結論
佐藤食品工業は、茶や魚介、お酒を粉にして食品メーカーに売る素材メーカーだ。売上68億円のうち、茶エキスが半分近くを占める。主な客は伊藤園、凰商事、三菱商事ライフサイエンスだ。
筆者の結論は、今の値段はほぼ適正で、下値が堅い、である。時価総額133億円に対し、手元の純現金が約78億円、上場している保有株が約48億円ある。この二つで時価総額の大半を説明できてしまう。
事業の稼ぐ力は薄くない。営業利益率は10%を超え、ここ12年の山は17.5%だ。ただ今期は茶葉と昆布の高騰で、営業利益が半分になる計画だ。第1四半期はすでに3.6億円を稼いでおり、計画は保守的とみる。
会社は自社株買いを重ね、発行済み株式の半分を自己株式にしている。この姿勢が続くかどうかが、価値の差を左右する。
小さな会社だが、事業の質は悪くない。粉末化という地味な技術に特化し、大手の食品メーカーが必要とする仕様に合わせて作り込む。伊藤園のような飲料大手と長く付き合い、利益率も10%を超えてきた。
論点は三つある。今期の減益は一時的か、現金と保有株をどこまで株主に戻すか、大口に頼る構造は続くか、だ。筆者は、現金の戻り方が厚い点を重く見ている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は二つの顔を持つ。一つは、利益率の高い小さな素材メーカー。もう一つは、現金と保有株を大きく抱える資産の箱だ。
事業は10年後も残る。ただし堀は中くらいで、原料高と大口の意向に利益が左右される。経営は自社株買いで資本を株主に返しており、現金を貯め込まない点は評価できる。
安全域は厚い。時価総額に近い額の現金と保有株があり、事業が悪化しても床がある。悲観の筋書きでも、時価総額の7割強は資産で支えられる。
見方が割れるのは、現金の戻り方だ。自社株買いが今のペースで続けば、価値は上振れる。逆に大口を失う年が続けば、現金は事業の穴埋めに消える。
筆者は、この会社を事業と資産に分けて考える。事業だけなら、10年の中立で営業利益は10億円前後。その価値は、現金を除いても時価総額の4割ほどになる。
残りは現金と保有株で、価値の取り分は戻り方で決まる。自社株買いが厚い現状なら、満額に近く数えてよい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、素材を粉にする技術だ。茶葉から抽出した液を粉末にする茶エキスが売上の47%、粉末の天然調味料が28%、植物エキスが13%を占める。
世界で初めてお酒の粉末化に成功した会社で、国内で粉末酒を作れるのは同社だけだ。魚のアラを使った調味料「呈味力」シリーズも独自の製品として育てている。
販売先は食品・飲料メーカーが中心で、伊藤園が15%、凰商事が11%、三菱商事ライフサイエンスが10%を占める。大口に偏るが、仕様が客ごとに違うため、簡単に切り替えられない。
拠点は愛知県の小牧と春日井で、従業員は168人と少ない。年間の設備投資は3〜4億円で、直近はタンクの増設に充てた。子会社はなく、海外へは商社や代理店を通じて売る。
同社は単一セグメントで、決算短信でもセグメント情報を出していない。製品は大きく分けて三つの顔を持つ。茶エキスは売上の半分近くで、飲料大手やスイーツ向けの原料になる。調味料は、魚介や畜肉を粉にした出汁の素のような素材で、インスタント食品や菓子の味づけに使われる。植物エキスと粉末酒は、金額は小さいが他社にまねされにくい。
売上は2026年3月期に68億円で、前期から7%増えた。営業利益は7.6億円、純利益は7.4億円だった。経営計画のvision 2028は、2028年3月期に売上67億円、営業利益8億円を掲げている。
優良さと弱いところ
堀は、天然素材を風味を損なわず粉にする技術と、客ごとの細かい仕様に合わせる開発力だ。粉末酒のような唯一の製品もある。だが市場は小さく、他社が本気で参入すれば優位は崩れうる。
弱みは三つある。大口3社に売上の4割弱を頼ること。原料の茶葉と昆布の価格を自社で決められないこと。人員が168人と少なく、技能の継承に難があること。
資本効率は低い。ROEは3〜4%で、自己資本の4割が現金と保有株に眠っているからだ。事業だけを取り出せば、資本に対する利益率は1割に近い。
財務は盤石で、自己資本比率は88%にのぼる。短期借入金が少しあるだけで、利払いの心配はない。
経営は堅実で、短期の無理な拡大に走らない。計画の数字も控えめで、実績が計画を上回ることが多い。2026年3月期の営業利益は、計画の5.9億円に対し7.6億円で着地した。
気になるのは、現金と保有株を長く抱えてきたことだ。自社株買いで是正が進んでいるが、まだ自己資本の4割が事業の外にある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
素材の粉末化は、インスタント食品、飲料、菓子、調味料の幅広い用途に広がる。市場全体の数字は開示されていないが、客である食品メーカーの数量は人口減でほぼ横ばいだ。
