結論
日本甜菜製糖は、北海道のてん菜(砂糖大根)から砂糖をつくる会社だ。国産のてん菜糖で、およそ半分を担う。10 月からは社名がニッテンに変わる。筆者の結論は、今の値段は大きく割高だということだ。理由は、本業の稼ぎが小さく、直近の純利益が政策保有株の売却益でふくらんでいるからだ。
2026 年 3 月期の純利益は 50 億円だった。ただし営業利益は 0.5 億円しかない。砂糖の部門が 26 億円の赤字を出し、飼料や不動産の黒字がそれを打ち消した形だ。会社が見込む今期の純利益も、売却益を除けば 12 億円ほどにとどまる。
砂糖の値段は、海外の粗糖相場と国内の市況に引きずられる。国から出る交付金は、制度のしくみ上、値段の下落をすべては埋めてくれない。売上の 6 割強がこの一本足だ。てん菜の作付けも減り、国が支える数量にも枠がある。
救いは、飼料と不動産が安定して稼ぐことだ。会社は資産も厚く、純現金で自己資本比率は 79% ある。株主へ返す姿勢も強め、配当は自己資本の 4% を目安にする。
ただ、厚い資産は稼ぎにつながっていない。10 年後の中立の筋書きでも、自己資本利益率は資本コストの半分以下だ。時価総額は今の 4 分の 1 ほどにとどまる。配当を足しても、今の値段には届かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、10 年後も北海道のてん菜はあり、砂糖も食卓に残る。ただ、その事業を買って持ち続けたいかと問われれば、答えは慎重になる。
株主のものになる利益は、いまの数字では年 12 億円ほどだ。営業利益は 0.5 億円しかなく、直近の純利益 50 億円の大半は、資産の売却益だった。売却益は一度きりで、続かない。
堀は、産地と工場網だ。広いが、値段を決める力には結びつかない。値段は制度と市場が決める。事業は存続するが、利益は薄い。
資本の使い方は、方向が正しい。政策保有株を減らし、配当を厚くし、自社株も買う。ただ、配当が稼ぎを超える状態は、資産を食って返しているだけだ。長く続けられる形ではない。
安全域は、今の値段にない。純現金と、売れる株、不動産の稼ぎだけを足しても、時価総額の 4 割ほどにとどまる。残りは、工場と在庫と土地が、将来きちんと稼ぐという期待に頼る形になる。筆者は、この期待に値段を払う気にはならない。
何で稼ぐ会社か
会社の稼ぎは、砂糖、飼料、農業資材、食品、不動産、その他の 6 つに分かれる。売上の 6 割強は砂糖だ。
砂糖は、北海道の十勝・網走・上川の農家が育てたてん菜を、芽室・美幌・士別の 3 工場で絞って白糖と原料糖にする。年間の産糖量は平年で 26 万トンほどだ。精製糖や糖蜜は、外部の会社に委託して作る。売る先は砂糖の卸や食品メーカーで、子会社の日甜商事も扱う。単独で売上の 1 割を超える顧客はない。
値段は、ニューヨークの粗糖相場と東京の上白糖の市況で動く。てん菜糖は輸入糖より生産費が高い。その差を埋めるため、国が輸入糖から集めた調整金を財源に、国内産糖の交付金を出す。会社の利益は、この交付金が実際のコストに見合うかどうかで大きく変わる。
飼料は、てん菜を絞ったあとのビートパルプと、提携先の十勝飼料に作らせる配合飼料だ。畜産が盛んな北海道で需要が底堅い。売上は 128 億円で、営業利益率は 10% を超える。
農業資材は、てん菜の移植に使う紙筒(育苗の鉢)、種子、移植機などだ。食品は、酵母とオリゴ糖で、売上は 28 億円と小さい。
不動産は、帯広の旧工場跡地などに建てた商業施設の賃貸で、売上 13 億円に対して利益が 6 億円ある。その他には、十勝の貨物輸送や倉庫、石炭・石油・自動車部品の販売、保険代理店がある。
単独の従業員は 635 人、連結で 771 人だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、北海道のてん菜という産地を押さえていることだ。てん菜は北海道でしか育たず、農家との長い付き合いと、3 工場の加工網は簡単に作れない。
ただ、堀は利益を守るというより、事業を続ける資格に近い。砂糖の値段は市場と制度で決まり、会社は自分で決められない。収益力の面では、ブランドで値上げする会社とは違う。
筆者が気にするのは、利益の質だ。過去 10 年の営業利益は 0.5 億円から 22 億円で、直近は 0.5 億円まで細った。ROE(自己資本利益率)の中央値は 2% 台だ。自己資本は 775 億円と厚いのに、稼ぎが小さい。工場や在庫、土地に資金が固定されているからだ。
