結論
エスフーズは、牛・豚・鶏の肉を仕入れて切り分け、売る食肉の総合会社だ。自社牧場から米国の食肉処理場、国内の卸、ホルモン商品「こてっちゃん」までを一本につなぐ「垂直統合」を看板にしている。
筆者の見立ては「値段は中身に見合っている。安全域は厚くない」だ。売上は4,700億円あるが、営業利益率は2%前後にすぎない。肉は誰が売っても同じ商品で、値段を決めるのは相場だからだ。
10年の中立では、営業利益は190億円弱まで伸びる。国内は人口減で量が減るが、米国の新工場、和牛・豚肉の輸出、調理食品が補う。それでも利益率は2.6%どまりで、自己資本利益率(ROE)は資本コストに届かない。届かない会社の倍率には天井がある。ここが価値の上限を決める。
強気に傾く材料は米国のオーロラ新工場だ。だが会社の計画は2回続けて引き下げられている。筆者は慎重な側に確率を寄せた。
丸紅が持分法の大株主で、社長の村上真之助氏は69歳。買収や資本の再編という目は残る。ただし、それを前提に価値は置いていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、見るのは3点だ。事業が10年後も強いか。稼いだ利益を経営がどう使うか。払う値段に安全域があるか。
事業は、10年後も続く。人は肉を食べ続ける。ただ、堀は広くない。商品の差が小さく、値段は相場が決める。利益率が2%前後の会社は、少しの原料高で赤字に近づく。
資本の使い方は、判断が分かれる。米国の新工場は、成功すれば処理量が2.5倍になる。だが中堅が大手と戦う分野で、計画は2回引き下げられた。経営を丸ごと信頼するには、実績がまだ足りない。
安全域は薄い。ROEは資本コストに届かず、10年中立の価値は今の値段とほぼ釣り合う。割安とも割高とも言い切れない。
筆者なら、この会社を「持ち続けたい事業」とは呼ばない。ただ、相場の山で利益が出る年に払う値段と、谷で売れる資産の価値を比べると、悲観の側にも床がある。今の値段は、その床とそれほど離れていない。それが唯一の安心材料だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は単純だ。肉を安く仕入れ、切り分け、小さな利幅を乗せて売る。薄利を回転と規模で稼ぐ商売である。
中心は国内食肉だ。牛・豚・鶏を処理して量販店・外食・食品メーカーへ卸す。国産牛と神戸ビーフなどの銘柄肉に強く、兵庫の本社を軸に、首都圏の船橋、関西、広島へと拠点を広げてきた。豚肉は北海道の日高食肉センターが輸出の拠点になっている。
輸入と輸出が第2の柱だ。米国や豪州の牛肉・豚肉を輸入し、和牛や国産豚肉を30か国以上へ売る。神戸ビーフの輸出量は世界一だと会社は言う。
海外は米国のオーロラ・パッキングが中心で、2015年に買収した。ネブラスカ州とイリノイ州の2拠点があり、2026年に新工場が竣工すると処理能力は約2.5倍になる。豪州ではモンビーフを2019年に子会社化し、ニュージーランドでは2023年に肥育を始めた。
最後が製品だ。「こてっちゃん」に代表されるホルモン製品、2023年に本格参入した調理食品、直営の小売と外食店がある。加工度が高く利益率は卸より高いが、売上は小さい。
会社の開示は「食肉等の製造・卸売」「小売」「外食」の3区分で、売上のほぼ全部が製造・卸売だ。本稿の4つの区分とその売上は推定である。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、卸としては広いとは言えない。肉は商品としての差が小さく、利益率は2%前後で推移している。過去10年の営業利益率は最高でも4.9%だ。
強いのは3点ある。第1に、牧場から小売まで持つ垂直統合で、相場の波の一部を内部で吸収できる。第2に、神戸ビーフなど銘柄肉の仕入れと輸出の実績。第3に、ホルモン製品のような加工品である。これらは規模の優位より、地味な運営の優位に近い。
弱いのは2点だ。第1に、価格決定力が乏しい。牛肉の原料が上がっても、量販店への転嫁には数か月かかる。2025年2月期は営業利益が51億円まで落ち、その弱さが表に出た。第2に、米国の処理は牛肉の大手が強い。中堅の規模で勝てるかは、新工場の稼働次第だ。
資本効率は低い。ROEは過去10年の中央値で9.3%、直近は7%だ。会社の計画でも、2027年2月期は4.9%、2029年2月期でも8.5%にとどまる。
