結論
ミヨシ油脂は、パンや菓子に使うマーガリン・ショートニングと、トイレタリー向けの脂肪酸・グリセリンをつくる会社だ。山崎製パンと日清オイリオが、それぞれ約1割を持つ。筆者の結論は「やや割高」。株価は純資産の半分だが、稼ぐ力が資本コストを下回るため、中立の姿でも今の値段を超えない。
2025年12月期の純利益は96億円と、前の期の3.4倍になった。ただし東京工場の土地を売った一過性の益が大半で、営業利益は20億円と前の期から3割減った。会社は2026年12月期の営業利益を25億円と見込み、上期は本社移転費用の剥落と価格の見直しで、営業利益が2.3倍になった。
強みは、顧客ごとに配合を変える技術力と、国内で屈指の供給力だ。弱みは、パーム油などの原料の値動きを価格に移すのに時間がかかり、利益が年によって大きく振れることだ。2022年は原料高で営業赤字になり、2024年は価格の見直しで過去最高の利益を出した。
中立の10年後は、売上809億円、営業利益40億円で、自己資本利益率は5〜6%にとどまる。資本コストの8.5%を下回るので、利益に付ける倍率は低い。純資産は426億円と厚く、上場株など売れる資産が時価総額の半分近くある点が、悲観の下支えになる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、事業は分かりやすい。パンや菓子の材料は社会に欠かせず、技術力に守られた供給者は残る。ただし堀は深くない。顧客は強く、競合も強い。確信度は中ほどだ。
資本の使い方は、守りに偏る。自己資本利益率は過去10年の中央値で3.7%と、資本コストを大きく下回る。2024年に9.5%まで上がったのは、原料高の反動と価格の見直しが重なった結果で、続くとは限らない。2025年の96億円の純利益は土地売却益で、稼ぐ力を示さない。
安全域は、資産の厚みにある。自己資本は426億円と時価総額228億円の約2倍で、上場株約99億円も持つ。しかし資産は、事業の稼ぎを生まないまま眠っている面がある。筆者は、会社が配当性向を高めるか、資産を成長投資で稼ぐ力に変えるかが、評価の鍵と見る。経営の姿勢は、会社が2030年に自己資本利益率8%を掲げた点に表れているが、実績が伴うまでは見守る。
何で稼ぐ会社か
食品と油化の2つの事業を持つ油脂加工の会社だ。2025年12月期の売上は594.7億円で、食品が420.9億円(71%)、油化が169.0億円(28%)。営業利益は食品が14.4億円、油化が4.4億円。食品はマーガリン、ショートニング、粉末油脂、ホイップクリームで、製パン、製菓、冷凍食品、外食に納める。
食品は、顧客のニーズに合わせて配合を変える受注型の商売だ。ニッシントーア・岩尾(売上の11.6%)などの代理店を通じ、山崎製パンのような大手にも納める。山崎製パンは主要株主でもあり、安定した取引先である一方、価格交渉では大きな力を持つとみられる。
油化は、動物・植物の油脂から脂肪酸、グリセリン、トイレタリーや化粧品の基材、家庭紙用の柔軟保湿剤、工場排水用の重金属処理剤をつくる。共同研究で製品化する案件が多く、用途が広い。マレーシアに子会社MIYOSHI OIL & FAT MALAYSIAを持ち、グリセリンの新工場を2026年度に稼働させる予定だ。
拠点は、本社(東京都墨田区)、千葉・神戸・名古屋の3工場、茨城の阿見倉庫、葛飾の技術研究センター。連結の従業員は599人。2025年1月に本社を移し、同年6月に旧東京工場の土地・借地権を売って約129億円を得た。今は、この資金を工場の更新と成長投資に回す途中である。
優良さと弱いところ
強みは、技術力と、供給の確かさだ。マーガリンやショートニングは、乳化や呈味、粉末化といった技術で、顧客ごとに味や物性を変える。パンや菓子の配合に組み込まれると、切り替えが面倒で、取引は長く続く。大規模なプラントを持つ装置産業で、新規の参入も難しい。
弱みは、値決めが原料に引きずられることだ。パーム油、大豆油、菜種油、動物油脂の相場が上がると、価格に転嫁するまで数か月から1年の遅れが出る。2022年は営業利益が-16億円になり、2024年に価格の見直しで29億円まで戻った。過去10年の自己資本利益率の中央値は3.7%と低い。
財務は堅い。自己資本比率は50.6%で、現金は97億円、純現金は13億円ある。上場株の保有が約99億円と大きい。営業利益は支払利息の4倍と余裕は大きくなく、これから3年で170〜200億円の設備投資を予定する。筆者は、品質を「やや低め」と見て、資本コストを上げる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
加工油脂の需要は、パン、洋菓子、冷凍食品、外食に支えられる。国内の人口は2056年に1億人を割るとされ、食べる量は年0〜1%減る。ただし簡便化と、パン・菓子の高付加価値化が数量の減りを一部打ち消す。マーガリン・ショートニングは、2025年の数量が前年並みで、2月の価格改定により金額は前年を上回った。
