結論
フジッコは、昆布佃煮「ふじっ子煮」、煮豆「おまめさん」、「カスピ海ヨーグルト」で知られる神戸の食品会社だ。筆者の結論は割高である。ブランドは強いが、稼ぐ力が弱いまま、国内の食べる量が減っていく。
土台は固い。昆布佃煮の市場で 4〜5 割を持ち、借金はなく、自己資本比率は 87% ある。ただ、固いのは財布で、商売ではない。売上は 2021 年 3 月期の 573 億円から 555 億円へ、基準をそろえても縮んだ。営業利益率は 2.6% まで落ち、ROE は 2% だ。
原料の昆布は、2024 年度の北海道産の水揚げが統計のある 1962 年度以降で最低だった。値上げすれば客が離れる。経営陣も、客数の減少を最大の課題と認めている。
会社の答えは、ヨーグルトを第三の柱に育てることと、工場の統廃合だ。筆者はこれが効くと見る。中立の筋書きでは、営業利益率が 4% 前後まで戻る。それでも ROE は 3% 台で、資本コスト 8% に届かない。届かない会社が積んだ利益は、額面どおりの価値を持たない。
純現金と投資有価証券を足した下値の支えはある。しかし、10 年の筋書きを確率で加重した価値は、今の時価総額の半分に届かない。PBR が 1 倍を割っていることは、割安の根拠にならない。ROE の低い会社が、当然受ける評価だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、見るべきはブランドの強さでなく、株主の手元に残るお金だ。フジッコの昆布佃煮は、10 年後も食卓に残る。この点は評価できる。ただ、国内の数量は人口とともに減り、原料は不足し、値上げは客数を削る。
オーナー利益、つまり事業を維持した上で株主が自由に使える利益は、会計上の利益よりさらに薄い。工場の更新に、毎年 30 億円前後の設備投資が要る。減価償却は 30 億円台半ばで、2027 年 3 月期の設備投資は 33 億円の計画だ。利益 14 億円の会社にとって、重い数字である。
資本の使い方には疑問が残る。自己資本の 13% にあたる現金が眠り、ROE は 2% だ。事業に使えば資本コストを上回る稼ぎが出る、という確信が経営にあるなら、その道筋を数字で示すべきだ。確信が無いなら、配当や自社株買いで株主に返すのが筋だ。
安全域はどうか。純現金と投資有価証券を足すと約 140 億円で、時価総額の 3 割にあたる。下値の支えにはなる。しかし、支えと割安は別物だ。中立の筋書きでも、10 年後の時価総額は 250 億円前後にとどまる。「わからない事業」ではない。「資本が働いていない事業」だと筆者は見る。
何で稼ぐ会社か
フジッコは神戸に本社を置く食品メーカーだ。売上は 555 億円(2026 年 3 月期)。製品別の売上は開示するが、利益は単一の事業として報告し、製品別には出さない。売上の構成は、惣菜が 32%、昆布が 29%、豆が 18%、ヨーグルトが 13%、デザートとその他が各 4% だ。
稼ぎの源は昆布だ。「ふじっ子煮」に代表される昆布佃煮は、市場の 4〜5 割を握る。塩こんぶやとろろ昆布も扱い、ごはんのお供として定着している。利益率は他の製品より高いと筆者は見る。煮豆は「おまめさん」の黒豆が看板で、売上は年末に偏る。市場は縮んでいる。
惣菜は売上が最大だが、中身は入れ替えの途中だ。日持ちしない惣菜を作る子会社は本体に合併し、中華惣菜の子会社は 2025 年 8 月に売却した。代わりに 2025 年 12 月、タイの業務用冷凍惣菜会社 FB Food Service を買収した。コンビニ向けが主力で、年商は約 56 億円(2024 年 12 月期)だ。
ヨーグルトは「カスピ海ヨーグルト」の一本足で、売上は 71 億円。会社は第三の柱と位置づけ、大容量の「リッチモ」を軸に生産ラインを増やす。デザートは赤字から黒字に戻ったが、会社自身が維持か撤退かを検討する事業だ。
販路は量販店とコンビニが中心で、最大の取引先は卸の日本アクセス(売上の約 15%)。工場は兵庫・埼玉・北海道などにあり、浜坂工場は 2027 年 3 月に閉める。
優良さと弱いところ
ふじっ子煮の堀は本物だ。昆布佃煮の市場は 350 億円前後と小さく、フジッコが 4〜5 割を持つ。煮豆・佃煮昆布の同業で最大手の売上でも、100 億円に満たない(会社推計)。値上げで数量が一時 1 割ほど落ちたが、テレビ広告で前年を上回る水準まで戻した。ブランドが客をつなぎとめている証拠だ。
だが、堀が利益に結びついていない。営業利益率は 2017 年 3 月期の 8.8% から 2026 年 3 月期の 2.6% まで落ちた。原料の昆布と大豆が上がり、値上げが追いつかなかった。ROE は 2% で、資本コストを大きく下回る。筆者がいちばん気にするのは、この低さだ。
