結論づけられたが、株主による取締役交代要求も表面化した。統治改革が本物になる機会であると同時に、経営の予測可能性を下げる。10年先の5通りの事業価値と途中還元を資本コストで割り引いた本質価値は約2,454億円、現在より約52%低い。事業の存続を疑う評価ではなく、資本効率の改善がまだ約束である段階の値付けを慎重に見ている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、評価の出発点は製品の知名度ではなく、競争を経ても株主に残る現金である。宝の一番よい事業は、国内の広い商品群でも海外食品卸の売上規模でもなく、ブラントンを中心とした高級洋酒の希少性と利益率だ。この部分の稼ぐ力が十年後も残る可能性は高い。逆に、売上が大きくても人件費・配送費・のれん償却で利益が消える卸売や、稼働しない受託設備には高い値段を払えない。
資本配分の成績は芳しくない。会社自身が過去の大型投資の成果不足を認め、営業利益は四年連続で減少した。ROIC3.1%は株主資本コストを下回る。資本コストに届かない再投資を繰り返せば、会社の売上が伸びても株主の豊かさは増えない。今後は、値上げを通せる洋酒と和酒の製品開発、試薬の産業向け需要に資金を振り向け、採算が悪い受託や物流から撤退する規律を厳しく点検したい。
現金と不動産があるから帳簿の自己資本の全額が安全域になる、とも考えない。2026年6月には完全子会社化で有利子負債が増えた。運転資金に必要な現預金を余剰と数えず、のれんなど処分できない資産を悲観の床から外す。政策保有株の売却や還元強化は価値を株主に戻すが、一過性の売却益を永続する事業利益と混ぜない。
10年後の中立では再建がかなり進むものの、国内需要の減少と海外卸の競争で利益率が急改善するとは限らない。経営の規律が確かになった時には価値を見直せる。しかし現在の時価総額が前提とする利益回復には、長期株主の目線で求める安全域が十分とは言えない。
何で稼ぐ会社か
収益構造を理解するには、「宝の酒類事業」を一括りにしない方がよい。国内の宝酒造は、甲類焼酎、松竹梅の清酒、焼酎ハイボール、みりんや食品調味料を造る。2026年3月期の売上1,191億円のうち、ソフトアルコール飲料が440億円、焼酎が296億円を占めた。販売先はスーパー、コンビニ、飲食店、食品卸などで、製造とブランドへの投資が必要な事業である。
海外酒類の売上は約285億円ながら、開示された営業利益は約125億円と非常に大きい。柱は米国のエイジ・インターナショナルが扱うシングルバレル・バーボン「ブラントン」で、長年の販売権、商標、希少性が価格を守る。米国産の松竹梅、英国のトマーチンなどもあるが、ブラントンの利幅を海外の和酒全体へ当てはめてはいけない。
最大の売上源は、ミューチャル・トレーディング、フーデックス、タザキフーズ、カーゲラーなどが担う海外日本食材卸である。和食店や小売店に米、水産品、調味料、酒などを運び、取引先の数と一店当たり仕入額から売上が生まれる。2026年3月期は買収や物流拠点拡張で約1,959億円を売ったが、営業利益率はわずか1.7%。倉庫と配送網には切り替えの手間があるものの、物流費や人件費を吸収できなければ規模は利益を生まない。
タカラバイオはPCR酵素、遺伝子工学試薬、検査キット、研究用機器と、細胞加工・遺伝子治療関連の受託から成る。試薬・機器は約301億円の売上を持つが、受託・遺伝子医療も含めたバイオ全体では47億円の営業赤字だった。研究用試薬は繰り返し購入される一方、研究予算と海外競争に左右される。収益化しない受託施設を維持するより、再現性のある試薬供給を厚くする方が長期株主に意味がある。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社が容易に奪えない強みは、事業ごとに濃淡がある。宝酒造は2021年時点で甲類焼酎29.3%、清酒10.6%、本みりん58.4%と国内首位級のシェアを持っていた。全国の棚と家庭・飲食店に浸透したブランドは十年単位で残りやすい。国内でも焼酎ハイボールの販売増や商品改定は値決め力の証拠だが、焼酎の大容量品の販売減を完全には補えていない。
より強い値決め力を示すのが、限定生産のブラントンである。買収したエイジ・インターナショナルが持つ長年の販売網とブランド資産には競争上の価値があり、海外酒類の利益率は四割を超える。ただし生産量の制約や流通契約への依存もあるため、その稼ぐ力が需要に比例して何倍にもなるわけではない。事業価値の質を高く評価する部分だが、連結全体まで強い堀と判断するのは早い。
海外日本食材卸の参入障壁は、倉庫、冷蔵配送網、品ぞろえ、長年の顧客関係である。ただし競合のキッコーマン傘下JFCは24カ国・地域に拠点を持ち、調達と物流で強い競争相手となる。宝の海外卸は売上増に伴う販管費増で利益が細り、投下資本利益率も低下した。積極的に買った拠点を維持するだけでは、再投資利回りが資本コストを超えたとは言えない。
バイオ試薬は約1万品目、酵素技術と品質・再現性に蓄積があるが、研究室での採用品変更は不可能ではない。世界の研究予算が縮むと顧客が購買を絞り、先進的な設備にも稼働率の谷ができる。製造・物流・試薬の現物を売る事業が中心で、指定された人月型・席課金型のAIエージェント代替には直接当たらない。むしろ資本配分の弱さこそ、現在の事業価値を損なう最大の問題だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の酒類市場は長期の数量減少を前提にすべきだ。国税庁によると、国内酒類の課税数量は1999年度のピーク約1,017万キロリットルから減少した。2025暦年の清酒課税移出は約36.6万キロリットルで、前年より減っている。甲類焼酎ではオエノンなど、清酒では月桂冠・白鶴・大関、缶チューハイではサントリーやキリンなどが競う。宝が数量を守るには、焼酎ハイボールやノンアルコール商品への構成転換が要る。
2026年10月にはチューハイなどその他の発泡性酒類の酒税が1キロリットル当たり10万円に引き上げられた。表示価格を上げても増税分が利益になるわけではない。原料・缶材・物流人件費も上昇するため、国内酒類の名目売上を物価並みに伸ばすだけでは利益拡大の根拠として弱い。既存工場の償却額は取得時の価格のままだが、更新投資は上がった建設費で支払う必要がある。
