結論
中部飼料は、牛・豚・鶏の餌になる配合飼料をつくって売る会社だ。稼ぎの 9 割は飼料で、残りを鶏卵・肥料・畜産機器・保険代理が占める。筆者の結論は、10 年で見た本質価値は今の時価総額に届かない、というものだ。いちばんの理由は、いまの利益が山にあることである。
26 年 3 月期の営業利益は過去最高の 66 億円だった。ただ、その 4 割強は「原料ポジション」の改善、つまり安く仕入れた原料と飼料の売値の差が広がった分だ。穀物の値下がりと円高が重なった一時の追い風で、逆に回ることもある。実際、2023 年 3 月期は営業利益が 17 億円まで落ちた。
飼料は穀物と大豆かすの値段に連れて動く商品である。メーカーは原料の値上がりを売値に載せるだけで、利ざやを自分では決められない。1 トンあたりの利益は千円前後と薄い。国内の家畜は頭数が横ばいから微減で、数量の伸びも見込みにくい。
救いは財務の堅さだ。自己資本比率は 67% で、純現金もある。還元も厚く、経営は資本の使い方に誠実だと筆者は見る。ただ、稼ぐ力が資本コストに届かない会社では、厚い自己資本は価値を上乗せしない。堀が浅い会社に高い倍率は付けられない。今の値段が示す期待は、原料ポジションの山が続くことへの賭けに近い、と筆者は考える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社は「安く買えれば悪くないが、持ち続けて複利で増える会社ではない」と筆者は見る。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、純利益から工場の維持と更新の費用を引いたものだ。飼料工場は設備が古く、毎年かなりの更新投資がいる。基金負担金も毎年出ていく。山の年の利益をそのままオーナー利益と考えると見誤る。
事業はわかりやすい。家畜は食べ続けるので、飼料は無くならない。一方で、儲けの大きさは原料相場の読みで決まり、経営者の腕前が毎年の利益に出るとは限らない。利益が読みにくい事業なので、確信度を上げすぎない。
資本の使い方は安心できる。借金に頼らず、増配と自社株買いを続けている。自己資本比率の高さと純現金は、悪い年を耐える安全域になる。ただ、稼ぐ力が資本コストに届かない会社では、利益を積み増す価値は小さい。同じ利益を配当や自社株買いで株主へ返してこそ、価値が減らない。
筆者が持ちたいと思うのは、原料ポジションの山に頼らない利益が 50 億円を安定して超える姿になってからだ。今の利益のまま 10 年の価値を測れば、割高側に傾く。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は単純だ。トウモロコシ、大豆かす、こうりゃんといった輸入原料を、家畜の種類と成長段階に合わせて配合し、畜産農家やその取引先へ売る。売値は、原料代に加工費・物流費・利益を乗せて決まる。飼料のたんぱく質やビタミンの設計で成果が変わるので、メーカーは「同じ餌でも育ちが違う」という差を売ろうとする。これが差別化飼料だ。
事業は大きく 2 つある。飼料は、畜産向けが年 308 万トン、水産向けが 3.8 万トンだ。国内の配合飼料はおよそ 2,400 万トンなので、畜産向けで国内の 1 割強を担う。もう 1 つのその他事業は、特殊卵「ごまたまご」などの鶏卵販売、有機入りの配合肥料、ふん尿処理などの畜産用機器、畜産保険の代理業で、利益は 12 億円ほどだ。いずれも飼料のお客である畜産農家に売る周辺の事業である。
工場は北海道の釧路から九州まで全国にあり、地域の畜産事情に合わせてつくり分ける。釧路ではAI・IoT で運転を効率化し、他の工場へ広げている。東北では、伊藤忠飼料と共同でつくるみらい飼料の八戸工場がある。2024 年 1 月にみらい飼料は連結から外れ、会社の公式サイトには 2026 年 9 月、残る株式の譲渡の知らせも出ている(本文は未確認)。
利益のぶれを生むのは、原料ポジションと基金負担金だ。前者は、原料の仕入れと飼料の売値の時間差で生まれる得失である。後者は、飼料の値段が急騰した時に農家へ補てんするための積み立てで、年 54 億円にのぼる。売上が 2,000 億円を超えても営業利益が数十億円にとどまるのは、この 2 つが薄い利ざやを挟み込むからだ。
