結論
ケンコーマヨネーズは、外食・給食・量販店向けにサラダとマヨネーズ・ドレッシングを作る会社だ。日持ちするロングライフサラダでは国内の4割強を握るとされる。ただし儲けの厚い会社ではない。営業利益率は過去12年で0.1%から5.8%の間を動き、鶏卵や野菜の相場で簡単に振れる。
筆者の結論は、今の値段は事業の稼ぐ力に対して安い、というものだ。理由は二つある。一つは、利益が谷に近いこと。2026年3月期の営業利益率は4.5%にとどまったが、2026年4月に約760品を値上げした効果は、これから満額で入る。もう一つは、時価総額の3割強にあたる純現金を抱えていることだ。
割安の幅は、会社が語る夢の大きさとは関係がない。会社は2036年3月期に売上2,000億円、海外売上比率3割を掲げる。筆者はこれを中立の筋書きに入れていない。中立は売上1,260億円、営業利益率5.1%で、伸びのほとんどは物価の分だ。それでも10年後の時価総額は、配当を足せば今の3倍近くになる。
弱みもはっきりしている。値段を自分で決められない。取引先の内製化で総菜関連の売上は減っている。約200億円のM&A枠は、時価総額300億円ほどの会社には大きな賭けだ。この賭けが外れた筋書きを、確率12%で悲観に置いた。
見るべきは二点だ。利益率が5%近くに戻るか。純現金が株主に戻るのか、M&Aで消えるのか。
バリュー投資の観点から
この会社を10年持ち続けたいか、と自問すると、答えは「値段次第」になる。
事業の経済性は、凡庸だ。原料を仕入れ、加工して納めるだけで、利益率は薄く、振れる。業務用の取引先との関係は強いが、値上げは遅れる。堀は薄い。
それでも、値段が事業の価値を下回るなら、持つ理由になる。純現金が時価総額の3割強あり、営業利益率は谷に近い。利益率が5%に戻り、物価の分だけ売上が伸びれば、純利益は10年で6割増える。毎年の値上げが利益を押し上げる世界だ。
懸念は、経営の資本配分だ。ROICの目標が資本コストより低い会社が、純現金の2倍の枠でM&Aを狙う。ここは筆者が最も警戒する点だ。買収で価値を壊す会社は、安く買って高く育てる会社の逆を行く。純現金を配当と自社株買いで戻す方向へ進むのか、買収に使うのか。この分岐が、10年後の株主の取り分を決める。
安全域は、悲観の筋書きにも見える。営業利益率が1.8%まで落ち、買収も失敗する最悪の姿を置いても、配当を含めた10年後の価値は今の時価総額の8割近い。下値が限られるのは、純現金と自己資本の厚さのおかげだ。
結論として、堀の質は低いが、値段の安全域は厚い。「良い会社を安く買う」でなく「並の会社をかなり安く買う」型の投資だと、筆者は見ている。
何で稼ぐ会社か
事業は大きく二つに分かれる。売上の8割を占める調味料・加工食品は、マヨネーズ・ドレッシング・ソース、タマゴ加工品、ロングライフサラダを、外食チェーン、給食、量販店、食品メーカーへ納める。家庭用ではなく業務用が主戦場だ。2026年3月期は売上734億円、セグメント利益31億円。ポテトサラダと大小の容量のマヨネーズ類、ソース類が伸びた。
稼ぎ方は単純だ。卵、食用油、野菜を仕入れ、加工して納める。つまり原料の相場を、値上げで取引先に渡せるかどうかが利益を決める。2026年3月期は価格改定で営業利益を27億円押し上げたが、鶏卵と野菜の高騰で20億円を失った。
もう一つの総菜関連事業等は、量販店向けの日配サラダ・総菜と、親会社からの生産受託を担う子会社群だ。売上182億円、セグメント利益10億円。取引先の内製化で売上は4%減ったが、値上げで利益は16%増えた。2026年4〜6月期も売上の減少は続いている。
その他には、サラダ専門店のSalad Caféがある。赤字で、2026年3月期に3店を閉じた。
会社は2024年に「KENKO Vision 2035」を作り、2026年2〜3月に見直した。2036年3月期の売上目標を1,250億円から2,000億円へ、海外売上比率を10%から30%へ引き上げた。目標の中心は営業利益でなく、EBITDA率12%とROIC 9%以上に変わった。業績の目標が、事業の質を測る物差しから、投資の効率を測る物差しへ移った格好だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、あるが厚くない。
強みは、業界初のロングライフサラダを1977年に出した歴史と、国内4割強とされる業務用サラダのシェアだ。外食チェーンのメニューや給食の献立に組み込まれると、味と規格を変える手間があるため、取引先は簡単には乗り換えない。家庭用マヨネーズで圧倒的なキユーピーとは、業務用の領域で棲み分けてきた。
