結論
鳥越製粉は福岡市に本社を置く、九州の小麦粉メーカーだ。業務用の小麦粉、プレミックス(調理を簡単にする粉の混合品)、精麦(大麦の加工)、飼料を手がける。売上は262億円、営業利益は13億円だ。
筆者の結論は割高だ。事業の稼ぐ力に比べて、今の時価総額が高い。営業利益率は5%前後で、自己資本利益率(ROE)は3%にとどまる。資本コストの8%近くには、ほど遠い。
見かけの割安さは、貸借対照表の厚みから来る。現金が120億円、投資有価証券が123億円ある。時価総額271億円に対し、純現金と投資有価証券で215億円ほどだ。だが投資有価証券の大半は、取引先との持ち合い株で、売る方針は具体的に示されていない。持ち合い株は配当を出すだけで、稼ぐ力としては低い。
10年後の中立の筋書きでも、時価総額は今より2割強低い。確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額を4割近く下回る。会社は配当性向100%を掲げ、利益の全額を配当に回している。株主には優しいが、成長への投資とは両立しにくい。
鍵は食品事業と新工場だ。付加価値の高いプレミックスを伸ばせれば、利益率は上がる。逆に、小麦粉の価格競争が続けば、今の薄い利益のままだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、鳥越製粉は「守りの堅い、地味な会社」だ。10年後も小麦粉は売れる。ただし、堀は広がらない。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、見かけより小さい。営業キャッシュフローは31億円だが、設備投資に23億円を使った。差し引き8億円で、配当11.6億円をまかなえない。配当性向100%は、会社が貯めた金を取り崩して払っている面がある。
資本をうまく配分しているかと言えば、迷う。純資産の3分の1が持ち合い株という姿は、資本を効率よく働かせる会社ではない。その一方、配当性向を100%に引き上げた判断は、株主を向いた動きとして評価できる。
安全域は、今の値段に見えにくい。PBRは0.7倍と低いが、ROEが資本コストを下回る会社の純資産は、額面の価値を持たない。帳簿の安さは、安全域とは別の話だ。それでも、悲観の筋書きで会社が行き詰まることはなく、資産の下支えは堅い。
自分がオーナーなら、持ち合い株を売って配当や自社株買いに回すか、食品事業に思い切って投資するかの二択を迫る。今の鳥越製粉は、そのどちらにも踏み切っていない。
何で稼ぐ会社か
事業は4つある。2025年12月期の売上262億円の内訳は、製粉が116億円(44%)、食品が68億円(26%)、精麦が64億円(24%)、飼料が13億円(5%)だ。
製粉は、小麦粉、ライ麦粉、ふすまを作る。主に業務用で、パンやめん、菓子のメーカーに売る。原料の小麦は輸入品で、国が買い付け、製粉会社に売り渡す。この政府売渡価格が、小麦粉の値段を決める最大の要素になる。2025年は売渡価格が下がり、製品価格も下がって減収となった。出荷数量は増えている。
食品は、家庭用と業務用のプレミックス、品質改良剤、日持ちを延ばす薬剤を作る。製粉より利益率が高く、会社が最も伸ばしたい分野だ。前期は出荷数量が減って3.8%の減収だった。
精麦は、丸麦、押麦、もち麦を作る。子会社の鳥越精麦、中島精麦工業、石橋工業が担い、中間持株会社の鳥越グレインホールディングスが束ねる。もち麦などの健康需要で、前期は8.4%の増収となった。飼料は子会社2社が作る。
ほかに、パン・菓子の大田ベーカリー、生めんの久留米製麺、小麦粉卸のカネニがある。連結従業員は354人で、製造業としては小さな会社だ。主要な売り先は特定の1社に偏らず、10%を超える取引先はない。
優良さと弱いところ
優良とは言いがたいが、堅実さはある。堀(他社がまねできない強み)は弱いと筆者は見る。
小麦粉は、どの会社も同じ原料から作る。値段は政府売渡価格に連動し、自社で決められない。原料を値下げされれば、製品価格も下げなければならない。品質と納期、九州での顧客との結びつきが強みだが、全国ブランドを持つ日清製粉グループやニップンのような価格決定力はない。
数字もそれを示す。営業利益率は過去12年、3.4%から7.0%の間にあり、直近は4〜5%だ。ROEは1.7%から3.7%の間で、資本コストを一度も超えていない。会社は中期計画で2026年に営業利益率6.0%を掲げたが、今期の見通しは5.0%にとどまる。
