結論
日東富士製粉は、国内の小麦粉で大手 4 社の末席にいる製粉会社だ。シェアは 1 割に満たない推計で、親会社の三菱商事が議決権の 67% を持つ。筆者の結論は「割高」である。いちばんの理由は、利益の薄さと設備の老朽化に比べて、今の値段が高すぎる点にある。
小麦粉は人口減で数量が細る商品だ。原料の輸入小麦は政府が買い付け、年 2 回の売渡価格の改定を数か月遅れで製品に移す。この仕組みが利益を守る一方で、値決めの力は他社と同じく弱い。2026 年 3 月期は、工場の修繕と除却費、補修中の出荷減で営業利益が 25% 減った。会社は 2028 年度に純利益 35 億円を目標にするが、これは今とほぼ同じ水準だ。
中立の筋書きでは、10 年後の純利益は 40 億円台前半になる。物価の転嫁で金額は伸びるが、数量は 1 割減る。ROE は 7% 台で資本コストに届かず、事業だけの ROE も資本コストをわずかに超える程度で、倍率は 13 倍にとどまる。手元の現金は厚いものの、親会社の資金管理に預けており、戻る額は帳簿の半分とみた。
今の値段は、利益の 20 倍を超える。三菱商事による買い取りの期待が値段に入っている可能性はあるが、価値の計算にはそれを入れない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を持ち続けたいとは思えない。理由は、利益が薄く、先に伸びる見込みも乏しいからだ。
事業の本質は、国が決めた原料価格に乗って小麦粉を作る加工業だ。安定はしているが、再投資してもよく稼げる場所ではない。株主に残るオーナー利益は、純利益から設備の更新費を引いた額になる。老朽設備を更新する時期にある今は、それが純利益を大きく下回る。
堀については、業界全体の堀に乗っているにすぎない。値決めの力が他社と同じで、シェアは 1 割に満たない。堀は 10 年後に広がる理由が見当たらない。
経営の資本の使い方は評価できる面がある。累進配当を守り、借金も持たない。ただ、外食のような本業と離れた事業に資本を置き続けている点は気になる。
安全域がもっとも重要な点だ。純現金と上場株の価値を足しても、時価総額の 3 割に届かない。今の値段は、親会社に買い取られる期待がない限り、払う理由がない水準だと筆者は見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの大半は、製粉と食品を合わせた本業にある。2026 年 3 月期の売上 728 億円のうち、製粉及び食品が 605 億円を占める。静岡・東京・熊谷などの工場で小麦粉とミックス粉を作り、業務用のパン・麺・菓子メーカーに売る。販売は親会社の三菱商事が 1964 年から代理店を務め、三菱商事向けが売上の 15% を占める。
食品は、家庭用と業務用のプレミックス、パスタ、冷凍食品などだ。海外ではベトナムとタイに小さな拠点を持つ。会社は海外の自立を課題に挙げるが、規模はまだ小さい。
外食は異色の事業である。子会社のさわやかがケンタッキーフライドチキンの店舗を運営する。売上は 122 億円あるが、営業利益は 2 億円ほどにすぎない。人件費とフードコストの上昇で、2026 年 3 月期の利益は半分近く減り、店舗の減損も出した。
運送は日東富士運輸が担っていたが、2025 年 10 月に株式の 66.6% を売り、持分法の会社になった。連結の売上は 15 億円ほど減る。本業の製粉に集中する動きと読める。
工場の敷地の一部は東京都からの賃借で、年 1 億円ほどを払う。外食の店舗や本社の家賃を合わせると、固定の約束は年 10 億円ほどだ。
優良さと弱いところ
この会社の堀は浅い。大手 4 社の寡占と政府の売渡価格の仕組みは、業界全体を守る。しかし日東富士製粉だけを守るものではない。小麦粉は規格品に近く、日清製粉やニップンのような規模の利益も、ブランドの値決め力もない。
それでも質の悪い会社ではない。2015 年から 2026 年まで赤字の期はなく、ROE は 4% 台から 9% 台の間にあった。自己資本比率は 78% と高く、利払いの負担もほぼない。財務の堅さは、小さな製粉会社が長く生き残るための強みだ。
