結論
あじかんは、広島に本社を置く食品会社だ。巻寿司や惣菜に使う卵焼、干瓢、椎茸などの業務用食材が売上の9割を占める。残りがごぼう茶などのヘルスフードだ。
筆者の結論は適正だ。今の値段は、10年後の稼ぐ力と現金の戻りを割り引いた価値と近い。事業の質は悪くないが、利益が薄い。営業利益率は2%台で、鶏卵や干瓢の価格に左右される。資産の厚みはあるのに、稼ぎがそれに追いつかない。
2026年3月期は売上が514億円と過去最高だった。しかし営業利益は鶏卵価格の高騰と人件費・物流費の上昇で35%減り、13億円にとどまった。会社は今期、営業利益15億円を見込む。
強みは、巻寿司向け食材での取引関係と、ごぼう茶という育てうる柱だ。弱みは、原材料の値動きを価格へ移す力が弱いことだ。
分かれ目は、価格転嫁が定着するかと、ヘルスフードが利益の柱に育つかだ。
財務は堅く、倒産の心配はほとんどない。だが、自己資本が厚くても稼ぎが薄ければ、株主の取り分は増えない。筆者は、その点を最も重く見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、「資産は厚いが、稼ぐ力が弱い」会社だ。
帳簿の自己資本は183億円と、今の時価総額110億円を大きく上回る。しかし、本質価値は帳簿ではなく、株主に残る利益で決まる。純利益は11億円で、自己資本に対する稼ぎは6%台だ。資本コストの8%に届かず、ためた利益は額面ほどの値打ちで働いていない。
気になるのは、原材料を価格へ移す力が弱いことだ。鶏卵が上がれば利益が削られる。事業が10年後も存在することは確かだが、競争力を維持するのに再投資が欠かせず、株主に残る利益は薄い。
ごぼう茶は魅力的な芽だ。ただし、まだ会社全体の利益を動かす規模ではない。
安全域は、PBR0.6倍という資産の厚みにある。ただし、資産に価値が出るのは利益が戻る場合だ。
オーナーとして持ちたいかと問われれば、利益が3%台に乗る姿が見えるまでは、様子を見たい。値段は安全域の一部を与えるが、すべてではない。
何で稼ぐ会社か
事業は2本柱で、その他に運輸がある。2026年3月期の売上514億円のうち、業務用食品等が約9割、ヘルスフードが約7%を占める。
業務用食品等は、外食店や惣菜メーカー、スーパーのバックヤードに卸す。主力は卵焼、干瓢、椎茸の煮物といった巻寿司・惣菜向けの食材だ。鶏卵は国内から、干瓢や椎茸は中国などから調達する。水産加工品の輸入と輸出も手がけ、北米とシンガポールの売上が伸びている。
ヘルスフードは、焙煎したごぼうを使った「ごぼう茶」が柱だ。通信販売とドラッグストアで売る。機能性表示食品の新製品が好調で、ペットボトルのごぼう茶も伸びる。ごぼうを使った菓子「GOVOCE」も始めた。
利益の大半は業務用食品等が稼ぐ。ヘルスフードは広告費が重く、利益はまだ薄い。全社費用は年に18億円ほどあり、利益を押し下げている。業務用の顧客は外食・惣菜・小売と幅広く、特定の1社に偏らない点は強みだ。
生産は広島県内などの自社工場で行い、卵焼や煮物を製造する。冷蔵・冷凍の物流網を持ち、運輸の子会社が配送の一部を担う。従業員は千人規模の中堅食品会社だ。
優良さと弱いところ
優良とは言えない。堀、つまり他社がまねできない強みは、浅い。
強みは、巻寿司や惣菜向けの食材で培った取引関係と、調達の力だ。干瓢のような輸入原料では、産地との関係が資産になる。ごぼう茶は、ブランドが育てば高い利益率の柱になりうる。
弱みは、値段を自分で決めにくいことだ。外食や惣菜メーカーなど大口の顧客は、価格に厳しい。鶏卵の相場が上がっても、価格へ移すのに時間がかかる。
数字がそれを示す。営業利益率は過去12年、0.2%から4.0%の間で、2%台が普通だ。ROEは過去10年の中央値が6.2%で、資本コストに届かない年が多い。
財務は堅い。自己資本比率は67%で、純有利子負債は8億円だ。ただし堅さは稼ぎに結びついていない。
経営は本業の立て直しに力を入れ、第13次中計の第一の重点を「収益構造改革の完遂」に置いた。方向は正しいが、結果はまだ数字に表れ切っていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要は、外食と惣菜、巻寿司を中心とした業務用食材の消費で決まる。人口減で国内の量はゆるやかに減る。一方、外食のインバウンドと中食の拡大が下支えする。
最大の波は、原材料だ。鳥インフルエンザで鶏卵が不足した2022年の冬以降、相場は荒れた。2026年3月期は鶏卵の高騰が利益を削った。干瓢も産地の天候に左右される。
