結論
カルビーは、ポテトチップスとじゃがりこを持つ国内スナック菓子の最大手だ。筆者の結論は、いまの値段は10年先の利益に対して少し高い、というものだ。
稼ぎの源は単純である。じゃがいもを揚げ、棚の前を押さえ、値上げを通す。この数年は物価並みに値上げを重ね、売上は過去最高の3,400億円まで来た。ただ営業利益率は、2年前の9%から7.7%へ下がった。新しい広島工場の償却と、ばれいしょの不作が重なったためだ。
人口が減る国内で数量は伸びない。伸びしろは海外で、北米・中華圏を軸に売上の4割を目指している。とはいえ、海外の利益率はまだ5%に届かない。筆者は、国内で10%の利益率を取り戻し、海外が7割ほど伸びる姿を中心に置く。それでも10年後の純利益は今の2倍弱にとどまる。
首位の力は本物だ。堀、つまり他社がまねできない強みは、棚の確保力とブランドにある。それでも、原料が天候に左右されるため、利益は年ごとに振れる。強気の見立ては成り立つが、いまの値段はそこまで織り込んでいる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、カルビーは良い事業だが、今の値段を払って持つ会社ではない、と筆者は見る。
良い点は三つある。ポテトチップスの首位は簡単には奪われない。値上げが通ることは、この数年で何度も確かめられた。借金が軽く、財務は堅い。事業は10年後も存在し、今より強いかと問えば、国内は同程度、海外は少し強くなる、というのが答えだ。
悪い点は、株主に残る利益が思ったほど増えないことだ。工場投資と買収で資金が出ていき、10年後の純利益は今の2倍弱にとどまる。その結果、ROEは10%前後と、資本コスト7%をわずかに上回るだけになる。この水準なら、払ってよい値段は利益の15倍前後だ。
いまの値段は、利益の20倍を超える。これは、会社の目標どおりに海外が伸び、利益率が14%(EBITDAベース)に届く姿を前提にしている。その姿が実現する確率は、半分を大きく下回ると見る。安全域は薄い。
経営の資本配分は、これから試される。国内の工場投資は成果が出る途中で、海外の買収は成績表がまだ薄い。
何で稼ぐ会社か
稼ぎは国内事業が大きく、売上の4分の3、営業利益の8割以上を占める。海外は売上の4分の1だが、利益はまだ薄い。
国内の中心はスナックだ。ポテトチップスが約1,000億円、じゃがりこが約500億円で、成形ポテトチップスや豆系の「miino」などその他が約800億円ある。そこにシリアル(フルグラ)が約300億円、観光地向けの土産用が加わる。ポテトチップス市場の7割近くを握るとされ、シリアルのシェアも約4割だ。原料のばれいしょは契約農家から買う。この調達網が、他社が簡単に入れない部分である。
海外は北米の「ハーベスト・スナップス」、英国の「シーブルック」、中華圏の「ジャガビー」、インドネシアの「ジャポタ」などを展開する。2025年8月には米国の豆腐・植物性たんぱくの「ホド」を、相模屋食料と組んで取り込んだ。2026年1月には、キャンディ大手ペルフェッティ社と国内の独占販売契約を結び、グミ・タブレットなどにも出る。
事業の稼ぎ方は、規模で工場を回し、値上げで原料高を追う形だ。店を借りて営む事業ではないので、リースの約束は重くない。
優良さと弱いところ
優良さは、国内では高く、海外ではこれからだ。
国内は、ポテトチップスという大きな商品で首位を握り、じゃがりこのように指名買いされる商品も持つ。販売費は売上の24%前後にとどまり、首位の力で販促費を抑えている。値上げも2022年から毎年のように重ねてきたが、数量は大きく崩れなかった。単価の改善は2026年3月期だけで約70億円の利益を生んだ。
弱い所もはっきりしている。まず原料が農作物で、天候に利益を握られる。2026年3月期は北海道産の収量減と品質低下で、国内の営業利益率が10.7%から8.8%へ下がった。次に、固定費の重さだ。広島工場の償却が続くため、売上が伸びないと利益が出ない。さらに、海外は営業利益率が5%に届かず、北米の日本発ブランドは棚の競争が厳しくなった。
資本効率は、ROEが8%台と、過去10年の中央値の10%を割っている。自己資本比率は6割を超え、純現金が小さく残る。堅実だが、資本を使い切っているとは言えない。経営は2026年の成長戦略で、自己資本比率を55%程度まで使い、買収に1,000億円以上を振る方針を出した。筆者がいちばん注意して見るのは、この資本の使い方だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内スナック市場は、売上は伸びても、数量は伸びにくい。
