結論
紀文食品は、かまぼこ・竹輪・はんぺん・カニカマといった練り物の国内最大手だ。国内市場は約3,000億円。自前の冷蔵物流で、全国のスーパーとコンビニに毎日届ける仕組みが他社との差になっている。
筆者の結論は「やや割高」だ。会社が悪いのではない。薄利の事業で、10年後の中立でも利益は今の約3倍にとどまり、ROEが資本コストに届かない。物価が年3%上がる世界では、利益の伸びが物価についていけない。
足元の傷は深い。2026年3月期の営業利益は前期から約3割減り、純利益は6割近く落ちた。冷凍すり身、卵、包装資材が同時に上がったためだ。2027年3月期の4〜6月も営業利益はほぼゼロだった。会社は通期で営業利益52億円を掲げるが、おでんと正月の冬に懸ける形だ。
光る部分もある。物流事業は外部の荷主が売上の8割を占め、利益率は国内食品の4倍に近い。ブランド品は値上げしても数量が増えた。一方、安さで選ばれるさつま揚げや惣菜は数量を落とした。筆者は、この二面性が10年の幅を決めると見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い商売だが、儲けの薄い商売」だ。
守りの強さは本物だ。練り物は日常の食品で、全国のスーパーとコンビニに首位の座で並ぶ。冷蔵物流は他社に使われるほど磨かれ、景気の波にも強い。10年後も事業は残る。
だが、株主の取り分になる利益は薄い。売上の3〜4%しか営業利益に残らない。原料が上がるたび、値上げが追いつくかで利益が半分に動く。工場と物流網の更新にも毎年お金が要る。
資本の使い方は堅実だが、攻めてはいない。大型買収はなく、配当性向は2割。ROEが資本コストを下回るなら、利益を溜めるより、借金の返済と株主への還元に回すほうが株主には良い。
安全域は、今の値段で薄い。割り引いた価値は、今の時価総額を2割強下回る。筆者が見たいのは、値上げの浸透と利益率の戻りが数字で確認できるかだ。
何で稼ぐ会社か
収益は3本柱だ。2026年3月期の売上は、国内食品が約780億円、物流などの食品関連が約210億円、海外食品が約115億円。
国内食品は、スリミ(練り製品)、中華惣菜、正月商品、農水産品の商事から成る。スリミは魚のすり身を練って加熱したもので、蒲鉾、竹輪、はんぺん、さつま揚げ、カニカマなどを指す。主力は自社ブランドの「チーちく」「魚河岸あげ」「SURIMI BAR」。工場は恵庭、東京、船橋、横浜、静岡、岡山総社にある。売上は年末年始に偏る。おでんと正月で稼ぐ会社だ。
食品関連は、冷蔵(チルド)物流が中心だ。1972年に日本初の低温物流センターを開き、全国22拠点の網を築いた。外部の荷主は約500社で、売上の約8割が外部向け。同業の練り物メーカーも使う。景気に左右されにくく、本業を支える安定収入になっている。
海外食品は、タイ工場でカニカマや麺状商品を作り、アジア、北米、欧州へ出す。米国子会社はアラスカでスケトウダラのすり身を調達し、日本とアジアの工場へ送る。海外比率は約1割で、会社は中計で13%以上を掲げた。
利益の分布は意外だ。2026年3月期のセグメント利益は、物流が約15億円、国内食品が約12億円、海外が約5億円。売上の7割を占める国内食品は、利益では4割に届かない。
優良さと弱いところ
堀はある。ただし幅は狭い。
最大の強みは、フルラインの商品群と全国の冷蔵物流だ。地方ごとに違う練り物を一通りそろえ、スーパーやコンビニ(販売先の約7割)に売り場の提案ごと納める。この物流網は設備投資が重く、60年の運用の蓄積がある。まねるのは簡単でない。
弱いのは値段を決める力だ。ブランド品のカニカマ、竹輪、はんぺんは、2025年9月に約6割の製品で5〜15%上げても数量が増えた。ところが、さつま揚げや中華惣菜は数量が落ちた。紀文ブランドが効くのは、一部の商品までだ。
原料も他人任せだ。主原料のすり身は国際相場で動く。紀文は2024年にマルハニチロ(現 Umios)と資本業務提携し、すり身の半分以上を同社から買う。調達は安定したが、価格を握れるわけではない。
資本効率は並だ。営業利益率は過去8年で2〜4%台、ROEは15%から4%まで振れた。純有利子負債は自己資本の0.65倍で、営業利益は支払利息の4倍強。筆者は、財務に大きな傷はないが、余裕があるとも言えないと見る。
