結論
カゴメはトマトと野菜の会社だ。国内では「野菜生活100」とトマトケチャップで知られ、海外ではトマトの一次加工と加工品を手がける。2024 年に米国の加工大手インゴマー社を子会社にして、売上は 2 割弱増え、国際事業が全体の 4 割近くを占めるようになった。筆者の結論は、10 年で見れば今の値段は先を行きすぎており、やや割高というものだ。
理由は、稼ぐ力が値段に見合うほど厚くないことにある。事業利益率は 7% 前後で、国内の飲料と食品はブランドこそ強いが、人口減と値上げ疲れで数量は細る。国際は規模が大きくなった反面、トマトペーストは国際相場に左右される商品であり、2026 年はその相場の下落が利益を削っている。
一方で、材料はある。会社は 2028 年に事業利益 270 億円、2035 年に 500 億円を掲げ、還元も総還元性向 50% へ引き上げる。物価が毎年上がる世界では、国内の値上げが定着し、国際の数量が伸びれば利益は 10 年で 5 割ほど増える。筆者はその中立の姿を、ROE が 8% 前後、つまり資本コストをわずかに上回る程度の普通の優良会社と見る。
この会社に厚い堀はない。強いブランドと、世界 4 位のトマト加工という規模はあるが、値段を自分で決めきれる事業ではない。その分、10 年後の評価も控えめになる。中立で今の時価総額を 2 割ほど上回るが、悲観の確率と割り引きを織り込むと、今の値段はやや高い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、カゴメは「悪くないが、安全域を取れる会社ではない」と見る。
まず、事業が 10 年後も存在し続ける点では心配がない。トマトと野菜は人が食べ続けるもので、ケチャップと野菜飲料は生活に根づいている。ブランドも急に消えるものではない。
次に、堀の厚さだ。国内の一部カテゴリーには強みがあるが、値段を自分で決めて利益率を上げ続けられる会社ではない。国際の一次加工は、規模は大きくても商品の性格が強い。堀は薄いほうに寄る。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、設備投資と運転資金を引くとさらに小さい。トマトの加工は設備と在庫に資金が要る事業で、稼いだ利益の相当部分が事業に戻る。
資本の使い方は、これからだ。買収で規模は得たが、利益率は上がっていない。戦略投資の 500 億円がどこへ向かうかで、この評価は変わる。
最後に、安全域。中立でも今の値段をわずかに上回る程度で、悲観に落ちると大きく下がる。筆者が払ってよい値段は、今より低いところにある。
何で稼ぐ会社か
事業は大きく 3 つに分かれる。売上の半分強を占める国内加工食品は、飲料(野菜生活100・トマトジュース)と食品(ケチャップ・ソース・パスタソース)、外食向けの業務用からなる。野菜飲料とケチャップでは国内のトップ級で、家庭の棚に定番として並ぶ。稼ぎ方は、ブランド品を値上げしながら売り、販促費を使って棚を守る形だ。
国際事業は、売上の 4 割弱を占める。柱は米国のインゴマー社で、年に約 155 万トンの加工用トマトを処理する。米国で 2 位、世界で 4 位の規模だ。カリフォルニアの農家と契約してトマトを買い、ペーストやダイスにして食品会社へ売る。これが一次加工だ。もう一つの二次加工は、米国・豪州・欧州でケチャップやソースなどの加工品を作って売る仕事で、ブランドの色が濃い。
その他は、農園事業や通販、機能性素材などで、売上は小さく利益もほとんど出ない。
稼ぎの源は「トマトを買い、加工し、値段を乗せて売る」ことに尽きる。国内は値決めの力が頼りで、国際一次加工は規模と原料の調達力が頼りになる。同じトマトでも、前者はブランド、後者は商品の性格が強く、利益の安定度が違う。
優良さと弱いところ
優良さは「そこそこ」だ。ブランドの強さは本物だが、堀と呼べるほどの値決めの力は国内の一部にとどまる。
強みは 3 つある。野菜飲料とケチャップという国内の定番、種子・契約農家から加工までを握るトマトの一貫体制、そしてインゴマー社の規模だ。トマトは育てる段階から品質を管理できる会社が少ない。この点は、他社が簡単にはまねできない。
弱みは利益率の低さだ。過去 10 年の営業利益率は 3% から 8% で、2024 年の 12% は一時の差益を含む。国内は人口が減り、値上げのたびに数量が戻らない。2026 年の予想でも、価格改定のあと飲料の数量が回復していない。国際の一次加工は、トマトペーストの世界相場に利益が左右される。
資本効率は、ROE が過去 10 年の中央値で 8% 前後と、資本コストをわずかに上回る程度だ。資本の使い方では、買収で連結範囲を広げたことで ROE が一時 13% に上がったが、その大半は一時の差益だった。筆者はここを割り引いて見る。