優良さと弱いところ
優良さは「普通」だ。堀、つまり他社がまねできない強みは、深くない。
強みは 3 つある。成分設計の研究力、全国に散らばる工場網、農家に入り込む提案型の営業だ。さらに、飼料の周りの卵・肥料・保険が、同じ農家との取引を厚くしている。ごまたまごのような自社ブランドの卵は、飼料の値動きに左右されにくい利益になる。
弱みは、値段を自分で決められないことだ。配合飼料は、原料の相場に連れて売値が決まる商品である。国内には、全農と、協同飼料・日本配合飼料が一緒になったフィード・ワンという大きな相手がいる。畜産向け 308 万トンの中部飼料は規模で一段下がり、価格交渉で優位に立てない。
資本の使い方は評価できる。借金を増やさず、中期経営計画を大きく超える利益を出し、増配と自社株買いに回した。経営者は工場の老朽化対策にも手を打っている。
もう 1 つ、配合飼料は農家が「去年と同じ餌」を使い続ける傾向が強く、一度つかんだ顧客が離れにくい。この粘りが、赤字を避ける下支えになっている。
資本効率はこれからの課題だ。26 年 3 月期の ROE は 7.6% だが、これは山の値で、過去 10 年の中央値は 6.8% にとどまる。稼ぐ力が資本コストを下回るなら、自己資本を厚くしても株主の価値は増えない。筆者がいちばん気にしているのは、ここである。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の配合飼料は年 2,400 万トン前後で、20 年近く横ばいが続く。昭和の終わりのピークから減ったあと、頭数の減少が止まって落ち着いた形だ。ただ、中身は変わっている。肉牛は 260 万頭弱、乳牛は 130 万頭弱で、どちらも年に 1.5〜3% 減る。農家の戸数は年に 5〜7% 減り、残る農家が大きくなる。
大きな農家は、取引先を値段と安定供給で選ぶ。そこで有利なのは、全農と、民間最大手のフィード・ワンだ。全農は国内の約 3 割を握り、フィード・ワンは畜産向けで 15% ほどを持つ。中部飼料は 1 割強の 3 番手グループにいて、特色のある配合や卵・肥料のセット販売で食い込んでいる。
工場の稼働率が低く、設備が古いことが業界共通の重しだ。再編や工場の統合が進めば固定費は下がるが、その果実は価格競争で農家に移りやすい。2021 年に伊藤忠との資本提携を解いたあと、中部飼料は東北の 3 工場をグループから切り離した。身軽にはなったが、その分、規模では置いていかれやすい。
原料は輸入で、とうもろこしなど 5 品目の円建て価格が飼料の原価を決める。急騰すると、国と業界の基金が農家に補てんし、メーカーも負担金を払う。中東情勢はエネルギー費と物流費を押し上げる。鳥インフルエンザや豚熱は、飼料の数量を一時的に削る。
筆者は、10 年で見て数量はわずかに減り、価格は物価並みに上がると見る。業界全体の利益は、数量が増えないので、物価の分しか伸びない。
資本政策と M&A
還元は厚い。株主資本配当率(DOE)の目安は 3% で、27 年 3 月期の配当はその水準に乗せる計画だ。26 年 3 月期は 15 億円の自社株買いも実施した。発行済み株式は約 3,030 万株から 2,870 万株ほどまで減っている。
2015 年に伊藤忠グループと資本業務提携を結び、共同出資のみらい飼料をつくった。2021 年に提携を解消し、伊藤忠側は保有株をすべて売却した。みらい飼料は 24 年 1 月に伊藤忠飼料が過半を持つ形になり、中部飼料の持分は 49% に下がった。残りも 2026 年 9 月末以降に譲る予定とされ、27 年 3 月期の純利益が営業利益を上回る見通しなのは、固定資産の譲渡益が入るためと説明されている。
大株主は信託口が上位で、日本生命が 5%、豊田通商と日本ハムが各 3% だ。オーナーや親会社はいない。持ち合いも薄く、筆者は、資本の使い道を決めるのは経営と株主だけだとみる。
10 年のうちには、飼料業界の再編に巻き込まれる可能性がある。買う側に回るにしても買われる側になるにしても、中部飼料の価値は工場と顧客の組み合わせで決まる。ただ、それは確率で扱い、今の価値には織り込まない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
