結論
ダイドーは、街角の自動販売機で缶コーヒーを売ってきた会社だ。いまその自販機が最大の重荷になっている。筆者の結論は、今の株価は回復をかなり織り込んでおり、10年で見ると割高寄りだ。
2026年1月期は、自販機の資産の減損などで純損益が300億円の赤字になった。純資産の約3分の1が消えた。国内飲料は営業段階でも赤字で、会社は27万台のうち2万台を引き揚げる。
回復の芽はある。トルコと、2024年に買ったポーランドのWosanaが利益を支え、アサヒ飲料との自販機の統合も進む。減損で減価償却が軽くなり、27年1月期の利益は戻る見込みだ。
ただ、10年を測る物差しで見ると話が変わる。自販機の缶飲料は、コンビニの1.5倍近く、スーパーの3倍近い値段で、勝てない。人口も減る。国内が1桁台の利益率に戻れば上出来で、過去の営業利益率は2〜3%台が普通だった。海外は伸びるが、トルコ・リラの下落が円の利益を削る。
そこで国内は数量を減らし、海外は伸ばす形で積むと、中立の10年後の純利益は今の通常の稼ぎの倍強になる。それでも資本コストで割り戻すと、今の時価総額には届かない。借金は軽く、すぐ傷む会社ではない。割高の理由は事業の悪さでなく、値段が先に走ったことにある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「よくわかるが、持ち続けたいとは言いにくい」部類に入る。
理由の第1は、稼ぐ力の弱さだ。過去10年の営業利益率は1.7〜3.5%で、ROEは中央値で約4%にとどまる。資本コストの7.8%には届かない年が続いた。値段を決める力が弱い事業が、物価の上がる世界で利益を伸ばすのは難しい。
第2は、国内の自販機が10年先に今より強いか、という問いだ。台数を絞って効率を上げる余地はあるが、市場そのものが細る。堀が広がる形ではない。
第3は資本の使い方だ。自販機に積んだ資産を約300億円減損した事実は、過去の投資判断が裏目に出たことを示す。海外買収は正しい方向だったが、為替の波が大きい。
一方で、安全域の面では悪くない。借金が軽く、減損後の帳簿はかなり実態に近い。10年後の利益が普通に戻るなら、ここから大きく傷む会社ではない。ただ、払う値段が高すぎると、その安全域は消える。筆者が気にするのは、事業の質より、値段が事業の改善を先取りしている点だ。
何で稼ぐ会社か
ダイドーグループは4つの事業からなる。売上の約6割は国内飲料で、中身は自動販売機だ。
国内飲料は、ダイドードリンコが缶コーヒー「ダイドーブレンド」や「デミタス」を自販機で売る。売上の大半が自販機経由で、コンビニやスーパーに頼る競合と違い、場所代と機械の維持が固定費として重い。2023年にアサヒ飲料と自販機の運営会社を一つにまとめ、2025年1月に営業会社も合併した。ダイドーアサヒベンディングがその名前で、機械は合計で数十万台規模になる。
海外飲料(売上の約3割)は、2015年にトルコの食品大手ユルドゥズHDの飲料子会社3社の9割を買ったのが始まりだ。トルコではジュースや水を売る。2024年には、ポーランドでプライベートブランドの水とジュースを作るWosanaを買収した。トルコは売上の約19%、ポーランドは約6%を占める。
食品は「たらみ」。フルーツゼリーで国内首位格で、売上は約200億円と小さい。医薬品関連は大同薬品工業で、ドリンク剤やパウチゼリーを製薬会社や化粧品会社から受託して作る。
つまり、稼ぎの源泉は国内の自販機から、トルコ・ポーランドの飲料へ動いている。会社の27年1月期の計画でも、利益は国内より海外が大きい。
優良さと弱いところ
堀は薄い。筆者はこの会社を、強いブランドを持つ飲料メーカーではなく、自販機という流通網を持つ会社と見る。
缶コーヒーでは固有のファンがいるが、天然水のような全国ブランドはない。値段を自分で決める力は小さく、自販機の値段は割高さが目立つようになった。コンビニの約1.5倍、スーパーの約3倍と並ぶと、設置場所の便利さだけで買ってもらう形だ。
資本の使い方は評価が分かれる。2015年のトルコ買収は成長の柱になったが、超インフレ会計の重みと、リラの下落に利益が揺さぶられる。2024年のWosana買収は、PB水の受託という地味だが需要の読みやすい事業を買った点で、筆者は悪くないと見る。
一方で、国内の自販機の台数を増やし続けた結果が今回の減損だ。2026年1月期の減損は約300億円で、10年分の見立てを一度に改めた形になる。
資本効率は低い。過去10年のROEは中央値で約4%にとどまる。営業利益率も1.7〜3.5%に張り付き、最高でも5%台だ。借金が軽く、財務は堅い(純有利子負債は約60億円)のが救いで、すぐに行き詰まる心配はない。堅さは安全域にはなるが、稼ぐ力そのものを高めはしない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の清涼飲料市場は約2,200万klで、人口が年0.5%ずつ減る分を、無糖茶や水の伸びが埋めている。大手はコカ・コーラ、サントリー、伊藤園、アサヒ飲料、キリンの5社だ。