経営は、中計で ROE 9% 以上、還元 50% を打ち出して資本効率を意識し始めた。ただ、戦略投資に最大 500 億円の枠を持つため、買収の使い方が今後の質を決める。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の加工食品市場は、人口減でゆるやかに縮む。野菜飲料は健康志向で底堅い一方、値上げが続いたことで消費者の値ごろ感が厳しくなり、PB(流通大手の自社ブランド)に流れやすい。ケチャップや調味料は成熟した市場で、数量は横ばいから微減が続く。同じ領域の味の素やキッコーマンのように海外で伸びる道筋が、カゴメにはまだ細い。
国内の競合は、野菜飲料では伊藤園、トマト調味料ではキッコーマン(デルモンテ)やPBだ。カテゴリーごとに首位級を持つが、どこも一強ではない。
国際は、世界のトマト加工が舞台になる。米国の加工用トマトは、2023 年の不足で価格が急騰し、その後に在庫が戻って平常化へ向かっている。2026 年は契約面積が 30 年超で最少になり、供給が絞られている。ただし世界のペースト相場は、中国新疆・イタリア・米国の収穫に左右される。米国の最大手モーニングスター社や中国の輸出が競合で、一次加工は商品の性格が強い。
ケチャップなどの二次加工は、米国ではハインツなど大手との競争になる。カゴメは外食向けの業務用で足場を持つが、利益率は国内より低い。
10 年の見通しでは、国内は数量がゆるやかに減り、価格は物価並みに上がる。国際は、人口の増える米国と新興国で加工トマトの需要が伸び、数量は国内より強いと見る。ただ、相場の山谷で利益が大きく振れる点は変わらない。
資本政策と M&A
資本政策は転換点にある。2024 年に米国のインゴマー社の持分を 20% から 70% に引き上げて子会社にした。この時は 20% の旧持分の評価益として 93 億円の差益が出ており、2024 年の利益はそれで膨らんだ。資金は借入で用意し、その返済の一部に自己株式の処分を充てた。
買収で借金は増え、純有利子負債は自己資本の 3 割ほどになった。それでも格付けはシングル A を維持する方針で、財務は壊れていない。
還元は、中計で総還元性向を 40% から 50% 以上へ引き上げ、累進配当を導入する。配当は 2026 年に前期比で 2 割ほど増える計画だ。過去 5 年に自社株買いはなく、今後の買い戻しも約束されたものではない。
M&A は、中計で戦略投資枠 500 億円を掲げる。買う側として動く構えで、次の買収の成否が資本効率を左右する。買われる側の話では、時価総額が 2,500 億円と中堅で、事業会社が買収を考える大きさだ。ただ、政策保有株の状況やアクティビストの関与は確かめられなかったので、ここでは論じない。
株主優待は、100株で2千円相当、1,000株以上で6千円相当の自社商品詰合せ。会社は優待の費用を開示していないため、株主 約8万人(自社商品の原価と送料)から年10億円と推定した。優待は株主が受け取る現物の還元なので、10年の還元に年額×10年を、中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5の係数で足した(費用は販管費として利益から引き済みで、自己資本の流れには入れない)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
カゴメは、世界のトマトを押さえる成長株に変わりつつある。インゴマー社の取り込みで、米国での加工量は世界 4 位になった。トマトの需要は人口の増える米国と新興国で伸び続け、数量は国内の減少をはるかに上回る。国際は 10 年で 6 割ほど増える。
国内は、値上げが定着する世界でブランドの力が効く。野菜生活100 とケチャップは指名買いされる商品で、物価が毎年上がれば値上げは当たり前になる。国内の利益率は計画どおり 10% を超え、11% 台まで届く。
資本政策も味方だ。総還元性向 50% と累進配当で、利益が伸びれば株主への配当が自動的に増える。戦略投資 500 億円で、一次加工から二次加工へ重心が動けば、国際の利益率は 8% から 10% へ上がる。
この姿になれば、事業利益は 460 億円前後に届き、会社が掲げる 500 億円の目標に近づく。ROE は 10% を超え、資本コストを上回る水準が定着する。今の値段は、その入口にあたる。
慎重な見方
カゴメの利益は、見かけほど強くない。事業利益率は 7% 前後で、2024 年の 12% は買収に伴う一時の差益だった。それを除いた実力は、2025 年の 226 億円のほうだ。2026 年の予想はさらに低い 190 億円で、国内も国際も減益になっている。