追い風は二つある。一つは抹茶・日本茶の世界的な人気で、粉末茶の需要は海外で伸びている。もう一つは、中計「vision 2028」が掲げる新分野、つまりペットフード、農業資材、機能性素材だ。
逆風は原料の高騰だ。茶葉と昆布の仕入価格が上がり続け、燃料費も重い。大口客は仕入れ先を分散する動きを強めており、価格交渉は年々きつくなる。
競合は国内外の食品素材メーカーで、粉末茶では宇治の老舗や海外の抽出メーカーが並ぶ。同社は小粒で、価格より仕様と品質で戦う。
需要側では、飲料やスイーツで、天然素材と手軽さを両立する粉末素材の使い道が広がっている。供給側では、茶葉や昆布の産地が気候変動の影響を受け、収穫量と価格が不安定になっている。
同社は、原料の調達先を広げる、規格の許容幅を見直す、といった対策を中計に盛り込んだ。成功すれば、原料高が来ても利益率の落ち込みを浅くできる。
海外では、アジアの飲料メーカーと商談が進み、一部は継続受注になっている。ただし海外子会社はなく、売り方は商社や代理店頼みで、伸びは緩やかとみる。
資本政策と M&A
還元は厚い。配当は性向26%と控えめだが、自社株買いが主役だ。直近1年で約8億円を買い入れ、発行済み株式の半分が自己株式になった。配当と合わせた総還元は純利益を上回る。
2026年9月に1株を2株へ分割した。優待は3月末と9月末に出し、茶のギフトと自社製品を贈る。費用は年0.4億円ほどと推計した。
保有株は上場15銘柄で約48億円ある。最大の保有先は横浜冷凍で、同社も同社の筆頭株主だ。持ち合いの色が濃く、売却の方針は示されていない。配当が利益に入るため、価値には足していない。
大株主は横浜冷凍が16%、ブルドックソースが11%で、光通信も6%を持つ。親会社はなく、自社株買いを妨げる株主はいない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
素材を粉にする技術はこの会社の個性で、粉末酒は国内で唯一の製品だ。茶エキスは抹茶人気で海外の需要が伸び、国内でもスイーツと飲料の両方に広がる。2026年3月期の営業利益は7.6億円と、中計の最終年度の目標8億円にほぼ届いた。今期の営業利益半減の計画は保守的で、第1四半期だけで3.6億円を稼いだ。手元の現金は約84億円、保有株は約48億円と、時価総額に迫る。自社株買いを重ね、発行済み株式の半分を自己株式にした経営は、株主を向いている。大株主の横浜冷凍やブルドックソースとの関係も安定している。事業の価値を足せば、今の値段は妥当か、やや安い。 自己株式を発行済み株式の半分まで積み上げた経営は、資本効率を意識している。大口の飲料メーカーとの取引は長く、仕様が客ごとに違うため、切り替えには手間がかかる。海外の抹茶需要は構造的に伸びている。 一株あたりで見ると、事業の利益に現金と保有株の価値が上乗せされる珍しい構図だ。配当は毎年上がり、純資産配当率は0.9%だが、自社株買いを入れた総還元は純利益を超える。経営計画の売上目標は67億円と控えめで、達成のハードルは低い。小さな会社ゆえ、新製品が一つ当たれば利益が大きく動く。
慎重な見方
売上の4割弱を3社に頼り、仕入れ先を分散されれば数量は簡単に落ちる。茶葉と昆布の価格は上がり続け、値上げは追いかけるだけだ。会社自身が今期の営業利益を半分と見込んでいる。従業員は168人と少なく、技能継承が滞れば品質が揺らぐ。現金と保有株は魅力に見えるが、保有株は持ち合いで、売る意思は示されていない。現金も新規事業や買収に使われれば目減りする。ROEは3〜4%と低く、資本効率の低さは長年変わっていない。自社株買いは割高な株価で続ければ、価値を壊す。小さな会社の高い株価を、事業だけで支えるのは難しい。 仮に今の利益水準を保っても、10年後に物価で膨らむ設備更新の負担は重い。大株主の横浜冷凍やブルドックソースは事業上の取引先で、株主還元より取引関係を優先する可能性がある。株価は現金と保有株のおかげで下値は堅いが、上を目指す材料に乏しい。 保有株は、横浜冷凍やブルドックソースなど取引先との持ち合いが中心だ。簡単には売れず、売る方針も示されていない。現金も、小さな会社が使い切れずに積み上げてきた性格が強い。今期の営業利益を半分とした計画を、会社は第1四半期の好調でも据え置いている。それだけ原料と燃料の先行きに不安を感じている証拠だ。
どちらに重みを置いたか