弱みは値決めの力だ。原料は食用油・鶏卵・野菜で、相場は会社が決められない。販売先は外食と量販店で、交渉力は向こうが強い。営業利益率が2023年3月期に0.1%まで落ち、2025年3月期に5.3%まで戻った振れ幅が、それを物語る。値上げは通るが、半年から1年遅れる。
資本効率も平凡だ。ROEの過去10年の中央値は7.0%で、資本コストの7.75%に届かない年が多い。自己資本比率が65%と厚い分、資本が眠っている面もある。
経営は守りから攻めへ動き始めた。配当は自己資本に対する比率(DOE)で決め、2.5%から4.0%へ引き上げる計画だ。総菜関連の内製化を受けて、値上げの浸透、工場の統合、小型ソースラインの増設を急ぐ。ただし、M&Aで成長を買う経験は乏しい。成長の戦略は、買収の腕前が問われる局面に入る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の業務用食品は、数量が増えない市場だ。人口は年0.5%ほど減る。一方で外食・中食では、人手不足を背景に、仕込みを外へ出す動きが続く。サラダやソースを加工品で仕入れる店が増えることが、この会社の追い風になる。
値段は逆風と追い風が混ざる。2026年は加工食品の値上げが相次ぎ、原材料高が理由の大半を占めた。鶏卵は高止まりし、鳥インフルエンザの発生拡大に備えて、殻付き卵の在庫を厚くする費用と、凍結卵の輸入コストがかさむ。物価が年3%で続く世界では、毎年の値上げは受け入れられやすい。だが頻度が増えるほど、取引先は内製化や安い仕入れ先への切り替えを考える。
競争の構図は二層だ。家庭用マヨネーズは、キユーピーが圧倒的な首位だ。業務用では、キユーピー系や、卵・サラダを手がける中堅の食品会社と競る。大手外食や量販店は、自社工場やプライベートブランドで内製化も進める。総菜関連の減収は、この力が表に出た例だ。
海外は小さな賭けだ。海外売上比率は低く、北米向けのマヨソース輸出を始めたばかりだ。会社は2036年3月期に3割まで高める計画だが、国内で培った業務用の納め方が、海外でも通じるかは未知数だ。
循環は穏やかだが、利益は原料に左右される。景気そのものより、鶏卵相場と値上げの時間差が、業績を決める。
資本政策と M&A
資本政策は、守りから動き出した段階にある。
還元は、自己資本に対する配当の比率(DOE)で決める。2026年3月期は2.5%、会社は2028年3月期に2.5%以上、2032年3月期に3.5%以上、2036年3月期に4.0%以上を掲げる。2025年11月には、10億円の自社株買いも実行した。自己株式は発行済み株式の12.6%にのぼる。
純現金は2026年3月期末に102億円ある。時価総額の3割強にあたる。会社は、成長投資としてM&Aに約200億円を充てる計画を示す。この枠は純現金の2倍に近い。ROICの目標が6〜9%と資本コストを下回る水準にあることを考えると、買収が価値を生むかは慎重に見るべきだ。
株主の上位には、ティーアンドエー、信託口、鈴与コンストラクションホールディングス、日本生命、キッコーマンが並ぶ。キッコーマンは3.4%だ。kabufuの試算では、10年以内の買収やTOBの確率は29%ある。時価総額が小さく、純現金が厚いことが理由と考えられる。
株主優待は、100株以上で千円相当、1,000株以上で二千五百円相当の自社製品だ。株主数と費用の開示は確かめられなかった。100株以上を1万人と置くと、原価ベースで年1億円に届かず、価値への影響は1ポイントに満たない。このため還元には足していない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
利益率は、まだ戻る余地がある。2025年3月期に営業利益率は5.3%まで戻った実績がある。価格改定は前期に27億円、今期の会社予想では37億円、利益を押し上げる。工場の統合で生産効率も7億円改善する。会津若松工場の富士山工場への統合や、西日本工場の小型ソースラインなど、設備への手当ては進んでいる。
顧客との関係は、値上げが通ることで裏づけられた。約760品を一度に改定できたのは、この会社の品が取引先の献立に深く組み込まれているからだ。外食・給食の新規先が増え、小容量ソースの需要も伸びる。数量は10年で5割増える。
海外とM&Aは上振れの源泉になる。会社は約200億円のM&A枠を用意し、海外売上比率を3割へ引き上げる計画だ。うまくいけば、国内の頭打ちを補い、売上は物価を超えて伸びる。成長が回れば、ROEは13%台に上がり、利益に見合った倍率がつく。
