結論
JFLAホールディングスは、牛乳などの乳製品、だしつゆなどの発酵調味料、日本酒を作る生産事業を柱に、食品卸と外食(ベーグル店など)を持つ売上 650 億円の食品グループだ。筆者の結論は、今の値段は事業の稼ぐ力に対してかなり高い、というものだ。一番の理由は、営業利益率が 2% 台と薄いうえに、純有利子負債が 137 億円と時価総額の 1.8 倍もあることにある。
2023 年に地域経済活性化支援機構(REVIC)の再生支援を受けた。20 億円の優先株を引き受けてもらい、債権放棄はなく、返済の先送り(リスケ)で立て直している。再生計画の 2 期目の 2026 年 3 月期は、営業利益が 15 億円と過去最高になった。生産事業が 25% 伸びて牽引した。
ただし数字を割り引いて見る必要がある。流通と外食はほぼ利益が出ていない。乳製品の国内需要は人口減で縮む。2022 〜 2023 年度には過年度の決算訂正が 5 件あった。借入には、営業損益が 2 期続けて赤字にならないことなどの財務制限条項が付く。
筆者は、再生は進んでいるが、株主の取り分は薄いと見る。悲観の筋書きでは普通株の価値がほとんど残らない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「安く見える理由が山ほどある」。株価は純資産の 1 倍を割らないが、その純資産の中身は事業で稼いだ分に乏しく、優先株と借入に支えられている。
見るべきは、投じた資本が資本コストを超えて稼ぐかどうかだ。この会社の ROE は 10 年の中央値でマイナスだった。直近は 8% に戻ったが、資本コストの 9.5% には届かない。
借金が重い会社は、経営の自由度がない。金利が上がれば利益が消え、財務制限条項に触れれば支援を求めることになる。過去の決算訂正を考えると、数字を信じる前に確かめる手間もかかる。
安全域は薄い。悲観の筋書きでは、借金と優先株を返したあとに株主に残る額が小さい。わからない部分が多く、高い値段は払えない。店舗の家賃は固定の約束で、数字は未確認だが、借金と同じ重みで見るべきだ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は三つの事業だ。
生産事業は売上 441 億円で全社の 67%。牛乳・脱脂粉乳・ヨーグルトなどの乳製品(九州乳業など)と、業務用のだしつゆ・しょうゆ・日本酒などの発酵調味料・酒類(盛田など)を作る。前期の営業利益は 21.5 億円で、全社の利益はほぼここから出る。
流通事業は売上 139 億円。ホテルやレストランなどに食品を卸す。営業利益は 1.7 億円で、利益率は 1% ほど。
販売事業は売上 73 億円で、ベーグル店 BAGEL & BAGEL やクレープ店などを運営する。生産事業の製品を店で売る役割も持つ。前期の営業利益は 0.13 億円と、ほぼゼロだった。出店は都市部の駅や商業施設が中心で、家賃の負担が重い。
全社の調整で本社費などが 8.4 億円引かれる。海外売上比率は 11%。社名は 2018 年に今の名前に変わり、もとは飲食店運営会社として 1995 年に生まれた。2025 年にはアスラポートを吸収合併した。事業の中心は国内で、主力の乳製品は九州乳業などの子会社が担う。
優良さと弱いところ
優良さは「並みの下」と筆者は見る。強みは、生産事業が乳製品と調味料という生活必需品に根ざし、値上げが通りやすいことだ。前期は生産の営業利益が 25% 伸び、再生計画の成果が出ている。
弱みは四つある。第一に、利益率が薄い。営業利益率は 2.3% で、10 年で最高でも 6.3%。第二に、借金が重い。純有利子負債は自己資本の 1.7 倍、営業利益は支払利息の 3 倍強しかない。第三に、外食と流通がほとんど利益を生まない。第四に、ガバナンスだ。2022 〜 2023 年度の過年度決算訂正が 5 件あった。
経営は REVIC から取締役を受け入れ、子会社 12 社の重要事項で REVIC の事前承諾が要る。管理は強まったが、自由度は小さい。ROE は 8% に回復したものの、10 年の中央値はマイナスで、資本コストを超えたことはない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業界の景色は、国内の食品需要の縮小と、コストの上昇だ。人口が減る日本で、牛乳などの乳製品は需要が緩やかに縮む。酪農家の廃業で生乳の調達基盤も細り、原材料高と物流費高が続く。業者は値上げと加工品へのシフトで売上を保ってきた。
競合は、明治、森永乳業、雪印メグミルクの大手と、地域の乳業・調味料メーカー、プライベートブランドだ。JFLA の生産事業は、業務用や地域の中堅という立ち位置で、価格交渉力は限られる。
外食は人件費と家賃の上昇が直撃する業態だ。インバウンドは追い風だが、ベーグルのような単一ブランドは流行に左右される。流通は大手卸との価格競争が激しい。
10 年の見通しは、数量は緩やかに減り、価格は値上げの定着で物価並み。利益率は 2% 台のまま推移する姿が中心だ。再生計画の効果で 4% 台に乗る可能性はあるが、人件費と金利の上昇がそれを打ち消す。食品の卸売でも、取引先の統合や物流費の上昇が薄利に拍車をかけ、規模のない中堅には厳しい環境だ。発酵調味料や酒は嗜好品で、日本酒の国内消費は長期に減り、輸出と業務用の拡大が頼りになる。
