結論
エバラ食品工業は、焼肉のたれ「黄金の味」と鍋つゆ「プチッと鍋」を持つ国内の調味料メーカーだ。筆者の結論は、堅実な会社だが今の値段はやや高い、である。
理由は、稼ぐ力の弱さにある。売上500億円に対し営業利益は24億円で、利益率は5%に届かない。過去12年の山でも7.7%だ。広告費が売上の約8%を占め、利益の多くが宣伝で消える。
財務は強い。自己資本比率は7割、純現金は157億円で時価総額の6割を超える。しかし創業家系の資産管理会社が3分の1超を持ち、配当性向は26%にとどまる。ため込んだ現金が株主に戻る道筋は細い。筆者はこの現金を半分の値打ちで数えた。
今後の鍵は工場再編だ。群馬工場を2027年3月に止め、茨城に新工場を建てる計画だが、資材高で着工は延期された。会社予想も2027年3月期は大幅な減益を示す。
10年後の中立は、売上が物価なみに伸びて約660億円、営業利益率は5%台に落ち着く。国内の人口減を鍋物と海外が相殺する形だ。確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額を約2割下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点でいちばん引っかかるのは、現金の持ち主が誰かだ。純現金157億円は時価総額の6割を超える。事業の実力が高ければ、現金は成長への余力になる。しかしこの会社は利益率が低く、現金をうまく使う実績がない。
オーナー利益はどうか。売上の約8%を広告に、設備に年30億円ほどを投じている。減価償却の17億円を超える投資が続くため、利益のうち株主が自由にできる分は、見かけの純利益より少ない。
堀は焼肉のたれで確かだが、堀の外側が薄い。鍋物と業務用、物流はいずれも大手に劣る。10年先も続くと確信できるのは焼肉のたれの首位までで、確信度は高くない。
安全域は、事業の価値よりも現金の戻り方で決まる。創業家系が3分の1超を握り、配当性向は2割台。この条件では、現金の半分しか株主の価値にならないと見るのが妥当だ。
結論として、会社自体は堅く、潰れる心配はない。ただ、払う値段に対する安全域はない。割安に見えるのは現金と利益の弱さが同居するためで、本当の割安ではない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、スーパーで売る家庭用調味料だ。売上の約6割を占め、焼肉のたれ、すき焼きのたれ、キムチ鍋の素、浅漬けの素、ドレッシングを並べる。焼肉のたれは国内の市場シェア44.5%で首位だ(統合報告書の記載)。
家庭用の中身は、肉まわり調味料(焼肉のたれなど)が121億円、鍋物調味料が117億円、野菜まわりが26億円。鍋物は冬に強く、直近の期は前年比で8%伸びた。肉まわりは1.5%減った。看板が鍋物に少しずつ移っている。
業務用は売上の約23%で、ラーメンスープ、ガラスープ、冷凍のコロッケやグラタンが主力だ。外食店や食品メーカーに納める。利益率は家庭用より低く、群馬工場はこの業務用の製造が中心だった。
このほか子会社のエバラ物流が倉庫と運送を営み、売上は68億円。既存顧客の取引量が減って減収だが、利益はわずかに黒字だ。海外売上比率は5.1%で、2024年にタイに新工場ができた。
工場は栃木、群馬、津山の3か所。広告宣伝費は売上の約8%と重く、本社費と合わせた固定費の重さが利益率を抑えている。
優良さと弱いところ
堀は、焼肉のたれという一つのカテゴリーでの強さだ。首位のシェアと「黄金の味」の知名度は、棚を確保する力になる。ただし、その強さが利益率に表れていない。営業利益率は過去12年で3%から7.7%の間にとどまる。
理由は二つ見える。一つは広告費の重さで、売上の約8%を宣伝に使わないとシェアを守れない。もう一つは競争が緩くない点だ。キッコーマンの「わが家は焼肉屋さん」、モランボンの「ジャン」、日本食研の商品が同じ棚で争う。値上げが通る力は大手ほど強くない。
資本効率は低い。ROEの過去10年の中央値は5.7%で、資本コストの7.5%に届かない。自己資本の厚さのうち、現金の山が利益を生んでいないからだ。ここが筆者のいちばんの不満である。
経営は創業家系が握る。KMSTホールディングス(森村剛士氏が代表)が3分の1超を持ち、従業員持株会、横浜銀行、東洋製罐が続く。安定株主が厚いのは買収から守られる一方、少数株主には現金を戻す圧力が働きにくい。
再編は動き始めた。2027年3月に群馬工場を止め、業務用の採算を直す。計画どおり進めば利益率は上がるが、新工場の着工延期は黄信号だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
調味料市場は、人口が減る国内でほぼ横ばいを保つ。数量は年0〜1%の減少、売値は原材料と物流費の転嫁で上がる。2026年は加工食品の値上げが相次ぎ、店頭価格は前年比で4〜5%高い。
