結論
フジ日本は、砂糖づくりの老舗が、イヌリンという食物繊維の会社へ変わりつつある会社だ。売上の半分はすでに機能性素材で、糖類を上回った。筆者の結論は、ほぼ適正である。成長の芽は本物で、下値も固い。ただ、今の利益は砂糖の好調と一度きりの売却益で押し上げられており、安全域は厚くない。
糖類は、輸入した原料糖を精製して売る事業だ。国内の砂糖の消費は人口減で細り、数量は10年で1割ほど減る。2025年11月には約7年ぶりに値下げもした。国内の精製糖で占める位置は5%台と小さい。
機能性素材の中心はイヌリンだ。糖質オフや機能性表示食品に使われ、さとうきび原料の酵素法は世界で唯一とされる。タイ工場の能力は2027年7月に1.5倍へ増える。海外の大手向けが伸び、数量は10年で6割増えると見る。
ただ、砂糖の利益率は過去の山に近い。機能性素材の利益率はまだ1割ほどだ。本社費も物価で増える。10年後の営業利益は、今期の1.4倍の50億円ほどだ。物価の伸びとほぼ同じで、実質では小さな伸びにとどまる。
財務は堅く、配当は自己資本の3.5%を下限とする。それでも資本効率は資本コストと並ぶ程度で、割増しは付かない。下値は固いが、上値も限られる。今の値段は、成長を織り込んで妥当な水準にある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、持ちたいのはイヌリンだ。砂糖は、続くがもうからない事業の側にある。
砂糖は10年後も食卓にある。だが数量は細り、値段は原料相場と制度に決められる。堀、つまり他社がまねできない強みは薄い。ここで稼ぐ利益は、山のあとで平らに戻るとみる。
イヌリンは違う。原料から製法まで独自で、顧客の食品メーカーは配合を替えにくい。能力の増設は、需要を先に読んだ投資だ。ただ、売上のどれほどがイヌリンかが見えない。利益率も1割と、独占の旨みを取り切れていない。
経営は慎重で、配当の下限を決め、財務も堅い。M&Aを軸にする成長投資は、資本を壊すこともある。買う値段に規律が保たれるかが、最も気になる点だ。
安全域は厚くない。中立の筋書きで、10年後の時価総額と還元の合計は今の水準を上回るが、年率では資本コストにやや届かない。下値は固いので、傷は浅い。割安と呼ぶには、イヌリンの利益が見える形で増える必要がある。
持つなら、現金が株主に戻り始めるか、イヌリンの利益が開示されて見えた時だ。それまでは、配当を受け取りながら待つ立場になる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は二つある。砂糖と、イヌリンを中心にした機能性素材だ。2026年3月期の売上は、糖類が134億円、機能性素材が141億円、不動産が6億円だった。
糖類は、オーストラリアやタイから輸入した原料糖を精製し、グラニュー糖、上白糖、液糖、加工糖にして食品メーカーや卸へ売る。国の糖価調整制度で、輸入糖には調整金がかかる。値段は原料の相場と為替と調整金を積んだ上に、加工の取り分が乗る形で決まる。インバウンド需要で販売は堅調だが、2025年11月に値下げし、物流費も上がった。
機能性素材の看板がイヌリンだ。ごぼうやチコリにも含まれる食物繊維で、血糖値の上がり方をゆるやかにし、腸内環境を整える。フジ日本は、さとうきびの砂糖から酵素でつくる。製造は全量がタイの自社工場で、国内向けは輸入し、海外は主に東南アジアで売る。子会社のユニテックフーズは、ペクチンなど天然の添加物素材を作る。切花の延命剤「キープ・フラワー」もある。
タイの子会社が、イヌリンの製造と東南アジアの販売を担う。海外の売上比率は、2029年3月期に2割を目標とする。
不動産は小さいが、利益率が高い。東京の茅場町でビジネスホテル向けの賃貸をしている。
大株主は双日が31.8%で最大だ。中期計画「CHANGE 2028」は、2029年3月期に売上360億円、経常利益36億円、ROE9%以上を目指す。重点は東南アジアの拡大と、M&Aを軸にした成長投資だ。
優良さと弱いところ
質の面では、二つの顔を持つ会社だ。
一つは機能性素材の強みだ。さとうきびを原料に、酵素でイヌリンをつくる製法は、会社の説明では世界で唯一とされる。欧州にはチコリ由来の品を作る大手がいて、競争は楽ではない。それでも原料と製法が独自で、食品メーカーは配合を替えにくい。顧客と結びつくほど、取引は長く続く。ただし、開示が無く、売上のどれほどがイヌリンかは分からない。
もう一つは砂糖だ。製品は汎用品で、値段は原料相場と制度に縛られる。首位のDM三井製糖が約4割、ウェルネオシュガーが約3割を握り、フジ日本は5%台にとどまる。規模の力は弱いが、2025年10月に塩水港精糖と組み、共同生産で負担を軽くする道を探り始めた。
