結論
伊藤ハム米久は、ハム・ソーセージの国内大手と、豚・牛などを扱う国内食肉の大手を一つにした会社だ。ニュージーランドの食肉大手ANZCOも抱える。売上は初めて1兆円を超えたが、営業利益率は2%台にすぎない。
筆者の結論は、今の株価は割高というものだ。前期は食肉の相場が味方して、純利益が5割増えた。この水準が続くとは見ていない。
稼ぎの中身を見ると、食肉が利益の7割を占める。食肉は値段を自分で決められず、利益は薄く、振れる。加工食品は値上げのあとに数量が減り、利益率は2%台から動かない。
そのため10年後の中立は、利益が今よりやや増える程度の姿になる。国内の数量は人口で細り、売上は物価の分だけ伸びる。
株主構成も見逃せない。三菱商事が4割を持つ。安定株主の安心はあるが、少数株主の取り分が自動的に増えるわけではない。
資本効率は、会社が掲げるROE8%に届いていない。財務は堅いが、ROEが資本コストを下回る会社の価値は、帳簿より小さい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず事業の稼ぐ力を見る。食肉と加工食品は、10年後も必ず存在する。しかし、10年後に今より強いかと問えば、筆者は答えに迷う。
堀が薄い。食肉は相場、加工は同業の値上げの足並みが利益を決める。株主が自由に使えるお金は、帳簿の利益より小さい。工場の更新に毎年かなりの額が要るためだ。
資本の使い方は評価できる。借金を抑え、赤字を出さず、累進配当を続けてきた。ただ、ROEが資本コストを下回る事業にお金を投じ続けるなら、利益を積み上げても株主の価値は増えない。筆者がいちばん気にしているのは、この点だ。
安全域の面では、前期は食肉の相場が良く、利益が平常より大きく出た。この利益に今の値段を払えば、余裕は薄い。利益が3割減っても耐えられる値段かと問えば、答えは否だ。
三菱商事という大株主の存在は、倒産の危うさを小さくする。一方、価値を押し上げる材料にはなりにくい。今の値段には、この会社の平均的な稼ぐ力以上のものが織り込まれている。
何で稼ぐ会社か
事業は大きく二つに分かれる。食肉事業が売上の6割強、加工食品事業が4割弱だ。
食肉は国内の豚・牛・鶏の処理と販売に加え、海外のANZCOが牛・羊を扱う。仕入れから売り先までを握るが、相場がそのまま利益を左右する事業だ。前期の利益率は3%台、その前の期は2%だった。
加工食品はハム・ソーセージ、調理加工品、冷凍食品だ。指名買いされるブランドを持つが、2021年度の市場シェアは約2割で、日本ハムなどと並ぶ寡占の一角にとどまる。家庭用の冷凍食品は約170億円で、会社は200億円に伸ばす計画だ。
海外は売上の約2割まで増えた。前期は北米とオセアニアが大きく伸び、2026年にはNZのGreenleaを買って、同国での存在感をさらに高めた。
老朽化した工場の再編も進行中だ。静岡の三島に新工場が建ち、2027年度から本格的に動く。生産能力を引き上げ、人手を減らす狙いがある。
稼ぎの重心も変わりつつある。2年前は食肉と加工食品の利益がほぼ同じ大きさだったが、前期は食肉が7割に上がった。加工食品は2年続けて利益が横ばいで、会社の本業のはずのハム・ソーセージが伸びていない。ここが筆者の気がかりだ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、加工食品のブランドと全国の販売網にある。ただ、食肉は仕入れも売り先も市場が決める。ここに堀はほとんどない。
全体の利益率が低いのは、この構造のためだ。加工食品の利益率は2%台で、値上げをしても、数量が減ってほぼ相殺される。ブランド力はあるが、値段を自由に決められる強さではない。
資本効率は物足りない。過去10年のROEの中央値は6%台で、前期の6.9%は追い風を受けた高さだった。会社は中長期でROE8%以上を掲げるが、利益率の薄い事業でこれを安定して上回るのは難しい。
一方、財務は堅い。自己資本比率は56%で、利払いも十分にまかなえる。赤字の期は過去10年に一度もない。必需品を扱うため、需要は景気に左右されにくい。
経営は、国内工場の再編という地味だが効く仕事に手を付けている。筆者はこの方向を評価する。ただ、効果が利益率に表れるのは早くても2028年度以降だ。
三菱商事が4割を持つ構造は、安定株主という安心と、経営への規律が弱くなる懸念の両方を生む。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のハム・ソーセージ市場は成熟している。人口が減る中、数量は年に1%前後で細り、値上げで金額だけが保たれてきた。
競合は日本ハム、プリマハム、丸大食品が主な顔ぶれだ。伊藤ハム米久は同じ上位集団を形づくる。ブランドの差が小さいため、値上げの時期や幅がそろい、1社だけが抜け出しにくい。
原料の豚肉・牛肉は、輸入への依存度が高い。為替、海外の家畜疾病、関税が仕入れ値を動かす。2026年7月にも、家畜疾病と国際情勢を理由に、ハム・ソーセージの値上げが始まった。
