結論
はごろもフーズは、ツナ缶「シーチキン」で知られる静岡の食品会社だ。缶詰・パウチ・デザート・ふりかけを家庭と業務用に売る。売上は 750 億円ほどで、営業利益は 30 億円台、利益率は 4% にとどまる。薄利が、この会社の最大の特徴である。
筆者の結論は、事業の質は悪くないが、値段に見合う稼ぐ力ではない、というものだ。ブランドは強い。ただ、売る先の 6 割を三つの商社が占め、原料のまぐろは国際相場と円安に振られる。利益率は 10 年かけても 4% を大きく超えない。
もう一つの特徴は、持ち合い株の厚さだ。投資有価証券は 150 億円ほどあり、この含み益のおかげで自己資本は 1 年で 80 億円増えた。時価総額 343 億円は自己資本 497 億円を下回るが、ROE は 5% 台で、資本コストに届かない。自己資本の中身は、稼ぐ力ではなく株の値上がりだ。
10 年の中立では、国内の数量は 5% ほど減り、売上は物価で 27% 増える。営業利益は 36 億円前後で、今の利益を少し上回るだけだ。創業家系の安定株主が過半に近く、買収の圧力も弱い。
確率の加重で出した本質価値は、今の時価総額を 3 割ほど下回る。値段が事業の薄さに対して高い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、安く買える優良会社と、薄利の定番ブランドは別物だ。はごろもは後者に近い。
事業の質を測る目は、株主に残る利益の厚さだ。営業利益率が 4% 前後で、ブランドの強さは棚の位置を守るためにほとんど使われる。値上げで得た利益は、原料高と人件費で消える。10 年の中立でも、利益は物価の伸びとほぼ同じペースで増えるだけだ。
自己資本の中身にも注意がいる。時価総額 343 億円に対して自己資本が 497 億円あり、PBR は 0.7 倍。割安に見えるが、増えた分の大半は持ち合い株の含み益だ。ROE は 5% 台で、資本コストの 7.5% に届かない。ためた利益は、額面より小さい価値しか生まない。
持ち合い株は、配当が利益に入っているので、さらに価値を足すことはしない。売る方針が開示されていないからだ。売れば現金になるが、売らない限り、評価は配当の分で足りる。
安全域は、悲観でも持ち合い株が残るので損は深くない。ただし、今の値段は中立の稼ぐ力に比べて高く、安全域が見えない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、スーパーやコンビニの棚に並ぶ常温食品だ。主力はツナ缶の「シーチキン」で、パウチのおかず「Home Cooking」、フルーツ缶の「朝からフルーツ」、ふりかけ、包装米飯の「パパッとライス」が続く。ペットフードやパスタも作る。
開示は食品事業の単一セグメントで、品群別の売上は金額で出ない。直近の増減だけを見ると、ぜんざいなどのデザートは伸び、主力のフルーツ缶は弱い。水産系の調理品やソース缶は小さく伸び、業務用はコンビニと給食向けが 6% 以上減った。
売り方に特徴がある。2025 年 3 月期の売上のうち、伊藤忠商事が 3 割強、三菱商事が 16%、三井物産が 15% を占める。商社経由で全国の問屋と小売りへ流れる。大手の商社に支えられる反面、価格交渉では商社と小売りの両方に押される。
原料はまぐろ・かつおなどの水産物と、小麦・果実・米だ。どれも国際相場と為替で動き、不漁や円安が来ると原価が上がる。会社は値上げで吸収してきたが、棚の値段を上げすぎれば量が逃げる。
会社は 2024 年から 3 年の中期経営計画「Challenge & Change for 100th!」を進めている。設備と人への投資で安定して作り続けること、既存事業の強化、新しい柱の育成が柱だ。数値目標は確かめられなかった。
優良さと弱いところ
堀はブランドだが、利益に出てこない。シーチキンはツナ缶の最大手の1つで、店頭の知名度は高い。それでも営業利益率は、この 10 年で 2% から 4% の間をさまよった。2023 年 3 月期は原料高で赤字に落ちている。強いブランドが利益率に変わりにくい。
理由は売り先にある。売上の 6 割台が三つの商社で、その先に大手スーパーとコンビニがある。値上げを通す力はあるが、毎回の交渉で粘られる。プライベートブランドの缶詰も棚を狙う。
資本の使い方は保守的だ。借金は少なく、自己資本比率は 62%。配当性向は 25% ほどで、利益の 4 分の 3 は社内にたまる。たまった利益は、持ち合い株と工場に回っている。株の値上がりで自己資本は膨らんだが、株は事業の稼ぐ力ではない。