経営の姿勢には評価できる点がある。工場を減らし、中華惣菜を手放し、広告費を採算で見直した。2026 年 3 月期は売上が減っても営業利益が 3 割増えた。ただ、売上は伸びていない。社長自身が、客数の減少を最大の課題と認めている。
社長の資産管理会社が約 25% を持つ。経営の安定には効くが、資本効率の改善を迫る力は弱い。現金は 10 年以上積み上がったままで、還元は配当が中心だ。強い商品を持ちながら、資本が働いていない会社だと筆者は見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の和日配は、人口減の影響をまともに受ける。昆布佃煮の市場は、富士経済の見通しで 2031 年まで年 1〜2% 縮む。煮豆も、おせちや家庭の煮物が減り、縮小が続く。数量は 10 年で 1 割前後減ると筆者は見る。
原料も重い。北海道産昆布の 2024 年度の生産量は約 8 千トンで、統計のある 1962 年度以降の最低だった。10 年前の半分だ。海水温の上昇が主因とされ、豊洲の卸値は前年より 4 割高い。会社は生昆布の併用と、暖かい海でも育つ品種の開発(北海道大学と共同)で対応するが、実用化はこれからだ。
追い風はヨーグルトと海外だ。国内のヨーグルト市場は約 5 千億円で、2025 年度は前年比 4〜5% 増えた。首位は明治でシェア 34%、森永乳業などが続く。フジッコのシェアは 1% 台にとどまり、大手との棚の競争の中で伸ばすことになる。腸内環境という健康の流れは追い風だが、機能性ヨーグルトは横ばい圏だ。
海外は、タイの冷凍惣菜が足場になる。コンビニ向けの業務用で、日本への輸入や非常食など用途を広げる構想だ。まだ小さな賭けにすぎない。
販路では、コンビニと宅配アプリが伸び、スーパー中心の販売網は見直しを迫られている。小売りの特売やプライベートブランド(PB)との競争は続く。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。年間配当は据え置きが基本で、配当性向は 90% を超える。会社は、これ以上高めると投資の資金が足りなくなると説明している。直近では自社株買いを行っていない。
株主優待は、100 株以上で千円相当、1,000 株以上で 3 千円相当(3 年以上は 4.5 千円相当)の自社製品の詰め合わせだ。半年以上の保有が条件。費用は開示されていない。株主 4.3 万人のうち、100 株以上を 3.5 万人前後と見て、原価ベースで年 3 億円と推定した(2 倍程度のずれはありうる)。優待の費用は販管費として利益から引かれている。そこで 10 年の還元に、年 3 億円 × 10 年 × 続く見込み(中立 1.0、やや悲観 0.75、悲観 0.5)を足した。
M&A は小粒だ。2019 年に中華惣菜のフーズパレットを買い、2025 年に売った。2025 年 12 月には、タイの FB Food Service の株式 30% を約 4 億円で取得し、現地持ち株会社を通じて議決権の 55% を持ち、連結している。のれんは 3 億円と小さい。大きな買収で価値を壊す心配は小さいが、買い手としての実績も乏しい。
資本政策は変わりつつある。会社は借入を含むレバレッジの活用を検討すると言い、2028 年 3 月期に PBR 1 倍・ROE 3% を目標に掲げる。目標の置き方が低い点は気になる。
持ち合い株は持たない方針で、取引関係のある投資有価証券は 52 億円ある。社長の資産管理会社が約 25% を持つため、TOB が起きるなら社長の意向が前提になる。kabufu のモデルは、10 年以内の買収確率を 2 割弱と試算している。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
構造改革の効果は、まだ売上に出ていない。2026 年 3 月期は売上が減ったのに、営業利益は 3 割増えた。販管固定費と人件費を絞った成果で、利益の作り方が変わり始めている。浜坂工場の閉鎖(2027 年 3 月)で固定費はさらに下がる。
ヨーグルトには伸びしろがある。市場は約 5 千億円あり、フジッコのシェアは 1% 台にすぎない。大容量の「リッチモ」は発売後に月を追って伸び、生産ラインがもう 1 本入る。会社は能力を倍増させる計画だ。
昆布は原料高で値上げが続くが、ふじっ子煮は、値上げで一時落ちた数量が、テレビ広告で前年比 110% まで戻った。シェア 5 割のブランドには、値上げに耐える体力がある。タイの冷凍惣菜で、海外の足場も得た。