競争は、日清オイリオ、不二製油、カネカ、J-オイルミルズなどの大手との間にある。シェアの数字は信頼できる出典が見つからなかった。互いに原料を共通の市場で調達するため、原料高の局面では、価格を上げる速さが収益を分ける。大手の顧客は、仕入れ先を複数持ち、価格交渉は強い。
原料の値動きは大きい。パーム油はインドネシアの輸出政策や天候で振れ、動物油脂は食肉の生産に左右される。為替の影響もある。会社は、原料価格の変動を踏まえた価格最適化を進め、2024年度に利益を伸ばした。この仕組みが続くかが、今後の収益の安定性を決める。
油化は、トイレタリーや家庭紙などの産業向けで、景気と国内の生産に左右される。海外はアジアと北米が目標で、マレーシアの工場が加わる。人件費と物流費は上がり、外部委託や自動化の投資が欠かせない。10年の数量は、食品は実質で3%ほど縮み、油化は海外で1割ほど増えると置く。
資本政策と M&A
配当は、第二次中期経営計画で株主資本配当率2%を目安にする。2025年12月期は普通配当に特別配当を加え、総額は約10億円。2026年12月期の計画は特別分が無くなり、普通配当に戻る見込みだ。自社株買いの大きな実績は見当たらない。
資本の主役は、土地売却で得た資金と上場株の保有だ。2025年6月に旧東京工場の土地を売り、売却収入は約129億円。この資金を、マレーシア工場、名古屋工場、千葉工場の更新、技術研究センター(2028年に新設予定)に回す。3年間の設備投資は170〜200億円で、営業キャッシュフローの134〜164億円を超える。
上場株は32銘柄で約99億円。三菱UFJフィナンシャル・グループ(約41億円)と山崎製パン(約28億円)が大きい。このほかに、退職給付信託に理研ビタミン株がある。2023年と2024年にも、投資有価証券の売却益を計上した。2026年7月にも売却益の見込みを開示した。株主優待は12月末の株主へのQUOカードで、費用は年1億円に満たず、評価には入れていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
原料価格の転嫁の仕組みが定着し、利益が安定する。2024年度に価格最適化が奏功し、営業利益は29億円と過去最高を記録した。2026年12月期の上期は、営業利益が2.3倍になり、通期の25億円は保守的だ。マレーシア工場の稼働と、名古屋工場の増強が、油化の利益を引き上げる。
食品は、粉末油脂で北米に進み、新しい味の創出を積み上げる。収益性の低い製品の廃止が進み、利益率が上がる。会社は2027年度に、食品で19億円以上、油化で10億円以上を目標にする。これを超え、10年後に営業利益率が6%に届く姿である。
資本政策も動く。株価は純資産の半分で、PBRは1倍を大きく割る。山崎製パンと日清オイリオの安定株主がいる一方で、土地の売却益で厚くなった資本は、増配や自社株買い、成長投資の余地が大きい。会社が2030年の自己資本利益率8%を達成すれば、再評価される。そのとき、時価総額は500億円を超え、配当と合わせて年率で10%を超える収益になる。
慎重な見方
今の利益は小さく、稼ぐ力の証明がまだだ。2025年12月期の営業利益は19.6億円と、前の期の3割減。純利益96億円は土地の売却益で、10年の自己資本利益率の中央値は3.7%にとどまる。原料価格の転嫁の遅れで、2022年は営業赤字に沈んだ。
投資の回収が見えない。3年で170〜200億円の設備投資は、営業キャッシュフローを上回り、借入が増える。マレーシア工場が稼働しても、アジアの価格競争や、需要の立ち上がりの遅れで、稼働率が上がらなければ、償却だけが残る。名古屋工場の増強も同様だ。
大口顧客と原料の2方向から圧迫される。山崎製パンのような大手は価格交渉が強く、原料高の転嫁は常に遅れる。自己資本利益率が資本コストを下回る限り、ためた資本は価値を生まない。資産の厚みは、会社が事業を続ける限り、株主に戻りにくい。さらに、主要株主の山崎製パンと日清オイリオは、顧客と原料の供給者でもあり、少数株主の利益と必ずしも一致しない。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は価格最適化の定着と新工場の稼働に、慎重な見方は低い自己資本利益率と投資の重さに重みを置く。10年後の中立は、売上809億円、営業利益40億円(率4.9%)。直近12年の最高の5.2%を超えない水準とした。
確率は、中立に36%を置いた。慎重な側(やや悲観と悲観)に32%、強気な側(やや楽観と楽観)に32%で、ほぼ釣り合う。本質価値は今の時価総額を15%下回り、「やや割高」。資産の厚みが悲観の値を支えるため、割高の幅は大きくない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 3,352 円343 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 934 円96 億円)。 今の値に割り戻すと 2,188 円224 億円、今との差 −0.7%、 期待の年率 +6.9%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 5,783 円593 億円 | 1,269 円130 億円 | +219.8% | +12.3% | 635 円65 億円 |