食肉の国内市場は、人口減で量が減る一方、外食の人手不足が処理済み肉の需要を押し上げる。ただ、スーパーの買い取り力は強く、値段は転嫁しにくい。
海外では、北米向けの牛肉の価格上昇と、欧州向けの羊肉の堅調が追い風になった。この相場は循環する。ANZCOの利益は、相場しだいで大きく振れる。
冷凍食品は国内消費が初めて300万トンを超え、業務用が過半を占める成長市場だ。ただ、ニチレイや味の素など、強い専業が揃う。後発の伊藤ハム米久が、家庭用で利益を伸ばすのは容易ではない。
資本政策と M&A
還元は、DOE(自己資本配当率)3%以上と累進配当が柱だ。統合10周年の記念配当が加わり、前期は配当が大きく膨らんだ。今期は記念分がなくなり、普通配当に戻る。
成長投資は、2035年度までに約2,000億円の計画だ。半分は国内の工場再編と加工食品の強化に、残り半分はANZCOや米国のIndiana Packersとの協業など、海外と新事業に向ける。
買収の実績は、海外のANZCOと、2026年のGreenleaだ。買収額は確認できなかった。海外は相場の波が大きく、買った後の稼ぎが読みにくい。
三菱商事が40.8%を持つ筆頭株主だ。10年以内のTOB(公開買い付け)の確率は、モデルの推計で24%と、食品の中でも高い。完全子会社化の可能性も残る。
財務は純有利子負債が700億円ほどで、前期に増えた。投資が続けば、負債はさらに膨らむ。現金を余らせて分ける余地はない。
株主優待は、200株以上で約5千円相当の自社グループ商品。会社は優待の費用を開示していないため、200株以上の約1.3万人(自社商品の原価と送料)から年4億円と推定した。優待は株主が受け取る現物の還元なので、10年の還元に年額×10年を、中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5の係数で足した(費用は販管費として利益から引き済みで、自己資本の流れには入れない)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
食肉の相場が10年を通して味方し、ANZCOが北米や欧州向けの高付加価値の牛肉・羊肉で稼ぎ続ける。Greenleaの統合が進み、NZでの処理量が増えてコストが下がる。海外食肉の利益率は4%台に乗る。
加工食品は、三島の新工場が計画どおり動く。自動化で人件費を抑え、利益率は3%を超える。家庭用冷凍食品が200億円を突破し、ハム・ソーセージの数量減を補う。値上げが毎年通り、数量の減りも小さい。
国内食肉は、外食の人手不足で処理済み肉の需要が伸び、自社処理の比率が高まる。利益率は3%台半ばに上がり、相場に左右されにくい体質になる。
会社は2035年度に経常利益500億円を掲げている。この目標に近づけば、純利益は350億円を超え、ROEも8%台の半ばに乗って、資本コストを上回る。
三菱商事との関係も好材料になる。調達や販路で協力が深まり、海外の食肉事業で規模の利点が出る。TOBが行われれば、プレミアムがつく可能性もある。
慎重な見方
食肉と加工食品の双方で、構造的な弱さが10年続く。利益率が2%台を保てないという見方だ。
食肉は相場に左右される。前期の利益は相場の追い風で膨らんだにすぎず、今期の会社予想はすでに減益だ。国内の食肉は、スーパーの買い取り力の強さで値段を転嫁できず、利益は薄いまま推移する。ANZCOも、牛・羊の相場が戻れば、前期の増益は消える。
加工食品は、値上げを重ねるほど数量が減る。会社自身が、値上げのあと数量減が続くと認めている。三島の新工場は生産能力を2倍にするが、需要が伸びなければ、償却の負担だけが重くなる。
海外のGreenlea買収も不安材料だ。NZの牛肉処理は競争が激しい。相場が悪化すれば、のれんの減損もありうる。
資本効率は、会社目標のROE8%に届かない。ROEが資本コストを下回る限り、利益を積み上げても価値は増えない。
三菱商事が4割を持つ構造は、少数株主に不利に働く恐れもある。親会社の都合で資本政策が決まれば、株価の押し上げは期待しにくい。
どちらに重みを置いたか
食肉の薄い利益と、ROEが資本コストを下回る点は、慎重な見方のほうが強い。強気の材料は三島の新工場やANZCOの伸びだが、いずれも利益率を数ポイント変えるほどの大きさではない。
確率は、中立を中心に、やや悲観と悲観に少し厚めに置いた。同じ領域の日本ハムと同じ形にして、堀の差は出していない。この物差しでは日本ハムが約2割台半ばの割高、伊藤ハム米久はそれより深い。ROEの低さと今の値段の差による。