財務は無借金で、純現金は 92 億円ある。PBR は 0.66 倍まで売られている。社長の資産管理会社が約 25% を持ち、TOB の可能性も 2 割弱ある。利益率が過去の 6〜8% 台に戻れば、営業利益は 50 億円を超える。そうなれば、今の時価総額は割安に変わる。
慎重な見方
利益が戻る前に、売上の土台が崩れている。国内の昆布佃煮は、市場全体が年 1〜2% 縮む。値上げのたびに客が離れ、経営陣自身が客数の減少を最大の課題と認めた。原料の昆布は水揚げが 10 年で半減し、値上げしても原価が追いつかない。
豆は市場の縮小で売上が減り続けている。デザートは撤退を含めて検討中で、中華惣菜は売却した。成長の柱はヨーグルトだけだが、明治・森永乳業という大手との棚の競争が待つ。
利益の改善も、固定費を削った一度きりの効果が大きい。削る余地は無限ではない。会社の目標でさえ、2028 年 3 月期の ROE が 3% で、資本コストの 8% には遠い。
配当性向は 90% を超え、これ以上の増配は難しい。会社は借入で投資するとも言い出した。現金は積み上がっているが、使い道は見つかっていない。純現金を足しても、ROE 2% の事業に高い値はつかない。
タイの買収も重い。FB Food Service は売上 56 億円に対して経常利益が 0.5 億円ほどで、コンビニ向けの薄利の商売だ。日本への輸出が広がる保証もない。ヨーグルトの増産設備も、売れ行きが想定を下回れば、減価償却だけが残る。工場の整理と新設を同時に進める経営の負担は、軽くない。
どちらに重みを置いたか
強気の根拠は構造改革とヨーグルトで、どちらも事実だ。だが、効果は営業利益率が 2% 台から 4% 前後へ戻るところまでと筆者は見る。6% を超える姿は、旧基準で 9% 近かった過去の山の再現が要る。慎重な見方は、売上の縮みと原料の不足という動かない事実に立っている。こちらの言い分が強い。確率は慎重な側に寄せ、やや悲観を 30%、悲観を 11% に置いた。純現金と買収の可能性は、悲観の床に入れた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,001 円285 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 556 円158 億円)。 今の値に割り戻すと 842 円240 億円、今との差 −47.5%、 期待の年率 −0.3%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 2,167 円617 億円 | 773 円220 億円 | +83.3% | +6.2% | 176 円50 億円 |
| やや楽観 | 17% | 1,618 円461 億円 | 685 円195 億円 | +43.6% | +3.7% | 392 円112 億円 |
| 中立 | 36% | 1,201 円342 億円 | 615 円175 億円 | +13.2% | +1.2% | 654 円186 億円 |
| やや悲観 | 30% | 439 円125 億円 | 464 円132 億円 | −43.7% | −5.6% | 271 円77 億円 |
| 悲観 | 11% | 288 円82 億円 | 298 円85 億円 | −63.4% | −9.6% | 65 円18 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,001 円285 億円 | 556 円158 億円 | −2.9% | −0.3% | 1,557 円443 億円 |
今の株価時価総額 1,604 円457 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 6% ヨーグルトが第二の昆布になり、利益率が 6% 台に戻る 利益 46 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,167 円617 億円
10 年後、ヨーグルトは売上 200 億円を超え、全社の利益の柱になる。大容量品が家庭に定着し、業務用や輸出にも広がる。昆布は原料不足が緩み、値上げが数量を落とさずに通る。ふじっ子煮が、佃煮の定番としてさらに強くなる。
タイの冷凍惣菜は、日本向けの輸出と非常食の用途で伸び、惣菜の利益も黒字に定着する。工場の統廃合で固定費が下がり、営業利益率は 6.6% に戻る。売上は 930 億円規模で、営業利益は 60 億円を超える。
財務は無借金のまま、ROE は 5〜6% に上がる。それでも資本コストには届かない。会社が現金を使い、増配や自社株買いも進める。優待の費用は利益から引き済みで、自己資本の流れには入れていない。還元には受け取り分(年 3 億円 × 10 年 × 1.0)を足した。