資本政策も好転する。DOEは2.5%から4.0%へ段階的に上がり、会社は2025年11月に自社株買いも実行した。純現金が株主に戻り始めれば、自己資本が膨らまず、ROEが上がる。
そして値段は、これらをほとんど織り込んでいない。今の時価総額から純現金を引くと、残りは200億円足らず。事業の純利益29億円の7倍ほどにすぎない。
慎重な見方
この会社は、値段を自分で決められない。原料の鶏卵・食用油・野菜は、相場が会社の外で決まる。取引先は大手の外食と量販店で、交渉力は向こうが強い。2023年3月期に営業利益率が0.1%まで落ちたことが、その証拠だ。値上げは半年から1年遅れて通り、その間に利益は削られる。
内製化は、すでに始まっている。総菜関連の売上は2026年3月期に4%減り、2026年4〜6月期も2.7%減、営業利益は37%減った。取引先が自社工場に切り替えれば、この会社の数量は戻らない。
M&A枠の約200億円は、時価総額300億円の会社には大きすぎる賭けだ。会社が掲げるROICの目標は、6%から始まり、資本コストを下回る。買収が計画どおりに価値を生むとは考えにくい。買収に失敗すれば、減損と純現金の減少が重なる。
会社が掲げる売上2,000億円、EBITDA率12%という目標も疑わしい。国内の売上は年3%の物価では1,260億円までにしかならず、残りは買収頼みになる。EBITDA率12%は、今の7%から5ポイントも上がる計算だ。
さらに、株主構成にも落とし穴がある。純現金が厚く、時価総額が小さいため、買収の対象にもなりうる。TOBが起きれば短期の値上がりはあるが、長期の株主には、それが価値の実現になるとは限らない。
最後に、2023年3月期に営業利益が1億円まで落ちた、という履歴は消えない。同じことが、10年のうちに再び起きる確率は低くない。
どちらに重みを置いたか
二つの見方の分かれ目は、利益率が5%台に戻れるか、そして純現金が株主に戻るか、の二点に集約される。
利益率の回復は、前期の実績と値上げの浸透で、中立の姿として受け入れられる。ただし山の水準までで、それを超えることは中立に置かない。純現金は、戻り方を半分に割り引いた。M&Aの枠が大きく、これまでの10年は現金が積み上がっただけだからだ。
値段と事業の稼ぐ力との差は、慎重な見方を入れても残る。そこで確率は、中立に最も厚く、悲観側は合計で37%と、同じ領域の会社より厚めにした。値決めの力が弱く、内製化とM&Aの失敗という、会社固有の下振れがあるためだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,217 円608 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,397 円201 億円)。 今の値に割り戻すと 2,848 円410 億円、今との差 +37.3%、 期待の年率 +10.5%(資本コスト 8.3%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 9,395 円1,354 億円 | 2,081 円300 億円 | +453.3% | +18.7% | 803 円116 億円 |
| やや楽観 | 20% | 6,250 円901 億円 | 1,769 円255 億円 | +286.7% | +14.5% | 1,604 円231 億円 |
| 中立 | 36% | 4,415 円636 億円 | 1,561 円225 億円 | +188.1% | +11.2% | 2,151 円310 億円 |
| やや悲観 | 25% | 2,364 円341 億円 | 1,041 円150 億円 | +64.2% | +5.1% | 851 円123 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,071 円154 億円 | 624 円90 億円 | −18.2% | −2.0% | 203 円29 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,217 円608 億円 | 1,397 円201 億円 | +170.6% | +10.5% | 5,613 円809 億円 |
