結論
日東ベストは、山形の寒河江に本社を置く業務用の冷凍食品と日配食品のメーカーだ。売上は575億円あるが、営業利益は6億円と薄く、営業利益率は1%ほどにとどまる。筆者の結論は、今の値段は割高に傾く。
事業そのものは安定している。冷凍食品は外食・給食・中食の人手不足を背景に、需要が緩やかに広がる。借金は重めだが、自己資本比率は4割あり、返済は進んでいる。
問題は儲けの薄さだ。過去12年の営業利益率は0.3〜3.0%で、均すと1%台にしかならない。人件費と原材料の上昇を値上げで取り戻すのに時間がかかり、ROEは3%前後と資本コストを大きく下回る。
会社は中期計画で2028年度の経常利益20億円を掲げるが、来期の予想は8億円で、道のりは遠い。10年の中立は営業利益率1.4%前後の控えめな回復に置いた。利益率が2%台に乗る前提でなければ、時価総額90億円は払いすぎになる。逆に、不採算品目の整理と自動化が数字に出始めれば、見方は変わりうる。
バリュー投資の観点から
価値を測るのは、将来の稼ぎだ。日東ベストの稼ぎは薄く、安全域は厚くない。
事業は止まらない。冷凍食品の需要は緩やかに伸び、取引先との関係も長い。ただ、投資額が売上に対して重く、利益率は1%台と低い。ROEは3%で、利益を溜めても、株主の資本はほとんど増えない。
堀は浅い。受託製造の色が濃く、買い手に価格を決められやすい。人件費の上昇を製品価格へ移すのに時間がかかる点が、利益率を低く抑えている。
資本の配分は慎重だが、遅い。配当は据え置き、借金は少しずつ返している。大胆な自社株買いや事業の入れ替えはない。
払ってよい値段は、10年後の薄い利益に資本コストで割り引いた値だ。中立の利益率を1.4%と控えめに置くと、今の時価総額90億円は届かない。純資産に対する割安は事実だが、稼げない資産の簿価は価値にならない。利益率が2%台に乗る証拠が出るまで、買い増しを急ぐ局面ではない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、業務用を中心とする冷凍食品だ。2026年3月期の売上575億円のうち、冷凍食品が439億円、日配食品が101億円、その他が34億円。事業は単一セグメントで、部門別に開示している。
冷凍食品は、外食チェーンや給食、弁当・惣菜の工場、小売店向けに、ハンバーグ、グラタン、コロッケ、調理済みの総菜などを作る。顧客の仕様に合わせて作る受託の色が濃く、ブランドで売る比率は低い。日配食品は、麺類や惣菜など、日持ちの短い商品を毎日届ける事業で、今期は7%伸びた。
工場は山形・寒河江を中心に国内に集まり、減価償却費は年17億円、設備投資は年14億円と、売上に対して重い。人手と設備を使う仕事なので、賃金が上がると利益率が直接削られる。
2025年7月には会社分割で子会社を新たに連結に加えた。
今期は売上が3%、営業利益が13%伸びたが、純利益は5億円どまり。来期の会社予想は売上600億円、営業利益8億円、純利益4億円と、増収でも純利益は減る計画だ。単一セグメントのため、事業別の利益は開示されていない。
優良さと弱いところ
堀は浅い。業務用の冷凍食品は、顧客の仕様に合わせた受託製造が多く、顧客が他の工場に移すことも難しくない。コンビニや外食の大口顧客には、値上げを通すのに時間がかかる。強みは、味と衛生管理の品質を安定させ、長く取引を続けてきたことだ。
利益の質は低い。営業利益率は過去12年で0.3〜3.0%の間を動き、最近の5年は1%前後にとどまる。売上は500億円台で10年ほど横ばいだった。ROEの中央値は3.7%で、資本コストを下回る年が大半だ。
財務は普通で、自己資本比率は41%。有利子負債は105億円、現預金は43億円で、純負債は63億円。営業利益は支払利息の4倍ほどで、余裕は厚くない。
経営は慎重だが、利益率を改善する速度は遅い。筆者は、不採算品目の削減と自動化の成果が、数字に出るのを待ちたい。数字が動き始めてからでも、遅くはない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
冷凍食品は、国内で数少ない伸びる食品分野だ。2025年の国内消費量は初めて300万トンを超え、業務用が国内生産の過半を占める。単身世帯の増加、女性の就業率の上昇、外食の人手不足によって、調理済みの食材を使う動きが広がっている。
一方で、競争は厳しい。ニチレイ、味の素、日本水産などの大手がブランドと販売力で先行し、日東ベストは受託製造で顧客の仕様に応える立場にある。大口の買い手は価格交渉力が強く、原材料や人件費の上昇を製品価格へ移すのに、半年から1年ほどの遅れが出る。
2026年は値上げの品目数が多く、加工食品の店頭価格は前年同期比で4〜5%上がった。値上げが通る年は利益が戻るが、頻度が増えるほど量が逃げる。
日配食品は日持ちが短く、物流と鮮度の管理が要る。小売の販売の波と天候に左右されやすく、廃棄のリスクも負う。
市場は緩やかに拡大するが、分かれ目は人件費の吸収だ。多能工化と自動化で生産性を上げられる会社が、薄い利益率を守れる。国内の人口が減る中、量の拡大よりも、1つの工場でどれだけ効率よく作るかが問われる。