飼料と不動産は強い。飼料は営業利益率 10% で、てん菜の副産物を活かせる。不動産は旧工場跡地の賃貸で、利益率が 4 割を超える。この 2 つが、砂糖の赤字を支えている。
財務は堅い。純現金は 30 億円で、自己資本比率は 79% だ。借金の金利が上がる影響はほとんどない。
経営の姿勢は変わりつつある。政策保有株を売り、配当を自己資本の 4% に引き上げ、自社株買いも行う。資本を返す方向は正しい。ただ、本業の稼ぎを増やす手が、まだ見えない。紙筒などの農業資材、菌糸たんぱく(カビの仲間から作る食品素材)の試験工場、パルプの新設備はあるが、利益の柱になるには遠い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の砂糖の消費は、1973 年のピークから細り続けている。人口減に加え、甘さ控えめの好みと、異性化糖(ぶどう糖と果糖の甘味料)への置き換えが効いている。年 1% 前後の減少が続くと見るのが自然だ。
国内で消費する砂糖のうち、国産のてん菜糖とさとうきび糖が約 4 割、残りが輸入原料糖から作る精製糖だ。国産糖の 8 割強をてん菜糖が占める。てん菜糖の工場は、北海道に日甜(3 工場)、ホクレン(2 工場)、北海道糖業(3 工場)の 3 社 8 工場がある。
国は、てん菜糖業を守るため、糖価調整制度で国内産糖に交付金を出す。ただ、交付の対象になる数量には枠がある。令和 5 砂糖年度の 60 万トンから、令和 8 年度は 55 万トンまで下がる計画だ。てん菜の作付けは、2024 年産で 4.9 万 ha と、前年から 4% 減った。農家の高齢化と他の作物への転換が背景にある。
制度の財政も苦しい。調整金の収支は、国の緊急交付金を除けば令和 6 年度も赤字で、累積の赤字は 595 億円に上る。異性化糖や加糖調製品が輸入糖を置き換え、調整金の収入が減っている。この赤字が続けば、制度の見直しは避けられない。
値段は、海外の粗糖相場と国内の市況で決まる。2026 年 3 月期は、後半の値下がりが交付金の調整に追いつかず、砂糖が赤字になった。
同じ砂糖でも、輸入糖を精製する DM 三井製糖やウェルネオシュガーは、輸入原料で動く。てん菜糖は、農家の生産が原料の量を決め、交付金が採算を決める。需要の縮小と制度の持続性が、この領域の最大の論点だ。
資本政策と M&A
資本政策は、守りから攻めへ動いている。2026 年 3 月期は、政策保有株 6 銘柄を売って約 70 億円の利益を出し、純利益を押し上げた。2027 年度までに、保有株を連結純資産の 20% へ減らす目標を持つ。売却は続く見込みだ。
配当は、従来の下限配当(1 株あたりの金額で決める方式)から、自己資本の 4% を目安にする方式へ変えた。2026 年 3 月期は普通と特別の合計で、配当総額が約 19 億円だった。今期は期末の配当だけで総額 30 億円を超える見込みだ。経常的な純利益 12 億円を、はるかに上回る。自社株買いも 10 億円行った。
中期経営計画は 2028 年 3 月期が最終年度で、営業利益 30 億円、ROE 5% を掲げる。資金は 5 年で約 240 億円と置き、保有株の売却で 140 億円、還元に 110 億円を充てる。
M&A は目立たない。2021 年に精製糖の関門製糖の株を手放し、委託製造に切り替えた。大株主の明治 HD も、2022 年に持分を減らした。てん菜糖は 3 社 8 工場で、統合が将来の選択肢になりうるが、農協系のホクレンとの再編は動きが見えない。10 年以内の買収や TOB の確率は、kabufu の推定で 22% だ。
10年の還元は、この DOE 4% の方針どおりに置いた。利益を超える分は保有株の売却代金で払う前提で、余った現金はその分を減らしている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
制度が変われば、砂糖の赤字は一気に解ける。国は、てん菜糖業が持続できなければ農家が消えると分かっている。交付金の算定を実際のコストに合わせ、後半の値下がりのような目減りを防げば、砂糖は赤字から黒字に戻る。
会社は、すでに動いている。政策保有株を売って身軽になり、配当は自己資本の 4% を目安にする。士別にパルプの新設備、北海道に試験工場もあり、飼料と食品素材の新しい稼ぎ口を広げている。
飼料は強い。てん菜の副産物のパルプと配合飼料で、営業利益率は 10% を超える。北海道は畜産が盛んで、需要は底堅い。不動産も、旧工場跡地の賃貸で利益が 6 億円ある。この 2 つだけで、すでに 20 億円近く稼ぐ。
