結論
柿安本店は、松阪牛を核とする精肉店、百貨店の惣菜、駅ビルの和菓子、料亭を営む三重県の食品会社だ。売上は約360億円で、自己資本比率は約8割。借金はなく、現預金が81億円ある。
筆者の結論は「割高」だ。会社は堅い。だが、儲けの源が細っている。営業利益は2023年4月期の35億円から、2026年4月期は14億円まで落ちた。店は退店が出店を上回り、売上は4期連続で減ったか横ばいだ。
今の時価総額は236億円。そのうち現金が約3分の1を占めるので、事業そのものには160億円ほどの値がついている。営業利益の11倍で、筆者には高い。事業の価値は、10年後の中立でも営業利益20億円強、純利益15億円弱にとどまる。
配当は5年据え置きで、金額は純利益のほぼ全額に当たる。利益が減れば現金を削る形で、無理のない還元とは言いにくい。筆者が見るのは、原材料高を値上げに写せるか、退店の整理が利益の底打ちにつながるか、の二つだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「安心感はあるが、儲けが細る商売」だ。
オーナー利益、つまり再投資を引いて株主に残る利益は、現状で年8億円前後。営業利益14億円のうち、税と店の維持に消える。ブランドは本物だが、売上が減る中で費用は物価とともに増え、利益が細った。
堀は、松阪牛と百貨店のブランド力と、枝肉からの一貫体制だ。10年後も柿安の名は残るが、売り場である百貨店と駅ビルの来店は人口とともに細る。堀は狭く、広がりにくい。
資本の使い方は、保守的だ。借金はなく、利益のほぼ全額を配当で戻す。それ自体は誠実だが、ROEが資本コストを下回るなら、現金を寝かせるより、効率の高い事業へ回すか、自社株買いで戻すほうが良い。
安全域は、現金を除くと薄い。割り引いた価値は、今の時価総額を4割近く下回る。筆者が見たいのは、退店の整理が終わった後の利益の底値と、現金の戻し方に変化があるかだ。
何で稼ぐ会社か
売上360億円(2026年4月期)の内訳は、精肉事業が136億円、惣菜事業が128億円、和菓子事業が69億円、食品事業が15億円、レストラン事業が13億円。連結の従業員は約850人。
精肉事業は、松阪牛と自社ブランドの「三重 柿安牛」を核に、百貨店などの精肉売り場、通販、法人向けの卸で売る。枝肉の加工を社内で一貫して行う。セグメント利益は10億円で、最大の稼ぎ頭だ。
惣菜事業は、百貨店の洋惣菜「柿安ダイニング」、中華惣菜「柿安上海DELI」、牛めしの「柿安 牛めし」を展開する。和菓子事業は、駅ビルやショッピングセンターの「口福堂」で、おはぎやどら焼を売る。レストラン事業は「料亭 柿安」などを運営し、赤字が続く。
店は約330。2026年4月期は、15店を閉じて3店を開けた。出店先は百貨店とショッピングセンターが中心で、家賃は売上に連動する部分が大きい。ただ、固定家賃の約束は開示から確かめられなかった。
全社費用が大きいのも特徴だ。セグメント利益の合計24億円に対し、連結の営業利益は14億円。差の約10億円は、本社の費用だ。売上に対して2.7%を占める。
優良さと弱いところ
堀は、ブランドにあるが、規模では弱い。
最大の資産は「柿安」と「松阪牛」の名前だ。百貨店の精肉と惣菜では、贈答や自家用の高級品として指名で買われる。枝肉から加工まで社内で行う体制は、品質の管理と利益に効く。2023年4月期には、精肉と惣菜で合わせて28億円のセグメント利益を稼いだ。
弱さは三つある。一つは、利益率の低下だ。精肉の利益率は、2023年4月期の10%から2026年4月期は7.5%に下がった。惣菜は10%から7%に落ちた。原材料高を値上げで写し切れていない。二つ目は、全社費用の重さ。売上の2.7%で、競合の規模の利益で割ると重い。三つ目は、店の質だ。2026年4月期は15店を閉じた。不採算の整理は進むが、新業態の複合型店舗はまだ収益体制が固まっていない。
資本は厚い。自己資本は155億円、うち現預金が81億円。ROEは5%前後で、資本コストを下回る。社長の赤塚保正氏が、赤塚一族の流れを受けて経営を率いる。大株主には信託口と百五銀行が並び、取引先と社員の持株会も上位にいる。
筆者は、この会社の堅さを評価する。ただし堅さは利益の高さを意味しない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
惣菜市場は、成長を続けている。日本惣菜協会によると、2025年の市場規模は11.7兆円で、前年比3.7%増だった。ただし値上げによる増加が大きい。販路はコンビニが31%、食料品スーパーが30%を占める。百貨店は小さな販路で、そこに強みを置く柿安は、市場の成長を取り込みにくい。
精肉は、和牛を中心とした高級品が主力だ。物価が上がっても、贈答や特別な日の需要は底堅い。ただ牛肉の仕入れ値が上がる局面では、売値に写すのが遅れる。柿安の中間決算の説明も、原材料高が営業利益を2億円ほど押し下げたとした。
和菓子は、駅ビルやショッピングセンターでの需要が、人の流れに左右される。レストランは、料亭と上海料理の2本立てだが、客数の回復は鈍く、赤字から抜けられない。
