結論
なとりは、チーズ鱈を看板にしたおつまみ専業のメーカーだ。事業は堅実で、潰れる心配はない。ただ筆者の結論は、今の値段は事業の稼ぐ力に対して高い、である。
理由は利益率の低さだ。売上486億円に対し営業利益は19億円で、営業利益率は4%を割る。過去12年でも山は5.4%にとどまる。自己資本利益率(ROE)は5%前後で、資本コストの8%に届かない。
利益の中身にも癖がある。主力の水産加工品は原料のイカが不漁で高く、収益は薄い。稼ぎ頭はチーズ鱈などの酪農加工品と、年3億円の不動産賃貸だ。
財務は穏やかで、借金も現金も小さい。創業家と取引先の持株会が株を分け合い、買収される場面は想像しにくい。
10年後の中立は、売上が物価なみに伸びて約630億円、営業利益率は4%台半ばにとどまる。国内の人口減と飲酒離れを、チーズ系の伸びが打ち消す形だ。確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額を大きく下回る。堅実さは評価するが、その堅実さに払う値段としては高すぎる、というのが筆者の見方だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、なとりは「悪くないが安くない」会社だ。事業は10年後も残る。おつまみの需要は消えず、チーズ鱈というブランドは育った。堀は、商品の入れ替えの速さと、卸・小売の棚を押さえる力にある。ただ、広い堀とは言えない。
オーナー利益の面では、年12億円の設備投資と原料高の吸収に利益が取られ、株主の自由になる分は見かけの純利益より小さい。ROEが5%前後で、自己資本の大半が稼ぎを生んでいない点が、いちばんの弱みだ。
経営は安定している。創業家が会長兼社長を務め、配当を少しずつ上げている。無駄な買収をしないのは評価できるが、資本を増やすために使う道筋は見えない。
安全域は小さい。純現金は5億円で、財務の余力はほとんどない。今の値段は、利益が10年で5割以上伸びることを織り込んでいるように見える。筆者の見立ては、利益率が4%台半ばで落ち着くという慎重な前提で、その場合は大きな安全域は残らない。
何で稼ぐ会社か
なとりは1948年創業、東京都北区に本社を置くおつまみ専業のメーカーだ。1982年に「おつまみ」の発想でチーズ鱈を作り、珍味中心の会社から、おつまみ全般を扱う会社に変わった。
売上の4割は水産加工品(さきいか、貝ひもなど)。2割がチーズ鱈に代表される酪農加工品で、畜肉加工品(サラミなど)が2割弱、残りが農産、ポケット菓子、チルドになる。600品を超える品を持ち、新商品を毎年入れ替えるのが競争の中心になっている。連結の従業員は約800人だ。
売り先は食品卸が中心だ。コンフェックス、三菱食品、山星屋の3社で売上の4割強を占め、卸の交渉力が強い。そこからコンビニ、スーパー、ドラッグストアに流れる。
原料は水産物、チーズ、畜肉、ナッツなどで、海外に頼る分が約6割。円安とイカの不漁は、そのまま原価に響く。
もう一つの柱が不動産賃貸で、北区などの賃貸住宅から年4億円強の賃料が入り、営業利益は3億円になる。食品の利益が薄い分、この安定収入が全社の下支えになっている。工場は国内で、増産と合理化のための投資を毎年続けている。
優良さと弱いところ
チーズ鱈という看板は強いが、会社全体の堀は広くない。おつまみは大手菓子メーカーも作り、コンビニのPBも多い。差が出るのは商品の入れ替えの速さと、卸・小売への棚の押さえだ。
利益率が答えを出している。食品事業の営業利益率は3%台で、過去12年の最高は5.4%。値上げで原料高を吸収しようとしても、卸の交渉力が高く、全額は通らない。2023年3月期には原料とエネルギーの高騰で営業利益が6億円まで落ちた。
資本効率は低い。ROEの過去10年の中央値は5.3%で、資本コストに届かない。自己資本の厚さに対して、稼ぎが追いついていない。
救いは二つある。チーズ系が前期に7%伸び、農産加工も1割強伸びたことで、品ぞろえの重心が動き始めた。もう一つは経営の姿勢で、配当を毎年少しずつ増やす方針と、今回の優待の拡充は、個人株主を大事にする会社だとわかる。
一方、政策保有株が27億円ほどあり、資本の使い方は保守的だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
おつまみ市場は、酒を飲む人と飲む量が減る国内で、成熟している。若い世代の飲酒離れ、人口減が数量を押し下げる。一方でコンビニや家飲みの需要は底堅く、数量は年0〜1%の減少にとどまると見る。
原料は不安定だ。するめいかは不漁が続き、世界的な水産資源の逼迫で、イカの価格は構造的に高い(世界の水産資源の逼迫による)。なとりは代替原料や産地変更で対応しているが、原価率は上がりやすい。チーズや畜肉も、円安と世界の相場で動く。
競合は三つの方向から来る。大手菓子メーカーの酒のつまみ向け商品、乳業各社のチーズ系おつまみ、地場の珍味メーカーだ。店頭ではPBも強い。チーズ鱈は独自の商品として強いが、まねされやすい分野でもある。
価格は物価なみに上がる。2026年は加工食品の値上げが相次ぎ、店頭価格は前年比で4〜5%高い。ただし値上げが重なるほど、まとめ買いやPBへ客が逃げる。