海外で和食が普及する長期傾向は有利だが、市場が毎年伸びると決めつけない。農林水産省による2025年の海外日本食レストラン数は18.1万店で、2023年の18.7万店を下回った。アジアで約9,600店減る一方、南米や大洋州では増えており、地域による差が大きい。宝の主戦場である米欧豪では現地の食品卸やJFC、Wismettacなどが競合し、輸送能力と価格を争う。
規模の比較では、キッコーマンの2026年3月期海外食品卸売上は約4,329億円、利益率は約7.1%である。宝の約1,959億円と二社だけを比べた売上構成比は約31%だが、世界市場シェアではない。宝の世界全体のシェアと競合各社の厳密なシェアは非開示であり、この不確実性を数量の増加に反映する。
海外洋酒には高級バーボンを好む顧客の支持があるが、競合するディアジオやブラウン・フォーマンなども強いブランドを持つ。バイオ試薬はサーモフィッシャー、QIAGEN、ロシュ、NEBなどの国際競争市場であり、世界シェアは確認できない。米ドルは前提通り150円に固定し、海外の売上増を円安で説明しない。
資本政策と M&A
最大の資本政策上の転機は2026年のタカラバイオ完全子会社化である。非支配株主持分の買い取りに約714億円を支払い、同年6月末の自己資本は約2,462億円に減った。3月末の純現金は約73億円だったが、6月末の現預金約818億円に対し有利子負債は約1,156億円に増えた。追加利払いと完全子会社化による利益帰属の変化を考える。
2026年5月の「中期経営計画2030」は、2031年3月期の売上4,930億円以上、営業利益378億円以上、ROIC7%以上、ROE10%以上を掲げた。2028年3月期の途中目標も売上4,290億円、営業利益235億円、ROIC4.3%、ROE6.1%と明示している。株主還元は累進配当を導入し、5年間累計の総還元性向50%を基本方針としたが、自社株買いの具体的な金額の約束はない。
会社は国内酒造設備に254億円を投じ、試薬へ集中し、細胞加工受託と自社遺伝子医療開発を縮小する。政策保有株は2030年度までに約320億円を基準に半減以上を目指す方針であり、2026年10月には物流子会社の70%を中央倉庫に約60億円で譲渡すると決めた。売却益や不動産売却益は繰り返し稼ぐ利益には含めない。
配当は2026年3月期で約59億円に相当する。新方針どおり配当と自社株買いで利益の約半分を戻すが、製品を株主に贈る優待の原価も年0.5億円程度、10年で5億円程度と試算して還元に含める。増配と自社株買いの実績はあるが、過半の利益を継続還元してきたとは言えないため、余剰現金の株主帰属は75%と評価する。10月の臨時総会請求は資本規律を問う機会である。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
宝には、見かけの売上以上の資産がある。国内では焼酎・清酒・本みりんの上位ブランドが食品棚と飲食店に根を下ろし、海外ではブラントンという高級バーボンの稼ぐ力がある。海外洋酒の営業利益率が四割を超えるのは一過性の流行だけでは説明できない。価格を上げても銘柄を指定する顧客が残る製品を持つ会社は、物価が上がる十年間に収益を守りやすい。
海外日本食材卸の倉庫網はすでに米欧豪に広がっている。新たにすべての倉庫を建てなくても、既存の配送車両に収益性の高い水産品や調味料を積めるようになれば、増分利益率は高まる。キッコーマン傘下の海外卸には七%程度の利益率があるのだから、宝が現在の一・七%から中期的に四〜五%へ改善する余地は確かに存在する。生産・物流ネットワークを持つことが価格交渉力になる段階へ移れば、売上増が初めて株主価値につながる。
タカラバイオの非公開化は、損失を他の株主に説明しながら先送りする制約を外した。GMP細胞加工受託や自社遺伝子医療開発を止め、研究用試薬や産業向けOEMに集中する経営判断を迅速に下せる。倉庫子会社の売却や政策保有株縮減は、事業ポートフォリオ改革が単なる標語ではない証拠となる。株主による取締役の交代要求も、経営陣が投資判断を厳しく検証する契機になり得る。
仮に海外卸の取引先換算が五割増え、ブラントンの数量と単価がともに伸び、バイオが黒字転換すれば、連結営業利益は700億円超も視野に入る。配当と機動的な自社株買いを続けても利益の再投資余力は残る。この場合、現在の業績に引きずられて企業価値を小さく見積もるのは誤りである。
慎重な見方
同じ数字は別の見方もできる。会社は海外日本食材卸を買収で拡大し、売上を大幅に増やしたが、利益は減った。倉庫の密度を高めるには先に運送員、冷蔵設備、運転資金を用意する必要があり、需要が伸びても先行費用が膨らむ。キッコーマン傘下JFCの利益率に達すると決めつけることは、すでに失敗した資本配分をもう一度過大評価するのと同じである。海外の日本食レストラン数も直近では減少している。
高級洋酒の収益が厚いとはいえ、ブラントンの供給量や流通契約には制約がある。ブランドの希少性を守るためには大量生産できない。米国の消費低迷や同業の高級ウイスキーとの競争で、値上げと販売数量の同時拡大が止まれば、連結利益の柱が一気に細る。国内ではアルコール摂取量と人口が減少し、2026年10月の酒税引き上げもチューハイの価格に転嫁できなければ利益を圧迫する。
バイオの問題はもっと深い。試薬はサーモフィッシャーやQIAGENと競争し、大学と新興バイオ企業の資金調達が減ると注文が止まる。多額の設備投資で構えた受託施設は契約の獲得が遅れても償却・維持費を払わなければならない。2026年の米国子会社会計調査は過年度訂正不要で決着したが、四半期決算の大幅な遅延自体が海外事業の統制能力に課題を残した。
加えて、バイオ完全子会社化では約714億円の取得資金を使い、会社の現金余力はかつてほど大きくない。新中計のROE10%以上という目標は結果の約束ではない。利益が改善しないまま政策保有株や不動産を売って還元しても、取り崩す資産の価値を超える収益は生まれない。株主に必要なのは再建の物語ではなく、資本コストを上回る増分利益が実際に積み上がる証拠である。
どちらに重みを置いたか