資本政策と M&A
還元は小さい。普通株の配当は目立たず、REVIC が持つ優先株への配当(年 6%、約 1.2 億円)が先に出る。自社株買いはない。
資金は借入に頼る。シンジケートローン 45 億円は 2026 年 8 月に期日を迎える借り換え向けで、金利は TIBOR に 3.6 〜 4.4% を上乗せしている。担保は子会社の不動産と株式。2024 年 1 月に REVIC へ A 種種類株式 20 億円を発行し、取締役を受け入れた。
再生計画は、価格の見直し、不採算事業の整理、成長領域への設備投資が柱だ。M&A はアスラポートの吸収合併など、再編の段階にある。10 年以内の買収・TOB の確率は 1 割強という試算がある。REVIC の出口(優先株の買い戻しや第三者への売却)は、この会社の最大の資本政策の論点だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
再生は着実に進んでいる。前期の営業利益は 15 億円で過去最高、生産事業は 25% 伸びた。2026 年 4 〜 6 月も売上・営業利益・純利益が前年を上回った。価格の見直しが定着し、不採算事業の整理が進む。
自己資本比率は 18% から 20% に改善し、1 株純資産も伸びた。シンジケートローンの期日を迎えても、REVIC という強い後ろ盾があり、借り換えは通りやすい。
生産事業は乳製品と調味料という生活必需品で、景気に左右されにくい。値上げが通れば、利益率は 5% 台に乗る。外食もインバウンドで堅調だ。
借入が減れば、利払いの負担が下がり、純利益は営業利益より速く伸びる。普通株への配当も始まる。10 年たてば、自己資本は倍以上になり、ROE は 11% を超える。
再生計画の主役は REVIC が送り込んだ経営人材で、管理の質は確実に上がった。過去の訂正を出し切った今は、数字の信頼も回復に向かう。
慎重な見方
営業利益率は 2% 台で、10 年の最高でも 6.3% にすぎない。流通と外食は、ほぼ利益を生まない。生産事業の利益に全てが依存する構造だ。
借金は純有利子負債 137 億円で、時価総額の 1.8 倍。営業利益は支払利息の 3 倍強しかない。借り換えの金利は TIBOR に 3.6 〜 4.4% を上乗せしていて、金利上昇は利益を直撃する。財務制限条項に触れれば、再び支援を求めることになる。
REVIC の優先株 20 億円は、配当 6% を払い続け、償還も控えている。普通株の取り分は、そのあとだ。2022 〜 2023 年度には過年度の決算訂正が 5 件あり、数字の信頼性にも疑問が残る。
乳製品は人口減で縮む。外食は人件費と家賃が上がる。ROE の 10 年の中央値はマイナスで、一度も資本コストを超えていない。8% への回復は 1 年の話にすぎない。
前期の第 4 四半期は純損失で、年間の黒字は期の前半に作った分が支えている。再生支援の枠組みでも、普通株の取り分は最後に回る。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は、再生計画の 2 年間の実績に根ざしている。慎重な言い分は、借金の重さと利益率の薄さ、過去の決算訂正に根ざしている。借金の重さのほうが事業の改善より重いと見て、確率を悲観側に寄せた。
やや悲観と悲観を合わせて 47%、やや楽観と楽観で 20%、中立が 33%。生産事業の好調は認めるが、金利上昇と数量の減少がそれを打ち消すと判断した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 202 円97 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 22 円11 億円)。 今の値に割り戻すと 91 円44 億円、今との差 −41.9%、 期待の年率 +3.6%(資本コスト 10.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 705 円340 億円 | 73 円35 億円 | +395.1% | +17.3% | 39 円19 億円 |
| やや楽観 | 15% | 445 円215 億円 | 46 円22 億円 | +212.7% | +12.1% | 74 円36 億円 |
| 中立 | 33% | 256 円124 億円 | 25 円12 億円 | +79.2% | +6.0% | 93 円45 億円 |
| やや悲観 | 30% | 35 円17 億円 | 10 円5 億円 | −70.9% | −11.6% | 14 円7 億円 |
| 悲観 | 17% | 26 円13 億円 | 0 円0 億円 | −83.5% | −16.5% | 4 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 202 円97 億円 | 22 円11 億円 | +42.3% | +3.6% | 223 円108 億円 |