追い風はチーズ・乳製品を使った商品と、健康志向のおつまみだ。売り先の卸も小売も集約が進み、メーカーが条件を決めにくい流れは続くとみる。
資本政策と M&A
還元は控えめだ。2026年3月期の年間配当は創業88周年の記念配当を含めて前期から増え、配当性向は2割台。安定的・継続的な増配を方針とし、自己株式の活用も検討課題に挙げている。
政策保有株は上場23銘柄で約27億円。取引先との関係維持が目的で、当期は11銘柄を買い増し、16銘柄を売った。配当は利益に入っており、価値は利益に含まれると見て別に足していない。
M&Aの動きは確認できなかった。創業家(名取家)と取引先の持株会が大株主に並び、安定した株主構成だ。第三者の買収は成立しにくい。
設備投資は年12億円ほどで、工場の増産と古い設備の入れ替えが中心。減価償却の範囲内に収まり、大きな負担にはならない。
株主優待は、100株で二千五百円相当、500株で三千円相当、1,000株で三千五百円相当、3,000株で四千五百円相当の自社製品詰め合わせ(年1回、市価)。費用の開示は見つからず、市価を原価の6割とみて年2億円と推定した(株主数も仮定で、2倍程度のずれはありうる)。優待は株主が受け取る現物の還元なので、10年の還元に足した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
チーズ鱈は育てるに足る商品だ。酪農加工品の売上は前期に7%伸び、今も看板が伸びている。乳製品を使った新しいおつまみを足していけば、水産の不漁を補える。チーズ系の営業利益率は他より高く、構成が変われば全社の利益率が上がる。
今期はすでに動き出している。第1四半期は営業利益が約8億円と大きく改善し、通期予想の4割を取った。価格改定とミックスの改善が効いている証拠だ。中期計画の最終年度で、利益の戻りを示す段階に入った。
不動産賃貸の年3億円は、景気に左右されない土台だ。賃料は物価とともに上がり、食品が苦しい年でも全社の赤字を防ぐ。加えて、個人株主を大事にする会社で、優待の拡充は株主の目線が経営に届いている表れだ。配当を毎年上げる方針も、利益が戻れば還元の余地を広げる。
10年あれば、原料が落ち着く年も来る。イカの不漁が一巡し、代替原料が定着すれば、水産の利益率も戻る。コスト増を価格に乗せる力は、ブランドのある商品ほど強い。
慎重な見方
構造的に利益が出にくい業態だ。売り先の卸3社が売上の4割強を握り、値上げは満額通らない。原料は海外依存が6割で、円安や不漁が起きるたびに利益が飛ぶ。2023年3月期の営業利益は6億円まで落ちた。
需要は縮む方向だ。若い世代の飲酒離れと人口減で、おつまみの数量は静かに減る。家で飲む習慣が根づいても、買う量は増えない。チーズ系の伸びは魅力だが、まねされやすい分野で、乳業や大手菓子メーカーが同じ棚に商品を並べる。
資本効率が悪いままだ。ROEは5%前後で資本コストに届かず、10年たっても変わらない。自己資本が積み上がるほど、ROEはむしろ下がる。現金の使い道がない会社は、そうなりやすい。年12億円の設備投資は、増産より更新が中心で、利益を増やす投資になっていない。
今期の会社予想の営業利益率は4.4%で、山の5.4%には遠い。第1四半期の好調は、通期の山を前倒ししただけという可能性が残る。会社自身も、通期予想を据え置いたままだ。原料と円安が再び悪い方に動けば、一年で利益が半分に戻る前例(2023年3月期)がある。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。利益率が過去12年の山(5.4%)を超える根拠は、チーズ系の構成比の上昇だけで、全社を動かすには力が足りない。強気の見方の最も強い点は、第1四半期の改善と不動産賃貸の安定だが、いずれも利益率を恒常的に変えるほど大きくない。確率は中立を中心に置き、やや悲観を厚く、悲観は1割とした。不動産賃貸の安定収入が下を支えるため、悲観でも黒字は保つと見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,687 円212 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 535 円67 億円)。 今の値に割り戻すと 1,191 円150 億円、今との差 −39.2%、 期待の年率 +1.3%(資本コスト 7.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,041 円383 億円 | 761 円96 億円 | +94.1% | +6.9% | 266 円33 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,511 円316 億円 | 661 円83 億円 | +61.9% | +4.9% | 634 円80 億円 |
| 中立 | 38% | 2,023 円255 億円 | 560 円71 億円 | +31.9% | +2.8% | 982 円124 億円 |