資本政策と M&A
配当は据え置かれ、配当性向は28%だ。来期の予想も同額で、純利益が4億円に落ちる計画のため、性向は36%に上がる。自社株買いの実績はなく、自己株式は5千株未満にとどまる。
現金は余っていない。純負債は63億円で、時価総額に対して7割に達する。営業キャッシュフローは27億円と大きく見えるが、未払金が17億円増えた一時的な要因を含む。設備投資は14億円で、減価償却の17億円を下回る。
投資有価証券は38億円ある。取引先との関係で持つ株が中心とみられ、配当は利益に入っているので、価値に別途は足さない。
買収の実績は小さく、TOBや非公開化の公表はない。親会社の記載もない。大株主には、取引先持株会が名を連ねる。
筆者は、純負債を減らしつつ配当を維持する守りの姿勢を、妥当とみる。ただ、ROEが3%の会社が利益を溜め込むほど、自己資本の使い道が問われる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
時価総額は90億円で、自己資本の167億円の半分ほどしかない。工場と土地、投資有価証券の38億円があり、資産の厚みは確かだ。冷凍食品は、国内の消費量が初めて300万トンを超え、外食の人手不足から業務用の需要も広がる。
会社は中期計画で2028年度に経常利益20億円を掲げる。今は8億円の予想だが、不採算品目の削減、多能工化と自動化、価格改定の定着が進めば、利益率は2〜3%に戻る。実際に、2017年3月期は営業利益率3.0%、営業利益16億円を出した。賃金上昇を製品価格に移す流れも、社会全体で定着しつつある。
営業利益は今期に13%伸び、日配食品の売上は7%伸びた。今の営業利益6億円が12億円になれば、純利益は8億円を超え、時価総額90億円は10倍に届く。
借金は返済が進み、設備投資が償却を下回っているため、利益が出れば自由な現金も増える。配当も増やす余地がある。会社が掲げる計画が半分でも実現すれば、今の値段は安く見える。
慎重な見方
薄利の体質は、10年たっても変わっていない。売上は500億円台で横ばいが続き、営業利益率は過去5年で1%前後にとどまる。2017年の3.0%は、原材料が安かった一時的な山だ。
中期計画の20億円は、来期の予想8億円の2.5倍で、実現の見込みは薄い。四半期では赤字の期もあり、固定費の重さが出やすい。
人件費は年3〜5%で上がり、物流費と包装資材も上昇している。顧客の大手は価格交渉力が強く、値上げが通るまでの遅れは、そのまま利益の目減りになる。冷凍食品は大手が増産しており、受託製造の価格競争は強まる。値上げが通りにくい年が続けば、人件費の上昇だけが先に利益を削る。
純負債は63億円で、時価総額の7割に達する。営業利益は支払利息の4倍ほどと余裕は小さい。ROEは3%で、資本コストを大きく下回る。自己資本が厚くても、稼げない設備や在庫の簿価に、株主が払う意味はない。工場の減価償却は年17億円と、営業利益の2倍以上で、利益が薄い年は設備の更新すらままならない。
どちらに重みを置いたか
資産の厚みは事実だが、利益率の低さが10年たっても残る見方に分がある。中立は営業利益率1.4%の控えめな回復に置き、確率の厚みは中立とやや悲観に寄せた。時価総額が自己資本の半分でも、ROEが3%の事業は、その簿価を稼ぐ力に結びつけられない。回復が数字に出れば、見直す。それまでは、資産の厚みを理由に買う局面ではない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 688 円83 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 156 円19 億円)。 今の値に割り戻すと 416 円50 億円、今との差 −45.2%、 期待の年率 +1.1%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 1,873 円227 億円 | 328 円40 億円 | +189.6% | +11.2% | 154 円19 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,240 円150 億円 | 222 円27 億円 | +92.4% | +6.8% | 263 円32 億円 |
| 中立 | 35% | 770 円93 億円 | 155 円19 億円 | +21.7% | +2.0% | 324 円39 億円 |
| やや悲観 | 26% | 166 円20 億円 | 120 円15 億円 | −62.4% | −9.3% | 74 円9 億円 |
| 悲観 | 14% | 146 円18 億円 | 58 円7 億円 | −73.1% | −12.3% | 29 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 688 円83 億円 | 156 円19 億円 | +11.0% | +1.1% | 844 円102 億円 |