収益力は山に近い。2026年3月期の営業利益率は12.5%で、過去で最も高い。10年前は3%台だった。コスト高を価格に移せた年と、原料が安かった年が重なった成果で、構造が変わったと言い切れない。
資本効率は改善してきた。ROEは過去10年の中央値で7%台、直近は11%台に上がった。ただ、純利益には売却益が入り、実力はやや低い。
財務は堅い。自己資本比率は72%で、純現金は約23億円ある。経営は「攻めへの転換」を掲げ、東南アジアとM&Aに踏み出した。資本の使い方はこれから試される。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
砂糖の国内市場は、構造的に細っている。人口減と甘さ控えめの嗜好に加え、異性化糖(ぶどう糖と果糖の甘味料)への置き換えが効く。国産の甜菜糖と甘蔗糖が消費の約4割を占め、残る6割ほどが輸入原料糖から作る精製糖だ。
精製糖は上位への集中が進んだ。2020年に三井製糖と大日本明治製糖が、2023年に日新製糖と伊藤忠製糖が統合した。フジ日本はその外にいる。大手の下で、液糖や加工糖、特定の顧客で稼ぐ立場だ。値段が決まる仕組みは大手と同じで、原料相場の急変で利益が振れる。
機能性素材は逆に伸びている。イヌリンの用途は、糖質オフ食品、機能性表示食品、飲料、乳製品だ。国内では健康訴求の商品に採用が増え、海外ではタイや東南アジアの大手食品メーカーに採用が広がった。会社は米国とインドも狙う。東南アジア向けが落ちた年もあり、安定した伸びとは言えない。
原料糖はニューヨークの相場で決まり、円安は製造コストを押し上げる。会社は今期の減益予想の理由に、エネルギー、原料、円安をあげている。
今後の分かれ目は三つある。糖価調整制度の見直し、原料相場の方向、そしてイヌリンの海外の大手顧客が増え続けるかどうかだ。
10年の見方は、砂糖の数量が1割減り、値段は物価並みに上がる。イヌリンを含む機能性素材は、数量が6割増え、値段は物価をやや下回る。この組み合わせで、全社の営業利益は物価の分を除いて小さく伸びる。
資本政策と M&A
資本政策は、安定配当と成長投資の両立を掲げる。配当は自己資本の3.5%以上を下限とする。2027年3月期は配当性向が4割ほどになる見込みで、純利益が減っても配当は下げにくい。
大株主は双日が31.8%、和田製糖が9.6%、鈴与が7.4%、塩水港精糖が5.0%だ。双日との取引関係の中身は、確かめられていない。安定株主が厚く、浮動株は多くない。10年以内のTOBや再編の確率は、kabufuの推定で24%と高めだ。
成長投資は、東南アジアの拡大とM&Aが軸だ。酵素開発のdigzymeに出資し、2025年10月には塩水港精糖と共同生産・共同開発の契約を結んだ。タイのイヌリン工場の増設は、能力を6,500トンから約9,700トンへ増やす。投資額は公表されていない。
保有株は少しずつ売っており、2026年3月期に売却益5.2億円を計上した。この売却益は一度きりで、今期の予想には入っていない。
株主優待は、9月末に100株以上へ贈る。100株はQUOカード、200株以上は自社製品だ。株主数は2.6万人で、費用は開示が無く、年1.2億円と推定した。優待は株主が受け取る現物の還元なので、10年の還元に年額の10年分を、中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5の係数で足した。費用は利益から引き済みで、自己資本の流れには入れない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
機能性素材は、砂糖に代わる柱に育った。売上は糖類を上回り、営業利益は前の期に3割近く増えた。タイ工場の能力は2027年7月に1.5倍になる。増設は需要に先回りした投資で、国内外とも販売数量が年々増えている。
イヌリンは、さとうきびから酵素でつくる世界で唯一とされる製法だ。糖質オフや機能性表示食品の追い風があり、東南アジア、米国、インドへ販路を広げている。海外比率は2029年3月期に2割、2039年3月期に4割へ上げる計画だ。海外の大手に入り込めば、伸びは長く続く。
砂糖は、上位2社への集中が進んだ業界の中で、値段を守れる。2025年10月には塩水港精糖と組み、共同生産で工場の負担を軽くする。
会社の予想は保守的だ。過去4期は、期初の予想を平均で4割ほど上回った。今期の営業利益33億円は、実際には超えやすい水準にある。
配当は自己資本の3.5%を下限とし、増配を続ける。10年後にイヌリンが3倍を超えれば、営業利益は80億円を超える。