ダイドーが戦う自販機チャネルは、その中でいちばん条件が悪い。ペットボトルのまとめ買いが主流になり、物価高で、コンビニの1.5倍近い自販機の値段は割高に映る。サッポロHDは約4万台の自販機事業を売り、日本コカ・コーラも運営を手放した。業界の再編は「自販機は規模と立地を絞って運営する」方向に動いている。ダイドーがアサヒ飲料と運営を一体化したのも同じ流れだ。
国内の見通しは、数量が10年で1割ほど減り、価格は物価並みに上がるのが中心だ。値上げを重ねると、買い控えやPBへの流出が進む。そこで利益率は、台数を絞って効率が上がるぶんをみても、数%にとどまると筆者は見る。
海外は性格が違う。トルコは人口が若く、水・ジュースの数量は伸びる。ただし物価の上昇がリラの下落と同時に進み、円に直した利益は目減りしやすい。ポーランドはPB水の受託で、大手小売への供給という安定した需要があるが、利益率は低い。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、自社株買いの方針は確かめられなかった。2026年1月期の配当は前期から25%減らした。赤字でも配当を維持したのは、株主への配慮が見える一方、再建の資金には回らない。
買収は、トルコ(2015年・約1.1億ドル)とポーランド(2024年)の2件が柱だ。どちらも「現地の飲料メーカーを買う」形で、国内の自販機に続く成長を海外に求めた。結果は、トルコが稼ぎ頭になり、ポーランドが上乗せしている。ただし超インフレ会計の調整だけで、2026年1月期の純損益を約27億円押し下げた。
財務は純有利子負債が約60億円で、自己資本比率は約4割に落ちた。減損で純資産が減ったが、借金は重くない。今後は自販機の引き揚げで資金が出る一方、新しい機械や海外の投資が出ていく。
再編の面では、アサヒ飲料との合弁(ダイドー66.6%・アサヒ飲料33.4%)が今後の焦点になる。完全な統合や、どちらかによる買い取りの可能性は否定できない。ただ、今回確かめられた資料に具体的な計画はなく、筆者も確率には入れていない。
株主優待は、200株以上で6千円相当の自社商品(年1月)。会社は優待の費用を開示していないため、200株以上の約1.2万人(自社商品の原価と送料)から年5億円と推定した。優待は株主が受け取る現物の還元なので、10年の還元に年額×10年を、中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5の係数で足した(費用は販管費として利益から引き済みで、自己資本の流れには入れない)。
点検済み:中立の営業利益率4.8%は会社予想(27・28年1月期4.2〜4.4%)に近く、国内飲料の黒字化(-1.5%→3.5%)は2万台の自販機引き揚げと優良立地への入れ替えという実行済みの構造改革が裏づけ。海外は今以下。数字は据え置く。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
減損で自販機の帳簿は軽くなり、減価償却が減る。国内飲料は2026年1月期の赤字から、27年1月期に黒字へ戻る計画で、2万台の引き揚げと優良立地への入れ替えが進めば、1台あたりの採算は上がる。アサヒ飲料との運営の統合で、配送や営業の重複が減り、コストは確実に下がる。
海外は強い。トルコは人口が若く、水・ジュースの数量が伸び続ける。ポーランドのWosanaは大手小売に供給するPB水で、景気に左右されにくい。海外の利益は27年1月期に92億円と、国内を上回る計画だ。10年のうちに海外の売上が国内に並べば、利益の主役は入れ替わる。
自販機の台数を絞るのは、街の飲料需要が消えるのでなく、場所を選ぶということだ。人の動きが戻った駅前やオフィスは、いまも缶飲料が売れる。コーヒー比率を下げて止渇系を増やせば、夏場の稼ぎも安定する。
財務は堅く、赤字でも配当を保った。株主を向いた会社でもあり、資本効率の改善が進むなら、ROEが1桁台後半から10%台へ上がる道は見える。
慎重な見方
国内飲料の悪化は、景気の波でなく構造の問題だ。ペットボトルのまとめ買いが主流になり、割高な自販機は値上げするほど選ばれなくなる。2万台を減らしても、残る台数の利益が出る保証はない。減損は一度やれば終わりでなく、売上が落ちれば再び起きる。
アサヒ飲料との統合は、コストを下げる一方で、運営の主導権を失う道でもある。ダイドーの独自の缶コーヒーの強みは、すでにサントリーのBOSSやコカ・コーラのジョージアに押されている。