堅い点は、赤字の期がないことと、財務の健全さだ。自己資本比率は79%、現金は有利子負債を90億円ほど上回る。小麦粉は必需品で、景気が悪くても需要が落ちにくい。
弱い点は、資本の働きだ。自己資本368億円のうち、3分の1にあたる123億円が投資有価証券で、そのほとんどが持ち合い株だ。持ち合い株は配当を生むだけで、事業の力にはならない。この資産の重さが、ROEを押し下げている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
小麦粉の国内生産は、1994年の500万トンをピークに頭打ちで、人口減とともにゆるやかに減っていく。製粉業界は日清製粉グループ、ニップン、昭和産業、日東富士製粉などが大手で、鳥越製粉は九州を地盤にした中堅だ。
原料の小麦は、国が輸入して製粉会社に売り渡す制度がある。売渡価格は年2回改定される。近年は相場連動制や即時販売方式(SBS)が導入・拡大され、国の制度の保護が薄れる方向にある。制度が変われば、仕入れの方法と価格転嫁の速さが変わる。会社自身も、これを事業のリスクに挙げている。
価格は、原料の値上がりを製品に転嫁するまでに数か月のずれがある。2022年から2023年は、売渡価格の急騰で原料が高く、利益率が4%まで落ちた。2025年は売渡価格が下がり、製品価格も下がったが、鳥越製粉の営業利益は逆に23%増えた。コストの下がりと価格転嫁のずれが、プラスに働いた形だ。
需要は、パンやめんの消費が人口減で細る一方、中食や冷凍食品、健康志向の食品が伸びる。会社はここに食品事業と精麦を重ねる。
競争は、価格と物流の勝負になる。電力、人件費、運賃の上昇を価格に載せきれない年が続けば、中小の製粉会社は薄利から抜けられない。業界では工場の統合と再編が進みつつある。
資本政策と M&A
資本の使い方は、株主への還元を厚くする方向にある。
2024年12月期から2026年12月期の3年間、配当性向100%を目標にしている。前期の配当は純利益とほぼ同額で、総額は11.6億円だ。これまでの40%以上から、大きく引き上げた。自己株式は発行済み株の1割近く(21億円)あり、自社株買いも検討していると会社は説明する。
投資は2つある。福岡工場の製品サイロ(総額14億円、2026年5月完成)と、食品事業の新工場を含む生産拠点の再構築だ。前期の設備投資は23億円で、営業キャッシュフロー31億円の4分の3を使った。M&Aも検討するとしているが、具体案はない。
政策保有株式は、上場21銘柄、非上場12銘柄だ。最大はカルビーで、約58億円。次いで三菱UFJ、ふくおかフィナンシャルグループが続く。会社は年2回、保有の経済合理性を検証し、合理性が薄れたものは売却するとしている。だが当期の動きは小さく、縮減の実績は乏しい。
大株主は、有限会社鳥越商店6.0%、三井物産5.5%、福岡銀行4.9%、三菱UFJ銀行4.9%など。外国人は1%にとどまり、個人が48%を占める。親会社はなく、TOBの兆しも見えない。
株主優待もある。500株以上に、そうめんやラーメンの詰め合わせを贈る。費用は年1億円未満と見積もられ、還元の中では小さい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
食品事業が化ける。プレミックスや品質改良剤は、顧客の商品開発に深く入り込む製品で、一度採用されれば簡単には替えられない。新工場を建て、差別化された製品を作れば、利益率は製粉の倍近くある。食品の売上が1.5倍になれば、会社全体の営業利益率は6〜7%に上がる。
精麦は、健康志向でもち麦や大麦の需要が根強い。子会社の再編も進み、規模の利益が出てくる。製粉も、小麦粉の価格改定が順調に通り、工場の稼働が上がれば、利益率は5%台後半まで改善する。
財務の厚みも力になる。配当性向100%という方針が続き、持ち合い株の売却も進めば、資本効率は大きく改善する。カルビー、三菱UFJなどの株は、時価で売れる資産だ。売却益を自社株買いや配当に回せば、少数株主の取り分は増える。
さらに、再編の期待もある。小さな製粉会社の統合は進んでおり、三井物産などの株主との関係も強い。業界再編が起きれば、プレミアムが付く可能性もある。
慎重な見方
小麦粉の事業は、構造的に薄利だ。営業利益率が12年で7.0%を超えたことはなく、会社の目標6.0%も未達の見込みだ。原料の値段が下がっても上がっても、製品の値段が追いかけて動く。付加価値を取れる事業ではない。
人口減は、毎年じわじわ効く。パン、めん、菓子の消費は細り、小麦粉の数量は減っていく。国の小麦の制度が見直されれば、輸入麦の仕入れ方や価格決定のルールが変わる。小さな会社は、大手に比べて交渉力が弱い。