経営は、2026年6月に営業畑の國松浩氏が社長に就いた。中計の最終年度を新体制で迎える。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のスリミ市場は約3,000億円。生産量はピークの100万トン強から縮み、2010年代以降は40万トン台で下げ止まった(会社の説明)。手軽に取れる良質なたんぱく源として見直され、数量はほぼ横ばいで推移した。
筆者は、今後10年の国内数量を年0.5%ほどの減少とみる。人口減が主因だ。若い層がプロテインバーやカニカマを選ぶ動きは追い風だが、おでんやおせちといった行事の需要は細る。
競合は、上場の一正蒲鉾のほか、スギヨ、鈴廣かまぼこ、ニッスイなどがいる。紀文は全国フルラインで首位だが、地域ごとに強い地場メーカーが多く、価格で攻められやすい。小売のプライベートブランドも脅威だ。
今の最大の課題は原料高だ。日本かまぼこ協会は2025年12月、製造コストの高騰が続くと訴えた。米国産のスケトウダラすり身は、2025年のA期に前期比で10%以上上がり、3期連続の上昇となった。卵、包装資材、物流費も上がる。業界は値上げを重ねるが、節約志向が強く、安い品は数量が落ちた。
海外は、健康志向でスリミが伸びる成長市場だ。ただし、現地のカニカマメーカーとの価格競争が激しい。タイ工場はバーツ高で輸出競争力が落ちた。
物流は別の市場だ。運転手不足を背景に、メーカーは配送を外に出したがる。全国網と冷蔵の運用力を持つ会社には、新規の荷主と料金改定の追い風が続く。
資本政策と M&A
還元は控えめだ。中計の期間は連結配当性向20%を目標とし、2026年3月期の配当は前期と同額。利益が落ちたため性向は約3割に上がった。自社株買いはない。
優待は、9月末の300株以上に商品詰め合わせ、1,000株以上にその倍ほどの詰め合わせを贈る。対象の株主数は開示がなく、費用は年1億円に届かない水準と見る。還元の額に加えても10年の差は1ポイント未満で、payout には足していない。
資金の優先順位は、成長投資と自己資本比率の改善だ。中計は比率30%以上を掲げ、今は32%。借金の圧縮が先で、還元の拡大は後に回る。
M&Aは、大型の買収歴がない。2025年に子会社の北食と紀文西日本を吸収合併し、小売向けの事業を再編した。中計は新規領域でのM&Aの可能性に触れるが、規模は小さいはずだ。
注目はUmios(旧マルハニチロ)との関係だ。2024年3月に資本業務提携を結び、すり身の調達や共同開発商品でつながる。創業者の名を冠した公益財団法人も大株主に名を連ねる。
工場の再編検討が始まっている。統廃合や減損の費用が出れば、純利益を一時的に押し下げる。10年の中立では、純利益が営業利益の約5割になるよう、その分を織り込んだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
最悪期は過ぎつつある。2026年3月期は、すり身、卵、資材が同時に上がる最悪の組み合わせだった。それでも物流は増益で、ブランド品は値上げ後も数量を伸ばした。2025年9月に約6割の製品で価格を上げた効果は、2027年3月期に通年で出る。
営業利益52億円の計画は、無茶ではない。2024年3月期も2025年3月期も、45億円前後を稼いだ。コストが落ち着けば、そこへ戻る。
成長の芽は複数ある。SURIMI BARのように、片手でたんぱく質が取れる商品が若い層をつかみ始めた。長持ちするレトルト商品は、冬への偏りを和らげる。海外は、米国で回復の兆しがあり、中国は地方の卸との直接取引で大幅な増収になった。
物流は静かな成長株だ。運転手不足でメーカーは配送を外に出したがり、大手メーカーの新規物量が入った。外部売上の比率は年々上がり、利益率は7%前後。国内食品の薄さを補い続ける。
Umiosとの提携で、すり身を安定して確保できる。長期目標は2038年度に売上2,500億円、営業利益175億円。遠い目標だが、物流と海外で稼ぎ、利益率を5%台に乗せる道筋は描ける。
慎重な見方
コスト高は一時的ではなく、構造だ。すり身は3期連続で上がった。会社は価格改定で埋めようとするが、さつま揚げや惣菜は数量が落ちた。値上げするほど客が離れ、薄利の事業がさらに薄くなる。
今期もすでにつまずいている。2027年3月期の4〜6月は、営業利益が約0.2億円。前年同期の3.6億円から9割以上減った。会社は通期で52億円を掲げるが、2026年3月期も期初の計画を下方修正した。計画を信じにくい。