弱い点は二つある。国内の人口減で缶詰の数量が頭打ちなこと、水産の原料を海外に頼ることだ。強い点は、定番ブランドの需要が景気で崩れにくく、10 年でも棚が残ることである。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の缶詰・加工食品は、人口が減る中の成熟市場だ。数量は年 0〜1% の減少が普通で、伸びるのは単身世帯と簡便化の追い風を受けた中食・パウチ・レンジ食品に偏る。ツナ缶そのものは、保存性と価格の安さで底堅い。ただし 1 人あたりの量が増える材料は乏しい。
物価の面では追い風と逆風が混じる。2026 年は加工食品の値上げが相次ぎ、店頭価格は前年より 4〜5% 上がっている。缶詰業界では、円安と不漁・不作による原料高、人件費と物流費の上昇で、コストが重くなっている。8 月から 10 月にかけて、再び値上げが相次ぐ見通しだ。
競合は、同じツナ缶のいなば食品、マルハニチロや、スーパーのプライベートブランドだ。シェアの公表数字は確かめられなかった。サバ缶やパウチ惣菜では、水産大手や総合食品会社が競う。
業務用は、外食とコンビニの動向に左右される。直近は売上が減ったが、人手不足で調理を省く需要が長く続くため、中期では底を打つとみる。
海外展開は、はごろもの強みではない。海外の売上は小さい。このため、味の素やキッコーマンのような海外での成長は、この会社には当てはまらない。同業の物差しは、国内の成熟需要の範囲で使うのが適切である。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、薄い。2026 年 3 月期の年間配当は前期並みで、配当性向は 25%。2027 年 3 月期も据え置きの予想で、利益が増える年でも性向は 3 割に届かない。自社株買いの方針は確かめられなかった。
自己資本比率は 62% と厚いが、現金は少ない。たまった利益は、投資有価証券(2025 年 3 月期で 148 億円)と生産設備に回る。持ち合い株の配当は営業外収益に入り、経常利益を営業利益より 5〜6 億円押し上げている。
株主は、財団と創業家系の安定株主が過半に近い。2006 年は財団が 42.5% の筆頭で、2020 年以降も筆頭株主が 4 割台後半を保つ。はごろも高翔会も 1 割近い。市場で株が動きにくく、買収の圧力は弱い。
株主優待は年 2 回の自社製品で、2026 年 3 月から 100 株以上の区分が加わった。費用の額が確かめられず、小さいとみて還元には足していない。
M&A は目立たない。小さな新規事業を育てる方針だが、大型の買収に動く気配はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
シーチキンは、ツナ缶のトップブランドだ。缶詰は保存がきき、価格も安い。物価が年 3% 上がる世界では、必需品の値上げが通りやすい。2026 年に入っても、加工食品の値上げは店頭で受け入れられ、はごろもの売上は 4〜6% ずつ増えている。
利益率の下がる心配は薄い。第 1 四半期の営業利益は前年を上回り、通期予想も据え置いた。設備投資で工場の稼働が安定すれば、原価の波は小さくなる。パウチの調理品や包装米飯は伸び、デザートも、ぜんざいなど新しい品が育つ。
財務は強い。自己資本比率は 6 割を超え、借金は小さい。持ち合い株の含み益があり、配当も増やせる。創業家系の安定株主がいるので、短期の利益を追わず、じっくり設備に投資できる。
PBR が 1 倍を割っており、東証の資本効率改善の要請を受けて、持ち合い株の売却や自社株買いに動く可能性がある。売却が進めば、現金が株主に戻り、評価の見直しが起きる。
慎重な見方
利益の薄さが、すべてを物語る。営業利益率は 10 年で 2〜4% を行き来しており、最高の 4.2% を超えたことがない。売上の 6 割が三つの商社に集まり、価格交渉の力は商社と小売りに握られている。
原料は海外頼みだ。まぐろとかつおの相場、円安、不漁が来るたびに、原価は動く。2023 年 3 月期は赤字に落ちた。値上げは続いているが、頻度が上がれば量が逃げ、プライベートブランドへ流れる。2027 年 3 月期の営業利益は 28 億円と、前期より 11% 減る予想だ。
数量は減る。国内の人口が減り、缶詰の消費は緩やかに細る。業務用はコンビニと給食向けが 6% 以上減っている。フルーツ缶の主力商品も弱い。新しい柱は、まだ見えない。