- 惣菜:数量 17,664(販売数量(トン、推定))× 価格 1,715(1kg あたりの売価(名目、円))→ 売上 303 億円・営業利益 12 億円。営業利益率4.0%
- 昆布:数量 10,900(販売数量(トン、推定))× 価格 2,100(1kg あたりの売価(名目、円))→ 売上 229 億円・営業利益 20 億円。営業利益率8.5%
- 豆:数量 13,340(販売数量(トン、推定))× 価格 938(1kg あたりの売価(名目、円))→ 売上 125 億円・営業利益 5 億円。営業利益率4.0%
- ヨーグルト:数量 22,220(販売数量(トン、推定))× 価格 966(1kg あたりの売価(名目、円))→ 売上 215 億円・営業利益 26 億円。営業利益率12.0%
- デザート:数量 2,700(販売数量(トン、推定))× 価格 968(1kg あたりの売価(名目、円))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。営業利益率3.0%
- その他:数量 2,520(販売数量(トン、推定))× 価格 1,363(1kg あたりの売価(名目、円))→ 売上 34 億円・営業利益 1 億円。営業利益率4.0%
倍率:事業の純利益 46 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.0% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 617 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益率 6.6% は過去の山(旧基準で約 9%)より低いが、直近 4 年は 2〜3% 台にとどまっている。ヨーグルトが倍以上に伸びることと、昆布の値上げが数量を落とさないことが同時に要る。実績が乏しいため低めの 6% とした。
やや楽観 17% ヨーグルトと工場統廃合が効き、利益率が 5% 台に戻る 利益 34 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,618 円461 億円
ヨーグルトは増産ラインの稼働で売上が 170 億円規模まで伸び、利益率も 10% を超える。昆布は値上げと生昆布の併用で、原料高をほぼ吸収する。豆と惣菜は縮小が止まる。
浜坂工場の閉鎖で固定費が下がり、営業利益率は 5% を超える。売上は 840 億円規模、営業利益は 43 億円となる。
ROE は 4% 台に上がるが、資本コスト 8% には届かない。現金の一部は増配に回る。TOB などの再編が起きる余地もある。優待の費用は利益から引き済みで、自己資本の流れには入れていない。還元には受け取り分(年 3 億円 × 10 年 × 1.0)を足した。
- 惣菜:数量 16,560(販売数量(トン、推定))× 価格 1,677(1kg あたりの売価(名目、円))→ 売上 278 億円・営業利益 8 億円。営業利益率3.0%
- 昆布:数量 10,464(販売数量(トン、推定))× 価格 2,055(1kg あたりの売価(名目、円))→ 売上 215 億円・営業利益 15 億円。営業利益率7.0%
- 豆:数量 12,760(販売数量(トン、推定))× 価格 924(1kg あたりの売価(名目、円))→ 売上 118 億円・営業利益 4 億円。営業利益率3.0%
- ヨーグルト:数量 18,180(販売数量(トン、推定))× 価格 952(1kg あたりの売価(名目、円))→ 売上 173 億円・営業利益 18 億円。営業利益率10.5%
- デザート:数量 2,550(販売数量(トン、推定))× 価格 953(1kg あたりの売価(名目、円))→ 売上 24 億円・営業利益 1 億円。営業利益率2.0%
- その他:数量 2,352(販売数量(トン、推定))× 価格 1,363(1kg あたりの売価(名目、円))→ 売上 32 億円・営業利益 1 億円。営業利益率3.0%
倍率:事業の純利益 33 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.6% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 461 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の 2028 年 3 月期の目標(ROE 3%。営業利益率に直すと 4% 前後)を上回る改善だが、2022 年 3 月期の 5.7% は実際に達成した水準。構造改革の効果が計画を上回って出る筋書き。