勝つのは拮抗した見方で、わずかに楽観が上回る。現金と保有株が値段の下を支え、悲観でも時価総額の7割強が資産に残る点が効いた。一方で、大口依存と原料高は構造的で、楽観の確率は1割に届かせなかった。確率は中立からやや悲観の側に厚く置き、やや悲観と悲観で3割半とした。現金の戻り方は、自社株買いの実績が厚いので1.0とした。 事業の評価と資産の評価を分けて積み上げた結果、中立でも今の時価総額を上回った。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,559 円184 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,138 円82 億円)。 今の値に割り戻すと 2,112 円152 億円、今との差 +16.6%、 期待の年率 +7.4%(資本コスト 7.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 4,649 円334 億円 | 1,693 円122 億円 | +250.0% | +13.3% | 444 円32 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,614 円259 億円 | 1,475 円106 億円 | +180.8% | +10.9% | 1,018 円73 億円 |
| 中立 | 37% | 2,768 円199 億円 | 1,280 円92 億円 | +123.4% | +8.4% | 1,498 円108 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,484 円107 億円 | 830 円60 億円 | +27.7% | +2.5% | 602 円43 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,013 円73 億円 | 348 円25 億円 | −24.9% | −2.8% | 136 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,559 円184 億円 | 1,138 円82 億円 | +104.0% | +7.4% | 3,697 円265 億円 |
今の株価時価総額 1,812 円130 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 抹茶ブームと新分野で、稼ぐ力が一段上がる10年 利益 16 億円 · PER 17.6 倍 · 株価時価総額 4,649 円334 億円
抹茶と粉末茶の需要が世界で伸び、茶エキスの数量は今の1.5倍になる。国内の飲料大手に頼らず、アジアと欧米の食品メーカーに直接売る道が開く。粉末酒と魚介の調味料も、新しい用途で数量を増やす。
価格は物価を超えて上がる。粉末化の技術に代わりがなく、原料高を製品価格に転嫁できるからだ。営業利益率は14%台に乗り、過去の山に近づく。
手元の現金は引き続き自社株買いと配当で株主に返る。それでも利益が現金の利息を大きく上回り、事業そのものが主役になる。
配当は性向30%台に上げ、自社株買いを加えた総還元は純利益の1倍を保つ。株主優待も維持される。
- 茶エキス:数量 1,212(年間の出荷量(トン、推定))× 価格 560(1トンあたりの価格(万円))→ 売上 68 億円・営業利益 10 億円。抹茶・粉末茶の海外需要で数量1.5倍
- 調味料・植物エキス・その他:数量 830(年間の出荷量(トン、推定))× 価格 700(1トンあたりの価格(万円))→ 売上 58 億円・営業利益 8 億円。調味料・粉末酒が新分野で伸びる
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.2% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)66 億円。全体の PER 17.58 倍、時価総額 334 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2018年3月期に営業利益率17.5%を付けた実績があり、海外の粉末茶需要と新製法が重なれば再現しうる。ただし大口3社への依存と原料高があり、確率は1割に届かせない。
やや楽観 20% 茶エキスが伸び、中計の利益水準を上回って続く10年 利益 13 億円 · PER 16.0 倍 · 株価時価総額 3,614 円259 億円
茶エキスは海外の抹茶需要と国内のスイーツ向けで数量を伸ばし、今の1.3倍になる。調味料は人口減を新分野で埋めて小幅に増える。
値上げは物価並みに通る。ただし茶葉と昆布の仕入価格は上がり続けるため、営業利益率は12〜13%にとどまる。
配当に加えて自社株買いも続き、手元の現金は戻される。株主優待も続く。
新分野のペットフードや機能性素材は、売上の数%に育つ。大口依存は3割台まで下がる。
粉末酒や魚介の調味料は、原料高を転嫁しながら少しずつ数量を増やす。海外の売上比率は1割を超え、為替の影響も小さくならない。
- 茶エキス:数量 1,050(年間の出荷量(トン、推定))× 価格 548(1トンあたりの価格(万円))→ 売上 58 億円・営業利益 7 億円。抹茶需要の取り込みで数量1.3倍
- 調味料・植物エキス・その他:数量 773(年間の出荷量(トン、推定))× 価格 685(1トンあたりの価格(万円))→ 売上 53 億円・営業利益 6 億円。調味料は横ばいからわずかに増加