需要の土台も細る。練り物はおせちやおでんといった行事に結びつく。国内の人口は年々減り、量はいずれ落ちる。値段が上がれば、安い競合品や小売のプライベートブランドに客が流れる。
海外は主力のカニカマで現地メーカーと価格で戦うことになり、バーツ高で輸出が苦しい。物流は好調だが、運転手の賃金が上がれば利益が削られる。
資本の面も重い。純有利子負債は時価総額の7割近くあり、利息だけで営業利益の4分の1弱が消える。借り換えのたびに金利が上がる世界では、利益の薄い会社ほど苦しい。配当を増やす余裕は小さい。
どちらに重みを置いたか
物流と海外の一部に確かな強みがあるのは、強気の言うとおりだ。だが、営業利益率が4%を超えたのは直近8年で2期だけで、原料高を価格に写し切れない年が繰り返される。慎重な見方の指摘が重い。中立の利益率は過去の最高に近い4%に置いたが、それでも10年後のROEは資本コストに届かない。確率は、回復の中立を最大にしつつ、やや悲観と悲観に合わせて36%を置き、悲観側に寄せた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,443 円329 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 237 円54 億円)。 今の値に割り戻すと 796 円182 億円、今との差 −26.2%、 期待の年率 +4.5%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,911 円665 億円 | 350 円80 億円 | +202.3% | +11.7% | 261 円60 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,062 円471 億円 | 285 円65 億円 | +117.5% | +8.1% | 469 円107 億円 |
| 中立 | 36% | 1,602 円366 億円 | 241 円55 億円 | +70.8% | +5.5% | 663 円151 億円 |
| やや悲観 | 26% | 746 円170 億円 | 201 円46 億円 | −12.2% | −1.3% | 246 円56 億円 |
| 悲観 | 10% | 272 円62 億円 | 131 円30 億円 | −62.6% | −9.4% | 40 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,443 円329 億円 | 237 円54 億円 | +55.7% | +4.5% | 1,680 円384 億円 |
今の株価時価総額 1,079 円246 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 値上げが定着し、物流と海外が利益を厚くする 利益 52 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 2,911 円665 億円
2025年に打った価格改定が定着し、すり身の高騰も落ち着く。国内食品は、SURIMI BARのような手軽に食べられる商品とロングライフ商品が育ち、冬への偏りが和らぐ。数量は横ばいを保ち、価格は物価を少し上回る。国内の営業利益率は4.6%まで戻る。
物流は、外部の荷主が650社へ増え、利益率は8.5%に届く。メーカーが配送を外に出す流れが続く。海外は、米国と中国の販路が広がり、タイ工場の自動化も効く。海外の売上は230億円規模になる。
Umiosとの共同開発が軌道に乗り、すり身の安定確保が利益を支える。全体の営業利益は約97億円、利益率は5.7%で、中計の5%台に届く。純利益は約52億円、ROEは約10%。長期目標の2038年度(営業利益175億円)には届かないが、道筋は見える。
- 国内食品事業:数量 97.7(販売量(千トン換算・推定))× 価格 11(1 千トンあたり売上(億円・名目)=平均売価 1kg あたり 0.8 千円相当)→ 売上 1,094 億円・営業利益 50 億円。数量 1.00 倍・価格 1.40 倍・営業利益率 4.6%
- 食品関連事業(チルド物流ほか):数量 650(外部の荷主企業数(社・約 500 社が開示))× 価格 0.60(1 社あたり売上(億円・名目、グループ内向けと他の事業を含む))→ 売上 389 億円・営業利益 33 億円。数量 1.30 倍・価格 1.40 倍・営業利益率 8.5%