慎重な見方
今の利益は山に近い。営業利益率12.5%は過去最高で、会社自身が今期の営業利益を33億円と、減益で見ている。エネルギーと原料のコスト、円安、前期の売却益の消えた分が重なる。
砂糖は縮む市場だ。人口減で数量は細り、2025年11月には約7年ぶりに値下げした。物流費の上昇で、営業利益はすでに減っている。上位2社が7割を握り、フジ日本は5%台にすぎない。
イヌリンは、一つの工場と一つの国に頼る。製造は全量がタイ工場で、増設の費用はまだ回収できていない。東南アジア向けが落ち込んだ年もある。需要が鈍れば、増えた能力が重荷になる。
機能性素材の利益率は1割ほどで、成長事業としては低い。能力を増やしても、値段が下がれば利益は増えない。M&Aを軸とする成長投資が、価値を壊す例も多い。
資本効率は資本コストと並ぶ程度で、割増しは付かない。今の値段は、イヌリンの成功を先に払っている。
配当の下限を自己資本の3.5%で決めている点も、利益が細る局面では重荷になる。自己資本が積み上がるほど、配当の義務も膨らむからだ。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。イヌリンの成長は本物だが、今の利益は砂糖の山と一度きりの売却益を含む。10年かけても、資本効率は資本コストを大きく超えない。強気の見方の根拠は、会社の予想の保守性と能力増設だ。ただ、増設の効果は中立の筋書きにすでに入れてある。
結論は適正だが、割安と呼ぶ根拠は薄い。確率は中立を最大にしつつ、やや悲観と悲観に合わせて3割台半ばを置いた。下値が固いので、悲観は厚くしすぎなかった。イヌリンの売上と利益率が開示されれば、確率を組み替える。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 886 円455 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 265 円136 億円)。 今の値に割り戻すと 591 円303 億円、今との差 −5.0%、 期待の年率 +6.3%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,870 円959 億円 | 365 円187 億円 | +259.2% | +13.6% | 179 円92 億円 |
| やや楽観 | 22% | 1,353 円694 億円 | 326 円167 億円 | +169.9% | +10.4% | 369 円189 億円 |
| 中立 | 36% | 970 円498 億円 | 283 円145 億円 | +101.4% | +7.3% | 451 円231 億円 |
| やや悲観 | 23% | 339 円174 億円 | 209 円107 億円 | −12.0% | −1.3% | 126 円65 億円 |
| 悲観 | 11% | 107 円55 億円 | 129 円66 億円 | −62.1% | −9.2% | 26 円13 億円 |
| 加重平均 | 100% | 886 円455 億円 | 265 円136 億円 | +85.0% | +6.3% | 1,151 円590 億円 |
今の株価時価総額 622 円319 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% イヌリンが3倍に育ち、砂糖の利益も守る 利益 65 億円 · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 1,870 円959 億円
イヌリンが大きく育つ筋書きだ。
海外の大手顧客が増え、米国とインドにも販路が開く。イヌリンの数量は今の3.5倍になり、機能性素材の売上は3倍を超える。規模の効果で利益率は14%に上がる。
砂糖は数量が5%減にとどまり、物価を上回る値上げも通る。利益率は12.5%を保つ。
営業利益は80億円を超え、会社の長期目標である経常利益100億円に近づく。還元は純利益の3割に届かない程度だが、配当は自己資本に連動して増える。
ROEは11%に乗る。それでも倍率は上限に近い程度で、成長の鈍る10年後に高い値は付かない。優待の受け取り(年1.2億円×10年×1.0=12億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 糖類(精糖)事業:数量 5.8(販売量(万トン))× 価格 30(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 176 億円・営業利益 22 億円。数量 0.95 倍、価格 1.38 倍、営業利益率 12.5%