| やや楽観 | 23% | 4,648 円476 億円 | 1,074 円110 億円 | +159.5% | +10.0% | 1,316 円135 億円 |
| 中立 | 36% | 3,660 円375 億円 | 976 円100 億円 | +110.3% | +7.7% | 1,669 円171 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,469 円151 億円 | 830 円85 億円 | +4.3% | +0.4% | 506 円52 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,220 円125 億円 | 390 円40 億円 | −27.0% | −3.1% | 161 円17 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,352 円343 億円 | 934 円96 億円 | +94.4% | +6.9% | 4,286 円439 億円 |
今の株価時価総額 2,205 円226 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 9% 価格の転嫁が定着し、利益率が6%に届く 利益 47 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 5,783 円593 億円
原料の転嫁が早まり、食品の営業利益率が5.5%まで上がる。粉末油脂が北米で伸び、当社のシェアは15%に上がる。油化はマレーシア工場の稼働で、シェアが13%に広がり、営業利益率は7.5%に達する。
値段は物価に少し先行して、食品が1.36倍、油化が1.34倍。10年後の売上は943億円、営業利益は59億円。自己資本利益率は8%近くまで上がり、会社が掲げる2030年の目標に届く。
還元も増える。DOE2%を超えた配当と自社株買いで、10年で130億円。時価総額は592億円になる。会社の計画のうち、食品の収益性の低い製品の廃止、粉末油脂の北米展開、油化の海外工場がすべて計画どおり進み、原料の転嫁の仕組みも途切れない姿である。
- 食品事業(マーガリン・ショートニング・粉末油脂・ホイップ):数量 3,000(当社が参加する国内の業務用加工油脂(マーガリン・ショートニング・粉末油脂ほか)の需要(億円・今の値段で測った実質、推定))× 価格 20.4%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍が物価並み))→ 売上 612 億円・営業利益 34 億円。市場 3,000 億円 × シェア 15.0%、物価の倍率 1.36、営業利益率 5.5%
- 油化事業・その他(脂肪酸・グリセリン・香粧品原料・水処理剤):数量 1,900(当社の油化品が使われる国内外の用途の需要(億円・実質、推定))× 価格 17.4%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍が物価並み))→ 売上 331 億円・営業利益 25 億円。市場 1,900 億円 × シェア 13.0%、物価の倍率 1.34、営業利益率 7.5%
倍率:事業の純利益 47 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 592 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:価格最適化が定着し、新工場が動けば起きる。ただし10年の自己資本利益率の中央値が3.7%の会社で、強気の実現確度は高くない。
やや楽観 23% 価格最適化が効き、利益率が5.5%台へ 利益 38 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 4,648 円476 億円
食品の市場は実質で2%減るが、当社のシェアは14.6%に上がる。値段は1.34倍で、営業利益率は5%。油化はシェアが12.5%で、営業利益率は6.5%。
10年後の売上は874億円、営業利益は49億円。原料の転嫁がうまくいき、設備投資の償却も吸収する。マレーシア工場の稼働が進み、海外が柱に育つ。
還元は110億円。自己資本利益率は7%近くで、資本コストにはまだ届かない。時価総額は476億円になる。10年を通じて、原料の急騰が一度か二度あっても、価格の見直しで利益を守れた姿で、会社の計画の延長に近い。営業利益率は5%に届く手前にとどまる。
