結論
不二製油は、チョコレートの原料になる油脂を世界で作る食品素材メーカーだ。チョコレート用油脂も業務用チョコレートも日本一で、世界でも上位三社に入る。筆者の結論は、今の値段は先の回復を先取りしており、割高というものだ。
稼ぎを支えているのは植物性油脂である。2026年3月期は、全社の事業利益の9割超をここが出した。ただ、その追い風の正体はカカオの高騰だ。チョコレート会社が高いカカオバターを嫌って代用の油脂へ流れた。カカオが落ち着けば、一部は元に戻る。この利益を、そのまま続くものとは置けない。
足を引っ張るのは米国のブラマーだ。2019年に848億円で買ったが、需要の落ち込みで赤字が続き、減損も出た。中期計画は事業利益450億円を掲げる。しかし前の計画も、財務目標を外している。
財務は軽くない。純有利子負債は自己資本の0.9倍ある。金利が上がると、利払いがさらに利益を削る。
10年後の中立の姿は、売上1兆1千億円台、ROE 8〜9%の成熟した素材メーカーだ。資本コストをわずかに上回るだけで、高い倍率は払えない。伊藤忠商事が4割強を持つ安定株主であることは、下値の支えになる。それでも本質価値は、今の時価総額を大きく下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「10年後にこの事業を持ち続けたいか」を問う。油脂の設計力という堀は本物で、世界にも需要がある。事業そのものは、10年後も存在する。
次に、株主のものになる利益、つまりオーナー利益を見る。この会社は工場と運転資金に大きな投資を要する。稼いだ利益の多くが再投資に回り、配当に回せる分は限られる。ROEが資本コストを大きく超えない限り、成長しても価値は増えない。
経営の資本配分は、評価を下げる材料だ。ブラマーの買収は、10年足らずで減損に追い込まれた。中計が資本コストを軸にした投資管理を掲げたのは前向きだが、成果はこれから見る段階だ。
いちばん引っかかるのは安全域である。油脂の稼ぎはカカオの異常な高値の恩恵を含み、その山の利益が続くと置くのは危うい。今の値段は、その利益が高止まりするか、ブラマーが急に黒字化することを織り込んでいる。
筆者は、この会社を「いい事業だが、今の値段では買わない会社」と位置づける。値段が下がれば、見方は変わる。
何で稼ぐ会社か
不二製油は、パーム油・シア脂・ひまわり油・大豆・カカオ豆などの原料を加工し、食品メーカーに素材として売る会社だ。消費者向けの商品はほとんど持たない。顧客はチョコレート会社、製パン・製菓会社、外食・給食である。
いちばん大きいのは業務用チョコレートで、売上の約48%を占める。ただ利益はごくわずかだ。次の植物性油脂は売上の約35%だが、2026年3月期は事業利益の9割超を稼いだ。チョコレート用油脂(CBE)は、カカオバターと同じ口どけを持つように設計した油脂で、チョコレートの原料費を下げるために使われる。
乳化・発酵素材は売上の約13%で、クリームやホイップ、チーズ風味の素材などを作る。大豆加工素材は約4%で、大豆たん白や豆乳素材を扱うが、赤字が続いている。
稼ぎ方の核は、原料相場に連動して値段を決める素材商売だ。パームやカカオの相場が上がれば売値も上がり、売上は膨らむ。利益は、値上がりを転嫁できる速さと、配合の技術で付ける加工賃で決まる。
米国のブラマーは、チョコレートの大口の受託と原料供給を担う。日本、欧州、豪州、ブラジルにも工場を持つ。生産拠点は世界に広がり、親会社の伊藤忠商事とは原料調達と販売で取引がある。
優良さと弱いところ
筆者がこの会社の強みと見るのは、油脂の設計力だ。カカオバターと同じ温度で溶け、同じ割れ方をする油脂を、パーム・シア・ひまわりなどから作り分ける。この技術は、食品メーカーが長い試作と品質認定を経て採用する。一度採られると、簡単には他社に替えられない。ここが堀、つまり他社がまねしにくい強みである。
原料の調達にも力がある。パーム油の追跡可能な調達(TTP)の比率は95%以上を保っており、環境対応を重んじる大手顧客に選ばれる理由になっている。
弱いのは、値段を自分で決められないことだ。売値は原料相場に連動し、利益率は上下する。営業利益率は直近10年で1.5%から6.7%まで動いた。ROEが10%を超えた年は、2020年3月期の1度だけである。
資本の使い方にも傷がある。ブラマーに848億円を投じたが、事業利益は赤字になり、減損も出た。買収の相手を絞り、投資を資本コストで管理する仕組みに改めたのは、その反省だろう。
