結論
不二家はミルキーとカントリーマアムを持つ中堅の菓子メーカーで、洋菓子店「不二家」も運営する。親会社は山崎製パンで、議決権の半分強を握る。筆者の結論は割高だ。値上げは通っているが、営業利益率が 2% 台と低く、10 年たっても今の値段を支える稼ぎにならないと見る。
売上の 7 割は製菓、3 割は洋菓子店だ。製菓は 2025 年に 1 割増えた。一方で洋菓子店は 1 年で 42 店減った。フランチャイズの店主の高齢化が止まらない。2026 年は上期の営業利益が前年の 4 分の 1 に落ち、会社予想の通期 32 億円は遠い。
不安は設備投資だ。ベトナムの新工場を含め、2025 年の投資は営業キャッシュフローの 3 倍近くに達した。差額は借入で埋め、純現金の会社は純負債の会社に変わった。
10 年後の中立は、営業利益が 50 億円台。それでも純利益は 36 億円ほどで、自己資本は還元後も積み上がる。資本の稼ぎは資本コストに届かない。
強みもある。ミルキーのような 70 年超のブランドは簡単には消えない。親会社の物流と調達も効く。この力が利益率を 5% 台まで押し上げれば、価値は今の水準に近づく。ただし筆者はその確率を低く見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず 10 年後も持ちたい事業かを問う。不二家のブランドは残る。ただ、残ることと、株主の取り分が増えることは別の話だ。
見るべきはオーナー利益、つまり再投資を引いたあとに株主へ残る利益だ。この会社は稼ぐ力が弱いのに、工場と海外へ資本を入れ続けている。営業キャッシュフローは投資を賄えず、借入に頼った。
堀は 2 つの部分に分かれる。製菓のブランドは本物で、10 年先も残る。洋菓子店は店主の高齢化で細る側にいる。両方を合わせた会社として、堀は普通の水準だ。強い堀とは呼ばない。
経営は親会社のもとで安定している。ただ資本の使い方は保守的で、自己資本が積み上がる割に利益が伸びていない。ためた利益が額面を下回る価値しか生まないなら、帳簿の自己資本は安全域にならない。
払う値段の安全域も見えない。10 年見て安く買えると言えるのは、利益率が 5% を超える道筋が見えた時だ。今はそれが見えない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は 2 つある。
製菓事業は売上の約 7 割を占める。ミルキー、ペコちゃんの飴、カントリーマアム、ルックなどを作り、スーパー・コンビニ・ドラッグストアへ卸す。売り先は食品卸と大手小売で、棚を確保する営業力が命になる。山崎製パンの営業網と物流を共同で使えることが、2008 年の資本提携以来の支えだ。飲料は売上が 1 割以上落ち、足を引っ張っている。
洋菓子事業は売上の約 3 割。ショートケーキを売る「不二家」の店で、2025 年末は 850 店。直営は 203 店で、残りはフランチャイズだ。直営店の家賃と人件費は固定費で、売上が落ちても減らない。フランチャイズからは売上の約 5% のロイヤリティが入る。ここ数年は店主の高齢化と後継者不足で、店が減り続けている。会社は 2024 年秋からペコちゃんのドーナツ専門店を出し、若い客を呼び込もうとしている。
その他は物流や不動産などで、売上は 36 億円ほど。
海外は小さい。中国の杭州工場は景気の低迷で売上が落ちた。丸紅と組んだベトナムでは 2025 年 11 月に新工場が動き出し、カントリーマアムを作る。米国法人も 2024 年に立ち上げた。成長の芽ではあるが、稼ぎに育つには時間がかかる。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みはブランドにある。ミルキーは 1951 年に出た息の長い商品で、ペコちゃんの認知は国民的だ。ただしブランドが強いことと、値段を自由に決められることは別だ。営業利益率は過去 10 年で 1〜4% にとどまる。同じ領域の大手より低く、値決め力が強いとは言いにくい。
資本の効率は低い。ROE は過去 10 年の中央値で 3% ほど。2017 年は一過性の利益で一度だけ跳ねたが、普段は 2〜6% だ。純資産の大半は工場・店・土地・投資有価証券で、稼ぎの割に厚い。
財務は数年前まで純現金だったが、2025 年に純負債へ転じた。借入で海外工場を建てているためだ。自己資本比率は 57% と、今はまだ高い。
経営には傷の歴史がある。2007 年に期限切れ原料の問題で信用を落とし、2008 年に山崎製パンの傘下に入った。立て直しは進んだが、親会社が議決権の 54% を握る。少数株主の目では、親会社に有利な取引条件になるおそれと、完全子会社化の時の値付けが気にかかる。
筆者がいちばん気にするのは洋菓子店の縮小だ。利益は薄く、店が減るほど固定費の重さが残る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の菓子市場は金額では伸びている。2025 年の小売規模は 4 兆円を超え、前年から 5% ほど増えた。ただ中身は値上げだ。数量は人口の減少とともに細る。