海外洋酒のブランド力と国内調味料の安定性は評価する。しかし、海外日本食材卸の低採算とバイオの赤字は、連結事業としての堀を弱めている。2026年10月の会計調査が重大な訂正なしで終わった点は上振れ材料だが、改善計画の達成実績はこれからだ。楽観・やや楽観を計30%、やや悲観・悲観を計35%とし、業績改善を見込みながらもわずかに下側へ重みを寄せた。下に寄せる理由は、4年連続の減益、ROIC3.1%、バイオの赤字継続、増えた借入、海外卸のコスト超過が同時に確認されているためだ。結果として本質価値は現在の時価総額を約52%下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,884 円3,607 億円(+ 還元の換算額還元の合計 461 円883 億円)。 今の値に割り戻すと 1,287 円2,463 億円、今との差 −58.9%、 期待の年率 −3.1%(資本コスト 7.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 4,216 円8,071 億円 | 794 円1,520 億円 | +60.1% | +5.3% | 501 円959 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,890 円5,533 億円 | 616 円1,180 億円 | +12.1% | +1.3% | 701 円1,343 億円 |
| 中立 | 35% | 1,991 円3,812 億円 | 507 円970 億円 | −20.2% | −2.5% | 874 円1,674 億円 |
| やや悲観 | 24% | 564 円1,080 億円 | 303 円580 億円 | −72.3% | −13.8% | 208 円398 億円 |
| 悲観 | 11% | 474 円908 億円 | 78 円150 億円 | −82.3% | −16.7% | 61 円116 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,884 円3,607 億円 | 461 円883 億円 | −25.0% | −3.1% | 2,346 円4,490 億円 |
今の株価時価総額 3,129 円5,990 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 酒類のブランド力と卸の利益率改善が結実 利益 490 億円 · PER 16.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,216 円8,071 億円
希少性の高いブラントンは高価格を維持しながら供給が増え、海外和酒も米国・欧州の販売先を広げる。海外洋酒は年間瓶等価18百万本に達し、ウイスキーの値上げと商品構成改善で利益が厚くなる。国内では焼酎ハイボールと本みりんの高付加価値化が進み、飲酒人口の減少を新商品と競合からのシェア獲得で補う。
海外日本食材卸は、ミューチャル・トレーディングやフーデックス、カーゲラーの倉庫を一体で運用する。取引先店舗換算は約1.8万店に増え、水産品・調味料の自社仕入れを厚くすることで利益率は5%に達する。これは競合JFCの強い収益性に近づく展開であって、市場が突然何倍にも拡大する前提ではない。
バイオではGMP細胞加工受託や赤字の遺伝子医療開発から早期撤退し、米国企業向けOEM、遺伝子研究試薬、空間解析用製品が伸びる。研究試薬は継続購入と製品の品質実績で競争に勝ち、受託部門も小規模ながら黒字になる。株主の取締役交代要求を契機に大型投資を厳しく審査する体制が根づき、資本コストを上回る成長投資と還元が十年続く。
10年配当・自社株買いの累計1520億円、株主優待の原価概算5億円を含む。利益回復の度合いに応じた配当と機動的な買い戻しであり、現在の株数に過去の自社株買いを二重に反映しない。
- 国内酒類・みりん・調味料:数量 258(酒類・液体調味料の出荷液量換算(百万リットル、推計))× 価格 6.10(一百万リットル当たりの混合平均売上(億円、酒税込み))→ 売上 1,574 億円・営業利益 134 億円。国内酒類の実質販売量をほぼ維持し、高付加価値品の構成と価格転嫁で営業利益率8.5%へ改善。
- 海外酒類(ブラントン・トマーチン・和酒):数量 18.0(750mL瓶換算の年間製品・販売権等価数量(百万本、推計))× 価格 35(瓶換算一百万本当たり売上(億円、ロイヤリティ等含む))→ 売上 626 億円・営業利益 301 億円。ブラントンの販売枠拡大、値上げ、洋酒のプレミアム化が同時に進み、利益率48%。
- 海外日本食材卸:数量 18.0(年間取引先の店舗換算数(千店、推計。飲食店と小売の取引規模を標準化))× 価格 220(店舗換算一千店当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 3,960 億円・営業利益 198 億円。既存物流拠点への積載密度と調達力を高め、競合JFCの収益性に近づく利益率5%。
- バイオ・研究用試薬と機器:数量 12.0(試薬キット・機器の標準販売単位(百万個換算、推計))× 価格 52(百万標準販売単位当たり売上(億円、機器含む))→ 売上 624 億円・営業利益 87 億円。研究用試薬・産業用OEMの販売増、設備集約、付加価値化によって利益率14%。
- バイオ・受託製造/遺伝子医療:数量 18.0(開発・受託・医療事業等価案件数(件、推計))× 価格 5.60(等価案件一件当たり年間収益(億円、名目))→ 売上 101 億円・営業利益 10 億円。受託事業を選別し、固定費を抑えながら残す案件が営業黒字化。
- ワイン・物流・その他の連結純額:数量 70.0(外販取引の標準件数(万件、推計・内部消去後))× 価格 1.40(標準一万件当たり連結純売上(億円))→ 売上 98 億円・営業利益 3 億円。物流子会社譲渡で取引量は減少し、残存事業は小幅な利益を確保。
倍率:資本コストk=7.0%、2036年以降の名目成長g=2.5%、普通の堀の超過ROE残存率0.5。2036年自己資本3977.4億円に対して純利益490億円、ROE12.32%、新規投資RONIC=k+0.5×(ROE−k)=9.66%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=16.4710倍の上限そのものを採用。売却益、政策株式、事業に必要な現預金を二重に加算しない。自己資本の起点は2026年6月末2462.4億円。2036年の純利益490億円まで10年間の利益を線形に近似して累積利益3035億円とし、配当・自社株買い・優待の還元1520億円を控除した。
確率:プレミアムバーボンの値決め力が続き、卸の物流拠点を有効活用し、バイオの赤字を解消する成功が重なる必要がある。ブラントンの供給制約と研究分野の不透明さから、実現確率を10%にとどめる。