- 食品事業(マーガリン・ショートニング・粉末油脂・ホイップ):数量 2,950(当社が参加する国内の業務用加工油脂(マーガリン・ショートニング・粉末油脂ほか)の需要(億円・今の値段で測った実質、推定))× 価格 19.6%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍が物価並み))→ 売上 577 億円・営業利益 29 億円。市場 2,950 億円 × シェア 14.6%、物価の倍率 1.34、営業利益率 5.0%
- 油化事業・その他(脂肪酸・グリセリン・香粧品原料・水処理剤):数量 1,800(当社の油化品が使われる国内外の用途の需要(億円・実質、推定))× 価格 16.5%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍が物価並み))→ 売上 297 億円・営業利益 19 億円。市場 1,800 億円 × シェア 12.5%、物価の倍率 1.32、営業利益率 6.5%
倍率:事業の純利益 38 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 476 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:上期の営業利益が2.3倍に回復したことと、新工場の稼働を踏まえ、4分の1弱を置く。
中立 36% 中立:利益率は5%弱、資本コストには届かない 利益 30 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 3,660 円375 億円
食品の市場は実質で3%縮み、当社のシェアは14.2%に上がる。値段は物価より遅れて1.32倍で、営業利益率は4.4%。名古屋工場の増強とマレーシア工場により、油化の市場は1割増え、シェアが12%に上がる。営業利益率は5.8%。
10年後の売上は809億円、営業利益は40億円で、率は4.9%。直近12年の最高の5.2%を超えない。還元は配当性向4割台で、DOE2%を保つ。10年で100億円。
自己資本は541億円まで積み上がり、自己資本利益率は5.5%。資本コストの8.5%を下回るので、倍率は12.5倍にとどまる。時価総額は375億円。
- 食品事業(マーガリン・ショートニング・粉末油脂・ホイップ):数量 2,900(当社が参加する国内の業務用加工油脂(マーガリン・ショートニング・粉末油脂ほか)の需要(億円・今の値段で測った実質、推定))× 価格 18.7%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍が物価並み))→ 売上 544 億円・営業利益 24 億円。市場 2,900 億円 × シェア 14.2%、物価の倍率 1.32、営業利益率 4.4%
- 油化事業・その他(脂肪酸・グリセリン・香粧品原料・水処理剤):数量 1,700(当社の油化品が使われる国内外の用途の需要(億円・実質、推定))× 価格 15.6%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍が物価並み))→ 売上 265 億円・営業利益 15 億円。市場 1,700 億円 × シェア 12.0%、物価の倍率 1.30、営業利益率 5.8%
倍率:事業の純利益 30 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.5% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 375 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:第二次中期経営計画の方向と、原料の波・投資の遅れを勘案し、最も重く置く。
やや悲観 22% 原料の転嫁が遅れ、利益率が3%台にとどまる 利益 16 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,469 円151 億円
食品の市場は実質で8%縮み、大手に押されてシェアは13.5%に下がる。値段は物価より遅れて1.20倍にとどまる。食品の営業利益率は3%。
油化も、アジアの価格競争とマレーシアの立ち上がりの遅れで、営業利益率は4%。10年後の売上は650億円、営業利益は22億円。物価の分と償却の増加に、利益が食われる。
還元はDOE2%を保てず、10年で85億円。自己資本利益率は3%台で、倍率は低い。時価総額は140億円。ただし上場株などの資産があるため、赤字には陥らない。2022年の営業赤字の再来は避けられるが、利益は薄いままで、成長投資の回収も遅れる。会社は配当を保つため、資産の売却益に頼る場面が増える。