原料ポジションの改善は、一時の追い風だけではない。配合設計の見直しと歩留まりの改善は、会社が自分で積み上げた力で、相場が戻っても残る。基金負担金や固定費の増加を差し引いても、営業利益の水準は中計の目標を大きく超えている。
業界は再編に向かう。工場の稼働率が低く、設備が古いため、統合で固定費を下げられる会社が有利になる。中部飼料は借金がなく、自己資本比率 67% で、統合の担い手になりうる。伊藤忠との関係整理が終われば、八戸工場の使い方もはっきりする。
差別化飼料と環境配慮型の飼料は、採卵鶏向けを中心に伸びている。低魚粉・無魚粉の水産飼料や、うなぎ用の新製品は、利益率が高い。鶏卵の特殊卵、有機入りの肥料、畜産保険は、飼料の相場から距離のある利益で、全体の平均利益率を押し上げる。
還元も厚い。DOE 3% を目安に、増配と自社株買いを重ねる。純利益が 50 億円を超える年が続けば、株主へ戻る額だけでも時価総額の 1 割を超える。数量が横ばいでも、物価並みの値上げで利益が伸びれば、本質価値は今より上になる。
慎重な見方
今の利益は山だ。26 年 3 月期の営業利益 66 億円のうち、28 億円は原料ポジションの改善にすぎない。会社自身が 27 年 3 月期の営業利益を 59 億円と減益で見ているのが、その証拠である。原料ポジションは相場と為替で逆回りもし、2023 年 3 月期のように営業利益が 17 億円まで落ちた年がある。
数量は伸びない。肉牛・乳牛は頭数が減り、農家の戸数は毎年 5% 以上減る。農家が大きくなるほど、取引先は全農と、民間最大手のフィード・ワンに集まる。中部飼料は 3 番手で、規模の差を値引きで埋めれば利ざやが縮む。
コストは物価で上がる。人件費、修繕費、運送費、そしてエネルギー費だ。飼料の値段は原料に連動するので、固定費の上昇分を売値に載せにくい。基金負担金は年 54 億円と、営業利益に迫る。
伊藤忠との提携を解いて規模を縮め、みらい飼料も手放す。身軽にはなるが、再編の主役にはなれない。ROE は山の年で 7.6% で、10 年の中央値は 6.8% にすぎない。自己資本を厚くしても、資本コストを稼げない会社は、株主にとって価値を生む会社ではない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。今の利益を支えているのは、繰り返せない原料ポジションの改善だからだ。そこで確率は、悲観とやや悲観を合わせて 35%、楽観とやや楽観を合わせて 27% とし、慎重な側へ寄せた。
強気の主張にも、再編と還元という実のある論点がある。ただ、再編は固定費を下げても、その果実は価格競争で農家に流れやすい。財務が堅く、極端な損失には沈まないので、悲観の確率は 10% にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,032 円583 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 988 円284 億円)。 今の値に割り戻すと 1,638 円470 億円、今との差 −19.3%、 期待の年率 +4.1%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,965 円1,138 億円 | 1,498 円430 億円 | +169.2% | +10.4% | 382 円110 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,962 円850 億円 | 1,255 円360 億円 | +107.7% | +7.6% | 843 円242 億円 |
| 中立 | 38% | 2,327 円668 億円 | 1,080 円310 億円 | +67.9% | +5.3% | 1,295 円372 億円 |
| やや悲観 | 25% | 956 円274 億円 | 749 円215 億円 | −16.0% | −1.7% | 426 円122 億円 |