やや楽観 20% 中期計画を超えた利益回復 利益 355 億円 · PER 15.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,890 円5,533 億円
2028年の業績目標をおおむね達成したのち、海外日本食材卸の倉庫網に注文が積み重なる。JFCには及ばないものの、配送車両の稼働率と水産品・調味料の構成が改善し、海外卸の営業利益率が3.8%へ上がる。主要顧客は和食店だけでなく食品小売にも広がる。世界の日本食レストラン数の伸びは控えめでも、既存拠点への納品額を高めて成長できる。
国内では主力チューハイと調味料の値上げを通し、数量減少を抑える。ブラントンの供給は大幅には増えないが、価値を認める消費者向けの価格と上位銘柄の構成で海外酒類の利益は着実に増える。価格上昇は円安ではなく、ドル円150円の前提での商品単価向上である。
バイオでは研究用試薬の企業向け案件が定着し、採算の取れない受託事業からの撤退が完了する。少数株主がいなくなったことで、利益の回復分は親会社株主に帰属する。一方で物流更新投資と借入返済も続くため、還元を急増させず、経営の改革とブランド育成に一定の利益を残す。
10年配当・自社株買いの累計1180億円、株主優待の原価概算5億円を含む。利益回復の度合いに応じた配当と機動的な買い戻しであり、現在の株数に過去の自社株買いを二重に反映しない。
- 国内酒類・みりん・調味料:数量 247(酒類・液体調味料の出荷液量換算(百万リットル、推計))× 価格 5.95(一百万リットル当たりの混合平均売上(億円、酒税込み))→ 売上 1,470 億円・営業利益 115 億円。数量減を高付加価値品と値上げで補い、利益率7.8%。
- 海外酒類(ブラントン・トマーチン・和酒):数量 15.2(750mL瓶換算の年間製品・販売権等価数量(百万本、推計))× 価格 33(瓶換算一百万本当たり売上(億円、ロイヤリティ等含む))→ 売上 502 億円・営業利益 231 億円。高級ウイスキーの数量と価格が伸び、高い採算を維持。
- 海外日本食材卸:数量 16.0(年間取引先の店舗換算数(千店、推計。飲食店と小売の取引規模を標準化))× 価格 220(店舗換算一千店当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 3,520 億円・営業利益 134 億円。既存倉庫の稼働率向上と商品構成改善で利益率3.8%。
- バイオ・研究用試薬と機器:数量 10.4(試薬キット・機器の標準販売単位(百万個換算、推計))× 価格 51(百万標準販売単位当たり売上(億円、機器含む))→ 売上 530 億円・営業利益 53 億円。産業用試薬が伸び、利益率10%。
- バイオ・受託製造/遺伝子医療:数量 14.0(開発・受託・医療事業等価案件数(件、推計))× 価格 5.30(等価案件一件当たり年間収益(億円、名目))→ 売上 74 億円・営業利益 2 億円。採算の悪い受託を整理し、残存案件は小幅黒字。
- ワイン・物流・その他の連結純額:数量 63.0(外販取引の標準件数(万件、推計・内部消去後))× 価格 1.40(標準一万件当たり連結純売上(億円))→ 売上 88 億円・営業利益 2 億円。物流子会社の譲渡後、残存事業は緩やかに収益改善。
倍率:資本コストk=7.0%、2036年以降の名目成長g=2.5%、普通の堀の超過ROE残存率0.5。2036年自己資本3642.4億円に対して純利益355億円、ROE9.75%、新規投資RONIC=k+0.5×(ROE−k)=8.37%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=15.5873倍の上限そのものを採用。政策保有株式の売却益などは継続利益に含めない。自己資本の起点は2026年6月末2462.4億円。10年間の累積純利益を2360億円と見込み、配当・自社株買い・優待1180億円を控除した。
確率:国内ブランド、海外の価格改定、卸の利益率改善はそれぞれ一定の裏付けがある。ただしバイオ試薬の需要回復が同時に必要で、現在の実績から一段の実行を求めるため20%とする。
中立 35% 主力ブランドを維持し、低採算事業はゆっくり再建 利益 260 億円 · PER 14.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,991 円3,812 億円
十年後も国内の焼酎、清酒、みりんは使われているが、消費人口と飲酒機会の減少に逆らうのは難しい。焼酎ハイボールとノンアルコール商品は一定の棚を守り、国内の販売液量は約8%減る。価格は上がるが酒税と競争で物価の上昇率を完全には転嫁できず、製造拠点の更新費用が利益の伸びを抑える。
海外のブラントンとトマーチンは高級品として支持され、海外酒類の数量は緩やかに増える。瓶等価数量は13.6百万本となり、価格は物価に沿って上がる。強いブランドでも出荷枠と流通契約の制約が残るため、利益率は現状よりやや落ち着く。海外日本食材卸では新しい地域への大型買収を繰り返さず、既存の物流網と品ぞろえを活用して店舗換算14千店へ伸ばす。利益率は2.8%まで回復するが、競合JFCの水準には届かない。
バイオは赤字部門の縮小と人員・研究費の再配分が進み、試薬・機器は黒字で残る。自社の遺伝子治療開発と一部の細胞加工受託は大きく縮小するため、バイオの売上が消えても赤字幅は細る。2031年のROIC7%以上という会社目標を丸ごと前提にせず、十年後の連結営業利益は約388億円へ回復する程度にとどめる。成長投資の規律は改善するが、高い超過収益を連結で維持するには至らない。
10年配当・自社株買いの累計970億円、株主優待の原価概算5億円を含む。利益回復の度合いに応じた配当と機動的な買い戻しであり、現在の株数に過去の自社株買いを二重に反映しない。
- 国内酒類・みりん・調味料:数量 240(酒類・液体調味料の出荷液量換算(百万リットル、推計))× 価格 5.86(一百万リットル当たりの混合平均売上(億円、酒税込み))→ 売上 1,406 億円・営業利益 98 億円。販売液量は現在の約0.92倍、名目の混合単価は約1.28倍。
