結論
デルソーレは、ピザの生地やナン、トルティーヤを冷凍で作って外食やコンビニの惣菜の工場に納める会社だ。旧社名はジェーシー・コムサで、売上 146 億円の 8 割を食品が占める。残りは串焼きや鯛焼きの店を 42 店営む外食だ。
筆者の結論は「割高」だ。業務用の生地では顧客の厨房に深く入り込み、事業そのものは堅い。だが全社の営業利益率は過去 10 年で 3〜5% と薄く、ROE(自己資本で稼ぐ力)は資本コストの 6 割ほどしかない。
手元には純現金 16 億円があり、時価総額の 4 割に当たる。だが創業家が株の 4 割強を握り、自社株買いはしない。現金は会社に残り、株主の手に戻る速さは遅い。確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額を 3 割ほど下回る。外食の人手不足は追い風だが、それだけで稼ぐ力が変わるとは筆者は見ていない。現金を株主に返す決断が出れば、評価は一段変わる。それまでは、帳簿の安さより稼ぐ力の薄さを重く見たい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、デルソーレは「悪くない事業を、効率の悪い器で持っている」会社だ。生地は顧客の厨房に組み込まれ、一度採用されると替えられにくい。冷凍の業務用は人手不足という長い追い風に乗っている。10 年後も事業は残り、少しずつ強くなっているかもしれない。
だがオーナーとして見ると、資本の使い方に物足りなさがある。純現金は時価総額の 4 割に当たるのに、自社株買いはしない。ROE は 5% 前後で、ためた現金はほとんど何も稼いでいない。創業家が経営を握る限り、この形は変わりにくい。
株価は帳簿の自己資本の 7 割で、純現金を引けば事業は安く見える。だが利益が薄く、工場の更新と値上げの遅れで現金がゆっくり出ていく事業だ。現金を配らない会社の純現金は、帳簿の額ほどの値打ちを持たない。筆者は、今の値段では安全域が足りないと見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は食品だ。売上 116 億円で、ピザの生地と完成品、ナン・ピタパン・トルティーヤ・フォカッチャといった世界のパン、冷凍のチーズやパンを作る。売り先は外食のチェーン、ピザの宅配、スーパーやコンビニの惣菜を作る工場だ。卸の日本アクセスが売上の 1 割を占める。家庭用では「THE PIZZA」や北海道の八雲で焼く「HOKKAIDO PIZZA」を、スーパーや通販、ふるさと納税で売る。
工場は東京の多摩、千葉の成田、福岡の古賀、北海道の八雲の四つだ。2024 年 10 月に千葉工場が火事になり、前の期は食品部門が赤字に落ちた。2026/03 期には全ラインが動き、食品部門は 8.9 億円の黒字に戻った。
もう一つが外食で、売上は 31 億円だ。東京の港区などで高級串焼きや鶏の惣菜、テイクアウトの「おめで鯛焼き本舗」を直営とフランチャイズで営む。不採算の店を閉じながら、利益は年 1.5 億円ほどを稼ぐ。店はすべて借りており、家賃は売上が落ちても毎月出ていく。食品の工場が稼いだ利益の一部を、外食の店の入れ替えに回す形が続いている。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは中くらいだ。冷凍の生地は、顧客の店の窯や手順に合わせて配合と焼き方を作り込む。一度採用されると、顧客は味が変わるのを嫌って簡単には替えない。ナンやトルティーヤを量産できる工場は国内に多くなく、この分野では先行者の強みがある。
ただし、値段を決める力は弱い。売り先の多くは外食のチェーンや大手の卸で、交渉の力は買い手の側にある。小麦・チーズ・電気代の上昇を値上げで取り戻すまで半年から 1 年かかる。過去 12 年の営業利益率は 2.5〜6.9% の幅に収まり、平均は 4% 前後だ。
財務は堅い。自己資本比率は 61% で、借金はほとんど無い。ただ外食の店は借りているので、純現金の厚さを見かけほど強いとは言えない。創業家の大河原家が株の 4 割強を持ち、経営の舵を握る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の食べる量は人口の減少で年 0〜1% 細る。一方で冷凍の食品は、単身の世帯と共働きの増加、外食の人手不足で伸びている。2025 年の国内の冷凍食品の消費量は初めて 300 万トンを超え、その過半は外食や給食に向かう業務用だ。
デルソーレの生地は、この業務用の流れの真ん中にある。外食の店は人が足りず、生地をこねて伸ばす手間を外に任せたい。宅配のピザ、カレーの店、コンビニのサンドやラップの工場が、冷凍の生地の買い手になる。ナンやトルティーヤのようなエスニックのパンは、若い世代の食の好みの広がりにも乗る。