輸出は伸びる余地がある。北米とシンガポールで日本食の需要が増えており、同社は北米に現地法人を持つ。ただし、中国は水産加工品の輸入停止が続く。
ヘルスフードでは、ごぼう茶という独自の分野で競う。ただし健康食品の通販は広告費の競争が激しい。
競合は、業務用では大手の食品メーカーや中堅の惣菜メーカー、ヘルスフードでは健康食品の大手だ。同社は小さく、価格交渉力は強くない。10年の中立は、数量が緩やかに減り、価格が物価並みに上がる姿だ。
悲観の筋書きは、鳥インフルエンザの再来や中国の輸入停止の長期化、大口顧客の値下げ圧力が重なる姿だ。分かれ目は、原料の価格を製品の価格へ移せるかどうかにある。
資本政策と M&A
配当は株主資本配当率(DOE)を指標にする。第13次中期経営計画(2027年3月期が最終年度)で2.5%以上、長期ビジョンで2030年3月期に3.0%以上を目指す。2026年3月期の純利益に対する配当性向は4割台だ。
純有利子負債は8億円で、財務は堅い。大きな買収の実績は目立たず、設備と海外の営業体制への投資が中心だ。
株主優待は、3月末と9月末に自社製品を贈る。100株以上を半年以上持つ株主が対象で、年間の費用は1億円に届かない。差への影響は小さい。
親会社はなく、持ち合いの比重も大きくない。買収される可能性は小さくないが、利益が薄く、買う側にとって魅力は限られる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
PBRは0.6倍で、帳簿の資産の6割しか値が付いていない。工場と土地、在庫の価値を考えれば、今の値段には安全域がある。
営業利益率2.5%は、鶏卵高騰という一過性の悪化だ。価格転嫁の仕組みが定着すれば、3%台の利益率に戻る。最近3年の平均は3.3%で、直近はそれを下回っている。
ごぼう茶は広告費の先行で利益が薄いが、ブランドが育てば高い利益率の柱になる。海外の巻寿司需要も伸びる。北米の現地法人を通じた営業が広がり、日本食の人気が追い風になる。第13次中計の最終年度である今期は、営業利益15億円と、増益を見込む。1〜3月期の進捗も計画を上回り、中間期の経常利益予想は上方修正された。
配当も株主資本配当率3%の目標へ向けて増える。
資産の厚みと、広島に根を張った取引関係は、一度落ちても立て直す力になる。純有利子負債が8億円と小さく、利払いの負担もほとんどない。資本が厚い会社が、株主に報いる方針へ動けば、評価は大きく変わる。
慎重な見方
帳簿の資産の厚みは、稼ぐ力の裏づけにならない。自己資本利益率は6%台で、資本コストに届かない。ためた利益は、額面ほどの値打ちで働いていない。
営業利益率は過去12年、0.2〜4.0%の間にあり、安定して2%台に乗るのは難しい。鶏卵と干瓢の値動きを顧客へ移せず、人件費と物流費の上昇も重い。
ごぼう茶は広告費で伸びる売上に過ぎず、利益はまだ1億円程度。通販は広告の費用対効果が下がりやすい。中間期の経常利益予想が上方修正されても、その中身は為替差益や退職給付の戻しなど営業外の要因が大きい。
鳥インフルエンザや中国の輸入停止など、外部の衝撃に弱い構造は変わらない。10年の中立でも、物価を価格へ移し切れなければ、利益は薄いままだ。
帳簿の資産は、工場や在庫など、使い続けて初めて価値が出るものが多い。これらは稼ぐ力があって初めて価値になる。稼ぐ力が弱ければ、帳簿の額は絵に描いた餅だ。売ろうとすれば、時価は帳簿を大きく下回る。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強いと見て、確率を悲観側へ寄せた。資産の厚みは悲観の床として生かしたが、稼ぐ力の弱さは中立の倍率に反映した。
中立を4割、やや悲観を27%、悲観を7%に置いた。強気の根拠であるごぼう茶と価格転嫁の定着は、やや楽観の20%で拾った。直近の営業利益の落ち込みは、鶏卵高が一時的か構造的かで評価が分かれ、確率の幅を広めに取った。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,616 円196 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 730 円55 億円)。 今の値に割り戻すと 1,743 円130 億円、今との差 +18.5%、 期待の年率 +8.6%(資本コスト 7.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 5,610 円420 億円 | 1,042 円78 億円 | +352.2% | +16.3% | 399 円30 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,952 円296 億円 | 908 円68 億円 | +230.4% | +12.7% | 972 円73 億円 |
