結論
ユーグレナは、藻の一種であるミドリムシを核にした健康食品と化粧品の会社である。売上の約 9 割は、通販を中心とするヘルスケア事業が占める。青汁やコラーゲンで知られるキューサイを 2021 年に傘下に収め、売上は 500 億円に達した。
筆者の結論は割高である。理由は二つある。一つは、稼いだ利益がそのまま株主に残らないことだ。キューサイの持分は 49% にすぎず、利益の半分近くを出資者と税が持っていく。2025 年は営業利益が 31 億円まで改善したのに、最終損益は赤字だった。もう一つは、今の値段が燃料事業の成功を先取りしていることだ。マレーシアの大型工場に 15% を出資したが、稼働は 2028 年下期で、収益は未知数である。
良い点も多い。通販は粗利が高く、ここ 2 年のコスト削減は本物だった。ただ、健康食品の国内市場は横ばいで、広告費をかけて顧客を保つ商売でもある。中立の筋書きでは、10 年後の営業利益は 90 億円弱、純利益は 30 億円台にとどまる。ROE は資本コストに届かない。燃料が計画どおり動く楽観の筋書きでも、今の値段を大きくは上回らない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社を持ち続けたいかを自問する。答えは、今の値段では否である。
良い商売の条件は、利益が長く続き、再投資が少なく、株主に現金が戻ることだ。ヘルスケアの通販は、前の二つはおおむね満たす。ところが三つ目で行き詰まる。稼ぎの半分近くが少数株主と税に出ていくからだ。持分が 49% の子会社を連結しているので、売上の見かけほど株主の取り分は大きくない。
燃料事業は、さらに見通しにくい。13 億ドルの工場を動かす主役はエニ系とマレーシア国営企業で、ユーグレナは小さな出資者にすぎない。収益は燃料の相場と制度に左右され、自社で値段を決められない。会社は税引き前利益率 20% を見込むが、筆者はその半分以下を中立に置いた。
経営の資本配分は、これまで評価しにくかった。買収した会社の負債を返し、黒字にした実績はある。一方、配当は始まったばかりで、会社の借金は工場への保証まで含めれば小さくない。
安全域の目で見ると、今の時価総額は、中立の筋書きの 10 年後より高い。確信を持てない領域が二つ重なった会社に、上乗せして払う理由は見つからない。
何で稼ぐ会社か
事業は大きく三つに分かれる。
ヘルスケア事業は売上の約 9 割を占め、利益のほぼすべてを稼ぐ。主力は、自社ブランドの「からだにユーグレナ」やサプリの「CONC」、キューサイの青汁とコラーゲン飲料「コラリッチ」である。どれも定期購入の通販が中心で、粗利は 8 割近い。これに化粧品受託製造のサティス製薬や、藻類素材を食品・化粧品メーカーに売る法人向けが加わる。2025 年は、30〜40 代の子育て世代向けに「お出汁」を訴求した商品が当たり、新しい顧客層を開いた。
バイオ燃料事業は、今は売上 10 億円ほどの小さな事業で赤字である。本命はマレーシアの商業プラントだ。総事業費は約 13 億ドルで、PETRONAS とイタリアのエニ系の Enilive が主役を務め、ユーグレナは 15% を出資する。航空機燃料の SAF と軽油代替の HVO を年 72.5 万キロリットル作り、15% の取り分が約 10 万キロリットルになる。原料は当面、廃食油である。ミドリムシ由来の油は 2030 年以降の課題にすぎない。
その他事業は、肥料・飼料(大協肥糧)や研究で、売上 20 億円台の赤字事業だ。会社は M&A で 2030 年に 100 億円まで広げる考えである。
優良さと弱いところ
ヘルスケアの強みは、定期購入で積み上がる顧客基盤と、高い粗利である。2022 年から 2025 年にかけて、ヘルスケアの償却前の利益率は約 8.5 ポイント改善した。値上げも 2024 年後半から 2025 年にかけて通っている。顧客が品物を変えにくい分野で、安定した商売だ。
弱みもはっきりしている。通販の健康食品は、広告をやめれば新規客が止まる。ブランドの力は食品大手ほど強くない。国内の健康食品市場は 2025 年度で約 9,100 億円と、前年度から 0.8% 減った。紅麹の事故のように、業界の誰かの不祥事で信頼が揺らぐ危険もある。