逆風もある。小麦とチーズは輸入に頼り、円安と世界の需給で値段が大きく振れる。値上げの回数が増えるほど、買い手は安い業態や自前の生地に逃げる。大手の冷凍食品の会社や海外の安い生地との競争も強まる。業務用の顧客は数が限られ、大口を一つ失うだけで工場の稼働が下がる。冷凍ピザという小さな市場で、規模を武器に値段を決められる会社は見当たらない。勝負を分けるのは、顧客の店ごとに配合を合わせる手間を惜しまないかどうかだ。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。配当は 2026/03 期で総額 1.1 億円と、純利益の半分を配る。前の期の配当の総額は 1.3 億円で、赤字の年も配当を続けた。自社株買いはほとんどしていない。
株主は創業家の大河原家が 4 割強、インドネシアの食品大手 Indofood が 1 割、ミツウロコが 3% を持つ。Indofood は即席麺の世界的な会社で、アジアでの提携の芽になりうる。親会社は無いが、創業家と提携先で過半を押さえ、外から買われる話は起きにくい。
純現金 16 億円のうち、運転資金と店の家賃の約束、工場の更新を除いた 8 億円ほどを、事業に要らない現金と見る。中計 2026 は財務の数字の目標を掲げていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
純現金 16 億円は時価総額の 4 割に当たる。現金を引けば、事業は年 4〜7 億円の営業利益を生むのに 25 億円ほどの値段しか付いていない。
事業の流れは追い風だ。外食の店は人が足りず、生地をこねる手間を外に出したい。ナン・ピタ・トルティーヤを量産できる会社は国内に多くなく、デルソーレはカレー店やピザの宅配、コンビニの惣菜の工場に深く入り込んでいる。一度採用された生地は、味が変わるのを嫌う顧客に簡単には替えられない。
千葉工場の火災はすでに乗り越えた。火災の前の 2024/03 期には営業利益率 6.9% を出しており、四つの工場がそろって動けばその水準に戻る。北海道の八雲で焼くピザは、ふるさと納税や高級スーパーで指名買いされる品に育ちつつある。Indofood が 1 割を持つことは、アジアへの展開の足がかりになる。創業家が経営を握るからこそ、短期の利益に振り回されず顧客との関係を守れるという見方もできる。
慎重な見方
利益は薄い。過去 12 年の営業利益率は最高でも 6.9% で、平均は 4% 前後だ。値上げは原料と電気代の後追いで、取り戻すまでに利益が削られる。2025/03 期には火災で赤字に落ち、工場が一つ止まるだけで会社の利益が消える脆さも見せた。
売り先は外食のチェーンと大手の卸で、値段を決めるのは買い手だ。ドミノ・ピザのような大口が自前の工場や海外の生地に移れば、工場の稼働はすぐに下がる。国内の人口は減り、冷凍の業務用の伸びも大手の冷凍食品の会社が取りに来る。
手元の現金は株主に戻らない。創業家が 4 割強を握り、自社株買いはしない。ROE は 5% 前後と資本コストに遠く、ためた現金は何も稼いでいない。外食の 42 店は借りた店で、家賃は売上が落ちても出ていく。純現金の厚さは見かけほど頼りにならない。新リース会計が始まれば、店の家賃の約束が負債として表に出て、財務の見え方も変わる。業務用の顧客に頼る小さな工場の会社に、資本コストを超える稼ぎを期待するのは難しい。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。生地の事業の堅さと人手不足の追い風は本物だが、利益率は過去 12 年で 7% を超えたことがなく、現金も株主に戻りにくい。確率は中立に厚く置き、楽観の側と悲観の側をほぼ同じ重みにした。強気の見方が言う現金の厚さは、戻り方を割り引いて価値に足している。還元の方針が変われば、その割引を外して見直す。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 497 円44 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 159 円14 億円)。 今の値に割り戻すと 339 円30 億円、今との差 −27.6%、 期待の年率 +3.4%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 937 円83 億円 | 247 円22 億円 | +152.9% | +9.7% | 95 円8 億円 |
| やや楽観 | 20% | 730 円65 億円 | 202 円18 億円 | +99.2% | +7.1% | 186 円17 億円 |