菓子市場の小売金額は2025年に4兆円を超え、スナック菓子も初めて6,000億円を超えた。ただし、伸びの多くは値上げによる。人口は年0.5%ずつ減るので、国内の数量は10年で0.9〜1.05倍が中心になる。健康志向の逆風もあるが、小分けや高たんぱくなどの需要が下支えする。
競争は、カルビー、湖池屋、東ハト、ジャパンフリトレーなどの寡占に近い。カルビーはその中で飛び抜けた首位であり、2026年には子会社のジャパンフリトレーとの営業連携も進めた。競争は主に棚と価格帯の勝負で、PB(流通の自社ブランド)との価格差が広がるかが分かれ目だ。
原料は、ばれいしょ・食用油・包材が3つの柱になる。2026年3月期は輸入原料で19億円、食用油で12億円、国産ばれいしょで11億円の負担増だった。中東情勢でさらに30億円の負担増も見込む。
海外は、北米が約3兆円の市場に育つと会社は見る。ただ、日本発のスナックはエスニック棚で競争が厳しい。現地で作るスナックの方が伸びている。業界ノートの前提は、国内を緩やかな拡大、海外を成長の担い手とする見方で、カルビーはそれに沿う位置にいる。
資本政策と M&A
還元は手厚いが、資本は買収に向かう。
配当性向は2026年3月期に47%、配当は2027年3月期も増やす計画だ。会社は毎期の増配(累進配当)と、総還元性向50%以上を掲げる。自社株買いは機動的に検討するとしている。
一方で、成長戦略では5年間で成長投資に1,100〜1,400億円、買収などに450〜700億円を置く。買収の重点は、北米の健康志向スナックと国内の新カテゴリだ。純現金は小さいため、借金を増やす方向になる。
株主は、ペプシコ傘下のフリトレー系が約2割、創業家の松尾家の一般社団法人が約15%の二本柱とされる(株主構成の推移を載せた資料による。最新の比率は有価証券報告書で確かめる必要がある)。この二大株主が長く並ぶため、買収や再編の話題は絶えないが、実際のTOBの動きは確認できない。
資本の使い方で気になるのは、ホドのような買収が採算に乗るかどうかだ。海外は積み上げた投資に比べて利益が薄い。
株主優待は、100株以上で1.5千円相当、500株以上で5千円相当の自社グループ製品。会社は優待の費用を開示していないため、株主 約2.5万人(自社商品の原価と送料)から年4億円と推定した。優待は株主が受け取る現物の還元なので、10年の還元に年額×10年を、中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5の係数で足した(費用は販管費として利益から引き済みで、自己資本の流れには入れない)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国内の首位は、ばれいしょの不作という一時要因を除けば揺らいでいない。2026年3月期の国内営業利益は15%減ったが、それは新工場の償却と不作が重なった年の話だ。償却は一巡し、収量が戻れば、国内の利益率は10%台に戻る。値上げの力は証明済みで、単価の改善だけで約70億円の利益を生んだ。
海外は、北米・中華圏・豪州が増収を続け、海外全体の営業利益は1年で36%増えた。北米の既存事業は営業利益が約10億円増えて黒字が定着した。ここに、北米へ集中する費用投下と、1,000億円規模の買収が加われば、海外比率は4〜5割になる。
資本政策も追い風だ。配当は毎期増え続け、自己資本比率を55%程度まで使う方針で、ROEは10%を超えて15%を目指す。成長の源は、国内の数量ではなく、海外の数量と、国内の価格設定だ。この組み合わせが続けば、10年後の純利益は今の2.5倍にもなる。さらに、キャンディ大手との提携で国内に新しい売り場が開く。冷凍ばれいしょや甘しょなど、芋を使う新しい商品も育ちうる。これらは今の利益にほとんど入っておらず、上振れの余地はそこにある。
慎重な見方
利益率は3年続けて下がった。2024年3月期の9.0%から2026年3月期は7.7%、2027年3月期の会社計画はさらに7.1%だ。これは一時要因だけでは説明できない。広島工場の償却は長く続き、新関東工場や研究棟の投資がさらに続く。固定費が重くなる一方で、値上げのたびに数量が試される。
原料の問題は構造的だ。ばれいしょは天候の影響を受け、契約農家の高齢化もある。食用油も輸入原料も包材も、中東情勢などで毎年のように揺れる。値上げは小売りとの交渉になり、PBとの価格差が開けば数量を落とす。