今の値段は、前期の好調な利益を前提にしている。10年先の価値と還元を割り引くと、今の時価総額を3割ほど下回る。三菱商事の支えと安定した財務で、倒産の危うさは小さいが、それは価値を押し上げる理由にならない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,817 円2,735 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,000 円1,136 億円)。 今の値に割り戻すと 3,731 円2,118 億円、今との差 −24.4%、 期待の年率 +3.3%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 9,043 円5,134 億円 | 2,725 円1,547 億円 | +138.5% | +9.1% | 824 円468 億円 |
| やや楽観 | 18% | 7,138 円4,052 億円 | 2,332 円1,324 億円 | +91.9% | +6.7% | 1,705 円968 億円 |
| 中立 | 35% | 5,894 円3,346 億円 | 2,012 円1,142 億円 | +60.2% | +4.8% | 2,767 円1,571 億円 |
| やや悲観 | 25% | 2,714 円1,541 億円 | 1,876 円1,065 億円 | −7.0% | −0.7% | 1,147 円651 億円 |
| 悲観 | 15% | 1,054 円599 億円 | 1,444 円820 億円 | −49.4% | −6.6% | 375 円213 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,817 円2,735 億円 | 2,000 円1,136 億円 | +38.2% | +3.3% | 6,818 円3,870 億円 |
今の株価時価総額 4,935 円2,801 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 食肉の追い風と三島の新工場が重なり、利益率が3%台に乗る10年 利益 358 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 9,043 円5,134 億円
食肉の相場が10年を通して好調で、ANZCOがGreenleaの統合で処理量を増やす。海外食肉の利益率は4%に乗る。加工食品は三島の新工場が計画どおり動き、自動化で人件費を抑える。家庭用の冷凍食品が200億円を超え、ハム・ソーセージの数量減を補う。国内食肉は外食の人手不足で処理済み肉の需要が伸び、利益率が3%台半ばに上がる。全体の営業利益率は3%を超え、ROEは8%台に届く。三菱商事との協力も深まり、調達や販路で規模の利点が出る。会社が掲げる2035年度の経常利益500億円に近い姿になる。この筋書きでは、国内の数量の細りが利益を削る力は小さく、物価の値上がりを価格に転嫁できる。食肉の相場と海外の需要が同じ向きに動く、めったにない10年だ。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年4億円×10年×1.0=40億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 加工食品(ハム・ソーセージ・調理加工・冷凍):数量 22.0(推定出荷量(万トン))× 価格 250(1トンあたり単価(万円))→ 売上 5,502 億円・営業利益 182 億円。冷凍が伸び利益率3%超
- 国内食肉:数量 41.7(推定取扱量(万トン))× 価格 152(1トンあたり単価(万円))→ 売上 6,328 億円・営業利益 215 億円。人手不足で処理済み肉が伸びる
- 海外食肉(ANZCO・Greenlea等):数量 21.8(推定取扱量(万トン))× 価格 179(1トンあたり単価(万円))→ 売上 3,902 億円・営業利益 156 億円。Greenlea統合で処理量増
倍率:事業の純利益 358 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍。全体の PER 14.34 倍、時価総額 5,134 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:食肉の相場・新工場・Greenleaの統合が同時にうまくいく必要があり、連続成功の確度は高くない。同じ領域の日本ハムと同じ7%に置いた。
やや楽観 18% 新工場と海外の伸びで、2%台後半の利益率を保つ10年 利益 304 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 7,138 円4,052 億円