| 悲観 | 10% | 390 円112 億円 | 348 円100 億円 | −63.6% | −9.6% | 74 円21 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,032 円583 億円 | 988 円284 億円 | +48.8% | +4.1% | 3,021 円867 億円 |
今の株価時価総額 2,030 円583 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 再編の担い手になり、差別化と周辺事業で利益率が上がる 10 年 利益 85 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 3,965 円1,138 億円
10 年後、飼料業界は工場の統合を終えている。中部飼料は借金のない身軽さを生かし、同業の工場や販売網を取り込む側に回った。畜産飼料の販売量は 320 万トン台に増え、差別化飼料の比率が上がって、1 トンあたりの利益が今の山の年に近い水準で定着する。
水産では低魚粉・無魚粉の飼料が広がり、うなぎ用の新製品が利益を押し上げる。ごまたまごなど特殊卵は取扱量が 4 万トンを超え、有機肥料は神栖工場の増強で伸びる。その他事業の利益は 30 億円近くまで育つ。
全社の営業利益は 100 億円を超え、DOE 3% を守った還元が続いて、ROE は資本コストと同じ水準に届く。ただ、数量はもともと増えない市場なので、成長の理由は再編と値決めの改善に限られる。
- 畜産飼料(鶏・豚・牛向け配合飼料):数量 323(畜産飼料の販売量(万トン))× 価格 8.32(1 トンあたり販売価格(万円))→ 売上 2,688 億円・営業利益 75 億円。再編で数量増・差別化で利益率改善
- 水産飼料(うなぎ・ぶり・たい向け):数量 5.0(販売量(万トン))× 価格 21(1 トンあたり販売価格(万円))→ 売上 105 億円・営業利益 9 億円。低魚粉飼料とうなぎで伸びる
- 鶏卵販売:数量 4.3(取扱量(万トン))× 価格 47(1 トンあたり販売価格(万円))→ 売上 200 億円・営業利益 11 億円。特殊卵が伸びる
- 肥料・畜産用機器・保険代理:数量 5.2(肥料の出荷量(万トン)換算の取扱い)× 価格 30(1 トンあたり取扱高(万円。機器・保険の売上も含む))→ 売上 157 億円・営業利益 14 億円。有機肥料の増強
倍率:事業の純利益 85 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.4% が k 7.80% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.34 倍、時価総額 1,138 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:再編の担い手に回り、差別化と周辺事業で利益率が上がる筋書きは実現しうるが、山の年の利益水準が続くという強い前提が要る。業界の数量が伸びない構造もあるため、7% にとどめた。
やや楽観 20% 数量はほぼ維持し、差別化飼料と卵・肥料で利益が伸びる 10 年 利益 66 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 2,962 円850 億円
国内の頭数は減るが、中部飼料は特色のある配合と提案営業で数量をほぼ守る。畜産飼料は 300 万トンを少し超える水準で、全農・フィード・ワンへの集約の流れの中でも取引先を失わない。
原料ポジションは、山の年のような大きな上振れは続かないが、配合設計と歩留まりの改善で、平均して小さなプラスを残す。差別化飼料の比率も上がり、1 トンあたりの利益は今の中立より厚くなる。
水産飼料と鶏卵、有機肥料はそれぞれ 1 割前後伸び、その他事業の利益は 20 億円を超える。全社の営業利益は 85 億円ほどで、増配と自社株買いが続く。ROE は 7% 前後だが、資本コストにはまだ届かない。