今の株価時価総額 760 円92 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 値上げと自動化が定着し、営業利益率が過去の山の3%に戻る 利益 19 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,873 円227 億円
不採算品目の削減と多能工化・自動化が実り、人件費の上昇を吸収できる。大口の買い手への価格改定も1年以内に通るようになり、営業利益率は過去の山と同じ3%に戻る。冷凍食品は外食の人手不足と中食シフトで量が1割増え、日配食品は小売向けの惣菜が伸びて量が2割5分増える。単価は物価を少し上回る。営業利益は27億円、純利益は19億円。純負債は返済で大きく減り、利払いの負担が軽くなる。配当は利益の35%を保つ。ただし、受託製造で買い手の力が強いまま3%を保つのは難しく、10年続く姿としては最良に近い。人手と設備を使う食品工場で3%を保つには、高付加価値品への広がりも要る。
- 冷凍食品:数量 80.3(出荷量(千トン、推定))× 価格 8.43(1キロあたり平均単価(億円/千トン・名目))→ 売上 677 億円・営業利益 20 億円。量1割増・利益率3%
- 日配食品:数量 35.0(出荷量(千トン、推定))× 価格 5.05(1キロあたり平均単価(億円/千トン・名目))→ 売上 177 億円・営業利益 5 億円。惣菜が伸びる
- その他:数量 345(取引件数(件、推定))× 価格 0.13(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 46 億円・営業利益 1 億円
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.8% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 227 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期計画の経常20億円に近い姿。2017年3月期に営業利益率3.0%を出した実績はあるが、過去12年でその1度だけ。確率は7%に抑えた。山は1度だけで、10年続く根拠にはならない。
やや楽観 18% 利益率は2%に戻り、中期計画の半分ほどを達成する 利益 12 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,240 円150 億円
価格改定の遅れが縮まり、人件費の上昇を製品価格に移せる。冷凍食品の量は7%増え、日配食品は2割弱増える。単価は物価並みか少し上。営業利益率は2%強で、営業利益は17〜18億円。純利益は12億円台に乗る。純負債は返済で減り、利払いも小さくなる。工場の自動化への投資は続くが、償却を大きく超えない。配当は性向を3割台に保ち、増配は小さい。ただし、大口顧客の価格交渉力が強いままで、2%台に乗ったとしても定着するかは見通せない。会社の予想の延長線にあるが、過去の平均を上回る姿だ。値上げの定着と自動化の両方が揃って初めて、この水準に届く。
- 冷凍食品:数量 78.1(出荷量(千トン、推定))× 価格 8.31(1キロあたり平均単価(億円/千トン・名目))→ 売上 649 億円・営業利益 14 億円
- 日配食品:数量 33.0(出荷量(千トン、推定))× 価格 4.91(1キロあたり平均単価(億円/千トン・名目))→ 売上 162 億円・営業利益 3 億円
- その他:数量 345(取引件数(件、推定))× 価格 0.13(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 46 億円・営業利益 1 億円
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.6% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 150 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:不採算品目の削減や自動化の成果が出て、営業利益率が1%台から2%台に乗る姿。計画の20億円には届かないが、過去の中央値1.6%は超える。
中立 35% 量は緩やかに増え、利益率は1.4%と控えめに戻る 利益 8 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 770 円93 億円
冷凍食品は中食シフトで量が5%増える。日配食品は1割増。単価は物価並みの1.34倍。営業利益率は1.4%で、過去12年の中央値1.6%より低く置いた。人件費・物流費・包装資材の上昇を値上げが追いかける構図が続くため、2%には乗らない。営業利益は11億円、純利益は7〜8億円。純負債は返済で減る一方、設備投資は償却を少し上回る。配当は性向3割台で、配当の据え置きが続けば性向は下がる。ROEは4%弱で資本コストを下回り、利益を溜めるほど資本の効率は落ちる。人件費と原材料の上昇を、値上げと自動化でほぼ相殺できる姿だ。