全体の優良度は「普通」だ。堀は本物だが、利益の安定性と資本効率が、優良企業と呼ぶには足りない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業界の追い風と逆風は、どちらもカカオが握っている。ICCOの推計では、2023/24年度のカカオ生産は前年度比14.2%減だった。カカオバターが高騰し、チョコレート会社は配合を見直して、代用の油脂を増やした。不二製油の油脂が過去最高益になった背景だ。
ただ、最近はカカオ価格が落ち着き、一部のメーカーがカカオバターに戻る動きもある。会社自身も、油脂の追い風が一部弱まると見ている。筆者は、この利益を山と位置づける。
競争の形は寡占だ。チョコレート用油脂では、スウェーデンのAAKがシア脂を軸に強い。ブンゲやウィルマーも大手である。業務用チョコレートでは、バリーカレボーやカーギルが並ぶ。日本国内では、食用油の卸価格が原料高で6四半期続けて上がった。業種全体で値上げは通りやすい。
国内の食品需要は人口減で細る。一方、世界のチョコレートと菓子の需要は新興国を中心にゆっくり伸びる。不二製油は、日本以外の拠点を増やして、そこを取りにいく。
もう一つの変数は、植物性たん白など代替食品だ。需要が立ち上がる時期は読みにくい。大豆加工は何年も赤字が続き、会社は2027年度の黒字化を目指して事業を作り直している。
この領域は、原料の値動きを価格に移せるかどうかで、利益が決まる。10年の中立では、数量は世界の需要に合わせて少し伸び、価格は物価並みに上がると置く。
資本政策と M&A
還元の方針は、配当性向30〜40%だ。自社株買いは計画に書かれていない。政策保有株の縮小は進んでおり、上場株は10銘柄、帳簿で約32億円と小さい。含み益が資産価値を押し上げる余地はほとんどない。
M&Aは、ブラマーの失敗が重い。2019年に848億円で買い、2024年にシカゴ工場の閉鎖を決め、2026年4月に41億円余の減損を出した。一方、2025年には伊藤忠商事傘下の仏プロバンス・ユイルを取得し、欧州の油脂を厚くした。
中期計画「United for Growth 2027」は、2027年度に事業利益450億円・ROE10%以上・純有利子負債1,800億円を掲げる。運転資金の圧縮で借金を減らす道筋だ。
伊藤忠商事が、直接と合算で43.8%を持つ。完全子会社化の報道は確認できなかった。ただ、親会社が4割強を持つ会社は、再編の対象になりやすい。TOBが出た場合、価格は市場価格に一定の上乗せがつくだろう。それが本質価値を超えるかは、別の話である。
リースは、IFRSの適用で最初から貸借対照表に載っている。そのため、新リース会計基準による数字の形の変化は小さい。
株主優待は、100株以上で1千円相当、200株以上で3千円相当、1,000株以上で4.5千円相当の自社関連商品。会社は優待の費用を開示していないため、株主 約2万人(自社商品の原価と送料)から年3億円と推定した。優待は株主が受け取る現物の還元なので、10年の還元に年額×10年を、中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5の係数で足した(費用は販管費として利益から引き済みで、自己資本の流れには入れない)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
不二製油は、カカオ不足という世界的な変化の受益者だ。カカオ豆の供給は気候と病害で細り、価格は長く高止まりする。チョコレート会社は、カカオバターの一部を代用油脂に替える動きを止められない。代用油脂の設計で世界上位の不二製油は、数量も加工賃も伸ばせる。
ブラマーの構造改革は、足を引っ張った最大の要因を取り除く。シカゴ工場を閉じ、コンパウンド(カカオバターを一部油脂に替えたチョコ)に軸足を移せば、固定費が下がり、赤字から抜ける。キャンベルフォード工場の新ラインは2026年度に動く。
財務も改善する。中計は、運転資金を圧縮して純有利子負債を1,800億円へ下げる計画だ。借金が減れば、金利上昇の影響も和らぐ。2027年3月期の第1四半期は事業利益が95億円を超え、計画の375億円に向けて順調だ。
3年で事業利益450億円を超えれば、ROEは10%を超える。その段階の倍率は、資本コストを大きく上回る水準が当たり前になる。さらに親会社の伊藤忠が、より高い価格でTOBに動く可能性もある。
慎重な見方
最高益の中身が、そもそも質が低い。油脂の事業利益334億円はカカオ高が生んだもので、カカオが落ち着けば薄れる。実際に、一部のメーカーはカカオバターへ戻り始めた。平常の利益は、今の7〜8割しかない恐れがある。
ブラマーは構造的な問題を抱える。米国のチョコレート需要は弱く、販売数量は減った。シカゴ工場の閉鎖、減損、繰延税金資産の取り崩しと、手当てを重ねても赤字は止まらなかった。コンパウンドへの転換は、競合も同じ方向に動くので、競争が厳しくなる。