- 機能性素材事業:数量 3.1(出荷量(万トン相当・推定))× 価格 146(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 445 億円・営業利益 62 億円。数量 2.35 倍、価格 1.34 倍、営業利益率 14.0%
- 不動産・その他:数量 2.0(賃貸対象面積(万㎡相当・推定))× 価格 5.83(1万㎡あたり売上(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 8 億円。数量 1.00 倍、価格 1.34 倍、営業利益率 68.0%
倍率:事業の純利益 65 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.4% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.7 倍。全体の PER 14.69 倍、時価総額 959 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:イヌリンの拡大、砂糖の値段の維持、本社費の抑制がそろう姿。要件が多く、1割未満の8%とした。
やや楽観 22% イヌリンが倍以上に伸び、砂糖は守る 利益 51 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 1,353 円694 億円
イヌリンが倍を超えて伸びる筋書きだ。
タイ工場の増設で供給が増え、海外の大手向けが伸びる。イヌリンの数量は今の2.8倍、機能性素材の売上は2.5倍になる。利益率は12.5%まで上がる。
砂糖は数量が8%減り、値上げは物価並みか、やや上回る。利益率は11.5%に下がる。
営業利益は65億円ほどで、会社の目標を超える。還元は純利益の3割台で、増配を続ける。ROEは10%近い。
ただ、倍率は上限に届かない。機能性素材は伸びるが、汎用品の砂糖が全体の質を引き下げる。優待の受け取り(年1.2億円×10年×1.0=12億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 糖類(精糖)事業:数量 5.6(販売量(万トン))× 価格 30(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 168 億円・営業利益 19 億円。数量 0.92 倍、価格 1.36 倍、営業利益率 11.5%
- 機能性素材事業:数量 2.5(出荷量(万トン相当・推定))× 価格 143(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 363 億円・営業利益 45 億円。数量 1.95 倍、価格 1.32 倍、営業利益率 12.5%
- 不動産・その他:数量 2.0(賃貸対象面積(万㎡相当・推定))× 価格 5.83(1万㎡あたり売上(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 8 億円。数量 1.00 倍、価格 1.34 倍、営業利益率 68.0%
倍率:事業の純利益 51 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.72 倍、時価総額 694 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:イヌリンの増設と海外が計画どおりに進み、砂糖が現状を保つ姿。2割強を置いた。
中立 36% 砂糖の縮みをイヌリンの伸びが埋める 利益 40 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 970 円498 億円
砂糖の縮みを、イヌリンの伸びが埋める筋書きだ。
砂糖の数量は人口減で今の9割に減り、値段は物価並みに上がる。山に近い利益率は、競争と値下げで10%に戻る。
機能性素材は、イヌリンの数量が今の2.2倍になり、全体では6割増える。海外の競争で値段は物価に届かず、利益率は11.5%にとどまる。
営業利益は50億円ほどで、今期の1.4倍。物価の1.34倍とほぼ同じで、実質では横ばいに近い。本社費も物価で増える。