国内は、人口が減るなかで値上げを重ねたため、数量が戻らない。流通大手の PB が棚を広げ、ブランド品の棚は縮む。国内の数量は 10 年で 2 割落ちてもおかしくない。
国際は、トマトペーストが商品である以上、相場の波を避けられない。供給が絞られた 2023 年に利益が出て、在庫が戻れば利益が削られる。中国やイタリアの供給が増えれば、一次加工の利益率は 3% 台まで落ちる。インゴマー社への買収額は大きく、のれんの減損も視野に入る。
さらに、戦略投資 500 億円が失敗すれば、ROE は資本コストを割る。資本効率の低い会社に、高い倍率はつかない。今の値段は、その悪い姿を十分に織り込んでいない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。国内の数量減と国際一次加工の商品性は、事業の構造として動かしにくい。強気の見方が頼りにする利益率の上昇は、会社自身の計画を超える水準でなければ成り立たない。
そのため、確率は中立に 4 割弱、やや悲観に 4 分の 1、悲観に 1 割を置き、楽観側は合わせて 3 割弱にとどめた。国際の数量の伸びは認めるが、利益率の上がり方は慎重に見た。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 3,164 円2,865 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,019 円922 億円)。 今の値に割り戻すと 2,289 円2,073 億円、今との差 −18.0%、 期待の年率 +4.1%(資本コスト 7.2%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 5,845 円5,293 億円 | 1,380 円1,250 億円 | +158.9% | +10.0% | 506 円458 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,527 円4,100 億円 | 1,215 円1,100 億円 | +105.8% | +7.5% | 1,148 円1,040 億円 |
| 中立 | 38% | 3,646 円3,302 億円 | 1,093 円990 億円 | +69.8% | +5.4% | 1,801 円1,631 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,559 円1,412 億円 | 856 円775 億円 | −13.5% | −1.4% | 604 円547 億円 |
| 悲観 | 10% | 740 円670 億円 | 497 円450 億円 | −55.7% | −7.8% | 124 円112 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,164 円2,865 億円 | 1,019 円922 億円 | +49.9% | +4.1% | 4,182 円3,788 億円 |
今の株価時価総額 2,791 円2,527 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 7% 楽観:国際が育ち、利益率が計画を超える 利益 321 億円 · PER 16.5 倍 · 株価時価総額 5,845 円5,293 億円
インゴマー社の取り込みが想定以上にうまくいく。米国の契約農家との関係が強まって加工量が増え、ペーストの相場も安定する。ケチャップなどの二次加工は米国・豪州・欧州で業務用の顧客を広げ、国際の売上は 2,500 億円近くに伸びる。利益率は一次加工の効率化と二次加工の構成比の上昇で 10% に届く。
国内は、野菜飲料の健康需要が人口減を補い、数量はほぼ横ばいを保つ。値上げは物価並みに通り、利益率は 11.5% まで上がる。
全社の事業利益は 460 億円前後と、会社が掲げる 500 億円に近づく。戦略投資の買収もうまくいき、ROE は 10% を超える。還元は総還元性向 5 割を守る。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年10億円×10年×1.0=100億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 国内加工食品:数量 52.4(販売数量(万トン、飲料・食品・業務用の合計の推定))× 価格 402(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 2,108 億円・営業利益 242 億円。国内利益率 11.5%