中立 36% ヨーグルトが伸び、全社は 4% 前後の利益率に落ち着く 利益 24 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,201 円342 億円
10 年後のフジッコは、売上 760 億円の規模になる。ヨーグルトが倍近くに伸び、全社の利益の柱になる。昆布は市場の縮小と原料高が続くが、値上げで金額を保つ。豆と惣菜は国内で縮み、タイの冷凍惣菜がそれを補う。
浜坂工場の閉鎖と業務の見直しで、固定費は物価ほどは増えない。営業利益率は 4% 前後で、営業利益は 30 億円になる。受取利息が増え、純利益は 24 億円ほどだ。
自己資本は 740 億円規模で、ROE は 3% 台にとどまる。配当は据え置きから微増で、現金の大半はそのまま残る。優待の費用は利益から引き済みで、自己資本の流れには入れていない。還元には受け取り分(年 3 億円 × 10 年 × 1.0)を足した。
- 惣菜:数量 15,456(販売数量(トン、推定))× 価格 1,638(1kg あたりの売価(名目、円))→ 売上 253 億円・営業利益 5 億円。営業利益率2.0%
- 昆布:数量 10,137(販売数量(トン、推定))× 価格 2,010(1kg あたりの売価(名目、円))→ 売上 204 億円・営業利益 12 億円。営業利益率6.0%
- 豆:数量 12,325(販売数量(トン、推定))× 価格 910(1kg あたりの売価(名目、円))→ 売上 112 億円・営業利益 3 億円。営業利益率2.2%
- ヨーグルト:数量 14,645(販売数量(トン、推定))× 価格 938(1kg あたりの売価(名目、円))→ 売上 137 億円・営業利益 12 億円。営業利益率9.0%
- デザート:数量 2,400(販売数量(トン、推定))× 価格 939(1kg あたりの売価(名目、円))→ 売上 23 億円・営業利益 0 億円。営業利益率1.0%
- その他:数量 2,205(販売数量(トン、推定))× 価格 1,363(1kg あたりの売価(名目、円))→ 売上 30 億円・営業利益 1 億円。営業利益率2.0%
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.4% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 342 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の 2028 年 3 月期の目標(ROE 3%)をやや遅れて達成する筋書き。直近 4 年の営業利益率は 2〜3% 台で、4% 前後への回復は構造改革の成果を認める一方、原料高と客数減を考えて控えめに置いた。
やや悲観 30% 値上げと客数減が続き、利益率は 2% 前後のまま 利益 10 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 439 円125 億円
10 年後も、営業利益率は 2% 前後にとどまる。昆布の原料高が続き、値上げのたびに数量が落ちる。豆と惣菜は国内で縮み、デザートは撤退に近い規模まで縮む。ヨーグルトは伸びるが、大手との競争で利益率は 6% 程度にとどまる。
売上は 640 億円規模、営業利益は 10 億円だ。固定費の削減は一巡し、物価の上昇で人件費や物流費が利益を食う。ROE は 1〜2% と低いまま。
配当は現在の水準を維持できず、減配する。現金は設備更新の資金に回る。TOB で値がつく可能性は残るが、事業の稼ぐ力は低く、床の資産が値段を支える。優待の費用は利益から引き済みで、自己資本の流れには入れていない。還元には受け取り分(年 3 億円 × 10 年 × 0.75)を足した。
- 惣菜:数量 13,800(販売数量(トン、推定))× 価格 1,562(1kg あたりの売価(名目、円))→ 売上 216 億円・営業利益 0 億円。営業利益率0.0%
- 昆布:数量 9,265(販売数量(トン、推定))× 価格 1,950(1kg あたりの売価(名目、円))→ 売上 181 億円・営業利益 6 億円。営業利益率3.5%
- 豆:数量 11,020(販売数量(トン、推定))× 価格 875(1kg あたりの売価(名目、円))→ 売上 96 億円・営業利益 1 億円。営業利益率0.5%