還元は配当が中心で、純利益の3割台半ば。ROEは8%で、資本コストに並ぶ。倍率は、資本コストに見合う水準にとどまる。優待の受け取り(年1.2億円×10年×1.0=12億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 糖類(精糖)事業:数量 5.5(販売量(万トン))× 価格 29(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 162 億円・営業利益 16 億円。数量 0.90 倍、価格 1.34 倍、営業利益率 10.0%
- 機能性素材事業:数量 2.1(出荷量(万トン相当・推定))× 価格 141(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 297 億円・営業利益 34 億円。数量 1.62 倍、価格 1.30 倍、営業利益率 11.5%
- 不動産・その他:数量 2.0(賃貸対象面積(万㎡相当・推定))× 価格 5.83(1万㎡あたり売上(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 8 億円。数量 1.00 倍、価格 1.34 倍、営業利益率 68.0%
倍率:事業の純利益 40 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.6 倍、時価総額 498 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:砂糖の縮みと、イヌリンの伸びが打ち消し合う姿。最大の確率として3割台半ばを置いた。
やや悲観 23% 砂糖の利益率が戻り、イヌリンが足踏みする 利益 21 億円 · PER 6.7 倍 · 株価時価総額 339 円174 億円
砂糖の利益率が元に戻り、イヌリンも足踏みする筋書きだ。
砂糖は数量が16%減り、原料相場の反転で値上げは物価の7割ほどしか通らない。利益率は7.5%に下がる。異性化糖への置き換えも進む。
イヌリンは競争が強まり、数量は今の1.6倍にとどまる。値段は物価の半分ほどしか上がらず、機能性素材の利益率は8.5%。
営業利益は26億円ほどで、今期の7割。本社費は物価で増え、利益を削る。
配当は自己資本の3.5%の下限を守り、純利益の5割近くに当たる。ROEは5%で、資本コストを大きく下回る。優待の受け取り(年1.2億円×10年×0.75=9億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 糖類(精糖)事業:数量 5.1(販売量(万トン))× 価格 28(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 141 億円・営業利益 11 億円。数量 0.84 倍、価格 1.25 倍、営業利益率 7.5%
- 機能性素材事業:数量 1.6(出荷量(万トン相当・推定))× 価格 125(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 203 億円・営業利益 17 億円。数量 1.25 倍、価格 1.15 倍、営業利益率 8.5%
- 不動産・その他:数量 2.0(賃貸対象面積(万㎡相当・推定))× 価格 5.44(1万㎡あたり売上(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 7 億円。数量 1.00 倍、価格 1.25 倍、営業利益率 62.0%
倍率:事業の ROE 5.0% は k 8.0% を大きく下回る。RONIC は 6.5%、g 4.0% の正当化 PER は上限 9.6 倍。稼ぐ力が薄れた筋書きで、上限の 7 割に置く。(上限の約 70% の 6.7 倍)
確率:砂糖の利益率が過去の水準へ戻り、イヌリンの伸びも鈍る姿。過去の利益率の振れを考え、2割台前半とした。
悲観 11% 砂糖が崩れ、イヌリンも値崩れする 利益 6 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 107 円55 億円
構造的に負ける。砂糖の消費が置き換えで細り、数量は今の7割まで落ちる。
上位2社が値下げで需要を取りにきて、値段は物価の1割強しか上がらない。利益率は3.5%に下がる。
イヌリンは競合の参入で値崩れし、タイ工場の増設は稼働が上がらない。機能性素材の数量は今の9割、値段は据え置き。利益率は4%まで落ちる。
営業利益は6億円ほどになる。工場の減損で自己資本が減り、配当は自己資本の3.5%の下限を維持できず、減額に追い込まれる。もう優良とは呼べない。