業界の再編も選択肢だ。てん菜糖は 3 社 8 工場で、数量の枠が 55 万トンに縮むなか、工場の統合は避けにくい。日甜は最大級の芽室製糖所を持ち、統合で主導権を握る立場にある。
自己資本が厚いのも強みだ。配当を出し続けても、財務は揺らがない。会社が掲げる ROE 5% が実現すれば、時価総額は今より厚く評価される。大きな上振れは、砂糖の黒字化と再編の効果が同時に出る場合だ。
慎重な見方
砂糖は、構造的に細る事業だ。国内の消費は減り続け、異性化糖への置き換えが進む。調整金の収支は、国の緊急交付金がなければ赤字で、累積の赤字は 595 億円ある。制度は、いずれ見直しを迫られる。
交付金の対象数量は、令和 8 年度に 55 万トンまで下がり、今後も下がりうる。てん菜の作付けは、2024 年産で 4% 減った。農家が減れば、工場の稼働率が下がり、1 トンあたりの固定費が上がる。数量が 1 割減れば、赤字は広がる。
直近の純利益 50 億円は、保有株の売却益だ。経常的な稼ぎは、今期予想で 12 億円にすぎない。売却益は一度きりで、保有株は売るほど減る。これからは、本業の稼ぎだけが頼りになる。
配当が問題だ。今期の配当予定は、総額で 30 億円を超え、経常利益の 2 倍以上になる。自己資本を取り崩して返す形で、いつまでも続かない。続ければ、財務の余裕は削られる。
中期計画の営業利益 30 億円は、過去 10 年でも到達していない水準だ。砂糖の赤字が解けない限り、達成は難しい。ROE が資本コストの半分に届かない会社に、高い値段をつける理由はない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。強気の言う制度の見直しと再編は、起こりうるが、時期も中身も見えない。一方、弱気の指摘する、稼ぎの小ささと配当の重さは、すでに数字に出ている。
そこで、確率を中立と、やや悲観の側に厚く置いた。楽観は、制度改革と再編が同時に進む筋書きで、確率は低い。悲観は、数量の枠と作付けが同時に縮む筋書きで、床は、純現金と売れる株、不動産の稼ぎから置いた。
どの筋書きでも、10 年後の時価総額は今の 647 億円を大きく下回る。配当を足しても、今の値段には届かない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,132 円394 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 776 円270 億円)。 今の値に割り戻すと 1,024 円356 億円、今との差 −44.1%、 期待の年率 +0.4%(資本コスト 8.4%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,986 円691 億円 | 949 円330 億円 | +60.3% | +4.8% | 235 円82 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,610 円560 億円 | 877 円305 億円 | +35.8% | +3.1% | 497 円173 億円 |
| 中立 | 38% | 1,302 円453 億円 | 805 円280 億円 | +15.1% | +1.4% | 801 円278 億円 |
| やや悲観 | 25% | 490 円171 億円 | 719 円250 億円 | −33.9% | −4.1% | 302 円105 億円 |
| 悲観 | 9% | 379 円132 億円 | 431 円150 億円 | −55.7% | −7.8% | 73 円25 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,132 円394 億円 | 776 円270 億円 | +4.2% | +0.4% | 1,908 円663 億円 |
今の株価時価総額 1,831 円637 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.4% を下回るほど割高。
楽観 8% 制度が改まり、砂糖が黒字に戻る10年 利益 43 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 1,986 円691 億円