海外の稼ぎは為替に洗われる。トルコは超インフレで、利益が円に直すほどに目減りする。2026年1月期の会計調整だけで、純損益は約27億円悪化した。ポーランドは低利益率のPB事業で、買収の効果が出るには時間がかかる。
資本効率は過去10年でずっと低く、営業利益率は5%を超えた年が2013年までさかのぼる。最近の株価は、回復の期待を先に織り込んでいる。計画どおり進んでも10年の利益は資本コストに届きにくく、少し外れるだけで、割高さがはっきり出る。
どちらに重みを置いたか
強い見方には根拠があり、国内の合理化と海外の伸びは本物だ。ただ、慎重な見方のほうが、10年の利益の水準を現実に近く捉えている。国内の営業利益率は1桁台前半、海外は為替で削られる、という置き方が筋だと見て、確率は中立に最も厚く、やや悲観と悲観を合わせて4割弱に寄せた。強気の確率は合計で25%にとどめた。結果として、中立でも今の時価総額を上回れず、総合は割高に出る。
10 年後の 5 つの筋書き(2037/01 期)
確率で加重した株価時価総額 3,449 円1,094 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 877 円278 億円)。 今の値に割り戻すと 2,143 円679 億円、今との差 −29.6%、 期待の年率 +3.6%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 8,301 円2,632 億円 | 1,640 円520 億円 | +226.5% | +12.6% | 696 円221 億円 |
| やや楽観 | 18% | 5,530 円1,753 億円 | 1,230 円390 億円 | +122.0% | +8.3% | 1,217 円386 億円 |
| 中立 | 37% | 3,772 円1,196 億円 | 984 円312 億円 | +56.2% | +4.6% | 1,760 円558 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,397 円443 億円 | 617 円196 億円 | −33.9% | −4.1% | 483 円153 億円 |
| 悲観 | 14% | 1,014 円322 億円 | 205 円65 億円 | −60.0% | −8.7% | 171 円54 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,449 円1,094 億円 | 877 円278 億円 | +42.1% | +3.6% | 4,326 円1,372 億円 |
今の株価時価総額 3,045 円965 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 自販機が立ち直り、トルコとポーランドが利益の柱になる10年 利益 169 億円 · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 8,301 円2,632 億円
自販機の再建が思った以上にうまく進む。2万台の引き揚げで採算の悪い機械が消え、優良な立地へ入れ替えた結果、国内飲料の営業利益率は5%台半ばまで戻る。アサヒ飲料との運営の統合でコストが下がり、物価並みの値上げも通る。トルコは人口の若さを背景に数量を伸ばし、ポーランドのWosanaも大手小売への供給を広げる。海外の売上は国内に並び、利益では国内を上回る。たらみと大同薬品も受託の増加で伸びる。10年後の売上は約3,800億円、営業利益は約270億円と過去最高の水準になる。配当は厚くなり、自己資本も積み上がる。会社は国内の自販機会社から、海外中心の飲料会社に姿を変える。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年5億円×10年×1.0=50億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 国内飲料:数量 36.1(出荷量(万kl・推定))× 価格 50(1klあたりの名目の単価(万円))→ 売上 1,814 億円・営業利益 100 億円。台数を絞って採算が戻る
- 海外飲料:数量 93.5(出荷量(万kl・推定))× 価格 15(1klあたりの円換算の単価(万円))→ 売上 1,443 億円・営業利益 159 億円。トルコ・ポーランドが主力に
- 食品:数量 3.3(販売量(万t・推定))× 価格 84(1tあたりの名目の単価(万円))→ 売上 273 億円・営業利益 14 億円。ゼリー定着