資本の面では、キューサイの持分が 49% にすぎない点が決定的に効く。経営の実権は握って連結しているが、利益の分け前は半分に届かない。2025 年は税引き前利益 18.9 億円に対し、法人税が 13.6 億円、少数株主への配分が 13.3 億円で、最終は赤字だった。また、本社側では燃料や研究の費用に税の盾が効かない。
経営は 2024 年から、若原智広氏と植村弘子氏の 2 人の共同 CEO が率いる。黒字化という約束は果たした。一方で、2012 年の上場以来、通期で純利益が黒字になった年は 2017 年 9 月期が最後である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の健康食品は、成熟した市場だ。矢野経済研究所によると、2025 年度の出荷額は約 9,100 億円で、前年度比 0.8% 減の見込みである。受託製造(OEM)は約 1,800 億円と小さいが、わずかに伸びている。人口は減り、高齢の購入者に偏る。そのため数量の伸びは期待しにくい。一方で、機能性表示食品(効能を表示できる食品)の枠は広がっており、臨床試験で根拠を積める会社には追い風だ。
競争相手は多い。青汁ではサントリーウエルネスやアサヒグループなどの食品大手、サプリではファンケルや小林製薬のような大手がいる。通販は広告の取り合いで、アマゾンや楽天のような EC モールの比重が上がっている。単品通販の拡大は過渡期にあると業界でも言われる。
バイオ燃料は、まったく別の力学で動く。EU は 2025 年から SAF の混合を義務にした。日本政府も 2030 年に航空燃料の 1 割を SAF にする目標を掲げる。ただ日本の制度は限定的で、国内の買い手は育ち始めたばかりだ。世界ではフィンランドのネステが先行し、石油元売り各社も参入している。HVO の値段は、原料の廃食油と軽油の相場、規制の強さで大きく動く。
つまり、安定した成熟市場と、制度に左右される新設工場が同居する会社である。
資本政策と M&A
還元は始まったばかりだ。2025 年に創業来初の配当を、20 周年の特別記念として総額約 2.7 億円出した。今後の方針は決まっていない。会社は成長投資とのバランスを取るとしている。筆者は、利益が出る年から純利益の 2 割ほどを配当に回すと置いた。
資金繰りは複雑だ。キューサイを買った 2021 年の買収資金の借入が重く残る。2025 年末にリファイナンスし、キューサイから出資者へ資本剰余金の配当を実施した。さらにマレーシアの工場に関しては、出資や貸付、銀行保証の合計で約 67.5 百万米ドルを約束している。工場の銀行融資にも出資比率分の保証を出しており、契約上の上限は約 173 百万米ドル、期末の責任額は約 45 百万米ドルだ。2023 年に調達した約 78 億円の転換社債が残っていれば、株数が増える余地も残る。
M&A は、買う側として肥料・飼料の領域を狙うと説明している。時間を買うためである。買われる側になる可能性は、時価総額が 500 億円弱のため、ゼロではないと見る。
株主優待は、EC サイトの割引券が中心で、費用は年 1 億円未満と小さい。還元の合計に与える影響は 1 ポイントに満たない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
黒字化の約束は果たされた。2025 年の営業利益は前年の 10 倍の 31 億円で、会社は 2026 年も同水準を保ちつつ最終黒字を目指す。通販は粗利が高く、ここから広告の効率を上げれば、利益は売上以上に伸びる。
ヘルスケアの売上は、年 3% の成長に海外と腎臓病の食品を足せば、2030 年に 600 億円に届く。化粧品の受託や食品添加物の素材は、法人向けで景気に左右されにくい。
燃料は大きな上振れ要因だ。マレーシアの工場は PETRONAS とエニ系の Enilive が支える世界級の案件で、ユーグレナは 15% の取り分、約 10 万キロリットルを確保した。EU の義務化が始まり、SAF と HVO の値段は上がっている。会社が見込む税引き前の利益率 20% が実現すれば、持分だけで年 60 億円の利益になる。
加えて、キューサイの持分を将来買い増せば、少数株主への流出が減り、利益の取り分が大きく増える。小さな時価総額に比べ、上振れの余地は大きい。
慎重な見方
稼ぎは見かけより小さい。2025 年は営業利益 31 億円でも、少数株主と税で 27 億円が出ていき、最終は赤字だった。2026 年の会社予想でも、営業利益 32 億円から残る純利益は 1 億円前後と見られる。営業利益が増えても、増えた分の半分がまた出ていく構造は変わらない。