国が交付金の算定を実際のコストに合わせて見直し、後半の値下がりのような目減りが起きにくくなる。てん菜糖 3 社の工場の統合や共同運営も進み、固定費が下がる。砂糖は赤字を脱し、営業利益率 3% まで戻る。
数量は、作付けの縮小が小幅にとどまり、10 年で 3% 減る。国の交付対象数量が 55 万トン近くで保たれ、日甜が最大級の芽室製糖所で稼働率を保つ。
飼料は営業利益率 10% を守り、食品素材は菌糸たんぱくなどの新規で 5 割伸びる。不動産は賃料が物価並みに上がる。
全社の営業利益は 50 億円台に乗る。ただ、自己資本は 745 億円と厚いままで、ROE は 6% に届かない。資本コストを下回る点は変わらない。
還元は自己資本の4%(DOE)の方針どおりに置いた。利益を超える分は保有株の売却でまかなうので、その分だけ余った現金(保有株の含み益)を減らして置いた(二重に数えない)。
- 砂糖事業:数量 26.2(販売量(万トン相当・推定))× 価格 24(1万トンあたり売上(億円))→ 売上 638 億円・営業利益 19 億円。制度改善で黒字化
- 食品事業:数量 3.0(出荷量(万トン相当・推定))× 価格 19(1万トンあたり売上(億円))→ 売上 57 億円・営業利益 4 億円。新規で伸びる
- 飼料事業:数量 27.5(出荷量(万トン相当・推定))× 価格 6.11(1万トンあたり売上(億円))→ 売上 168 億円・営業利益 17 億円。安定
- 農業資材事業:数量 76.0(出荷点数(万点相当・推定))× 価格 0.67(1点あたり売上(億円/万点))→ 売上 51 億円・営業利益 3 億円。堅調
- 不動産事業:数量 20.0(賃貸面積(万㎡相当・推定))× 価格 0.89(1万㎡あたり売上(億円))→ 売上 18 億円・営業利益 8 億円。賃料上昇
- その他事業:数量 36.0(取扱量(万トン相当・推定))× 価格 2.68(1万トンあたり売上(億円))→ 売上 97 億円・営業利益 4 億円。堅調
倍率:事業の純利益 42 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 8.40% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)100 億円。全体の PER 11.9 倍、時価総額 595 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:交付金の算定の改善と工場の再編が同時に進む必要がある。国の財政が厳しく、実現は難しいとみて低く置く。
やや楽観 20% 砂糖が小さな黒字で安定する10年 利益 32 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 1,610 円560 億円
砂糖の交付金の調整が実情に近づき、砂糖は営業利益率 1〜2% の小さな黒字で安定する。数量は 10 年で 7% 減る。工場の稼働率は保たれる。
飼料は営業利益率 9% 台を守る。食品は小さいが伸び、農業資材は紙筒と種子で堅調だ。不動産は物価並みに上がる。
全社の営業利益は 40 億円。中期計画の 30 億円を上回る。
業界の再編は、工場の共同運営といった緩い形にとどまる。大きな統合ではないが、固定費の伸びは抑えられる。
ただ、自己資本は 700 億円台で厚いままだ。ROE は 4% 台にとどまり、資本コストの半分ほどだ。配当は自己資本の 4% を概ね守る。保有株の売却は続くが、利益への寄与は小さくなる。
還元は自己資本の4%(DOE)の方針どおりに置いた。利益を超える分は保有株の売却でまかなうので、その分だけ余った現金(保有株の含み益)を減らして置いた(二重に数えない)。
- 砂糖事業:数量 25.1(販売量(万トン相当・推定))× 価格 24(1万トンあたり売上(億円))→ 売上 598 億円・営業利益 10 億円。小さな黒字
- 食品事業:数量 2.6(出荷量(万トン相当・推定))× 価格 19(1万トンあたり売上(億円))→ 売上 49 億円・営業利益 3 億円。緩やかに伸びる
- 飼料事業:数量 26.5(出荷量(万トン相当・推定))× 価格 6.11(1万トンあたり売上(億円))→ 売上 162 億円・営業利益 15 億円。安定
- 農業資材事業:数量 72.0(出荷点数(万点相当・推定))× 価格 0.67(1点あたり売上(億円/万点))→ 売上 48 億円・営業利益 3 億円。堅調