海外は売上の成長が速くても、営業利益率は5%に届かず、北米の日本発ブランドは棚の競争で不調だ。ホドの買収も、植物性たんぱく市場でこれから成果を示す段階にとどまる。会社が掲げる目標は、前の中期計画が成長の目標を達成できなかった事実と並べて読む必要がある。人口が減る国内でシェアを守るだけでは、利益は伸びない。新しい売り場の提携も、まだ売上の中身が見えない段階にある。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、首位の力と値上げの実績という強い証拠に立つ。慎重な見方は、利益率の連続低下と、目標が未達に終わってきた実績に立つ。筆者は、強気の根拠は事業の質に、慎重な根拠は利益の量に当たると見て、確率はわずかに慎重な側へ寄せた。中立を最大の36%に置き、楽観側は29%、悲観側は35%とした。10年の悲観は10%まで厚くしたが、首位の地位は簡単に崩れないので、それ以上は上げなかった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,894 円4,737 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,098 円1,336 億円)。 今の値に割り戻すと 2,762 円3,360 億円、今との差 −12.4%、 期待の年率 +4.7%(資本コスト 7.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 7,235 円8,802 億円 | 1,537 円1,870 億円 | +178.0% | +10.8% | 614 円747 億円 |
| やや楽観 | 22% | 5,523 円6,718 億円 | 1,277 円1,553 億円 | +115.5% | +8.0% | 1,496 円1,820 億円 |
| 中立 | 36% | 4,502 円5,476 億円 | 1,163 円1,415 億円 | +79.5% | +6.0% | 2,039 円2,481 億円 |
| やや悲観 | 25% | 2,006 円2,440 億円 | 986 円1,200 億円 | −5.2% | −0.5% | 748 円910 億円 |
| 悲観 | 10% | 501 円610 億円 | 444 円540 億円 | −70.0% | −11.4% | 95 円115 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,894 円4,737 億円 | 1,098 円1,336 億円 | +58.2% | +4.7% | 4,992 円6,073 億円 |
今の株価時価総額 3,155 円3,838 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 国内の新カテゴリと北米が両方うまくいく10年 利益 463 億円 · PER 19.0 倍 · 株価時価総額 7,235 円8,802 億円
国内はポテトチップスの安定供給が戻り、輸入のグミ・タブレットや冷凍ばれいしょが加わって数量が増える。値上げも、じゃがりこなど指名買いの商品が先導して通る。北米は「ハーベスト・スナップス」が定番の棚を取り、買収した植物性たんぱく事業も黒字に乗る。海外は売上が2倍超になり、利益率も10%台に届く。会社が掲げる海外比率4〜5割に近づき、国内の利益率も10%超で安定する。経営は資本を使うことにも慣れ、買収で価値を壊さない。還元は純利益の6割を保つ。この筋書きでは、会社の掲げる計画線がほぼ実現する。国内の工場は稼働率が上がり、償却の重さが利益率の足を引っ張らなくなる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年4億円×10年×1.0=40億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 国内事業:数量 16.5(推定販売数量(万トン、製品換算))× 価格 2,243(1kgあたり売上(円、リベート控除後、名目))→ 売上 3,697 億円・営業利益 407 億円。新カテゴリ・海外とも計画に近い
- 海外事業:数量 15.6(推定販売数量(万トン、製品換算))× 価格 1,798(1kgあたり売上(円、リベート控除後、名目、為替150円で固定))→ 売上 2,812 億円・営業利益 295 億円。北米が棚を取る
倍率:事業の純利益 463 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.9% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.0 倍。全体の PER 19.01 倍、時価総額 8,802 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内数量が新カテゴリで伸びる姿に、会社の計画線に近い海外の伸びを重ねた上振れ。計画の実績が揃わない会社なので確率は低く置いた。