| 中立 | 42% | 564 円50 億円 | 168 円15 億円 | +56.4% | +4.6% | 308 円27 億円 |
| やや悲観 | 20% | 137 円12 億円 | 112 円10 億円 | −46.7% | −6.1% | 50 円4 億円 |
| 悲観 | 10% | 124 円11 億円 | 56 円5 億円 | −61.6% | −9.1% | 18 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 497 円44 億円 | 159 円14 億円 | +40.3% | +3.4% | 656 円58 億円 |
今の株価時価総額 468 円42 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% ナンとピザの生地で外食の厨房を押さえる 利益 6 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 937 円83 億円
外食の店は人手が足りず、生地をこねる手間を外に出す流れが強まる。デルソーレのナンやピザの生地は、カレー店やピザの宅配、コンビニの惣菜の工場に広く採用される。北海道の八雲の工房で作る家庭用のピザは、ふるさと納税や高級スーパーで指名買いされる品に育つ。インドネシアの Indofood との縁を生かし、アジアへの輸出も始まる。工場の稼働が上がり、食品部門の利益率は 10% に届く。外食は鯛焼きと串焼きの店を 45 店に増やす。それでも ROE は資本コストにわずかに届かない。手元の現金を配らずに持ち続けるので、資本の効率が上がり切らないからだ。
- 食品(業務用・家庭用の冷凍の生地とピザ):数量 31.9(生地・ピザ・パンの出荷量(千トン・年、推定))× 価格 54(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 173 億円・営業利益 17 億円。3.19 万 t × 54.4 万円/t、利益率 10%
- 外食:数量 45.0(店の数(店))× 価格 1.00(1 店あたり売上(億円・名目、FC の収入込み))→ 売上 45 億円・営業利益 3 億円。45 店 × 1.0 億円、利益率 6%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 12.7 倍、時価総額 83 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業務用のエスニックブレッドが外食の人手不足で伸び、家庭用の冷凍ピザも育つ筋書き。食品部門の利益率 10% は過去に無い水準なので低く置いた。
やや楽観 20% 火災から立ち直り、生地の需要が伸びる 利益 5 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 730 円65 億円
千葉工場の火災の後始末が終わり、四つの工場がそろって動く。業務用のピザの生地とナンは、外食とコンビニの惣菜の工場で数量を少しずつ伸ばす。値上げは物価並みに通り、食品部門の利益率は 9% 台に乗る。外食は不採算の店を閉じた後、テイクアウトの鯛焼きとフランチャイズで店の数を保つ。全社の営業利益は 9 億円ほどと、2024/03 期の水準に戻る。配当は性向 5 割を保ち、手元の現金は大きくは減らない。ROE は 6% 台に戻るが、資本コストにはまだ届かない。現金の使い道が決まらない限り、資本の効率はこのあたりで止まる。
- 食品(業務用・家庭用の冷凍の生地とピザ):数量 29.9(生地・ピザ・パンの出荷量(千トン・年、推定))× 価格 54(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 161 億円・営業利益 15 億円。2.99 万 t × 54.0 万円/t、利益率 9.5%
- 外食:数量 42.0(店の数(店))× 価格 0.99(1 店あたり売上(億円・名目、FC の収入込み))→ 売上 42 億円・営業利益 2 億円。42 店 × 0.99 億円、利益率 5%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 65 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:千葉工場の火災の前の 2024/03 期に営業利益率 6.9% を出した実績があり、工場の稼働が戻れば届く範囲。
中立 42% 縮む国内で、生地屋として細く稼ぐ 利益 4 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 564 円50 億円