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)66 億円。全体の PER 15.99 倍、時価総額 259 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計は2028年3月期に営業利益8億円を掲げるが、2026年3月期にすでに7.6億円まで来た。茶エキスの伸びが続けば、その上で定着する可能性は十分ある。
中立 37% 原料高に押されつつ、利益を保つ堅実な10年 利益 10 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 2,768 円199 億円
茶エキスは国内の飲料向けが横ばいで、海外と菓子向けが伸びる。数量は今の1.15倍にとどまる。調味料と植物エキスは人口減を新規客で埋め、数量は横ばいを保つ。
価格は物価並みに上がるが、茶葉と昆布の仕入価格も同じ速さで上がる。営業利益率は10%前後で、過去の12〜13%を下回る。
現金は配当と自社株買いで利益と同じ額が戻り、積み上がらない。償却は取得時の値段のまま増えないが、設備の更新は建築費の上昇で膨らむ。株主優待は続く。
年間の設備投資は物価に合わせて3〜4億円から5億円ほどに増える。大口の取引は続くが、条件は少しずつ厳しくなる。
- 茶エキス:数量 929(年間の出荷量(トン、推定))× 価格 536(1トンあたりの価格(万円))→ 売上 50 億円・営業利益 6 億円。茶エキスは数量1.15倍・価格は物価並み
- 調味料・植物エキス・その他:数量 722(年間の出荷量(トン、推定))× 価格 670(1トンあたりの価格(万円))→ 売上 48 億円・営業利益 5 億円。調味料・植物エキスは数量横ばい・価格は物価並み
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 7.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)66 億円。全体の PER 14.29 倍、時価総額 199 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の営業利益は7.6億円だが、今期は原料高と燃料高で3.7億円に半減する計画だ。第1四半期はすでに3.6億円を稼いでおり、計画は保守的とみる。10年の中立はその中間の水準に置く。
やや悲観 26% 原料高が続き、大口の値下げ要求で利益が細る10年 利益 6 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 1,484 円107 億円
茶葉と昆布の仕入価格が高止まりし、値上げが追いつかない。大口の飲料メーカーは仕入れ先を分散し、数量は5〜10%減る。営業利益率は6%前後まで下がる。
現金は失敗した新規投資や自社株買いの割高な購入で目減りする。配当性向も下がる。それでも事業は黒字を保ち、粉末酒など代わりのない製品が下支えする。
年間の設備投資は更新が中心になり、償却は取得時の値段のまま残る。新しい設備の償却だけが足される。
国内の飲料や菓子メーカーの値下げ要求が強まる。海外への展開は代理店頼みで、売上に結びつくのが遅い。
配当性向は2割台に下がるが、無配にはしない。保有株の配当が利益の下支えになる。
- 茶エキス:数量 768(年間の出荷量(トン、推定))× 価格 512(1トンあたりの価格(万円))→ 売上 39 億円・営業利益 3 億円。国内飲料向けの縮小で数量5%減
- 調味料・植物エキス・その他:数量 650(年間の出荷量(トン、推定))× 価格 640(1トンあたりの価格(万円))→ 売上 42 億円・営業利益 2 億円。調味料の取引先離れで数量1割減
倍率:事業のROEは6%台でk7%を下回り、PERの上限は1÷k=13.3倍。利益が薄く不安定なため、その約75%の10.82倍に置いた。
確率:今期の営業利益半減の計画は、原料高が長引く場合の姿そのものだ。伊藤園などの大口が仕入れ先を分散する流れも現実にある。
悲観 10% 大口を失い、原料高も重なる構造的な負け 利益 2 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,013 円73 億円
大口の飲料メーカーが茶エキスを内製し、残る客も値下げを迫る。茶葉の仕入価格は下がらず、数量は2割減る。調味料も取引先が分散して3割減る。営業利益はほぼゼロになる。
現金は事業の穴埋めと割高な買収に使われ、半分が失われる。株主優待も縮小する。
救いは手元の現金と保有株が事業の外にあることだ。清算されなくても、資産が株主の取り分を支える。
配当は性向を大きく落とし、自社株買いは止まる。人員を絞り、新分野の投資はほとんど取りやめる。
粉末酒など代わりのない製品は残るが、売上全体を支えるには小さい。工場の一部は稼働を止め、人員の削減も避けられない。