競合は多い。百貨店の惣菜では、ロック・フィールドなどが洋惣菜で競う。コンビニやスーパーの惣菜は、価格の面で圧力になる。人手不足と家賃の上昇は、店舗型の業態すべてに効く。
追い風もある。訪日客の百貨店での消費、中食の定着、通販の拡大は、柿安にとって取りこぼせない。会社は、コンビニでの「柿安監修おむすび」の発売、銀座の料亭の改装、ECの強化、外販の拡大を掲げた。筆者は、これらが10年で利益を大きく変える規模にはならないと見る。
資本政策と M&A
還元は手厚いが、柔軟性に欠ける。配当は年1回の期末のみで、2021年度から据え置きが続く。2026年4月期の純利益のほぼ全額に当たる。自社株買いの実績は確認できなかった。
純利益より多く配ると現金が減る。ただし、現預金は10年で増えた。会社は利益のほぼ全部を配りつつ、現金は積み上げてきた。余った現金を株主に戻す実績はある、と筆者は見る。
株主優待は、4月末の100株以上にレストラン・惣菜・和菓子の店で使える利用券を贈る。1,000株以上には、1万円相当のグルメ券を選べる。株主数は約1.4万人で、対象は多いが、費用は年0.2億円前後と見積もる。10年の差は1ポイントに届かず、還元の額には足していない。
M&Aは、会社の「8つの戦略」に入っている。ただ、過去に大きな買収はない。新業態、海外、外販の拡大に資金を回す方針で、規模は小さいはずだ。
現金が厚いので、買収よりも自社株買いや増配が、株主には素直な使い道だ。筆者は、そこが動くかが、この会社の評価を変える最大の材料だと見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
利益の底は近い。2026年4月期は、15店の退店と原材料高が重なった年で、出血はこの辺りで止まる。精肉の利益は31%増え、すでに底打ちの兆しが出ている。惣菜の落ち込みは上期に集中した。
ブランドの力は残っている。松阪牛と「柿安」の名は、百貨店と通販の贈答で価格決定力を持つ。訪日客の需要と、コンビニでのおむすび、銀座の料亭の改装が、新しい売上を生む。
財務は鉄壁だ。自己資本比率は約8割で、現預金は81億円。景気後退でも耐えられるし、現金は株主に戻せる。大株主の構成は分散していて、資本効率の改善を求める圧力が高まっている。
2023年4月期の営業利益35億円は、人流の回復と値上げの効果が重なった実績だ。物価が3%で上がる世界では、価格転嫁の力のあるブランド会社が、利益を取り戻す。10年かけて営業利益率が5%台に戻れば、利益は今の1.5倍になる。
新しい販路も開く。コンビニの「柿安監修おむすび」は、百貨店に来ない客に柿安の名前を届ける入口になる。銀座の料亭の改装は、法人の接待需要と訪日客を狙う。ECと外販は、店舗の家賃も人手も要らない売上だ。これらが育てば、店の数が減っても売上は落ちず、利益率は店舗の整理とともに上がる。
慎重な見方
売上が4年連続で縮み、利益は半分に減った。店は減り続け、不採算店の整理は終わっていない。原材料高は、牛肉でも野菜でも続く。値上げで消費者が離れると、数量が落ちる。
全社費用が売上の2.7%と重く、売上が減るほど利益率を押し下げる。セグメント利益の合計24億円に対し、営業利益は14億円。人件費が上がれば、残りはさらに薄くなる。
販路が悪い。主力の百貨店は構造的に縮み、駅ビルやショッピングセンターは競合が多い。惣菜市場は11.7兆円と大きいが、伸びているのはコンビニとスーパーで、柿安の主戦場ではない。
資本政策も不安だ。配当は純利益の全額で、利益がさらに落ちれば減配か現金の取り崩しになる。ROEは5%前後で資本コストを下回り、現金を溜め込む構造は、株主にとって効率が悪い。第1四半期の営業利益は0.65億円と、前年同期から7割減った。回復の気配は薄い。
新しい販路も当てにできない。コンビニのおむすびは、競争が激しく利益率が低い。ECと外販は、ブランドの知名度に頼るが、広告費と物流費が先に出る。銀座の料亭の改装も、赤字のレストラン事業に資金を足すことになる。店を減らしながら新規に投資する構図は、利益をさらに圧迫する。
どちらに重みを置いたか
ブランドと財務の堅さは強気の言うとおりだ。しかし、売上と利益の減少が続くという指摘も重い。中立は営業利益率4.6%まで戻すと置いたが、過去の5〜6%台には届かない。ROEは10%近くと資本コストを上回るが、倍率は式から出る上限の約9割に置いた。確率は中立を最大にしつつ、やや悲観に27%、悲観に8%を置き、悲観側へわずかに寄せた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/04 期)