今の株価時価総額 2,074 円299 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 海外とM&Aが当たり、利益率が7%に乗る 利益 85 億円 · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 9,395 円1,354 億円
10年後、会社は国内の外食・給食で新しい取引先を取り込み、販売数量は5割増える。小容量ソースと、ポテトサラダなど加工品の需要が、人手不足の外食に刺さった。海外では北米を中心にM&Aと輸出が当たり、売上は1,730億円に迫る。会社の目標の2,000億円には届かない。
営業利益率は7%に乗る。工場の統合と設備の増強で生産効率が上がり、値上げも原料高を上回って通る。営業利益は120億円、純利益は85億円。
資本の使い方も変わる。DOEは4.0%に近づき、自社株買いも続く。純現金は買収に使われつつ、株主への還元も厚い。10年の還元の合計は300億円、ROEは13%台になる。
- 調味料・加工食品:数量 27.5(販売数量(万トン、マヨ・ドレ・ソース・タマゴ加工品・サラダの合計。推定))× 価格 536(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 1,476 億円・営業利益 103 億円。営業利益率7%。数量1.5倍は新規先とM&A
- 総菜関連事業等・その他:数量 3.2(販売数量(万トン、日配総菜・生産受託の合計。推定))× 価格 804(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 253 億円・営業利益 16 億円。営業利益率6.5%
倍率:事業の純利益 84 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.7% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)60 億円。全体の PER 15.34 倍、時価総額 1,354 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外3割とEBITDA率12%の計画が実現に近づく筋書き。M&Aで価値を生んだ経験が乏しく、値決めの力も弱いので、確率は低く置いた。
やや楽観 20% 値上げが定着し、利益率が6%台に 利益 61 億円 · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 6,250 円901 億円
10年後、2026年4月の値上げが定着し、取引先との関係も安定する。国内の数量は外食・給食の新規先と小容量ソースで2割増え、売上は1,420億円になる。
営業利益率は6%台だ。2025年3月期の5.3%を上回るが、価格改定の効果が満額で残ったうえ、生産効率の改善と工場の統合が積み上がった結果と見る。営業利益は85億円、純利益は61億円。
総菜関連は内製化が一服し、数量は4%減にとどまる。値上げで取り戻した利益が、そのまま残る形だ。
M&Aは小粒で、利益に大きく寄与しない。海外は北米向けのマヨソース輸出が少しずつ広がる程度で、売上に占める割合は1割に届かない。それでも、国内の業務用で地盤を固めるだけで、利益は十分に増える。DOEの引き上げに沿って、10年で255億円を株主に戻す。純現金は積み上がらず、ROEは10%台になる。
- 調味料・加工食品:数量 22.0(販売数量(万トン、マヨ・ドレ・ソース・タマゴ加工品・サラダの合計。推定))× 価格 536(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 1,180 億円・営業利益 71 億円。営業利益率6%。数量1.2倍
- 総菜関連事業等・その他:数量 3.0(販売数量(万トン、日配総菜・生産受託の合計。推定))× 価格 804(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 243 億円・営業利益 14 億円。営業利益率5.8%
倍率:事業の純利益 60 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.4% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)60 億円。全体の PER 13.93 倍、時価総額 901 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:価格改定が定着し、新規の外食・給食先が増える筋書き。直近の2025年3月期に5.3%を達成した実績があり、起きやすい。