焼肉のたれは、成熟した市場だ。コロナ期の内食需要が剥がれ、2021年度以降は前年割れの年があった(日本食研の特集)。エバラは商品の入れ替えとコラボで支えてきた。競合はキッコーマン、モランボン、日本食研で、新商品で棚を取り合う。
鍋つゆは成長の余地が大きい。ミツカン、味の素、ヤマキなど大手が争う市場で、エバラは「プチッと鍋」を持つ。冬の鍋が日常食になり、季節商品から通年商品へ広がりつつある。
業務用は、外食の人手不足で調理済みの素材やスープに需要がある。一方で価格転嫁の交渉は厳しく、採算は安定しない。
海外は小さい。売上の5%で、タイ工場からASEANの需要を取りにいく。大手の味の素やキッコーマンのような海外網はなく、伸びても10年で売上の1割に届くかどうかだ。
業界全体で原料高と人件費が利益を削る。値上げに負けず利益率を保てるのは、ブランドを持つ大手に限られる。
資本政策と M&A
還元は控えめだ。2026年3月期の配当性向は26%で、自己株式の取得はない。2027年3月期は利益が落ちるのに増配を予定しており、配当性向は5割に近づく。ただ、株主への現金の戻しは構造的に細い。
M&Aは、確認できた範囲で大きなものはない。創業家系が3分の1超を持つため、第三者による買収は成立しにくい。
資金の使い道は工場だ。群馬工場の停止と茨城の新工場は、規模が開示されていない。着工延期で、手元の現金157億円の用途は宙に浮いた。筆者は余った現金を約70億円と見て、半分の値打ちで数えた。
政策保有株は29銘柄で13億円と小さく、価値への影響は軽い。
株主優待は、100株で千円相当の自社製品、300株で二千円相当、1,000株で五千円相当(年1回)。2025年3月の権利分から300株の区分を三千円相当から二千円相当に下げ、QUOカードをやめた。費用の開示が見つからず、年0.6億円と推定した(株主数を仮定した推定で、2倍程度のずれはありうる)。優待は株主が受け取る現物の還元なので、10年の還元に足した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
鍋つゆは勝ち筋だ。「プチッと鍋」は個別包装という独自の形で、冬の食卓に定着した。直近の期に8%伸びており、通年で食べる習慣が広がれば数量が増える。焼肉のたれが成熟しても、鍋物が次の柱になる。
海外はこれから動く。タイ工場が2024年に完成し、海外売上比率は5.1%から6%超へ向かう。小さい分母なので、伸びが全社の数字に効きやすい。
最大の材料は工場再編だ。群馬工場を止め、利益の薄い業務用を整理する。製造拠点の集約でコストが下がれば、利益率は過去の山に戻る。2022年3月期は7.7%を出しており、その水準は現実的だ。
そして157億円の現金がある。時価総額の6割を超える現金は、株主還元を増やす原資になる。PBR1倍割れへの圧力が強まれば、創業家も配当や自社株買いに動く。
業務用の整理も効く。採算の悪い商品を切り、人手不足で調理済みの素材を求める外食向けに絞れば、利益率は家庭用に近づく。物価が毎年上がる世界では、値上げを受け入れる消費者が増え、ブランドを持つ首位の会社に有利に働く。
慎重な見方
利益率の低さが、この会社の宿命だ。広告費に売上の8%を使いながら、営業利益は5%に届かない。広告をやめればシェアを失い、続ければ利益が出ない。この板挟みが10年続く。
2027年3月期の会社予想は、営業利益が37%減る。原材料高と物流費、そして再編の費用が重なる。新工場の着工延期は、計画の前提が崩れたことを意味する。資材高が続けば、工場再編の効果は薄い。
焼肉のたれは成熟市場だ。キッコーマンとモランボンが同じ棚で競い、PBが価格で圧迫する。肉の食べ方や外食のスタイルが変われば、肉まわり調味料全体が縮む。
現金は戻らない。創業家系の資産管理会社が3分の1超を持ち、安定株主が厚い。外部からの圧力が効きにくく、現金は使われないまま積み上がる。ROEが資本コストを下回り続ける会社に、高い倍率はつかない。
海外も期待ほど伸びない。ASEANには味の素やキッコーマンが先に根を張り、エバラは売上の5%の小さな足場しかない。物流事業は既存顧客の取引量が細り、賃借料の固定費だけが残る。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。利益率が過去12年の山を超える根拠は再編の実行だけで、その実行がすでに遅れ始めている。鍋物と海外は材料だが、全社の利益を変えるには小さい。強気の見方の最も強い点は現金だが、戻り方の条件がそろわない限り、価値は半分にしか数えられない。確率は中立を中心に、やや悲観を厚くし、悲観は1割にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,626 円354 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 780 円76 億円)。 今の値に割り戻すと 2,256 円220 億円、今との差 −13.1%、 期待の年率 +5.4%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 6,676 円651 億円 | 1,140 円111 億円 | +200.9% | +11.6% | 547 円53 億円 |