経営は創業の流れを引く村上真之助社長が2006年から率いる。売上は927億円から4,723億円へ育てた。一方、2026年5月の取締役選任の賛成率は84.7%と、前年の91.6%から下がっている。株主の目が厳しくなってきた証拠だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の食肉は、量が増えない成熟市場だ。人口が減り、牛・豚・鶏の1人あたり消費量も伸びにくい。一方、単身世帯と共働きの増加で、調理済みの食品と外食・中食の需要は底堅い。量は10年で0.9〜1.0倍とみるのが穏当だ。値段は物価並みに上がるが、肉は相場商品で、原料の値動きがそのまま利益率を揺らす。
競争は2層ある。食肉の売上の上位は、日本ハム、伊藤ハム米久ホールディングス、プリマハム、スターゼンで、エスフーズは5番手に当たる。大手ハムは加工品とブランドを持つ。エスフーズは卸と輸出に重心があり、銘柄肉と輸出で差をつけている。
輸出は伸びしろがある。和牛と国産豚肉の海外需要は強い。ただし、中国向けの不振や為替で振れる点は、ニュージーランド肥育の事業再構築でも明らかになった。
米国では牛の頭数が歴史的な低水準にある。原料牛が不足すると、処理業者の利幅は薄くなる。逆に頭数が戻れば利幅は広がる。この循環は数年単位で動き、新工場の稼働時期と重なる。
同じ領域の業種ノートは、加工肉は人口減で数量が緩やかに縮み、ブランド力のある会社だけが値上げを通せるとみる。エスフーズは卸が中心で、その見方はそのまま当てはまる。ただし、輸出と米国の処理という成長の芽は、加工肉の大手より強い。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。2025年1月に、株主資本配当率(DOE)の目安を2.5%から3%へ引き上げ、2026年2月期から適用した。配当は利益が落ちた年にも一定を守る設計で、安定感はある。自社株買いは主役ではない。
投資は米国のオーロラ新工場と、国内の拠点整備が中心だ。買収は2015年のオーロラ、2019年のモンビーフと、海外で進めてきた。米国の買収は設備投資を重ねないと回収できず、資本を食う。
純有利子負債は198億円で、時価総額の約24%に当たる。利払いは営業利益の16倍で心配はないが、金利が上がる世界では利払いが少し増える。
大株主には丸紅がいる。議決権の15%前後を持つ持分法適用会社で、肉の調達と販路の両面で結びつきが深い。丸紅の支えは安定を生む反面、再編が起きれば、動くのは丸紅の判断になる。
10年のうちの買収・TOBの確率は、kabufuの試算で2割強だ。だが、筆者は価値にその上乗せを入れていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
垂直統合は、薄利の肉の商売を安定させる唯一の仕組みだ。牧場から処理、卸、製品、小売まで持つため、相場の波の一部を社内で吸収できる。米国のオーロラ新工場が稼働すれば、処理能力は約2.5倍になる。牛の頭数が戻れば、利幅は一気に広がる。
輸出にも強みがある。神戸ビーフの輸出量は世界一とされ、日高の第2カット工場を使った豚肉の輸出も拡大する。世界の和牛需要は、人口の減る国内を補って余りある。
調理食品は2023年に参入したばかりで、こてっちゃんに続く商品が育てば、肉の卸より高い利益率が全体を引き上げる。国内でも、首都圏・関西・広島と営業拠点を厚くし、シェアを取りにいく。
資本面では、DOE3%への引き上げが株主還元の方針の変化を示す。株主総会の賛成率が下がったことは、経営の規律を促す圧力でもある。
そして、丸紅という大株主が調達と販路を支える。2029年2月期の営業利益170億円は、実現すれば現在の1.6倍だ。ROE8.5%を超え、10年のうちに10%台へ乗せる道がある。
慎重な見方
肉の卸は、薄利が構造だ。商品の差がなく、値段は相場が決める。営業利益率は過去10年の最高でも4.9%、直近は2.2%だ。少しの原料高と転嫁の遅れで、利益は半分以下にもなる。2025年2月期の営業利益51億円は、その実例だ。
米国の新工場は、危うい賭けだ。米国の牛肉処理は、巨大な大手が支配する。牛の頭数は歴史的な低水準で、原料不足の中で新しい工場が稼働率を上げるのは難しい。減価償却だけが先に重くのしかかる。
会社の計画は、2回続けて下がった。2024年版は2027年2月期に営業利益200億円とROE10%を掲げたが、2026年版は100億円と4.9%まで下がった。計画の信頼性は低い。ニュージーランドの肥育も、事業再構築を余儀なくされている。