中立 36% 利益率が5%に戻り、物価の分だけ伸びる 利益 46 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 4,415 円636 億円
10年後、売上は1,260億円。伸びの大半は物価の分で、数量は調味料・加工食品が4%増、総菜関連が8%減る。人口減を、外食・給食の新規先と簡便化が相殺する姿だ。
営業利益率は5.1%。2025年3月期の5.3%を下回り、12年の山の5.8%も超えない。値上げの浸透で、前期の4.5%から戻るだけの姿だ。営業利益は63億円、純利益は46億円。
M&Aは小粒にとどまり、価値は生まない。かといって、壊すこともない。DOEは2.5%から4.0%へ上がり、自社株買いも適宜行われる。10年の還元は225億円。純現金は増え、ROEは8%台で落ち着く。
筆者は、この筋書きが最も現実に近いと見る。
- 調味料・加工食品:数量 19.1(販売数量(万トン、マヨ・ドレ・ソース・タマゴ加工品・サラダの合計。推定))× 価格 536(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 1,023 億円・営業利益 51 億円。営業利益率5%。数量1.04倍、価格は物価並みの1.34倍
- 総菜関連事業等・その他:数量 2.9(販売数量(万トン、日配総菜・生産受託の合計。推定))× 価格 804(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 233 億円・営業利益 12 億円。営業利益率5.3%。数量0.92倍(内製化)
倍率:事業の純利益 46 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.1% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)60 億円。全体の PER 12.65 倍、時価総額 636 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率が前期の谷から5%に戻り、数量は横ばい、価格は物価並みに上がる筋書き。値上げの実績と、会社予想の営業利益率4%台前半からの回復幅を踏まえた。
やや悲観 25% 内製化と原料高で利益率が3%台に 利益 29 億円 · PER 10.3 倍 · 株価時価総額 2,364 円341 億円
10年後、内製化が続き、総菜関連の数量は2割減る。調味料・加工食品も、値上げの頻度が増えたことで、取引先がまとめ買いや切り替えに動き、数量は5%減る。売上は1,140億円。
営業利益率は3.4%。鶏卵や野菜の高騰に、値上げが半年遅れで追う構図が繰り返され、利益は削られ続ける。2020〜2024年3月期の利益率は0.1〜3.9%だった。営業利益は39億円、純利益は29億円。
M&Aは小さな買収にとどまり、成果は出ない。会社が掲げるROICの目標も、達成できないままだ。
還元は150億円で、DOEの計画を下回る。利益が薄くなる中で、会社は配当を守ることを優先し、自社株買いを見送る。純現金は積み上がるが、それを使う先も見つからない。ROEは5%台に沈み、自己資本の厚さが、かえって資本効率を押し下げる姿になる。
- 調味料・加工食品:数量 17.4(販売数量(万トン、マヨ・ドレ・ソース・タマゴ加工品・サラダの合計。推定))× 価格 536(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 934 億円・営業利益 32 億円。営業利益率3.4%。数量0.95倍
- 総菜関連事業等・その他:数量 2.5(販売数量(万トン、日配総菜・生産受託の合計。推定))× 価格 804(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 203 億円・営業利益 7 億円。営業利益率3.5%。数量0.8倍(内製化)
倍率:ROE 5.1% が k 8.25% 以下なので上限は 1÷k = 12.9 倍(ためた利益は額面未満の価値)。稼ぐ力(純利益 29 億円)に対して、上限の約 8 割の 10.3 倍を採用した。
確率:内製化が続き、原料高に値上げが追いつかない筋書き。2019〜2023年3月期の利益率は0.1〜4.2%だった。同じ領域の会社より、値決めの弱さを考えて厚めに置いた。