- 国際(トマト一次加工・二次加工):数量 45.9(販売数量(万トン、トマト製品の推定))× 価格 536(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 2,461 億円・営業利益 246 億円。国際利益率 10%
- その他:数量 5.0(取扱量(万トン相当、推定))× 価格 590(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 296 億円・営業利益 12 億円。利益率 4%
倍率:事業の純利益 321 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.5 倍。全体の PER 16.49 倍、時価総額 5,293 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国際の数量が強く伸び、国内も値上げが定着して、利益率が会社の 2035 年の目標に近づく姿。一次加工の相場に頼る限り全部がそろう確率は低く、7% にとどめた。
やや楽観 20% やや楽観:国際の数量が伸び、国内は踏ん張る 利益 265 億円 · PER 15.5 倍 · 株価時価総額 4,527 円4,100 億円
国内の数量は人口減で 5% ほど減るが、値上げは通り、利益率は計画の 10% をやや上回る。国際は、米国のトマト需要と二次加工の拡大で数量が 4 割増え、利益率は 9% 台に上がる。
全社の事業利益は 390 億円前後。国内の定番ブランドが物価並みの値上げを通し、国際は二次加工の比率が少しずつ上がる。会社の 2028 年の目標(270 億円)は達成し、2035 年の目標(500 億円)には届かない姿だ。ROE は 9% を超えて資本コストを上回り、還元も総還元性向 5 割で増える。ただし国際の相場は波があり、途中の年には利益が大きく振れる。会社の目標に近づいても、そこで安心できる姿ではない。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年10億円×10年×1.0=100億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 国内加工食品:数量 49.8(販売数量(万トン、飲料・食品・業務用の合計の推定))× 価格 402(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 2,002 億円・営業利益 216 億円。国内利益率 10.8%
- 国際(トマト一次加工・二次加工):数量 40.2(販売数量(万トン、トマト製品の推定))× 価格 536(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 2,154 億円・営業利益 198 億円。国際利益率 9.2%
- その他:数量 4.9(取扱量(万トン相当、推定))× 価格 590(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 287 億円・営業利益 10 億円。利益率 3.5%
倍率:事業の純利益 265 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.5 倍。全体の PER 15.47 倍、時価総額 4,100 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国際の伸びと国内の値上げ定着はどちらも自然な姿で、会社の中計が大筋で達成される。中立よりやや軽い 2 割に置いた。
中立 38% 中立:普通の優良会社として 10 年が過ぎる 利益 226 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 3,646 円3,302 億円
国内は人口減とPBシフトで数量が 7% ほど減り、野菜飲料の健康需要がそれを一部補う。値上げは物価並みに通り、売上は 2,000 億円弱。利益率は計画どおり 10% 前後で落ち着く。
国際は、米国と新興国の需要で数量が 25% 伸びる。ペーストは相場商品なので波があるが、ならせば物価並みに上がる。利益率は一次加工と二次加工の混合で 8.5% 前後になる。