| やや楽観 | 20% | 5,202 円507 億円 | 979 円95 億円 | +138.0% | +9.1% | 1,236 円120 億円 |
| 中立 | 38% | 4,186 円408 億円 | 835 円81 億円 | +93.3% | +6.8% | 1,908 円186 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,751 円171 億円 | 602 円59 億円 | −9.4% | −1.0% | 588 円57 億円 |
| 悲観 | 10% | 904 円88 億円 | 368 円36 億円 | −51.0% | −6.9% | 127 円12 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,626 円354 億円 | 780 円76 億円 | +69.7% | +5.4% | 4,406 円430 億円 |
今の株価時価総額 2,597 円253 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 楽観:タイと鍋つゆが育ち、工場再編が利益に出る 利益 43 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 6,676 円651 億円
タイ工場が軌道に乗り、海外の売上が家庭用の1割を超える。国内でも鍋つゆが冬の定番としてさらに広がり、数量は10年で15%増える。値上げが通りやすい局面が続き、単価は物価を少し上回る。群馬工場の停止と新工場への集約で製造費が下がり、家庭用の営業利益率は10%に乗る。全体の利益率は7%台で、過去の山(2022年3月期の7.7%)に近づく。ただし売上の大半は国内のままで、人口減は消えない。この筋書きでも成長を牽引するのは、数量よりも利益率の改善だ。余った現金は工場投資に使われず、還元も増えない。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年0.6億円×10年×1.0=6.0億円。推定)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 家庭用調味料(焼肉のたれ・鍋つゆ・ドレッシングなど):数量 5.5(販売数量(万トン、推定))× 価格 897(1kg あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 490 億円・営業利益 49 億円。営業利益率10.0%
- 業務用(ラーメンスープ・冷凍コロッケなど):数量 2.6(販売数量(万トン、推定))× 価格 603(1kg あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 155 億円・営業利益 9 億円。営業利益率6.0%
- 物流・その他(エバラ物流・広告・人材):数量 11.9(取扱貨物量(万トン、推定))× 価格 94(1kg あたり平均料金(円、推定。名目))→ 売上 112 億円・営業利益 3 億円。営業利益率3.0%
倍率:事業の純利益 42 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.4% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)52 億円。全体の PER 14.25 倍、時価総額 646 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:工場再編、タイ、鍋物がそろって利益率が山に戻る。実現には再編の遅れを取り戻す必要があり、確率は低め。
やや楽観 20% やや楽観:鍋物が柱になり、利益率が過去の山に近づく 利益 35 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 5,202 円507 億円
鍋物調味料が焼肉のたれに並ぶ柱になり、家庭用の数量は10年で7%増える。海外はタイを足場にじわじわ伸びる。単価は物価をやや上回り、家庭用の営業利益率は9%まで戻る。業務用は群馬工場の停止で採算の悪い商品を整理し、利益率が5%に上がる。物流は既存顧客の取引量が持ち直す。全体の営業利益率は6%台。実績に裏づけのある範囲(再編の実行と鍋物の好調)で、過去の山を超えない。配当は利益に応じて増えるが、創業家が経営を握る構造は変わらず、現金の戻りは限られる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年0.6億円×10年×1.0=6.0億円。推定)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 家庭用調味料(焼肉のたれ・鍋つゆ・ドレッシングなど):数量 5.1(販売数量(万トン、推定))× 価格 884(1kg あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 449 億円・営業利益 40 億円。営業利益率9.0%