原材料は荒れている。カカオ、小麦、砂糖、油脂、包装資材がそろって上がり、2026 年に入っても値上げが続く。物価が毎年 3% 上がる世界では、値上げ自体は受け入れられやすい。それでも上げる頻度が増えるほど、客は安い自社ブランドや大容量品へ逃げる。
競争は上位の寡占だ。ミルキーの相手はロッテ・明治・森永製菓・江崎グリコ。カントリーマアムはブルボンやロッテと棚を争う。洋菓子店ではコージーコーナーやシャトレーゼが相手で、シャトレーゼは工場直売の値ごろ感で押してくる。ケーキの需要はコンビニやスーパーの商品にも分散する。
この中で不二家は、ブランドはあるが規模は中堅という位置にいる。大手のように値上げを一気に通す力は弱く、原材料高が先に利益を削りやすい。2026 年上期の減益も、この弱さと無縁ではないだろう(要因の詳細は未確認)。
今後の分かれ目は 3 つだ。値上げのあとに数量が戻るか。海外工場が採算に乗るか。洋菓子店の減少が止まるか。
資本政策と M&A
還元は控えめだ。配当は 2021 年以降同じ水準で据え置かれ、純利益の 4 割前後にあたる。株数は変わらず、自社株買いはない。
いまは還元より設備投資が先だ。2025 年は海外工場などで投資が営業キャッシュフローの 3 倍近くに膨らみ、借入で埋めた。純負債は 51 億円まで増えた。金利が上がる世界で、この借入の利払いは利益を少し削る。
M&A では、買う側より買われる側の話が中心になる。親会社の山崎製パンは議決権の 54% を持つ。完全子会社化の可能性はつねにあるが、その価格は親会社が主導する。本質価値の計算には入れない。
政策保有株は、イオンやセブン&アイなど取引先の株を持つ。会社は原則持たない方針で、三菱食品は全株を売った。売却益が還元や投資に回れば、資本の効率を少し上げる。
店の家賃は毎年必ず出ていく約束だ。新リース会計が入ると、純負債は見た目で増える。
株主優待は、100株以上で3千円相当(0.5千円券6枚)の自社店舗優待券。会社は優待の費用を開示していないため、株主 約3万人(券の利用率約6割×原価率約45%)から年2.4億円と推定した。優待は株主が受け取る現物の還元なので、10年の還元に年額×10年を、中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5の係数で足した(費用は販管費として利益から引き済みで、自己資本の流れには入れない)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
不二家のブランドは、値上げの時代にこそ効く。ミルキーとカントリーマアムは指名買いされる商品で、2025 年の製菓は 1 割増えた。原材料高を価格に移せている証拠だ。
利益率には伸びしろがある。営業利益率は 2% 台で、同じ領域の大手の 3 分の 1 ほどにすぎない。山崎製パンの営業・物流・調達をさらに深く共有すれば、固定費は下がる。2021〜2022 年には 4% 台まで出ている。
海外は仕込みの段階だ。ベトナムの新工場は 2025 年 11 月に動き出し、米国法人も立ち上がった。アジアで日本の菓子の需要は伸びている。国内の人口減を、海外の数量が穴埋めする。
洋菓子店はドーナツ専門店のような新業態で若返りが始まった。店が減っても、残る店の売上が伸びれば利益率は上がる。
これらがそろえば、営業利益は 90 億円規模に届き、純利益は 60 億円台になる。今の時価総額に近づく。親会社が完全子会社化に動くなら、少数株主はさらに報われる。
慎重な見方
値上げは 1 回だけ効く。繰り返すと客は離れる。2026 年の上期は、売上が 5% 近く増えたのに営業利益は 4 分の 1 に落ちた。売れても儲からない構造が出ている。
洋菓子店は 1 年で 42 店減った。直営の家賃と人件費は固定で、店が減るほど 1 店あたりの負担が重くなる。フランチャイズの後継者は見つからない。10 年で 700 店前後まで細るのが自然だ。
設備投資は営業キャッシュフローの 3 倍近い。ベトナムの工場が採算に乗る保証はなく、中国はすでに不振だ。借入が増え、金利が 3% 台に上がると利益が削られる。
ROE は過去 10 年の中央値で 3%。10 年後も 5% に届かず、資本コストを下回り続ける。この水準でためた資本は、株主にとって額面分の値打ちもない。
親会社は少数株主の味方ではない。完全子会社にする時の価格は、親会社が決める。事業の中身も資本の効率も、今の時価総額を支えられない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。製菓のブランドは本物だが、利益率は長く 4% を超えられず、洋菓子店は縮み、投資は借入頼みで進んでいる。強気の筋書きは、利益率が過去の最高を超える前提が要る。そのため確率は中立に 4 割弱を置き、やや悲観と悲観に合わせて 4 割弱を回した。ただブランドと親会社の物流網は簡単には崩れない。悲観は 1 割強にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,448 円373 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 545 円141 億円)。 今の値に割り戻すと 1,022 円263 億円、今との差 −59.2%、 期待の年率 −2.3%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 3,005 円775 億円 | 869 円224 億円 | +54.6% | +4.5% | 232 円60 億円 |