- 不動産事業:数量 20.0(賃貸面積(万㎡相当・推定))× 価格 0.87(1万㎡あたり売上(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 7 億円。賃料上昇
- その他事業:数量 35.0(取扱量(万トン相当・推定))× 価格 2.68(1万トンあたり売上(億円))→ 売上 94 億円・営業利益 3 億円。堅調
倍率:事業の純利益 31 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.8% が k 8.40% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)85 億円。全体の PER 11.9 倍、時価総額 452 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:交付金の調整が改善し、中期計画の水準に近づく姿。計画の営業利益 30 億円を一段上回る程度で、業界ノートの上側に当たる。
中立 38% 数量が1割減り、砂糖は収支ほぼ均衡の10年 利益 23 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 1,302 円453 億円
砂糖の数量は、人口減と置き換えで 10 年に 1 割減る。価格は物価並みの 1.34 倍。交付金の算定は大きく変わらず、砂糖は営業利益率 0.4% と、ほぼ収支均衡になる。
飼料は営業利益率 9%、不動産は 4 割を保つ。食品は少し伸び、農業資材はてん菜の減少で縮む。
全社の営業利益は 30 億円弱になる。過去の最高だった 22 億円に、10 年分の物価上昇を乗せた程度だ。
自己資本は配当と利益のバランスで 700 億円ほどに落ち着く。ROE は 3% 台で、資本コストの半分以下だ。厚い資産は、稼ぎにつながらないまま残る。
還元は自己資本の4%(DOE)の方針どおりに置いた。利益を超える分は保有株の売却でまかなうので、その分だけ余った現金(保有株の含み益)を減らして置いた(二重に数えない)。
- 砂糖事業:数量 24.3(販売量(万トン相当・推定))× 価格 23(1万トンあたり売上(億円))→ 売上 566 億円・営業利益 2 億円。収支ほぼ均衡
- 食品事業:数量 2.3(出荷量(万トン相当・推定))× 価格 19(1万トンあたり売上(億円))→ 売上 44 億円・営業利益 2 億円。少し伸びる
- 飼料事業:数量 25.5(出荷量(万トン相当・推定))× 価格 6.11(1万トンあたり売上(億円))→ 売上 156 億円・営業利益 14 億円。需要は堅い
- 農業資材事業:数量 68.0(出荷点数(万点相当・推定))× 価格 0.67(1点あたり売上(億円/万点))→ 売上 46 億円・営業利益 2 億円。てん菜減で縮む
- 不動産事業:数量 20.0(賃貸面積(万㎡相当・推定))× 価格 0.85(1万㎡あたり売上(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 7 億円。安定
- その他事業:数量 34.0(取扱量(万トン相当・推定))× 価格 2.68(1万トンあたり売上(億円))→ 売上 91 億円・営業利益 3 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.5% が k 8.40% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)75 億円。全体の PER 11.9 倍、時価総額 336 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:砂糖が赤字から収支均衡へ戻り、飼料と不動産が全社を支える姿を中心に置く。直近の営業利益ゼロは谷だが、構造は変わらないとみる。
やや悲観 25% 数量の枠が縮み、砂糖の赤字が居座る10年 利益 12 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 490 円171 億円
交付対象数量が下がり、てん菜の作付けも減る。数量は 10 年で 16% 減り、工場の稼働率が落ちる。固定費を下げきれず、砂糖は営業利益率 −1% の赤字が続く。
値段は物価に届かず、10 年で 1.28 倍にとどまる。調整金の収支が悪く、交付金の水準が引き下げられる。
飼料と不動産は堅調だが、砂糖の赤字を打ち消すには足りない。全社の営業利益は 15 億円前後になる。