- 冷凍食品:数量 76.7(出荷量(千トン、推定))× 価格 8.07(1キロあたり平均単価(億円/千トン・名目))→ 売上 618 億円・営業利益 9 億円。量5%増・利益率1.4%
- 日配食品:数量 30.8(出荷量(千トン、推定))× 価格 4.83(1キロあたり平均単価(億円/千トン・名目))→ 売上 149 億円・営業利益 2 億円
- その他:数量 345(取引件数(件、推定))× 価格 0.13(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 46 億円・営業利益 1 億円
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.7% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 93 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:来期の会社予想は営業利益率1.3%。人件費の上昇を製品価格で取り戻す動きが続く一方、大口の買い手の力で全部は戻らない。10年を均せば、過去12年の中央値1.6%を下回る控えめな回復が自然だ。
やや悲観 26% 値上げが追いつかず、営業利益率が0.8%に沈む 利益 3 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 166 円20 億円
人手不足で賃金が年3〜5%上がり、物流費と包装資材も重い。大口の買い手は値上げを認めても半年から1年遅らせ、その間の費用増は丸ごと利益の減少になる。冷凍食品の量は5%減り、日配食品は横ばい。単価の上がりは物価の8割にとどまる。営業利益率は0.8%、営業利益は5〜6億円。借入は借り換えで3.5%に上がり、利払いが増える。純利益は3億円弱。配当は据え置くため、利益の4割を超え、純負債の返済は止まる。減価償却が重いまま、設備を更新する余力が細る。省人化への投資が遅れれば、さらに人件費の負担が増える悪循環になる。
- 冷凍食品:数量 69.4(出荷量(千トン、推定))× 価格 7.83(1キロあたり平均単価(億円/千トン・名目))→ 売上 543 億円・営業利益 4 億円。量5%減・値上げ遅れ
- 日配食品:数量 28.0(出荷量(千トン、推定))× 価格 4.69(1キロあたり平均単価(億円/千トン・名目))→ 売上 131 億円・営業利益 1 億円
- その他:数量 328(取引件数(件、推定))× 価格 0.13(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 43 億円・営業利益 0 億円
倍率:事業の ROE は 1.5% で資本コスト 8.25% を大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)から見て、上限 11.8 倍の 6 割にあたる 7.0 倍に置いた。薄利で利益の質が低い筋書きなので、7 割へ引き上げない。床(約17億円)は上回る。
確率:人件費・物流費の上昇を製品価格に移せず、利益率が2023年3月期の0.7%付近まで落ちる筋書き。過去12年のうち4期は1%を下回った。確率は26%と厚めに置いた。
悲観 14% 大口顧客を失い、価格競争で赤字が続く 利益 −1 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 146 円18 億円
冷凍食品の大口顧客が調達先を分け、量が15%減る。日配食品も小売の価格交渉で1割減る。人件費の上昇は価格に移せず、営業利益はほぼゼロから赤字になる。固定費の重い工場の稼働率が落ち、減価償却の17億円が重くのしかかる。借入は借り換えで3.5%に上がり、利払いが増えて最終赤字の期が続く。配当は半減し、自己資本は今より小さくなる。工場の再編や遊休資産の売却で現金を作るが、リストラ費用も出る。稼ぐ力は小さいため、価値は売れる資産から借金を引いた床で決まる。事業の縮小や再編が進めば、残る価値はさらに減る。
- 冷凍食品:数量 62.1(出荷量(千トン、推定))× 価格 7.22(1キロあたり平均単価(億円/千トン・名目))→ 売上 448 億円・営業利益 1 億円。量15%減・価格競争
- 日配食品:数量 25.2(出荷量(千トン、推定))× 価格 4.33(1キロあたり平均単価(億円/千トン・名目))→ 売上 109 億円・営業利益 0 億円
- その他:数量 311(取引件数(件、推定))× 価格 0.12(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 37 億円・営業利益 0 億円