通販は広告をやめれば顧客が止まる。国内市場は人口減で縮み、2025 年度の健康食品の出荷額は前年を割った。キューサイの青汁やコラーゲンは、食品大手と広告費を競い合っている。
燃料は、まだ一滴も売れていない。会社の目標は、HVO 価格が高止まりし、税引き前の利益率が 20% を保つという前提に立つが、新設の再生燃料工場の採算は荒れやすい。ユーグレナは小さな出資者で、運営の主導権は他社にある。しかも工場の銀行融資に、契約上は最大 173 百万米ドルの保証を出している。工場が失敗すれば、出資の損と保証の負担が同時に来る。
上場以来、通期の最終黒字は 2017 年 9 月期が最後だ。目標は何度も後ろにずれた。2030 年に売上 1,000 億円という目標も、そのうち 400 億円分が燃料とアグリという新事業に頼っている。
どちらに重みを置いたか
通販の黒字体質は本物で、ここ 2 年の改善は評価に値する。争点は、その利益が株主にどれだけ残るかと、燃料が収益になるかの二つだ。前者は構造の問題で、営業利益が伸びても純利益が伸びにくい。後者は未実績で、中立の筋書きでは会社の見込みの半分以下を置いた。慎重な見方の指摘が強く、悲観側に 45% を寄せた。楽観の筋書きでも、今の値段を大きくは上回らない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 250 円349 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 23 円32 億円)。 今の値に割り戻すと 132 円184 億円、今との差 −60.4%、 期待の年率 −1.9%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 830 円1,157 億円 | 72 円100 億円 | +170.7% | +10.5% | 45 円63 億円 |
| やや楽観 | 15% | 514 円717 億円 | 44 円62 億円 | +67.7% | +5.3% | 84 円117 億円 |
| 中立 | 35% | 309 円431 億円 | 29 円41 億円 | +1.6% | +0.2% | 118 円165 億円 |
| やや悲観 | 27% | 58 円81 億円 | 10 円14 億円 | −79.6% | −14.7% | 18 円26 億円 |
| 悲観 | 18% | 44 円62 億円 | 0 円0 億円 | −86.7% | −18.3% | 8 円11 億円 |
| 加重平均 | 100% | 250 円349 億円 | 23 円32 億円 | −17.8% | −1.9% | 274 円382 億円 |
今の株価時価総額 333 円465 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 5% 健康食品が海外と腎臓病領域で伸び、燃料の収益も計画どおり立ち上がる 利益 75 億円 · PER 15.4 倍 · 株価時価総額 830 円1,157 億円
2020 年代後半に、通販の定期顧客が欧米やアジアにも広がり、化粧品原料や食品添加物としての藻類素材の法人向け販売も軌道に乗る。慢性腎臓病向けのメディカルフードは小さな市場ながら一つの柱になり、ヘルスケアの売上は700 億円を超える。営業利益率は広告の効率改善で14% 台に乗る。マレーシアの工場は2028 年下期に動き始め、稼働率は高く、燃料の持分から得る利益は年60 億円近くに達する。肥料・飼料は買収で100 億円規模になる。会社の2030 年目標にほぼ近い姿だ。それでもキューサイの少数株主と税に利益の半分近くが流れる構造は残り、純利益は営業利益の半分ほどにとどまる。還元は利益の25%ほどに増える。
- ヘルスケア(通販・法人向け素材・化粧品受託):数量 175(購入顧客・取引先の延べ数(万人換算の推定))× 価格 4.02(1 人あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 704 億円・営業利益 102 億円。営業利益率14.5%