- 畜産飼料(鶏・豚・牛向け配合飼料):数量 305(畜産飼料の販売量(万トン))× 価格 8.20(1 トンあたり販売価格(万円))→ 売上 2,501 億円・営業利益 58 億円。数量をほぼ維持
- 水産飼料(うなぎ・ぶり・たい向け):数量 4.5(販売量(万トン))× 価格 20(1 トンあたり販売価格(万円))→ 売上 92 億円・営業利益 7 億円。新製品で伸びる
- 鶏卵販売:数量 4.0(取扱量(万トン))× 価格 45(1 トンあたり販売価格(万円))→ 売上 180 億円・営業利益 9 億円。特殊卵の伸び
- 肥料・畜産用機器・保険代理:数量 4.8(肥料の出荷量(万トン)換算の取扱い)× 価格 29(1 トンあたり取扱高(万円。機器・保険の売上も含む))→ 売上 140 億円・営業利益 12 億円。肥料・保険が伸びる
倍率:事業の純利益 66 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.0% が k 7.80% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍。全体の PER 12.82 倍、時価総額 850 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量を守りつつ、差別化飼料と卵・肥料で利益が伸びる筋書き。26/03 期の実績が示す改善力を認め、20% とした。
中立 38% 数量は微減、価格は物価並み。利益は山から平らに戻る 10 年 利益 52 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 2,327 円668 億円
畜産飼料の販売量は国内の家畜の頭数に合わせて 5% ほど減り、290 万トン台になる。値段は原料と物価に連れて 3 割強上がるが、飼料メーカーの利ざやは売値の伸びほどは増えない。基金負担金、人件費、工場の更新費が同じように重くなるからだ。
原料ポジションの山は戻り、営業利益率は過去 10 年の中央値に近い水準で平らになる。畜産飼料の利益は、今の 49 億円から 45 億円ほどへ。水産、鶏卵、肥料は小さく伸びて、その他の利益と合わせて全社の営業利益は 68 億円になる。
工場の更新はやるべきことをやる。還元は DOE 3% で続き、自己資本は 900 億円台に積み上がる。ROE は 6% に届かず、資本コストを下回る。安定した、静かな会社に落ち着く 10 年である。
- 畜産飼料(鶏・豚・牛向け配合飼料):数量 293(畜産飼料の販売量(万トン))× 価格 8.08(1 トンあたり販売価格(万円))→ 売上 2,367 億円・営業利益 45 億円。頭数減で微減・利益率は平らに戻る
- 水産飼料(うなぎ・ぶり・たい向け):数量 4.2(販売量(万トン))× 価格 20(1 トンあたり販売価格(万円))→ 売上 84 億円・営業利益 6 億円。低魚粉飼料で微増
- 鶏卵販売:数量 3.8(取扱量(万トン))× 価格 44(1 トンあたり販売価格(万円))→ 売上 168 億円・営業利益 8 億円。特殊卵で微増
- 肥料・畜産用機器・保険代理:数量 4.4(肥料の出荷量(万トン)換算の取扱い)× 価格 29(1 トンあたり取扱高(万円。機器・保険の売上も含む))→ 売上 127 億円・営業利益 10 億円。肥料で微増
倍率:事業の純利益 52 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.7% が k 7.80% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍。全体の PER 12.82 倍、時価総額 668 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:山から平らに戻る筋書きが一番ありそうだ。過去 12 期の営業利益率の中央値と、原料ポジションが平均でほぼゼロという見方を踏まえ、38% と最も厚くした。