弱点は 2 つある。1 つは設備だ。会社自身が老朽化への対応を重点課題に掲げ、2026 年 3 月期は修繕、追加の償却、除却費、補修中の出荷減で営業利益を押し下げた。もう 1 つは親会社への依存である。三菱商事が 67% を持ち、販売も資金の運用も親会社の枠の中にある。少数株主には安定のように見えるが、会社が自分で動ける幅は狭い。
外食は本業と関係が薄く、資本の効率を下げている。筆者は、この事業が 10 年後も会社の価値を上げるとは考えていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の小麦粉需要は 1994 年の約 500 万トンをピークに頭打ちとなり、2023 年度は約 444 万トンになった。人口が減り、食の好みも変わる中で、10 年後も緩やかな縮小が続く。コメの値上がりで一時的に小麦粉の需要が戻る動きはあるが、構造を変えるほどではない。
供給の側は、大手 4 社への集中が進んでいる。日清製粉、ニップン、昭和産業、日東富士製粉で 8 割を超える。日清製粉の約 173 万トンに対し、日東富士製粉は約 34 万トンと推計され、規模の差は大きい。大きな工場を新設した他社と比べ、日東富士製粉は老朽設備の更新に自己資金を回す立場にある。
原料は輸入小麦の約 9 割弱で、政府が一元的に買い付けて売り渡す。売渡価格は年 2 回見直され、各社はほぼ同じ時期に値上げを発表する。この仕組みは原料高で利益が急に崩れるのを防ぐ。ただし電気代や海上運賃、物流費は別で、会社は 2026 年 3 月期にこれらを製品価格に移しきれなかったと述べている。
小麦の国家貿易の調達方法が変わる可能性も、有報にリスクとして挙がる。制度が変われば、4 社の相対的な力が入れ替わりうる。業種の見通しでは、原料加工業は成熟期でも倍率が低い領域だ。日東富士製粉も同じ前提で見る。
資本政策と M&A
還元は厚い。方針は累進配当で、2026 年 3 月期の配当は約 25 億円だった。純利益 33 億円の 77% にあたる。次の期の配当も据え置きを予定する。自社株買いの記録は見当たらない。
厚い還元でも、現金は減らない。純現金は 112 億円で、時価総額の 16% に相当する。余った資金は、グループの資金管理を通じて三菱商事の金融子会社へ貸している。親会社が 67% を持つ会社の現金は、少数株主の手に戻る保証が弱い。筆者はこの現金の価値を、帳簿の半分で見た。
政策保有株は上場 15 銘柄で、帳簿は 67 億円。日清食品ホールディングスや東洋水産など得意先が中心だ。2026 年 3 月期に 18 銘柄を売ったが、売却額は 1 億円に届かない。縮減は進んでいない。
再編の可能性はある。kabufu の推計では、10 年以内に買収される確率は 17%。親会社の三菱商事が完全子会社化する場合、買い取り価格は価値より高くも低くもなりうる。この分析は、そのどちらにも賭けない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
老朽化した工場の更新は、2026 年 3 月期で費用の山を越えた。補修による出荷の落ち込みは一時のもので、会社は 2027 年 3 月期に経常利益 47 億円(7% 増)を見込む。更新が済めば工場の効率が上がり、2019 年から 2023 年に実現した営業利益率 7% 台を取り戻せる。
政府の売渡価格の仕組みのもとで、原料高は数か月遅れで確実に価格に移る。大手 4 社が同じ時期に値上げするため、日東富士製粉だけが取り残されることはない。三菱商事が 1964 年から販売代理店を務め、売上の 15% を安定して預かる点も、他社にない強みだ。
財務は盤石だ。借金がなく自己資本比率は 78%。累進配当の方針は、利益が戻れば増配につながる。外食の不調も、店舗の整理と使用料の見直しで改善する余地がある。親会社が 67% を持つため、買収や再編で株主に利益が出る可能性もある。10 年後の純利益が 50 億円に届けば、今の値段にも届く。
慎重な見方
2026 年 3 月期の減益は、設備更新の費用だけでは説明しきれない。エネルギーや物流の費用を、製品価格に移しきれていない点は、会社自身が認めている。大手の日清製粉やニップンは規模が大きく、同じ費用上昇でも転嫁の力が強い。