| やや悲観 | 25% | 604 円76 億円 | 423 円53 億円 | −47.6% | −6.3% | 257 円32 億円 |
| 悲観 | 10% | 524 円66 億円 | 310 円39 億円 | −57.4% | −8.2% | 83 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,687 円212 億円 | 535 円67 億円 | +13.5% | +1.3% | 2,223 円280 億円 |
今の株価時価総額 1,959 円246 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 楽観:チーズ系が育ち、利益率が5%台後半まで上がる 利益 29 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 3,041 円383 億円
チーズ鱈と新しい乳製品のおつまみが育ち、酪農加工の数量は10年で25%増える。イカの不漁が落ち着き、水産の利益率も戻る。値上げが通る局面が続き、単価は物価を少し上回る。工場の合理化と商品ミックスの改善で、営業利益率は5%台後半まで上がる。過去12年の山(5.4%)を超えるが、実績に裏づけのあるチーズ系の伸びと、中期計画の利益改善を前提にする。不動産賃貸は賃料が物価で上がり、営業利益は4億円台に乗る。配当も増える。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年2億円×10年×1.0=20億円。推定)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 水産加工(さきいか・貝ひもなど):数量 1.3(販売数量(万トン、推定))× 価格 2,070(1kg あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 268 億円・営業利益 9 億円。営業利益率3.5%
- 酪農加工(チーズ鱈・チーズ系おつまみ):数量 1.0(販売数量(万トン、推定))× 価格 1,656(1kg あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 164 億円・営業利益 15 億円。営業利益率9.0%
- 畜肉・農産・小袋菓子・チルド・その他:数量 1.8(販売数量(万トン、推定))× 価格 1,518(1kg あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 279 億円・営業利益 14 億円。営業利益率5.0%
- 不動産賃貸:数量 1.2(賃貸面積(万㎡、推定))× 価格 5.04(1㎡あたり年間賃料(万円、推定。名目))→ 売上 6 億円・営業利益 4 億円。営業利益率70%
倍率:事業の純利益 29 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 383 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:チーズ系の伸びが続き、中期計画の利益改善も実現する筋書き。実現には原料高の沈静と卸との好条件が要り、確率は低め。
やや楽観 20% やや楽観:チーズ鱈が柱として伸び、混ぜ物が改善する 利益 24 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 2,511 円316 億円
酪農加工とチーズ系の新商品が柱として定着し、数量は10年で15%増える。水産は微減にとどまる。単価は物価をやや上回り、営業利益率は5%台前半まで戻る。卸との条件も安定し、原料高の吸収が進む。農産やチルドなど周辺の商品も、棚を広げて数量を落とさない。山の水準に近づくが、超えない。配当は利益とともに増える。不動産賃貸は賃料が物価なみに上がる。ただ、人口減の逆風は残り、数量の伸びは酪農加工の分だけにとどまる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年2億円×10年×1.0=20億円。推定)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 水産加工(さきいか・貝ひもなど):数量 1.3(販売数量(万トン、推定))× 価格 2,040(1kg あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 259 億円・営業利益 8 億円。営業利益率3.0%
- 酪農加工(チーズ鱈・チーズ系おつまみ):数量 0.9(販売数量(万トン、推定))× 価格 1,632(1kg あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 148 億円・営業利益 12 億円。営業利益率8.0%