- バイオ燃料(SAF・HVO):数量 10.0(燃料の取扱量(万キロリットル))× 価格 402(1 リットルあたりの値段(円・名目))→ 売上 402 億円・営業利益 56 億円。営業利益率14.0%(持分法益を含む)
- その他(肥料・飼料・研究):数量 8.0(肥料・飼料の販売量(万トン、推定))× 価格 13(1 トンあたりの値段(万円・名目、推定))→ 売上 100 億円・営業利益 6 億円。営業利益率6.0%
倍率:事業の純利益 75 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.8% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.4 倍。全体の PER 15.37 倍、時価総額 1,157 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:計画の数字をほぼ満たす必要があり、通販の成長・海外の立ち上げ・燃料工場の稼働と採算が全部そろう組み合わせ。18 年で通期の純利益が出たことのない会社の実績を考え、5% にとどめた。
やや楽観 15% 通販が堅調に伸び、燃料は稼働初期の壁を越える 利益 51 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 514 円717 億円
通販の定期顧客は微増を続け、値上げも通る。法人向けの藻類素材と海外は小さいが着実に積み上がり、ヘルスケアの売上は650 億円台、営業利益率は13% ほどになる。燃料工場は予定よりやや遅れて動き出すが、2 年目以降は計画の9 割台の稼働に届き、SAF と HVO の値段は規制に支えられて物価並みに上がる。持分から得る利益は40 億円規模になる。肥料・飼料は小さな買収を1 件こなす程度にとどまる。会社の2030 年目標には届かないが、2020 年代後半に営業利益が100 億円に迫る。純利益は税と少数株主への流出が重く、営業利益の半分に届かない。
- ヘルスケア(通販・法人向け素材・化粧品受託):数量 164(購入顧客・取引先の延べ数(万人換算の推定))× 価格 4.02(1 人あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 659 億円・営業利益 88 億円。営業利益率13.3%
- バイオ燃料(SAF・HVO):数量 9.5(燃料の取扱量(万キロリットル))× 価格 402(1 リットルあたりの値段(円・名目))→ 売上 382 億円・営業利益 42 億円。営業利益率11.0%(持分法益を含む)
- その他(肥料・飼料・研究):数量 4.5(肥料・飼料の販売量(万トン、推定))× 価格 11(1 トンあたりの値段(万円・名目、推定))→ 売上 48 億円・営業利益 1 億円。営業利益率3.0%
倍率:事業の純利益 51 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.9 倍。全体の PER 13.95 倍、時価総額 717 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:通販の黒字体質は 2 年続き、会社も 2028 年に売上 550〜600 億円・EBITDA 80〜90 億円を見込む。燃料工場の稼働が予定どおりなら届く範囲で、2 割弱の確率と見た。
中立 35% 通販は安定、燃料は動くが利益は薄く、少数株主と税が稼ぎを削る 利益 35 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 309 円431 億円
通販の定期顧客は広告費をかけて保つ形が続き、国内の健康食品の市場が横ばいから微減の中で、数量はほぼ現状を維持する。海外と法人向け素材の小さな上乗せが国内の目減りを補う。値上げは物価並みに通り、ヘルスケアの売上は640 億円ほど、営業利益率は12%に落ち着く。燃料工場は2029 年に本格稼働するが、燃料の市況と制度の追い風は読みにくく、持分から得る利益は年30 億円ほどにとどまる。肥料・飼料は現状に近い規模のままだ。営業利益は90 億円弱で、会社の2030 年目標には届かない。キューサイの利益の半分近くは少数株主と税に流れ、純利益は30 億円台にとどまる。ROE は資本コストに届かない。