全社の事業利益は 330 億円前後で、2025 年の約 1.5 倍。会社の 2028 年の目標は達成するが、2035 年の目標 500 億円には届かない。ROE は 8% 前後と、資本コストをわずかに上回る水準にとどまる。還元は総還元性向 5 割で、配当が累進的に増える。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年10億円×10年×1.0=100億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 国内加工食品:数量 48.8(販売数量(万トン、飲料・食品・業務用の合計の推定))× 価格 402(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 1,960 億円・営業利益 196 億円。国内利益率 10%
- 国際(トマト一次加工・二次加工):数量 35.9(販売数量(万トン、トマト製品の推定))× 価格 536(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 1,923 億円・営業利益 163 億円。国際利益率 8.5%
- その他:数量 4.8(取扱量(万トン相当、推定))× 価格 590(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 281 億円・営業利益 8 億円。利益率 3%
倍率:事業の純利益 226 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍。全体の PER 14.61 倍、時価総額 3,302 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内は微減・国際は伸びるが相場に振れる、という構造の中心値。強気の言い分も慎重な言い分も認めたうえで、わずかに慎重側へ寄せた。
やや悲観 25% やや悲観:国内が細り、トマト相場が長く軟調 利益 139 億円 · PER 9.9 倍 · 株価時価総額 1,559 円1,412 億円
国内は値上げ疲れで数量が 15% 減る。PB が棚を広げ、価格は物価に届かず 10 年 1.30 倍にとどまり、利益率は 8% に下がる。
国際は、世界のトマト供給が回復して相場が長く軟調になる。一次加工の利益率は 3% 台に落ち、全体で 6.5% 前後、価格も 10 年 1.25 倍と物価に届かない。
全社の事業利益は 210 億円と、今の 2025 年をわずかに下回る。ROE は 5% 台で資本コストを割る。配当は累進を守るが、戦略投資は絞られ、還元は 700 億円にとどまる。ブランド品の棚の縮みと相場の軟調が 10 年続くという、今の 2026 年の延長線上の姿だ。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年10億円×10年×0.8=75億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 国内加工食品:数量 44.6(販売数量(万トン、飲料・食品・業務用の合計の推定))× 価格 390(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 1,738 億円・営業利益 139 億円。国内利益率 8%
- 国際(トマト一次加工・二次加工):数量 31.6(販売数量(万トン、トマト製品の推定))× 価格 500(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 1,578 億円・営業利益 103 億円。国際利益率 6.5%
- その他:数量 4.5(取扱量(万トン相当、推定))× 価格 572(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 259 億円・営業利益 3 億円。利益率 1%
倍率:ROE 5.5%が k 7.25%以下。RONIC 6.5%で正当化 PER は約 11.0 倍が上限。稼ぐ力は純利益 139 億円(÷ k で約 1,850 億円)、その約 9 割の 9.9 倍を採用。今の自己資本には掛けない。
確率:国内の人口減と PB、国際一次加工の相場軟調が重なる姿は、今の 2026 年の延長にもあたり、起こりやすい。2 割台半ばに置いた。
悲観 10% 悲観:ブランドの棚が縮み、買収も重荷になる 利益 67 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 740 円670 億円
国内は流通大手の PB と値上げ疲れで棚が縮み、数量は 25% 落ちる。価格も物価に届かず、利益率は 6.5% に下がる。
国際は、中国・イタリアの供給増でペースト相場が崩れ、一次加工は薄利に落ちる。さらに戦略投資の買収が裏目に出て、のれんの減損が約 400 億円出る。