ROEは資本コストに届かない。自己資本1,300億円を使って、利益は100億円足らずだ。配当を守るために、純有利子負債は今後も減りにくい。
取締役選任の賛成率が84.7%に落ちたのは、株主が経営に疑問を持ち始めた証拠である。丸紅の関与が深いことは、少数株主にとって利益が相反する面もある。
どちらに重みを置いたか
米国の新工場と輸出の伸びは、強気の見方に確かな根拠がある。ただ、薄利と相場依存の構造、計画の下方修正の連続は、慎重な見方のほうが重い。ROEが資本コストに届かないことは、10年先でも変わらない。
筆者は確率を慎重な側に寄せた。楽観とやや楽観を合わせて24%、やや悲観と悲観を合わせて42%とした。中立は34%だ。
結果は、今の値段とほぼ釣り合う。上振れの余地はあるが、安全域は厚くない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 4,414 円1,399 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,450 円460 億円)。 今の値に割り戻すと 3,031 円961 億円、今との差 +11.2%、 期待の年率 +8.0%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 9,880 円3,131 億円 | 2,524 円800 億円 | +355.0% | +16.4% | 744 円236 億円 |
| やや楽観 | 18% | 7,082 円2,245 億円 | 1,956 円620 億円 | +231.6% | +12.7% | 1,627 円516 億円 |
| 中立 | 34% | 5,079 円1,610 億円 | 1,483 円470 億円 | +140.7% | +9.2% | 2,231 円707 億円 |
| やや悲観 | 27% | 2,299 円729 億円 | 1,199 円380 億円 | +28.3% | +2.5% | 944 円299 億円 |
| 悲観 | 15% | 1,325 円420 億円 | 789 円250 億円 | −22.5% | −2.5% | 317 円101 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,414 円1,399 億円 | 1,450 円460 億円 | +115.1% | +8.0% | 5,863 円1,858 億円 |
今の株価時価総額 2,726 円864 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 垂直統合が実り、米国の新工場と輸出が利益を押し上げる10年 利益 219 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 9,880 円3,131 億円
米国のオーロラ新工場が計画どおり立ち上がり、処理量が約2.4倍になる。牛の頭数が戻って原料が安定し、処理の利幅も戻る。日高の第2カット工場を使った豚肉の輸出、和牛の輸出も伸び、輸入・輸出の数量は1.4倍に増える。
国内では首都圏・関西・広島と営業拠点を厚くしてシェアを取り、人口減による数量減をほぼ打ち消す。2023年に参入した調理食品は、こてっちゃんに続く商品を育て、数量は1.6倍になる。
営業利益は300億円規模に乗り、利益率は3.7%に達する。2022年2月期の最高益を大きく超える水準だ。それでも肉の商売の本質は変わらず、利益率は4%に届かない。ROEは10%台となり、資本コストをようやく超える。
- 国内食肉(牛・豚・鶏の処理・卸):数量 32.0(取扱量(万トン))× 価格 115(1トンあたり卸値(万円))→ 売上 3,685 億円・営業利益 103 億円。拠点増でシェアを取り人口減を相殺
- 輸入食肉・輸出:数量 14.0(取扱量(万トン))× 価格 134(1トンあたり値段(万円))→ 売上 1,876 億円・営業利益 45 億円。和牛・豚肉の輸出が拡大
- 海外食肉処理(米国オーロラ・NZなど):数量 19.2(処理・販売量(万トン))× 価格 94(1トンあたり値段(万円))→ 売上 1,801 億円・営業利益 81 億円。新工場がフル稼働・相場も追い風
- 製品・小売・外食(ホルモン製品・調理食品・直営店):数量 4.4(出荷量(万トン))× 価格 201(1トンあたり値段(万円))→ 売上 886 億円・営業利益 75 億円。調理食品が育つ