前の中期計画の財務目標は、未達だった。今回の450億円と10%のROEも、達成の確かさは低い。過去10年でROEが10%を超えたのは、一度だけである。
純有利子負債は2,216億円で、借り換えのたびに金利が上がる。利払いだけで、純利益から数十億円が消える。
ここまで悪い材料が重なっていながら、今の時価総額は、会社計画の利益に対して約20倍の水準だ。計画どおりにいっても、割安にはならない。
どちらに重みを置いたか
強いのは、慎重な見方だ。油脂の追い風が山であること、ブラマーの回復に時間がかかること、借金が重いことは、いずれも数字で裏づけられる。強気の見方が頼るのは、会社の計画と、これからの構造改革の成果だけである。
このため、確率は中立より下の筋書きに寄せた。10年で、やや悲観と悲観の合計を3割強に置いた。楽観とやや楽観は合わせて3割とした。
ただし、油脂の設計力は本物で、カカオの不足が長引く可能性も無視できない。悲観を厚くしすぎることはしなかった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,411 円4,653 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,127 円969 億円)。 今の値に割り戻すと 3,274 円2,815 億円、今との差 −27.2%、 期待の年率 +3.8%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 11,620 円9,991 億円 | 1,785 円1,535 億円 | +198.0% | +11.5% | 1,341 円1,153 億円 |
| やや楽観 | 22% | 8,055 円6,926 億円 | 1,461 円1,256 億円 | +111.6% | +7.8% | 2,094 円1,800 億円 |
| 中立 | 36% | 5,296 円4,554 億円 | 1,193 円1,026 億円 | +44.3% | +3.7% | 2,336 円2,009 億円 |
| やや悲観 | 22% | 2,015 円1,733 億円 | 784 円675 億円 | −37.8% | −4.6% | 616 円530 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,272 円1,094 億円 | 250 円215 億円 | −66.2% | −10.3% | 152 円131 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,411 円4,653 億円 | 1,127 円969 億円 | +45.4% | +3.8% | 6,539 円5,622 億円 |
今の株価時価総額 4,498 円3,867 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 世界のチョコレート需要を代用油脂で取りきり、強い素材会社になる10年 利益 612 億円 · PER 15.8 倍 · 株価時価総額 11,620 円9,991 億円
新興国のチョコレート・菓子需要が伸び、カカオ不足は構造的に続く。不二製油は代用油脂の設計力を武器に、世界シェアを広げる。油脂の数量は10年で3割近く増え、事業利益率は11%台を保つ。ブラマーはコンパウンド中心の事業に生まれ変わり、業務用チョコレート全体の利益率は6%に届く。乳化・発酵素材は中国と東南アジアで伸び、大豆加工も植物性たん白の需要を取り込み黒字になる。全社の事業利益は1,000億円に迫り、ROEは12%台、純有利子負債は大きく減る。配当性向は40%に近づき、自社株買いも検討できるようになる。伊藤忠の持分は保たれ、ガバナンスも安定する。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年3億円×10年×1.0=30億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 植物性油脂:数量 78.0(製造・販売量(万トン))× 価格 61(1トンあたり卸価格(万円))→ 売上 4,722 億円・営業利益 543 億円。数量1.30倍・利益率11.5%
- 業務用チョコレート:数量 72.0(製造・販売量(万トン))× 価格 87(1トンあたり卸価格(万円))→ 売上 6,278 億円・営業利益 377 億円。数量1.26倍・利益率6.0%
- 乳化・発酵素材:数量 19.0(製造・販売量(万トン))× 価格 81(1トンあたり卸価格(万円))→ 売上 1,530 億円・営業利益 76 億円。数量1.17倍・利益率5.0%