自己資本の厚さは幻だ。増えた分は持ち合い株の評価益で、ROE は 5% 台と資本コストに届かない。配当性向は 25% で、株主に戻る額は小さく、創業家系の安定株主が過半に近いので、株主の声も届きにくい。
どちらに重みを置いたか
事業の足腰の強さでは強気の見方に分がある。だが値段の議論では、慎重な見方が強い。利益率が薄く、ROE が資本コストを下回り、10 年を通しても利益は物価と同じ速さでしか伸びない。確率は中立をやや厚く置き、楽観は 1 割以下とした。持ち合い株が下を支えるため、悲観の深さは抑えた。今の値段は、中立の稼ぐ力に持ち合い株の価値を足しても届かない水準にあり、割高という結論は動かない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,372 円317 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 839 円79 億円)。 今の値に割り戻すと 2,091 円197 億円、今との差 −43.2%、 期待の年率 +1.4%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,615 円528 億円 | 1,381 円130 億円 | +90.1% | +6.6% | 560 円53 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,559 円429 億円 | 1,063 円100 億円 | +52.8% | +4.3% | 1,124 円106 億円 |
| 中立 | 37% | 3,929 円370 億円 | 850 円80 億円 | +29.9% | +2.6% | 1,768 円166 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,636 円154 億円 | 638 円60 億円 | −38.2% | −4.7% | 568 円53 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,488 円140 億円 | 425 円40 億円 | −48.0% | −6.3% | 191 円18 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,372 円317 億円 | 839 円79 億円 | +14.4% | +1.4% | 4,212 円396 億円 |
今の株価時価総額 3,680 円346 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 定番ブランドの値上げが通り、調理品と業務用も戻る10年 利益 44 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 5,615 円528 億円
国内の数量は横ばいで、シーチキンとパウチ調理品の値上げが物価を上回って通る。業務用はコンビニと給食の需要が戻り、数量が増える。
平均価格は物価の 1.34 倍に 8% の上乗せが加わる。水産原料の高騰は、値上げと工場の効率化で吸収する。
営業利益率は過去の山を少し超え、4.8% 前後に達する。会社が設備投資で安定生産を築き、原価の波を減らした姿だ。
持ち合い株の売却や自社株買いが進み、還元は厚くなる。ROE は 6% 近くまで上がるが、資本コストには届かない。強気の条件がそろっても、薄利の食品会社であることは変わらない。
- 家庭用食品:数量 100(出荷量(千トン、実質))× 価格 87(平均販売価格(万円/トン、名目))→ 売上 868 億円・営業利益 57 億円。出荷量 10 万トン・86.8 万円/トン(物価 1.34 倍に 8% 上乗せ)、営業利益率 6.6%
- 業務用食品:数量 26.0(出荷量(千トン、実質))× 価格 85(平均販売価格(万円/トン、名目))→ 売上 221 億円・営業利益 8 億円。出荷量 2.6 万トン・85.0 万円/トン、営業利益率 3.6%
倍率:事業の純利益 44 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.9% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 528 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ブランドの値上げが通り続け、原料高も吸収できる条件がそろった上振れ。薄利の会社で利益率が 5% 近くまで上がる形なので、1 割以下に置いた。