老朽設備の問題は、1 度の更新で終わらない。工場が古いままなら修繕費は続き、新しくすれば償却費が増える。どちらにしても利益は圧迫される。会社が当初の中期経営計画を取り下げ、毎年更新する方式に変えたことは、見通しの立たなさを物語る。2028 年度の目標も、純利益 35 億円と今の水準と同じだ。
外食は人件費に押されて利益が半減し、店舗の減損も出た。本業との関連が薄く、資本の効率を下げている。
今の値段は純利益の 20 倍を超える。ROE が資本コストに届かない会社に付ける倍率ではない。親会社による買い取りを当て込んだ値段なら、価値と値段は別物だ。浮動株が薄い会社の値段は、大きく振れやすい。
どちらに重みを置いたか
強気の根拠は、設備更新の山を越えたことと、売渡価格の仕組みによる転嫁の確実さにある。慎重な見方の根拠は、会社自身が認める転嫁の遅れと、ROE が資本コストに届かない構造だ。
利益の回復は見込めるが、それは主に物価の転嫁による名目の増加であり、数量は縮む。回復しても ROE は 7% 台で、資本コストを下回る。この点で慎重な見方が強いと判断し、確率は中立から下に寄せた。一方、財務の堅さと親会社の存在から、深い悲観の確率は低めに置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,558 円567 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 693 円252 億円)。 今の値に割り戻すと 1,220 円444 億円、今との差 −37.7%、 期待の年率 +1.4%(資本コスト 7.7%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,622 円955 億円 | 865 円315 億円 | +78.2% | +5.9% | 244 円89 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,171 円791 億円 | 824 円300 億円 | +53.1% | +4.3% | 599 円218 億円 |
| 中立 | 38% | 1,785 円650 億円 | 783 円285 億円 | +31.2% | +2.8% | 976 円355 億円 |
| やや悲観 | 24% | 931 円339 億円 | 659 円240 億円 | −18.7% | −2.1% | 382 円139 億円 |
| 悲観 | 11% | 343 円125 億円 | 110 円40 億円 | −76.8% | −13.6% | 50 円18 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,558 円567 億円 | 693 円252 億円 | +15.0% | +1.4% | 2,250 円820 億円 |
今の株価時価総額 1,957 円713 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.7% を下回るほど割高。
楽観 7% 工場の更新が済み、薄利から抜け出す 10 年 利益 60 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 2,622 円955 億円
老朽化した工場の更新が 2020 年代の終わりまでに片づき、補修による出荷の落ち込みは一時のものに終わる。製粉は物流の共同化と値上げの定着で、利益率が 7% 台半ばまで戻る。かつて 2019 年から 2023 年に営業利益率が 7〜8% 台だった水準を、構造として保つ筋書きだ。
食品はプレミックスの高付加価値化とベトナム・タイの拠点が効き、利益率 9% に届く。外食も店舗を増やして使用料と人件費を吸収し、利益率 4% を確保する。配当は累進を続け、純利益の 7 割を還元しても自己資本は着実に積み上がる。それでも ROE は 9% 台にとどまり、資本コストを少し上回る程度だ。薄利の原料加工業であることは変わらない。
- 製粉:数量 32.5(製粉量(万トン))× 価格 16(1トンあたり卸単価(万円))→ 売上 536 億円・営業利益 40 億円。工場の更新が済み、物流を共同化して利益率が戻る