倍率:事業の ROE は赤字に近く、稼ぐ力では床を決められない。売れる資産の税後から負債を引いた約 17 億円を床とみて、今の自己資本 167 億円に 0.10 倍を掛けた。EV でも見た。EV÷営業利益は営業利益がほぼゼロのため60倍と大きく出るが、利益の倍率ではなく売れる資産から負債を引いた床で見る局面で、意味を持たない。
確率:大口の買い手が取引先を分散し、大手との価格競争で受託の価格が下がる筋書き。営業利益率は2015年3月期の0.3%を下回り、赤字の期が出る。確率は14%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
冷凍食品
外食・給食・弁当惣菜・小売向けの業務用冷凍食品(ハンバーグ・グラタン・コロッケ等)。
| 数量出荷量(千トン、推定) | 価格1キロあたり平均単価(億円/千トン・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 73.0 | 6.02 | 439 | 5 |
| 10 年後 中立 | 76.7 | 8.07 | 618 | 9 |
取り方:2026年3月期の冷凍食品部門の売上は439.4億円(前期比+2.2%)。数量は開示がなく、平均単価を食品の目安から置き、約7.3万トンと推定した。利益は部門別開示がなく、営業利益6.47億円を売上比で按分した。
日配食品
麺類・惣菜など日持ちの短い日配品。
| 数量出荷量(千トン、推定) | 価格1キロあたり平均単価(億円/千トン・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 28.0 | 3.61 | 101 | 1 |
| 10 年後 中立 | 30.8 | 4.83 | 149 | 2 |
取り方:2026年3月期の日配食品部門の売上は101.0億円(前期比+7.2%)。数量は開示がなく、平均単価を食品の目安から置き、約2.8万トンと推定した。利益は売上比で按分した。
その他
部門別開示のその他(商品の仕入販売など)。
| 数量取引件数(件、推定) | 価格1件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 345 | 0.10 | 34 | 0 |
| 10 年後 中立 | 345 | 0.13 | 46 | 1 |
取り方:売上は34.5億円(前期比+0.4%)。内訳の開示がなく、取引の件数を推定で置いた。規模が小さく、全体への影響は限られる。
リスクと懸念
利益率の薄さ
営業利益率は1%前後で、原材料や人件費が数%動くと営業利益が消える。四半期では赤字になる期もある。
人件費と物流費の上昇
工場の人手と配送に頼る事業で、賃金と物流費の上昇が続く。大口の買い手への値上げは半年〜1年遅れる。
大口顧客の価格交渉力
受託製造の色が濃く、外食・コンビニなどの大手が価格を決めやすい。取引の見直しで数量が動く。
重い設備と借金
減価償却が年17億円と大きく、純負債は63億円。利益が落ちると、支払利息の負担が重くなる。
中期計画の未達
2028年度の経常利益20億円に対し、来期の予想は8億円。達成が遠いと見られれば、評価は上がらない。
食品の安全
異物混入・表示の誤りがあると、取引停止や回収で費用が一度に出る。
今後の分かれ目
- 営業利益率が2期続けて2%を超えたら
- 楽観・やや楽観の確率を上げる。値上げと自動化の成果が定着した証拠になる。
- 来期の営業利益が会社予想の8億円を割り込んだら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。人件費の上昇を吸収できていない。
- 純負債が50億円を下回り、配当が増えたら
- 資本の使い方が改善している。中立の確率を厚くしてよい。
- 大口顧客の取引停止や価格改定の拒否が開示されたら
- 受託製造の弱さが出ている。悲観の確率を上げる。
- 小口の会社分割や買収で新しい子会社の利益が見えたら
- 連結の利益率に与える影響を確かめ、筋書きを見直す。
見ておくもの
- 四半期の営業利益率と、前年同期との差
- 純有利子負債と、支払利息に対する営業利益の倍率
- 価格改定の実施と、数量の変化
- 減価償却に対する設備投資の水準
- 中期計画の進捗説明と、配当方針
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から出した。ROEが資本コストを下回る筋書きは、PERの上限を1÷k=11.8倍とし、利益の質に応じて上限の8〜9.5割に置いた。今のPERやPBR、同業の倍率は使っていない。数量は実質、物価の1.34倍は価格にだけ入れた。償却は物価で増やしていない。純負債は余った現金ではなく、別に切り分けていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.2→12.12 倍・やや楽観 PER 10.6→12.12 倍・中立 PER 9.4→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。