やや楽観 20% 値上げは通り、利益率が過去の山の近くで保たれる10年 利益 35 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 4,559 円429 億円
国内の数量は 3% ほど減るが、値上げは物価をやや上回って通る。パウチの調理品とデザートが育ち、フルーツ缶の弱さを補う。
業務用は底を打ち、数量は 2% の減少にとどまる。
営業利益率は 4.0% 前後と、過去の最高に並ぶ。会社が進める設備投資が稼働率を安定させ、原価のぶれが小さくなる。
配当は増えるが、性向は 3 割前後にとどまる。創業家系の安定株主が過半に近いまま、経営は堅実に進む。設備投資と人への投資を続け、中期経営計画の方針どおり安定生産を保つ。そのうえで、大きな買収や株の売却も起きない大きな買収や株の売却も起きない穏やかな10年になる。
- 家庭用食品:数量 97.0(出荷量(千トン、実質))× 価格 84(平均販売価格(万円/トン、名目))→ 売上 811 億円・営業利益 50 億円。出荷量 9.7 万トン・83.6 万円/トン、営業利益率 6.1%
- 業務用食品:数量 24.5(出荷量(千トン、実質))× 価格 83(平均販売価格(万円/トン、名目))→ 売上 202 億円・営業利益 6 億円。出荷量 2.45 万トン・82.5 万円/トン、営業利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 35 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.9% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 429 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:加工食品の値上げが受け入れられる状況が続き、原料高も概ね転嫁できる。ただ、国内数量の減少は避けられない。
中立 37% 数量は緩やかに減り、値段は物価並みで、利益率は今の山を保つ10年 利益 31 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 3,929 円370 億円
国内の出荷量は 5% ほど減る。人口の減少と業務用の弱さが効くが、単身世帯向けのパウチやレンジ食品が穴を埋める。
平均価格は物価の 1.34 倍。原料高は値上げで転嫁するが、小売りとの交渉で利益率は上がらない。
営業利益率は 3.8% と、過去の最高 4.2% を下回る。本社費や人件費も物価で増えるため、売上が増えても利益はそれほど伸びない。
持ち合い株の配当が利益の一部を支える。配当は今の水準を保ち、性向は 3 割に届かない。大きな買収はなく、新しい柱の育成は小さな商品の積み重ねにとどまる。単身世帯向けのパウチ調理品が数量の減少を一部支えるが、ブランドの力が利益率の上昇につながる局面は来ない。
- 家庭用食品:数量 95.0(出荷量(千トン、実質))× 価格 80(平均販売価格(万円/トン、名目))→ 売上 764 億円・営業利益 44 億円。出荷量 9.5 万トン・80.4 万円/トン(物価 1.34 倍)、営業利益率 5.8%
- 業務用食品:数量 24.0(出荷量(千トン、実質))× 価格 81(平均販売価格(万円/トン、名目))→ 売上 194 億円・営業利益 5 億円。出荷量 2.4 万トン・81.0 万円/トン、営業利益率 2.8%
倍率:事業の純利益 30 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.2% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 370 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業種ノートの国内の成熟需要(数量ほぼゼロ成長〜微減、価格は物価並み)に、会社の 2027 年 3 月期予想(営業利益 28 億円)の延長を重ねた中心の筋書き。
やや悲観 25% 原料高を転嫁しきれず、利益率が 2% 台に戻る10年 利益 16 億円 · PER 9.8 倍 · 株価時価総額 1,636 円154 億円
国内の出荷量は 9% 減る。業務用はコンビニの内製化と外食の縮小で弱く、デザート缶も不振が続く。