- 医薬品関連:数量 6.9(受託の出荷本数(億本相当・推定))× 価格 42(1本あたりの名目の単価(円))→ 売上 288 億円・営業利益 23 億円。受託が伸びる
倍率:事業の純利益 169 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.0% が k 8.30% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.3 倍。全体の PER 15.26 倍、時価総額 2,579 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の台数整理が当たり、アサヒ飲料との統合が効き、海外も計画以上に伸びる必要がある。過去の利益率は5%台が最高で、続けて当たる確度は低い。
やや楽観 18% 国内の採算が戻り、海外が国内に並ぶ10年 利益 122 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 5,530 円1,753 億円
27年1月期の計画に近い黒字の回復が続く。国内の自販機は台数を絞り、営業利益率は4%台半ばまで戻る。海外はトルコの数量の伸びとポーランドの拡大で売上が1.5倍近くになり、利益率は9%台半ばで安定する。為替の下落は価格の弱さとして織り込むが、利益を大きく壊すほどではない。たらみ・大同薬品は小幅に伸びる。10年後の営業利益は約200億円で、過去にない水準に届く。ただし国内の構造的な縮みは止まらず、全社の利益率は6%に届かない。配当は利益の4割ほどで、財務は堅いまま推移する。アサヒ飲料との統合の効果は出るが、国内の主役はあくまで自販機の運営会社のままだ。海外の稼ぎが国内の弱さを覆う形で、利益の構成は大きく入れ替わる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年5億円×10年×1.0=50億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 国内飲料:数量 35.0(出荷量(万kl・推定))× 価格 50(1klあたりの名目の単価(万円))→ 売上 1,757 億円・営業利益 79 億円。採算が戻る
- 海外飲料:数量 82.5(出荷量(万kl・推定))× 価格 15(1klあたりの円換算の単価(万円))→ 売上 1,224 億円・営業利益 116 億円。海外が国内に並ぶ
- 食品:数量 3.2(販売量(万t・推定))× 価格 80(1tあたりの名目の単価(万円))→ 売上 253 億円・営業利益 11 億円。小幅に伸びる
- 医薬品関連:数量 5.9(受託の出荷本数(億本相当・推定))× 価格 40(1本あたりの名目の単価(円))→ 売上 239 億円・営業利益 17 億円。受託が伸びる
倍率:事業の純利益 122 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.8% が k 8.30% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍。全体の PER 13.98 倍、時価総額 1,706 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:27年1月期の計画に近い黒字回復が定着し、海外が伸びる筋書き。実現はありうるが、国内の構造的な縮みを考えると中立ほどの確度は置けない。
中立 37% 国内は細りながら黒字を保ち、海外が稼ぎを支える10年 利益 91 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 3,772 円1,196 億円
国内は人口減とPBへの流出で数量が10年で1割減る。価格は物価並みに上がり、自販機の台数を絞ることで営業利益率は3.5%まで戻るが、それ以上には伸びない。海外はトルコの数量が伸び、ポーランドも拡大するが、価格は物価並みに届かず(リラが物価差だけ下がるため)、リラ安が円の価格を押し下げ、売上は1.6倍弱、利益率は8.5%にとどまる。たらみと大同薬品は小幅に伸びる。10年後の売上は約3,250億円、営業利益は約155億円。2026年1月期の42億円と比べると大きく増えるが、物価で名目の売上が1.3倍になる中で、利益率は5%に届かない。ROEは1桁台後半にとどまり、資本コストを少し上回る程度。配当は利益の4割で、自己資本は緩やかに積み上がる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年5億円×10年×1.0=50億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 国内飲料:数量 34.2(出荷量(万kl・推定))× 価格 50(1klあたりの名目の単価(万円))→ 売上 1,719 億円・営業利益 60 億円。数量減を価格で補う