三島の新工場は動き出し、加工食品の利益率は3%に届く。冷凍食品の拡大がハム・ソーセージの数量減を埋める。海外食肉は北米・欧州向けの需要が堅調で、Greenleaの上乗せも利益に出る。国内食肉は相場の波を受けながらも、自社処理の比率を高めて3%強を保つ。全体の営業利益率は2%台後半で、前期の水準にやや届かない。会社の長期目標には届かないが、中計の経常利益300億円の水準は維持できる。ROEは7%台と、資本コストにあと少しまで近づくが、超えるには至らない。国内の数量は人口で細るが、冷凍と海外が補う。物価の値上がりは概ね価格に乗り、売上は名目で3%近く伸びる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年4億円×10年×1.0=40億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 加工食品(ハム・ソーセージ・調理加工・冷凍):数量 21.3(推定出荷量(万トン))× 価格 246(1トンあたり単価(万円))→ 売上 5,258 億円・営業利益 158 億円。新工場が効く
- 国内食肉:数量 40.8(推定取扱量(万トン))× 価格 150(1トンあたり単価(万円))→ 売上 6,108 億円・営業利益 189 億円。自社処理比率が高まる
- 海外食肉(ANZCO・Greenlea等):数量 20.3(推定取扱量(万トン))× 価格 177(1トンあたり単価(万円))→ 売上 3,580 億円・営業利益 132 億円。北米・欧州が堅調
倍率:事業の純利益 304 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 4,052 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の長期目標(2035年度に経常500億円)の7割ほどが実現する想定。新工場と海外の伸びが部分的に効く姿で、18%。
中立 35% 国内は細り、物価の分だけ売上が伸びる、薄利の安定が続く10年 利益 251 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 5,894 円3,346 億円
国内の数量は人口減で年1%近く細り、物価の分だけ売上は伸びる。加工食品の利益率は2%台後半に収まる。三島の新工場の効果は、償却の負担と相殺されて小さい。国内食肉は薄利のまま、相場の追い風と向かい風が打ち消し合う。海外食肉はGreenleaの上乗せで数量が伸びるが、相場が循環するため、利益率は3%台前半に戻る。営業利益率は2.6%ほどと過去の中央値に近づき、前期の好調は一時的だったことになる。ROEは6%前後で、資本コストを下回る。還元は累進配当が続く。三菱商事が筆頭株主のまま続き、資本政策は大きく動かない。会社の中計の目標は部分的にしか届かず、長期目標の経常500億円は遠いまま残る。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年4億円×10年×1.0=40億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 加工食品(ハム・ソーセージ・調理加工・冷凍):数量 20.5(推定出荷量(万トン))× 価格 243(1トンあたり単価(万円))→ 売上 4,968 億円・営業利益 134 億円。薄利のまま
- 国内食肉:数量 39.9(推定取扱量(万トン))× 価格 148(1トンあたり単価(万円))→ 売上 5,890 億円・営業利益 165 億円。相場が追い風と向かい風で相殺
- 海外食肉(ANZCO・Greenlea等):数量 18.8(推定取扱量(万トン))× 価格 174(1トンあたり単価(万円))→ 売上 3,266 億円・営業利益 108 億円。Greenleaの上乗せ、相場は循環
倍率:事業の純利益 251 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 3,346 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の数量減と物価分の売上増が相殺し、利益率は過去10年の中央値近くに戻る姿。中心の見立てとして35%。
やや悲観 25% 食肉の相場が戻り、値上げ後の数量減が続く10年 利益 155 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 2,714 円1,541 億円
食肉の相場が前期の追い風から元に戻り、国内の利益率は2%前後へ下がる。値上げを重ねるたびに数量が減り、加工食品の利益率も2%に届かない。海外のANZCOは牛・羊の相場が悪化し、Greenleaの統合費用が重なる。三島の新工場は能力を使い切れず、償却の負担だけが重くなる。営業利益は230億円ほどで、過去10年の平均を少し上回るにとどまる。累進配当は維持するが、成長投資が重く、ROEは4%台にとどまる。三菱商事との関係は変わらず、資本政策も動かない。株主に戻せる余力は小さくなり、ROEを上げる手が打ちにくい。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年4億円×10年×0.8=30億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 加工食品(ハム・ソーセージ・調理加工・冷凍):数量 19.4(推定出荷量(万トン))× 価格 236(1トンあたり単価(万円))→ 売上 4,561 億円・営業利益 91 億円。数量減が続く