- ヨーグルト:数量 11,615(販売数量(トン、推定))× 価格 896(1kg あたりの売価(名目、円))→ 売上 104 億円・営業利益 6 億円。営業利益率6.0%
- デザート:数量 1,800(販売数量(トン、推定))× 価格 903(1kg あたりの売価(名目、円))→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。営業利益率-1.0%
- その他:数量 1,995(販売数量(トン、推定))× 価格 1,302(1kg あたりの売価(名目、円))→ 売上 26 億円・営業利益 0 億円。営業利益率0.0%
倍率:今の自己資本 696 億円に 0.18 を掛けた(床の資産 119 億円が支える水準)。ROE 1.4% は k 8.0% を大きく下回り、稼ぐ力(事業の純利益 ÷ k=約 120 億円)に余った現金の戻り分を足した額がほぼ同じ。事業の価値は純現金と売れる資産が支える。
確率:直近 4 年の営業利益率 2〜3% 台が続く、実績に最も近い筋書き。原料高の転嫁が遅れ、客数が減り、固定費の削減も限界に来る。慎重な見方の方が強いと判断し、30% を置いた。
悲観 11% 原料不足とヨーグルト失速で、赤字に沈む 利益 1 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 288 円82 億円
10 年後、フジッコは構造的に負けた会社になる。昆布の原料不足で、佃煮の供給と利益の両方が細る。値上げが通らず、数量は 3 割近く減る。豆は半分近くまで縮み、デザートは撤退する。
ヨーグルトは大手との棚の競争に負け、増産設備が余る。タイの冷凍惣菜も、特定顧客の離脱で利益が出ない。売上は 500 億円を割り込み、営業損益は赤字になる。工場の整理で減損が出て、自己資本も減る。
配当は大幅に減る。持ち合いを解消しても足りず、現金は事業の穴埋めに使われる。会社を支えるのは、純現金と売れる資産だけになる。優待の費用は利益から引き済みで、自己資本の流れには入れていない。還元には受け取り分(年 3 億円 × 10 年 × 0.5)を足した。
- 惣菜:数量 11,316(販売数量(トン、推定))× 価格 1,472(1kg あたりの売価(名目、円))→ 売上 167 億円・営業利益 −3 億円。営業利益率-2.0%
- 昆布:数量 7,848(販売数量(トン、推定))× 価格 1,830(1kg あたりの売価(名目、円))→ 売上 144 億円・営業利益 1 億円。営業利益率1.0%
- 豆:数量 8,990(販売数量(トン、推定))× 価格 826(1kg あたりの売価(名目、円))→ 売上 74 億円・営業利益 −2 億円。営業利益率-2.0%
- ヨーグルト:数量 9,595(販売数量(トン、推定))× 価格 840(1kg あたりの売価(名目、円))→ 売上 81 億円・営業利益 3 億円。営業利益率4.0%
- デザート:数量 900(販売数量(トン、推定))× 価格 830(1kg あたりの売価(名目、円))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。営業利益率-4.0%
- その他:数量 1,680(販売数量(トン、推定))× 価格 1,220(1kg あたりの売価(名目、円))→ 売上 21 億円・営業利益 0 億円。営業利益率-1.0%
倍率:今の自己資本 696 億円に 0.118 を掛けた。稼ぐ力は純利益 0.5 億円 ÷ k=約 6 億円と極めて薄く、価値は純現金の半分(赤字と整理費用で食う)と投資有価証券の税引き後を足した床の資産で測る。
確率:昆布の原料が枯渇に向かい、値上げが通らず、ヨーグルトも大手に押されて失速する複合の筋書き。単独でも起こりうる事象が重なるので、確率は低くない。k には足さず、ここで表した。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
惣菜
日持ちしない惣菜・袋惣菜と、タイの業務用冷凍惣菜(FB Food Service、2025 年 12 月買収)。中華惣菜は 2025 年 8 月に売却。
| 数量販売数量(トン、推定) | 価格1kg あたりの売価(名目、円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 13,800 | 1,280 | 177 | −1 |
| 10 年後 中立 | 15,456 | 1,638 | 253 | 5 |