- 海外酒類(ブラントン・トマーチン・和酒):数量 13.6(750mL瓶換算の年間製品・販売権等価数量(百万本、推計))× 価格 32(瓶換算一百万本当たり売上(億円、ロイヤリティ等含む))→ 売上 432 億円・営業利益 181 億円。瓶換算数量は現在の約1.13倍、名目単価は約1.34倍。
- 海外日本食材卸:数量 14.0(年間取引先の店舗換算数(千店、推計。飲食店と小売の取引規模を標準化))× 価格 219(店舗換算一千店当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 3,066 億円・営業利益 86 億円。店舗換算数量は約1.17倍、名目単価は約1.34倍、営業利益率2.8%。
- バイオ・研究用試薬と機器:数量 9.2(試薬キット・機器の標準販売単位(百万個換算、推計))× 価格 50(百万標準販売単位当たり売上(億円、機器含む))→ 売上 464 億円・営業利益 34 億円。産業向け試薬の需要は残るが、国際競争のため価格と利益率の改善は限定的。
- バイオ・受託製造/遺伝子医療:数量 11.0(開発・受託・医療事業等価案件数(件、推計))× 価格 5.33(等価案件一件当たり年間収益(億円、名目))→ 売上 59 億円・営業利益 −8 億円。不採算受託から撤退するが、一部の固定費が残り、赤字は縮小にとどまる。
- ワイン・物流・その他の連結純額:数量 60.0(外販取引の標準件数(万件、推計・内部消去後))× 価格 1.40(標準一万件当たり連結純売上(億円))→ 売上 84 億円・営業利益 2 億円。物流子会社の一部売却で事業規模は縮小。
倍率:資本コストk=7.0%、2036年以降の名目成長g=2.5%、普通の堀の超過ROE残存率0.5。2036年自己資本3377.4億円に対して純利益260億円、ROE7.70%、新規投資RONIC=k+0.5×(ROE−k)=7.35%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=14.6627倍の上限そのものを採用。純現金を別途過大計上せず、ROEの低さは10年間の利益と自己資本に反映した。自己資本の起点は2026年6月末2462.4億円。10年間の累積純利益を1885億円と見込み、配当・自社株買い・優待970億円を控除した。
確率:既存の洋酒ブランドと国内販路の耐久性がある一方、2026年時点で海外卸の利益率1.7%とバイオ赤字が確認されている。計画の全達成でなく、失敗した投資の段階的な修正を中立の中心とするため35%を配する。
やや悲観 24% 卸の規模は維持するが採算が戻らない 利益 93 億円 · PER 10.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 564 円1,080 億円
海外日本食材卸は輸送費と人件費の高止まりに直面し、倉庫を統合しても物流費を十分に回収できない。売上は物価によって名目では伸びるが、営業利益率は1.2%にとどまる。競合のJFCや地域の食品卸が品目の調達価格で優位に立ち、宝の拡大策は得意先の獲得より先に費用を増やしてしまう。
国内の飲酒数量は人口減少と2026年の酒税改正の影響で約18%縮小する。焼酎ハイボールは一定のファンを持つが、値上げは原料や酒税の転嫁に追われ、製造の営業利益率は3.5%まで下がる。海外洋酒ではブラントンの希少性は残るものの、競合の高級ウイスキーや米国消費の弱さで販売本数が減る。商品の高付加価値化だけでは利益の減少を補えない。
バイオの受託施設の整理には時間がかかり、試薬でも中国・欧米の競争で十分に値上げできない。採算の悪い事業は縮小するが、残された設備の保守費用は固定費として続く。株主還元は累進配当を維持する範囲に限られ、自社株買いは小さい。事業は存続し資産も残るが、資本コストに届かない利益の上に高い価値はつけられない。
10年配当・自社株買いの累計580億円、株主優待の原価概算5億円を含む。利益回復の度合いに応じた配当と機動的な買い戻しであり、現在の株数に過去の自社株買いを二重に反映しない。
- 国内酒類・みりん・調味料:数量 213(酒類・液体調味料の出荷液量換算(百万リットル、推計))× 価格 5.38(一百万リットル当たりの混合平均売上(億円、酒税込み))→ 売上 1,146 億円・営業利益 40 億円。国内酒類数量が約18%減り、税負担と競争で利益率3.5%。
- 海外酒類(ブラントン・トマーチン・和酒):数量 10.6(750mL瓶換算の年間製品・販売権等価数量(百万本、推計))× 価格 28(瓶換算一百万本当たり売上(億円、ロイヤリティ等含む))→ 売上 300 億円・営業利益 102 億円。高級洋酒の販売数量が減り、利益率は34%へ低下。
- 海外日本食材卸:数量 12.0(年間取引先の店舗換算数(千店、推計。飲食店と小売の取引規模を標準化))× 価格 210(店舗換算一千店当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 2,520 億円・営業利益 30 億円。取引先店舗換算数は横ばいで物流費が高止まりし、営業利益率1.2%。
- バイオ・研究用試薬と機器:数量 6.9(試薬キット・機器の標準販売単位(百万個換算、推計))× 価格 45(百万標準販売単位当たり売上(億円、機器含む))→ 売上 311 億円・営業利益 −8 億円。研究予算と販売数量が落ち、固定費を賄えず赤字。
- バイオ・受託製造/遺伝子医療:数量 7.0(開発・受託・医療事業等価案件数(件、推計))× 価格 4.90(等価案件一件当たり年間収益(億円、名目))→ 売上 34 億円・営業利益 −10 億円。受託施設の撤退は進むが残存固定費が重い。
- ワイン・物流・その他の連結純額:数量 46.0(外販取引の標準件数(万件、推計・内部消去後))× 価格 1.30(標準一万件当たり連結純売上(億円))→ 売上 60 億円・営業利益 −1 億円。事業縮小に伴う固定費負担で赤字。
倍率:営業利益144.8億円、純利益93億円、資本コスト7.0%に対してROEは3.17%で下回る。資本を増やしても価値を生みにくいため、継続利益による上限1÷k=14.29倍より低い10.8倍にとどめる。現在のPBRや過去の谷の倍率ではなく、稼ぐ力を保守的に評価する。売却資産の床625億円を別途検算。自己資本の起点は2026年6月末2462.4億円。2036年純利益93億円までの10年間の利益を線形に近似し、累積純利益1050億円から配当・自社株買い・優待580億円を控除した。