確率で加重した株価時価総額 2,300 円220 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 918 円88 億円)。 今の値に割り戻すと 1,755 円168 億円、今との差 −30.9%、 期待の年率 +2.4%(資本コスト 7.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,391 円421 億円 | 1,169 円112 億円 | +118.9% | +8.1% | 445 円43 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,399 円326 億円 | 1,044 円100 億円 | +74.9% | +5.7% | 888 円85 億円 |
| 中立 | 37% | 2,634 円252 億円 | 939 円90 億円 | +40.7% | +3.5% | 1,322 円127 億円 |
| やや悲観 | 28% | 990 円95 億円 | 814 円78 億円 | −29.0% | −3.4% | 505 円48 億円 |
| 悲観 | 7% | 237 円23 億円 | 574 円55 億円 | −68.1% | −10.8% | 57 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,300 円220 億円 | 918 円88 億円 | +26.7% | +2.4% | 3,217 円308 億円 |
今の株価時価総額 2,540 円243 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% ブランドの価格力が戻り、利益率が5%台後半へ 利益 22 億円 · PER 17.8 倍 · 株価時価総額 4,391 円421 億円
値上げが原材料高に先行し、松阪牛と「柿安」のブランドが価格を取る。精肉と惣菜の営業利益率は9.5%まで戻り、和菓子も8%に上がる。訪日客の需要と贈答が下支えし、数量は横ばいを保つ。
新業態は育つ。コンビニでの「柿安監修おむすび」と、ECと外販の拡大が売上を支え、食品事業の数量は3割増える。銀座の料亭は、改装を経て収益化する。退店の整理が終わり、全社費用も売上の伸びに薄められる。
営業利益は約34億円、利益率は6.5%。2023年4月期の水準に戻る。自社株買いと増配が始まり、現金の株主への還元が進む。純利益は約22億円、ROEは13%台になる。
- 精肉事業:数量 4.5(精肉の販売量(千トン換算・推定))× 価格 42(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 3 千円相当))→ 売上 190 億円・営業利益 18 億円。数量 1.00 倍・価格 1.40 倍・営業利益率 9.5%
- 惣菜事業:数量 1,282(買上客数(万人・年、推定))× 価格 0.14(1 万人あたり売上(億円・名目=客単価 1 千円相当))→ 売上 180 億円・営業利益 17 億円。数量 1.00 倍・価格 1.40 倍・営業利益率 9.5%
- 和菓子事業:数量 466(買上客数(万人・年、推定))× 価格 0.21(1 万人あたり売上(億円・名目=客単価 1.5 千円相当))→ 売上 98 億円・営業利益 8 億円。数量 1.02 倍・価格 1.40 倍・営業利益率 8.0%
- 食品事業:数量 1.7(販売量(千トン換算・推定))× 価格 17(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 1.2 千円相当))→ 売上 28 億円・営業利益 2 億円。数量 1.30 倍・価格 1.40 倍・営業利益率 8.0%
- レストラン事業:数量 29.0(来店客数(万人・年、推定))× 価格 0.70(1 万人あたり売上(億円・名目=客単価 5 千円相当))→ 売上 20 億円・営業利益 1 億円。数量 1.10 倍・価格 1.40 倍・営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)35 億円。全体の PER 17.77 倍、時価総額 421 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げの浸透、新業態の収益化、退店の整理の完了がそろう必要がある。直近3期は減益が続いており、8%にとどめた。
やや楽観 20% 退店の整理が終わり、利益率がゆっくり戻る 利益 18 億円 · PER 16.6 倍 · 株価時価総額 3,399 円326 億円
退店の整理が終わり、残った店の利益率がゆっくり戻る。精肉と惣菜は8.8%、和菓子は7.2%まで戻る。コンビニのおむすびや外販が少しずつ育ち、食品事業の数量は15%増える。
値上げは物価並みに通り、原材料高の局面でも利益率の落ち込みが浅くなる。全社費用の増加は、売上の伸びで吸収される。
営業利益は約28億円、利益率は5.6%。2018年2月期のころの水準に近い。純利益は約18億円で、ROEは11%台と資本コストを上回る。配当は物価の分だけ増える。
全社費用は売上の増加とともに薄まり、売上に占める割合が2.7%から2.5%台に下がる。レストランは赤字を抜け、複合型店舗の収益体制も固まる。ただし、百貨店という売り場の縮小は止まらず、新しい販路の伸びで穴を埋める形になる。