- 海外飲料:数量 74.3(出荷量(万kl・推定))× 価格 14(1klあたりの円換算の単価(万円))→ 売上 1,058 億円・営業利益 90 億円。リラ安で円では伸び鈍い
- 食品:数量 3.1(販売量(万t・推定))× 価格 80(1tあたりの名目の単価(万円))→ 売上 248 億円・営業利益 10 億円。横ばい圏
- 医薬品関連:数量 5.5(受託の出荷本数(億本相当・推定))× 価格 40(1本あたりの名目の単価(円))→ 売上 220 億円・営業利益 13 億円。受託の緩い増加
倍率:事業の純利益 91 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 8.30% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.7 倍。全体の PER 12.7 倍、時価総額 1,156 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内は人口減とPB流出で数量が減り、価格で補う。海外は伸びるが為替で目減りする。2人の議論の落としどころで、最も厚く置いた。
やや悲観 24% 国内のPB流出と為替で、利益が薄いまま続く10年 利益 39 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 1,397 円443 億円
国内の自販機は、台数を絞っても1台あたりの利益が戻らない。PBへの流出と値上げ疲れで数量は2割減り、価格も物価に届かない。営業利益率は1%台にとどまる。海外ではトルコのリラ安が進み、円に直した利益が削られる。ポーランドも低利益率のまま、買収の効果が出ない。たらみ・大同薬品は競争で薄利になる。10年後の売上は約2,700億円、営業利益は約70億円で、今の通常の稼ぎをやや上回る程度にとどまる。ROEは資本コストを下回り、ためた利益が価値を生まない会社になる。借金は軽く、倒れはしない。配当は4割を維持するが、成長の絵は描けない。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年5億円×10年×0.8=37.5億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 国内飲料:数量 30.4(出荷量(万kl・推定))× 価格 48(1klあたりの名目の単価(万円))→ 売上 1,459 億円・営業利益 22 億円。PB流出で利益が薄い
- 海外飲料:数量 63.3(出荷量(万kl・推定))× 価格 13(1klあたりの円換算の単価(万円))→ 売上 826 億円・営業利益 50 億円。為替で利益が削られる
- 食品:数量 2.9(販売量(万t・推定))× 価格 75(1tあたりの名目の単価(万円))→ 売上 219 億円・営業利益 7 億円。競争で薄利
- 医薬品関連:数量 5.0(受託の出荷本数(億本相当・推定))× 価格 38(1本あたりの名目の単価(円))→ 売上 189 億円・営業利益 8 億円。薄利
倍率:ROE約4%がk8.3%以下なので、PERの上限は1÷k(12.8倍)。ためた利益は額面未満の価値と見て、稼ぐ力の8割ほど(10.5倍)に置いた。
確率:自販機の台数整理が進んでも採算が戻らず、PBへの流出が続く筋書き。過去10年の利益率の低さから、実現しやすい水準と見て厚めに置いた。
悲観 14% 自販機が構造的に採算割れし、海外もつまずく10年 利益 −12 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,014 円322 億円
自販機が構造的に採算割れする。ペットボトルのまとめ買いと実質賃金の低下で、国内の数量は4割減り、価格も物価に追いつかず、営業利益率は赤字に沈む。再度の減損が出る。アサヒ飲料との統合も、運営のコストを下げきれない。トルコでは超インフレと通貨の急落で、現地の事業が円ではほぼ利益を生まなくなる。ポーランドも低利益率のPB事業が重荷になる。たらみ・大同薬品は縮み、全社でも営業利益は赤字に近い。配当は利益でなく、手元の現金と一部資産の売却で払う。会社は残る工場・資産と純資産で持ちこたえる。稼ぐ力は消え、価値は売れる資産に頼る。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年5億円×10年×0.5=25億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 国内飲料:数量 22.8(出荷量(万kl・推定))× 価格 43(1klあたりの名目の単価(万円))→ 売上 983 億円・営業利益 −20 億円。自販機が採算割れ