悲観 12% 内製化が広がり、M&Aも失敗する 利益 13 億円 · PER 10.3 倍 · 株価時価総額 1,071 円154 億円
10年後、大手の外食・量販店が内製化を広げ、総菜関連の数量は35%減る。調味料・加工食品も15%減る。値上げは取引先に拒まれ、価格は物価の1.34倍に届かず、1.30倍にとどまる。売上は970億円。
会社はM&A枠の約200億円を使うが、買収先の統合に失敗し、減損で自己資本が40億円減る。営業利益率は1.8%、営業利益は17億円、純利益は12億円。Salad Caféなどの赤字事業は、ほぼ撤退する。
還元は90億円に縮む。ROEは2%台、構造的に負けた姿だ。ただし純現金と自己資本の厚さが、これ以上の下落を止める。
- 調味料・加工食品:数量 15.6(販売数量(万トン、マヨ・ドレ・ソース・タマゴ加工品・サラダの合計。推定))× 価格 520(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 811 億円・営業利益 15 億円。営業利益率1.8%。数量0.85倍、価格は物価に届かず1.30倍
- 総菜関連事業等・その他:数量 2.1(販売数量(万トン、日配総菜・生産受託の合計。推定))× 価格 780(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 160 億円・営業利益 2 億円。営業利益率1.5%。数量0.65倍。Salad Caféは撤退
倍率:ROE 2.5% が k 以下なので上限は 1÷k = 12.9 倍。純利益 12 億円の稼ぐ力と、半分に減った余った現金(30 億円)の半額を足した。構造的な負けの筋書きとして上限の 8 割の 10.3 倍に置いた。
確率:内製化が広がり、M&Aも失敗して減損が出る筋書き。2023年3月期の営業利益率は0.1%だった。12%の確率はM&A枠の大きさと内製化の進行を考えた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
調味料・加工食品
マヨネーズ・ドレッシング・ソース、タマゴ加工品、ロングライフサラダ(日持ちするサラダ)。外食・給食・量販店・メーカー向けの業務用が中心。
| 数量販売数量(万トン、マヨ・ドレ・ソース・タマゴ加工品・サラダの合計。推定) | 価格1kg あたりの平均単価(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 18.4 | 400 | 734 | 31 |
| 10 年後 中立 | 19.1 | 536 | 1,023 | 51 |
取り方:売上 734 億円(セグメント利益 30.9 億円)を、1kg あたり平均四百円前後の品が年 18.4 万トン売れていると置いて分けた。会社はトン数を開示しておらず、数量・単価とも推定。マヨ類は安く、サラダ・ソースは高い。数量は国内の人口減(年 −0.5%)を、簡便化と外食・給食の新規先、小容量ソースの増設が補い、中立では 10 年 1.04 倍。価格は物価並みの 1.34 倍。市場の大きさ:業務用ロングライフサラダでは国内 4 割強のシェア(古い資料。算出方法不明)。家庭用マヨネーズはキユーピーが圧倒的で、ここでは競わず、業務用・外食向けの棲み分けを土台にしている。
総菜関連事業等・その他
量販店向けの日配サラダ・総菜の製造販売と、親会社からの生産受託を担う連結子会社群。サラダ専門店 Salad Café と、セグメント間の消去を含む。
| 数量販売数量(万トン、日配総菜・生産受託の合計。推定) | 価格1kg あたりの平均単価(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.2 | 600 | 189 | 11 |
| 10 年後 中立 | 2.9 | 804 | 233 | 12 |
取り方:総菜関連の売上 182 億円・セグメント利益 10.0 億円に、その他・消去の売上 7.4 億円・利益 0.6 億円を足し、1kg あたり六百円前後の品が年 3.15 万トンと置いて分けた(推定)。販売先の内製化で 2026 年 3 月期は売上 4%減、2026 年 4〜6 月期も 2.7%減が続く。中立では数量が 10 年で 0.92 倍の緩やかな縮小。価格は物価並みの 1.34 倍。Salad Café は赤字で 3 店を閉じた。利益率は価格改定の効き始めで総菜関連が 5.5% まで戻ったが、鶏卵・野菜の値動きに左右される。本社費などの全社費用は区分の中に配賦済みで、物価で増える前提のまま利益率に入れている。