やや悲観 25% 農家の大型化で数量を失い、利ざやが縮む 10 年 利益 30 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 956 円274 億円
農家の大型化が進み、全農とフィード・ワンに取引が集まる。中部飼料は規模の差を値引きで埋め、畜産飼料の販売量は 270 万トン台まで減る。売値は原料に連れて上がるものの、物価の分までは通らず、1 トンあたりの利益は千円を切る。
基金負担金と人件費、修繕費は物価で膨らむ。工場の統合に踏み切れず、稼働率が下がって固定費が重い。原料ポジションはプラスとマイナスを繰り返すが、平均すればほぼゼロにとどまる。
その他事業は鶏卵の価格競争で伸びず、水産飼料もうなぎ向けの競争が厳しくなる。営業利益は 40 億円を割り、ROE は 3% 台に下がる。それでも借金はなく、還元は DOE の目安を割りつつ続くため、会社が行き詰まることはない。
- 畜産飼料(鶏・豚・牛向け配合飼料):数量 271(畜産飼料の販売量(万トン))× 価格 7.90(1 トンあたり販売価格(万円))→ 売上 2,141 億円・営業利益 24 億円。農家の大型化で数量減・値引き
- 水産飼料(うなぎ・ぶり・たい向け):数量 3.8(販売量(万トン))× 価格 20(1 トンあたり販売価格(万円))→ 売上 75 億円・営業利益 4 億円。競争で伸びず
- 鶏卵販売:数量 3.4(取扱量(万トン))× 価格 43(1 トンあたり販売価格(万円))→ 売上 146 億円・営業利益 5 億円。価格競争
- 肥料・畜産用機器・保険代理:数量 4.0(肥料の出荷量(万トン)換算の取扱い)× 価格 28(1 トンあたり取扱高(万円。機器・保険の売上も含む))→ 売上 112 億円・営業利益 7 億円。伸び悩み
倍率:ROE 3.5% は k 以下で上限は 12.0 倍。農家の大型化と値引きで利益の質が低く、上限の 7.5 割(9.0 倍)に置いた(引き上げない)。
確率:農家の大型化は確実に進み、3 番手が規模の差を値引きで埋める筋書きは現実的だ。慎重な見方が強いので、確率を 25% まで厚くした。
悲観 10% 規模で負けて値引きに追われ、飼料が赤字すれすれになる 10 年 利益 14 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 390 円112 億円
鳥インフルエンザ・豚熱などの病気と、大きな農家の全農・フィード・ワンへの集約が重なる。中部飼料は畜産飼料の販売量が 250 万トンを割り、工場の稼働率が落ちる。値引きで量を守ろうとして、飼料の営業利益率は 1% を切る。
原料相場の急騰で原料ポジションが大きなマイナスになる年が続き、基金負担金だけが残る。差別化飼料の差が縮み、鶏卵・肥料も競合が増えて、周辺事業の利益も細る。
全社の営業利益は 20 億円を割り、いくつかの工場で減損が出る。配当は削らないが、自社株買いは止まる。中部飼料はもう優良とは言えず、再編の主役でもない、薄利の「地方の飼料メーカー」になる。
- 畜産飼料(鶏・豚・牛向け配合飼料):数量 246(畜産飼料の販売量(万トン))× 価格 7.84(1 トンあたり販売価格(万円))→ 売上 1,928 億円・営業利益 10 億円。規模で負け、利ざや消滅
- 水産飼料(うなぎ・ぶり・たい向け):数量 3.2(販売量(万トン))× 価格 20(1 トンあたり販売価格(万円))→ 売上 62 億円・営業利益 2 億円。競争に負ける
- 鶏卵販売:数量 3.0(取扱量(万トン))× 価格 43(1 トンあたり販売価格(万円))→ 売上 129 億円・営業利益 3 億円。競合増で縮小
- 肥料・畜産用機器・保険代理:数量 3.4(肥料の出荷量(万トン)換算の取扱い)× 価格 28(1 トンあたり取扱高(万円。機器・保険の売上も含む))→ 売上 95 億円・営業利益 4 億円。縮小
倍率:ROE 1.9% で k を大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k=約 169 億円)の 7 割弱を、構造的に負けた会社の価値として置いた(8.0 倍)。含み益や売れる資産は見込まない。