- 業務用(ラーメンスープ・冷凍コロッケなど):数量 2.5(販売数量(万トン、推定))× 価格 603(1kg あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 152 億円・営業利益 8 億円。営業利益率5.0%
- 物流・その他(エバラ物流・広告・人材):数量 11.4(取扱貨物量(万トン、推定))× 価格 94(1kg あたり平均料金(円、推定。名目))→ 売上 107 億円・営業利益 3 億円。営業利益率2.5%
倍率:事業の純利益 34 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)52 億円。全体の PER 13.25 倍、時価総額 499 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:鍋物の成長と再編の効果が、実績の範囲で出る筋書き。直近の増収増益の流れを延ばした形。
中立 38% 中立:売上は物価なみ、利益率は5%台でならされる 利益 28 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 4,186 円408 億円
売上は物価なみに伸び、10年で約660億円になる。家庭用の数量は国内の減少を鍋物と海外の伸びが相殺して横ばい。業務用は群馬工場停止後の整理で数量が5%減る。本社費と広告費も物価で増えるため、削減の実績がある範囲を除くと利益率は大きく上がらない。再編のコスト削減が出て、営業利益率は5%台に落ち着く(過去12年の平均4.6%と山7.7%の間)。営業利益は34億円、純利益は28億円で、金利の上昇が現金の利息を押し上げる。還元は配当性向4割を目安にする。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年0.6億円×10年×1.0=6.0億円。推定)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 家庭用調味料(焼肉のたれ・鍋つゆ・ドレッシングなど):数量 4.7(販売数量(万トン、推定))× 価格 871(1kg あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 414 億円・営業利益 33 億円。営業利益率8.0%
- 業務用(ラーメンスープ・冷凍コロッケなど):数量 2.4(販売数量(万トン、推定))× 価格 603(1kg あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 147 億円・営業利益 6 億円。営業利益率4.0%
- 物流・その他(エバラ物流・広告・人材):数量 10.8(取扱貨物量(万トン、推定))× 価格 94(1kg あたり平均料金(円、推定。名目))→ 売上 102 億円・営業利益 2 億円。営業利益率2.0%
倍率:事業の純利益 27 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)52 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 397 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界の数量と価格の見通し(国内ほぼ横ばい、物価並みの値上げ)に沿う中心。
やや悲観 25% やや悲観:値上げ疲れとPBの攻勢で量が細る 利益 17 億円 · PER 7.3 倍 · 株価時価総額 1,751 円171 億円
値上げを重ねた反動で、スーパーの棚はPB(流通の自社ブランド)と安い調味料に取られる。家庭用の数量は10年で8%減り、単価も物価に届かない。業務用は外食の人手不足と価格転嫁の難しさで数量が1割減る。工場再編の効果は出るが、本社費・広告費・物流費の増加で打ち消され、営業利益率は3%台。茨城の新工場は着工できず、古い設備の維持費がかさむ。純利益は17億円で、余った現金の一部が設備更新と減損に消える。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年0.6億円×10年×0.75=4.5億円。推定)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 家庭用調味料(焼肉のたれ・鍋つゆ・ドレッシングなど):数量 4.4(販売数量(万トン、推定))× 価格 845(1kg あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 369 億円・営業利益 22 億円。営業利益率6.0%