確率:食材卸の増収とコスト超過が同時に起きている2026年の実績を延長し、国内市場の下押しとバイオの改革遅延が重なる筋書きとする。直近の実績に具体的な根拠があるため24%を配分する。
悲観 11% 洋酒の優位性と卸の資本効率が共に崩れる 利益 −60 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 474 円908 億円
国内ではアルコール離れと競合ブランドへの乗り換えが進み、販売液量は約三割減る。チューハイも価格転嫁を続けられず、値上げ幅は物価を大きく下回る。縮小する工場の稼働率が落ち、必要な更新投資と賃金だけが重く残る。国内ブランドの存在は維持されるが、かつてのように利益を支える力は失われる。
海外酒類ではブラントンの販売数量が減り、値上げも止まる。市場全体が消えるわけではないが、販売権の収益条件や高級酒の競争が変わることで、ブランドの利益率が大幅に低下する。日本食材卸では食材価格競争と配送網の固定費が重なり、買収した倉庫が赤字になる。地域からの撤退を余儀なくされ、取引先店舗換算は9.3千店へ減る。
バイオでは試薬も値下げ競争に負け、受託事業を縮小しても残された設備費用と研究費が負担となる。2028〜2032年の損失が特に大きく、十年間の累積損失に加えてのれんや設備を約200億円減損する。累計の赤字と初期の株主還元を差し引いた2036年の自己資本は約1,650億円まで減少する。倒産を当然視せず、売れる資産は残るが、株主がすぐ清算を決められないため悲観の価値を帳簿の自己資本の全額にはしない。
事業が傾く前の数年間に限定した累積配当・株主優待約150億円。その後は赤字と財務保全を優先して配当停止も起こり得る。
- 国内酒類・みりん・調味料:数量 180(酒類・液体調味料の出荷液量換算(百万リットル、推計))× 価格 5.01(一百万リットル当たりの混合平均売上(億円、酒税込み))→ 売上 902 億円・営業利益 11 億円。国内酒類数量は約31%減り、工場稼働率の低下で利益率1.2%。
- 海外酒類(ブラントン・トマーチン・和酒):数量 7.4(750mL瓶換算の年間製品・販売権等価数量(百万本、推計))× 価格 24(瓶換算一百万本当たり売上(億円、ロイヤリティ等含む))→ 売上 176 億円・営業利益 30 億円。ブラントンの販売数量減少、競合の値下げ圧力、販売権条件悪化で利益率17%。
- 海外日本食材卸:数量 9.3(年間取引先の店舗換算数(千店、推計。飲食店と小売の取引規模を標準化))× 価格 188(店舗換算一千店当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 1,748 億円・営業利益 −35 億円。取引先減少と倉庫・配送の固定費で営業赤字。
- バイオ・研究用試薬と機器:数量 5.3(試薬キット・機器の標準販売単位(百万個換算、推計))× 価格 42(百万標準販売単位当たり売上(億円、機器含む))→ 売上 223 億円・営業利益 −22 億円。国際的な価格競争で試薬の数量と利益率が悪化。
- バイオ・受託製造/遺伝子医療:数量 3.0(開発・受託・医療事業等価案件数(件、推計))× 価格 4.00(等価案件一件当たり年間収益(億円、名目))→ 売上 12 億円・営業利益 −16 億円。受託から大幅撤退しても固定費・研究費が残り、売上を上回る損失。
- ワイン・物流・その他の連結純額:数量 30.0(外販取引の標準件数(万件、推計・内部消去後))× 価格 1.20(標準一万件当たり連結純売上(億円))→ 売上 36 億円・営業利益 −3 億円。物流・その他事業の縮小と撤退費用で赤字。
倍率:2036年は純利益が赤字−60億円で、正のPERを意味ある継続利益の尺度として使えない。買収先のれん・設備の減損約200億円を別途計上し、10年間の累積赤字と初期還元を差し引いた自己資本1650億円にPBR0.55倍を適用して907.5億円。今の自己資本より大きい将来純資産を悲観の床に使わない。2026年6月末自己資本2462.4億円から、2028〜2032年に大きく発生する累積営業由来の純損失約460億円、株主還元150億円、追加減損約200億円を控除した。現在の資産を税・売却費用後に換金した床625億円を上回ることを確認した。
確率:主力洋酒のプレミアム需要低下、海外卸の取引先喪失、試薬市場での競争敗退が重なる厳しい筋書きである。確率は低いがバイオ買収後の借入増と過去の投資失敗から無視せず11%とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内酒類・みりん・調味料
甲類焼酎、松竹梅、焼酎ハイボール、辛口ゼロボール、本みりん、業務用調味料。国内販売数量は構造的に縮み、高付加価値商品の構成と値上げで補う。
| 数量酒類・液体調味料の出荷液量換算(百万リットル、推計) | 価格一百万リットル当たりの混合平均売上(億円、酒税込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 260 | 4.58 | 1,191 | 57 |
| 10 年後 中立 | 240 | 5.86 | 1,406 | 98 |
取り方:会社有報の2026年3月期カテゴリー売上は焼酎296.26億、清酒108.62億、ソフトアルコール439.90億、本みりん99.23億、その他調味料94.72億、その他酒類44.90億、原料アルコール107.58億、計1191.22億。実出荷の全体リットルは非開示である。350mL×24本の焼酎ハイボールについて2025年11月の会社資料には2026年3月期1,820万ケースの計画があり、その液量約153百万Lを需要の手がかりとする。酒税を含む混合卸価格を約458円/Lと仮定し、酒類・みりん等を計260百万Lと逆算した粗い推計であり、実績の数量や正確な市場シェアではない。2021年の甲類焼酎29.3%、清酒10.6%、本みりん58.4%は会社公表の当時のシェアで、2026年の値として流用しない。出典:https://edinetdb.jp/company/E00396/text?fy=2026 および https://ir.takara.co.jp/ja/Library/IREvents/IREvents-5116211146980010845569012/main/0/teaserItems1/02/linkList/0/link/20220830SMBC.pdf