- 食品事業(マーガリン・ショートニング・粉末油脂・ホイップ):数量 2,750(当社が参加する国内の業務用加工油脂(マーガリン・ショートニング・粉末油脂ほか)の需要(億円・今の値段で測った実質、推定))× 価格 16.2%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍が物価並み))→ 売上 446 億円・営業利益 13 億円。市場 2,750 億円 × シェア 13.5%、物価の倍率 1.20、営業利益率 3.0%
- 油化事業・その他(脂肪酸・グリセリン・香粧品原料・水処理剤):数量 1,550(当社の油化品が使われる国内外の用途の需要(億円・実質、推定))× 価格 13.2%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍が物価並み))→ 売上 205 億円・営業利益 8 億円。市場 1,550 億円 × シェア 11.0%、物価の倍率 1.20、営業利益率 4.0%
倍率:ROE 3.2%(事業の純利益÷自己資本、余った現金を除く)は k 8% 以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PER は 1÷k=11.8 倍が上限。原料の転嫁が遅れる年が続くので、上限の 7.7 割の 9.0 倍に置いた。余った現金 0.0 億円は戻り方 0.5 を掛けて足した。
確率:原料高と大手顧客の価格交渉で、価格最適化が思うように進まない筋書き。2022年の赤字を踏まえ、5分の1強を置く。
悲観 10% 構造的に負ける:原料と顧客の両方に挟まれる 利益 2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,220 円125 億円
食品の市場は実質で17%縮み、当社のシェアも11.5%に下がる。値段は物価に遅れて1.10倍。営業利益率はゼロに近づく。
油化は、マレーシア工場の稼働率が上がらず、償却が重い。営業利益は2.6億円まで落ち、純利益は1.6億円。10年後の売上は445億円。
還元は10年で40億円に絞られる。それでも、上場株の税後約69億円と設備、純現金が残るため、少数株主の取り分は資産の一部の125億円で支えられる。2022年に似た原料高が複数年続き、投資の回収も進まない場合を想定している。会社が清算に至らない限り、資産は株主に戻らない。
- 食品事業(マーガリン・ショートニング・粉末油脂・ホイップ):数量 2,500(当社が参加する国内の業務用加工油脂(マーガリン・ショートニング・粉末油脂ほか)の需要(億円・今の値段で測った実質、推定))× 価格 12.7%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍が物価並み))→ 売上 316 億円・営業利益 0 億円。市場 2,500 億円 × シェア 11.5%、物価の倍率 1.10、営業利益率 0.0%
- 油化事業・その他(脂肪酸・グリセリン・香粧品原料・水処理剤):数量 1,300(当社の油化品が使われる国内外の用途の需要(億円・実質、推定))× 価格 9.9%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍が物価並み))→ 売上 129 億円・営業利益 2 億円。市場 1,300 億円 × シェア 9.0%、物価の倍率 1.10、営業利益率 1.5%
倍率:10 年の悲観は稼ぐ力が消えるので、利益でなく資産で値を付ける。今の自己資本 426 億円のうち、上場株の税後と設備の売却価値、純現金を足した約 125 億円(今の自己資本の 0.29 倍)を床とした。ためた利益に床の倍率は掛けていない。
確率:原料高と大口顧客の値下げ圧力、投資の失敗が同時に来る深い筋書き。上場株などの資産が厚いため、確率は1割にとどめる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
食品事業(マーガリン・ショートニング・粉末油脂・ホイップ)
製パン、製菓、フィリング、冷凍食品、外食向けの加工油脂。顧客の用途に合わせて配合を変えて納める。
| 数量当社が参加する国内の業務用加工油脂(マーガリン・ショートニング・粉末油脂ほか)の需要(億円・今の値段で測った実質、推定) | 価格市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍が物価並み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3,000 | 14.0% | 421 | 14 |
| 10 年後 中立 | 2,900 | 18.7% | 544 | 24 |