やや楽観 22% 国内は値上げで利益率を戻し、海外が着実に伸びる10年 利益 380 億円 · PER 17.7 倍 · 株価時価総額 5,523 円6,718 億円
国内の数量は横ばいで、値上げとブランドの強さで利益率が10%台前半へ戻る。ばれいしょの収量減は年ごとの波として残るが、契約農家支援と低品質芋の活用で傷は浅くなる。海外は北米・中華圏・豪州が二桁近い成長を続け、売上は2倍になる。北米の費用先行がほぐれ、利益率は9%まで上がる。買収は小さなものが中心で、大きく外さない。配当は毎期増え、自社株買いも機動的に入る。値上げのあとも数量が崩れないことが、この筋書きの前提だ。海外の売上は国内に近づき、全体の4割に迫る。国内の新カテゴリは大きくはならないが、小さな黒字で定着する。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年4億円×10年×1.0=40億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 国内事業:数量 15.9(推定販売数量(万トン、製品換算))× 価格 2,179(1kgあたり売上(円、リベート控除後、名目))→ 売上 3,455 億円・営業利益 363 億円。値上げで利益率が戻る
- 海外事業:数量 13.6(推定販売数量(万トン、製品換算))× 価格 1,746(1kgあたり売上(円、リベート控除後、名目、為替150円で固定))→ 売上 2,375 億円・営業利益 214 億円。費用先行がほぐれる
倍率:事業の純利益 380 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.4% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.7 倍。全体の PER 17.68 倍、時価総額 6,718 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の計画を、物価と同じ速さの値上げで国内が支え、海外がその計画ほど速くは伸びないとする見方。確率は中立に次いで置いた。
中立 36% 国内は人口減を値上げで埋め、海外は6〜7割の伸びにとどまる10年 利益 325 億円 · PER 16.9 倍 · 株価時価総額 4,502 円5,476 億円
国内の数量は人口減で少しずつ細る。新カテゴリの上乗せはその減りを埋める程度だ。値上げは物価並みに通り、利益率は10%に戻る。北米は費用先行の時期が長引き、海外の利益率は8%どまりになる。売上に占める海外は4割弱で、会社の目標には届かない。ばれいしょの収量減は数年に一度起き、利益をその都度削る。ROE(自己資本利益率)は10%前後で、会社の目標線と重なる。還元は純利益の5割台半ばを続ける。国内の営業利益率は10%に戻るが、過去の11%台には届かない。海外は売上こそ伸びるが、利益の厚みは増えにくい。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年4億円×10年×1.0=40億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 国内事業:数量 15.4(推定販売数量(万トン、製品換算))× 価格 2,147(1kgあたり売上(円、リベート控除後、名目))→ 売上 3,303 億円・営業利益 330 億円。人口減を値上げで相殺
- 海外事業:数量 11.6(推定販売数量(万トン、製品換算))× 価格 1,746(1kgあたり売上(円、リベート控除後、名目、為替150円で固定))→ 売上 2,018 億円・営業利益 161 億円。北米は遅れる
倍率:事業の純利益 325 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.1% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.8 倍。全体の PER 16.85 倍、時価総額 5,476 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の人口減と値上げの相殺、海外が計画より遅いという見立てを合わせた中心。過去10年のROE中央値(10.3%)の近くに収まるため、この確率が最大。
やや悲観 25% ばれいしょと包材のコストが居座り、国内の利益率が7%台に沈む10年 利益 205 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 2,006 円2,440 億円