- 精肉事業:数量 4.4(精肉の販売量(千トン換算・推定))× 価格 41(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 3 千円相当))→ 売上 182 億円・営業利益 16 億円。数量 0.98 倍・価格 1.37 倍・営業利益率 8.8%
- 惣菜事業:数量 1,256(買上客数(万人・年、推定))× 価格 0.14(1 万人あたり売上(億円・名目=客単価 1 千円相当))→ 売上 172 億円・営業利益 15 億円。数量 0.98 倍・価格 1.37 倍・営業利益率 8.8%
- 和菓子事業:数量 457(買上客数(万人・年、推定))× 価格 0.20(1 万人あたり売上(億円・名目=客単価 1.5 千円相当))→ 売上 93 億円・営業利益 7 億円。数量 1.00 倍・価格 1.36 倍・営業利益率 7.2%
- 食品事業:数量 1.5(販売量(千トン換算・推定))× 価格 16(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 1.2 千円相当))→ 売上 24 億円・営業利益 2 億円。数量 1.15 倍・価格 1.36 倍・営業利益率 7.2%
- レストラン事業:数量 26.0(来店客数(万人・年、推定))× 価格 0.68(1 万人あたり売上(億円・名目=客単価 5 千円相当))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。数量 1.00 倍・価格 1.36 倍・営業利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)35 億円。全体の PER 16.6 倍、時価総額 326 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:精肉の利益が戻り始めている点と、現金の厚さが下支えになる。ただ惣菜と和菓子の利益率の戻りは遅く、20%を置いた。
中立 37% 数量は微減、価格は物価並み。利益率は4%台半ば 利益 15 億円 · PER 15.4 倍 · 株価時価総額 2,634 円252 億円
数量は人口減と退店で10年に3〜5%ほど減り、価格は物価並みに上がる。精肉と惣菜の営業利益率は8.0%、和菓子は6.5%。2026年4月期より1ポイントほど戻るが、過去の高い年には届かない。レストランは赤字をやっと抜ける程度だ。
全社費用は物価の分だけ増え、約13億円になる。ここが利益率の戻りを抑える。売上は470億円ほど。営業利益は約22億円で、利益率は4.6%。純利益は約15億円になる。
配当は据え置きを続けず、利益の増加に合わせて少し増える。ROEは10%近くで、資本コストを上回る。現金は余りとして残り、「堅いが目立たない会社」として10年が過ぎる。
- 精肉事業:数量 4.4(精肉の販売量(千トン換算・推定))× 価格 40(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 3 千円相当))→ 売上 176 億円・営業利益 14 億円。数量 0.97 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 8.0%
- 惣菜事業:数量 1,244(買上客数(万人・年、推定))× 価格 0.13(1 万人あたり売上(億円・名目=客単価 1 千円相当))→ 売上 167 億円・営業利益 13 億円。数量 0.97 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 8.0%
- 和菓子事業:数量 448(買上客数(万人・年、推定))× 価格 0.20(1 万人あたり売上(億円・名目=客単価 1.5 千円相当))→ 売上 90 億円・営業利益 6 億円。数量 0.98 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 6.5%
- 食品事業:数量 1.3(販売量(千トン換算・推定))× 価格 16(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 1.2 千円相当))→ 売上 21 億円・営業利益 1 億円。数量 1.05 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 6.5%
- レストラン事業:数量 25.0(来店客数(万人・年、推定))× 価格 0.67(1 万人あたり売上(億円・名目=客単価 5 千円相当))→ 売上 17 億円・営業利益 0 億円。数量 0.95 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 1.0%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.9% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)35 億円。全体の PER 15.41 倍、時価総額 252 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率が2015〜20年の水準(5%台)の手前で止まる筋書き。過去の実績の範囲に収まるので最大の37%を置いた。