- 業務用(ラーメンスープ・冷凍コロッケなど):数量 2.3(販売数量(万トン、推定))× 価格 585(1kg あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 135 億円・営業利益 3 億円。営業利益率2.0%
- 物流・その他(エバラ物流・広告・人材):数量 10.3(取扱貨物量(万トン、推定))× 価格 91(1kg あたり平均料金(円、推定。名目))→ 売上 94 億円・営業利益 1 億円。営業利益率1.0%
倍率:ROE4.2%がk7.75%を下回り、新しく投じるお金の稼ぎ(RONIC5.9%)が資本コストに届かない。式の9.0倍の8割(7.3倍)。構造的に利益率が落ちた姿で、伸びても価値が増えない。
確率:原材料高と価格競争で値上げ疲れが出る。会社予想が2027年3月期に大幅減益を示し、再編が遅れているため厚めに置く。
悲観 10% 悲観:肉まわりの需要が縮み、再編の投資が空振りになる 利益 5 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 904 円88 億円
焼肉のたれが属する肉まわり調味料の需要が構造的に縮む。若い世代の肉の外食離れ、他社の簡便な調味料、輸入調味料の台頭が重なり、家庭用の数量は2割減る。値上げは通らず、単価は物価の3分の2しか上がらない。業務用は群馬工場停止の穴を埋められず赤字になる。再編の投資は回収できず、茨城工場も白紙になる。営業利益は3億円前後まで落ち、配当は減る。それでも純現金は残るが、戻り方は限られ、筆頭株主の意向で使い道が決まる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年0.6億円×10年×0.5=3.0億円。推定)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 家庭用調味料(焼肉のたれ・鍋つゆ・ドレッシングなど):数量 3.8(販売数量(万トン、推定))× 価格 780(1kg あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 296 億円・営業利益 10 億円。営業利益率3.5%
- 業務用(ラーメンスープ・冷凍コロッケなど):数量 1.9(販売数量(万トン、推定))× 価格 518(1kg あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 100 億円・営業利益 −1 億円。営業利益率-1.0%
- 物流・その他(エバラ物流・広告・人材):数量 8.7(取扱貨物量(万トン、推定))× 価格 81(1kg あたり平均料金(円、推定。名目))→ 売上 70 億円・営業利益 0 億円。営業利益率0.5%
倍率:赤字に近く稼ぐ力は測れない(純利益5億円が稼ぐ力の約60億円)。床は純現金と売れる資産の税後で測り、今の自己資本361億円に対するPBR0.244倍(時価総額88億円)に置いた。
確率:肉まわりの構造的な縮小と再編の失敗が重なる複合の筋書き。現金が残る分、悲観の下限は浅いが、10%は無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
家庭用調味料(焼肉のたれ・鍋つゆ・ドレッシングなど)
スーパーで売る焼肉のたれ「黄金の味」、鍋つゆ「プチッと鍋」、浅漬けの素など。食品事業の約73%。
| 数量販売数量(万トン、推定) | 価格1kg あたり平均単価(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.7 | 650 | 309 | 24 |
| 10 年後 中立 | 4.7 | 871 | 414 | 33 |
取り方:家庭用の売上308.7億円を、1kgあたり平均六百五十円前後の品が年4.7万トン売れていると置いて分けた(推定。焼肉のたれは1kgで七百五十円前後、鍋つゆは五百円前後)。数量は国内が人口減で年0.7%減、鍋物と海外の伸びで相殺し、中立は10年で横ばい。価格は物価並み(10年1.34倍)。市場の大きさ:焼肉のたれのシェアは44.5%(統合報告書)、市場規模は検索で取れず推定。競合はキッコーマン「わが家は焼肉屋さん」、モランボン「ジャン」、日本食研。鍋つゆはミツカン・味の素・ヤマキと争う。営業利益は食品事業の27.7億円を、業務用の利益率が低いとみて家庭用24.1億円・業務用3.6億円に分けた(推定)。
業務用(ラーメンスープ・冷凍コロッケなど)
外食・食品メーカー向けのラーメンスープ、ガラスープ、冷凍のコロッケ・グラタン。食品事業の約27%。