- 畜肉・農産・小袋菓子・チルド・その他:数量 1.7(販売数量(万トン、推定))× 価格 1,496(1kg あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 262 億円・営業利益 11 億円。営業利益率4.2%
- 不動産賃貸:数量 1.2(賃貸面積(万㎡、推定))× 価格 4.90(1㎡あたり年間賃料(万円、推定。名目))→ 売上 6 億円・営業利益 4 億円。営業利益率70%
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.9% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 316 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近のチーズ系の増収と第1四半期の改善が、実績の範囲で続く形。
中立 38% 中立:売上は物価なみ、利益率は4%台半ばで横ばい 利益 19 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 2,023 円255 億円
売上は物価なみに伸び、10年で約630億円になる。酪農加工の数量が5%増え、水産と畜肉は5%減る。単価は物価と同じく10年で1.34倍。原料・賃上げ・物流の費用も同じペースで増えるため、営業利益率は4%台半ばにとどまる(過去12年の中央値4.3%と山5.4%の間)。営業利益は28億円、純利益は19億円。配当は利益の3割を目安にする。不動産賃貸は年4億円強から5〜6億円へ。国内の人口減、卸の力、原料高が引き続き利益率を抑える一方、チーズ系が全体を支える。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年2億円×10年×1.0=20億円。推定)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 水産加工(さきいか・貝ひもなど):数量 1.2(販売数量(万トン、推定))× 価格 2,010(1kg あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 247 億円・営業利益 6 億円。営業利益率2.5%
- 酪農加工(チーズ鱈・チーズ系おつまみ):数量 0.8(販売数量(万トン、推定))× 価格 1,608(1kg あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 134 億円・営業利益 9 億円。営業利益率7.0%
- 畜肉・農産・小袋菓子・チルド・その他:数量 1.7(販売数量(万トン、推定))× 価格 1,474(1kg あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 245 億円・営業利益 9 億円。営業利益率3.5%
- 不動産賃貸:数量 1.2(賃貸面積(万㎡、推定))× 価格 4.82(1㎡あたり年間賃料(万円、推定。名目))→ 売上 6 億円・営業利益 4 億円。営業利益率70%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.8% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 255 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界の数量と価格の見通し(国内ほぼ横ばい、物価並みの値上げ)に沿う中心。
やや悲観 25% やや悲観:イカ高と飲酒離れで、値上げが数量を削る 利益 11 億円 · PER 6.5 倍 · 株価時価総額 604 円76 億円
イカの不漁と円安が長引き、原料高が値上げでは吸収できない。卸の交渉力が強く、数量が10%ほど減る。水産の利益率は1%まで落ち、営業利益率は3%を割る。酪農加工は伸びが鈍る。工場の稼働が落ち、固定費の重さが利益を削る。純利益は11億円にとどまり、配当は据え置きに近い。値上げのたびに客が離れ、数量と単価のどちらも思うように伸びない10年になる。不動産賃貸の利益は物価で上がるが、全社の穴は埋まらない。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年2億円×10年×0.75=15億円。推定)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 水産加工(さきいか・貝ひもなど):数量 1.1(販売数量(万トン、推定))× 価格 1,950(1kg あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 222 億円・営業利益 2 億円。営業利益率1.0%
- 酪農加工(チーズ鱈・チーズ系おつまみ):数量 0.8(販売数量(万トン、推定))× 価格 1,560(1kg あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 121 億円・営業利益 6 億円。営業利益率5.0%