資本は働いていない。自己資本368億円に対し、純利益は11億円で、ROEは3%だ。純資産の3分の1が持ち合い株で、配当を出すだけの資産に、少数株主の価値は閉じ込められている。ROEが資本コストを下回る会社の純資産は、帳簿の額がそのまま価値にならない。
配当性向100%も、持続しにくい。営業キャッシュフローから設備投資を引くと、配当をまかなえない。新工場や更新投資が続けば、現金は減り、配当は下がる。会社が掲げた中期計画の数字は、すでに未達が見えている。
どちらに重みを置いたか
事業の堅さと財務の厚みでは、強気の見方に分がある。だが、稼ぐ力と資本の効率では、慎重な見方が正しい。中立の筋書きは、数量が緩やかに減る製粉と、伸びる食品が釣り合い、営業利益率が5%台で推移する形とした。確率は中立を最も厚くし、やや悲観を楽観側より厚くした。悲観でも会社は黒字を保ち、持ち合い株と現金が床になる。結論は割高で、その差は事業の弱さと、資産が動かないことの両方から来る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 911 円215 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 476 円112 億円)。 今の値に割り戻すと 732 円173 億円、今との差 −36.8%、 期待の年率 +1.8%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 1,336 円316 億円 | 622 円147 億円 | +69.1% | +5.4% | 137 円32 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,172 円277 億円 | 563 円133 億円 | +49.8% | +4.1% | 347 円82 億円 |
| 中立 | 38% | 1,023 円242 億円 | 512 円121 億円 | +32.6% | +2.9% | 583 円138 億円 |
| やや悲観 | 25% | 581 円137 億円 | 406 円96 億円 | −14.8% | −1.6% | 247 円58 億円 |
| 悲観 | 10% | 487 円115 億円 | 237 円56 億円 | −37.5% | −4.6% | 72 円17 億円 |
| 加重平均 | 100% | 911 円215 億円 | 476 円112 億円 | +19.7% | +1.8% | 1,387 円328 億円 |
今の株価時価総額 1,158 円274 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 食品が化け、再編と資本効率の改善も来る 利益 23 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,336 円316 億円
プレミックスと品質改良剤が顧客の商品開発に深く入り、食品の売上は10年で6割増える。新工場で差別化された製品を作り、食品の利益率は10%に達する。製粉は価格改定が順調に通り、工場の稼働も上がって、利益率は5.8%まで改善する。
営業利益率は全体で6.8%と、過去12年の最高(7.0%)に近づく。持ち合い株の売却が進み、資金は自社株買いや配当に回る。10年の還元は147億円で、純利益の85%に及ぶ。それでもROEは6%にとどまる。業界の再編が起きて、プレミアム付きの提携が出る可能性もある。この筋書きでは、営業利益は今の2倍強の28億円、純利益は23億円になる。資本の効率が目に見えて改善し、市場も鳥越製粉を成長する食品会社として見直す。ただし、そこまで揃う確率は低い。
- 製粉:数量 9.9(小麦粉の出荷量(万トン・年、推定))× 価格 17(1トンあたり平均売上(万円・名目))→ 売上 164 億円・営業利益 10 億円。数量換算9.9万トン、単価は今の1.38倍、営業利益率5.8%
- 食品:数量 3.3(出荷量(万トン・年、推定))× 価格 42(1トンあたり平均売上(万円・名目))→ 売上 139 億円・営業利益 14 億円。数量換算3.3万トン、単価は今の1.40倍、営業利益率10%
- 精麦:数量 3.0(出荷量(万トン・年、推定))× 価格 32(1トンあたり平均売上(万円・名目))→ 売上 96 億円・営業利益 4 億円。数量換算3.0万トン、単価は今の1.36倍、営業利益率4.5%