- 茶エキス:数量 646(年間の出荷量(トン、推定))× 価格 480(1トンあたりの価格(万円))→ 売上 31 億円・営業利益 1 億円。大口が内製化・分散し数量2割減
- 調味料・植物エキス・その他:数量 542(年間の出荷量(トン、推定))× 価格 600(1トンあたりの価格(万円))→ 売上 33 億円・営業利益 0 億円。調味料・粉末酒の取引が3割減
倍率:稼ぐ力にほとんど値が付かない。床は手元の現金と保有株の税後に、戻り方0.5を掛けた額で見て、今の自己資本の約0.36倍。
確率:主力3社で売上の4割弱を占める。うち1社が内製に動けば、固定費の重い工場が稼働率を保てなくなる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
茶エキス
茶葉から抽出した液を粉末にした素材。飲料、菓子、インスタント食品の原料になる。
| 数量年間の出荷量(トン、推定) | 価格1トンあたりの価格(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 808 | 400 | 32 | 4 |
| 10 年後 中立 | 929 | 536 | 50 | 6 |
取り方:決算短信の茶エキス売上32.3億円を、1キログラムあたり4千円ほど(推定)で割って出荷量を推定した(量は開示なし)。営業利益は全社の営業利益率約11%より少し高いと見て4.0億円に配分した。償却は取得時の値段のまま。 茶エキスは前年比9.3%増。
調味料・植物エキス・その他
粉末の天然調味料、植物エキス、粉末酒など。
| 数量年間の出荷量(トン、推定) | 価格1トンあたりの価格(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 722 | 500 | 36 | 4 |
| 10 年後 中立 | 722 | 670 | 48 | 5 |
取り方:粉末調味料18.9億円、植物エキス8.7億円、その他約8.5億円の計36.1億円を、1キログラムあたり5千円ほど(推定)で割って出荷量を推定した。営業利益は全社の7.58億円から茶エキス分を引いた残り。
リスクと懸念
大口3社への依存
伊藤園が15%、凰商事が11%、三菱商事ライフサイエンスが10%を占める。内製化や仕入れ先の分散が起きれば、固定費の重い工場の稼働率が落ち、利益が急に細る。
茶葉と昆布の価格
主原料の仕入価格が上がり続けている。今期の営業利益半減の計画も、原料と燃料の高騰が主因だ。価格転嫁が遅れると利益率は6%前後まで落ちうる。
現金の使い方
約84億円の現金と約48億円の保有株は大きな資産だが、使い道は経営に委ねられている。割高な自社株買いや失敗した新規事業に使われれば、価値が目減りする。
技能継承と人員の少なさ
従業員は168人と少なく、粉末化の熟練の技は人に宿る。離職や高齢化で品質が揺らぐと、仕様に厳しい大口客を失いかねない。
新分野の不確実性
ペットフードや農業資材、機能性素材は、中計が掲げる新分野だが、売上への貢献はまだ小さい。競合の参入も予想され、投資が回収できない恐れがある。
今後の分かれ目
- 第2四半期以降も営業利益が計画を大きく上回り、通期で8億円を超える
- 原料高の転嫁が進んだ証拠で、中立から楽観の筋書きに寄る。
- 大口3社のうち1社が取引を大きく減らす、または内製化を表明する
- 数量が落ちて稼働率が崩れ、やや悲観から悲観の筋書きに寄る。
- 自社株買いを大きく止め、現金が積み上がる、または大型の買収を発表する
- 現金の戻り方が下がり、価値の取り分が小さくなる。
- 横浜冷凍やブルドックソースが株を買い増し、公開買付けに動く
- 少数株主は事業価値と資産価値の両方を評価される可能性があり、確率は楽観側に動く。
- 保有株の売却方針が数字つきで開示される
- 持ち合いの解消で現金が増え、価値の取り分に足す余地が出る。
見ておくもの
- 営業利益(今期計画の3.7億円に対する着地)
- 茶葉・昆布の仕入価格と値上げの実績
- 自社株買いと自己株式の消却の動き
- 大口3社の売上構成比と大株主の動向
倍率と資本コストの決め方
倍率は正当化PERの式(事業のROE・g・資本コスト)と残る割合1/2から置き、今の株価や同業の倍率は使っていない。現金は営業に要る分を引いた額に戻り方1.0を掛けて足した。保有株は配当が利益に入るので価値に足さず、悲観の床にだけ入れた。リースの約束は小さく、家賃の形は変わらない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16.5→17.58 倍・やや楽観 PER 15→15.99 倍・中立 PER 12→14.29 倍・やや悲観 PER 10→10.82 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityの0.0%を足して7.5%。事業は傾いておらず上乗せはない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 7.00%。