| やや楽観 | 18% | 2,309 円595 億円 | 733 円189 億円 | +21.4% | +2.0% | 548 円141 億円 |
| 中立 | 38% | 1,721 円444 億円 | 597 円154 億円 | −7.4% | −0.8% | 881 円227 億円 |
| やや悲観 | 26% | 546 円141 億円 | 458 円118 億円 | −59.9% | −8.7% | 261 円67 億円 |
| 悲観 | 12% | 470 円121 億円 | 124 円32 億円 | −76.3% | −13.4% | 71 円18 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,448 円373 億円 | 545 円141 億円 | −20.4% | −2.3% | 1,993 円514 億円 |
今の株価時価総額 2,505 円646 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 6% 山崎製パンとの一体運営が深まり、海外が育って利益率が 5% 台に乗る 利益 64 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 3,005 円775 億円
2036 年、不二家は山崎製パンの営業・物流・調達をほぼ一体で使い、製菓の利益率が 5% 台に乗る。ミルキーとカントリーマアムは値上げの後も指名買いが続き、数量を保つ。ベトナム工場は東南アジア向けの輸出拠点として軌道に乗り、米国も小さいながら黒字になる。
洋菓子店は、ドーナツ専門店などの新業態と改装で 1 店あたりの売上が実質で伸びる。店の数は 800 店ほどで下げ止まる。フランチャイズの後継は、直営への切り替えと条件の見直しで確保される。
親会社との関係は少数株主に不利にならず、還元は利益の 5 割ほどまで高まる。ただ、ここまで行っても ROE は 8% 弱で、高い資本効率の会社ではない。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年2.4億円×10年×1.0=24億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 製菓事業:数量 11.8(出荷数量(億個相当))× 価格 107(1 個相当の卸単価(円))→ 売上 1,265 億円・営業利益 70 億円。海外と新商品で数量が 1.12 倍、利益率が改善
- 洋菓子事業:数量 800(店舗数(店))× 価格 0.55(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 442 億円・営業利益 18 億円。800 店で下げ止まり、1 店売上が実質 1.1 倍
- その他:数量 11.0(取引・契約の規模(百件相当))× 価格 4.89(1 単位あたり売上(億円))→ 売上 54 億円・営業利益 3 億円。物流の共同化で小幅に増
倍率:事業の純利益 64 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 774 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率が過去の最高(4% 台)を大きく超える筋書きで、洋菓子店の縮小も止まる必要がある。条件が多く、確率は低く置いた。
やや楽観 18% 値上げが定着し、海外工場が採算に乗って利益率が 4% 台に回復 利益 49 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,309 円595 億円
2036 年、製菓は海外の増分で数量を 1.06 倍に保ち、利益率は 4% 台半ばまで戻る。2021〜2022 年に出せた水準で、原材料高を価格に移す力と共同調達が支える。
ベトナムの工場は稼働が上がり、国内向けの供給も補う。洋菓子店は 760 店ほどまで減るが、残る店の売上は新業態と改装でわずかに実質で伸びる。
営業利益は 70 億円弱。純利益は 49 億円ほどで、還元は 4 割強に上がる。ROE は 6% 台にとどまり、資本コストには届かない。会社として悪くはないが、資本の稼ぎが弱いという根本は変わらない。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年2.4億円×10年×1.0=24億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 製菓事業:数量 11.1(出荷数量(億個相当))× 価格 107(1 個相当の卸単価(円))→ 売上 1,194 億円・営業利益 54 億円。数量 1.06 倍、利益率 4.5%