今の株価時価総額 157 円76 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 10.0% を下回るほど割高。
楽観 5% 生産の値上げが定着し、借金が減って利益率が 4% に乗る 利益 23 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 705 円340 億円
生産事業が値上げを定着させ、営業利益率が 6% 台に乗る。流通は取引先を絞って採算が改善し、外食は不採算店を閉めて黒字になる。借入は返済が進み、利払いは大きく減る。優先株は償還されるか、配当を払い続けても余裕がある。普通株への配当も始まり、利益の 3 割ほどを出す。自己資本は 170 億円に近づき、ROE は 13% に乗る。ここまで行けば、はじめて資本コストを超える稼ぎになる。過去の最高の営業利益率は 6.3%(2015 年)で、全社の 4% 台は十分に高い水準だ。売上は今の 1.4 倍の 900 億円台に伸び、再生計画の卒業が現実になる。
- 生産(乳製品・発酵調味料・酒類):数量 441(販売の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.38(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 608 億円・営業利益 40 億円。値上げが定着
- 流通(食品・飲料の卸):数量 145(販売の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.32(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 192 億円・営業利益 5 億円。採算改善
- 販売・外食(BAGEL&BAGEL ほか):数量 76.8(販売の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.38(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 106 億円・営業利益 4 億円。不採算店を閉め黒字
- その他:数量 3.0(販売の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.34(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。小さい
倍率:事業の純利益 23 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 25.2% が k 10.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 17.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.88 倍、時価総額 294 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:再生計画が想定以上に進み、乳製品と調味料の値上げが通り、外食も黒字に戻る必要がある。売上のわりに利益が薄い会社なので、利益率が 4% 台に乗る筋書きは確率が低い。
やや楽観 15% 再生計画が順調に進み、利益率が 3% 台に乗る 利益 15 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 445 円215 億円
生産事業の値上げが通り、営業利益率は 5% 台半ばになる。流通は採算が少し戻り、外食は不採算店の整理が終わって小さな黒字になる。借入が減り、利払いの負担も下がる。優先株の配当は続けつつ、普通株にも少額の配当を出す。外食はインバウンドの追い風を受けて既存店が堅調に推移し、新しい出店も慎重に再開する。自己資本は 140 億円ほどで、ROE は 11% 近くになる。ただし売上の伸びは名目で年 3% に届かず、数量は緩やかに減る。営業利益は 28 億円ほどで、前期の 2 倍近いが、金利の上昇が利益の伸びを部分的に削る。
- 生産(乳製品・発酵調味料・酒類):数量 427(販売の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.35(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 577 億円・営業利益 32 億円。値上げが通る
- 流通(食品・飲料の卸):数量 136(販売の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.31(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 178 億円・営業利益 3 億円。採算が少し戻る
- 販売・外食(BAGEL&BAGEL ほか):数量 73.1(販売の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.35(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 99 億円・営業利益 3 億円。整理が終わる