- 飼料・その他:数量 2.5(出荷量(万トン・年、推定))× 価格 7.34(1トンあたり平均売上(万円・名目))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。数量換算2.5万トン、単価は今の1.34倍、営業利益率4%
倍率:事業の純利益 23 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)40 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 316 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:食品の新工場の成功と、持ち合い株の売却を含む資本効率の改善が揃う必要がある。会社が目標に掲げた利益率にも届いていない現状で、この連続は確度が高くない。
やや楽観 20% 食品が着実に伸び、利益率が上がる 利益 20 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,172 円277 億円
食品の数量は3割増え、利益率は9%まで上がる。製粉は横ばいで、小麦の政府売渡価格の変動を吸収しながら、利益率5.3%を保つ。精麦はもち麦の需要が続き、数量が5%増える。
営業利益率は6.1%。直近の4〜5%から、1〜2ポイント上がる形だ。配当性向は85%に下がり、10年の還元は133億円になる。ROEは5%程度で、資本コストには届かない。会社は財務の余力で小さなM&Aを重ねるが、大型の買収はない。営業利益は24億円、純利益は20億円。中期計画の営業利益18.8億円は超えるが、売上の313億円には届かない。市場は食品の伸びを評価しつつ、製粉の薄利を割り引く。
- 製粉:数量 9.7(小麦粉の出荷量(万トン・年、推定))× 価格 16(1トンあたり平均売上(万円・名目))→ 売上 158 億円・営業利益 8 億円。数量換算9.7万トン、単価は今の1.36倍、営業利益率5.3%
- 食品:数量 3.0(出荷量(万トン・年、推定))× 価格 41(1トンあたり平均売上(万円・名目))→ 売上 122 億円・営業利益 11 億円。数量換算3.0万トン、単価は今の1.37倍、営業利益率9%
- 精麦:数量 2.8(出荷量(万トン・年、推定))× 価格 32(1トンあたり平均売上(万円・名目))→ 売上 91 億円・営業利益 4 億円。数量換算2.8万トン、単価は今の1.35倍、営業利益率4.1%
- 飼料・その他:数量 2.5(出荷量(万トン・年、推定))× 価格 7.23(1トンあたり平均売上(万円・名目))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。数量換算2.5万トン、単価は今の1.32倍、営業利益率3.8%
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.6% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)40 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 277 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の中期計画に近い方向で、食品の伸びが実現する筋書き。ただし中期計画の数字には届かない。食品事業の伸びは、新工場の稼働と顧客の採用に左右され、不確実性が残る。
中立 38% 数量は緩やかに減り、食品で補う 利益 17 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,023 円242 億円
製粉の数量は人口減で3%減り、価格は原料の転嫁で物価並みに上がる。食品は新工場で数量が15%増える。精麦は横ばい、飼料は5%減。
営業利益率は5.4%で、過去12年の中央値(約5%)とほぼ同じ。会社が掲げた6.0%には届かず、目標は先送りされる。金利上昇で受取利息が増え、純利益は17億円になる。配当性向は85%とし、10年の還元は121億円。ROEは4%台で推移し、資本コストを超えない。安定した、しかし資本の働きが乏しい10年になる。営業利益は20億円弱、純利益は17億円。株主資本は390億円と今より小幅に増え、資本の効率はほとんど変わらない。倍率は資本コストに見合う水準にとどまり、時価総額は今より2割強低くなる。