- 洋菓子事業:数量 760(店舗数(店))× 価格 0.53(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 401 億円・営業利益 13 億円。760 店、1 店売上が実質 1.05 倍
- その他:数量 10.5(取引・契約の規模(百件相当))× 価格 4.89(1 単位あたり売上(億円))→ 売上 51 億円・営業利益 2 億円。小幅増
倍率:事業の純利益 49 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.3% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 595 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2021〜2022 年に 4% 台を出した実績があり、親会社との共同運営も効く。回復の道筋は現実的だが、洋菓子店の縮小が重しになる。
中立 38% 値上げで金額は伸びるが、洋菓子店の縮小で利益率は 3% 台にとどまる 利益 37 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,721 円444 億円
2036 年、製菓は国内の人口減で数量が横ばい、海外の増分で穴埋めする。値段は物価並みに上がり、売上は 1,100 億円台になる。利益率は共同調達と工場の効率化で 3% 台半ばまで改善するが、2021 年の水準には届かない。
洋菓子店は 720 店まで減る。直営の家賃と人件費が重く、店が減る分の固定費は残る。ドーナツなど新業態は若い客を呼ぶが、減少を止めるほどの力はない。
営業利益は 50 億円台、純利益は 36 億円ほど。配当は少しずつ上がり、還元は 10 年で 130 億円ほど。自己資本は 750 億円近くに積み上がり、ROE は 5% 弱で資本コストを下回る。親会社のもとで会社は続くが、株主の取り分は小さい。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年2.4億円×10年×1.0=24億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 製菓事業:数量 10.5(出荷数量(億個相当))× 価格 107(1 個相当の卸単価(円))→ 売上 1,126 億円・営業利益 41 億円。数量横ばい、利益率 3.6%
- 洋菓子事業:数量 720(店舗数(店))× 価格 0.50(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 361 億円・営業利益 9 億円。720 店、1 店売上は物価並み
- その他:数量 10.0(取引・契約の規模(百件相当))× 価格 4.89(1 単位あたり売上(億円))→ 売上 49 億円・営業利益 2 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 37 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.9% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 444 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:製菓の底堅さと洋菓子店の縮小を差し引いた、いちばん起こりやすい姿。強気の 4% 台には届かず、2% 台からは少し上がると見て中心に置いた。
やや悲観 26% 洋菓子店が 600 店まで縮み、値上げ疲れで製菓の数量も減る 利益 20 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 546 円141 億円
2036 年、値上げのたびに客が離れ、製菓の数量は 0.92 倍まで減る。大手が値上げを先に通し、不二家は安売りの棚で押される。利益率は 2% 台半ばに戻る。
洋菓子店は 600 店まで縮む。フランチャイズの廃業が続き、直営は家賃を払いながら客数が減る。利益はほぼ出ない。ベトナムと米国の投資は、回収が遅れて借入の利払いが利益を削る。
営業利益は 30 億円足らず。純利益は 20 億円ほどで、今とほぼ同じ水準にとどまる。物価で金額は増えても、実質の稼ぎは減っている。ROE は 3% 弱で、資本コストの半分にも満たない。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年2.4億円×10年×0.8=18億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 製菓事業:数量 9.7(出荷数量(億個相当))× 価格 107(1 個相当の卸単価(円))→ 売上 1,037 億円・営業利益 26 億円。数量 0.92 倍、利益率 2.5%