取り方:食品事業の売上 420.93 億円・セグメント利益 14.42 億円(有報、2025/12 期)。市場規模の開示は無く、当社が参加する国内の加工油脂の需要を約 3,000 億円(実質)、当社シェアを約 14.0% と置いた推定(売上からの逆算で、独立した裏づけではない)。数量は実質、物価の分は価格(シェア × 物価の倍率)に入れる。
油化事業・その他(脂肪酸・グリセリン・香粧品原料・水処理剤)
脂肪酸、グリセリン、トイレタリー・化粧品向けの基材、家庭紙用の柔軟保湿剤、重金属処理剤など、機能を持つ化学品。
| 数量当社の油化品が使われる国内外の用途の需要(億円・実質、推定) | 価格市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍が物価並み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,500 | 11.6% | 174 | 4 |
| 10 年後 中立 | 1,700 | 15.6% | 265 | 15 |
取り方:油化事業の売上 169.04 億円・セグメント利益 4.44 億円(有報)に、その他事業 4.76 億円を合わせた 173.8 億円。需要を約 1,500 億円(実質)、シェアを約 11.6% と置いた推定(売上からの逆算)。本社費などの調整(営業利益で +0.7 億円)は adjust_oku で別に持つ。
リスクと懸念
原料価格の変動と転嫁の遅れ
パーム油、大豆油、動物油脂の相場や為替で、原価が大きく動く。転嫁に数か月から1年の遅れが出ると、2022年のように営業赤字に陥る。
大口顧客の交渉力
山崎製パン(主要株主)など大手の製パン・製菓メーカーが顧客の中心だ。価格見直しの余地は交渉に左右され、顧客の内製化や乗り換えも起こりうる。
設備投資の回収
3年間で170〜200億円を投じ、営業キャッシュフローを上回る。マレーシア工場の稼働や名古屋工場の増強が遅れると、償却だけが先に重くなる。
国内需要の縮小
人口減で、パン・菓子・外食向けの数量は年に0〜1%縮む。簡便化や高付加価値化で補えない場合、価格に頼る成長になる。
海外展開の不確実さ
北米の粉末油脂とアジアの油化品は、まだ小さい。現地の競合、規制、為替の影響を受け、計画どおりに売上が立つとは限らない。
政策保有株の価格変動
上場株約99億円は株価の変動を受ける。純資産に影響し、売却益は特別利益として一過性で、稼ぐ力とは区別する必要がある。
大株主と資本政策
日清オイリオと山崎製パンが各10%を持つ。両社の意向が経営に影響し、少数株主への還元や再編の判断が左右される可能性がある。
今後の分かれ目
- 2026年12月期の通期営業利益が計画の25億円を上回る見通しになったら
- 強気側に確率を移す。価格最適化の定着と、本社移転費用の剥落が効いている兆しと見る。
- マレーシア工場が計画どおり2026年度に稼働し、グリセリンの販売が立ち上がったら
- 油化の数量とシェアの前提を上げる。遅れたら下げる。
- パーム油などの原料が急騰し、価格改定が半年以上遅れたら
- 悲観側に確率を移す。転嫁の仕組みが弱いと見直す。
- 配当性向の引き上げや自社株買いが発表されたら
- 資本の効率が上がるとして、還元額と中立の価値を上方修正する。
- 山崎製パンや日清オイリオが持分を増やす、または売却する動きが出たら
- 資本再編の確率と、少数株主の取り分を点検する。
- 政策保有株の売却が進み、売却益の使い道が示されたら
- 成長投資か還元かで、評価の前提を変える。
見ておくもの
- 四半期ごとの食品・油化の営業利益率(食品3.4%→4.5%、油化2.6%→5.6%)
- マレーシア工場と名古屋工場の稼働
- 2027年度の中計目標(食品19億円以上・油化10億円以上)の達成
- 原料価格と販売価格の改定のタイミング
- 配当(DOE2%)と政策保有株の売却
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。中立の自己資本利益率は5.5%で、資本コスト8%を下回るため、PERの上限は資本コストの逆数の11.8倍。原料の波と投資の遅れを見て、その約9割の10.2倍とした。今のPERが2倍台(一過性の益を含む)であることには寄せていない。
営業利益率は、直近12年の最高の5.2%を超えない4.9%とした。会社の2030年の目標(自己資本利益率8%)は、10年後の中立の5.5%より高いが、計画は物価の上昇を織り込んだ長期の見通しではないため、そのまま使っていない。
悲観は稼ぐ力ではなく、上場株の税後(約69億円)、設備の売却価値、純現金を足した約125億円(今の自己資本の0.29倍)で値を付けた。過去のPBRの底からは置いていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→12.5 倍・やや楽観 PER 10.5→12.5 倍・中立 PER 10.2→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。