取り方:惣菜の売上 176.6 億円を、販売数量(トン)× 1kg の売価に分けた。1kg の売価は約 1.3 千円と置き、約 1.38 万トン(推定)。中華惣菜の売却分とタイ子会社の取り込みで中身が入れ替わる途中の姿。利益は開示がなく、中華惣菜が営業損失だったこと、日持ちしない惣菜の採算が低いことから、わずかな赤字と推定した。
昆布
ふじっ子煮などの昆布佃煮、塩こんぶ、とろろ昆布。創業の事業で、収益の中核。
| 数量販売数量(トン、推定) | 価格1kg あたりの売価(名目、円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10,900 | 1,500 | 164 | 10 |
| 10 年後 中立 | 10,137 | 2,010 | 204 | 12 |
取り方:昆布の売上 163.5 億円を、販売数量(トン)× 1kg の売価に分けた。佃煮・塩こんぶ・とろろ昆布の平均で 1kg 約 1.5 千円と置き、約 1.09 万トン(推定)。市場は昆布佃煮で 350 億円前後、フジッコのシェアは 4〜5 割(会社推計)で、同業は小さい。利益は開示がなく、全社の営業利益と「昆布は収益性が課題」との発言から、営業利益率 5〜6% と推定した。
豆
煮豆「おまめさん」(黒豆・金時豆など)と水煮・蒸し豆。年末商戦に売上が偏る。
| 数量販売数量(トン、推定) | 価格1kg あたりの売価(名目、円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 14,500 | 700 | 102 | 2 |
| 10 年後 中立 | 12,325 | 910 | 112 | 3 |
取り方:豆の売上 101.5 億円を、販売数量(トン)× 1kg の売価に分けた。黒豆の高単価品と水煮の低単価品の平均で 1kg 約 0.7 千円と置き、約 1.45 万トン(推定)。煮豆の市場は 350 億円前後で縮小が続く。利益は開示がなく、「豆は収益性が課題」との発言から、営業利益率 2% 台と推定した。
ヨーグルト
「カスピ海ヨーグルト」シリーズ(プレーン・脂肪ゼロ・まるごと SOY・リッチモ)。会社が第三の柱と位置づける成長事業。
| 数量販売数量(トン、推定) | 価格1kg あたりの売価(名目、円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10,100 | 700 | 71 | 6 |
| 10 年後 中立 | 14,645 | 938 | 137 | 12 |
取り方:ヨーグルトの売上 70.7 億円を、販売数量(トン)× 1kg の売価に分けた。小容量と大容量(900g)の平均で 1kg 約 0.7 千円と置き、約 1.01 万トン(推定)。国内市場は約 5 千億円で、シェアは 1% 台。利益は開示がなく、広告費をかけても伸びる事業であることから、営業利益率 8% 前後と推定した。
デザート
フルーツ入りゼリー・デザート。会社は不採算取引と特売を止め、赤字から黒字に戻した。維持か撤退かを検討する事業。
| 数量販売数量(トン、推定) | 価格1kg あたりの売価(名目、円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 722 | 22 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2,400 | 939 | 23 | 0 |
取り方:デザートの売上 21.7 億円を、販売数量(トン)× 1kg の売価に分けた。1kg 約 0.7 千円と置き、約 3 千トン(推定)。赤字から黒字に戻った直後なので、営業利益率はごくわずかな黒字と推定した。
その他
通信販売、海外の原料調達、その他の食品。
| 数量販売数量(トン、推定) | 価格1kg あたりの売価(名目、円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,100 | 1,017 | 21 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2,205 | 1,363 | 30 | 1 |
取り方:その他の売上 21.4 億円を、販売数量(トン)× 1kg の売価に分けた。1kg 約 1 千円と置き、約 2.1 千トン(推定)。内訳は開示がないため、全社の利益から差し引いた小さな黒字と置いた。
リスクと懸念
昆布の原料不足と調達コスト
北海道産昆布の生産量は、2024 年度に統計のある 1962 年度以降の最低となった。海水温の上昇が主因とされ、回復は読めない。原料が足りなければ、値上げをしても利益が出ない。生昆布の併用や品種改良は、実用化までに時間がかかる。
値上げによる客数の減少