- 洋菓子事業:数量 600(店舗数(店))× 価格 0.50(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 301 億円・営業利益 2 億円。600 店、家賃が固定費として残る
- その他:数量 9.0(取引・契約の規模(百件相当))× 価格 4.89(1 単位あたり売上(億円))→ 売上 44 億円・営業利益 1 億円。縮小
倍率:ROE 2.8%・k 8.25%・残る割合 1/2 から RONIC は 5.0%。g は 3.75% で、正当化 PER は約 7.1 倍。7 割へは引き上げず、式のとおり 7.0 倍とした。
確率:2026 年上期の減益が示す売れても儲からない構造と、店の減少が重なる。製菓のブランドが残るため、悲観までは落ちない。
悲観 12% 洋菓子店が半減し、製菓も値下げ競争に巻き込まれて優良ではなくなる 利益 2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 470 円121 億円
2036 年、不二家は優良ではなくなっている。大手が値上げを通した後の棚で、不二家は価格を守れず、製菓の数量は 8 割台まで落ちる。値段も物価並みには上がらず、利益率は 1% 弱まで下がる。
洋菓子店は 450 店に半減する。直営の家賃は固定費として残り、洋菓子事業は赤字になる。ベトナム工場は稼働が上がらず、中国の工場も不振が続く。借入は返せず、配当は減らされて 10 年で 20 億円ほどにとどまる。資産の減損も出て、自己資本は増えない。
営業利益はほぼゼロ、純利益は 2 億円ほどにとどまる。それでもブランドと土地、持ち合い株が残るため、ゼロにはならない。親会社が完全子会社化に動いても、少数株主の取り分は小さい。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年2.4億円×10年×0.5=12億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 製菓事業:数量 8.6(出荷数量(億個相当))× 価格 96(1 個相当の卸単価(円))→ 売上 828 億円・営業利益 7 億円。数量 0.82 倍、値上げも通りにくく利益率 1% 弱
- 洋菓子事業:数量 450(店舗数(店))× 価格 0.45(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 202 億円・営業利益 −4 億円。450 店、家賃が固定費として残り赤字
- その他:数量 8.0(取引・契約の規模(百件相当))× 価格 4.38(1 単位あたり売上(億円))→ 売上 35 億円・営業利益 0 億円。縮小
倍率:EV ÷ 営業利益は 66 倍(純負債 51 億円)になるが、営業利益がほぼゼロの谷では意味が薄く、事業の稼ぎでなく資産の売却価値で測った。稼ぐ力(純利益 2 億円 ÷ k)は 30 億円にも届かず、価値の下支えは売れる資産。今の自己資本 606 億円に 0.2 を掛け、売れる資産の税後 120 億円(推定)にそろえた。
確率:値上げ疲れ・原材料高・店の半減が重なる構造的な負け。ブランドと親会社の物流網は簡単には消えないため、1 割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
製菓事業
ミルキー・カントリーマアム・ルックなどの菓子と飲料を作り、卸・小売へ売る。売上の約 7 割。
| 数量出荷数量(億個相当) | 価格1 個相当の卸単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 10.5 | 80 | 841 | 22 |
| 10 年後 中立 | 10.5 | 107 | 1,126 | 41 |
取り方:売上 840.7 億円を、平均的な卸単価(推定)で割って 10.5 億個とした。営業利益は開示がなく、全社 28.4 億円のうち製菓 21.5・洋菓子 5.5・その他 1.4 と配分した推定。価格は名目で物価並み(10 年 1.34 倍)に上がる。数量は国内の人口減で実質 0.9〜1.0 倍、海外の増分で一部を補う。市場は国内の菓子が小売で約 4 兆円で、不二家の卸売上はそのうちの約 2%。
洋菓子事業
洋菓子店「不二家」の直営(203 店)とフランチャイズ。売上の約 3 割。
| 数量店舗数(店) | 価格1 店あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 850 | 0.37 | 318 | 6 |
| 10 年後 中立 | 720 | 0.50 | 361 | 9 |
取り方:売上 318.4 億円 ÷ 850 店 = 1 店あたり 0.375 億円(直営の売上とフランチャイズへの卸売上を含む平均)。前期から 42 店減。営業利益は推定配分。価格は 1 店あたり売上で、名目は物価並みの 10 年 1.34 倍が基本。店の数が数量。