- 大豆加工素材:数量 9.5(製造・販売量(万トン))× 価格 54(1トンあたり卸価格(万円))→ 売上 510 億円・営業利益 20 億円。数量1.16倍・利益率4.0%
倍率:事業の純利益 612 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.8 倍。全体の PER 15.78 倍、時価総額 9,657 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:油脂の設計力という堀が10年先も広がり、ブラマーの失敗が過去のものになる理想の筋書き。そろう条件が多く、10%にとどめた。
やや楽観 22% 油脂が安定し、業務用チョコレートが利益を出す10年 利益 465 億円 · PER 14.5 倍 · 株価時価総額 8,055 円6,926 億円
カカオ価格は平常に戻るが、代用油脂の採用は定着して数量は伸びる。油脂の事業利益率は10%台で安定する。ブラマーは構造改革の成果で黒字となり、日本・欧州・豪州・ブラジルの拡張も実を結んで、業務用チョコレート全体の利益率は5%近くになる。乳化・発酵素材は4%台、大豆加工は3%の黒字となる。全社の事業利益は800億円近く、純利益は460億円ほどに乗る。ROEは10%台半ばで、借金は減り、金利負担も軽くなる。配当性向は35〜40%で、資本コストを超える利益が出るため、成熟した素材会社として市場に評価される。会社の中計が少し遅れて実現した姿である。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年3億円×10年×1.0=30億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 植物性油脂:数量 73.0(製造・販売量(万トン))× 価格 61(1トンあたり卸価格(万円))→ 売上 4,420 億円・営業利益 451 億円。数量1.22倍・利益率10.2%
- 業務用チョコレート:数量 67.5(製造・販売量(万トン))× 価格 87(1トンあたり卸価格(万円))→ 売上 5,886 億円・営業利益 283 億円。数量1.18倍・利益率4.8%
- 乳化・発酵素材:数量 18.0(製造・販売量(万トン))× 価格 81(1トンあたり卸価格(万円))→ 売上 1,450 億円・営業利益 61 億円。数量1.11倍・利益率4.2%
- 大豆加工素材:数量 8.8(製造・販売量(万トン))× 価格 54(1トンあたり卸価格(万円))→ 売上 473 億円・営業利益 14 億円。数量1.07倍・利益率3.0%
倍率:事業の純利益 465 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.5 倍。全体の PER 14.51 倍、時価総額 6,747 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の中計が、少し遅れて実現する筋書き。堀が保たれブラマーが改善することは十分ありうる。ただ、より堅い中立に確率を寄せ、22%とした。
中立 36% 成熟した素材メーカーとして、ROE 8〜9%に落ち着く10年 利益 344 億円 · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 5,296 円4,554 億円
国内の食品需要は人口減で細る一方、世界のチョコレート需要はゆっくり伸びる。油脂の数量は10年で15%ほど増え、利益率は9%台に下がる。カカオ価格は平常に戻り、追い風は消える。ブラマーはコンパウンドへの転換で小さな黒字にとどまり、業務用チョコレート全体の利益率は4%近くだ。乳化・発酵素材は3%台、大豆加工は2%の黒字となる。全社の事業利益は600億円台で、純利益は340億円ほどになる。配当性向は4割弱で、ROEは8%台後半にとどまる。資本コストをわずかに上回るだけの、可もなく不可もない素材会社である。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年3億円×10年×1.0=30億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 植物性油脂:数量 69.0(製造・販売量(万トン))× 価格 61(1トンあたり卸価格(万円))→ 売上 4,177 億円・営業利益 376 億円。数量1.15倍・利益率9.0%
- 業務用チョコレート:数量 63.0(製造・販売量(万トン))× 価格 87(1トンあたり卸価格(万円))→ 売上 5,493 億円・営業利益 209 億円。数量1.11倍・利益率3.8%