配当は自己資本の 4% を守れず、利益に合わせて下げる。会社は、土地や株の売却で資本を調整する。
飼料は、てん菜の減少でパルプの量が減り、営業利益率が 8% まで下がる。農業資材も、紙筒の需要が作付けとともに縮む。
国の財政が厳しく、制度の見直しは、農家と工場に厳しい方向で進む。再編の議論は出るが、結論は遅く、効果は 10 年の後半にずれ込む。
- 砂糖事業:数量 22.7(販売量(万トン相当・推定))× 価格 22(1万トンあたり売上(億円))→ 売上 505 億円・営業利益 −7 億円。赤字が続く
- 食品事業:数量 2.0(出荷量(万トン相当・推定))× 価格 18(1万トンあたり売上(億円))→ 売上 37 億円・営業利益 2 億円。伸び悩む
- 飼料事業:数量 24.0(出荷量(万トン相当・推定))× 価格 5.93(1万トンあたり売上(億円))→ 売上 142 億円・営業利益 11 億円。やや縮む
- 農業資材事業:数量 62.0(出荷点数(万点相当・推定))× 価格 0.65(1点あたり売上(億円/万点))→ 売上 40 億円・営業利益 2 億円。縮む
- 不動産事業:数量 20.0(賃貸面積(万㎡相当・推定))× 価格 0.83(1万㎡あたり売上(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 6 億円。安定
- その他事業:数量 32.0(取扱量(万トン相当・推定))× 価格 2.60(1万トンあたり売上(億円))→ 売上 83 億円・営業利益 2 億円。縮む
倍率:ROE 1.7%で、稼ぐ力(純利益÷k)は約 130 億円。一方、純現金 30 億円、保有株の税後の売却代金(戻り方 0.5 を掛けて約 94 億円)、賃貸不動産の稼ぎ(税後 4 億円÷k)約 48 億円の合計 171 億円を床とし、その近くに置いた。PBR は約 0.22 倍で中立より低い。
確率:交付対象数量の縮小と作付けの減少が続き、砂糖の赤字が解けない姿。確率は、中立に次いで厚く置く。
悲観 9% 作付けの崩れと制度の縮小で、砂糖が構造的に負ける10年 利益 −9 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 379 円132 億円
交付対象数量が大きく削られ、てん菜の作付けは 10 年で 25% 減る。工場は稼働率が下がり、固定費を負担しきれない。砂糖は営業利益率 −5% の赤字を出す。
値段は輸入糖に押され、10 年で 1.2 倍にとどまる。工場の統廃合と減損が重なり、特別損失が出る。
飼料と不動産は残るが、砂糖の赤字は覆えない。全社の営業利益は赤字になる。
自己資本は損失と減損で 610 億円まで減り、配当は大幅に下げる。会社は純現金と保有株を使い果たし、事業の縮小に入る。配当や買い戻しの 150 億円は、現金や保有株、土地の売却でまかなう。
農家は離れ、工場は 1 つ以上が閉じる。再編と減損の費用が、赤字をさらに深くする。
救いは、国が産業を完全には手放さないことだ。ただ、守られるのは数量であり、会社の利益ではない。
- 砂糖事業:数量 20.3(販売量(万トン相当・推定))× 価格 21(1万トンあたり売上(億円))→ 売上 423 億円・営業利益 −21 億円。構造的な赤字
- 食品事業:数量 1.7(出荷量(万トン相当・推定))× 価格 17(1万トンあたり売上(億円))→ 売上 29 億円・営業利益 1 億円。低迷
- 飼料事業:数量 21.0(出荷量(万トン相当・推定))× 価格 5.84(1万トンあたり売上(億円))→ 売上 123 億円・営業利益 7 億円。縮む
- 農業資材事業:数量 52.0(出荷点数(万点相当・推定))× 価格 0.60(1点あたり売上(億円/万点))→ 売上 31 億円・営業利益 1 億円。大きく縮む
- 不動産事業:数量 18.0(賃貸面積(万㎡相当・推定))× 価格 0.76(1万㎡あたり売上(億円))→ 売上 14 億円・営業利益 5 億円。一部縮小
- その他事業:数量 29.0(取扱量(万トン相当・推定))× 価格 2.40(1万トンあたり売上(億円))→ 売上 70 億円・営業利益 0 億円。縮む
倍率:純利益は赤字で、稼ぐ力は床にならない。純現金 30 億円の半分は赤字で消え、保有株は市場の下落と戻り方 0.5 を掛けて約 70 億円、賃貸不動産の稼ぎ約 48 億円を足した約 133 億円が床。今の自己資本 775 億円に PBR 0.17 倍を掛けた。