- 海外食品事業:数量 23.8(出荷量(千トン換算・推定))× 価格 9.52(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.7 千円相当))→ 売上 227 億円・営業利益 16 億円。数量 1.45 倍・価格 1.36 倍・営業利益率 7.0%
倍率:事業の純利益 52 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.88 倍、時価総額 665 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げの定着、すり身の落ち着き、物流と海外の拡大が同時にそろう必要がある。直近3年は一度も計画に届いていないので、8%にとどめた。
やや楽観 20% 利益率はゆっくり戻り、中計は数年遅れで達成 利益 39 億円 · PER 12.0 倍 · 株価時価総額 2,062 円471 億円
値上げは定着するが、すり身の高止まりで利益率の戻りは緩やかだ。国内食品は3.6%まで、物流は7.8%に上がる。ブランド品の数量が伸び、安さ勝負のさつま揚げや惣菜は、品目の整理で採算を戻す。海外は、アジアと中国が伸び、米国は品質で回復する。
工場の再編が効き、生産の無駄が減る。全体の営業利益は約76億円、利益率は4.7%。中計の60億円は数年遅れで達成され、その先も伸びる。
純利益は約39億円、ROEは約9%で、資本コストをわずかに上回る。ただ堀が強くなったわけではなく、原料が上がれば利益がまた崩れる構造は残る。
- 国内食品事業:数量 95.7(販売量(千トン換算・推定))× 価格 11(1 千トンあたり売上(億円・名目)=平均売価 1kg あたり 0.8 千円相当)→ 売上 1,049 億円・営業利益 38 億円。数量 0.98 倍・価格 1.37 倍・営業利益率 3.6%
- 食品関連事業(チルド物流ほか):数量 600(外部の荷主企業数(社・約 500 社が開示))× 価格 0.58(1 社あたり売上(億円・名目、グループ内向けと他の事業を含む))→ 売上 349 億円・営業利益 27 億円。数量 1.20 倍・価格 1.36 倍・営業利益率 7.8%
- 海外食品事業:数量 21.3(出荷量(千トン換算・推定))× 価格 9.45(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.7 千円相当))→ 売上 201 億円・営業利益 12 億円。数量 1.30 倍・価格 1.35 倍・営業利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 39 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 11.98 倍、時価総額 471 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:物流の成長とブランド品の値上げ定着は実績がある。ただ利益率が4%台後半まで戻るには、原料高の収束が要る。20%を置いた。
中立 36% 数量は微減、価格は物価並み。薄利のまま続く 利益 31 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,602 円366 億円
原料高は続くが、値上げで追いつく。数量は人口減で10年に5%ほど減り、価格は物価並みに上がる。国内食品の営業利益率は3.0%で、原料高が来る前の水準に戻る程度だ。物流は荷主が560社へ増え、利益率は7%。海外は数量が1.15倍に増え、利益率は5.5%。バーツ高は落ち着く。
Umiosとの提携で調達は安定するが、価格を決める力までは得られない。工場の再編費用が出て、純利益は営業利益の約5割にとどまる。
営業利益は約61億円、純利益は約31億円、売上は1,500億円弱。中計の売上目標(1,203億円)は超えるが、長期目標の2,500億円には遠い。ROEは7%台と資本コストに届かず、「普通の食品会社」に収まる10年になる。
- 国内食品事業:数量 92.8(販売量(千トン換算・推定))× 価格 11(1 千トンあたり売上(億円・名目)=平均売価 1kg あたり 0.8 千円相当)→ 売上 995 億円・営業利益 30 億円。数量 0.95 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 3.0%