やや悲観 28% 原材料高に値上げが追いつかず、利益率が3%を割る 利益 8 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 990 円95 億円
原材料高に値上げが追いつかず、利益率が下がり続ける。精肉は6.5%、惣菜は6.0%、和菓子は5.0%まで落ちる。数量は人口減と退店で8%ほど減り、価格は物価の伸びを下回る。レストランは赤字のまま、店を閉じる。
全社費用は物価で増えるが、売上は伸びない。営業利益は約12億円で、利益率は2.5%。純利益は約8億円になる。
配当は据え置けず、利益に合わせて減る。現金を取り崩して配当を保つ年も出る。ROEは6%弱で、資本コストを下回る。それでも財務は堅く、会社は変わらず続く。
退店は続くが、店を閉じた後の費用(原状回復、従業員の配置転換)がかさみ、整理の効果は出にくい。新業態や海外にも手を出すが、収益に結びつかず、投資が重荷になる。ブランドの価値は保たれるものの、利益に写らない10年になる。
- 精肉事業:数量 4.2(精肉の販売量(千トン換算・推定))× 価格 39(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 3 千円相当))→ 売上 162 億円・営業利益 11 億円。数量 0.92 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 6.5%
- 惣菜事業:数量 1,179(買上客数(万人・年、推定))× 価格 0.13(1 万人あたり売上(億円・名目=客単価 1 千円相当))→ 売上 153 億円・営業利益 9 億円。数量 0.92 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 6.0%
- 和菓子事業:数量 425(買上客数(万人・年、推定))× 価格 0.20(1 万人あたり売上(億円・名目=客単価 1.5 千円相当))→ 売上 83 億円・営業利益 4 億円。数量 0.93 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 5.0%
- 食品事業:数量 1.3(販売量(千トン換算・推定))× 価格 16(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 1.2 千円相当))→ 売上 20 億円・営業利益 1 億円。数量 1.00 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 5.0%
- レストラン事業:数量 21.0(来店客数(万人・年、推定))× 価格 0.65(1 万人あたり売上(億円・名目=客単価 5 千円相当))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。数量 0.80 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 -2.0%
倍率:ROE 5.8%(事業の純利益÷自己資本)が k 7.5% 以下なので、伸びても価値は増えず(ためた利益は額面未満)、正当化 PER の上限は 1÷k=12.5 倍。伸びと堀の持ちを低く見て、上限の 7.2 割の 9.0 倍に置いた。 余った現金 26 億円(帳簿の額)には戻り方 1.0 を掛けて足した。
確率:売上は4年減っており、店舗型事業の人手と家賃は上がり続ける。利益率が3%を割る筋書きの確率は高く、28%を置いた。
悲観 7% 百貨店の縮小と原価高で、営業利益がほぼ消える 利益 1 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 237 円23 億円
百貨店の売り場が縮み、牛肉の仕入れ値も高止まりする。数量は2割減り、価格転嫁も1.2倍にとどまる。精肉と惣菜は営業利益率が4%まで落ち、レストランは大半を閉じる。
全社費用の削減に踏み切るが、売上が縮むため追いつかない。営業利益は約0.3億円とほぼ消え、純利益は受取利息に支えられて1億円弱になる。
配当は半分以下に減り、自己資本は取り崩される。余った現金の一部は、店の整理費用と減損で使われ、株主に戻る額も減る。それでも借金はなく、現金が事業の下支えをする。会社は残るが、ブランドの評価は大きく落ちる。