- ヘルスケア(通販・法人向け素材・化粧品受託):数量 160(購入顧客・取引先の延べ数(万人換算の推定))× 価格 4.02(1 人あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 643 億円・営業利益 77 億円。営業利益率12.0%
- バイオ燃料(SAF・HVO):数量 8.5(燃料の取扱量(万キロリットル))× 価格 402(1 リットルあたりの値段(円・名目))→ 売上 342 億円・営業利益 29 億円。営業利益率8.5%(持分法益を含む)
- その他(肥料・飼料・研究):数量 3.5(肥料・飼料の販売量(万トン、推定))× 価格 11(1 トンあたりの値段(万円・名目、推定))→ 売上 38 億円・営業利益 1 億円。営業利益率2.0%
倍率:事業の純利益 34 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 431 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ここ 2 年のコスト削減で黒字体質になったことと、燃料工場への出資が確定したことが土台。ただし通販は人口減の中で広告費をかけて顧客を保つ商売で、燃料の採算は未知数。2 人の議論の落としどころとして最も厚くした。
やや悲観 27% 通販の顧客が細り、燃料は稼働が遅れて利益は出ない 利益 10 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 58 円81 億円
国内の健康食品の市場が縮み、広告費の効きも落ちる。競争が激しくなって値上げは物価に届かず、ヘルスケアの売上は600 億円を割り、営業利益率は1 割を切る。キューサイは定期顧客の高齢化で青汁とコラーゲンの客数が細り、新しい世代への広がりも限られる。燃料工場は稼働が遅れ、稼働してからも市況が弱く、持分から得る利益は小さい。肥料・飼料も赤字が続く。本社費を減らして営業利益は50 億円弱を保つが、税と少数株主への流出が先に出て、純利益は10 億円に届かない。工場への資金保証の負担を抱えたまま、配当は小さく、還元は14 億円にとどまる。優良さは薄れるが、事業そのものは続く。
- ヘルスケア(通販・法人向け素材・化粧品受託):数量 146(購入顧客・取引先の延べ数(万人換算の推定))× 価格 3.90(1 人あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 569 億円・営業利益 54 億円。営業利益率9.5%
- バイオ燃料(SAF・HVO):数量 6.5(燃料の取扱量(万キロリットル))× 価格 360(1 リットルあたりの値段(円・名目))→ 売上 234 億円・営業利益 12 億円。営業利益率5.0%(持分法益を含む)
- その他(肥料・飼料・研究):数量 3.0(肥料・飼料の販売量(万トン、推定))× 価格 9.60(1 トンあたりの値段(万円・名目、推定))→ 売上 29 億円・営業利益 −1 億円。営業利益率-3.0%
倍率:ROE 3% で資本コストを大きく下回り、新しく投じるお金の稼ぎは資本コスト未満。稼ぐ力(純利益÷資本コスト、11.8 倍)の約 7 割(8.5 倍)に置き、中立の PBR を下回るようにした。
確率:国内の通販は広告費がかさむ割に顧客が増えにくい業態で、燃料工場は 13 億ドル規模の新設案件。どちらかがつまずく可能性は小さくない。ここ 2 年の黒字化が一時的な改善にとどまる形を厚く見た。
悲観 18% 通販の客離れと燃料工場の失敗が重なり、優良さを失う 利益 −26 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 44 円62 億円
健康食品の規制や品質をめぐる事故で通販の顧客が離れ、広告費を増やしても売上が戻らない。ヘルスケアの売上は440 億円まで縮み、営業利益率は3%に落ちる。マレーシアの燃料工場は原料の廃食油の調達難と製品価格の下落で採算が悪化し、出資の評価を大きく切り下げる。会社が行った銀行保証も重荷になり、財務の余裕が消える。本社費を削っても営業利益は赤字になり、最終赤字が続く。キューサイの利益が細れば少数株主への流出も減るが、それ以上に稼ぎが細り、持ち分の価値も下がる。配当は払えず、石垣島の設備や事業の一部の売却、持分の整理を迫られる。かつての「黒字体質に転換した健康食品会社」という評価は外れ、再建途上の会社として扱われる10年になる。