確率:規模で負け、病気と相場が重なる筋書き。財務が堅く極端な損失にはならないが、飼料メーカーの薄利構造は実績で確認されている(2023/03 期の営業利益 17 億円)。10% とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
畜産飼料(鶏・豚・牛向け配合飼料)
採卵鶏・ブロイラー・豚・乳牛・肉牛向けの配合飼料を全国の工場でつくり、畜産農家や商社・生産者グループへ売る。会社の稼ぎの大半はここ。
| 数量畜産飼料の販売量(万トン) | 価格1 トンあたり販売価格(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 308 | 6.03 | 1,857 | 50 |
| 10 年後 中立 | 293 | 8.08 | 2,367 | 45 |
取り方:販売量は決算説明の 308 万トン。単価は飼料セグメントの売上(約 1,913 億円、推定)から水産分(約 57 億円)を引いて販売量で割った。営業利益 49.5 億円は飼料セグメントの利益から水産分を引いた推定で、原料ポジションの改善 28 億円を含むため今期は山。価格は原料の相場に連動するので、10 年では物価並み(1.34 倍)に置く。数量は国内の畜産の頭数が横ばいから微減(肉牛・乳牛は年 1.5〜3% 減)のため、中立で 0.95 倍。
水産飼料(うなぎ・ぶり・たい向け)
養殖魚(うなぎ・ぶり・たいなど)向けの配合飼料。26/03 期はうなぎ用の新製品と魚粉・大豆油かすの下落で利益が増えた。
| 数量販売量(万トン) | 価格1 トンあたり販売価格(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.8 | 15 | 57 | 5 |
| 10 年後 中立 | 4.2 | 20 | 84 | 6 |
取り方:販売量は決算説明の 3.8 万トン。単価(約 15 万円)は魚粉を含む高たんぱく飼料として推定、利益 4.5 億円は今期の改善 3 億円を加えた推定。10 年で価格は物価並み、数量は低魚粉・無魚粉飼料の拡販で中立 1.1 倍。
鶏卵販売
特殊卵「ごまたまご」などを契約養鶏場から仕入れて売る。自社の飼料を使った卵で、飼料の販売と一体になっている。
| 数量取扱量(万トン) | 価格1 トンあたり販売価格(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.6 | 33 | 119 | 6 |
| 10 年後 中立 | 3.8 | 44 | 168 | 8 |
取り方:その他事業の売上(約 205 億円、25/03 期の 184 億円に今期の増加を加えた推定)のうち、鶏卵を約 119 億円と置いた。1 トン 33 万円という特殊卵中心の売価で割って取扱量を出した。内訳は開示がないため推定。10 年で価格は物価並み、数量は特殊卵の伸びで中立 1.06 倍。
肥料・畜産用機器・保険代理
有機入り配合肥料、畜産用機器(ふん尿処理や環境機器)、畜産保険の代理業。飼料のお客と同じ畜産農家に売る周辺の事業。
| 数量肥料の出荷量(万トン)換算の取扱い | 価格1 トンあたり取扱高(万円。機器・保険の売上も含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.0 | 22 | 86 | 7 |
| 10 年後 中立 | 4.4 | 29 | 127 | 10 |
取り方:その他事業の残り(約 86 億円、推定)。肥料を代表の数量とし、機器・保険の売上は同じ単位に畳み込んだ単価で表した。利益 6.6 億円は、その他事業の利益 12.1 億円から鶏卵分(5.5 億円)を引いた推定。10 年で価格は物価並み、数量は有機肥料の増強(神栖工場)で中立 1.1 倍。
リスクと懸念
原料ポジションの逆回り
26 年 3 月期の営業利益の 4 割強は、原料ポジションの改善によるものだ。穀物相場や為替が逆に動けば、この分は消え、2023 年 3 月期のように営業利益が 17 億円まで落ちる年もある。会社は 27 年 3 月期の営業利益を減益で見ている。