- 食品関連事業(チルド物流ほか):数量 560(外部の荷主企業数(社・約 500 社が開示))× 価格 0.57(1 社あたり売上(億円・名目、グループ内向けと他の事業を含む))→ 売上 321 億円・営業利益 23 億円。数量 1.12 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 7.0%
- 海外食品事業:数量 18.9(出荷量(千トン換算・推定))× 価格 9.38(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.7 千円相当))→ 売上 177 億円・営業利益 10 億円。数量 1.15 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 5.5%
倍率:事業の純利益 31 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 366 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率が過去の高い年に近い4%で続く筋書き。過去の実績の範囲に収まるので最大の36%を置いたが、足元の弱さを考え、中心を高くしすぎなかった。
やや悲観 26% すり身高が居座り、利益率は今の水準に張り付く 利益 19 億円 · PER 9.2 倍 · 株価時価総額 746 円170 億円
すり身高が居座り、値上げのたびに数量を落とす。さつま揚げや惣菜は、小売のプライベートブランドに押され、国内食品の利益率は2026年3月期並みの1.7%に張り付く。ブランド品にも対抗商品が増え、数量が1割減る。
物流は堅調だが、運転手の賃金上昇で利益率は6%台に下がる。海外は、バーツ高とカニカマの価格競争で足踏みし、利益率は4%。
営業利益は約39億円、利益率は2.8%。純利益は約19億円、ROEは5%台。配当は今の水準を守るのが精いっぱいで、借金の返済ペースも遅い。工場の再編費用を出しても、効果は小さい。
中計の最終年度の目標は、次の中計でも先送りが続く。経営は借金の圧縮を優先し、成長投資を絞らざるを得ない。ただし事業の土台は崩れず、物流と主力ブランドが下支えする。
- 国内食品事業:数量 87.9(販売量(千トン換算・推定))× 価格 10(1 千トンあたり売上(億円・名目)=平均売価 1kg あたり 0.8 千円相当)→ 売上 914 億円・営業利益 16 億円。数量 0.90 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 1.7%
- 食品関連事業(チルド物流ほか):数量 525(外部の荷主企業数(社・約 500 社が開示))× 価格 0.56(1 社あたり売上(億円・名目、グループ内向けと他の事業を含む))→ 売上 292 億円・営業利益 18 億円。数量 1.05 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 6.2%
- 海外食品事業:数量 16.4(出荷量(千トン換算・推定))× 価格 8.96(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.7 千円相当))→ 売上 147 億円・営業利益 6 億円。数量 1.00 倍・価格 1.28 倍・営業利益率 4.0%
倍率:ROE 5.2%(事業の純利益÷自己資本)が k 8.5% 以下なので、伸びても価値は増えず(ためた利益は額面未満)、正当化 PER の上限は 1÷k=12.1 倍。伸びと堀の持ちを低く見て、上限の 7.6 割の 9.2 倍に置いた。
確率:すり身高の3期連続上昇と、安い品の数量減が示す通り、値上げが原価に追いつかない年が続く確率は高い。26%を置いた。
悲観 10% コスト高と数量減が重なり、利益が細る 利益 7 億円 · PER 8.4 倍 · 株価時価総額 272 円62 億円
コスト高と数量減が同時に続く。国内の練り物は10年で数量が2割減り、価格の転嫁も1.24倍にとどまる。さつま揚げと惣菜は赤字になり、工場の閉鎖と減損が出る。国内食品の利益率は0.4%まで落ちる。