全社の事業利益は 110 億円と、今の半分になる。ROE は 3% 台に落ち、ブランド会社としての評価は外れる。配当は累進を守れず、10 年の還元は 400 億円ほどにとどまる。会社は縮んだ食品会社として、稼ぐ力だけで評価される。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年10億円×10年×0.5=50億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 国内加工食品:数量 39.3(販売数量(万トン、飲料・食品・業務用の合計の推定))× 価格 360(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 1,416 億円・営業利益 92 億円。国内利益率 6.5%
- 国際(トマト一次加工・二次加工):数量 28.7(販売数量(万トン、トマト製品の推定))× 価格 440(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 1,263 億円・営業利益 51 億円。国際利益率 4%
- その他:数量 4.0(取扱量(万トン相当、推定))× 価格 528(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 212 億円・営業利益 0 億円。利益率 0%
倍率:ROE 3.5%が k 7.25%以下。上限は 1÷k の 13.3 倍。稼ぐ力は純利益 67 億円(÷ k で約 900 億円)、その約 7 割強の 10 倍に置いた。自己資本は減損 400 億円を引いたあとの額で、今の自己資本に掛ける形にしない。
確率:国内の PB 化、国際の相場崩れ、戦略投資の失敗が同時に起きる複合の姿。一次加工の相場の下振れを考えれば無視できないが、全部そろうのは稀なので 1 割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内加工食品
野菜飲料(野菜生活100・トマトジュース)、ケチャップ・ソースなどの食品、外食向けの業務用。国内の家庭の定番ブランド。
| 数量販売数量(万トン、飲料・食品・業務用の合計の推定) | 価格1kg あたりの平均単価(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 52.4 | 300 | 1,573 | 155 |
| 10 年後 中立 | 48.8 | 402 | 1,960 | 196 |
取り方:売上 1,573 億円を、平均で三百円前後の品が年 52 万トン売れていると置いて分けた(推定)。飲料は 1 リットル二百円台、食品はケチャップ・ソースで四百円台を混ぜた値。数量は人口減と PB で中立 10 年 0.93 倍(野菜飲料の健康需要が減少の一部を埋める)。価格は物価並みの 10 年 1.34 倍。市場の大きさ:国内の野菜飲料は 3,000 億円規模、ケチャップは 500 億円規模と見て、カゴメは野菜飲料で 3 割強、トマト調味料で 4 割台の首位級(推定)。競合は伊藤園、キッコーマン(デルモンテ)、PB。
国際(トマト一次加工・二次加工)
米インゴマー社のトマトペースト・ダイスの一次加工と、米豪欧でのケチャップ・ソースなどの二次加工。
| 数量販売数量(万トン、トマト製品の推定) | 価格1kg あたりの平均単価(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 28.7 | 400 | 1,148 | 93 |
| 10 年後 中立 | 35.9 | 536 | 1,923 | 163 |
取り方:売上 1,148 億円を、平均で四百円前後の品が年 29 万トン売れていると置いて分けた(推定)。一次加工のペースト・ダイスは 1kg 二〜三百円、二次加工は五百円以上で混ぜた値。インゴマー社は年 155 万トンの生トマトを処理し、歩留まりから製品は 25 万トン前後。数量は米国と新興国の需要増と、シェアの引き上げで 10 年 1.25 倍。価格は物価並みの 10 年 1.34 倍(ペーストは相場商品なので、悲観では下げる)。市場の大きさ:世界の加工用トマトは年 4,000 万トン台、カゴメ(インゴマー分)は世界 4 位で 3〜4% のシェアと見る。競合はモーニングスター、中国新疆の輸出、イタリア勢。
その他
農園事業、通販、機能性素材など。
| 数量取扱量(万トン相当、推定) | 価格1kg あたりの平均単価(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 5.0 | 440 | 221 | 5 |