- 乳化・発酵素材:数量 16.8(製造・販売量(万トン))× 価格 81(1トンあたり卸価格(万円))→ 売上 1,353 億円・営業利益 47 億円。数量1.04倍・利益率3.5%
- 大豆加工素材:数量 8.2(製造・販売量(万トン))× 価格 54(1トンあたり卸価格(万円))→ 売上 441 億円・営業利益 9 億円。数量1.00倍・利益率2.0%
倍率:ROE8.5%・k8%・残る割合0.5でRONIC=8.5%、正当化PER上限13.03倍の約9割(13.03倍)を採用。中立は利益率が5%台に戻る姿だが、借金と原料の振れを見て、1÷kを下限に上限の9割に置いた。
確率:油脂の追い風が薄れ、ブラマーが小さな黒字にとどまる、最もありそうな姿。世界の需要の伸びと国内の縮小が打ち消し合う。確率は36%とした。
やや悲観 22% 競争激化で稼ぐ力が細り、薄利の素材会社になる10年 利益 163 億円 · PER 10.6 倍 · 株価時価総額 2,015 円1,733 億円
カカオ価格が平常に戻り、代用油脂の需要が減る。AAKやウィルマーなど大手との競争で、加工賃は下がる。油脂の利益率は7%に落ちる。ブラマーはコンパウンドでも競合に押され、利益は小さいまま、業務用チョコレート全体の利益率は2%にとどまる。乳化・発酵素材と大豆加工は、ほぼ収支ゼロだ。全社の事業利益は360億円ほどで、足元の水準より低い。純利益は160億円程度で、ROEは4〜5%と資本コストを下回る。配当性向は4割弱だが、金額は小さい。借金の削減は遅れ、金利負担が重しになる。伊藤忠との関係は続くが、会社は再編を迫られる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年3億円×10年×0.8=22.5億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 植物性油脂:数量 64.0(製造・販売量(万トン))× 価格 59(1トンあたり卸価格(万円))→ 売上 3,759 億円・営業利益 263 億円。数量1.07倍・利益率7.0%
- 業務用チョコレート:数量 58.0(製造・販売量(万トン))× 価格 85(1トンあたり卸価格(万円))→ 売上 4,906 億円・営業利益 98 億円。数量1.02倍・利益率2.0%
- 乳化・発酵素材:数量 16.2(製造・販売量(万トン))× 価格 78(1トンあたり卸価格(万円))→ 売上 1,266 億円・営業利益 25 億円。数量1.00倍・利益率2.0%
- 大豆加工素材:数量 7.5(製造・販売量(万トン))× 価格 52(1トンあたり卸価格(万円))→ 売上 391 億円・営業利益 0 億円。数量0.91倍・利益率0.0%
倍率:ROE4.7%がk8%以下なので、PERの上限は1÷k=11.8倍(ためた利益は額面未満の価値)。その約8割(10.63倍)を採用。稼ぐ力(純利益÷k)の85%。原料高と減損が重なる筋書き。
確率:油脂の競争が強まり、ブラマーも立ち直れない、構造的に負ける手前の筋書き。2つの課題のどちらかが残る確率は高いと見て22%とした。
悲観 10% 構造的に負け、優良ではなくなる10年 利益 −63 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,272 円1,094 億円
油脂の需要は代用品の競争で減り、世界の大手に押されて加工賃が下がる。数量は今より1割減り、利益率も5%に落ちる。ブラマーは大口顧客を失い、工場の再編と減損を重ねるが、赤字は止まらない。乳化・発酵素材と大豆加工も、利益を出せずに終わる。全社の事業利益は100億円を下回り、純利益は赤字になる。自己資本は減損で痩せ、借金の返済も難しくなる。配当は大きく下げ、資産の売却と手元の資金で一部を維持するため、還元の合計は期間の純利益を上回る。伊藤忠による支援か、事業の切り売りが話題になる。優良な素材メーカーとは呼べない姿になる。株価は自己資本の0.5倍で測る。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年3億円×10年×0.5=15億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 植物性油脂:数量 56.0(製造・販売量(万トン))× 価格 54(1トンあたり卸価格(万円))→ 売上 3,036 億円・営業利益 152 億円。数量0.93倍・利益率5.0%
- 業務用チョコレート:数量 48.0(製造・販売量(万トン))× 価格 78(1トンあたり卸価格(万円))→ 売上 3,748 億円・営業利益 −37 億円。数量0.84倍・利益率-1.0%