物流は、大手荷主の内製化と賃金上昇で利益率が5%に縮む。海外は、カニカマの競争で数量が2割減り、タイ工場の稼働率が下がる。
営業利益は約17億円、純利益は約8億円で、ROEは2%台。利息の負担が重く、配当は半分に減り、優待も縮小か廃止になる。それでも物流網と紀文ブランドは残るため、事業の価値がゼロにはならない。資本提携先や他の食品会社が出資を強める余地も出てくる。
- 国内食品事業:数量 78.2(販売量(千トン換算・推定))× 価格 9.92(1 千トンあたり売上(億円・名目)=平均売価 1kg あたり 0.8 千円相当)→ 売上 776 億円・営業利益 3 億円。数量 0.80 倍・価格 1.24 倍・営業利益率 0.4%
- 食品関連事業(チルド物流ほか):数量 475(外部の荷主企業数(社・約 500 社が開示))× 価格 0.54(1 社あたり売上(億円・名目、グループ内向けと他の事業を含む))→ 売上 256 億円・営業利益 13 億円。数量 0.95 倍・価格 1.26 倍・営業利益率 5.0%
- 海外食品事業:数量 13.1(出荷量(千トン換算・推定))× 価格 8.40(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.7 千円相当))→ 売上 110 億円・営業利益 2 億円。数量 0.80 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 1.5%
倍率:ROE 2.3%(事業の純利益÷自己資本)が k 8.5% 以下なので、伸びても価値は増えず(ためた利益は額面未満)、正当化 PER の上限は 1÷k=12.1 倍。稼ぐ力が細り、優位が崩れた筋書きで、自己資本の0.2倍と低いが、約150億円の純有利子負債を足した企業価値は営業利益の約13倍で極端には安くないので、上限の 6.9 割の 8.4 倍に置いた。
確率:数量の構造的な減少、物流の賃金上昇、借り換えの利払い増が重なる筋書き。当期の4〜6月の弱さもあり、10%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内食品事業
練り製品(蒲鉾・竹輪・はんぺん・カニカマ)、中華惣菜、正月商品、農水産品の商事。
| 数量販売量(千トン換算・推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円・名目)=平均売価 1kg あたり 0.8 千円相当 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 97.7 | 8.00 | 782 | 12 |
| 10 年後 中立 | 92.8 | 11 | 995 | 30 |
取り方:2026年3月期の国内食品の売上782億円を、平均売価を 1kg あたり約 0.8 千円として約9.8万トン(97.7 千トン)と推定した。国内のスリミ市場は約3,000億円・40万トン台で、その約2割強に商事の取扱いを足した規模にあたる。数量は実質(物の量)、物価3%と値上げは価格の側に入れた。セグメント利益は12億円。
食品関連事業(チルド物流ほか)
全国 22 拠点のチルド物流、情報システムの外販、リース・保険代理・品質検査など。
| 数量外部の荷主企業数(社・約 500 社が開示) | 価格1 社あたり売上(億円・名目、グループ内向けと他の事業を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 500 | 0.43 | 214 | 15 |
| 10 年後 中立 | 560 | 0.57 | 321 | 23 |
取り方:外部の荷主約500社(会社の開示)を数量とし、食品関連の売上214億円を1社あたり約0.43億円とした(グループ内向け・リース・保険など他の事業を含む)。数量は荷主の数、料金改定や賃金の上昇は価格に入れた。セグメント利益は15億円。
海外食品事業
タイ工場で作るカニカマ・麺状商品の販売と、すり身・農産物の輸出入。
| 数量出荷量(千トン換算・推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.7 千円相当) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 16.4 | 7.00 | 115 | 5 |