確率:交付金の削減と作付けの急減が同時に起き、工場の統廃合を迫られる姿。国が支える産業なので、完全な崩れは避けられるとみて低く置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
砂糖事業
北海道のてん菜から砂糖(白糖・原料糖)と糖蜜を作る。精製糖は外部に委託。売上の6割強。
| 数量販売量(万トン相当・推定) | 価格1万トンあたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 27.0 | 17 | 469 | −26 |
| 10 年後 中立 | 24.3 | 23 | 566 | 2 |
取り方:売上469億円(内部取引を含む)を、てん菜糖の産糖量(平年26.6万トン)に近い約27万トン相当で割った推定値。精製糖・糖蜜の分も含むので、単価は白糖と原料糖の混成。国内の砂糖消費は年1%前後で減り、国の交付対象数量も55万トンへ下がるため、10年の数量は中立で0.9倍、価格は物価並みの1.34倍を基本にした。
食品事業
酵母、オリゴ糖、ベタインなどの食品素材。
| 数量出荷量(万トン相当・推定) | 価格1万トンあたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.0 | 14 | 28 | 2 |
| 10 年後 中立 | 2.3 | 19 | 44 | 2 |
取り方:開示が薄く推定。売上28億円を、酵母・オリゴ糖の平均的な卸価格で割り戻した。数量は中立で1.15倍、価格は1.34倍。
飼料事業
てん菜の副産物のビートパルプと、十勝飼料に委託して作る配合飼料。
| 数量出荷量(万トン相当・推定) | 価格1万トンあたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 28.0 | 4.56 | 128 | 14 |
| 10 年後 中立 | 25.5 | 6.11 | 156 | 14 |
取り方:売上128億円を、配合飼料とビートパルプの混成単価で割った推定値。パルプはてん菜の量に連動して減る。数量は中立で0.9倍、価格は穀物と物価に沿って1.34倍。
農業資材事業
移植用の紙筒(育苗鉢)、種子、てん菜の移植機など。
| 数量出荷点数(万点相当・推定) | 価格1点あたり売上(億円/万点) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 82.0 | 0.50 | 41 | 3 |
| 10 年後 中立 | 68.0 | 0.67 | 46 | 2 |
取り方:紙筒・種子・機械の混成のため、1点あたりの平均売上で割った推定。需要はてん菜の作付けに連動し、中立で0.83倍、価格は1.34倍。
不動産事業
帯広の旧工場跡地などに建てた商業施設の賃貸。
| 数量賃貸面積(万㎡相当・推定) | 価格1万㎡あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.0 | 0.64 | 13 | 6 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 0.85 | 17 | 7 |
取り方:賃貸面積は未開示。売上13億円を賃料単価で割り戻した推定。面積は横ばい、賃料は物価並みの1.34倍。
その他事業
十勝の貨物輸送・倉庫、石炭・石油・自動車部品の販売、保険代理店、スポーツ施設。
| 数量取扱量(万トン相当・推定) | 価格1万トンあたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 37.0 | 2.00 | 74 | 3 |
| 10 年後 中立 | 34.0 | 2.68 | 91 | 3 |
取り方:貨物・倉庫・燃料販売などの混成。取扱量は人口減と畜産の動きで中立0.92倍、価格は1.34倍。
リスクと懸念
砂糖部門の赤字が続く
2026 年 3 月期の砂糖は営業損失 26 億円。後半の値下がりに交付金の調整が追いつかなかった。会社は国と交渉するというが、制度の算定は国が決める。売上の 6 割強を占める部門なので、赤字が続けば全社の利益はほぼ消える。
国産糖の数量枠と作付けの縮小
交付金の対象数量は令和 8 年度に 55 万トンまで下がり、てん菜の作付けは 2024 年産で前年比 4% 減った。農家が減れば工場の稼働率が下がり、1 トンあたりの固定費が上がる。数量の枠が先に削られれば、会社は減産しても固定費を落とせない。