- 乳化・発酵素材:数量 14.0(製造・販売量(万トン))× 価格 72(1トンあたり卸価格(万円))→ 売上 1,010 億円・営業利益 5 億円。数量0.86倍・利益率0.5%
- 大豆加工素材:数量 6.0(製造・販売量(万トン))× 価格 48(1トンあたり卸価格(万円))→ 売上 289 億円・営業利益 −9 億円。数量0.73倍・利益率-3.0%
倍率:EV(時価総額 + 純有利子負債)でも見ると、EV ÷ 営業利益は 47 倍と高く映るが、谷の利益が極端に薄いためで、床は自己資本で測る。谷の年なので自己資本で測る。純利益は赤字(-63億円)で、利益では測れない。自己資本は2,187億円で、PBR 0.5 倍(構造的な負け・谷の床 0.35 倍以上)。減損で自己資本が痩せた後の姿として置いた。
確率:構造的な負けの確率を10%と置いた。ブラマーの失敗と油脂の競争が同時に起きる必要があり、起こりにくいが、起これば深い。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
植物性油脂
チョコレート用油脂(CBE)・フライ・製菓用の特殊油脂。パーム、シア、ひまわり油などを設計して売る。
| 数量製造・販売量(万トン) | 価格1トンあたり卸価格(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.0 | 45 | 2,711 | 334 |
| 10 年後 中立 | 69.0 | 61 | 4,177 | 376 |
取り方:売上2,711億円と事業利益334億円は開示。数量は開示がないため、1トンあたり約45万円(CBE・特殊油脂とパーム系を混ぜた推定)で割って約60万トンとした。価格は名目で、パーム・カカオの相場に連動する。中立は物価並み(3年1.09倍・10年1.34倍)に置いた。利益率12%台は、カカオ高で代用油脂が選ばれた山の水準で、中立では10年で9%台に下げる。数量は実質で、世界のチョコレート・菓子の需要に合わせ10年1.15倍とした。
業務用チョコレート
ブラマー(米国)、日本、欧州、豪州、ブラジルなどで作る、製菓・製パン向けの業務用チョコレートとコンパウンド。
| 数量製造・販売量(万トン) | 価格1トンあたり卸価格(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 57.0 | 65 | 3,709 | 24 |
| 10 年後 中立 | 63.0 | 87 | 5,493 | 209 |
取り方:売上3,709億円と事業利益24億円は開示(ブラマーは売上1,849億円・事業利益は114億円の赤字、ほかは約116億円の黒字と報じられた)。数量は1トンあたり約65万円(カカオ高を含む)の推定で約57万トン。価格はカカオ相場に連動し、中立は物価並み。数量は米国が弱く、日本・欧州・豪州・ブラジルが伸びるとして、10年1.1倍。
乳化・発酵素材
クリーム、ホイップ、チーズ風味素材など。日本と中国が中心。
| 数量製造・販売量(万トン) | 価格1トンあたり卸価格(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 16.2 | 60 | 974 | 11 |
| 10 年後 中立 | 16.8 | 81 | 1,353 | 47 |
取り方:売上974億円と事業利益11億円は開示。数量は1トンあたり約60万円の推定で約16万トン。価格は名目で物価並み。数量は日本の人口減で細る分を、中国のクリーム拡大が補い、10年1.04倍。
大豆加工素材
大豆たん白、豆乳素材、おから由来の新素材。国内の食品向けが中心で、植物性たん白を育てる事業。
| 数量製造・販売量(万トン) | 価格1トンあたり卸価格(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.2 | 40 | 329 | −9 |
| 10 年後 中立 | 8.2 | 54 | 441 | 9 |
取り方:売上329億円と事業利益9億円の赤字は開示。数量は1トンあたり約40万円の推定で約8万トン。価格は物価並み。数量は国内の再構築でほぼ横ばい(10年1.0倍)とし、2027年度の黒字化を目指す計画は、中立では3年遅れで効くと置いた。
リスクと懸念
カカオ価格の反転で油脂の稼ぎが減る
油脂の事業利益334億円は、カカオ高で代用油脂が選ばれた分を含む。カカオ価格が落ちれば、一部のメーカーがカカオバターに戻る。数量と加工賃が同時に減るため、利益は大きく動く。この利益を平常の水準と見ると、評価を誤る。会社自身も、油脂の追い風が一部弱まると説明している。