| 中立 | 40% | 2,964 円222 億円 | 802 円60 億円 | +156.0% | +9.9% | 1,506 円113 億円 |
| やや悲観 | 27% | 943 円71 億円 | 561 円42 億円 | +2.3% | +0.2% | 406 円30 億円 |
| 悲観 | 7% | 695 円52 億円 | 200 円15 億円 | −39.2% | −4.8% | 63 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,616 円196 億円 | 730 円55 億円 | +127.5% | +8.6% | 3,346 円250 億円 |
今の株価時価総額 1,471 円110 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 6% ごぼう茶が柱に育ち、利益率が4%台に乗る 利益 29 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 5,610 円420 億円
ごぼう茶が通販とドラッグストアで定着し、ヘルスフードの数量は2倍になる。広告費の重さは売上の拡大で薄まり、利益率は8%台まで改善する。
業務用では、卵焼や巻寿司向けの惣菜食材で付加価値の高い自社製品が増え、数量は5%増える。価格は物価を上回る1.40倍で、利益率は7%に乗る。
営業利益率は全体で4%台に達し、過去12年の山を超える。これには、製品の組み合わせの変化という裏づけが要る。海外は北米とシンガポールが伸び、巻寿司の人気が世界に広がる。会社の長期ビジョンが描く姿に近いが、物価を超える価格上昇を10年続けるのは難しい。
- 業務用食品等:数量 100(出荷量(千トン))× 価格 7.00(1千トン当たり平均単価(億円))→ 売上 701 億円・営業利益 49 億円。業務用食品等
- ヘルスフード:数量 740(出荷数量(万個))× 価格 0.14(1万個当たり平均単価(億円))→ 売上 104 億円・営業利益 8 億円。ヘルスフード
倍率:事業の純利益 29 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍。全体の PER 14.33 倍、時価総額 420 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ヘルスフードが倍増し、業務用でも付加価値の高い製品が増える姿。営業利益率は過去12年の山4.0%を少し上回る。10年続く保証はなく、確率は低い。
やや楽観 20% 業務用が値上げを定着させ、ヘルスフードが伸びる 利益 23 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 3,952 円296 億円
業務用の数量は横ばい、価格は物価並みに上がる。卵や干瓢の値動きを価格に反映する仕組みが定着し、利益率は6.8%に戻る。
ヘルスフードの数量は1.6倍に伸び、利益率は7%に乗る。ごぼう茶の機能性表示と通販の顧客基盤が、ドラッグストアでの定着を後押しする。
営業利益率は全体で3.6%と、最近の山に近い水準を保つ。原料高の局面でも、顧客と価格を見直す仕組みが機能し、利益の振れが小さくなる。純利益は20億円を超え、自己資本の厚みを生かした還元が増え、配当も株主資本配当率の目標3%を満たす。第13次中計の収益構造改革が定着した姿で、筆者は十分にありうると見る。
- 業務用食品等:数量 95.4(出荷量(千トン))× 価格 6.80(1千トン当たり平均単価(億円))→ 売上 649 億円・営業利益 44 億円。業務用食品等
- ヘルスフード:数量 592(出荷数量(万個))× 価格 0.13(1万個当たり平均単価(億円))→ 売上 79 億円・営業利益 6 億円。ヘルスフード
倍率:事業の純利益 23 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.0% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍。全体の PER 13.09 倍、時価総額 296 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:第13次中計の収益構造改革が実を結び、鶏卵価格の変動を価格へ転嫁できるようになる姿。直近の営業利益率2.5%は、最近3年の3.3%まで戻る。