糖価調整制度の財政悪化
調整金の収支は、国の緊急交付金を除くと令和 6 年度も赤字で、累積の赤字は 595 億円に達する。異性化糖や加糖調製品が輸入糖を置き換え、収入が減っている。制度の持続が危うくなれば、交付金の水準も見直される。
売却益頼みの利益
2026 年 3 月期の純利益 50 億円の大半は、保有株の売却益だった。有報の貸借対照表では投資有価証券がなお約 240 億円あるが、売れば益は出ても毎年続くものではなく、同じ規模の売却益は当てにできない。売却益がなくなったとき、経常的な純利益は 12 億円前後にすぎない。
配当が稼ぎを超える
今期の配当は総額で 30 億円を超える予定だ。経常的な純利益の 2 倍以上だ。自己資本の 4% を目安にする方針を守れば、資産を取り崩して返すことになる。方針を崩せば、株主の期待を裏切る。
天候によるてん菜の豊凶
てん菜の収量と糖分は天候で大きく動く。前の年は不作で、2026 年 3 月期に回復した。不作の年は原料が不足して工場の稼働が落ち、豊作の年は在庫が積み上がる。気候変動で、振れ幅は大きくなりうる。
燃料・資材の高騰
工場は石炭や重油などの燃料を大量に使い、多くを海外から調達する。為替と地政学リスクの影響を受ける。砂糖の値段にすぐ転嫁できないので、コスト高はそのまま利益を削る。
今後の分かれ目
- 国が交付金の算定を見直し、砂糖の採算が改善する
- 砂糖の赤字は解け、楽観とやや楽観の確率を引き上げる。ただし、国の財政が厳しく、見直しは数量の削減とセットになる可能性が高い。
- 交付対象数量が 55 万トンからさらに下がる
- 作付けの縮小が加速し、工場の統廃合が現実味を帯びる。やや悲観と悲観に確率を移す。
- 日甜・ホクレン・北海道糖業の間で工場の統合や共同運営が進む
- 固定費が下がり、砂糖の採算が上向く。一方、再編の費用と農協との調整が重く、効果が出るまで数年かかる。
- 営業利益が中期計画の目標である 30 億円に届く
- 砂糖の赤字が解けたと見て、中立の営業利益を引き上げる。ROE 5% の達成も視野に入る。
- 配当の目安である自己資本の 4% を引き下げる
- 資産を取り崩して返す状態を止めるため、財務の余裕は保たれる。短期の株主還元は減るが、ROE の改善余地は残る。
- 保有株の売却や不動産の処分が進み、特別利益が続く
- 自己資本と純現金が積み上がる。ただし、本業の稼ぎが変わらなければ、一度きりの利益として扱う。
見ておくもの
- 砂糖部門の営業損益(交付金の調整後)
- 国内産糖の交付対象数量と作付面積(農水省・ALIC)
- 糖価調整制度の調整金収支と制度見直しの議論
- 飼料部門の営業利益率
- 政策保有株の残高と売却益
- 配当総額と純利益の差、自社株買い
- 3 社間の工場統合・共同運営の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は、新しく投じる資金の稼ぎ(RONIC)と資本コストから置き、今の株価や過去の倍率は使っていない。経常的な純利益は 12 億円前後で、直近の 50 億円は保有株の売却益のため、10 年の出発点にしなかった。中立の営業利益は、過去の山の水準に名目の物価上昇を乗せた 30 億円弱とした。今の値段が筋書きの価値をはるかに上回ることは、そのまま結論にした。
純現金は 30 億円で、時価総額の 1 割に届かないため、余った現金は分けていない。帯広の旧工場跡地など土地の含み益は、金額を確かめられないので入れていない。工場用地のリースはほぼなく、新リース会計基準の影響は小さい。10 年後の数字は、今と同じ形で置いた。 保有株の含み益(評価差額金 約 130 億円・税後)は、事業の利益に入らないので、戻り方 0.5 を掛けて余り資産に足した。悲観側の床の資産も、同じ有報の貸借対照表の数字(投資有価証券 約 243 億円)から置き直した。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.4% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality +1.1%を足して8.6%。同じ領域のDM三井製糖(8.1%)より高いのは、てん菜の豊凶と交付金への依存が大きく、本業の稼ぎがほぼゼロだから。油脂の2社(8.5〜8.8%)に近い。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.60% → 8.40%。