その他
物流・不動産・受託など。売上は 36 億円ほど。
| 数量取引・契約の規模(百件相当) | 価格1 単位あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 10.0 | 3.65 | 37 | 1 |
| 10 年後 中立 | 10.0 | 4.89 | 49 | 2 |
取り方:開示が粗いため、36.5 億円を 10 単位 × 3.65 億円と置いた推定。規模が小さく、全体への影響は小さい。
リスクと懸念
原材料高と値上げの時間差
カカオ・小麦・油脂・包装資材がそろって上がる中、大手より値上げを通す力が弱い不二家は、コストが先に利益を削る。2026 年上期は売上が増えても営業利益が 4 分の 1 に落ちた。値上げのあとに数量が戻らなければ、利益率は 2% 台のまま動かない。
洋菓子店の縮小
店舗は 1 年で 42 店減って 850 店になった。フランチャイズ店主の高齢化と後継者不足が背景だ。直営店(203 店)の家賃と人件費は固定費で、店が減ってもすぐには減らない。ドーナツ専門店などの新業態が穴を埋められるかが問われる。
海外投資の回収と借入
ベトナムの新工場など、2025 年の投資は営業キャッシュフローの 3 倍近い。差額は借入で、純現金が純負債 51 億円に変わった。工場が採算に乗らず、中国の不振も続けば、利払いが利益を削る。金利が上がる局面では特に重い。
親会社との関係と少数株主
山崎製パンは議決権の 54% を持つ。営業・物流・調達の共同化は効くが、取引条件が親会社に有利に偏るおそれがある。完全子会社化の際の価格も親会社が主導する。少数株主の取り分は、市場価格や本質価値に見合う保証がない。
食の安全とブランド毀損
2007 年に期限切れ原料の問題で信用を失った過去がある。菓子は子どもの口に入るため、製品事故や SNS の風評が起きれば、ブランドの傷は大きい。製菓事業のミルキーなど看板商品に事故が出た時の打撃は、洋菓子店の縮小より深い。
売り先の集中
製菓の売り先は食品卸と、イオン・セブン&アイなどの大手小売が中心だ。棚と価格の交渉力は小売の側にあり、安売りや自社ブランドへの置き換えが進むと、値上げが通りにくくなる。
今後の分かれ目
- 2026 年下期に営業利益が会社予想の 32 億円へ近づく
- 上期の落ち込みは一時的な原材料高とみなせる。利益率の回復の筋書きに重みを移す。
- 洋菓子店が 800 店を割る
- 減少のペースが年 40 店規模で続くなら、中立より弱い筋書きに確率を移す。固定費の重さが全体の利益率を下げる。
- ベトナム工場の稼働率が上がり、海外の売上が 1 割を超える
- 国内の人口減を海外で補う筋書きが現実味を増す。やや楽観の確率を上げる。
- 山崎製パンが完全子会社化の方針を示す
- 少数株主には、提示価格が本質価値を上回るかが焦点になる。価格が低ければ、その後の期待を引き下げる。
- 値上げ後も数量が前年を割り込み続ける
- 値上げ疲れが構造になりつつある。製菓の数量は 0.9 倍を下回る方向に置く。
- 政策保有株の売却益を、自社株買いや配当の増額に回す
- 資本の効率が少し改善する。ただ、利益そのものが増えない限り ROE が資本コストを超える道は遠い。
見ておくもの
- 2026 年下期の営業利益(会社予想 32 億円との差)
- 洋菓子店の店舗数(850 店からの減少ペース)
- ベトナム工場の稼働率と海外売上の比率
- 営業キャッシュフローと設備投資の差(借入への依存度)
- 山崎製パンの持株比率と完全子会社化の言及
倍率と資本コストの決め方
セグメントごとに数量と価格を置き、利益率は構造から決めた。中立の営業利益率は 3% 台で、過去 10 年の最高(4% 台)に届かせていない。倍率は正当化 PER の式(k 8.25%・g 3.75%・残る割合 1/2)から出し、今の株価・過去の倍率は使っていない。ROE が k を下回るので上限を 1÷k に置かず、式の 9 割とした。悲観の床は今の自己資本に掛け、売れる資産は推定と明記した。店の家賃は固定の約束なので、悲観では固定費として残している。新リース会計は 2028/12 期から入るが、10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえてある。同じ領域の山崎製パンより堀が弱いと見て、確率を悲観寄りに置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.5→12.12 倍・やや楽観 PER 11.8→12.12 倍・中立 PER 9.8→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality −0.25%。同じ領域の森永製菓(−0.2%)に近く、山崎製パン(−0.5%)より値決め力が弱いので差をつけた。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.25% → 8.25%。