中立 40% 数量は緩やかに減り、価格は物価並みに上がる 利益 17 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 2,964 円222 億円
国内の業務用食品は人口減で数量が3%ほど減る。輸出と新しい製品がそれを補い、全体では横ばいに近い。価格は物価並みの1.34倍に上がる。
ヘルスフードは1.3倍に伸びる。ただし広告費が重く、利益率は5%にとどまる。
本社費などの全社費用は、削減の実績が乏しいため物価並みに増える。営業利益率は2.8%と、過去12年の中央値(2%)をやや上回る程度だ。減価償却は取得時の値段のままで、年8億円前後(推定)が新しい工場の分だけ増え、10年後に10億円台前半になる。更新の投資は建築費の上昇で膨らむ。
筆者は、これが最も確からしいと見る。純利益は17億円ほどにとどまり、株主資本に対する稼ぎは6%台のままだ。
- 業務用食品等:数量 92.5(出荷量(千トン))× 価格 6.70(1千トン当たり平均単価(億円))→ 売上 620 億円・営業利益 40 億円。業務用食品等
- ヘルスフード:数量 481(出荷数量(万個))× 価格 0.13(1万個当たり平均単価(億円))→ 売上 64 億円・営業利益 3 億円。ヘルスフード
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.5% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 222 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:人口減で国内の業務用の数量は緩やかに減る一方、輸出とヘルスフードが補う。営業利益率は2%台後半の水準に戻る。中計の目標に届かない年も多く、中立は今の力が続く姿とする。
やや悲観 27% 卵と人件費の高騰を価格へ移せず、利益率が1%台に沈む 利益 8 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 943 円71 億円
鶏卵や干瓢の値上がり、人件費と物流費の高騰を、顧客である外食や惣菜メーカーに価格として十分に移せない。業務用の数量は6%減り、価格は物価に届かない1.30倍にとどまる。
ヘルスフードは広告費をかけても伸びず、横ばいに終わる。利益率は2%に落ちる。
営業利益率は1%台に沈み、純利益は8億円ほどにとどまる。配当は株主資本配当率の目標を下回る水準に抑えられる。国内の外食・惣菜の顧客は、値上げを受け入れる余地が小さく、利益率の回復は遠のく。人件費と物流費の上昇は止まらず、全社費用は物価並みに増え続ける。
- 業務用食品等:数量 89.7(出荷量(千トン))× 価格 6.55(1千トン当たり平均単価(億円))→ 売上 588 億円・営業利益 32 億円。業務用食品等
- ヘルスフード:数量 370(出荷数量(万個))× 価格 0.13(1万個当たり平均単価(億円))→ 売上 46 億円・営業利益 1 億円。ヘルスフード
倍率:事業のROEは2%台。PERの上限は12.9倍だが、利益が薄く変動も大きいので約66%の8.5倍に置いた。
確率:直近の2026年3月期は、鶏卵高と人件費・物流費の上昇で営業利益が35%減った。この状態が構造的に続く筋書きは軽くない。営業利益率は2023年3月期の0.2%に近づく。
悲観 7% 国内の需要と調達が崩れ、赤字になる 利益 −8 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 695 円52 億円
卵の調達が不安定になり、外食・惣菜向けの数量が2割減る。価格も1.22倍と物価に届かない。中国向けの輸出停止が続き、海外も伸びない。
業務用の利益率は3%に落ち、ヘルスフードも赤字に沈む。売上の減少に加え、鶏卵の仕入価格の高止まりが粗利を削る。全社費用はほとんど減らせず、営業損益は赤字になる。
工場や設備の稼働が落ち、人員の整理や設備の売却を迫られる。減損が出て自己資本も目減りし、配当は大きく減る。評価は稼ぐ力ではなく、持っている資産で決まる。配当は大きく減り、株主資本配当率の目標は取り下げられる。この筋書きは確率が低いが、起きたときの傷は深い。