- 海外飲料:数量 49.5(出荷量(万kl・推定))× 価格 11(1klあたりの円換算の単価(万円))→ 売上 529 億円・営業利益 11 億円。リラ急落・撤退も
- 食品:数量 2.6(販売量(万t・推定))× 価格 66(1tあたりの名目の単価(万円))→ 売上 172 億円・営業利益 2 億円。縮小
- 医薬品関連:数量 4.1(受託の出荷本数(億本相当・推定))× 価格 33(1本あたりの名目の単価(円))→ 売上 136 億円・営業利益 1 億円。縮小
倍率:純利益は赤字で、利益から値が付けられない。床は稼ぐ力でなく売れる資産。今の自己資本643億円の半分(PBR0.5倍)に置いた。自販機は減損済みで、残る工場・土地建物・海外の設備を帳簿の半分で売る前提。
確率:国内の自販機で再度の減損が起き、トルコで通貨の急落や撤退が重なる複合の筋書き。低頻度だが、自販機の構造的な縮みを見ると無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内飲料
自販機が売上の大半を占める国内の缶・ペットボトル飲料。ダイドーブレンドなどのコーヒーが中心。アサヒ飲料と運営を統合した。
| 数量出荷量(万kl・推定) | 価格1klあたりの名目の単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 38.0 | 38 | 1,425 | −22 |
| 10 年後 中立 | 34.2 | 50 | 1,719 | 60 |
取り方:2026年1月期の国内飲料の売上1,425億円(開示)を、推定出荷量38万kl(国内市場約2,200万klの1.7%)で割って単価を逆算した。数量は推定。営業利益は報道の「22億円の赤字」をそのまま置いた。価格は名目で物価並み(10年1.34倍)。数量は人口減と自販機2万台の引き揚げで中立10年0.9倍。
海外飲料
トルコ(ジュース・水、2015年買収)とポーランド(PBの水・ジュース、Wosana、2024年買収)が中心。
| 数量出荷量(万kl・推定) | 価格1klあたりの円換算の単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 55.0 | 12 | 653 | 60 |
| 10 年後 中立 | 74.3 | 14 | 1,058 | 90 |
取り方:売上653億円(トルコ約456億円・ポーランド約143億円)を推定出荷量55万klで割って単価を逆算した。数量は推定。営業利益60億円は推定(会社は27年1月期に92億円を計画)。価格は円換算で1.2倍(物価でなく、リラが物価差だけ下がるぶん円では物価並みに届かないとみた)。数量はトルコの人口増とポーランドの拡大で中立10年1.35倍。
食品
フルーツゼリーの「たらみ」。国内首位格の小さな食品事業。
| 数量販売量(万t・推定) | 価格1tあたりの名目の単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 3.3 | 60 | 195 | 8 |
| 10 年後 中立 | 3.1 | 80 | 248 | 10 |
取り方:売上195億円(開示)を推定販売量3.25万t・1tあたり60万円で置いた。数量・単価とも推定。営業利益8億円は推定。価格は物価並み。数量は人口減で中立10年0.95倍。
医薬品関連
大同薬品工業。ドリンク剤・パウチゼリーの受託製造と、希少疾病用医薬品。
| 数量受託の出荷本数(億本相当・推定) | 価格1本あたりの名目の単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 4.6 | 30 | 137 | 9 |
| 10 年後 中立 | 5.5 | 40 | 220 | 13 |
取り方:売上137億円(医薬品関連131億円と希少疾病用医薬品6億円の合計)を、受託の出荷本数4.57億本相当・1本あたり単価を30と置いた。本数・単価とも推定。営業利益9億円は推定。価格は物価並み。数量は受託の増加で中立10年1.2倍。
リスクと懸念
自販機チャネルの構造的な縮み
自販機の缶飲料は、コンビニの約1.5倍、スーパーの約3倍の値段で、勝てない。2万台を引き揚げても、残る機械の採算が戻る保証はない。値上げを重ねるほど、買い控えとPBへの流出が進む。国内の需要そのものが細る中で、利益率の回復が想定を下回れば、再び減損が出る。
追加の減損