- 食品(プレミックス・加工食品):数量 8.2(出荷量(万トン))× 価格 34(1トンあたり単価(万円))→ 売上 275 億円・営業利益 25 億円。プレミックスの高付加価値化と海外の伸び
- 外食(KFC 運営):数量 115(店舗数)× 価格 1.49(1店あたり売上(億円))→ 売上 171 億円・営業利益 7 億円。店舗を増やし、使用料と人件費を吸収
倍率:事業の純利益 60 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.2% が k 7.70% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 14.94 倍、時価総額 928 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:工場の更新、価格転嫁、外食の立て直しが同時に成功する必要がある。親会社の後押しはあるが、連続成功の確度は高くない。
やや楽観 20% 更新後の稼働が安定し、利益率が戻る 10 年 利益 52 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 2,171 円791 億円
補修を終えた工場が安定して動き、製粉の利益率は 7% 近くまで戻る。国内の小麦粉需要は縮むが、シェアは守る。食品は新製品で緩やかに伸び、外食は店舗数を保つ。三菱商事向けの販売は今の 15% 前後が続き、販売網は揺らがない。大手 4 社が同じ時期に値上げを発表する業界の習わしも変わらず、転嫁の遅れは今より縮まる。
純利益は 50 億円前後まで増え、還元は 7 割台半ばで続く。ROE は 8% 強で資本コストをわずかに上回る。成長の中身は物価の転嫁であり、数量の拡大ではない。この点が、成熟した原料加工業としての限界だ。
- 製粉:数量 31.8(製粉量(万トン))× 価格 16(1トンあたり卸単価(万円))→ 売上 524 億円・営業利益 36 億円。更新後の稼働が安定し、転嫁も進む
- 食品(プレミックス・加工食品):数量 7.8(出荷量(万トン))× 価格 34(1トンあたり単価(万円))→ 売上 261 億円・営業利益 21 億円。新製品で緩やかに拡大
- 外食(KFC 運営):数量 110(店舗数)× 価格 1.49(1店あたり売上(億円))→ 売上 164 億円・営業利益 6 億円。店舗数を維持
倍率:事業の純利益 51 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.1% が k 7.70% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 14.18 倍、時価総額 762 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社が 2028 年度に掲げる純利益 35 億円の目標は、現状から見て届く範囲にある。その延長で、価格転嫁が進む上位の見通しとして置いた。
中立 38% 国内の縮小を物価の転嫁で埋める、成熟した 10 年 利益 45 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 1,785 円650 億円
国内の小麦粉需要は 10 年でおよそ 1 割縮む。値上げは物価並みに通り、製粉の利益率は 6% 台前半に戻る。かつての 7% 台に届かないのは、エネルギーと物流の費用を転嫁しきれない構造が残るためだ。
食品は数量が横ばいで、利益率は 7% 台半ば。外食は不採算店を閉じながら 3% の利益率を保つ。純利益は 40 億円台前半まで増え、還元は 75% 前後を続ける。自己資本は 600 億円弱まで積み上がり、ROE は 7% 台で資本コストに届かない。三菱商事が 67% を持つ構造は続き、再編の話が出ても筋書きは変えない。
- 製粉:数量 30.6(製粉量(万トン))× 価格 16(1トンあたり卸単価(万円))→ 売上 504 億円・営業利益 32 億円。需要は人口減で 1 割減、物価分は転嫁
- 食品(プレミックス・加工食品):数量 7.4(出荷量(万トン))× 価格 34(1トンあたり単価(万円))→ 売上 248 億円・営業利益 19 億円。数量は横ばい