海外酒類(ブラントン・トマーチン・和酒)
Age Internationalのブラントン、英国トマーチン、米国製松竹梅の販売権・製造と輸出。利益の中心はプレミアムバーボンの希少性と値決め力。
| 数量750mL瓶換算の年間製品・販売権等価数量(百万本、推計) | 価格瓶換算一百万本当たり売上(億円、ロイヤリティ等含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.0 | 24 | 285 | 125 |
| 10 年後 中立 | 13.6 | 32 | 432 | 181 |
取り方:2026年3月期海外酒類の売上285.02億円・営業利益124.92億円は会社の品種別資料と中計説明の領域内訳に基づく。和酒89.37億円、洋酒約201.04億円が示されるが両者の合計との差には内部取引が含まれる。ブランド別本数は非開示であり、販売権収益や樽単価の混在を考慮した750mL瓶換算12百万本×平均2375円を明示的な仮定として使う。数量は実測本数でなく等価数量、2026年の出荷実績との混同は不可。出典:https://www.takara.co.jp/company/mid-term.html と https://edinetdb.jp/company/E00396/midterm-plans/
海外日本食材卸
米国・欧州・豪州の日本食レストラン、小売業者向け和酒、米、魚介類、調味料、その他食材の調達・保管・配送。
| 数量年間取引先の店舗換算数(千店、推計。飲食店と小売の取引規模を標準化) | 価格店舗換算一千店当たり年間売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.0 | 163 | 1,959 | 34 |
| 10 年後 中立 | 14.0 | 219 | 3,066 | 86 |
取り方:会社の2026年3月期海外日本食材卸の売上1959.44億円・営業利益34.08億円は公表値。取引先件数は非開示なので、顧客の一店舗換算年間仕入額を約1633万円と仮定して約1.2万店を算出する。農水省2025年の世界日本食レストラン18.1万店は需要の上限参考であり、宝の取引先や世界シェアではない。キッコーマンの2026年3月期海外卸約4329億円を比較すると主要2社売上の宝比率は31.2%だが、両社以外の卸を含まないため市場シェアとは称しない。出典:https://www.maff.go.jp/j/press/yusyutu_kokusai/kaitaku/251128.html、https://www.kikkoman.com/jp/ir/lib/highlight.html
バイオ・研究用試薬と機器
PCR酵素、遺伝子研究用キット、検査・産業向け試薬、研究用機器。商業利用の継続購入に軸足を移す計画。
| 数量試薬キット・機器の標準販売単位(百万個換算、推計) | 価格百万標準販売単位当たり売上(億円、機器含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.0 | 38 | 301 | 12 |
| 10 年後 中立 | 9.2 | 50 | 464 | 34 |
取り方:会社開示の試薬291.97億円と機器8.96億円を合算。研究用酵素やキットの注文数量は公表されておらず、機器を含む異質な製品群の平均単価を3762円/標準単位と仮置きして800万単位相当とした。バイオ内訳の部門別営業利益は非開示のため、試薬・機器を営業黒字12億円、その他を赤字58.88億円と仮に配賦し、バイオ全体の実績営業損失46.88億円に一致させる。この12億円は公表実績ではない。Thermo Fisher、QIAGEN、Roche、NEBが競争相手で、世界試薬の確定市場シェアは非開示。出典:https://edinetdb.jp/company/E00396/text?fy=2026 と https://www.takara.co.jp/company/intro/takara-bio.html
バイオ・受託製造/遺伝子医療
研究・遺伝子細胞関連の受託、遺伝子医療関連事業。GMP細胞加工受託と自社の遺伝子治療臨床開発を中止する計画。
| 数量開発・受託・医療事業等価案件数(件、推計) | 価格等価案件一件当たり年間収益(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 25.0 | 4.09 | 102 | −59 |
| 10 年後 中立 | 11.0 | 5.33 | 59 | −8 |
取り方:受託72.91億円と遺伝子医療29.32億円を合算。契約件数・個別単価の公式開示はなく、案件の大きさを標準化した25件相当×4.0892億円という粗いモデル上の単位であり、実際の25契約を意味しない。営業損失−58.88億円はバイオ全体の−46.88億円から試薬等への仮配賦+12億円を差し引いた推定で、実績の内訳ではない。受託施設の固定費と撤退の将来が最大の不確実性。出典:https://edinetdb.jp/company/E00396/text?fy=2026 と https://www.takara.co.jp/company/mid-term.html
ワイン・物流・その他の連結純額
ワイン輸入販売や物流、賃貸、不動産等の外販と内部売上・費用の連結消去純額。2027年4月に物流子会社70%の譲渡を予定。
| 数量外販取引の標準件数(万件、推計・内部消去後) | 価格標準一万件当たり連結純売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 1.04 | 104 | 1 |
| 10 年後 中立 | 60.0 | 1.40 | 84 | 2 |
取り方:実績その他セグメント総売上322.00億円、全社の内部取引売上消去−192.14億円、海外酒類等のセグメント内部取引消去を踏まえ、上記5事業以外の連結外部売上残差104.32億円を計上した。営業利益1.39億円は、全社営業利益170.8億円から他の5領域の営業利益(生物領域は仮配賦)を除いた連結調整込み残差であり、会社公表のその他営業利益33.58億円とは異なる。外販の標準100万取引も単価約1.04万円から逆算した仮定。2026年10月5日、物流子会社70%の譲渡価格約59.85億円、実行予定2027年4月1日が開示済み。出典:https://ir.takara.co.jp/ja/IRInformation/Filing/Filing-2026100501.html