リスクと懸念
鶏卵・食用油・野菜の相場
主な原料はすべて相場で決まる。2026年3月期は鶏卵と野菜の高騰で20億円の減益要因が出た。鳥インフルエンザが広がれば、殻付き卵の在庫と凍結卵の輸入の費用も増える。値上げが半年から1年遅れる間に、利益が削られる構造は変わらない。
取引先の内製化
総菜関連事業は、取引先が自社工場に切り替える動きで売上が減っている。2026年4〜6月期の営業利益は37%減った。大手の外食・量販店が加工を内製化する流れが広がれば、数量は戻らず、工場の稼働率が下がって固定費の負担が増す。
M&Aでの価値の毀損
約200億円のM&A枠は、時価総額300億円ほどの会社には大きな賭けだ。ROICの目標が資本コストを下回る会社が買収で成長を買うと、価値を壊す恐れがある。海外を3割にする計画には、国内で培った業務用の納め方が海外で通じるかという問題も残る。
値上げ疲れと顧客離れ
約760品を最大25%値上げした影響は、取引先の切り替えや量の減少として、これから出てくる可能性がある。2026年3月期は価格改定で営業利益が27億円増えたが、販売数量は5億円の減益要因だった。値上げの頻度が増えれば、この傾向は強まる。
純現金の使い道
純現金は102億円と、時価総額の3割強にあたる。配当と自社株買いで戻るのか、M&Aに使われるのかで、株主の取り分が変わる。これまでの10年は現金が積み上がってきた。DOE 2.5%への引き上げは前向きだが、買収に充てる意図も明確だ。
新リース会計と東京本社移転
新リース会計基準が2028年3月期から適用されると、賃借した建物がバランスシートに載り、自己資本比率が下がる。東京本社の移転費用は2026年3月期の固定費に出ており、今期も人件費と事務所の費用が増える。額は小さいが、利益率の回復を鈍らせる。
今後の分かれ目
- 2027年3月期に営業利益40億円、2028年3月期に44億円という会社予想が達成される
- 価格改定の浸透が確認され、中立の営業利益率5%への道筋が見える。やや楽観側に寄せてよい。
- 営業利益率が2期続けて3%台前半へ落ちる
- 値上げが原料高に追いつかず、取引先の力が強まった合図。悲観側の確率を上げる。
- 数十億円規模のM&Aが、のれんの大きい形で発表される
- 純現金が事業に変わり、戻り方の前提(0.5)が下がる。買収先の利益率と買収額を確認する。
- 自社株買いや増配が、DOEの計画を超えて追加される
- 純現金が戻る方向で、余った現金の価値を高く見積もってよい。
- 総菜関連の売上減が2桁に広がる
- 内製化が加速している。数量の見通しと工場の固定費を見直す。
- TOB(株式公開買い付け)が発表される
- 純現金の厚さと利益の谷が評価される形になりうる。価格が事業の稼ぐ力に見合うかを確かめる。
見ておくもの
- 営業利益率(四半期。価格改定の浸透)
- 鶏卵相場と鳥インフルエンザの発生状況
- 総菜関連事業等の売上と営業利益
- M&Aの発表(金額・のれん・買収先の利益率)
- DOEの実績と追加の自社株買い
- 純現金の推移
倍率と資本コストの決め方
2 つの区分を、販売トン数(推定)× 1kg の単価で積み、価格は物価並みの 1.34 倍に置いた。営業利益率は 12 年の山(5.8%)より低い 5.1% を中立とし、2025 年 3 月期の実績 5.3% を上限の根拠にした。倍率は、自己資本を「今+純利益−還元」で流して出した ROE(8.3%)と k 8.25% から式で決め、ROE が k を少し上回るので下限(1÷k = 12.9 倍)の近くに置いた。今の PER や PBR は倍率の根拠にしていない。今の株価と比べたのは最後。新リース会計(2028 年 3 月期から)で数字の形が変わるが、10 年後は今と同じ家賃を費用に入れた形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.1→15.34 倍・やや楽観 PER 13.5→13.93 倍・中立 PER 13.1→12.65 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.25% を足した。事業は傾いておらず上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 8.25%。