- ヘルスケア(通販・法人向け素材・化粧品受託):数量 128(購入顧客・取引先の延べ数(万人換算の推定))× 価格 3.45(1 人あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 442 億円・営業利益 13 億円。営業利益率3.0%
- バイオ燃料(SAF・HVO):数量 5.0(燃料の取扱量(万キロリットル))× 価格 330(1 リットルあたりの値段(円・名目))→ 売上 165 億円・営業利益 −7 億円。営業利益率-4.0%(持分法益を含む)
- その他(肥料・飼料・研究):数量 2.5(肥料・飼料の販売量(万トン、推定))× 価格 9.00(1 トンあたりの値段(万円・名目、推定))→ 売上 23 億円・営業利益 −2 億円。営業利益率-8.0%
倍率:純損失が続き ROE は資本コストに届かないため、ためた利益は額面未満の価値と見る。現在の自己資本 309 億円に 0.2 倍を掛けた。通販の顧客基盤と石垣島の設備、キューサイ持分の売却価値を税後で見込んだ水準で、純利益が赤字なので稼ぐ力の側からは出さない。
確率:機能性表示食品の規制強化や品質問題で通販の信頼が傷つく場合と、燃料の値段が下がって新設工場の採算が合わなくなる場合が重なる。会社が工場の融資に保証を出している構造もあり、18% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ヘルスケア(通販・法人向け素材・化粧品受託)
自社通販の健康食品・化粧品、キューサイの青汁とコラーゲン、サティス製薬の化粧品受託、藻類素材の法人販売。
| 数量購入顧客・取引先の延べ数(万人換算の推定) | 価格1 人あたりの年間売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 157 | 3.00 | 470 | 55 |
| 10 年後 中立 | 160 | 4.02 | 643 | 77 |
取り方:ヘルスケア売上 470 億円を、延べ約 157 万人の購入者が年に平均 3 万円ほど使うと置いて分けた(推定。定期顧客と EC モールの購入者、法人取引先を万人に換算)。数量は国内の人口減と高齢化で毎年少しずつ縮み、海外・法人向け・腎臓病領域の上乗せが補う形で、中立は 10 年でほぼ横ばい。価格は物価並みに上がる(10 年 1.34 倍)。市場の大きさ:国内の健康食品は出荷額ベースで約 9,100 億円(矢野経済研究所、2025 年度)。小売ベースの売上 470 億円とは基準が違うので単純比較はできないが、大手食品・医薬品メーカーも競う中で、シェアは 1 割に届かない。
バイオ燃料(SAF・HVO)
マレーシア工場の 15% 出資に伴う燃料の引取りと持分利益、国内での HVO 販売。
| 数量燃料の取扱量(万キロリットル) | 価格1 リットルあたりの値段(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.4 | 300 | 11 | −3 |
| 10 年後 中立 | 8.5 | 402 | 342 | 29 |
取り方:今は国内の HVO 販売が中心で、売上は約 11 億円、取扱量は年に 0.36 万キロリットルの水準(推定)。2028 年下期にマレーシア工場が動けば、72.5 万キロリットルの 15% で約 10 万キロリットルを扱える(会社の説明)。値段は 1 リットルあたり三百円前後(会社の説明)。稼働後の利益は工場の持分利益と引取りの採算を合わせて営業利益側に入れた。市場の大きさ:SAF と HVO は世界で成長途上で、フィンランドのネステが首位。日本の制度は限定的。
その他(肥料・飼料・研究)
大協肥糧の肥料・飼料の販売、研究受託など。会社は M&A で拡大する方針。
| 数量肥料・飼料の販売量(万トン、推定) | 価格1 トンあたりの値段(万円・名目、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2.8 | 8.00 | 23 | −5 |
| 10 年後 中立 | 3.5 | 11 | 38 | 1 |