- その他:数量 3.0(販売の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.34(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。小さい
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.7% が k 10.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.9 倍。全体の PER 11.86 倍、時価総額 180 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:再生計画の 2 期目で、生産事業の利益はすでに前期 25% 伸びている。この流れが続けば到達できる姿だが、乳製品の数量減と外食の不採算が重い。
中立 33% 利益率は 2% 台のまま、借金を返しながら薄く稼ぐ 利益 9 億円 · PER 10.3 倍 · 株価時価総額 256 円124 億円
生産事業は乳製品の数量が緩やかに減り、価格は物価並みに上がる。発酵調味料は横ばい。営業利益率は 4.5% 前後で、前期の 4.9% を少し下回る。流通は採算が低いまま、外食は不採算店の整理で黒字がかろうじて出る。本社費は物価で増える。借入の金利が 3.5% に上がり、純利益は営業利益の半分強に縮む。優先株の配当を払いつつ、普通株の配当は小さく、自己資本は 125 億円に増える。ROE は 7% 台で資本コストに届かない。売上は 820 億円ほどで年 2% の伸び、営業利益は 19 億円と前期の 1.2 倍にとどまる。店舗の家賃や設備の更新の費用が膨らみ、現金はそれほど残らない。
- 生産(乳製品・発酵調味料・酒類):数量 419(販売の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.32(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 553 億円・営業利益 25 億円。数量 5% 減・価格は物価並み
- 流通(食品・飲料の卸):数量 132(販売の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.30(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 171 億円・営業利益 2 億円。採算は低いまま
- 販売・外食(BAGEL&BAGEL ほか):数量 69.4(販売の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.34(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 93 億円・営業利益 2 億円。黒字がやっと
- その他:数量 3.0(販売の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.34(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。小さい
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.0% が k 10.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 10.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.3 倍。全体の PER 10.3 倍、時価総額 96 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:前期の営業利益率は 2.3%。再生計画で改善した分と、数量の減少・人件費・金利の上昇が打ち消し合う姿を中心に置く。10 年で大きく変わると見る根拠は乏しい。
やや悲観 30% 乳製品の数量減と外食の不採算が重く、利息が利益を食う 利益 2 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 35 円17 億円
牛乳と脱脂粉乳の数量が 1 割落ち、価格は物価に追いつかない。生産事業の利益率は 3.5% に下がる。外食は人件費と家賃の上昇で赤字に戻る。流通も薄利のまま。借入の返済が進まず、金利が上がって利払いが利益を食う。普通株の配当は出ず、優先株の配当を払うのが精いっぱいになる。自己資本は 75 億円ほどにとどまる。借入の財務制限条項(営業損益が 2 期連続で損失にならないこと)が重く、再び支援を頼む局面も想定される。売上は 730 億円ほどで、営業利益は 7 億円と今の半分以下になる。利益のほとんどを利息と優先株の配当が吸い取り、普通株に残る分はわずかだ。
- 生産(乳製品・発酵調味料・酒類):数量 388(販売の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.26(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 489 億円・営業利益 17 億円。数量 1 割減