国内の人口は減るが、冷凍の生地を使う外食と中食の流れが量の減少をほぼ打ち消す。数量は 10 年でわずかに減り、値段は物価並みに上がる。食品部門の利益率は 9% と今より少し上がるが、本社の費用と人件費も物価で膨らみ、全社の営業利益率は 4% 弱にとどまる。外食は 40 店前後で横ばいだ。創業家と Indofood が株の半分強を持つ構図は変わらず、配当は続くが、現金をため込む癖も残る。ROE は 5% 前後で、株主の求める利回りの 6 割ほどだ。事業は堅いが、資本の器が大きすぎる状態が 10 年続く。
- 食品(業務用・家庭用の冷凍の生地とピザ):数量 28.1(生地・ピザ・パンの出荷量(千トン・年、推定))× 価格 54(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 151 億円・営業利益 14 億円。2.81 万 t × 53.6 万円/t(物価並み)、利益率 9%
- 外食:数量 40.0(店の数(店))× 価格 0.98(1 店あたり売上(億円・名目、FC の収入込み))→ 売上 39 億円・営業利益 2 億円。40 店 × 0.98 億円、利益率 4%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.2% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 50 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の食べる量が年 0〜1% 減るという業種の前提に、過去 10 年の中央値に近い全社の利益率 4% 弱を合わせた中心の筋書き。
やや悲観 20% 値上げが追いつかず、工場の利益が細る 利益 1 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 137 円12 億円
チーズと小麦、電気代と人件費が上がり続け、業務用の顧客は値上げを渋る。ドミノ・ピザのような大口の顧客は自前の生地や海外の安い生地に切り替え、数量は 1 割減る。食品部門の利益率は 7% に下がる。外食は人手不足で店を減らし、借りた店の家賃は売上が落ちても残る。全社の営業利益は 2 億円ほどに沈む。配当は細り、手元の現金は工場の修繕に少しずつ食われる。創業家は事業を守ることを優先し、現金を株主に返す決断は先送りされる。会社は続くが、資本の効率は 1〜2% に沈む。株の値打ちは、稼ぐ力よりも手元の現金と投資有価証券の額に支えられる形になる。
- 食品(業務用・家庭用の冷凍の生地とピザ):数量 26.1(生地・ピザ・パンの出荷量(千トン・年、推定))× 価格 52(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 136 億円・営業利益 9 億円。2.61 万 t × 52.0 万円/t、利益率 7%
- 外食:数量 36.0(店の数(店))× 価格 0.95(1 店あたり売上(億円・名目、FC の収入込み))→ 売上 34 億円・営業利益 1 億円。36 店 × 0.95 億円、利益率 2%
倍率:ROE 1.6% で k を大きく下回る。価値は稼ぐ力(純利益÷k)までで、1÷k の 6.4 割の 8.0 倍。余った現金は谷で食う分を見て今の 0.75 倍に、戻り方 0.75 を掛けた。
確率:2021〜2023 年のように営業利益率 2〜3% の年が続く筋書き。原料と電気代、人件費の上昇を値上げで取り切れない。
悲観 10% 大口の顧客を失い、赤字の工場を抱える 利益 −4 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 124 円11 億円
大口の外食チェーンが生地を自前の工場に切り替え、コンビニの惣菜の工場も海外の安い冷凍の生地に移る。数量は 2 割減り、値段は物価に追いつかない。四つの工場のうち一つを閉じる決断が遅れ、減損で自己資本が 10 億円ほど削られる。外食は家賃の固定費が重く赤字が続く。会社は手元の現金で持ちこたえるが、創業家が経営を握ったまま、少数株主に現金が戻る道は細い。帳簿の現金は残っても、それを手にできる日は来ないかもしれない。外食の店を畳む費用も、手元の現金をさらに削る。株の値打ちは、現金と投資有価証券の税後の額を割り引いたところまで落ちる。
- 食品(業務用・家庭用の冷凍の生地とピザ):数量 23.2(生地・ピザ・パンの出荷量(千トン・年、推定))× 価格 49(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 113 億円・営業利益 5 億円。2.32 万 t × 48.8 万円/t(物価に追いつかない)、利益率 4%