- 外食(KFC 運営):数量 105(店舗数)× 価格 1.49(1店あたり売上(億円))→ 売上 156 億円・営業利益 5 億円。不採算店を少し閉じる
倍率:事業の純利益 44 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.0% が k 7.70% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 13.29 倍、時価総額 620 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の小麦粉需要は人口減でゆっくり縮み、物価分の値上げで金額を保つという業種ノートの見通しをそのまま当てた。老朽設備の更新費は織り込み済み。
やや悲観 24% 転嫁が遅れ、シェアを少しずつ失う 10 年 利益 28 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 931 円339 億円
原料の値上がりを製品価格に移すまでの遅れが長引き、製粉の利益率は 4% 台半ばにとどまる。国内の需要減に加え、大手の日清製粉とニップンに大口の顧客を取られ、製粉量は 15% 近く減る。老朽設備の更新費が重く、補修期間中の出荷減も繰り返す。
外食は人件費の上昇に使用料の負担が重なって 1% 台の利益率に落ち、店舗の減損が続く。純利益は 20 億円台に沈み、配当は累進を保つために純利益の 8 割を超える。自己資本は伸びず、ROE は 5% に届かない。三菱商事向けの販売は続くが、親会社が販売代理店として守れるのは取引の枠までで、工場の稼働率までは守れない。2028 年度に掲げた純利益 35 億円の目標は、10 年の途中で下がったままになる。
- 製粉:数量 29.0(製粉量(万トン))× 価格 16(1トンあたり卸単価(万円))→ 売上 464 億円・営業利益 21 億円。転嫁が遅れ、需要減とシェア低下が重なる
- 食品(プレミックス・加工食品):数量 6.9(出荷量(万トン))× 価格 33(1トンあたり単価(万円))→ 売上 224 億円・営業利益 12 億円。大手に押される
- 外食(KFC 運営):数量 100(店舗数)× 価格 1.55(1店あたり売上(億円))→ 売上 155 億円・営業利益 2 億円。人件費とフードコストが重い
倍率:ROE が約 4.8% で k 7.7% を下回るので上限は 1÷k の 13.0 倍。その約 8 割より低い 10.0 倍に置いた(稼ぐ力の年金に近い値)。余った現金は 0.75 倍(37.5 億円)で計算する。
確率:エネルギーと運賃の転嫁が遅れる現状が続き、小さな会社は大手に買い手を取られる。2026 年 3 月期の減益がすでにその兆しを見せている。
悲観 11% 老朽化と顧客離れで、構造的に負ける 10 年 利益 8 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 343 円125 億円
老朽工場の閉鎖が相次ぎ、製粉量は 3 割近く減る。値上げの転嫁も追いつかず、製粉の利益率は 2% 台にとどまる。三菱商事は販売代理店として残るが、大手が値を下げれば追随せざるをえない。食品は価格決定力を失い、外食は店舗の減損と固定の家賃で赤字になる。
純利益は 10 億円に届かず、設備の減損で自己資本も 80 億円ほど削られる。配当は純利益の 4 割まで削る。この筋書きでは稼ぐ力に価値を置けないため、持っている現金と上場株の税引き後の額を床にして測る。中立の見通しが外れたとき、数字がどこまで落ちるかを示す筋書きでもある。それでも財務の堅さは残り、倒れる会社ではないが、持ち続ける価値は大きく薄れる。
- 製粉:数量 24.0(製粉量(万トン))× 価格 15(1トンあたり卸単価(万円))→ 売上 360 億円・営業利益 7 億円。老朽工場の閉鎖と顧客離れ
- 食品(プレミックス・加工食品):数量 5.8(出荷量(万トン))× 価格 30(1トンあたり単価(万円))→ 売上 174 億円・営業利益 5 億円。価格決定力を失う