それでも、純現金と保有株の含み益が下値を支える。優待の受け取り(年1.2億円×10年×0.5=6億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 糖類(精糖)事業:数量 4.4(販売量(万トン))× 価格 24(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 106 億円・営業利益 4 億円。数量 0.72 倍、価格 1.10 倍、営業利益率 3.5%
- 機能性素材事業:数量 1.2(出荷量(万トン相当・推定))× 価格 109(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 127 億円・営業利益 5 億円。数量 0.90 倍、価格 1.00 倍、営業利益率 4.0%
- 不動産・その他:数量 1.8(賃貸対象面積(万㎡相当・推定))× 価格 4.35(1万㎡あたり売上(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 4 億円。数量 0.90 倍、価格 1.00 倍、営業利益率 55.0%
倍率:構造的に負けて稼ぎが細る筋書きなので PBR。稼ぐ力(純利益 6 億円 ÷ k 8.0%)は約 70 億円だが、値崩れで安定しないため、より保守的な床を採る。純現金と保有株の含み益の税引き後で約 55 億円(今の自己資本 279 億円の 0.20 倍)。
確率:砂糖の置き換えとイヌリンの値崩れが同時に来る構造的な負け。純現金と保有株が下値を支えるので、1割強とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
糖類(精糖)事業
輸入した原料糖を精製して売る砂糖・液糖・加工糖。国内の精製糖で5%台の小さな位置。
| 数量販売量(万トン) | 価格1トンあたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6.1 | 22 | 134 | 21 |
| 10 年後 中立 | 5.5 | 29 | 162 | 16 |
取り方:糖類の販売量は開示が無い。売上 134 億円を、グラニュー糖・上白糖・液糖・加工糖が混ざる平均単価 1 トン 22 万円で割り、約 6.1 万トンと推定した(推定)。国内の精製糖は輸入原料糖から作る分で約 110 万トンあり、シェアは 5% 台になる。営業利益は、2025/03 期中間の開示と前年比(-0.9%)から約 21 億円と推定した(推定)。数量は国内の砂糖消費の減少で 10 年 0.9 倍、価格は原料糖と調整金のコスト転嫁で物価並みを基本にする。
機能性素材事業
イヌリン(水溶性の食物繊維)が中心。ペクチンなど天然添加物素材(ユニテックフーズ)、切花活力剤なども含む。イヌリンはタイの自社工場で作る。
| 数量出荷量(万トン相当・推定) | 価格1トンあたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.3 | 109 | 141 | 15 |
| 10 年後 中立 | 2.1 | 141 | 297 | 34 |
取り方:機能性素材は数量の開示が無い。売上 141 億円のうち、イヌリンを約 55 億円(約 0.55 万トン、1 トン約 100 万円と仮定)、ペクチンなどの素材と切花の延命剤を約 86 億円(約 0.75 万トン相当、1 トン約 115 万円と仮定)とみて、合計 1.3 万トン相当、平均 1 トン 108.6 万円と置いた(推定)。タイ工場の能力は年 6,500 トンで、2027 年 7 月に約 9,700 トンへ増える。営業利益は前年比 +28.1% と半期の開示から約 14.7 億円と推定した(推定)。数量はイヌリンの能力増設と海外の伸びで動く。価格は海外の競争があり、物価並みに届かないと置く。
不動産・その他
賃貸不動産(東横INN茅場町駅の賃貸など)とその他の小さな事業。
| 数量賃貸対象面積(万㎡相当・推定) | 価格1万㎡あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.0 | 4.35 | 9 | 6 |
| 10 年後 中立 | 2.0 | 5.83 | 12 | 8 |
取り方:賃貸不動産は面積の開示が無い。不動産の売上 6.3 億円と、その他の小さな事業 2.4 億円を合わせた 8.7 億円を、賃料の混成単価で割り戻した推定値(推定)。営業利益は、賃貸の高い利益率(半期の開示で約 9 割)から約 5.9 億円と推定した(推定)。数量は横ばい、価格は物価並み。
リスクと懸念