- 外食:数量 30.0(店の数(店))× 価格 0.90(1 店あたり売上(億円・名目、FC の収入込み))→ 売上 27 億円・営業利益 −1 億円。30 店 × 0.90 億円、赤字
倍率:赤字なので PBR で今の自己資本 62 億円に掛ける。稼ぐ力は無く、価値は床の資産(純現金と投資有価証券の税後)まで。
確率:大口の業務用の顧客を失い、工場の火災や食の安全の事故が重なる構造的な負けの筋書き。食品の会社は事故一つで顧客を失うので 1 割を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
食品(業務用・家庭用の冷凍の生地とピザ)
ピザ、ナン・ピタ・トルティーヤなどのパン、冷凍チーズ・冷凍パン。外食・惣菜工場向けと家庭用。
| 数量生地・ピザ・パンの出荷量(千トン・年、推定) | 価格1 トンあたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 29.0 | 40 | 116 | 9 |
| 10 年後 中立 | 28.1 | 54 | 151 | 14 |
取り方:出荷量の開示は無い。業務用の生地から家庭用の完成品までを均した 1 トンあたりの売上を 40 万円前後と見て、売上 115.9 億円から年約 2.9 万トンと推定(推定)。数量は実質、物価は単価に入れる。
外食
高級串焼・鶏惣菜、おめで鯛焼き本舗などテイクアウトの店(直営・FC)。
| 数量店の数(店) | 価格1 店あたり売上(億円・名目、FC の収入込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 42.0 | 0.73 | 31 | 2 |
| 10 年後 中立 | 40.0 | 0.98 | 39 | 2 |
取り方:有報の店の数 42 店で売上 30.7 億円を割った 1 店あたり 0.73 億円。店はすべて借りており、家賃は固定の約束。
リスクと懸念
大口の顧客の離反
業務用の売上は外食のチェーンと大手の卸に偏る。大口の顧客が自前の工場や海外の安い生地に移れば、工場の稼働が下がり利益が大きく削られる。
原料と電気代の上昇
小麦とチーズは輸入に頼る。円安や世界の需給で値段が跳ねると、値上げが追いつくまで半年から 1 年、利益が削られる。
工場の事故と食の安全
2024 年 10 月の千葉工場の火災で前の期は赤字に落ちた。工場は四つしかなく、事故や異物の混入一つで顧客を失うおそれがある。
外食の家賃と人手
外食の 42 店はすべて借りた店で、家賃は売上が落ちても残る。人手不足で店を開けられない日が増えれば、赤字の店が増える。
現金が株主に戻らない
純現金は時価総額の 4 割あるが、自社株買いは無い。創業家が経営を握る限り、現金は会社に残り続けるおそれがある。
今後の分かれ目
- 自社株買いか増配で現金の還元を厚くする
- 余った現金の戻り方を 1.0 に上げて見直す。
- 食品部門の営業利益率が 2 年続けて 10% を超える
- 生地の値決めが強まった証拠と見て、やや楽観の確率を上げる。
- 大口の業務用の顧客を失う
- 数量の見通しを悲観の側へ寄せる。
- Indofood との提携でアジアへの輸出が始まる
- 数量の伸びの余地を楽観の側で見直す。
- 外食の店が 35 店を下回る
- 家賃の固定費に押される形が見え、やや悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 食品部門の営業利益率
- 小麦・チーズの輸入価格
- 外食の店の数
- 配当と自社株買いの方針
- 国内の冷凍食品の業務用の消費量
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価と PBR 0.67 倍を見ずに決めた。どの筋書きでも ROE は k 8.0% を下回るので、PER は 1÷k=12.5 倍を上限に ROE÷k に沿って 6〜9 割に置いた。余った現金は利息を除いて戻り方 0.75 で足した。外食の家賃は今と同じく営業費用に入れた形でそろえ、2028/03 期から新リース会計で純負債が増えて見えることも織り込んだ。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→12.7 倍・やや楽観 PER 10.8→12.5 倍・中立 PER 10→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 0.5%。