- 製粉:数量 9.4(小麦粉の出荷量(万トン・年、推定))× 価格 16(1トンあたり平均売上(万円・名目))→ 売上 151 億円・営業利益 7 億円。数量換算9.4万トン、単価は今の1.34倍、営業利益率4.8%
- 食品:数量 2.6(出荷量(万トン・年、推定))× 価格 40(1トンあたり平均売上(万円・名目))→ 売上 105 億円・営業利益 8 億円。数量換算2.6万トン、単価は今の1.34倍、営業利益率8%
- 精麦:数量 2.7(出荷量(万トン・年、推定))× 価格 32(1トンあたり平均売上(万円・名目))→ 売上 86 億円・営業利益 3 億円。数量換算2.7万トン、単価は今の1.34倍、営業利益率3.8%
- 飼料・その他:数量 2.4(出荷量(万トン・年、推定))× 価格 7.12(1トンあたり平均売上(万円・名目))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。数量換算2.4万トン、単価は今の1.30倍、営業利益率3.5%
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.8% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)40 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 242 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:製粉の数量減と食品の伸びが釣り合い、会社の方針も今のまま続く筋書き。過去12年の利益率の中央値に近く、中期計画よりは慎重。最も確率の高い筋書きとして置く。
やや悲観 25% 価格競争で利益率が低いまま 利益 13 億円 · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 581 円137 億円
製粉の数量は8%減り、麦の制度改革で仕入れの優位がなくなって、利益率は3.6%に落ちる。食品は新工場の稼働が遅れ、数量が横ばいにとどまる。精麦と飼料も価格の伸びが物価を下回る。
営業利益率は4.0%で、2020年の谷(3.4%)に近づく。純利益は13億円で、今の1.1倍にとどまる。配当性向を80%に下げ、10年の還元は95億円。ROEは3%台で、今とほぼ同じ。会社は存続し、配当も続くが、成長の物語は描けない。営業利益は13億円と今とほぼ同じで、物価で水ぶくれした売上のなかで利益は増えない。実質では縮小に近い。倍率は資本コストに見合わない利益を反映して低くなり、時価総額は今の半分ほどになる。
- 製粉:数量 8.9(小麦粉の出荷量(万トン・年、推定))× 価格 16(1トンあたり平均売上(万円・名目))→ 売上 139 億円・営業利益 5 億円。数量換算8.9万トン、単価は今の1.30倍、営業利益率3.6%
- 食品:数量 2.3(出荷量(万トン・年、推定))× 価格 38(1トンあたり平均売上(万円・名目))→ 売上 88 億円・営業利益 5 億円。数量換算2.3万トン、単価は今の1.28倍、営業利益率6%
- 精麦:数量 2.6(出荷量(万トン・年、推定))× 価格 30(1トンあたり平均売上(万円・名目))→ 売上 78 億円・営業利益 2 億円。数量換算2.6万トン、単価は今の1.28倍、営業利益率2.8%
- 飼料・その他:数量 2.3(出荷量(万トン・年、推定))× 価格 6.85(1トンあたり平均売上(万円・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 0 億円。数量換算2.3万トン、単価は今の1.25倍、営業利益率2.5%
倍率:事業のROEは3%前後で、資本コスト8.25%以下。PERの上限は1÷k=12.9倍。稼ぐ力が弱まるので上限の約68%の8.8倍に置いた。余った現金は谷で食って30億円(戻り方1.0)。
確率:麦の制度改革で保護が薄れ、価格競争と人件費・電力費の上昇が重なる筋書き。直近の4〜5%の営業利益率さえ維持できない。業界では十分ありうる。
悲観 10% 構造的に負け、持ち合い株だけが残る 利益 8 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 487 円115 億円