ばれいしょの不作が3〜4年に1度起き、値上げのたびに数量が落ちる。国内の利益率は広島工場などの償却を抱えたまま7%台にとどまる。北米は投資が重く、海外の利益率は5%台で止まる。売上は伸びるが、利益はほとんど増えない。自己資本は厚くなり、ROEは資本コストと同じ7%台になる。還元は利益の6割へ上げても、利益が小さい分、額は増えない。工場の固定費と原料高が、値上げの効果を食い続ける形だ。会社の高い目標は、結果として遠いままになる。海外の売上は伸びても、北米の費用先行が10年続き、会社の目標である海外4割の姿は見えてこない。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年4億円×10年×0.8=30億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 国内事業:数量 14.4(推定販売数量(万トン、製品換算))× 価格 2,083(1kgあたり売上(円、リベート控除後、名目))→ 売上 3,008 億円・営業利益 226 億円。コスト高が居座る
- 海外事業:数量 9.2(推定販売数量(万トン、製品換算))× 価格 1,694(1kgあたり売上(円、リベート控除後、名目、為替150円で固定))→ 売上 1,555 億円・営業利益 86 億円。北米は投資が重い
倍率:ROE7.1%・k7.0%・残る割合0.5でRONIC=7.1%、g3.5%(k−3.5%)の正当化PER上限14.4倍の約8.3割(11.9倍)を採用。ROEがk近辺で、利益は小さく振れる。稼ぐ力(純利益÷k)の約83%の水準。
確率:利益率が3年続けて下がった現実を、構造的な固定費増として10年続くと見る。慎重な見方の側に置く確率としては、中立に近い厚みにした。
悲観 10% 健康志向とPB(流通の自社ブランド)にシェアを削られ、北米の投資も実らない10年 利益 53 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 501 円610 億円
スナックへの規制的な圧力と健康志向で、定番の数量が2割ほど減る。小売りのPBとの価格差が開き、値上げが通らない。国内の利益率は4%台まで落ちる。北米では買収した事業が育たず、海外は赤字に戻る。工場の稼働率が下がり、固定費が重くのしかかる。ばれいしょ調達の不安定さも続く。配当は利益に合わせて減らし、自社株買いは止まる。それでも事業は残り、稼ぐ力は今の2割ほどの水準で続く。国内の主力が弱ると、固定費の重さがそのまま利益の穴になる。この筋書きでは、優良企業という評価は薄れる。国内の工場は半分近くが遊ぶ年も出る。海外の撤退や縮小で、特別損失も重なる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年4億円×10年×0.5=20億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 国内事業:数量 12.3(推定販売数量(万トン、製品換算))× 価格 1,954(1kgあたり売上(円、リベート控除後、名目))→ 売上 2,393 億円・営業利益 108 億円。数量減と値上げ停滞
- 海外事業:数量 6.1(推定販売数量(万トン、製品換算))× 価格 1,498(1kgあたり売上(円、リベート控除後、名目、為替150円で固定))→ 売上 917 億円・営業利益 −28 億円。北米の投資が実らず赤字
倍率:純利益は53億円まで縮み、利益では値が付かない。稼ぐ力(純利益÷k)は約757億円で、その約8割の610億円に置いた(今の自己資本2,106億円の約0.29倍)。純現金は88億円しかなく、帳簿の自己資本は床にならない。
確率:国内の主力が負けに回り、北米の投資も外れる複合の筋書き。ばれいしょ依存が高く、可能性は低くないが、シェア首位の力は簡単には崩れないので1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内事業
ポテトチップス・じゃがりこ・成形ポテト・豆やコーン系のスナックと、フルグラなどのシリアル、土産用、食と健康の事業。売上の約74%、営業利益の約84%。
| 数量推定販売数量(万トン、製品換算) | 価格1kgあたり売上(円、リベート控除後、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 15.7 | 1,602 | 2,515 | 221 |
| 10 年後 中立 | 15.4 | 2,147 | 3,303 | 330 |
取り方:数量は開示がない。売上2,515億円を、スナック・シリアルの出荷単価を1kgあたり千六百円前後と見て割り戻した推定(約15.7万トン)。売上の単位は万トン×円/kg×0.1=億円。