農家の大型化と取引の集約
農家の戸数は年に 5〜7% 減り、残る農家は大きくなる。大きな農家は、全農とフィード・ワンのような規模のある相手を選びやすい。畜産向け 308 万トンの中部飼料は、数量を落とす筋書きが現実的だ。
基金負担金と固定費の重さ
配合飼料価格安定基金の負担金は年 54 億円で、営業利益と同じ大きさだ。物価で人件費・修繕費・運送費も上がる。飼料は原料連動の値決めのため、これらを売値に載せ切れないと、利ざやが縮む。
家畜の病気
鳥インフルエンザや豚熱が出ると、殺処分で飼料の数量が一時的に減る。26 年 3 月期も、これらの影響で畜産飼料の販売量が計画に届かなかった。複数の年で重なると、固定費の重い工場の稼働率に響く。
再編と提携の行方
伊藤忠との提携は 2021 年に解消し、みらい飼料の持分も手放す。規模は縮むが、再編の主役になる道筋はまだ見えない。買収の失敗や、持分の譲渡条件が割安だった場合は、株主の価値を損なう。
エネルギー費・物流費の上昇
中東情勢でエネルギー費が上がり、会社は 27 年 3 月期の営業利益を 59 億円と減益に見ている。工場は電力と燃料を多く使う。物流費の上昇も重い。
原料の調達と為替
原料は輸入で、とうもろこしや大豆かすなど 5 品目の円建て価格が原価を決める。円安は仕入れ値を上げ、いったんは利ざやを圧迫する。ここでは 150 円で固定して見ているが、実際の円相場の振れは年ごとの利益を揺らす。
今後の分かれ目
- 原料ポジションの改善が 3 年続き、営業利益が 60 億円を超える年が定着した
- 原料に頼らない収益力が上がったと見て、中立の営業利益率を 0.3 ポイントほど上げ、楽観側へ確率を寄せる。
- 全農・フィード・ワンへの集約で、畜産飼料の販売量が年 5% 以上減った
- 規模の差が価格に出た証拠として、やや悲観側の確率を厚くする。
- 同業との工場統合や、共同生産・共同物流が発表された
- 固定費が下がり、利益率が上がる好材料。買う側か売る側かで、楽観とやや悲観のどちらに寄せるかを決める。
- 鳥インフルエンザや豚熱が 2 年続けて大規模に出た
- 畜産飼料の数量が下振れする。固定費の重さを考え、悲観側の確率を少し厚くする。
- 穀物相場の急騰で基金の異常補てんが出た
- メーカーの負担金が増え、利ざやが縮む。原料ポジションの損も重なるので、やや悲観側に寄せる。
- 他社から株式公開買い付け(TOB)の提案が出た
- 価格は工場と顧客の価値で決まる。割安ならプレミアムが付き、筋書きの上振れ要因になる。
見ておくもの
- 四半期ごとの原料ポジションの寄与(営業利益の増減要因の最大項目)
- 畜産飼料の販売量(万トン)と差別化飼料の比率
- 基金負担金の額と、基金の補てん発動状況
- みらい飼料の残り株式の譲渡の条件と、固定資産譲渡益の額
- DOE と自社株買いの実施(目安 3% を維持するか)
- 家畜の病気(鳥インフルエンザ・豚熱)の発生状況
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE が資本コスト k(8.3%)以下の会社の上限 1÷k(約 12 倍)を出発点にし、利益の質(相場連動・原料ポジションの揺れ)に応じて 7.5〜9 割に置いた。今の株価や今の PER・PBR は見ていない。利益は今の山の年ではなく、原料ポジションを平均ゼロとして置いた営業利益(今の値段で 45〜50 億円)から 10 年を組んだ。金利の効果は純現金が小さいので 0 とした。リース会計の形の変更は、工場中心の会社なので影響が小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→13.34 倍・やや楽観 PER 10.3→12.82 倍・中立 PER 9.6→12.82 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality 0.8% を足して 8.3%。事業が傾いているわけではないので上乗せは置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.30% → 7.80%。