- 畜肉・農産・小袋菓子・チルド・その他:数量 1.5(販売数量(万トン、推定))× 価格 1,430(1kg あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 220 億円・営業利益 4 億円。営業利益率1.8%
- 不動産賃貸:数量 1.2(賃貸面積(万㎡、推定))× 価格 4.68(1㎡あたり年間賃料(万円、推定。名目))→ 売上 6 億円・営業利益 4 億円。営業利益率70%
倍率:ROE3.0%、RONIC5.5%、g4%で正当化PERは6.8倍。その約95%の6.5倍。伸びても価値が増えない構造だが、利益の4分の1を占める不動産賃貸の安定収入があるため、式の値にほぼ近く置いた。PBRは0.19倍と低いが、本業の設備は売却価値が簿価を大きく下回るとみており、床(約66億円)をやや上回る水準にとどめた。
確率:原料高と卸の交渉力で、利益率が低迷する形。2023年3月期に営業利益が6億円まで落ちた実績があり、厚めに置く。
悲観 10% 悲観:原料が戻らず卸にも押され、本業が赤字に近づく 利益 2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 524 円66 億円
飲酒離れが想定より進み、おつまみの数量が2〜3割減る。イカの不漁は固定化し、水産が赤字になる。卸3社の再編でさらに条件が悪化し、値上げも通らない。本業はほぼ利益が出ず、不動産賃貸の利益で全社の黒字を保つ。看板のチーズ鱈も他社品との競争で伸びが止まり、新商品の当たりも出なくなる。配当は減らす。工場の稼働率が落ち、設備の減損も出る。政策保有株の売却で一部を補うが、本業の弱さは変わらない。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年2億円×10年×0.5=10億円。推定)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 水産加工(さきいか・貝ひもなど):数量 1.0(販売数量(万トン、推定))× 価格 1,725(1kg あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 168 億円・営業利益 −3 億円。営業利益率-1.5%
- 酪農加工(チーズ鱈・チーズ系おつまみ):数量 0.7(販売数量(万トン、推定))× 価格 1,380(1kg あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 93 億円・営業利益 3 億円。営業利益率3.0%
- 畜肉・農産・小袋菓子・チルド・その他:数量 1.3(販売数量(万トン、推定))× 価格 1,265(1kg あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 166 億円・営業利益 −1 億円。営業利益率-0.5%
- 不動産賃貸:数量 1.2(賃貸面積(万㎡、推定))× 価格 4.14(1㎡あたり年間賃料(万円、推定。名目))→ 売上 5 億円・営業利益 4 億円。営業利益率70%
倍率:純利益は2億円で稼ぐ力は測れない。床は売れる資産の税後で測り、今の自己資本277億円に対するPBR0.238倍(時価総額66億円)に置いた。
確率:飲酒離れの加速と原料の高止まり、卸の再編が重なる複合の筋書き。不動産の安定収入が下を支えるため、確率は1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
水産加工(さきいか・貝ひもなど)
するめいか・鱈・貝などを使う、さきいかや鱈おつまみなどの水産系おつまみ。売上の約40%。
| 数量販売数量(万トン、推定) | 価格1kg あたり平均単価(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.3 | 1,500 | 194 | 3 |
| 10 年後 中立 | 1.2 | 2,010 | 247 | 6 |
取り方:水産加工の売上194.3億円を、1kgあたり平均千五百円前後の品が年1.3万トン売れていると置いて分けた(推定。さきいかは高く、貝ひもや鱈の品は中程度)。数量は人口減と飲酒離れ、イカの不漁で中立は10年で0.95倍。価格は物価並み(10年1.34倍)。市場の大きさ:検索で珍味市場の規模は取れず、公式の開示もないため、市場規模は推定しない。競合は大手菓子メーカーの酒のつまみ、地場の珍味メーカー、PB。営業利益はセグメント利益15.9億円を、イカ高で水産が低いとみて水産2.9億円・酪農7.1億円・その他5.9億円に分けた(推定)。
酪農加工(チーズ鱈・チーズ系おつまみ)
看板商品「チーズ鱈」を含む、チーズと魚肉のおつまみ。売上の約20%。
| 数量販売数量(万トン、推定) | 価格1kg あたり平均単価(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.8 | 1,200 | 95 | 7 |