- 国内食肉:数量 38.2(推定取扱量(万トン))× 価格 143(1トンあたり単価(万円))→ 売上 5,465 億円・営業利益 115 億円。相場が戻る
- 海外食肉(ANZCO・Greenlea等):数量 17.3(推定取扱量(万トン))× 価格 166(1トンあたり単価(万円))→ 売上 2,870 億円・営業利益 69 億円。NZ相場の悪化
倍率:ROE4.3%がk7.5%以下なので、PERの上限は1÷k=12.5倍。稼ぐ力(事業の純利益÷k)の約8割(10.0倍)を採る。成長投資の稼ぎが資本コストに届かない構造的な弱さを織り込む。
確率:食肉の相場が戻り、値上げ後の数量減が続く想定。前期の利益は追い風の分だけ高く、戻りの確率は小さくない。25%。
悲観 15% 食肉と加工の双方で利益率が1%前後に沈み、優良さを失う10年 利益 69 億円 · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 1,054 円599 億円
スーパーの買い取り力と輸入肉の増加で、国内食肉の利益率は1%前後に沈む。値上げのたびに数量を失った加工食品も、同じく1%に落ちる。NZ相場の悪化とGreenleaののれん減損が重なり、海外食肉も薄利になる。三島の新工場は需要が足りず、償却だけが残る。売上は1兆円を割り、営業利益率は1%を下回る。累進配当は削られ、親会社の三菱商事が主導する再編で、少数株主に不利な条件が出る可能性もある。もはや優良な食品会社とは見なされなくなる。配当は、手元の資金と遊休資産の売却でしばらく支えるが、自己資本は減損で目減りする。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年4億円×10年×0.5=20億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 加工食品(ハム・ソーセージ・調理加工・冷凍):数量 17.6(推定出荷量(万トン))× 価格 225(1トンあたり単価(万円))→ 売上 3,955 億円・営業利益 51 億円。利益率1%に沈む
- 国内食肉:数量 34.7(推定取扱量(万トン))× 価格 134(1トンあたり単価(万円))→ 売上 4,663 億円・営業利益 65 億円。買い取り力と輸入肉に負ける
- 海外食肉(ANZCO・Greenlea等):数量 15.0(推定取扱量(万トン))× 価格 153(1トンあたり単価(万円))→ 売上 2,301 億円・営業利益 37 億円。減損と薄利
倍率:ROE2%前後がk7.5%以下なので、PERの上限は1÷k=12.5倍。稼ぐ力(事業の純利益÷k)の7割(8.75倍)を採る。利益が薄く、買い取り力と輸入肉に負けた会社の稼ぐ力だけを見て、帳簿の自己資本は床にしない。売れる資産(土地・設備・投資有価証券の含み益)の金額は確認できず、床として足していない。
確率:構造的な負け筋(スーパーの買い取り力・輸入肉・NZ相場・減損)が重なる想定。親会社の支えで倒産は遠く、同領域に合わせて15%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
加工食品(ハム・ソーセージ・調理加工・冷凍)
ハム・ソーセージ、調理加工品、家庭用冷凍食品を作って売る国内の事業。前期の売上は約4,000億円、利益率は2.4%。
| 数量推定出荷量(万トン) | 価格1トンあたり単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 22.0 | 181 | 3,986 | 94 |
| 10 年後 中立 | 20.5 | 243 | 4,968 | 134 |
取り方:開示の加工食品売上3,986億円を、推定の出荷量22万トン(2021年度のハム・ソーセージ市場の当社シェア約21%と、調理加工・冷凍を合わせた推定)で割って単価を出した。利益は開示のセグメント利益94億円。数量は人口減で10年0.93倍(冷凍が一部を相殺)、価格は物価並みの1.34倍。
国内食肉
豚・牛・鶏の処理・カット・販売を行う国内の食肉事業。売上は約4,800億円で、相場がそのまま利益を左右する。
| 数量推定取扱量(万トン) | 価格1トンあたり単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 43.4 | 110 | 4,778 | 156 |
| 10 年後 中立 | 39.9 | 148 | 5,890 | 165 |
取り方:食肉の売上6,728億円から海外分(約1,950億円と推定)を引いて国内食肉を約4,780億円とした。取扱量は豚・牛・鶏の平均卸値(約110万円/トン)からの逆算で、推定。食肉の利益226億円は内訳が未開示のため、国内156億円・海外70億円と推定した。数量は人口減で10年0.92倍、価格は1.34倍。