倍率:事業の純利益 219 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍。全体の PER 14.19 倍、時価総額 3,108 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:米国新工場の稼働、牛肉相場の追い風、和牛と豚肉の輸出拡大が同時に続く必要がある。会社の計画が繰り返し下方修正されてきた事実を踏まえ、低めに置いた。
やや楽観 18% 計画の8割を達成し、米国と輸出が国内の縮小を補う10年 利益 170 億円 · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 7,082 円2,245 億円
米国新工場の稼働は1〜2年遅れるが、10年のうちにフル稼働へ届く。処理の利幅は米国の牛肉相場に左右されながらも、平均では3%台後半を保つ。国内食肉は数量が3%ほど減るものの、取引先の拡大で利益率は2.4%まで戻る。
輸出は和牛の需要に支えられて堅調で、調理食品も数量を45%伸ばす。営業利益は240億円台になり、2029年2月期の計画170億円を7年ほど遅れて超える形だ。
還元はDOE3%を守る配当が中心で、ROEは8%台にとどまる。資本コストとほぼ並ぶ水準で、優れた会社とまでは言えない。
筆者は、この筋書きを「会社が自分で描いた絵に、10年かけて近づく」姿とみている。国内の拠点整備と調理食品が着実に積み上がり、輸出が下支えになる。大きな賭けが外れない限り、ここまでは届く。
- 国内食肉(牛・豚・鶏の処理・卸):数量 31.0(取扱量(万トン))× 価格 115(1トンあたり卸値(万円))→ 売上 3,575 億円・営業利益 86 億円。取引先の拡大で利幅が戻る
- 輸入食肉・輸出:数量 12.7(取扱量(万トン))× 価格 134(1トンあたり値段(万円))→ 売上 1,702 億円・営業利益 36 億円。輸出が堅調
- 海外食肉処理(米国オーロラ・NZなど):数量 16.8(処理・販売量(万トン))× 価格 94(1トンあたり値段(万円))→ 売上 1,576 億円・営業利益 58 億円。新工場が遅れて立ち上がる
- 製品・小売・外食(ホルモン製品・調理食品・直営店):数量 4.0(出荷量(万トン))× 価格 201(1トンあたり値段(万円))→ 売上 803 億円・営業利益 63 億円。調理食品が着実に伸びる
倍率:事業の純利益 170 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.0 倍。全体の PER 13.02 倍、時価総額 2,213 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社が2026年4月に引き下げた計画(29年2月期に営業利益170億円)を、10年かけて少し超える程度の成功。新工場が遅れながらも立ち上がる想定で、最も現実味のある上振れ。
中立 34% 国内の縮小を米国と輸出が補い、薄い利益率のまま堅実に伸びる10年 利益 126 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 5,079 円1,610 億円
国内食肉は数量が5%ほど減り、価格は物価並みに上がる。利幅は2%前後で動かない。米国の新工場は立ち上がるが、牛肉の原料不足と処理業者どうしの競争で、利益率は3%に届かず2.5%にとどまる。
輸出は和牛と日高の豚肉が数量を15%押し上げる。調理食品は参入から10年で数量が1.3倍になり、全体の利益の4分の1を稼ぐ。営業利益は190億円弱になり、売上は7,000億円を超える。
利益率は2.6%で、直近の2.2%よりわずかに上がるだけだ。ROEは7%弱で資本コストに届かず、会社の自己資本の厚みはそのまま利益率の低さに表れる。DOE3%の配当を続けつつ、投資には内部のお金を使う。
- 国内食肉(牛・豚・鶏の処理・卸):数量 30.4(取扱量(万トン))× 価格 115(1トンあたり卸値(万円))→ 売上 3,501 億円・営業利益 74 億円。国内は人口減で数量減、利幅は横ばい
- 輸入食肉・輸出:数量 11.5(取扱量(万トン))× 価格 134(1トンあたり値段(万円))→ 売上 1,541 億円・営業利益 28 億円。輸出の伸びで数量増