| 数量販売数量(万トン、推定) | 価格1kg あたり平均単価(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.6 | 450 | 115 | 4 |
| 10 年後 中立 | 2.4 | 603 | 147 | 6 |
取り方:業務用の売上115.5億円を、1kgあたり四百五十円前後の品が年2.6万トン売れていると置いて分けた(推定。ラーメンスープは安く、冷凍のコロッケ・グラタンは高い)。数量は群馬工場の停止で採算の悪い品を整理し、中立は10年で0.95倍。価格は物価並み。外食の人手不足は追い風だが、値上げ交渉は厳しい。競合は日本食研、味の素冷凍食品、各地の中小メーカー。
物流・その他(エバラ物流・広告・人材)
子会社エバラ物流の倉庫と貨物運送、その他の広告・人材。
| 数量取扱貨物量(万トン、推定) | 価格1kg あたり平均料金(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.8 | 70 | 76 | 2 |
| 10 年後 中立 | 10.8 | 94 | 102 | 2 |
取り方:物流・その他の売上75.9億円を、1kgあたり平均七十円前後の荷が年10.8万トン動くと置いて分けた(推定。物流の売上は68.4億円で営業利益1.2億円、その他の広告・人材は7.5億円。開示された数量がないため運賃単価から逆算した)。既存顧客の取引量が減って減収だが、数量は中立で横ばい、料金は物価並みに上がると置く。
リスクと懸念
利益率の低さと広告費の重さ
売上の約8%を広告宣伝に使いながら、営業利益率は5%に届かない。原材料や物流費が上がっても値上げが追いつかない年は、利益が一気に細る。2027年3月期の会社予想は営業利益が37%減で、この脆さを表している。
工場再編の遅れ
群馬工場は2027年3月に停止するが、後継の茨城工場は資材高で着工が延期され、稼働時期は未定。穴を埋める生産体制が整わなければ、業務用の売上と利益に響く。投資額も開示されていない。
焼肉のたれ市場の成熟
焼肉のたれは国内市場が成熟し、内食需要の剥がれで前年割れの年が出た。肉まわり調味料は直近でも1.5%減った。キッコーマンやモランボンの新商品、PBとの競争で首位の座も安泰ではない。
現金が戻らない
創業家系の資産管理会社が3分の1超を持ち、安定株主が厚い。配当性向は2割台、自己株式の取得はない。純現金が時価総額の6割を超えても、少数株主に戻る保証はない。
海外の小ささ
海外売上比率は5.1%。タイ工場は2024年に完成したが、大手の海外網には遠い。投資の回収が遅れれば、減損や追加費用につながる。
物流事業の縮小
エバラ物流は既存顧客の取引量の減少で減収が続き、利益もわずかだ。倉庫の賃借料(川崎物流センターだけで年4.4億円)は固定費で、売上が落ちても減らない。
今後の分かれ目
- 工場再編の効果で、営業利益率が6%を超えて定着したら
- やや楽観・楽観に確率を移し、価値は今の水準に近づく。
- 茨城工場の着工が白紙になり、新たな減損が出たら
- やや悲観・悲観に確率を移す。現金の使い道が見えない分、評価は下がる。
- 自己株式の取得や配当性向の引き上げ(5割以上)が正式に決まったら
- 余った現金の戻り方を0.5から1.0へ上げて見直す。価値が大きく上がる。
- 鍋物調味料の数量が焼肉のたれを上回って伸び続けたら
- 家庭用の数量前提を上方修正する。
- 創業家による非上場化や第三者の買収提案が出たら
- 提案価格が本質価値を上回るかを見る。現金が評価されるなら筋書きを引き上げる。
見ておくもの
- 営業利益率(2027年3月期の会社予想3%台からの戻り)
- 茨城新工場の着工再開の時期と投資額
- 鍋物調味料と肉まわり調味料の売上の動き
- 海外売上比率(6%超の達成)
- 配当性向・自己株式取得の発表
倍率と資本コストの決め方
家庭用・業務用は販売トン数×1kgの単価(推定)、物流・その他は実質の取扱高×料金の指数で積み、価格は物価並みに上げた。中立の営業利益率は5.1%で、過去12年の山(7.7%)より低い。倍率は利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の9割で、ROEがkより低いので1÷kが上限になる。今の株価(PER約14倍・PBR約0.7倍)には寄せていない。余った現金70億円は戻り方0.5で数えた。会社予想の2027年3月期営業利益は15億円(brief.pyの20億円は別集計)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.5→14.25 倍・やや楽観 PER 12.4→13.25 倍・中立 PER 11.1→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityを足して決める。事業が傾いてはいないので上乗せは置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 7.75%。