平均価格は物価の伸びに届かず、1.28 倍にとどまる。大手小売りと商社の交渉が強まり、値上げの一部が通らない。
営業利益率は 2.1% まで下がり、2023 年 3 月期の赤字に近い年が混じる。
配当は維持するが、性向は上がる。主力のフルーツ缶やデザートは回復せず、新しい柱の育成も遅れる。大手小売りは仕入れ先の絞り込みを進め、はごろもの棚の面積は少しずつ狭まる。持ち合い株の配当が、利益の下支えになる。ブランドは残るが、利益を生む力は弱まり、安定株主の構造も変わらない。コスト増を価格に載せきれない年が続き、薄利が一段と薄くなる。
- 家庭用食品:数量 90.0(出荷量(千トン、実質))× 価格 77(平均販売価格(万円/トン、名目))→ 売上 693 億円・営業利益 29 億円。出荷量 9 万トン・77.0 万円/トン(物価 1.28 倍)、営業利益率 4.2%
- 業務用食品:数量 22.0(出荷量(千トン、実質))× 価格 76(平均販売価格(万円/トン、名目))→ 売上 167 億円・営業利益 3 億円。出荷量 2.2 万トン・76.0 万円/トン、営業利益率 1.8%
倍率:ROE 2.6% が k 8.25% 以下なので、稼ぐ力(純利益÷k)を上限に、上限の約 7.4 割の 9.8 倍に置いた。
確率:まぐろ・かつおの相場と円安で原価が膨らみ、値上げが通りにくい。プライベートブランドに棚を奪われる。
悲観 10% 原料と売り先に挟まれ、薄利が赤字に沈む10年 利益 −2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,488 円140 億円
出荷量は 2 割近く減る。プライベートブランドと安い輸入品が棚を奪い、業務用も縮む。
平均価格は物価に届かず、1.17 倍にとどまる。原料が上がっても値上げができず、営業利益は赤字に落ちる。人件費と物流費は物価で増え続け、固定費を吸収できなくなる。
本社費を削って赤字を 5 億円に抑えるが、配当は減額する。商社との取引条件も厳しくなり、残るのは定番の缶詰だけという姿に近づく。設備投資を絞り、非中核の事業を整理する。主力ブランドの看板は残るが、商社や小売りへの交渉力は弱まる。
株主の価値は、持ち合い株と土地の売却で得る現金に支えられる。ブランドの名前は棚に残るが、利益を生む会社としての評価は外れる。
- 家庭用食品:数量 82.0(出荷量(千トン、実質))× 価格 70(平均販売価格(万円/トン、名目))→ 売上 574 億円・営業利益 9 億円。出荷量 8.2 万トン・70.0 万円/トン、営業利益率 1.5%
- 業務用食品:数量 18.0(出荷量(千トン、実質))× 価格 69(平均販売価格(万円/トン、名目))→ 売上 124 億円・営業利益 −3 億円。出荷量 1.8 万トン・69.0 万円/トン、営業利益率 -2%
倍率:稼ぐ力はほぼ無いので、持ち合い株と売れる資産の税後を床に置いた。
確率:原料の高騰と大手小売りのプライベートブランドで、ブランドの値決め力が崩れる構造的な負け筋。持ち合い株が下を支えるので深くは置かなかった。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
家庭用食品
シーチキン・パウチ・デザート缶・ふりかけ・包装米飯・ペットフードなど、店頭で売る常温食品。
| 数量出荷量(千トン、実質) | 価格平均販売価格(万円/トン、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 60 | 600 | 37 |
| 10 年後 中立 | 95.0 | 80 | 764 | 44 |
取り方:開示は食品事業の単一セグメントで、家庭用の売上は金額で出ない。業務用が前年比で減った記述と、ギフト・調理品の動きから、売上 600 億円(全体の約 8 割)と推定した。出荷量は平均 60 万円/トン で割り戻した 10 万トン。営業利益は全社 31.5 億円から、業務用と本社費を引いた残りで推定した。
業務用食品
コンビニ・給食・外食向けの缶詰・パウチ・調理材料。
| 数量出荷量(千トン、実質) | 価格平均販売価格(万円/トン、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 25.0 | 60 | 151 | 5 |
| 10 年後 中立 | 24.0 | 81 | 194 | 5 |