海外事業
北米・英国・中華圏・豪州・インドネシア・タイなどでスナックとシリアルを展開。ホド(米国の植物性たんぱく)を2025年8月に連結。売上の約26%、営業利益の約16%。
| 数量推定販売数量(万トン、製品換算) | 価格1kgあたり売上(円、リベート控除後、名目、為替150円で固定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6.8 | 1,303 | 886 | 41 |
| 10 年後 中立 | 11.6 | 1,746 | 2,018 | 161 |
取り方:数量は開示がない。売上886億円を、現地生産のスナック・シリアルの出荷単価を1kgあたり千三百円前後と見て割り戻した推定(約6.8万トン)。ホドを含む。為替は150円で固定。 数量は実物(製品トン)。北米を中心とした拡販による。価格は物価並み。
リスクと懸念
ばれいしょの不作と品質低下
原料のばれいしょは天候に左右される。2026年3月期は北海道産の収量減で、下期に販促を抑え、国内の利益率が1.9ポイント下がった。気候の変化が続けば、数年に一度の不作は利益の常識になる。契約農家の高齢化も同じ方向に働く。
工場投資の固定費
広島工場の償却が始まり、新関東工場の土地取得や研究棟の投資も続く。売上が計画を下回れば、固定費が利益を削る。2027年3月期の会社計画も、売上が9%近く伸びて営業利益は横ばいにとどまる。
原料・包材・中東情勢
食用油・輸入原料・包材・物流費が重なって上がる。会社は2027年3月期に中東情勢で営業利益30億円の負担を織り込む。値上げは数量とのせめぎ合いで、PBとの価格差が開く恐れがある。
北米の成長投資が実らない恐れ
北米は市場が大きい一方、日本発ブランドは棚の競争に苦しんでいる。ホドの買収と費用の先行投資が採算に乗らなければ、海外の利益は伸びず、減損も起きうる。
買収の価値破壊
5年で1,000億円以上の買収を掲げる。純現金は小さいため借金を使う。経験の薄い領域で高い値段を払えば、ROEは下がる。成長戦略の数字は資料ごとにずれがあり、目標は割り引いて読む。
健康志向と規制
高脂質・高糖質の食品への風当たりは強まりうる。国内の数量が10年で2割落ちる筋書きは、悲観の中身に入れた。新カテゴリで補えるかが問われる。
二大株主の動き
ペプシコ系と創業家の二大株主が長く並ぶ。どちらかが持ち分を動かすと、株価の需給や経営の方針が揺れる。ただし買収の動きは確認できていない。
今後の分かれ目
- ばれいしょの収量が戻り、国内の営業利益率が10%台に戻る
- 中立の見立てがそのまま実現に近づく。10年の純利益は300億円台前半で、今の値段との差は小さくなる。
- 国内の営業利益率が8%を割ったまま2期続く
- 広島工場の償却を吸収できていないことになり、やや悲観の筋書きに寄る。
- 北米の売上が年15%で伸び、海外の営業利益率が8%を超える
- 海外比率4割が近づき、楽観寄りの見立てに動く。国内が弱くても全体の利益は2倍を超える。
- 買収で1,000億円規模の大型案件が出る
- 価格と相手を見る。採算が合えば上振れ、高い値段なら資本効率が落ちて中立を下げる。
- 値上げのあとに数量が2期続けて落ちる
- 値上げの力が尽きた合図で、慎重な見方が強まる。
- ペプシコ系が持ち株を動かす
- 国内の主導権や提携の形が変わる。買収や再編の可能性を再評価する。
見ておくもの
- 国内営業利益率(10%台への回復)
- ばれいしょの収量と契約農家の数
- 北米の売上成長率と海外営業利益率
- 買収の金額と相手
- 累進配当の継続と自社株買いの実施
倍率と資本コストの決め方
倍率は正当化PER(ROEからRONICを出し、g=3.5%、k=7.0%)の上限に、利益の質で7〜10割を掛けて決めた。今の株価や同業の倍率は使っていない。今の株価は利益の20倍超だが、中立は15倍で置き、そこに寄せていない。悲観の床は今の自己資本に0.29倍を掛けた、稼ぐ力(約757億円)の約8割で、過去のPBRの底は使っていない。数量は売上÷推定単価の割り戻しなので、実数でなくても売上と利益率の積み上げの結論は変わらない。店は借りて営む事業ではないので、新リース会計基準(2028年3月期から)の影響は小さい。10年後の数字は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 18.1→19.01 倍・やや楽観 PER 15.9→17.68 倍・中立 PER 15.2→16.85 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityを足した。事業は傾いていないので上乗せはない。