国の麦の制度が相場連動に変わり、仕入れの優位が消える。大手が価格で攻め、鳥越製粉は九州での顧客も失う。製粉の数量は15%減り、価格は物価を大きく下回る。食品も新工場が稼働率を上げられず、利益率は3.5%にとどまる。
営業利益率は2.1%まで落ち、工場の統廃合の費用がかさむ。配当は下げ、10年の還元は57億円。それでも借金は小さく、現金と持ち合い株の厚みで会社は続く。事業の価値は、稼ぐ力ではなく、売れる資産の価値で支えられる。株主にとっては、成長ではなく、資産の下支えだけが残る10年になる。営業利益は5億円台まで落ちるが、赤字にはならない。時価総額は事業の価値ではなく、現金と持ち合い株の売却見込みで決まる。今の時価総額の4割強にあたる床が、下値を支える。
- 製粉:数量 8.2(小麦粉の出荷量(万トン・年、推定))× 価格 14(1トンあたり平均売上(万円・名目))→ 売上 119 億円・営業利益 2 億円。数量換算8.2万トン、単価は今の1.20倍、営業利益率2%
- 食品:数量 1.9(出荷量(万トン・年、推定))× 価格 35(1トンあたり平均売上(万円・名目))→ 売上 67 億円・営業利益 2 億円。数量換算1.9万トン、単価は今の1.15倍、営業利益率3.5%
- 精麦:数量 2.3(出荷量(万トン・年、推定))× 価格 27(1トンあたり平均売上(万円・名目))→ 売上 62 億円・営業利益 1 億円。数量換算2.3万トン、単価は今の1.15倍、営業利益率1.2%
- 飼料・その他:数量 2.0(出荷量(万トン・年、推定))× 価格 6.03(1トンあたり平均売上(万円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。数量換算2.0万トン、単価は今の1.10倍、営業利益率0.5%
倍率:事業は縮み、稼ぐ力ではなく売れる資産の価値まで下がる。内訳は floor_assets_why に書いた。
確率:麦の制度改革、人口減、価格競争が同時に来る複合の筋書き。鳥越製粉は黒字を保つが、稼ぐ力は大きく落ちる。日本の製粉業界で、規模で劣る中堅が受ける最も厳しい形。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
製粉
業務用小麦粉、ライ麦粉、ふすま。売上の44%。
| 数量小麦粉の出荷量(万トン・年、推定) | 価格1トンあたり平均売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 9.7 | 12 | 116 | 5 |
| 10 年後 中立 | 9.4 | 16 | 151 | 7 |
取り方:売上116.3億円(有価証券報告書)。国内の小麦粉は年約440万トン。鳥越製粉は九州の中堅で、業務用小麦粉の平均単価を1トン12万円前後と仮定して約9.7万トン(国内の約2%)とした。数量は実質。物価と原料の転嫁は単価に入れた。会社はセグメント利益を開示しないため、営業利益5.2億円(利益率4.5%)は全体の13.1億円と他事業の推定から逆算した。
食品
家庭用・業務用プレミックス、品質改良剤、日持ち向上剤。売上の26%。
| 数量出荷量(万トン・年、推定) | 価格1トンあたり平均売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2.3 | 30 | 68 | 5 |
| 10 年後 中立 | 2.6 | 40 | 105 | 8 |
取り方:売上68.45億円。プレミックスなどの平均単価を1トン30万円前後と仮定して約2.3万トンとした。数量は実質。営業利益5.0億円(利益率7.3%)は、製粉より利益率が高いという会社の説明から推定した。
精麦
丸麦、押麦、もち麦。子会社の鳥越精麦・中島精麦工業・石橋工業が担う。売上の24%。
| 数量出荷量(万トン・年、推定) | 価格1トンあたり平均売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2.7 | 24 | 64 | 2 |
| 10 年後 中立 | 2.7 | 32 | 86 | 3 |
取り方:売上64.0億円。食用の精麦(押麦・もち麦)の平均単価を1トン24万円前後と仮定して約2.7万トンとした。数量は実質。営業利益2.4億円(利益率3.8%)は推定。
飼料・その他
子会社2社の配合飼料、政府所有の輸入小麦の保管・荷役の受取料。売上の5%。