海外食肉(ANZCO・Greenlea等)
ニュージーランドのANZCOを中心に、牛・羊の処理と、北米・欧州・アジア向けの販売を行う海外食肉事業。2026年にGreenleaを買収した。
| 数量推定取扱量(万トン) | 価格1トンあたり単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 15.0 | 130 | 1,950 | 70 |
| 10 年後 中立 | 18.8 | 174 | 3,266 | 108 |
取り方:海外売上(日本以外の合計約2,100億円)のうち食品の輸出を除いた約1,950億円を海外食肉と置き、牛・羊の平均卸値(約130万円/トン)から取扱量を推定した。利益70億円は食肉利益の内訳が未開示のための推定。数量はGreenleaの上乗せと北米の需要で10年1.25倍、価格は円換算の名目で1.34倍(為替は固定)。
リスクと懸念
食肉の相場への依存
全社の売上の6割強、利益の7割が食肉だ。食肉は相場がそのまま利益を動かし、前期の増益も追い風によるところが大きい。相場が戻れば、会社予想のとおり減益になる。年ごとの振れが大きく、10年の平均を読むのが難しい。
値上げ後の数量減
加工食品は値上げを重ねるたびに数量を失っている。価格改定の後に数量減が続くという会社の説明があり、利益率は2%台から動かない。値上げが通っても、利益の増加が数量減で相殺される構図が続く恐れがある。
三島の新工場の稼働
巨額を投じた三島の新工場は、2027年度からの本格稼働を計画している。需要が伸びなければ、能力が余り、償却の負担だけが重くなる。工場再編による利益率の改善は、早くても2028年度以降になる。
ANZCOと海外の相場・為替
海外は売上の約2割に増えたが、牛・羊の相場、為替、海外の家畜疾病で利益が大きく振れる。2026年に買ったGreenleaは、競争の激しいNZの処理事業で、統合の費用が先に出る。買収額は未確認で、のれんの減損リスクも残る。
三菱商事が4割を持つ構造
三菱商事が40.8%を持つ筆頭株主だ。安定株主という安心はあるが、親会社の都合で資本政策が決まる恐れがある。完全子会社化の場合、少数株主の売却価格が適正かどうかは、事前には分からない。
輸入原料と家畜疾病
ハム・ソーセージの原料の豚肉・牛肉は輸入への依存度が高く、為替、関税、海外の家畜疾病で仕入れ値が動く。2026年7月の値上げも、家畜疾病を理由にしている。値上げが遅れれば、利益率は一気に薄くなる。
今後の分かれ目
- 食肉の相場が10年を通して高止まりしたら
- 食肉の利益率が3%を超え、楽観・やや楽観の筋書きに重みを移す。
- 加工食品の数量減が止まり、利益率が3%を超えたら
- 三島の新工場の効果が出たとみて、中立の利益率を引き上げる。
- ANZCOの利益が相場の悪化で急減したら
- 海外食肉の前提を下げ、やや悲観の筋書きに重みを移す。
- 三菱商事がTOBや完全子会社化を提案したら
- 少数株主の取り分と提示価格を、本質価値と比べて評価する。
- 会社が自己資本の圧縮やROEの改善策を打ち出したら
- ROEが8%に近づくとみて、倍率の上限を見直す。
- 国内で大手スーパーとの価格交渉が悪化したら
- 食肉と加工食品の双方で、やや悲観側の確率を厚くする。
見ておくもの
- 食肉セグメントの利益率と、国内の豚・牛の相場
- 加工食品の出荷数量と、値上げ後の数量の戻り
- 三島工場の稼働率と、冷凍食品の売上(200億円の達成)
- ANZCOとGreenleaの利益、NZの牛・羊の相場
- 三菱商事の持株比率と、親会社の動き
- ROEの水準(会社目標の8%)
倍率と資本コストの決め方
3つの事業(加工食品・国内食肉・海外食肉)で数量と価格を置き、推定のシェアと開示の売上でスケールした。倍率は、ROEが資本コスト7.5%に届かない中立では上限(1÷k=12.5倍)の85%、ROEが超える楽観では式の上限近くに置いた。今の株価や同業の倍率は使っていない。前期の利益は食肉の追い風で平常より高く、そのまま伸ばさず、10年の中立の純利益は251億円とした。リースは工場の自社保有が中心で影響が小さいが、新リース会計で営業利益と負債の形が変わる点は、今と同じ形(家賃を費用に入れる形)で置いてそろえた。持ち合い株の評価差額金は配当が純利益に入っているので余り資産に足していない(二重を消した)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.8→14.34 倍・やや楽観 PER 11.5→13.33 倍・中立 PER 10.6→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本7.5%にqualityを足して決める(β・規模は使わない)。事業が傾いていないので上乗せは置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。