- 外食(KFC 運営):数量 85.0(店舗数)× 価格 1.30(1店あたり売上(億円))→ 売上 110 億円・営業利益 −1 億円。店舗の減損と家賃が重い
倍率:赤字に近く稼ぐ力では測れないので、今の自己資本 500 億円に PBR 0.25 倍を掛けて 125 億円とした。床の内訳(悲観で食われた後の現金約 80 億円と上場株の税引き後約 47 億円)は floor_assets_why に書いた。
確率:更新費をまかなえない小さな製粉所は、閉鎖と顧客離れの悪循環に入りやすい。起きれば深いが、親会社の支えがあり確率は低めに置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
製粉
小麦粉・ミックス粉(プレミックス)の製造と販売。静岡・東京・熊谷などの工場で作り、親会社の三菱商事や特約店を通じて業務用に売る。
| 数量製粉量(万トン) | 価格1トンあたり卸単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 34.0 | 12 | 418 | 22 |
| 10 年後 中立 | 30.6 | 16 | 504 | 32 |
取り方:国内の小麦粉需要は約 444 万トン(2023 年度)。大手 4 社が 8 割強を占める。日清製粉約 173 万、ニップン約 100 万、昭和産業約 55 万トンの推計から、日東富士製粉は約 34 万トン(シェア 7〜8% 前後)と置いた。個社の製粉量は開示が見つからず推計。単価は連結の製粉及び食品 605 億円のうち製粉を約 420 億円とみた値から割り戻した。政府の売渡価格は年 2 回改定され数か月遅れで転嫁されるので年ごとに上下するが、10 年では物価並み(1.34 倍)に置いた。数量は実質で、国内需要は人口減で中立 10 年 0.9 倍。営業利益は製粉及び食品の 35.2 億円を製粉 22.3・食品 13.3 に配分した推計。運送子会社(2025 年 10 月に持分法へ)と内部取引の調整は調整額に入れた。
食品(プレミックス・加工食品)
家庭用・業務用のプレミックス、パスタ、冷凍食品などの加工食品。海外(ベトナム・タイ)の小さな拠点も含む。
| 数量出荷量(万トン) | 価格1トンあたり単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7.4 | 25 | 185 | 13 |
| 10 年後 中立 | 7.4 | 34 | 248 | 19 |
取り方:製粉及び食品のうち製粉以外を約 185 億円とみて、加工度の高い食品の平均単価 1 トン約 25 万円から数量を割り戻した推計(品目別の開示は無い)。単価は物価並み(10 年 1.34 倍)。数量は実質で、国内の簡便化需要と海外の小さな伸びが人口減と打ち消し合って中立 10 年 1.0 倍。営業利益率は約 7%。
外食(KFC 運営)
子会社のさわやかが、ケンタッキーフライドチキンの店舗をサブ・ライセンス契約で運営する。売上に料率を掛けた使用料を払う。
| 数量店舗数 | 価格1店あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 110 | 1.11 | 122 | 2 |
| 10 年後 中立 | 105 | 1.49 | 156 | 5 |
取り方:外食の売上 122.2 億円を店舗数で割る形で置いた。店舗数 110 は確かめた数字ではない推計。1 店あたり売上は客数が同じで物価(人件費・食材)並みに上がるとして 10 年 1.34 倍。人手不足とフードコストで利益率は 2% 前後に薄い。店舗は賃借で、本社と店舗の家賃は年約 7.5 億円の固定の約束。
リスクと懸念
老朽設備の更新と補修による出荷減
会社は工場設備の老朽化を重点課題に挙げる。2026 年 3 月期は修繕費、追加の償却、除却費、補修中の出荷減が重なり営業利益が 25% 減った。更新を終えても償却費が増える。更新費は自己資金でまかなう方針だが、10 年間に何度の更新が要るかは見えない。
エネルギー・運賃の転嫁の遅れ
輸入小麦の売渡価格は数か月遅れで製品に移る。しかし電気代、海上運賃、物流費は別で、会社自身が製品価格に移しきれていないと述べる。大手より規模が小さい分、交渉力で劣る恐れがある。利益率が戻らなければ、中立の筋書きの前提が崩れる。