| 10 年後 中立 | 4.8 | 590 | 281 | 8 |
取り方:売上 221 億円を、平均で四百四十円前後の品が年 5 万トン相当と置いた(推定)。農産物・通販・素材の混合で、実体の数量は開示がない。数量は中立 10 年 0.95 倍、価格は物価並み。利益は薄く、全社の動きにほとんど効かない。
リスクと懸念
トマトペースト相場の下落
国際の一次加工は、世界のトマトペースト相場に利益が左右される。2023 年の供給不足で潤った分が、在庫の回復で削られ、2026 年の予想でも国際の減益要因になっている。中国新疆やイタリアで供給が増えれば、利益率は 3% 台まで落ちうる。
国内の数量減と PB
国内の人口減に加え、値上げを重ねたことで消費者の値ごろ感が厳しくなり、PB へ流れやすい。2026 年の予想でも、価格改定後の飲料の数量が戻っていない。ブランドの棚が縮めば、国内の利益率 10% の目標は遠のく。
買収と戦略投資の失敗
インゴマー社の連結で借金とのれんが増えた。中計は戦略投資に最大 500 億円の枠を置くが、次の買収が裏目に出ればのれんの減損と ROE の低下につながる。M&A で規模を得ても、利益率が上がらない事例はこの業界に多い。
カリフォルニアの原料と気候
インゴマー社の原料は、カリフォルニアの契約農家のトマトだ。水不足・干ばつ・契約面積の減少が続けば、処理量と原価に直接響く。2026 年の契約面積は 30 年超で最少で、供給が絞られている。
包材・エネルギーと為替
中東情勢の悪化で包材・エネルギーの費用が想定以上に増えるおそれがあると会社は説明している。ドル円は 150 円固定の前提だが、輸入原料の円建て原価は実際には為替で動く。値上げで転嫁できるまでの時間差で利益が削られる。
一時益の見かけ
2024 年の事業利益と ROE は、インゴマー社の連結に伴う 93 億円の差益で膨らんでいた。過去の利益の水準をそのまま先に延ばすと、稼ぐ力を過大に見る危険がある。本稿では差益を除いた 2025 年の実力から積み上げた。
今後の分かれ目
- トマトペーストの世界相場が長く低迷したら
- 国際一次加工の利益率の前提を下げ、やや悲観と悲観の確率を上げる。
- 国内の飲料で価格改定後の数量が戻り、販促費が下がったら
- 国内利益率 10% の前提が確かになり、やや楽観の確率を上げてよい。
- インゴマー社に続く大型の買収が発表されたら
- 価格と利益率の見込みを確かめ、買収後の ROE が資本コストを上回るかで楽観と悲観のどちらへ寄せるかを決める。
- 国際の二次加工が利益率 9% 台へ上がったら
- 構成の変化が定着したかを見て、国際の利益率の前提を上げる。
- 総還元性向 50% に自社株買いが加わったら
- 還元の額が増え、ROE の見通しも上がる。ただし本質価値は利益で決まるので、倍率の前提は変えない。
- カリフォルニアの契約面積の減少が続き原料が不足したら
- 一時的に相場は上がるが、処理量の減少で数量の前提を下げる。
見ておくもの
- 国内加工食品の事業利益率(10% の計画に近づいているか)と飲料の販売数量
- 国際一次加工のトマトペースト相場と、インゴマー社の処理量
- 国際二次加工の利益率(9% の計画)
- 総還元性向(50%)と累進配当の実行
- 戦略投資 500 億円の使い道とのれんの動き
倍率と資本コストの決め方
国内・国際・その他の 3 事業を、販売数量(万トン、推定)× 1kg の単価(推定)で積み上げ、価格は物価並みに 10 年 1.34 倍とした(悲観・やや悲観の国際・国内の価格だけ物価に届かない)。倍率は式が決めた。ROE が k を上回る中立とやや楽観・楽観は、1÷k の 13.3 倍が下限、上限は正当化 PER の 9 割前後で、今の PER や過去の PER から置いていない。中立で今の時価総額の約 1.2 倍にとどまり、今の値段の方が高いと出た。悲観側は稼ぐ力(純利益÷k)の 7〜9 割に置いた。2024 年の差益 93 億円を除いて、2025 年の事業利益 226 億円から積み上げた。リースは店舗を借りる事業でなく小さいので、数字の形は変えていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.3→16.49 倍・やや楽観 PER 13.3→15.47 倍・中立 PER 13.3→14.61 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality 0 を足した。事業が傾いているわけではないので上乗せは置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 7.25%。