| 数量出荷量(万トン・年、推定) | 価格1トンあたり平均売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2.5 | 5.48 | 14 | 1 |
| 10 年後 中立 | 2.4 | 7.12 | 17 | 1 |
取り方:飼料13.14億円とその他0.56億円の合計13.7億円。平均単価を1トン5〜6万円と仮定して約2.5万トンとした。数量は実質。営業利益0.5億円は推定。
リスクと懸念
麦の制度改革
国が輸入麦を売り渡す制度は、相場連動制、即時販売方式(SBS)の拡大で、保護が薄れる方向にある。仕入れの方法や価格転嫁の速さが変われば、中小の製粉会社は大手に比べて交渉力で不利になる。会社自身も事業のリスクに挙げている。
原料価格の振れと転嫁の遅れ
小麦の政府売渡価格は、近年の急騰(2022年に1トン7.3万円)や急落(2025年の引き下げ)を繰り返している。値上がりは製品価格に載せるまで数か月かかり、その間は利益が削られる。円安や地政学リスクも、原料価格を揺らす。
人口減による数量の縮小
国内の小麦粉の消費は人口減とともに細る。九州を地盤とする中堅は、地域の人口減と大手の攻勢の影響を受けやすい。数量が毎年1%減れば、10年で1割の売上が消える。
持ち合い株の価格下落
投資有価証券123億円のうち、最大はカルビー約58億円、次いで三菱UFJ約23億円。株価が下がれば純資産が目減りし、評価損を計上する場合もある。銀行株や取引先の株に偏っており、分散されていない。
設備投資の回収
福岡工場のサイロ(14億円)、食品事業の新工場を含む再構築で、投資が増える。売上が計画どおり伸びず、稼働が上がらなければ、減価償却だけが残る。前期の設備投資23億円は、営業キャッシュフローの4分の3だった。
配当性向100%の持続
配当は純利益とほぼ同額で、営業キャッシュフローから設備投資を引いた額を上回る。投資が続けば、貯めた現金を取り崩すことになる。配当方針が変われば、還元を期待した株主の失望を招く。
今後の分かれ目
- 食品事業の売上が3年で2割以上伸び、新工場が稼働したら
- 会社の営業利益率の前提を引き上げ、やや楽観・楽観の確率を上げる。食品の利益率が実際にいくらかを確かめる。
- 小麦の政府売渡価格が大きく上がり、製品価格への転嫁が遅れたら
- その期の利益は落ちるが、一時的か構造的かを見る。転嫁が毎回遅れるなら、利益率の前提を下げる。
- 持ち合い株の売却と、その資金を使った自社株買い・特別配当が示されたら
- 資本効率が改善する筋書きとして、確率を楽観側に移し、余った現金の前提を見直す。
- 業界再編(製粉会社の統合・資本提携)が表面化したら
- 買い手側か売り手側かを確かめ、再編のプレミアムや統合費用を確率に反映する。
- 配当性向100%の目標が引き下げられたら
- 還元の前提を下げる。利益が薄い中で現金を取り崩していた面が、解消されたと読む。
- 営業利益率が6%を超えて定着したら
- 過去12年の最高圏に近づくので、構造が変わったかを確認し、中立の利益率を引き上げる。
見ておくもの
- 食品事業の売上・営業利益率と、新工場の稼働時期・投資額
- 小麦の政府売渡価格の改定(年2回)と、製品価格の改定の時期・幅
- 政策保有株式(カルビー、三菱UFJなど)の売却の開示と、売却資金の使い道
- 配当性向100%の方針の継続と、2027年以降の中期経営計画の内容
倍率と資本コストの決め方
今の株価や、PBR0.7倍には寄せていない。売上は数量(実質)×単価(名目、物価の10年1.34倍が基本)で積み、飼料だけは価格の下落を見て1.30倍に下げた。製粉の単価は原料価格の転嫁で物価並みと置いた。数量は、製粉が人口減で3%減、食品が新工場で15%増の前提で、会社の中期計画(2026年に売上313億円)には届かないと見た。利益率は、全社で5.4%と過去12年の最高(7.0%)を下回る。純利益は(営業利益+営業外収益)の7割弱で、金利上昇による受取利息の増加(約2億円)を営業外収益に足した。倍率は、資本コスト8.25%(基本7.5%に循環−0.5%・値決め力+0.5%・寿命+0.25%)で、事業のROEが4%台と資本コスト以下なので、PERの上限1÷k=12.9倍の約8割に置いた。投資有価証券(持ち合い株)は、配当を利益に残してあるため、価値を足していない(二重に数えない)。純現金の余りだけ、40億円を戻り方1.0で足した。悲観の床は、持ち合い株の税後の売却額も含めて置いた。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。