大手 2 社に顧客を取られる
日清製粉の製粉量は約 173 万トン、ニップンは約 100 万トンと推計され、日東富士製粉は約 34 万トンにとどまる。大手は新工場を建て、冷凍食品や海外で収益源を広げている。大口の顧客が大手に移れば、小さな工場の稼働率が落ち、費用の負担が重くなる。
親会社への依存と少数株主の位置
三菱商事が議決権の 67% を持ち、販売の 15% を預かり、余った資金も親会社の金融子会社に貸している。会社の判断が少数株主の利益と一致するとは限らない。買い取りの条件も親会社が決める側にある。浮動株が薄く、値段が大きく振れやすい。
外食事業の採算
ケンタッキーの店舗運営は売上 122 億円に対し営業利益が 2 億円ほどで、2026 年 3 月期は利益が半分近く減った。使用料は売上に料率を掛けて払い、店舗の家賃(本社と店舗で年約 7.5 億円)は固定だ。人件費がさらに上がれば赤字に落ちる。
小麦の国家貿易の変更
有報は、小麦の国家貿易による調達方法の変更を、リスクの 1 つに挙げる。政府の一元買い付けと売渡価格の仕組みは、業界の利益を安定させてきた。制度が変われば、原料の調達力と財務の強さで 4 社の相対的な位置が入れ替わる。
政策保有株の縮減が進まない
上場 15 銘柄・帳簿 67 億円を、得意先との関係維持を理由に持つ。2026 年 3 月期の売却は 1 億円に届かなかった。資本の効率を上げる手が、まだ打たれていない。株価が下がれば純資産も減る。
今後の分かれ目
- 2027 年 3 月期に経常利益 47 億円の計画を達成したら
- 補修費の山を越えたと判断し、やや楽観側に重みを移す。
- エネルギー・運賃の転嫁が価格改定で進んだら
- 製粉の利益率の前提を上げ、中立から楽観側へ寄せる。
- 大口の顧客が大手に移ったり、工場の閉鎖が発表されたら
- 製粉量の前提を下げ、やや悲観・悲観に重みを移す。
- 三菱商事が完全子会社化や再編を発表したら
- 買い取りの条件を価値と比べる。価値より低ければ少数株主には不利になる。
- 外食事業を売却または縮小したら
- 資本の効率が上がるため、利益率の前提を上げる。
- 政策保有株の売却が加速したら
- 還元か設備投資に回る額が増えるため、資本の使い方の評価を上げる。
見ておくもの
- 製粉及び食品の営業利益率(今期の回復の度合い)
- 輸入小麦の売渡価格の改定(4 月・10 月)と製品価格への転嫁
- 老朽設備の更新の進み方と償却費
- 三菱商事向け売上の比率と親会社の資本政策
- 外食(KFC)の店舗数と利益
- 政策保有株の売却額
倍率と資本コストの決め方
セグメントごとに数量(実質)と単価(名目、物価並み)を置き、その時点の利益に、利益ベースの正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g) を当てた。k は基本 7.5% に quality+0.2% を足した 7.7%。中立は事業の ROE が k をわずかに超えるので下限の 1÷k(13.0 倍)、楽観側は上限の 95% 前後、ROE が k に届かないやや悲観は 1÷k の約 8 割より低く置いた。今の PER が 20 倍を超えるが、倍率は今の値段や過去・同業の PER から置いていない。値段は最後に比べただけだ。三菱商事による買い取りの期待は価値の計算に入れていない。純現金 112 億円のうち運転資金と更新費を引いた約 50 億円を余りとし、親会社の資金管理に貸している点から戻り方は 0.5 とした。家賃は年約 10 億円の固定の約束で、悲観では固定費として残る。新リース会計基準(2028 年 3 月期から貸借対照表に載る)で営業利益や純負債の形は変わるが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置いた。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.7% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.2% を足した 7.7%。事業が傾いているわけではないので上乗せは置かない。