- 海外食肉処理(米国オーロラ・NZなど):数量 14.4(処理・販売量(万トン))× 価格 94(1トンあたり値段(万円))→ 売上 1,351 億円・営業利益 34 億円。新工場が立ち上がる
- 製品・小売・外食(ホルモン製品・調理食品・直営店):数量 3.6(出荷量(万トン))× 価格 201(1トンあたり値段(万円))→ 売上 721 億円・営業利益 50 億円。調理食品が伸びる
倍率:事業の純利益 126 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 1,575 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界ノートの中立(国内の食肉は人口減で緩やかに縮小、輸出と調理食品は伸びる)と、会社の計画を2割ほど割り引いた中心の筋書き。計画の下方修正が続いてきた経緯から、強気より慎重の側に厚みを置いた。
やや悲観 27% 牛肉の原料高と米国の競争で、利幅が戻らない10年 利益 75 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 2,299 円729 億円
米国の牛が足りない状態が長引き、原料牛の値段が上がっても製品に載せきれない。処理の利幅は1%で、新工場は稼働率が低いまま減価償却の重みだけが残る。
国内は人口減の数量減が加速し、大手ハムメーカーの調達力に押されて値上げの転嫁が遅れる。利益率は1.7%まで下がる。輸出は中国向けの不振と為替の逆風で伸びが鈍る。
営業利益は120億円弱にとどまり、会社が掲げてきたROE8%台の目標は届かない。ROEは5%を割る。配当は守るが、自社株買いなどの上乗せは出ない。
数字だけ見れば、赤字には落ちない。ただ、10年かけて資本を厚くしても稼ぐ力は上がらず、自己資本の重さだけが残る。筆者が最も起こりやすい悲観とみるのは、この「静かな停滞」だ。
- 国内食肉(牛・豚・鶏の処理・卸):数量 28.8(取扱量(万トン))× 価格 112(1トンあたり卸値(万円))→ 売上 3,218 億円・営業利益 55 億円。価格転嫁が遅れ、人口減も加速
- 輸入食肉・輸出:数量 10.5(取扱量(万トン))× 価格 130(1トンあたり値段(万円))→ 売上 1,365 億円・営業利益 16 億円。輸出が伸び悩む
- 海外食肉処理(米国オーロラ・NZなど):数量 12.0(処理・販売量(万トン))× 価格 91(1トンあたり値段(万円))→ 売上 1,092 億円・営業利益 11 億円。新工場の稼働率が低い
- 製品・小売・外食(ホルモン製品・調理食品・直営店):数量 3.2(出荷量(万トン))× 価格 195(1トンあたり値段(万円))→ 売上 617 億円・営業利益 34 億円。調理食品は競争で利幅縮小
倍率:ROE4.6%は資本コスト8%を大きく下回り、PERの上限は1÷k=11.8倍。稼ぐ力の約0.77倍の9.0倍に置いた(構造的な負けの筋書きで、7割への引き上げはしない)。
確率:米国の牛の頭数が戻らず処理の利幅が薄いまま続く、国内の価格転嫁が遅れる、新工場の稼働が遅れる。いずれもこれまでの実績に近く、起こりやすい。2025年2月期に利益率が1.2%まで落ちた事実が、この筋書きの下限を示す。
悲観 15% 米国の海外投資が重荷になり、減損と赤字が続く10年 利益 14 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,325 円420 億円
米国の新工場に投資した資金が回収できず、稼働率の低さと原料牛の高騰で赤字が続く。ニュージーランドの肥育事業も採算が合わず、減損して縮小する。
国内は伊藤ハム米久やスターゼンなど同業との競争で数量を失い、卸の利幅は1%に落ちる。輸入は為替と相場の振れで損失を出す年が増える。
営業利益は20億円台まで落ち、純利益はほとんど残らない。減損で自己資本が200億円減り、配当は利益のない年にも守ろうとするが、DOE3%の目標は引き下げる。会社の価値は稼ぐ力ではなく、持っている土地・工場・在庫の売却価値で測られるようになる。
借金は増えないが、減らない。EV ÷ 営業利益 は 26 倍に達し、利益の倍率だけでは測れない状態だ。
- 国内食肉(牛・豚・鶏の処理・卸):数量 26.2(取扱量(万トン))× 価格 107(1トンあたり卸値(万円))→ 売上 2,819 億円・営業利益 28 億円。競争で数量を失い卸の利幅が薄い