- 精肉事業:数量 3.6(精肉の販売量(千トン換算・推定))× 価格 36(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 3 千円相当))→ 売上 130 億円・営業利益 5 億円。数量 0.80 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 4.0%
- 惣菜事業:数量 1,026(買上客数(万人・年、推定))× 価格 0.12(1 万人あたり売上(億円・名目=客単価 1 千円相当))→ 売上 123 億円・営業利益 5 億円。数量 0.80 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 4.0%
- 和菓子事業:数量 388(買上客数(万人・年、推定))× 価格 0.18(1 万人あたり売上(億円・名目=客単価 1.5 千円相当))→ 売上 70 億円・営業利益 2 億円。数量 0.85 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 3.0%
- 食品事業:数量 1.1(販売量(千トン換算・推定))× 価格 14(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 1.2 千円相当))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。数量 0.90 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 3.0%
- レストラン事業:数量 13.0(来店客数(万人・年、推定))× 価格 0.60(1 万人あたり売上(億円・名目=客単価 5 千円相当))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。数量 0.50 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 -5.0%
倍率:ROE 0.5%(事業の純利益÷自己資本)が k 7.5% 以下なので、伸びても価値は増えず(ためた利益は額面未満)、正当化 PER の上限は 1÷k=12.5 倍。稼ぐ力が細り、ブランドの評価が落ちた筋書きなので、上限の 6.4 割の 8.0 倍に置いた。 余った現金 18 億円(帳簿の額)には戻り方 1.0 を掛けて足した。
確率:百貨店の縮小と牛肉の価格高が同時に進む複合の筋書き。現金が厚いので事業が崩れても会社は残り、7%にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
精肉事業
松阪牛・三重柿安牛を核にした精肉店、通販、法人向けの卸。
| 数量精肉の販売量(千トン換算・推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 3 千円相当) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 4.5 | 30 | 136 | 10 |
| 10 年後 中立 | 4.4 | 40 | 176 | 14 |
取り方:精肉の売上136億円を、松阪牛・柿安牛・豚鶏・加工品の平均売価(1kg あたり約 3 千円と推定)で割り、約4.5千トンとした。数量は実質の販売量、物価3%と牛肉相場の上昇は価格に入れた。セグメント利益は10.2億円(2026年4月期)。
惣菜事業
百貨店の洋惣菜「柿安ダイニング」、中華惣菜「柿安上海DELI」、「柿安 牛めし」など。
| 数量買上客数(万人・年、推定) | 価格1 万人あたり売上(億円・名目=客単価 1 千円相当) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 1,282 | 0.10 | 128 | 9 |
| 10 年後 中立 | 1,244 | 0.13 | 167 | 13 |
取り方:惣菜の売上128億円を、客単価を約 1 千円と推定して割り、買上客数を年約1,280万人とした。客数は実質の数量、物価と値上げは客単価に入れた。セグメント利益は9.2億円。
和菓子事業
駅ビル・ショッピングセンターの「口福堂」。おはぎ、どら焼、わらび餅など。
| 数量買上客数(万人・年、推定) | 価格1 万人あたり売上(億円・名目=客単価 1.5 千円相当) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 457 | 0.15 | 69 | 4 |
| 10 年後 中立 | 448 | 0.20 | 90 | 6 |
取り方:和菓子の売上69億円を、客単価を約 1.5 千円と推定して割り、買上客数を年約460万人とした。客数は実質、物価は客単価に入れた。セグメント利益は3.9億円。
食品事業
外販の加工食品(しぐれ煮、レトルト、ギフトなど)。