| 10 年後 中立 | 0.8 | 1,608 | 134 | 9 |
取り方:酪農加工の売上94.9億円を、1kgあたり平均千二百円前後の品が年0.8万トン売れていると置いて分けた(推定)。直近の期は前年比6.7%増で、乳製品を使った新商品の効果。数量は中立で10年1.05倍。価格は物価並み。競合は乳業各社のチーズ系おつまみと、チーズ鱈のまねをした他社品。
畜肉・農産・小袋菓子・チルド・その他
サラミ・ジャーキーなどの畜肉、ナッツ・梅などの農産、ポケット菓子、チルド総菜など。売上の約40%。
| 数量販売数量(万トン、推定) | 価格1kg あたり平均単価(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.7 | 1,100 | 192 | 6 |
| 10 年後 中立 | 1.7 | 1,474 | 245 | 9 |
取り方:畜肉88.1億円、農産23.0億円、ポケット菓子25.7億円、チルド19.6億円、その他36.0億円の合計192.4億円を、1kgあたり平均千百円前後の品が年1.7万トン売れていると置いて分けた(推定)。数量は国内の人口減で中立は10年0.95倍(農産は伸び、畜肉・チルドは微減の見込み)。価格は物価並み。
不動産賃貸
東京都北区などの賃貸用住宅。営業利益は約3億円と、食品の2割ほどを占める。
| 数量賃貸面積(万㎡、推定) | 価格1㎡あたり年間賃料(万円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.2 | 3.60 | 4 | 3 |
| 10 年後 中立 | 1.2 | 4.82 | 6 | 4 |
取り方:不動産賃貸の売上4.3億円を、貸室の面積約1.2万㎡と1㎡あたり年3.6万円の賃料に分けた(推定。北区などの賃貸住宅)。賃料は物価並みに上がると置く。利益率は70%で、前期の70.5%と同じ。
リスクと懸念
イカなど原料の不漁と円安
原料の約6割が海外頼みで、為替の影響を受ける分が約4割ある。するめいかは不漁が続き、価格が高止まりする。2023年3月期は原料・エネルギー高で営業利益が6億円まで落ちた。
卸への売り先の集中
コンフェックス、三菱食品、山星屋の3社で売上の4割強を占める。値上げ交渉や棚の条件で卸の意向が強く出やすく、1社の取引条件の変更が業績に響く。
飲酒離れと人口減
若い世代の飲酒量が減り、おつまみの国内需要は静かに縮む。チーズ系の伸びで補えるかが分かれ目で、補えなければ数量は10年で1割以上減る。
利益率が上がらない構造
営業利益率は過去12年で最高5.4%、直近は3.9%。広告販促や物流費、賃上げで固定費が重く、値上げが追いつかない年は利益が急に細る。
競合のまね
チーズ鱈のような看板商品は、乳業や大手菓子メーカーに似た商品を出されやすい。差別化が薄れれば、売上の2割を占める酪農加工品が伸びなくなる。
政策保有株の価格変動
上場23銘柄、約27億円の政策保有株がある。株価が下がると自己資本が目減りし、取引先との関係で売りにくい。配当は利益に入っているので、利益への影響は小さい。
今後の分かれ目
- 営業利益率が5%を超えて、2年以上定着したら
- やや楽観・楽観に確率を移し、価値は今の水準に近づく。
- イカの不漁が解消し、水産加工の利益率が回復したら
- 水産の利益率の前提を上げ、中立の営業利益率を見直す。
- チーズ系の売上が前年比10%以上の伸びを数年続けたら
- 酪農加工の数量前提を上方修正する。
- 卸3社のうち1社が取引条件を大きく変更したら
- やや悲観に確率を移し、売上の落ち込みを織り込む。
- 自己株式の取得や配当性向の引き上げ(4割以上)が決まったら
- 還元の前提を上げて見直す。ROEの改善が先に確認できれば評価は上がる。
見ておくもの
- 営業利益率(会社予想4.4%と山5.4%の間で動くか)
- 酪農加工品(チーズ鱈)の売上の伸び
- 水産加工品の営業利益とイカの原料価格
- 卸3社への売上比率
- 配当性向・自己株式活用の発表
倍率と資本コストの決め方
水産・酪農・その他は販売トン数×1kgの単価(推定)、不動産は面積×賃料で積み、価格は物価並みに上げた。中立の営業利益率は4.5%で、過去12年の中央値(4.3%)と山(5.4%)の間に置いた。倍率は利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の9割で、ROEがkより低いので1÷kが上限になる。今の株価(PER約18倍・PBR約0.9倍)には寄せていない。余った現金は純現金5億円と小さく、分けなかった。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.4→13.33 倍・やや楽観 PER 9.4→13.33 倍・中立 PER 8.5→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityを足して決める。事業が傾いてはいないので上乗せは置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。