- 流通(食品・飲料の卸):数量 125(販売の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.25(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 156 億円・営業利益 1 億円。薄利
- 販売・外食(BAGEL&BAGEL ほか):数量 62.1(販売の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.25(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 78 億円・営業利益 −1 億円。赤字に戻る
- その他:数量 3.0(販売の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.34(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。小さい
倍率:ROE 2.4% は k 10% を大きく下回る。稼ぐ力が資本コストから遠く、PER の上限 10.5 倍の 76% の 8 倍に置いた。EV ÷ 営業利益で見ても 21 倍と高く、借金が重いので利益の倍率だけで割安とは言えない。床は純現金ではなく売れる工場の見積もりで考えた。
確率:乳製品の国内需要は構造的に縮み、人件費と家賃は上がる。営業利益率は 1 〜 2% の薄さで、金利が 1% 動くだけで純利益が消える。この会社の脆さを素直に置いた。
悲観 17% 借入の更新に行き詰まり、再び支援を仰ぐ 利益 −12 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 26 円13 億円
乳製品の需要が落ち、外食と流通が赤字に沈む。生産事業の利益も、数量の減少と原材料高で薄くなる。営業損失が 2 期続いて財務制限条項に触れ、借入の条件が悪化する。再び支援機構や取引銀行に支援を求め、普通株は大幅な希薄化を受ける。優先株の償還は先送りされ、配当も払えなくなる。自己資本は 32 億円まで減る。価値は稼ぐ力ではなく、売れる資産の見積もりで決まる。外食の店舗は閉鎖に追い込まれ、家賃の解約費用もかさむ。生産事業の工場は残るが、借金を返すと株主に残る額はごくわずかだ。再生支援の枠組みが続いても、普通株の価値は大きく薄まる。配当は止まり、取引先からの信用も落ちて仕入れ条件が厳しくなる。
- 生産(乳製品・発酵調味料・酒類):数量 353(販売の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.15(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 405 億円・営業利益 2 億円。乳製品の需要減
- 流通(食品・飲料の卸):数量 118(販売の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.15(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 135 億円・営業利益 −1 億円。赤字
- 販売・外食(BAGEL&BAGEL ほか):数量 54.8(販売の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.15(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 63 億円・営業利益 −2 億円。閉店が続く
- その他:数量 3.0(販売の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.34(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。小さい
倍率:赤字で稼ぐ力では値が付かない。今の自己資本 83 億円(優先株込み)に掛ける形で、売れる資産の税後を借金で引いた残りと同じ水準の 0.15 倍に置いた。
確率:総資産に対する借金が重く、営業利益が支払利息をぎりぎり賄う水準だ。財務制限条項への抵触や、過去の決算訂正のような不祥事が重なれば、再生が振り出しに戻る。起こりうる負けとして置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
生産(乳製品・発酵調味料・酒類)
牛乳・脱脂粉乳・ヨーグルトなどの乳製品(九州乳業など)と、だしつゆ・しょうゆ・日本酒などの発酵調味料・酒類(盛田など)を作って売る。全社売上の約 67%。
| 数量販売の実質額(億円。今の値段のまま) | 価格価格指数(今を 1.0。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 441 | 1.00 | 441 | 22 |
| 10 年後 中立 | 419 | 1.32 | 553 | 25 |
取り方:生産セグメントの売上 440.7 億円・営業利益 21.5 億円(開示値、2026/03、利益は前期比 +24.6%)。数量と単価の内訳は開示がなく、売上を今の値段の販売額と置いた(推定)。