| 10 年後 中立 | 18.9 | 9.38 | 177 | 10 |
取り方:海外食品の売上115億円を、平均売価を 1kg あたり約 0.7 千円として約1.6万トン(16.4 千トン)と推定した。売上にはすり身・農産物の輸出入の取引が含まれるため、製品の出荷量は推定である。数量は実質、物価と値上げは価格に入れた。セグメント利益は5億円。
リスクと懸念
原料高が値上げを上回る
冷凍すり身は3期連続で上がり、卵や包装資材も高い。値上げは数量減を伴い、安い品ほど客が離れる。薄利の事業では、数%の原価の動きが利益の半分を消す。2026年3月期の営業利益が約3割減ったのがその例だ。
国内の数量が人口とともに縮む
練り物は行事(おでん、おせち)と結びつく食品だ。人口減と食生活の変化で、数量は年0.5%ほど減るとみる。ブランド品とプロテイン系の新商品で相殺できるかが分かれ目になる。
季節性が強い
利益の多くは冬に集中する。おでんの需要が気温に左右され、正月の商戦で外すと一年の利益が決まってしまう。2027年3月期の4〜6月はほぼゼロの利益で、通期の52億円は後半に懸かる。
海外の価格競争とバーツ高
海外食品の主力はタイ工場のカニカマだ。バーツ高で輸出競争力が落ち、現地メーカーとの価格競争も激しい。2026年3月期は、海外食品のセグメント利益が前期から半分近く落ちた。
借金と金利の上昇
純有利子負債は時価総額の約7割、営業利益は支払利息の4倍強。借り換えのたびに金利が上がる世界では、薄利の会社ほど利益が削られる。配当と自己資本比率の改善が競合する。
工場再編と人件費
工場の再編検討が始まり、統廃合や減損の費用が出る可能性がある。物流の運転手と製造の人件費も上がる。値上げで吸収できなければ、利益率は戻らない。
今後の分かれ目
- 2027年3月期の通期で営業利益が52億円に届き、冬の商戦でも数量が伸びたら
- やや楽観以上の確率を上げてよい。値上げが定着した証拠になる。
- 冷凍すり身の価格がさらに上がり、次の値上げでも数量が戻らなかったら
- やや悲観の確率を上げる。ブランド品でも値上げが通らなくなった合図になる。
- 物流事業の外部荷主が増え、利益率が8%を超えて定着したら
- 物流の価値を見直す余地が出る。国内食品の薄さを補う力が強まる。
- タイ工場の自動化とバーツ安で海外の利益率が回復したら
- 海外の成長ペースを上方修正する。逆なら、海外の撤退や縮小も視野に入る。
- Umiosが出資を積み増す、または提携を深める発表があったら
- 調達の安定と事業再編の可能性が高まり、筋書きの幅が変わる。支配権が動くなら別の評価が必要になる。
- 冬の気温が高く、おでんの需要が落ちたら
- 通期の利益が計画を下回る。単年の変動か、構造的な需要減かを見分ける。
見ておくもの
- 四半期ごとの国内食品のセグメント利益率と数量(ブランド品と、さつま揚げ・惣菜の差)
- 米国産スケトウダラすり身の価格改定(A期・B期)と、会社の価格改定の発表
- 物流事業の外部売上比率とセグメント利益率
- 海外食品の売上と、タイ工場の稼働率・バーツの水準
- 中計(2026)の最終年度の実績と、次の中計(第2次)の目標値
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。資本コストは基本7.5%に品質の合計+0.75%を足した8.25%で、PERは中立でROE約7%がkを下回るため上限1÷k(12.1倍)の約9割弱に置いた。今のPER(直近の利益が落ちているため見かけは高い)や過去の倍率には寄せていない。今の時価総額が倍でも半分でも、10年の数字は動かない作りにした。営業利益率は過去8年の最高(約4.3%)を超えない範囲に置いた。純利益÷営業利益は過去5期の中央値に近い0.5前後で、工場再編の費用を含めた。新リース会計基準(2028年3月期から)で営業利益と純有利子負債の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置いた。物流の拠点や工場の賃借の約束は、悲観で固定費として残る前提にした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.8→12.88 倍・やや楽観 PER 12.2→11.98 倍・中立 PER 10.5→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。