2026年1月期に自販機資産を約300億円減損したが、売上が計画を割れば同じことが再び起きる。減損は現金を使わないが、自己資本が減り、配当と再投資の余力が細る。純資産は935億円から649億円に落ちており、さらに削れば財務の見え方が変わる。
トルコの超インフレとリラ安
海外飲料の稼ぎの中心はトルコで、売上の約19%を占める。超インフレ会計の調整だけで2026年1月期の純損益を約27億円押し下げた。リラが物価差を超えて下がれば、円に直した利益は削られる。通貨の急落や規制の変更で、投資が回収できなくなる危険もある。
アサヒ飲料との統合の主導権
自販機の運営は、ダイドー66.6%・アサヒ飲料33.4%の合弁にまとめた。コストは下がるが、営業の主導権が揺らぎ、独自ブランドの扱いが後回しになる恐れがある。将来、アサヒ側が買い増す、あるいはダイドーが運営を手放す形に進む可能性も残る。
ポーランドの買収の効果
2024年に買ったWosanaはPB水が中心で、利益率は低い。大手小売への供給は安定した需要を持つ一方、価格交渉力は小売側にある。統合の効果が出るまでに時間がかかるうえ、現地の原材料と人件費の上昇を価格に転嫁しにくい。
資本効率の低さ
過去10年のROEは中央値で約4%、営業利益率は1.7〜3.5%の範囲だった。減損で帳簿の自己資本は小さくなったが、稼ぐ力そのものが戻るかは別の話だ。利益率が最高水準でも5%台にとどまる事業で、資本コスト7.8%を継続して超えるのは難しい。
コーヒー比率と原材料高
缶コーヒーはコーヒー豆の価格に左右されやすく、2026年は原材料高の値上げが相次いでいる。会社はコーヒー比率を下げ、止渇系を増やす方針だが、新しい商品が自販機の売上を支えるかは未知数だ。
今後の分かれ目
- 2万台の引き揚げ後も、国内飲料の営業利益率が2%台にとどまったら
- 国内の利益率の前提を下げ、やや悲観と悲観の確率を厚くする。再度の減損の可能性も上がる。
- アサヒ飲料がダイドーアサヒベンディングへの出資を増やす、あるいはダイドーが運営を売却するという発表があったら
- 運営のコストは下がるが、主導権と独自ブランドの扱いが変わる。売却価格が帳簿の自販機資産を上回るかで、悲観の床を見直す。
- トルコ・リラが物価差を超えて急落し、海外飲料の利益が前年を割ったら
- 海外の円換算の価格と利益率の前提を下げる。トルコ事業の撤退や縮小の可能性も筋書きに入れる。
- ポーランドのWosanaで追加の買収や大手小売との新規契約が決まったら
- 海外の数量の前提を上げ、やや楽観側の確率を少し厚くする。ただし利益率が上がるかは別に確かめる。
- 海外飲料の営業利益が会社計画(27年1月期に92億円)を上回って続いたら
- 海外の利益率を上方修正する。国内の弱さをどこまで埋められるかを再評価する。
- 自社株買いや配当性向の引き上げなど、資本効率を意識した方針が出たら
- 還元の額を上げ、ROEの前提をやや上方修正する。ただし利益が増えない限り、価値は動かさない。
見ておくもの
- 国内飲料のセグメント利益と営業利益率(27年1月期に黒字の62.5億円の計画が実現するか)
- 自販機台数の推移と、引き揚げ後の1台あたりの売上
- 海外飲料の営業利益と、トルコ超インフレ会計の調整額
- ダイドーアサヒベンディングの運営と、アサヒ飲料との出資関係の変化
- 自己資本と配当の推移(減損後の財務の見え方)
倍率と資本コストの決め方
国内飲料・海外飲料・食品・医薬品関連の4事業で、数量(実質)と名目の単価を置いて10年を積んだ。今の株価は見ずに、国内は数量0.9倍・価格1.34倍、海外は数量1.35倍・円換算の価格1.2倍とした。倍率はROE9%・k8.3%の利益ベースの式で出し、中立は1÷kに近い13倍に置いた。最後に今の時価総額と比べて割高と出たが、数字を寄せていない。自販機の資産は自社保有が中心だと推定したが、リース負債の大きさは確かめられていない。新リース会計基準で数字の形が変わる点は、今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。同じ領域のサントリー(k7.0%)・伊藤園(k7.0%)より値決めと寿命で劣るので、qualityを+0.3%にした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14→15.26 倍・やや楽観 PER 13→13.98 倍・中立 PER 13→12.7 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.3% を足した。事業は傾いておらず、上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.80% → 8.30%。