ブラマーの赤字が続く
事業利益は114億円の赤字で、2026年4月に41億円余の減損も出た。シカゴ工場の閉鎖、新ラインの稼働と手は打っているが、米国のチョコレート需要は弱い。再生に時間がかかれば、追加の減損と資金の持ち出しが出る。2019年の買収額848億円は、すでに大きく毀損している。
借金の重さと金利の上昇
純有利子負債は2,216億円で、自己資本の0.9倍ある。借り換えのたびに金利が上がるので、利払いが純利益を削る。中計は1,800億円への削減を掲げるが、運転資金の圧縮が計画どおり進むかは分からない。原料相場が上がると運転資金が膨らみ、借金も増える。
中期計画の未達の繰り返し
前の中計は、カカオ高とブラマーの悪化で財務目標を外した。今回の事業利益450億円・ROE10%以上も、油脂の山が引けば遠ざかる。計画に頼って評価を上げると、また外れるおそれがある。10年でROEが10%を超えたのは、2020年3月期の1度だけである。
親会社の影響と少数株主
伊藤忠商事が直接と合算で43.8%を持つ。安定株主である一方、重要な決定は親会社の意向に沿いやすい。原料の取引や事業の再編で、少数株主の利益と食い違う可能性がある。TOBが出る場合も、価格は親会社が決める交渉になる。
原料の調達と環境規制
パーム油は、森林破壊への批判から調達の基準が厳しくなっている。TTP比率95%以上の維持はコストがかかる。規制や顧客の要求がさらに強まれば、調達費が上がる。上がった分を価格に移せるかが、競合に対する強さの試金石になる。
今後の分かれ目
- カカオ価格が大きく下がった時
- チョコレート会社が代用油脂からカカオバターへ戻り、油脂の数量と加工賃が減る。事業利益は計画を下回り、筋書きの重心はやや悲観側に移る。
- ブラマーの事業利益が黒字になった時
- 固定費の削減とコンパウンドへの転換が実を結んだ証拠になる。業務用チョコレート全体の利益率が上向き、強気の筋書きの確率を上げられる。
- 伊藤忠商事がTOBを発表した時
- 価格は市場価格に上乗せがつくが、本質価値を超えるかは別問題。上乗せの水準を、中立の10年の本質価値と比べて判断する。
- 純有利子負債が1,800億円を下回った時
- 運転資金の圧縮が計画どおりに進んだことになり、金利上昇の影響が和らぐ。純利益の下振れが小さくなり、財務への不安が薄れる。
- 植物性たん白や大豆の事業が黒字になった時
- 大豆加工の再建が実り、新しい成長の芽が見えたことになる。ただ売上の4%の事業なので、全体への効果は小さい。
- パーム油の調達規制が強まった時
- TTPの維持コストが上がり、油脂の利益率が下がる。値上げで転嫁できるかが、競合に対する強さの試金石になる。
見ておくもの
- 油脂の事業利益(カカオ価格との連動)
- ブラマーの事業利益と固定費削減の進み具合
- 純有利子負債(1,800億円の目標)
- 中計の事業利益450億円・ROE10%以上の達成度
- カカオ価格とカカオバター価格の動き
- 伊藤忠商事の持分と、再編・TOBの動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE・k 8%(基本 7.5% に quality +1.0%)・長期成長 3.5% から出した正当化 PER(中立の10年で11.8倍)に、利益の質を見て上限の8〜10割(中立は 1÷k の下限)で置いた。ROE が k をわずかに上回るため、PER の下限 1÷k に近くなる。今の PER(約35倍)や会社計画に対する約19倍へ寄せてはいない。悲観のやや悲観は稼ぐ力(純利益÷k)の85%に置いた。基準は国際会計基準で、リース負債は貸借対照表にすでに載っており、新リース会計基準による形の変化は小さい。数字は家賃を営業費用に入れた今の形で置いた。純有利子負債は、純現金ではないため余った現金は立てなかった。楽観・やや楽観の倍率は、式の上限に対する割合が中立(下限の 1÷k)より低くならないよう、上限の 9 割台にそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.4→15.78 倍・やや楽観 PER 12→14.51 倍・中立 PER 11.8→13.03 倍・やや悲観 PER 10→10.63 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本 7.5% に quality を足して決める(β・規模は使わない)。quality の内訳と理由は quality_why に書いた。事業が傾いているわけではないので上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。