リスクと懸念
ブラントンの供給制約とブランド集中
海外酒類は売上の一割未満なのに連結営業利益の大きな割合を担う。ブラントンは販売権や限定供給が強みだが、供給元との取引条件、米国高級ウイスキーの需要、競合高級品の価格攻勢の影響を受ける。希少性は単価を守っても出荷数量の急拡大を妨げ得るため、海外酒類の拡大を全社へ単純に外挿できない。
海外日本食材卸の物流費とM&Aの投資回収
海外日本食材卸は2026年3月期に売上約1,959億円へ伸びたが、営業利益率は1.7%にとどまった。ミューチャル・トレーディングや欧州子会社の倉庫・人員・のれん負担は、売上拡大の裏側にある資本コストである。顧客数だけ増えても粗利率と配送密度が改善しなければ、買収の増分ROICが必要利回りに達しない。
バイオの需要停滞と研究投資の回収不能
試薬売上は世界の研究費、製薬企業の資金調達、研究テーマの移り変わりに左右される。競合するサーモフィッシャー、QIAGEN、NEBは技術と営業網を持ち、国内の伝統ある試薬メーカーだからといって海外で値上げできるわけではない。赤字の受託・遺伝子医療を整理しても、停止施設の減損や維持費が残れば株主価値の回復は遅れる。
借入増と現金の二重計上
2026年3月期末の純現金は約73億円だが、2026年6月末にはバイオ株買い取り後の有利子負債が約1,156億円に増え、現預金約818億円を上回った。卸売の棚卸資産や運転資金と製造の更新設備も必要であり、手元現金全額を事業の価値に上乗せできない。金利が3〜4%へ向かう前提では、買収債務の借り換え費用が利益を削る。
酒税改正と国内アルコール消費の構造減
2026年10月の酒税改正でチューハイなどその他の発泡性酒類の税率が上がった。焼酎ハイボールのブランド力を生かして価格転嫁しても、人口減少と飲酒機会の縮小で国内数量の下押しは続く。価格の引き上げで売上が増えても、それが酒税と原材料・配送費を埋めるだけなら利益は増えない。
海外会計・取締役交代要求と経営の実行力
タカラバイオUSAの会計処理に関する調査では重要性のない誤謬が見つかったものの、意図的な不正や過年度決算訂正を要する影響はないと公表された。一方、四半期決算の大幅遅延は海外統制の弱さを示す。2026年10月には3人の取締役解任・選任を求める臨時総会請求があり、改革の機会であると同時に指揮系統の混乱にもつながり得る。
更新投資と薄いオーナー利益
2026年3月期の設備投資は約245億円で、減価償却費約122億円のほぼ二倍に達した。既存設備の償却は取得時の円価額で進む一方、建て替えや冷蔵物流の増設にはインフレ後の資金が必要になる。会計上の利益が回復しても維持更新の設備投資が多ければ、配当や自社株買いに使える現金は純利益ほど増えない。
今後の分かれ目
- 海外日本食材卸の営業利益率が2028年3月期までに3%以上となり、その後も配送量増に合わせて維持されたら
- 既存倉庫の稼働率改善による増分ROICの改善を確認できる。中立の利益率とやや楽観の確率を引き上げる。ただし売上増だけでなく営業キャッシュフローとの一致も確認する。
- ブラントンの販売数量が減る一方で値上げが続き、海外酒類の利益が頭打ちになったら
- ブランドの希少性は残っても稼ぐ力の数量上限が見えたことになる。海外酒類の数量前提と楽観側の時価総額を下げ、依存度の高さを再評価する。
- タカラバイオの営業損失が2028年3月期までに解消し、試薬の企業向け顧客が増えたら
- 赤字事業からの撤退が再投資利回りの回復につながった証拠となる。中立で見込むバイオの黒字化を前倒しにし、やや悲観の確率を引き下げる。
- 2031年3月期に会社目標のROIC7%以上・ROE10%以上が営業現金流入を伴って達成されたら
- 成長投資と資本配分の実行力を再評価する。継続利益を基礎に2036年の営業利益と正当化PERを計算し直し、本質価値を引き上げ得る。
- 海外卸の人件費・運送費上昇で営業利益率が1%未満となり、バイオの赤字も続いたら
- 低収益事業への投資で資本コストを賄えない状況が長期化する。やや悲観・悲観の確率を引き上げ、追加投資と借入の必要額を見直す。
- 2026年10月に請求された取締役交代を巡り、事業売却と自社株買いの数量・金額が具体的に決まったら
- 単なる株価対策でなく、低ROIC資産の処分価格と還元額を検証する。売却益を継続利益には加えず、売却後に失う営業利益も差し引いたうえで評価し直す。
- 酒税引上げ後の焼酎ハイボール販売数量が減少し、国内の主力カテゴリーがそろって前年割れしたら
- 国内の数量縮小をやや悲観側へ寄せる。逆に国内で販売本数を保ち、平均単価が原価上昇を上回った場合だけ値決め力の評価を高める。
見ておくもの
- 海外日本食材卸の四半期売上・営業利益率・粗利益率・のれん償却後の営業キャッシュフロー
- Age International/ブラントンの販売数量・単価、海外酒類の利益率と和酒比率
- タカラバイオの試薬・機器売上とGMP受託撤退後の営業損失、設備減損額
- 2028年3月期の営業利益235億円・ROIC4.3%、2031年3月期の営業利益378億円・ROIC7%目標の達成度
- 2026年10月の株主総会請求への対応、取締役構成と投資案件の事後検証
- 政策保有株の売却累計額、タカラ物流システム株譲渡の実行と売却金の用途
- 焼酎ハイボール出荷ケース数、国内清酒・甲類焼酎の数量、2026年10月の酒税改正後の採算
倍率と資本コストの決め方
株価2,693.5円、株数1億9,144万株、現在の時価総額5,157億円は最後の照合にだけ用いた。10年後の売上は国内出荷液量、海外酒類の瓶等価、海外食材卸の取引先店舗換算、試薬単位と受託案件で数量と単価を別々に積み上げた。いずれも数量非開示の部分は推計と断った。PERは当期の市場倍率・同業PERから決めず、資本コスト7.0%、2036年以降の成長率2.5%、超過ROEの半分が残る通常の堀から算出した。ROEが資本コストに届かない悲観側は利益の稼ぐ力と売却可能資産の床を使い、過去のPBRの谷は使っていない。2028年3月期以降の新リース基準が負債表示を変えても、営業上の賃借料は同じ基準で収益に織り込む。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。