| 数量販売量(千トン換算・推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 1.2 千円相当) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 1.3 | 12 | 15 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1.3 | 16 | 21 | 1 |
取り方:食品事業の売上15億円を、加工食品の平均売価(1kg あたり約 1.2 千円と推定)で割り、約1.3千トンとした。数量は実質、物価は価格に入れた。セグメント利益は1.0億円。
レストラン事業
「料亭 柿安」「上海柿安」「柿安 Meat Meet」など。
| 数量来店客数(万人・年、推定) | 価格1 万人あたり売上(億円・名目=客単価 5 千円相当) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 26.0 | 0.50 | 13 | 0 |
| 10 年後 中立 | 25.0 | 0.67 | 17 | 0 |
取り方:レストランの売上13億円を、客単価を約 5 千円と推定して割り、来店客数を年約26万人とした。客数は実質、物価は客単価に入れた。セグメント利益は−0.2億円。
リスクと懸念
原材料高の転嫁の遅れ
牛肉や副材料の仕入れ値が上がる局面で、値上げが遅れる。2026年4月期の上期は、原材料高が営業利益を2億円ほど押し下げた。高級品の需要は底堅いが、客単価の上げ幅には限りがある。
百貨店と駅ビルの来店減
主力の売り場である百貨店は、構造的に縮んでいる。駅ビルやショッピングセンターの人流にも左右される。退店が出店を上回る状況が続けば、売上の縮小は止まらない。
全社費用の重さ
セグメント利益の合計24億円に対し、営業利益は14億円。差の約10億円は本社の費用で、売上に対して2.7%を占める。売上が減ると利益率を押し下げ、人件費の上昇でさらに増える。
配当が純利益の全額
配当は5年据え置きで、純利益のほぼ全額に当たる。利益がさらに落ちれば、減配か現金の取り崩しになる。現金が厚いので急には問題にならないが、持続性は低い。
新業態と海外・M&Aの失敗
会社は複合型店舗、コンビニ向けおむすび、海外、M&Aを掲げる。収益体制の確立はまだで、過去に大きな買収の経験もない。現金を新規事業に使って損失を出す可能性がある。
人手と家賃の上昇
店舗型の事業は、人件費と賃料の上昇を受けやすい。家賃は売上連動の部分が大きいとみるが、固定部分は確かめられなかった。新リース会計基準で、固定の約束が貸借対照表に載ると見え方が変わる。
今後の分かれ目
- 2027年4月期の通期で営業利益が14億円を超え、出店と退店の差が縮まったら
- 底打ちの合図だ。やや楽観以上の確率を上げてよい。
- 牛肉の仕入れ値が一段と上がり、値上げが通らず精肉の利益率が6%台に落ちたら
- やや悲観の確率を上げる。ブランドの価格力が限界に達した合図になる。
- 自社株買いや大幅な増配が発表されたら
- 余った現金の戻し方が上がる。資本効率の改善として、評価を上方に直す余地が出る。
- コンビニでのおむすびや外販が、売上の5%に達したら
- 新規販路が育っている。食品事業の数量を上方修正する。
- 料亭など不採算業態の閉鎖や、大規模な減損が出たら
- 短期は特別損失で純利益が落ちる。長期はレストランの赤字が消え、利益率の底上げになる。
- 同業や商社が出資・買収を打診したら
- 現金の厚さと名前の価値が、買収の理由になる。提示価格を純現金と式の価値に照らして見る。
見ておくもの
- 四半期ごとのセグメント利益率(精肉・惣菜・和菓子)と出退店の数
- 牛肉の卸売相場と、会社の価格改定の発表
- 全社費用(セグメント利益と営業利益の差)
- 配当と自社株買いの方針、現預金の水準
- コンビニ向けおむすび、EC、外販、銀座の料亭の売上
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。資本コストは基本7.5%に品質の合計+0.5%を足した8.0%。中立のROEは10%近くでkを上回り、式の正当化PERは約13.8倍になる。そこから利益の質(店舗型で堀が広がらない)を見て約9割の12.5倍(下限の1÷k)に置いた。今のPERや同業の倍率には寄せていない。営業利益率は、2015〜2020年の5%台と2023年4月期の8%を超えない4.6%に置いた。全社費用は物価の伸びに合わせて増やした。純利益÷営業利益は過去の中央値(0.61)に近い0.67とし、金利の上昇で現金の受取利息が増える分を入れた。余った現金は、現預金81億円から運転資金(売上の1.5か月分)を引いた約35億円とし、戻り方は1.0(配当が純利益のほぼ全額で、現金は10年で積み上がった)。店舗の賃借の約束は、悲観で固定費として残る前提にした。新リース会計基準(2028年4月期以降に影響)で営業利益と純有利子負債の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置いた。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。