- 輸入食肉・輸出:数量 9.0(取扱量(万トン))× 価格 125(1トンあたり値段(万円))→ 売上 1,125 億円・営業利益 6 億円。相場と為替で損失の年が増える
- 海外食肉処理(米国オーロラ・NZなど):数量 9.6(処理・販売量(万トン))× 価格 84(1トンあたり値段(万円))→ 売上 806 億円・営業利益 −24 億円。稼働率が低く赤字が続く
- 製品・小売・外食(ホルモン製品・調理食品・直営店):数量 2.5(出荷量(万トン))× 価格 188(1トンあたり値段(万円))→ 売上 466 億円・営業利益 14 億円。調理食品も伸びない
倍率:事業の稼ぐ力(純利益14億円前後÷資本コスト)は170億円にも届かず、価値の床は売れる資産で決まる。今の自己資本1,321億円に0.32を掛けた。EV ÷ 営業利益 は 26 倍になるが、価値の床は利益でなく売れる資産で見ている。減損後の自己資本ではなく、今の自己資本に掛けている。
確率:米国の食肉処理は大手の巨大企業が強く、中堅の規模では勝ちにくい。新工場への投資が回収できず、ニュージーランドも不振のまま残る事態が重なる。会社の計画が2回続けて下がってきた実績から、5%台でなく15%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内食肉(牛・豚・鶏の処理・卸)
牛・豚・鶏を仕入れ、切り分けて量販店・外食・食品メーカーへ卸す国内の主力事業。国産牛・神戸ビーフなど銘柄肉と、日高食肉センターなどの自社処理が柱。
| 数量取扱量(万トン) | 価格1トンあたり卸値(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 32.0 | 86 | 2,750 | 56 |
| 10 年後 中立 | 30.4 | 115 | 3,501 | 74 |
取り方:会社の開示区分は「製造・卸売/小売/外食」の3つで、事業の柱ごとの数字は取れない。そこで自社の事業の柱(国内食肉・輸入と輸出・海外・製品)に分け、売上は推定した。国内食肉は売上のおよそ6割弱と置き、牛・豚・鶏の平均卸値を1トン約86万円として取扱量32万トンを逆算した(推定)。営業利益率は2.0%(食肉卸の薄い利幅)。数量は実質で、国内の食肉の消費量は人口減で10年0.9〜1.0倍。価格は名目で物価並み(10年1.34倍)。
輸入食肉・輸出
米国・豪州などから牛肉・豚肉を輸入して国内へ売る事業と、和牛・国産豚肉を30か国以上へ輸出する事業。
| 数量取扱量(万トン) | 価格1トンあたり値段(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 10.0 | 100 | 1,000 | 14 |
| 10 年後 中立 | 11.5 | 134 | 1,541 | 28 |
取り方:輸入と輸出を合わせて売上の2割強と置いた推定。輸入牛肉は1トン約100万円で取扱量10万トンと置いた。営業利益率は1.5%(輸入は相場と為替で振れる)。数量は輸出(和牛・日高の豚肉)の伸びで10年1.15倍が中立。価格は名目で物価並み(10年1.34倍)。
海外食肉処理(米国オーロラ・NZなど)
米国ネブラスカ・イリノイ州の食肉処理会社オーロラ・パッキング、豪州のモンビーフ、ニュージーランドの肥育事業。
| 数量処理・販売量(万トン) | 価格1トンあたり値段(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 8.0 | 70 | 560 | 5 |
| 10 年後 中立 | 14.4 | 94 | 1,351 | 34 |
取り方:海外食肉の売上を560億円と置いた推定(米国の牛肉処理が中心)。米国産牛肉の1トン約70万円で8万トンと置いた。営業利益は1%弱で薄い。数量は新工場の稼働で能力が2.5倍規模になる計画のため、中立で10年1.8倍(稼働率の立ち上がりを見込む)。価格は名目で物価並み(10年1.34倍)。
製品・小売・外食(ホルモン製品・調理食品・直営店)
「こてっちゃん」などホルモン製品、2023年に本格参入した調理食品、直営の小売・外食店。
| 数量出荷量(万トン) | 価格1トンあたり値段(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 2.8 | 150 | 413 | 30 |
| 10 年後 中立 | 3.6 | 201 | 721 | 50 |