- 業務用食品等:数量 76.3(出荷量(千トン))× 価格 6.10(1千トン当たり平均単価(億円))→ 売上 465 億円・営業利益 14 億円。業務用食品等
- ヘルスフード:数量 333(出荷数量(万個))× 価格 0.12(1万個当たり平均単価(億円))→ 売上 40 億円・営業利益 0 億円。ヘルスフード
倍率:事業が赤字に沈み、稼ぐ力では値が付かない。工場・在庫・売掛金など売れる資産の価値まで下がる。内訳は floor_assets_why に書いた。
確率:鳥インフルエンザの再来で卵の調達が滞る、中国などの輸出が止まる、大口顧客の内製化が進むなどが重なる構造的な負けの姿。業務用の薄い利益率では、売上の2割減が赤字に直結する。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
業務用食品等
卵焼・干瓢・椎茸など巻寿司・惣菜向けのチルド食材と、水産加工品などの輸入・輸出。運輸などその他を含む。
| 数量出荷量(千トン) | 価格1千トン当たり平均単価(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 95.4 | 5.00 | 477 | 30 |
| 10 年後 中立 | 92.5 | 6.70 | 620 | 40 |
取り方:開示は無い。売上514億円のうち、中間期の構成(業務用食品等92%、ヘルスフード7%、その他1%)で業務用食品等とその他を477億円とした。平均単価を1千トン当たり5億円と仮定して約9.5万トン(推定)。営業利益はセグメント利益の推定29.5億円で、全社費用は調整に入れた。
ヘルスフード
焙煎ごぼう茶(機能性表示食品を含む)、ペットボトルごぼう茶、ごぼう菓子の通販・市販。
| 数量出荷数量(万個) | 価格1万個当たり平均単価(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 370 | 0.10 | 37 | 1 |
| 10 年後 中立 | 481 | 0.13 | 64 | 3 |
取り方:開示は無い。中間期の売上17.3億円から年約37億円(前年比で1割強増)とし、1個約千円と仮定して約370万個(推定)。広告費が重く、セグメント利益は薄い。
リスクと懸念
鶏卵・干瓢の価格変動
主要原料の相場が利益を大きく動かす。2026年3月期は鶏卵の高騰で営業利益が35%減った。価格転嫁が遅れれば、利益率は1%台に沈む。
鳥インフルエンザ
大規模な発生で鶏卵が不足する年がある。供給制限は販売の抑制につながり、利益に響く。
中国向け輸出の停止
中国による水産加工品の輸入停止が続いている。輸出の一部が止まったままで、再開の見通しは不透明だ。
人件費・物流費の上昇
人手不足による賃金の上昇と、物流費の上昇が続く。本社費を含む全社費用は年18億円あり、削減の実績に乏しい。
ヘルスフードの広告費
ごぼう茶は広告費の先行で利益が薄い。通販の費用対効果が下がれば、芽が育たないまま費用だけが残る。
今後の分かれ目
- 営業利益率が2期続けて3%を超える
- 価格転嫁が定着したと判断し、やや楽観の確率を上げる。
- 鶏卵の相場が高止まりし、営業利益率が2%を割る
- やや悲観の確率を上げ、中立の倍率を下げる。
- ヘルスフードの営業利益が5億円を超える
- 柱に育つ兆しとみて、楽観寄りに確率を動かす。
- 株主資本配当率の目標を3%超に引き上げる
- 資産の厚みが株主に届く合図。倍率の上限に近づける。
- 中国向けの輸入停止が解除される
- 輸出の数量が戻る。業務用の数量を上方に見直す。
見ておくもの
- 営業利益率(四半期)
- 鶏卵・干瓢の調達価格
- ヘルスフードの売上と利益
- 北米・シンガポールの輸出
- 株主資本配当率
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。ROEが資本コスト以下なので、PERの上限は1÷k=12.9倍で、その6〜8割に置いた。今の株価やPBRには寄せていない。数量は人口減の国内業務用の緩やかな減少と輸出・ヘルスフードの増加、価格は物価並みの1.34倍を基本とした。営業利益率は過去12年の山(4.0%)以下。セグメントの数量・単価は開示がなく推定。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→14.33 倍・やや楽観 PER 10.5→13.09 倍・中立 PER 10→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。