取り方:業務用食品は前年比 6.5% 減と書かれるが金額は確かめられず、全社 750.8 億円から家庭用を引いた約 150 億円と推定した。出荷量は 60 万円/トン台で割った 2.5 万トン。営業利益は家庭用より低いとみて 3% の 4.5 億円。本社費ほかは調整で -10 億円。
リスクと懸念
利益率の薄さと原料相場
営業利益率は 10 年で 2〜4% を行き来し、2023 年 3 月期は赤字だった。まぐろ・かつおの相場と円安で原価が動くたびに、利益が大きく振れる。値上げで転嫁しても、遅れる期は赤字に近づく。
売り先の集中
売上の約 6 割を伊藤忠商事・三菱商事・三井物産の 3 社が占める(2025 年 3 月期)。その先の大手小売りの交渉力も強い。取引条件が変われば、利益率が直接削られる。
国内数量の縮小
人口の減少で缶詰・加工食品の数量は緩やかに減る。業務用はコンビニと給食向けが 6% 以上減っている。値上げが数量減を上回り続けるとは限らない。
持ち合い株の評価と使い道
投資有価証券は 148 億円(2025 年 3 月期)で、自己資本の増加の多くはその評価益だ。株価が下がれば自己資本も縮む。売却の方針は開示されておらず、現金が事業や株主に回る道筋が見えない。
創業家系の安定株主
財団と創業家系の安定株主が 4 割台後半を持つ。経営が安定する反面、資本効率を高める圧力は外から届きにくい。配当性向 25% の低い還元が続きやすい。
主力商品の弱さと新しい柱
デザートでは主力の「朝からフルーツ」が低調で、ぜんざいなどが穴を埋めている。パウチ調理品や包装米飯は伸びるが、規模はまだ小さく、新しい柱が育つかは確かめられていない。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 4% を超えて 2 年続いたら
- 値上げと原価管理が構造的に効いている。中立の営業利益率を引き上げ、楽観側の確率を上げる。
- 持ち合い株の売却と自社株買いの方針が数字で開示されたら
- 余った資産の戻り方を評価に足してよい。PBR 0.7 倍の見直しが起きる可能性がある。
- まぐろ・かつおの原料相場が急騰し、値上げが遅れたら
- その期の営業利益は予想を下回る。やや悲観側に確率を寄せる。
- 業務用食品の売上が 2 年続けて回復したら
- 業務用の数量の減少を過大に見ていたことになる。中立の出荷量を上方に直す。
- 主要商社 3 社のいずれかが取引条件を変える、または別の食品会社に乗り換えたら
- 売り先の集中リスクが現実になる。悲観側の確率を上げる。
- 創業家系の安定株主の持ち株が市場に出る、または TOB が発表されたら
- 買収価格は本質価値を基準に見る。安定株主の構造が変わるので、現金の戻り方の前提も見直す。
見ておくもの
- 四半期ごとの営業利益率と原料(まぐろ・かつお)相場
- 業務用食品とデザート缶の売上の増減
- 投資有価証券の残高と売却の開示
- 配当・自社株買いの方針の変更
- 主要商社の取引条件と大手小売りのプライベートブランドの動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は利益ベースの正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)(k 8.25%=基本 7.5% に quality 0%、g 4%、残る割合は弱い堀の 1/3)の上限、ROE が k に届かない全筋書きは 1÷k の 13.3 倍を上限に、稼ぐ力の 7〜9 割で置いた。今の株価や過去・同業の PER・PBR には寄せていない。PBR 0.7 倍は割安の根拠にしていない。数量は実質の出荷量、価格は平均販売価格の名目で、物価 1.34 倍を基本にした。単一セグメントのため家庭用 600 億円・業務用 151 億円の分け方は推定。持ち合い株は配当が経常利益に入っているため、価値を余り資産として足さず、悲観の床にだけ売却額を使った。新リース会計基準はリースが小さく影響を見ない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→12.12 倍・やや楽観 PER 11.8→12.12 倍・中立 PER 11→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0% = 7.5%。原料相場と為替の振れは k に足さず、筋書きの利益率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 8.25%。