砂糖の消費減と制度の変更
国内の砂糖は人口減と置き換えで細り、10年で1割ほど減るとみる。国産糖を守る糖価調整制度が見直されれば、精製糖の原価と値段の仕組みが変わる。決めるのは国で、会社は制御できない。
砂糖の利益率が山にある
営業利益率は2026年3月期に12.5%と過去最高だった。2025年11月には約7年ぶりに値下げし、物流費も上がった。原料糖の相場が反転すれば、値下げ圧力が強まり、利益率は元の1桁台へ戻りうる。
イヌリンが一つの工場に集中
イヌリンの製造は全量がタイの自社工場で、能力増設もそこで行う。災害、洪水、現地の規制や為替で止まれば、機能性素材の柱が揺らぐ。販売も少数の大口顧客と東南アジアに偏る。
イヌリン需要の振れ
糖質オフ、機能性表示食品、健康ブームが追い風だが、流行に左右される。東南アジア向けが落ち込んだ年もあった。能力を1.5倍に増やす2027年7月に需要が追いつかなければ、償却だけが残る。
M&Aと成長投資の失敗
中期計画は成長投資をM&Aで進めるとする。小さな会社が買収で価値を壊す例は多い。投資額や買収先の基準は公表されておらず、規律が保たれるかを外から確かめにくい。
原料・エネルギー・為替
2027年3月期の営業利益予想は、エネルギー、原料、円安の製造コストで7%減る見込みだ。原料糖は外貨建てで、価格転嫁には数か月のずれが出る。急な変動は一時的に利益を削る。
大株主への偏り
双日が31.8%を持ち、和田製糖、鈴与、塩水港精糖などの安定株主が厚い。少数株主の発言力は弱く、再編や持分の動きが株価に大きく響く。10年以内のTOBの確率は24%と高めの推定だ。
今後の分かれ目
- 原料糖の相場が急落し、砂糖の値下げ要請が強まる
- 砂糖の利益率が元の水準へ戻るとみて、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- イヌリンの売上と利益率が開示され、20%前後の利益率で3割増の売上が続く
- 機能性素材の数量と利益率の想定を上げ、やや楽観以上の確率を上げる。
- タイ工場の増設が遅れる、または稼働後に需要が追いつかない
- 機能性素材の数量の想定を下げ、償却の重さを利益に入れる。
- 糖価調整制度の見直しが決まる
- 砂糖の原価と値段の前提が変わるため、糖類の筋書きを全面的に見直す。
- 大きなM&Aが決まる
- 買う値段と、買った事業の利益率を確かめる。資本を壊す買収なら、悲観の確率を上げる。
- 双日が持分を動かす、またはTOBが出る
- 提示された価格を筋書きに反映し、確率を組み替える。
見ておくもの
- 機能性素材の営業利益率と、イヌリンの売上の開示
- タイ工場の増設の進み具合(2027年7月の稼働)
- 砂糖の営業利益率(原料相場の反転後も1割を保てるか)
- 海外比率の推移(2029年3月期に2割の目標)
- 中期経営計画の進捗(経常利益36億円、ROE9%以上)と、M&Aの内容
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の ROE と k 8.0%(基本 7.5% + quality +0.5%)、長期の成長率 g 4% から出る正当化 PER を土台に置いた。今の PER や株価の水準から決めていない。純現金は 23 億円で時価総額の 1 割未満なので、余った現金は分けていない。保有株の時価は、配当が利益に入っているので足していない。指示書の領域は製糖だが、売上の半分は機能性素材(イヌリン中心)なので、糖類は製糖の前提(数量 0.9 倍・価格は物価並み)、機能性素材はイヌリンの増設と海外の伸びから別に置いた。純利益÷営業利益 は過去の中央値 0.89 に対し中立で 0.79。2026/03 期の売却益は流れの起点から外した。工場は自社所有が中心でリースは小さく、新リース会計基準の影響も小さいので、家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。決算期は 3 月で、10 年後は 2036/03 期に置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.22→14.69 倍・やや楽観 PER 12.8→13.72 倍・中立 PER 12.5→12.6 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.5% を足した。同じ領域の DM 三井製糖(+0.6%)とウェルネオシュガー(+0.5%)の間。砂糖は景気に強いが縮む市場で、イヌリンは一つの工場に頼る。借金の軽さでは k を下げない。