取り方:売上400億円強と置いた推定。加工度が高く単価は1トン約150万円、出荷量は2.75万トン。営業利益率は7%(肉の卸より高いが、全体の中では小さい)。数量は調理食品の新規参入と家庭の中食の伸びで10年1.3倍が中立。価格は名目で物価並み(10年1.34倍)。
リスクと懸念
米国の新工場が稼働率を上げられない
オーロラの新工場は、処理能力を約2.5倍に増やす。だが米国の牛の頭数は歴史的な低水準で、原料が不足すれば稼働率は上がらず、減価償却だけが重くなる。大手が強い市場で、中堅が規模を取りにいく賭けでもある。
牛肉相場と為替で利益が大きく振れる
営業利益率は2%前後で、2025年2月期は1.2%まで落ちた。原料が上がっても、量販店への転嫁には数か月かかる。輸入と輸出は為替の影響も受け、薄い利益は簡単に消える。
会社の計画が下がり続けている
2024年版は2027年2月期に営業利益200億円を掲げたが、2026年版は100億円まで下がった。海外の立ち上がりの遅れと不振が理由で、今の計画も達成できる保証はない。
ニュージーランドなど海外事業の不振
2023年に始めたニュージーランドの肥育は、米国牛肉市況の改善遅れと中国向けの販売不振で、事業再構築に入った。海外への投資が回収できないと、減損と資本の毀損につながる。
国内の人口減と大手との競争
国内の食肉消費は人口減で緩やかに縮む。日本ハム・伊藤ハム米久・スターゼンといった大手は、調達力とブランドを持つ。卸が中心のエスフーズは、値上げの転嫁で後手に回りやすい。
株主との関係と丸紅の存在
2026年5月の取締役選任の賛成率は84.7%に下がった。大株主の丸紅は議決権の15%前後を持ち、調達と販路を支える。再編が起きる場合、少数株主の利益と丸紅の判断が一致するかは分からない。
今後の分かれ目
- 米国の新工場が計画どおり稼働し、処理量が増え始めたら
- 海外食肉の利益率を上方に見直し、楽観とやや楽観の筋書きに重みを移す。
- 米国の牛の頭数が回復し、原料牛の価格が落ち着いたら
- 処理の利幅が戻るとみて、海外食肉の利益率を引き上げる。
- 会社が計画を再び下方修正したら
- 経営の実行力への見方を厳しくし、やや悲観と悲観の確率を引き上げる。
- ニュージーランドや米国で減損が出たら
- 資本配分の失敗が続くとみて、悲観の確率を引き上げ、自己資本の見方を下げる。
- 丸紅が持株を増やす、または売却する動きが出たら
- 再編の確率を見直す。ただし価値は、再編を前提にせず事業の稼ぐ力で測る。
- 調理食品がこてっちゃんに続く商品を育て、利益率7%超を保てたら
- 製品の利益を引き上げ、全体の利益率の見通しを上げる。
見ておくもの
- 米国オーロラの新工場の稼働率と処理量
- 米国の牛の頭数と原料牛の価格
- セグメント別(製造・卸売、小売、外食)の営業利益率
- 和牛・豚肉の輸出量と為替の動き
- 中期経営計画の達成度と、計画の下方修正の有無
- 取締役選任の賛成率と、丸紅の持株比率
倍率と資本コストの決め方
国内食肉、輸入と輸出、海外食肉処理、製品の4つに分け、取扱量(実質)と名目の値段で10年を積んだ。開示のセグメントは3区分しかなく、4区分の売上は推定。利益はその時点の営業利益に純利益÷営業利益の過去の比(約0.70)を掛け、金利の上昇による利払いの増加(約5億円)を引いた。倍率は、ROEが資本コスト(8.5%)に届く筋書きでは式の上限の約9割、届かない筋書きでは1÷k(約11.8倍)の約0.8〜0.85倍に置いた。今の株価と比べたのは最後。ハム大手の筋書きと同じ式・同じ物差しで置き、品質の上乗せは卸の比重の大きさから+1.0%と高めにした。新リース会計基準(2028年2月期から)で営業利益と純有利子負債の形が変わるが、直営店は小さく、10年後の数字は今と同じ形に揃えた。持ち合い株の評価差額金は配当が純利益に入っているので余り資産に足していない(二重を消した)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→14.19 倍・やや楽観 PER 10.3→13.02 倍・中立 PER 10→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に品質の上乗せ1.0%を足した。事業は傾いていないので、追加の上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。