フジッコは原料高に値上げで対応してきたが、その度に買う人が減った。経営陣自身が、客数の減少を最大の課題と認めている。値上げと数量減の綱引きが続けば、売上は増えず、利益率も戻らない。
ヨーグルトの大手との競争
国内のヨーグルト市場は約 5 千億円で、首位の明治がシェア 34% を持つ。大手は広告と棚の力でまさる。フジッコは第三の柱に据えるため、増産ラインへの投資と広告を積む。売れ行きが想定を下回れば、設備の回収が遅れる。
縮小事業の整理コスト
浜坂工場の閉鎖(2027 年 3 月)、デザートの扱い、豆と惣菜の縮小がある。閉鎖や撤退には減損や特別退職金がつく。2025 年 3 月期にも 5 億円超の減損を出した。整理を進めるたびに、利益が一時的に減る。
現金が働かない資本政策
自己資本の 13% にあたる現金を抱えながら、ROE は 2% にとどまる。会社は借入を含む投資を検討すると言う。回収の見通しが甘い投資に踏み込めば、いまの安定した財務を自ら削ることになる。社長の資産管理会社が約 25% を持ち、外部から改善を迫る力は弱い。
タイ事業の実行リスク
買収した FB Food Service は、コンビニ向けの業務用で、売上に対して利益が薄い(2024 年 12 月期の経常利益は約 0.5 億円と報じられた)。主要顧客への依存、現地通貨、日本向け輸出の採算など、不確実な点が多い。のれんは小さいが、期待した成長が出なければ追加の投資が重荷になる。
品質問題と風評
食品の安全性は、全社に共通するリスクだ。ブランドの強みは信頼の上にある。自社の問題でなくても、風評で売上が落ちうる。昆布と豆という素材の商品では、産地や原料の変更が品質の差になりやすい。
今後の分かれ目
- 原料の昆布が回復し、北海道産の生産量が前年を上回って続いたら
- 昆布の利益率の下振れが和らぐ。中立の筋書きの昆布の利益率 6% が現実に近づき、やや悲観の確率を下げてよい。
- ヨーグルトの売上が 100 億円を超え、増産ラインが満稼働になったら
- 第三の柱が実現に向かっている。楽観・やや楽観の筋書きに確率を移す。
- 値上げの後も、ふじっ子煮と黒豆の数量が前年を上回り続けたら
- 値決め力が利益に結びついていると読める。営業利益率 4% 台の中立が、控えめな置き方に変わる。
- 会社が借入を使って大型の投資や買収に踏み出したら
- 資本が働き始める可能性と、実行の失敗リスクが同時に増える。投資先の採算と回収期間を見て、筋書きを入れ替える。
- 現金の一部を自社株買いや増配に回す方針が出たら
- 余った現金の戻り方を 0.5 から引き上げて評価する。価値は現金の分だけ上がる。
- 社長の資産管理会社が主導する TOB・非公開化の話が出たら
- ROE の低さを自ら解消する選択肢になりうる。プレミアムの水準と、残る株主の取り分を確認する。
- 営業利益率が 2027 年 3 月期予想の 2.7% を下回ったら
- 構造改革の効果が出ていない。やや悲観・悲観の確率を引き上げる。
見ておくもの
- 昆布製品と豆製品の売上と数量(決算説明会の製品別)
- ヨーグルトの売上、増産ラインの稼働時期、広告費の効率
- 北海道産昆布の生産量と入札価格、生昆布の調達比率
- 営業利益率(2027 年 3 月期予想 2.7%、2028 年 3 月期予想 3.1%)と ROE(目標 3%)
- 浜坂工場の閉鎖費用、デザートの扱いの決定
- 借入の実行と使い道、自社株買いの有無、純現金の推移
- タイ FB Food Service の売上・利益と日本向けの輸出
倍率と資本コストの決め方
先に製品ごとに数量(トン)× 1kg の売価で 10 年後の売上と利益を積み、その利益に、ROE と資本コスト 8% から出した倍率を掛けた。中立の ROE は 3.4% で資本コストを下回るため、PER の上限は 1÷k の 12.5 倍で、式の値は 9.5 倍。今の株価や市場の評価は倍率の根拠にしていない。価値は今の時価総額の半分に届かず、割高と出た。余った現金は帳簿 45 億円の半分だけを足した。純現金を全額足すと割高の度合いは下がるが、結論は変わらない。新リース会計基準は、自社工場が中心でリースが小さいため影響は軽い。数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→12.5 倍・やや楽観 PER 10.5→12.5 倍・中立 PER 9.5→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.5% を足して 8.0%。事業が傾いているわけではなく、純現金で借金もないため上乗せ(extra)は置かない。