取り方:その他事業の売上 22.6 億円を、年 2.8 万トンの肥料・飼料が 1 トンあたり 8 万円ほどで売れていると置いて分けた(推定。研究受託を含む)。数量は国内の農業人口の減で横ばい、M&A を使わない中立は小さな伸び。価格は物価並み。市場の大きさ:国内の肥料・飼料は大手商社系と農協系が主役で、ユーグレナは小さな参加者。
リスクと懸念
少数株主と税への流出
キューサイの持分は 49% で、利益の半分近くを出資者と税が持っていく。営業利益が増えても、増えた分の約半分は株主に残らない。本社側の研究や燃料の費用には税の盾が効かず、純利益は営業利益よりずっと細る。
マレーシア工場の採算と保証
13 億ドルの新設工場で、2028 年下期の稼働を予定する。再生燃料の値段は廃食油の相場や規制で大きく動く。ユーグレナは小さな出資者で運営は他社が担い、工場の銀行融資に出資比率分の保証を、契約上は最大 173 百万米ドル出している。
通販の広告依存
通販は広告をやめれば新規客が止まる。国内の健康食品市場は縮みつつあり、食品大手や EC モールとの競争も厳しい。広告の効きが落ちれば、ここ 2 年の黒字化は簡単に崩れる。
機能性表示と品質の規制
紅麹の事故以降、健康食品の安全と表示への目は厳しい。業界の誰かが起こした事故でも、信頼が揺らぐ。腎臓病向けのメディカルフードに踏み出す計画は、薬事の規制とも向き合う必要がある。
目標の未達の歴史
2030 年に売上 1,000 億円という目標のうち、400 億円は燃料とアグリの新事業に頼る。過去の目標は何度も後ろにずれた。通期の最終黒字は 2017 年 9 月期が最後である。
転換社債による株の希薄化
2023 年に約 78 億円の転換社債と新株を発行しており、転換が進めば株数が増える。残高は確認できておらず、既存の株主の取り分が薄まる余地がある。
今後の分かれ目
- 通販の定期顧客が減少に転じたら
- 広告費をかけても売上が伸びない形に入ったことを意味する。ヘルスケアの数量を下げ、悲観の筋書きに重みを移す。
- キューサイの持分を買い増して、少数株主の取り分が減ったら
- 同じ営業利益から株主に残る利益が増える。純利益の比率を上げ、楽観寄りに見直す。
- マレーシア工場の稼働が 2028 年下期より遅れたら
- 燃料の持分利益の開始が後ろにずれ、保証の負担が先に来る。やや悲観の筋書きに寄せる。
- SAF・HVO の値段が軽油の相場とともに下がったら
- 燃料の利益率の前提が崩れる。燃料の利益を半分以下に見直す。
- 会社が株主還元の方針を示したら
- 配当の水準と継続性を、還元の前提に反映する。ただし利益が少数株主に流れる構造は変わらない。
- 機能性表示食品の規制が強まったら
- 通販の広告での訴求が難しくなる。ヘルスケアの数量と利益率を下げる。
見ておくもの
- キューサイを含むヘルスケアの営業利益率(償却前 19% の維持)
- 親会社株主に帰属する純利益が通期で黒字になるか
- マレーシア工場の稼働時期と SAF・HVO の価格
- 工場向け保証の残高と追加の出資・貸付
- 転換社債の残高と株数の変化
倍率と資本コストの決め方
今の株価は見ず、セグメントごとに数量と価格を 10 年先まで積み上げて利益を出した。ヘルスケアは人口減で数量が横ばい、価格は物価並み(1.34 倍)。燃料は会社の見込みの半分以下の利益率を中立に置いた。純利益は、営業利益からキューサイの少数株主と税の流出を引いて出した。倍率は資本コスト 8%、ROE が資本コストを下回る中立では、式の値の約 8 割に置いた。今の時価総額と比べたのは最後で、中立の 10 年後の時価総額が今より低く出たのは、今の値段が燃料の成功をかなり織り込んでいるため。指示書の領域(調味料・加工食品)と事業が違うため、同領域の会社とは資本コストの共通部分だけ揃え、quality の借金と循環で 1% 高く置いた。新リース会計基準は、通販中心で店舗の賃借が小さいため影響は軽い。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→15.37 倍・やや楽観 PER 10.8→13.95 倍・中立 PER 9.4→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0% を足した。事業が傾いているわけではないので上乗せは置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。