流通(食品・飲料の卸)
ホテル・レストランなどに食品を供給する卸の事業。売上の約 21%。
| 数量販売の実質額(億円。今の値段のまま) | 価格価格指数(今を 1.0。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 139 | 1.00 | 139 | 2 |
| 10 年後 中立 | 132 | 1.30 | 171 | 2 |
取り方:流通セグメントの売上 138.5 億円・営業利益 1.7 億円(開示値、前期比 -11.9%)。売上を今の値段の販売額と置いた(推定)。
販売・外食(BAGEL&BAGEL ほか)
ベーグル店 BAGEL&BAGEL やクレープ店など、消費者に食を直接売る事業。売上の約 11%。
| 数量販売の実質額(億円。今の値段のまま) | 価格価格指数(今を 1.0。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 73.1 | 1.00 | 73 | 0 |
| 10 年後 中立 | 69.4 | 1.34 | 93 | 2 |
取り方:販売セグメントの売上 73.1 億円・営業利益 0.13 億円(開示値、前期比 -88%)。売上を今の値段の販売額と置いた(推定)。店舗の家賃(固定の約束)は営業費用に入っている。
その他
上記に入らない小さな事業。
| 数量販売の実質額(億円。今の値段のまま) | 価格価格指数(今を 1.0。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.3 | 1.00 | 4 | 1 |
| 10 年後 中立 | 3.0 | 1.34 | 4 | 1 |
取り方:その他の売上 4.3 億円・営業利益 0.5 億円(開示値)。
リスクと懸念
借金と借り換え
純有利子負債は 137 億円で時価総額の 1.8 倍。シンジケートローンの金利は TIBOR に 3.6 〜 4.4% を上乗せし、金利上昇で利払いが利益を食う。財務制限条項に触れれば借入条件が悪化する。
薄い利益率と脆さ
営業利益率は 2.3%。流通と外食はほぼ利益が出ていない。数量減や人件費・金利の上昇で、営業利益は一気に消える構造だ。
乳製品の国内需要の縮小
人口減と酪農家の廃業で、牛乳などの需要と生乳の調達基盤の両方が縮む。生産事業は全社利益のほぼすべてを稼ぐため、影響が大きい。
過年度の決算訂正とガバナンス
2022 〜 2023 年度に過年度の決算訂正が 5 件あった。内部管理に課題があった履歴で、再発すれば信用が傷つく。
REVIC の優先株と出口
優先株 20 億円は年 6% の配当を払い、償還や転換の時期が普通株の価値に影響する。REVIC の事前承諾権は経営の自由度を制約する。
外食の人件費と家賃
外食は人件費と家賃の上昇が直撃する。家賃は固定の約束で、リースの未経過額は未確認だが、借金と同じ重みで見るべきだ。
今後の分かれ目
- シンジケートローンの借り換えが条件悪化なしに完了し、借入が減り始める
- 財務の不安が薄れる。やや楽観・中立の確率を上げる。
- 生産事業の営業利益率が 6% を超え、外食が黒字を保つ
- 再生が定着した証拠として、利益率の前提を引き上げる。
- 営業損益が 2 期連続の赤字に近づく、または財務制限条項への抵触が開示される
- 悲観の確率を大きく上げる。再び支援が必要になる局面も織り込む。
- REVIC が優先株を買い戻し、または第三者へ売却する
- 出口の価格と普通株への影響を確かめる。希薄化や配当の再開が焦点になる。
- 過年度の決算訂正が再び開示される
- 数字の信頼性を割り引き、悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- シンジケートローンの借り換えと純有利子負債の推移
- 生産事業の営業利益率
- 流通・販売(外食)の黒字化
- 営業利益の支払利息に対する倍率
- A 種優先株の配当・償還の動き
倍率と資本コストの決め方
4 区分の数量と価格を、販売の実質額と価格指数に分けて積んだ(区分別の売上と利益は開示値、将来の数量と利益率は推定)。k は 7.5% に quality 2.0% を足した 9.5%。倍率は式から出し、ROE が k を下回る中立以下は 1÷k を上限にその 7 〜 8 割に置いた。今の株価や過去の PER・PBR は倍率の根拠に使っていない。A 種優先株 20 億円は借金に近いものとして、年 6% の配当を普通株の利益から引いて数えた(元本の償還は織り込んでいない)。店舗の家賃は営業費用に入っており、新リース会計基準(2028 年 3 月期から)で数字の形は変わるが、10 年後の数字は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→12.88 倍・やや楽観 PER 9.5→11.86 倍・中立 PER 8.5→10.3 倍)。
資本コスト 10.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。